本発明で用いる低屈折率剤(I)としては、屈折率が1.44以下のものが好ましく、1.40以下のものがより好ましい。また、低屈折率剤は、無機系又は有機系のいずれのものであってもよい。
無機系の低屈折率剤(I)としては、空隙を有する微粒子、金属フッ化物微粒子等が挙げられる。前記空隙を有する微粒子としては、微粒子の内部に気体が充填されたもの、気体を内部に含む多孔質構造のもの等が挙げられる。具体的には、中空シリカ微粒子、ナノポーラス構造を有するシリカ微粒子等が挙げられる。また、前記金属フッ化物微粒子としては、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム等が挙げられる。
これらの無機系の低屈折率剤(I)の中でも中空シリカ微粒子が好ましい。さらに、これらの無機系の低屈折率剤(I)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。これらの無機系の低屈折率剤(I)は、結晶性のもの、ゾル状のもの、ゲル状のもののいずれのものも用いることができる。
前記シリカ微粒子の形状は、球状、鎖状、針状、板状、鱗片状、棒状、繊維状、不定形状のいずれであってもよいが、これらの中でも球状又は針状のものが好ましい。また、シリカ微粒子の平均粒子径は、形状が球状の場合、5〜100nmが好ましく、20〜80nmがより好ましく、40〜70nmがさらに好ましい。球状の微粒子の平均粒子径がこの範囲にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することができる。
一方、有機系の低屈折率剤(I)としては、空隙を有する微粒子、含フッ素共重合体等が挙げられる。前記空隙を有する微粒子としては、中空高分子微粒子が好ましい。中空高分子微粒子は、分散安定剤の水溶液中で、(1)少なくとも1種の架橋性モノマー、(2)重合開始剤、(3)少なくとも1種の架橋性モノマーから得られる重合体又は少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとの共重合体、並びに、前記(1)〜(3)に対して相溶性の低い水難溶性の溶媒からなる混合物を分散させ、懸濁重合を行うことにより製造することができる。なおここで、架橋性モノマーとは重合性基を2つ以上有するものであり、単官能性モノマーとは重合性基を1つ有するものである。
有機系の低屈折率剤(I)として用いる含フッ素共重合体は、樹脂中にフッ素原子を多く含有していることで低屈折率となっている樹脂である。この含フッ素共重合体としては、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとをモノマー原料とした共重合体が挙げられる。
前記含フッ素共重合体の原料である各モノマーの比率は、フッ化ビニリデンの比率が30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましく、ヘキサフルオロプロピレンの比率が5〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、15〜45%がさらに好ましい。この他のモノマーとして、テトラフルオロエチレンを0〜40質量%の範囲で使用してもよい。
前記含フッ素共重合体には、その他の原料のモノマー成分として、フルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロエチレン、3−ブロモ−3,3−ジフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、α−トリフルオロメタクリル酸等のフッ素原子を有する重合性モノマーを用いることができる。これらのその他の原料のモノマー成分は、含フッ素共重合体の原料モノマー中に20質量%以下の範囲で用いるのが好ましい。
前記含フッ素共重合体中のフッ素含有率は、60〜70質量%であることが好ましく、62〜70質量%であることがより好ましく、64〜68質量%であることがさらに好ましい。含フッ素共重合体のフッ素含有率がこの範囲であると、溶剤に対する溶解性が良好となり、種々の基材に対して優れた密着性を発揮し、高い透明性、低い屈折率、優れた機械的強度を有する薄膜が形成できる。
前記含フッ素共重合体の分子量は、ポリスチレン換算数平均分子量で5,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることがより好ましい。含フッ素共重合体の分子量がこの範囲であると、得られる樹脂の粘度が優れた塗布性を有する範囲となる。また、含フッ素共重合体自体の屈折率が、1.45以下のものが好ましく、1.42以下のものがより好ましく、1.40以下であるものがさらに好ましい。
本発明に用いる活性エネルギー線硬化性化合物(II)としては、紫外線等の活性エネルギー線照射により重合又は架橋反応可能な光重合性官能基を有する化合物であれば特に限定されることなく用いることができる。
前記活性エネルギー線硬化性化合物(II)として、まず、活性エネルギー線硬化性単量体(II−1)が挙げられる。前記単量体(II−1)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
これらのなかでも特に硬化塗膜の硬度に優れる点からトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。これらの活性エネルギー線硬化性単量体(II−1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
また、前記活性エネルギー線硬化性化合物(II)として、活性エネルギー線硬化型樹脂(II−2)も用いることができる。この活性エネルギー線硬化型樹脂(II−2)としては、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられるが、本発明では、特に透明性や低収縮性等の点からウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
ここで用いるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂が挙げられる。
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられ、また、芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
一方、水酸基を有するアクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
上記した脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有するアクリレート化合物との反応は、ウレタン化触媒の存在下、常法により行うことができる。ここで使用し得るウレタン化触媒は、具体的には、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのホフィン類、ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。
これらのウレタンアクリレート樹脂の中でも特に脂肪族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるものが硬化塗膜の透明性に優れ、かつ、活性エネルギー線に対する感度が良好で硬化性に優れる点から好ましい。
次に、不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、及び、グリコール類の重縮合によって得られる硬化性樹脂であり、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に使用できる。
次に、エポキシビニルエステル樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化型樹脂(II−2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
また、前記活性エネルギー線硬化性単量体(II−1)と活性エネルギー線硬化型樹脂(II−2)はそれぞれ単独で使用しても良いし、組合せて使用しても良い。
前記低屈折率剤(I)と活性エネルギー線硬化性化合物(II)との質量比率は、(I):(II)=30:70〜90:10の範囲が好ましく、40:60〜80:20の範囲がより好ましく、50:50〜70:30の範囲がさらに好ましい。
本発明で用いる重合性樹脂(III)は、重合体の構造中にフッ素化アルキル基、シリコーン鎖、アダマンチル基及び重合性不飽和基を有する。重合性樹脂(III)中のフッ素化アルキル基としては、炭素原子数が4〜6のものが表面偏析性と撥水撥油性と環境負荷低減のバランスが良好な事から好ましく、炭素原子数が6のものがより好ましい。シリコーン鎖としては、分子量が2,000〜20,000のものが他の樹脂との相溶性や硬化物表面へのすべり性が良好な事から好ましく、4,000〜10,000のものがより好ましい。
重合性樹脂(III)中のフッ素化アルキル基の含有率としては、3〜30質量%が他の樹脂との相溶性、表面偏析性、硬化物表権への撥水撥油性が良好となる事から好ましく、5〜25質量%がより好ましい。シリコーン鎖の含有率としては、5〜50質量%が他の樹脂との相溶性、硬化物表面のすべり性付与が良好となる事から好ましく、15〜30質量%がより好ましい。アダマンチル基の含有率としては、5〜50質量%が硬化物の硬度が良好となる事から好ましく、15〜30質量%がより好ましい。
また、重合性樹脂(III)の重合性不飽和基の当量は、耐摩耗性に優れる硬化塗膜が得られることから200〜3,500g/eq.の範囲が好ましく、250〜2,000g/eq.の範囲がより好ましく、300〜1,500g/eq.の範囲がさらに好ましく、400〜1,000g/eq.の範囲が特に好ましい。
重合性樹脂(III)を製造するには、特に制限がないが、例えば、下記の2つの方法を好ましく例示することができる。
(製造方法1)
フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和単量体(A)と、シリコーン基を有する重合性不飽和単量体(B)と、反応性官能基(c1)を持つアダマンチル基を有する重合性不飽和単量体(C1)とを必須の単量体成分として共重合させて得られる重合体(P1)に、前記官能基(c1)に対して反応性を有する官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させる方法。
(製造方法2)
フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和単量体(A)と、シリコーン基を有する重合性不飽和単量体(B)と、反応性官能基(c1)を持つアダマンチル基を有する重合性不飽和単量体(C1)又は反応性官能基(c1)を持たないアダマンチル基を有する重合性不飽和単量体(C2)と、反応性官能基(c3)を有する重合性不飽和単量体(C3)とを必須の単量体成分として共重合させて得られる重合体(P2)に、前記官能基(c1)又は前記官能基(c3)に対して反応性を有する官能基(d)及び重合性不飽和基を有する1種以上の化合物(D)を反応させる方法。
上記製造方法の中でもアダマンチル基の含有率が高いフッ素原子含有シリコーン系重合性樹脂が容易に得られることから製造方法1がより好ましい。
前記製造方法で用いる重合性不飽和単量体(A)としては、フッ素化アルキル基を有する単量体である。本発明において、前記フッ素化アルキル基は酸素原子によるエーテル結合を有するものや、フッ素化アルキル基の骨格中に1以上の炭素−炭素二重結合を有するものも含む。前記単量体(A)が有する重合性不飽和基としては、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性、後述する活性エネルギー線硬化性組成物中の各配合成分に対する相溶性を制御することの容易性、あるいは重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
前記製造方法で用いる重合性不飽和単量体(A)としては、例えば、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
(上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは、下記式(L−1)〜(L−10)のいずれか1つの基を表し、Rfは下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)
上記式(L−1)、(L−3)、(L−5)、(L−6)及び(L−7)中のnは1〜8の整数を表す。上記式(L−8)、(L−9)及び(L−10)中のmは1〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表す。上記式(L−6)及び(L−7)中のRf’’は下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。
上記式(Rf−1)〜(Rf−4)中のnは4〜6の整数を表す。上記式(Rf−5)中のmは1〜5の整数であり、nは0〜4の整数であり、かつm及びnの合計は4〜5である。上記式(Rf−6)中のmは0〜4の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは0〜4の整数であり、かつm、n及びpの合計は4〜5である。
また、前記単量体(A)の具体的な例として、下記の単量体(A−1)〜(A−11)等が挙げられる。なお、これらの単量体(A)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
前記単量体(B)について説明する。前記単量体(B)が有するシリコーン基としては、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表されるものが挙げられる。
(式中、R、R’、R’’及びR’’’は、それぞれ独立に炭素原子数1〜18のアルキル基又はフェニル基を表し、また、nは繰り返し単位数であり、1〜200の整数を表す。)
また、前記単量体(B)が有する重合性不飽和基としては、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性、後述する活性エネルギー線硬化性組成物中の各配合成分に対する相溶性を制御することの容易性、あるいは重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
前記単量体(B)の具体的な例として、下記の一般式(B1)〜(B8)で表される単量体が挙げられる。また、これらの単量体(B)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R3〜R6、R10〜R17はそれぞれ独立に炭素原子数1〜18のアルキル基又はフェニル基を表し、R2、R7〜R9及びR18〜R20はそれぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基又はフェニル基を表す。また、m及びlはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、nは0〜250の整数を表し、r、s、t、v、w、x、y、zは、それぞれ独立に1〜250の整数を表す。)
前記化合物(A)と前記単量体(B)との質量比[(A)/(B)]は、高い耐擦傷性を有する硬化物が得られることから、10/90〜90/10の範囲が好ましく、20/80〜80/20の範囲がより好ましく、25/75〜75/25の範囲が更に好ましく、40/60〜60/40の範囲が最も好ましい。
本発明で用いる(C1)は反応性官能基(c1)を有するアダマンチル基を有する。アダマンチル基は下記アダマンタン構造を有する有機基である。
前記単量体(C1)が有するアダマンチル基が持つ反応性官能基(c1)としては、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、酸無水物基等が挙げられる。前記単量体(C1)が有する重合性不飽和基は、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、より具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられ、重合が容易な点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。これらの単量体(C1)は、1種類のみで用いることも、反応性官能基(c1)や重合性不飽和基が異なる2種以上を併用することもできる。
(メタ)アクリロイル基を重合性不飽和基として有する前記単量体(C1)としては、例えば、下記一般式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
(式中、Lは前記反応性官能基(c1)を表し、X及びYは2価の有機基又は単結合を表し、Rは水素原子、メチル基又はCF
3を表す。)
上記一般式(C1−1)中の−X−Lで表される前記反応性官能基(c1)を有する有機基及びYの結合位置は、アダマンタン構造中のどの炭素原子に結合していてもよく、また、−X−Lについては2つ以上有していてもよい。さらに、アダマンタン構造を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。また、上記一般式(C1−1)中のX及びYは2価の有機基又は単結合であるが、この2価の有機基としては、メチレン基、プロピル基、イソプロピリデン基等の炭素原子数1〜8のアルキレン基が挙げられる。
前記単量体(C1)のより具体的な例としては、下記式(C1−1−1)〜(C1−1−5)等で表される化合物が挙げられる。
上記製造方法2において用いる単量体(C2)は、アダマンチル基を有する重合性不飽和単量体で、アダマンチル基については、前記単量体(C1)と同じである。また、前記単量体(C2)が有する重合性不飽和基は、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、より具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられ、重合が容易な点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。これらの単量体(C2)は、1種類のみで用いることも2種以上を併用することもできる。
(メタ)アクリロイル基を重合性不飽和基として有する前記単量体(C2)としては、例えば、下記一般式(C2−1)で表される化合物が挙げられる。
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCF
3を表す。)
(メタ)アクリロイル基は、アダマンタン構造中のどの炭素原子に結合していてもよい。また、上記一般式(C2−1)中のアダマンタン構造を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。
前記単量体(C2)のより具体的な例としては、下記式(C2−1−1)〜(C2−1−3)等で表される化合物が挙げられる。
前記化合物(A)と単量体(C1)との質量比〔(A)/(C1)〕または化合物(A)と単量体(C2)との質量比〔(A)/(C2)〕は、高い耐擦傷性を有する硬化物が得られることから、8/92〜70/30の範囲が好ましく、15/85〜60/40の範囲がより好ましく、20/80〜50/50の範囲が更に好ましく、25/75〜35/65の範囲が最も好ましい。
また、化合物(A)と単量体(B)との合計と、単量体(C1)との質量比〔[(A)+(B)]/(C1)〕または化合物(A)と単量体(B)との合計と、単量体(C2)との質量比〔[(A)+(B)]/(C2)〕が15/85〜70/30の範囲が好ましく、70/30〜60/40の範囲がより好ましい。
上記製造方法2において、重合性樹脂(III)の原料となる前記単量体(C3)について説明する。前記単量体(C3)が有する反応性官能基(c3)としては、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、酸無水物基等が挙げられる。また、前記単量体(C3)が有する重合性不飽和基は、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、より具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられ、重合が容易な点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
前記単量体(C3)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有する酸無水物などが挙げられる。これらの単量体(C3)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
また、上記製造方法1又は2において、重合性樹脂(III)の中間体である前記重合体(P1)又は(P2)を製造する際に、前記化合物(A)、単量体(B)、単量体(C1)、単量体(C2)及び単量体(C3)の他に、これらと共重合し得るその他の重合性不飽和単量体(C4)を用いても構わない。このようなその他の重合性不飽和単量体(C4)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類などが挙げられる。
上記製造方法1又は2において、重合性樹脂(III)の原料となる前記化合物(D)について説明する。前記化合物(D)が有する官能基(d)としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、酸無水物等が挙げられる。前記単量体(C1)又は(C3)が有する反応性官能基(c1)又は(c3)が水酸基である場合には、官能基(d)としてイソシアネート基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、エポキシ基が挙げられ、反応性官能基(c1)又は(c3)がイソシアネート基である場合には、官能基(d)として水酸基が挙げられ、反応性官能基(c1)又は(c3)がエポキシ基である場合には、官能基(d)としてカルボキシル基、水酸基が挙げられ、反応性官能基(c1)又は(c3)がカルボキシル基である場合には、官能基(d)としてエポキシ基、水酸基が挙げられる。
ここで、上記製造方法2において、前記単量体(C1)と前記単量体(C3)を併用する場合において、これらが有する反応性官能基(c1)と反応性官能基(c3)とが、それぞれ異なる官能基の場合であり、かつ前記反応性官能基(c1)及び(c3)が共通の官能基と反応する場合は、前記反応性官能基(c1)及び(c3)と反応性を有する官能基(d)を有する1種類の化合物(D)を用いることができる。また、反応性官能基(c1)と反応性官能基(c3)とが共通の官能基と反応しない場合は、反応性官能基(c1)と反応性を有する官能基(d)を有する化合物(D)と、反応性官能基(c3)と反応性を有する官能基(d)を有する化合物(D)等の2種以上の化合物(D)を用いることが好ましい。
前記化合物(D)が有する重合性不飽和基は、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、より具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられ、後述する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物での硬化性が良好な点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
前記化合物(D)の具体的としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有する酸無水物などが挙げられる。また、複数の重合性不飽和基を有するものとして、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を用いることもできる。これらの化合物(D)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
上記の化合物(D)の具体的の中でも特に紫外線照射での重合硬化性が好ましい点から、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸が好ましい。
次に、上記で挙げた原料を用いて重合性樹脂(III)のより具体的な製造方法について説明する。
上記製造方法1又は2において、重合性樹脂(III)の中間体である前記重合体(P1)又は(P2)を製造する方法は、製造方法1の場合は、前記化合物(A)、前記単量体(B)、及び前記単量体(C1)、さらに必要に応じてその他の重合性不飽和単量体(C4)を、製造方法2の場合は、前記化合物(A)、前記単量体(B)、前記単量体(C1)、前記単量体(C2)、及び前記単量体(C3)、さらに必要に応じてその他の重合性不飽和単量体(C4)を、有機溶剤中、重合開始剤を使用して重合させる方法が挙げられる。ここで用いる有機溶媒としては、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性、重合性を考慮して適宜選択される。重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が例示できる。さらに必要に応じてラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、チオグリセロール、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤を使用することができる。
製造方法1又は2においては、上記のようにして得られる重合体(P1)又は(P2)に、前記官能基(c1)又は(c3)に対して反応性を有する官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させることにより、本発明のフッ素原子含有シリコーン系重合性樹脂が得られる。
前記重合体(P1)又は(P2)に、前記化合物(D)を反応させる方法は、化合物(D)等が有する重合性不飽和基が重合しない条件で行えば良く、例えば、温度条件を30〜120℃の範囲に調節して反応させることが好ましい。この反応は触媒や重合禁止剤の存在下、必要により有機溶剤の存在下に行うことが好ましい。
例えば、前記官能基(c1)又は(c3)が水酸基であって、前記官能基(d)がイソシアネート基である場合は、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、ウレタン化反応触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛等を使用し、反応温度40〜120℃、特に60〜90℃で反応させる方法が好ましい。また、前記官能基(c1)又は(c3)がエポキシ基であって、前記官能基(d)がカルボキシル基である場合、又は、前記官能基(c1)又は(c3)がカルボキシル基であって、前記官能基(d)がエポキシ基である場合は、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、エステル化反応触媒としてトリエチルアミン等の第3級アミン類、塩化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィン類、塩化テトラブチルホスホニウム等の第4級ホスホニウム類等を使用し、反応温度80〜130℃、特に100〜120℃で反応させることが好ましい。
上記反応で用いられる有機溶媒はケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性を考慮して適宜選択すればよい。
上記のようにして得られる重合性樹脂(III)は、防汚性が優れることから、その数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000の範囲であることが好ましく、1,500〜8,000の範囲であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)が2,000〜50,000の範囲であることが好ましく、3,000〜35,000の範囲であることがより好ましい。これらの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)の測定により求めることができる。
ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はGPCの測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
前記重合性樹脂(III)の配合量は、前記低屈折率剤(I)及び活性エネルギー線硬化性化合物(II)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲が好ましく、0.5〜15質量部の範囲がより好ましく、1〜12質量部の範囲がさらに好ましい。前記重合性樹脂(III)の配合量がこの範囲であれば、防汚性及び耐擦傷性も良好なものとなる。
紫外線等の活性エネルギー線を照射して、本発明の反射防止塗料組成物を硬化させる場合には、本発明の反射防止塗料組成物に重合開始剤(IV)を配合する。この重合開始剤(IV)としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、アゾビスイソブチロニトリル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4’−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4’−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’’−ジエチルイソフタロフェン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、単独でも2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じてアミン化合物又はリン化合物等の光増感剤を添加し、光重合を促進することもできる。
重合開始剤(IV)の配合量は、前記低屈折率剤(I)、活性エネルギー線硬化性化合物(II)及び重合性樹脂(III)の合計100質量部に対して、0.01〜15質量部の範囲であることが好ましく、0.3〜7質量部の範囲であることがより好ましい。
さらに、本発明の反射防止塗料組成物は、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤等の添加剤を配合することができる。
また、本発明の反射防止塗料組成物に塗布適性を付与するため、有機溶剤を添加して粘度調整を行っても構わない。ここで使用し得る有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤;エトキシプロピオネート等のプロピオネート系溶剤;トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン等の窒素化合物系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;カルバミン酸エステル等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
ここで有機溶媒の使用量は、用途や目的とする膜厚や粘度によって異なるが、前記低屈折率剤(I)、活性エネルギー線硬化性化合物(II)及び重合性樹脂(III)の合計に対して、質量基準で、4〜200倍量の範囲であることが好ましい。
本発明の反射防止塗料組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、光、電子線、放射線等の活性エネルギー線が挙げられる。具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。なお、電子線で硬化させる場合には、本発明の反射防止塗料組成物への前記重合開始剤(D)の配合は不要である。
これらの活性エネルギー線の中でも特に紫外線であることが好ましい。また、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射すると塗膜の表面硬化性が向上するため好ましい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、活性エネルギー線にて硬化した後、熱処理を行ってもよい。
本発明の反射防止塗料組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、カーテンコーター、シャワーコーター、スピンコーター、スリットコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法が挙げられる。
本発明の反射防止フィルムは、本発明の反射防止塗料組成物の硬化塗膜を有するものだが、具体的には、下記のような方法で作製することができる。
(1)まず基材にハードコート材を塗布・硬化してハードコート層の塗膜を形成する。
(2)上記のハードコート層に本発明の反射防止塗料組成物を塗布・硬化して低屈折率層の塗膜を形成する。この低屈折率層が反射防止フィルムの最表面となる。
なお、上記ハードコート層と低屈折率層との間に、中屈折率層及び/又は高屈折率層を設けても構わない。
前記ハードコート材は、比較的表面硬度が高い硬化塗膜が得られるものであれば、特に制限なく用いることができるが、前記活性エネルギー線硬化性化合物(II)として例示した活性エネルギー線硬化性単量体(II−1)と活性エネルギー線硬化型樹脂(II−2)とを組み合わせたものが好ましい。
上記のハードコート層の厚さは、0.1〜100μmの範囲にあることが好ましく、1〜30μmの範囲にあることがより好ましく、3〜15μmの範囲にあることがさらに好ましい。ハードコート層の厚さがこの範囲にあれば、基材との密着性、反射防止フィルムの表面硬度が高くなる。また、ハードコート層の屈折率は、特に制限はないが、屈折率が高いと、上記の中屈折率層や高屈折率層を設けなくても、良好な反射防止が可能となる。
本発明の反射防止塗料組成物を塗布・硬化して形成する低屈折率層の厚さは、50〜300nmの範囲にあることが好ましく、50〜150nmの範囲にあることがより好ましく、80〜120nmの範囲にあることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さがこの範囲であれば、反射防止効果を向上することができる。また、低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.45の範囲にあることが好ましく、1.23〜1.42の範囲にあることがより好ましい。低屈折率層の屈折率がこの範囲であれば、反射防止効果を向上することができる。
上記の中屈折率層又は高屈折率層の厚さは、10〜300nmの範囲にあることが好ましく、30〜200nmの範囲にあることがより好ましい。また、中屈折率層又は高屈折率層屈折率は、その上下に存在する低屈折率層及びハードコート層の屈折率によって選択されるが、1.40〜2.00の範囲内で任意に設定することができる。
上記の中屈折率層又は高屈折率層を形成するための材料としては、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン樹脂等の熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化できる樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの樹脂に、高屈折率の無機微粒子を配合することがより好ましい。
前記高屈折率の無機微粒子としては、屈折率が1.65〜2.00であるものが好ましく、例えば、1.90である酸化亜鉛、屈折率が2.3〜2.7であるチタニア、屈折率が1.95であるセリア、屈折率が1.95〜2.00である錫ドープ酸化インジウム、屈折率が1.75〜1.85であるアンチモンドープ酸化錫、屈折率が1.87であるイットリア、屈折率が2.10であるジルコニア等が挙げられる。これらの高屈折率の無機微粒子は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
また、中屈折率層又は高屈折率層を形成する方法としては、本発明の反射防止塗料組成物と同一とすることで、生産性を向上することができるため、本発明の反射防止塗料組成物を紫外線で硬化する場合は、紫外線硬化性組成物が用いて中屈折率層又は高屈折率層を形成することが好ましい。
本発明の反射防止フィルムに用いる基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンー1等のポリオレフィンフィルム;トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系フィルム;ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂フィルム(例えば、(JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体フィルム(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは2種以上貼り合わせて用いても良い。また、これらのフィルムは、シート状であっても良い。フィルム基材の厚さは、20〜500μmが好ましい。
本発明の反射防止フィルムの反射率は、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。例中、「部」、「%」は断りのない限り質量基準である。GPCの測定条件は下記の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
合成例1〔重合性樹脂(III)の調製〕
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン80.2gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃に昇温した。次いで、トリデカフルオロヘキシルエチルメタクリレート12.1gと、下記式(B1−1)で表されるシリコーン基を有する重合性不飽和単量体(以下、「単量体(B1−1)」と略記する。)35gと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート33.1gとを、メチルイソブチルケトン148.8gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート4.8gをメチルイソブチルケトン11.7gに溶解した重合開始剤溶液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を90℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃で9時間攪拌することによって、重合体(P−1)溶液を得た。
次いで、重合禁止剤であるp−メトキシフェノール0.1g、ウレタン化触媒であるオクチル酸錫0.03gを前記重合体(P−1)溶液に仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート19.8gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して8時間攪拌した。IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトンを加え、重合性樹脂(III−1)を20%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(III−1)の分子量をGPCで測定した結果、数平均分子量が4,800、重量平均分子量が13,000、ラジカル重合性不飽和基当量は710g/eq.であった。
合成例2(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン38.8gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら87℃に昇温した。次いで、トリデカフルオロヘキシルエチルメタクリレート12gと、単量体(B1−1)を18gと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート43.8gとを、メチルイソブチルケトン122gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート4.8gをメチルイソブチルケトン11.5gに溶解した重合開始剤溶液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を87℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、87℃で13時間攪拌後、減圧下で溶媒122.8部を留去することにすることによって、重合体(P−2)溶液を得た。
次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.1g、ウレタン化触媒であるオクチル酸錫0.03gを前記重合体(P−2)溶液に仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート26.2gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して9時間攪拌した。IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトン加え、重合性樹脂(III−2)を20%含有するメチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(III−2)の分子量をGPCで測定した結果、数平均分子量5,500、重量平均分子量28,000、ラジカル重合性不飽和基当量は540g/eq.であった。
合成例3(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン80.2gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃に昇温した。次いで、2− [ビス−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルオキシメチル)−メトキシカルボニルアミノ]−エチルメタクリレート12.1gと、単量体(B1−1)35gと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート33.1gとを、メチルイソブチルケトン148.8gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート4.8gをメチルイソブチルケトン11.7gに溶解した重合開始剤溶液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を90℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃で9時間攪拌することによって、重合体(P−3)溶液を得た。
次いで、重合禁止剤であるp−メトキシフェノール0.1g、ウレタン化触媒であるオクチル酸錫0.03gを前記重合体(P−3)溶液に仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート19.8gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して8時間攪拌した。IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトンを加え、重合性樹脂(III−3)を20%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(III−3)の分子量をGPCで測定した結果、数平均分子量が4,800、重量平均分子量が13,000、ラジカル重合性不飽和基当量は710g/eq.であった。
合成例4(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン80.2gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃に昇温した。次いで、トリデカフルオロヘキシルエチルメタクリレート12.1gと、単量体(B1−1)29gと、下記式(B1−2)で表されるシリコーン基を有する重合性不飽和単量体(以下、「単量体(B1−2)」と略記する。)6gと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート33.1gとを、メチルイソブチルケトン148.8gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート4.8gをメチルイソブチルケトン11.7gに溶解した重合開始剤溶液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を90℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃で9時間攪拌することによって、重合体(P−4)溶液を得た。
次いで、重合禁止剤であるp−メトキシフェノール0.1g、ウレタン化触媒であるオクチル酸錫0.03gを前記重合体(P−4)溶液に仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート19.8gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して8時間攪拌した。IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトンを加え、重合性樹脂(III−4)を20%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(III−4)の分子量をGPCで測定した結果、数平均分子量が4,200、重量平均分子量が11,000、ラジカル重合性不飽和基当量は710g/eq.であった。
実施例1
<反射防止塗料組成物の調製>
中空シリカ微粒子(平均粒子径50nm)を20質量%含有するメチルイソブチルケトン分散液15質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート1.6質量部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキュア127」)0.1質量部、溶剤としてメチルイソブチルケトン81.8質量部を混合し溶解させて、反射防止塗料組成物のベース組成物を得た。
上記で得られた反射防止塗料組成物のベース組成物98.5質量部に対し、重合性樹脂(III−1)の20%含有溶液を樹脂分として0.4質量部となるように添加し、均一に混合して本発明の反射防止塗料組成物(1)を調製した。
<反射防止フィルムの調製>
5官能無黄変型ウレタンアクリレート50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部、酢酸ブチル25質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュア184」)5質量部、溶剤としてトルエン54質量部、2−プロパノール28質量部、酢酸エチル28質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル28質量部を混合し溶解させて、ハードコート層用塗料組成物を得た。
得られたハードコート層用塗料組成物をバーコーターNo.13を使用して、厚さ80μmのTACフィルムに塗布した後、60℃の乾燥機に5分間入れて溶剤を揮発させ、紫外線硬化装置(窒素雰囲気下、高圧水銀灯使用、紫外線照射量2kJ/m2)にて硬化させ、膜厚10μmのハードコート層を片面に有するハードコートフィルムを作製した。
反射防止塗料組成物(1)を2g/m2の塗布量となるように、上記で得られたハードコートフィルムのハードコート層上にバーコーターNo.2で塗布した後、60℃の乾燥機に5分間入れて溶剤を揮発させ、紫外線硬化装置(窒素雰囲気下、高圧水銀灯使用、紫外線照射量2kJ/m2)にて硬化させ、膜厚10μmのハードコート層上に膜厚0.1μmの反射防止層を有する反射防止フィルム(1)を作製した。
上記で得られた反射防止フィルムの反射防止塗料組成物の硬化塗膜表面について、下記の外観、耐擦傷性、汚れ拭き取り性の評価を行った。また、反射防止フィルムの反射率を測定した。これらの評価は下記に示すアルカリ処理を行う前と行った後にそれぞれ行った。
[外観の評価]
黒色の板上に上記で得た反射防止フィルムを置き、反射防止塗料組成物の硬化塗膜の白化の有無を目視で観察し、下記の基準で外観を評価した。評価結果を第1表に示す。
○:白化が生じていないもの。
×:白化が生じているもの。
[耐擦傷性の評価]
トライボギア HEIDON 往復磨耗試験機 TYPE:30S(新東科学株式会社製)を用いて、直径27mmの円形の治具にボンスター No,0000(日本スチールウール株式会社製)を取り付けた磨耗試験機(500g/cm2荷重)にて、30往復磨耗させて試験を行った。試験後の塗膜表面に付いた傷の本数を数えて、下記の基準によって耐擦傷性を評価した。
◎:傷の本数が5本未満である。
○:傷の本数が5本以上10本未満である。
△:傷の本数が10本以上50本未満である。
×:傷の本数が50本以上である。
[指紋汚れ拭き取り性の評価]
上記で得た反射防止フィルムの反射防止塗料組成物の硬化塗膜の表面に指で指紋を付着させ、ティッシュペーパーで10往復拭き取ったときの拭き取り具合を目視で観察し、下記の基準で指紋汚れ拭き取り性を評価した。
◎:指紋が完全に拭き取れるもの。
○:指紋の付着跡、又は、拭き取り方向に沿って線状の跡が、付着時に比べわずかに残ったもの。
×:指紋の付着跡、又は、拭き取り方向に沿って線状の跡が、付着時の半分以上の濃さで残ったもの。
[反射率の測定]
5℃正反射測定装置を備えた分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−3100PC」)を用いて反射率の測定を行った。なお、反射率は波長550nm付近で極小値(最低反射率)となったときの値とした。
<硬化塗膜の強アルカリ(ケン化)処理方法>
上記で得られた反射防止フィルムを、70℃に加温した2.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液に1分間浸漬させ、水洗後、100℃で3分間乾燥させて、強アルカリ処理を行った。
実施例2
実施例1で用いた重合性樹脂(III−1)の20%含有溶液に代えて重合性樹脂(III−2)の20%含有溶液を樹脂分として0.4質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
実施例3
実施例1で用いた重合性樹脂(III−1)の20%含有溶液に代えて重合性樹脂(III−3)の20%含有溶液を樹脂分として0.4質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
実施例4
実施例1で用いた重合性樹脂(III−1)の20%含有溶液に代えて重合性樹脂(III−4)の20%含有溶液を樹脂分として0.4質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1で用いた重合性樹脂(III−1)の20%含有溶液に代えて、シリコーンオイル(チッソ株式会社製「サイラプレーンFM−4421」、ポリジメチルシロキサン鎖の両末端に−C3H6OC2H4OHを有するもの)を50質量%含有するメチルイソブチルケトン溶液を0.8質量部(樹脂分として0.4質量部)添加した以外は実施例1と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1で用いた重合性樹脂(III−1)の20%含有溶液に代えて、FM−0721K(チッソ株式会社製のシリコーンオイル。パーフルオロアルキル基、アダマンチル基を有していないが、重合性不飽和基を片末端に有している。)を50質量%含有するメチルイソブチルケトン溶液を0.8質量部(樹脂分として0.4質量部)添加した以外は実施例1と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
比較例3
実施例1で用いた重合性樹脂(III−1)の20%含有溶液に代えて、ジメチルシロキサン鎖を有する4官能アクリレート(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−UV3570」)を50質量%含有するメチルイソブチルケトン溶液を0.8質量部(樹脂分として0.4質量部)添加した以外は実施例1と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
比較例4
実施例1で調製した活性エネルギー線硬化性組成物のベース樹脂組成物に、何も添加せずに実施例1と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。