JP2011031278A - 高強度で耐食性に優れるアルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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- Prevention Of Electric Corrosion (AREA)
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Abstract
【解決手段】Mn:1.3〜1.8%、Si:0.5〜1.2%、Cu:0.5〜1.2%、Fe:0.3〜1.0%、Mg:0.05〜0.30%、Zn:0.1〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる芯材片面に、Siを6.0〜9.0%、Znを0.1〜5.0%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるろう材をクラッドし、他の片面に、Zn:0.1〜3.0%、Mg:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜1.8%、Si:0.1〜1.2%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲材をクラッドする。この結果、耐食性を損なうことなく、高い強度が得られる。
【選択図】なし
Description
Al−Si系のろう材はチューブとフィン、チューブとヘッダープレートなどのろう付接合のために貼り合わされており、ろう付は通常不活性ガス雰囲気中でフッ化物フラックスを用いて行なわれる。犠牲陽極材は熱交換器の使用中に作動流体と接して犠牲陽極効果を発揮し、芯材への腐食や隙間腐食の進行による冷却水洩れを抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。芯材には強度や成形性、ろう付性に優れるAl−Mn−Cu系合金が一般的に使用されている。
また、犠牲材のAl−Mg−Zn系合金にMnを添加して高強度化を図ったブレージングシートも提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
ブレージングシートの強度向上には芯材Cu添加量の増加が有効であるが、芯材のCuはろう付け時に犠牲材やろう材中に拡散する。Cuは少量でも電位を貴にするため、犠牲材やろう材中に拡散するとそれらの電位が貴になり、犠牲陽極効果が阻害されるため、ブレージングシートの耐食性が低下する。また、芯材へのMn、Cu、Si、Mgの添加量増加は粒界腐食を促進するため、芯材まで腐食が進行すると早期に板厚を貫通する腐食が発生する。
犠牲材へのMn,Si添加も強度の向上作用を有するが、電位を貴にするため芯材との電位差を低下させる要因となる。
Mn:1.3〜1.8%
芯材に含まれるMnは、芯材素地中にAl−Mn系金属間化合物として分散し、耐食性を低下させることなく強度を向上させる作用がある。また、Siと同時に添加することで、微細なAl−Mn−Si系金属間化合物が形成され、強度を向上させる作用を有する。その含有量が1.3%未満では十分な効果が得られず、一方、1.8%を超えて含有すると粗大な化合物により鋳造性や圧延などの加工性が低下するので好ましくない。したがって、Mn含有量を1.3〜1.8%に定めた。Mn含有量の一層好ましい下限は1.4%、上限は1.6%である。
芯材に含まれるSiは、Mnと共存させることによりAl−Mn−Si化合物となって素地中に分散、あるいはマトリックスに固溶して強度を向上させる作用を有する。また、Mgと同時に添加することでろう付後に微細な金属間化合物として析出し、時効硬化により著しく強度を向上させる効果を有する。Si含有量が0.5%未満では、上記した効果が十分に得られず、一方、1.2%を超えて含有させると、芯材の融点を低下させ、さらに顕著な粒界腐食が発生するため好ましくない。したがって、Si含有量を0.5〜1.2%に定めた。Si含有量の一層好ましい下限は0.6%、上限は1.0%である。
芯材に含まれるCuは、マトリックスに固溶して強度を向上させ、また芯材の電気化学的性質を貴にし、犠牲材およびろう材との電位差を大きくする作用を有するが、Cu含有量が0.5%未満では上記した効果が十分に得られず、一方、Cuを1.2%以上含有すると、粒界腐食が起こりやすくなり、耐食性が低下するので好ましくない。したがって、Cu含有量を0.5〜1.2%に定めた。Cu含有量の一層好ましい下限は0.6%、上限は1.0%である。
芯材に含まれるFeは、Al−Fe、Al−Fe−Mn、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を生成し、強度を向上させる効果を有する。また、ろう付後の再結晶粒を微細にする効果があり、強度や成形性を向上する。Feはその含有量が0.3%未満では上記した所望の効果が得られず、一方、1.0%を超えて含有すると巨大晶出物が生成し、製造上問題となる。また、芯材の再結晶粒が非常に微細化し、ろうの流動性が低下する。したがって、Fe:0.3%〜1.0%に定めた。Fe含有量の一層好ましい下限は0.4%、上限は0.8%である。
MgはSiと同時に添加されることでろう付後に微細な金属間化合物として析出し、時効硬化により著しく強度が向上する効果を有する。Mgは、その含有量が0.05%未満では上記した所望の効果が得られず、0.30%を越えて含有するとろう付け時にフラックスと反応し、ろう付け性が低下する。したがって、Mg含有量は0.05〜0.30%の範囲に定めた。Mg含有量の一層好ましい下限は0.08%、上限は0.15%である。
Znの添加は電位を卑にするため、芯材の電位を低下させ、Zn添加量を調整することでチューブ材の芯材との電位差を低減し、チューブの優先腐食を抑制する効果を有する。その含有量が0.1%未満では上記した所望の効果が得られず、一方、1.0%を超えて含有すると腐食速度が増大し過ぎて好ましくない。したがって、Zn含有量は0.1〜1.0%に定めた。Znの含有量の一層好ましい下限は0.2%、上限は0.7%である。
Si:6.0〜9.0%
次に、本発明においてろう材中のSi量を6.0〜9.0%に限定した理由を以下に示す。
通常、ろう付熱処理は約600℃の温度で実施されるが、ろう付でチューブ造管を行なう熱交換器の場合、ろう材中のSi量を6.0〜9.0%の範囲に制御すると溶融ろうの供給量が最適となり、さらにろう付温度でろう材の一部が固相(初晶)となりろうの流動性が低下し、ろう付の安定性が向上するため、ろう材中のSi量を6.0〜9.0%に限定した。ろう材中のSi量が6.0%より少ない場合は、溶融ろうの量が不足するため接合部でろうの充填不良が発生し、一方、Si量が9.0%を超えると、ろう付温度でほとんど全てが液相となり過剰な溶融ろうが供給されてチューブにエロージョンが発生する。したがって、ろう材中のSi量を上記範囲に限定した。ろう材Si量の一層好ましい下限は、7.5%、上限は8.5%である。
ろう材中へのZnの添加はろう材およびZn拡散層の電位を卑にするため、犠牲陽極効果によって芯材に腐食が進行するのを防止する。その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、5.0%を超えて含有するとろう材の腐食速度が増大し過ぎて好ましくない。したがって、Zn含有量は0.1〜5.0%に定めた。Znの含有量の一層好ましい範囲は1.0〜3.0%である。
次に、本発明におけるクラッド材の犠牲材成分組成を前記のごとく限定した理由を述べる。
Zn:0.1〜3.0%
Znは、犠牲陽極皮材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果によって芯材に腐食が進行するのを防止する。その含有量が0.1%未満では上記した所望の効果が得られず、一方、3.0%を超えて含有すると腐食速度が増大し過ぎて好ましくない。したがって、Zn含有量は0.1〜3.0%に定めた。Znの含有量の一層好ましい下限は0.5%、上限は2.0%である。
MgはSiと同時に添加されることでろう付後に微細な金属間化合物として析出し、時効硬化により著しく強度を向上させる効果を有する。Mgは、その含有量が0.1%未満では上記した所望の効果が得られず、2.0%を越えて含有するとろう付け時にフラックスと反応し、ろう付け性を低下させるとともに、強度が増大しすぎて圧延性と成形性が低下する。したがって、Mg含有量は0.1〜2.0%の範囲に定めた。Mg含有量の一層好ましい下限は0.2%、上限は1.5%である。
Mnは素地中にAl−Mn系金属間化合物として分散し、耐食性を低下させることなく強度を向上させる作用がある。また、Siと同時に添加することで、微細なAl−Mn−Si系金属間化合物が形成され、さらに強度を向上させる作用を有する。Mnは、その含有量が0.1%未満では上記した所望の効果が得られず、一方、1.8%を超えて含有すると鋳造性が低下するため望ましくない。したがって、Mn含有量を0.1%〜1.8%の範囲に定めた。Mn含有量の一層好ましい下限は0.5%、上限は1.5%である。
Siは、Mnと共存させることによりAl−Mn−Si化合物となって素地中に分散、あるいはマトリックスに固溶して強度を向上させる作用を有する。また、Mgと同時に添加されることでろう付後に微細な金属間化合物として析出し、時効硬化により著しく強度を向上させる効果を有する。Siはその含有量が0.1%未満では上記した十分な効果が得られず、一方、1.2%を超えて含有させると、融点を低下させ、さらに粒界腐食を発生させるため好ましくない。したがって、Si含有量を0.1〜1.2%に定めた。Si含有量の一層好ましい下限は0.5%、上限は1.0%である。
ろう付け熱処理時に犠牲材、芯材、ろう材の各元素はそれぞれ相互拡散するため、耐食性向上のためにはろう付け後にも犠牲材およびろう材と芯材間の電位差を十分確保することが必要となる。ろう付熱処理による元素拡散を考慮し、十分な耐食性が得られる犠牲材およびろう材厚さとして50μm以上が必要となり、50μm未満の場合は芯材との電位差が不十分となり、犠牲材層としての厚さも減少するため、ブレージングシートの耐食性が低下する。
犠牲材およびろう材が犠牲材層として有効に作用し、芯材を十分に防食するには、芯材中央部に対する犠牲材表面およびろう材表面の電位差が共に50mV以上卑であることが必要となる。50mV未満の場合は犠牲陽極効果が不十分で、芯材中に腐食が進行する。
そして、本発明が適用される熱交換器用ブレージングシートは、従来材に比べ、強度および耐食性に優れており、自動車用のラジエータ、ヒーターコアなどのヘッダープレート材に適用でき、熱交換器の寿命向上に大いに貢献し得るものである。
本発明の成分組成を有する、芯材、犠牲陽極材およびろう材を構成するアルミニウム合金を、半連続鋳造により造塊し、必要に応じてそれぞれ均質化処理を実施した後、それぞれ所定厚さまで熱間圧延する。その後、各材料を組み合わせ、熱間圧延によりクラッド材とし、最終的に所定厚さまで冷間圧延する工程を経てクラッド材が製造される。
<電位差測定>:各試験材について、ろう付後の芯材中央部の電位を基準にして、犠牲材表面、ろう材表面の卑となる電位差を測定した。
(比較例18、20、21はブレージングシート単体の耐食性や強度は比較的良好であるが、熱交換器を製造する際に接合不良の発生が問題となる。)
Claims (3)
- 質量%で、Mn:1.3〜1.8%、Si:0.5〜1.2%、Cu:0.5〜1.2%、Fe:0.3〜1.0%、Mg:0.05〜0.30%、Zn:0.1〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金芯材の片面に、質量%で、Siを6.0〜9.0%、Znを0.1〜5.0%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金ろう材を、他の片面に、質量%で、Zn:0.1〜3.0%、Mg:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜1.8%、Si:0.1〜1.2%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金犠牲材をクラッドした高強度で耐食性に優れるアルミニウムブレージングシート。
- 質量%で、Mn:1.3〜1.8%、Si:0.5〜1.2%、Cu:0.5〜1.2%、Fe:0.3〜1.0%、Mg:0.05〜0.30%、Zn:0.1〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金芯材の片面に、質量%で、Siを6.0〜9.0%、Znを0.1〜5.0%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金ろう材を、他の片面に、質量%で、Zn:0.1〜3.0%、Mg:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜1.8%、Si:0.1〜1.2%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金犠牲材をクラッドし、前記犠牲材層および前記ろう材層の厚さがそれぞれ50μm以上であることを特徴とする高強度で耐食性に優れるブレージングシート。
- ろう付け後の前記芯材中央部に対し、前記犠牲材表面および前記ろう材表面の電位差がそれぞれ50mV以上卑であることを特徴とする請求項2記載の高強度で耐食性に優れるブレージングシート。
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