JP2011023244A - プラズマ処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極の位置決めが正確且つ容易にでき、且つ放電空間の形状の変形を抑制したプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】対向配置した複数の被覆電極3によって形成される空間を放電空間4とし、被覆電極3の外面に放熱器6を配設したプラズマ処理装置Aにおいて、被覆電極3及び放熱器6に連通する位置決め用孔Bを穿孔した。この位置決め用孔Bにボルト71を挿通することで、被覆電極3の位置決めが正確且つ容易に実現される。また、ボルト71の頭部71aと放熱器6との間に、コイルばね73を配設した。これにより、頭部71aと放熱器6との間に、コイルばね73の弾性力による遊びを持たせることができ、被覆電極3が変形する余地を持たせることができる。従って、コイルばね73を用いずに被覆電極3などを固定したときと比較して、被覆電極3の変形の不均一さが抑えられ、放電空間4の形状の変形を抑制することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離やエッチング、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、成膜、めっき前処理、コーティング前処理、塗装前処理、各種材料・部品の表面改質などの表面処理に利用されるプラズマ処理装置に関するものであり、特に、精密な接合が要求される電子部品の表面のクリーニングに好適に応用されるものである。
従来、複数の電極を対向配置させて電極間の空間を放電空間として形成し、放電空間にプラズマ生成用ガスを供給すると共に電極間に電圧を印加することによって、放電空間で放電を発生させてプラズマを生成し、放電空間からプラズマ或いはプラズマの活性種を吹き出して被処理物に吹き付けることによって、被処理物に表面改質などプラズマ処理を施すことが行われている(特許文献1参照)。
特開2008−205209号公報
このようなプラズマ処理装置では、対向させる電極の位置決めが不正確であったり、プラズマ放電による発熱で電極が変形して放電空間の形状が変形したりすると、所望の性能が得られなくなったり、放電の停止や異常放電、異常な放電集中による電極の破損といった問題が起こるおそれがあった。
またこのようなプラズマ処理装置の電極は、その使用時には、プラズマ放電の熱によって熱膨張するなどして、ある程度変形するものである。しかし、対向させた電極をねじ止めなどの固定手段で固着すると、電極のうちで固定手段の周辺箇所は、固定手段によって固着されているために熱変形することができないことになる。よって、1枚の電極の中で、固定手段周辺とそれ以外の場所とで変形量に差が生じることになり、放電空間の形状が変形しやすくなるという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、電極の位置決めが正確且つ容易にでき、且つ放電空間の形状の変形を抑制したプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の電極をスペーサ部を挟んで対向配置して、これら電極とスペーサ部に囲まれる空間を放電空間とし、この放電空間にプラズマ生成用ガスを供給すると共に前記電極間に電圧を印加することによって、この放電空間内に放電を発生させてプラズマを生成するプラズマ処理装置において、前記電極を冷却するための放熱器が、前記複数の電極とスペーサ部とから構成される放電容器の外側に、前記電極に対向して配置されると共に、前記電極、前記スペーサ部、及び前記放熱器には、互いに連通する位置決め用孔が前記電極の対向方向に沿って穿孔されており、前記位置決め用孔には、この位置決め用孔の穿孔方向に沿った弾性力により前記電極、前記スペーサ部、及び前記放熱器を互いに圧着させる、取付部材が貫設されていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、電極、スペーサ部、及び放熱器に位置決め用孔を穿孔し、この位置決め用孔に取付部材を貫設することで、電極の位置決めが正確且つ容易に実現される。また、電極、スペーサ部、及び放熱器は、弾性力を有する取付部材によって互いに圧着されているので、これらの圧着には、弾性力による遊びを持たせることができる。すなわち、位置決め用孔周辺でも、遊びの分だけ電極が変形(熱膨張など)する余地があることになる。従って、弾性力を有さない取付部材によって電極などを固定したときと比較して、電極の変形の不均一さが抑えられ、放電空間の形状の変形を抑制することができる。
請求項2の発明は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記取付部材は、前記位置決め用孔に貫設されるねじと、軸心に前記ねじが挿通されて前記ねじの頭部と前記放熱器との間に配設されるコイルばねとからなることを特徴とする。
請求項2の発明によれば、電極、スペーサ部、及び放熱器に穿孔された位置決め用孔にねじを貫設することで、電極の位置決めが正確且つ容易に実現される。また、ねじの頭部と放熱器との間にコイルばねを介在させ、圧着時にコイルばねの弾性力に遊びを残しておくことで、電極などが変形するときに、位置決め用孔周辺の電極も遊びの分だけ変形することができる。よって、電極の変形の不均一さが抑えられ、放電空間の形状の変形を抑制することができる。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のプラズマ処理装置において、前記電極は、絶縁基板に導電体を埋設してなる被覆電極であることを特徴とする。
請求項3の発明によれば、電極を被覆電極とすることで、放電時に絶縁破壊が起こりにくくなり、放電の安定性が向上する。
請求項4の発明は、請求項3記載のプラズマ処理装置において、前記被覆電極は、複数枚の絶縁シート材の間に前記導電体を設けて一体成形することによって形成されることを特徴とする。
請求項4の発明によれば、絶縁シート材から絶縁基板を形成し、絶縁シート材の間に導電体を挟んで一体成形することで、均一な被覆電極を容易に形成することができ、プラズマ放電を空間的に均一に発生させることができる。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか記載のプラズマ処理装置において、前記スペーサ部は前記電極と一体的に成形されており、前記放電空間は、対向して配置され対となっている前記電極のうちで、少なくともいずれか一方の電極の表面に形成された凹部によりなることを特徴とする。
請求項5の発明によれば、対向する電極のうちで、少なくともいずれか一方の電極の表面に凹部を形成して放電空間とすることで、スペーサ部を電極と一体的に成形することができ、装置の作成が容易になる。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか記載のプラズマ処理装置において、前記放熱器は、前記放電容器の外面に圧着される接触部と、この接触部に突設された放熱フィンとを備えていることを特徴とする。
請求項6の発明によれば、放熱器に放熱フィンを備えることで、熱放射によって電極を冷却し、電極の熱変形による放電空間の形状の変形を抑制することができる。
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか記載のプラズマ処理装置において、前記放熱器を冷却する冷却手段を備えてなることを特徴とする。
請求項7の発明によれば、放熱器を冷却する冷却手段を備えることで、請求項6の発明よりもさらに効率よく電極を冷却し、電極の熱変形による放電空間の形状の変形を抑制することができる。
本発明は、電極の位置決めが正確且つ容易にでき、且つ放電空間の形状の変形を抑制したプラズマ処理装置を提供することができる。
本発明の実施形態1の横断面図である。 同上の斜視図である。 同上の縦断面図である。 同上の被覆電極の製造を示す断面図である。 同上の一部を示す断面図で、(a)は中点接地を用いないもの、(b)は中点接地を用いたものである。 本発明の実施形態2の横断面図である。 本発明の実施形態3の横断面図である。
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。下記説明中での上下の方向は、図2中の上下方向に対応している。
図1、図2に本実施形態のプラズマ処理装置Aの一例を示す。このプラズマ処理装置Aは、互いに対向させた複数の被覆電極3からなる放電容器30、電源5、放熱器6を備えて形成される。
被覆電極3は、略平板状の絶縁基板(多層基板)1の内部に導電層2を埋め込んで形成する。絶縁基板1は高融点の絶縁材料(誘電体材料)のセラミック焼結体で形成するものであって、例えば、アルミナ、ジルコニア、ムライト、窒化アルミニウムなどのような高耐熱性、高強度のセラミックス焼結体で形成することができるが、これらの材料に限定されるものではない。特に、これらの中でも高強度で安価なアルミナ等で形成することが好ましい。また、チタニア、チタン酸バリウムなどの高誘電材料を用いることもできる。絶縁基板1の両側端部には、図1に示すように、スペーサ部31が絶縁基板1の片面側に突出して設けられており、被覆電極3はそれぞれ断面コ字状となっている。
導電層2は絶縁基板1の内部に層状に形成するものであって、銅、タングステン、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの導電性の金属材料を用いて形成することができるが、特に、銅、タングステン等で形成することが好ましい。
上記の絶縁基板1と導電層2の材質は、被覆電極3の作製時やプラズマ処理時にかかる熱負荷による変形量の相違による破損を防止するために、線熱膨張率の差が小さいもの同士を適宜選択して用いることが好ましい。
被覆電極3は、例えば、図4のように、絶縁シート材11と導電体21とを用いて形成することができる。絶縁シート材11は、アルミナなどの上記絶縁材料の粉体にバインダー等を混合し、必要に応じて更に各種の添加剤を加えて混合し、この混合材料をシート状に成形することで得ることができる。導電体21は、銅などの上記導電性の金属箔や金属板などを用いることができる。また、導電体21は、上記の絶縁シート材11の表面に金属材料を印刷やめっき、蒸着などで膜状に成形してもよい。
そして、複数枚の絶縁シート材11、11…を重ね合わせると共に絶縁シート材11の間に導電体21を配置して重ね合わせ、これを焼結により一体成形することによって、絶縁シート材11に含まれるセラミックの粉体の焼結体からなる絶縁基板1を形成すると共にこの絶縁基板1の内部に導電体21からなる導電層2を層状に形成し、被覆電極3を得ることができる。尚、上記の焼結の条件は、セラミック粉末の種類や絶縁基板1の厚みなどに応じて適宜設定する。
本実施形態において、絶縁基板1の厚みは0.1〜10mm、導電層2の厚みは0.1μm〜3mmとすることができるが、これに限定されるものではない。
そして、上記のようにして形成した複数(一対)の被覆電極3、3を水平方向で対向させて配置し、被覆電極3、3の対向する面の間の空間を放電空間4として形成する。ここで、図1に示すように対向する被覆電極3、3の導電層2、2の間隔Lは、0.1〜5mmにするのが好ましい。この間隔Lが上記の範囲から外れると、放電が不安定になったり、放電が発生しなくなったり、放電させるために大きな電圧が必要となったりして好ましくない。また、被覆電極3、3は各絶縁基板1、1の対向するスペーサ部31、31の先端面同士を接合するものであり、これにより、放電空間4の側方開口部分が閉塞されるものである。
本実施形態において、電源5はプラズマ生成用ガスGを活性化させるための電圧を発生させるものであって、その電圧は、交番波形(交流波形)、パルス波形、或いはこれらの波形を重畳させた波形など、適宜の波形のものとすることができる。また、導電層2、2間に印加する電圧の大きさや周波数は、導電層2、2間の距離や導電層2を覆う部分の絶縁基板1の厚さや絶縁基板1の材質、放電の安定性などを考慮して適宜設定すればよい。
また、本実施形態において、導電層2、2は中点接地するのが好ましく、これにより、両導電層2、2とも接地に対して浮いた状態で電圧を印加することができる。従って、被処理物Hと活性化されたプラズマ生成用ガス(プラズマジェット)Gとの電位差が小さくなってアークの発生を防止することができ、アークによる被処理物Hの損傷を防ぐことができるものである。すなわち、例えば、図5(a)に示すように、一方の導電層2を電源5に接続して13kVに、他方の導電層2を接地して0kVとして導電層2、2間の電位差Vpを13kVにした場合、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物Hとの間に少なくとも数kVの電位差が生じ、これによるアークArが発生するおそれがある。一方、図5(b)に示すように、中点接地を用いた場合は、一方の導電層2の電位を+6.5kVに、他方の導電層2の電位を−6.5kVにして導電層2、2間の電位差Vpを13kVにすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物Hとの間の電位差がほとんど0Vになるものである。つまり、中点接地を用いない場合に比べて、中点接地を用いた場合は導電層2、2間に同じ電位差が生じるにもかかわらず、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物Hとの間の電位差を小さくすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGからの被処理物Hに対するアークの発生を防止することができるものである。
本実施形態では、被覆電極3、3からなる放電容器30の外面に、放熱器6が配設される。この放熱器6は、被覆電極3と対向する接触部61に複数本の放熱フィン62が突設されており、放電空間4でのプラズマ生成用ガスG及び被覆電極3を空冷式で冷却するものである。すなわち、放電空間4は放電を発生させている時に高温となるが、この熱がプラズマ生成用ガスGから被覆電極3に伝達した後、放熱器6に吸収されて放散される。これにより、絶縁基板1の温度上昇を抑制することができる。そして、放熱器6により絶縁基板1の温度上昇を抑制すると、絶縁基板1が熱変形を生じて割れ等の破損が発生することを防止することができる。また、絶縁基板1の一部が過剰に加熱されると、加熱された部分においてプラズマ発生密度が高くなるなど、プラズマ発生が不均一になるおそれがあるが、絶縁基板1の温度上昇を抑制することでプラズマ発生の不均一化を防止し、均一なプラズマ処理を維持することができるものである。
上記の放熱器6は、熱伝導性の高い材質にて形成することが好ましく、例えば銅、ステンレス、アルミニウム、窒化アルミニウム(AlN)等にて形成することができる。特に、放熱器6を窒化アルミニウム等の絶縁物で形成することによって、導電層2、2間に印加する高周波の電圧の影響を受けにくくなり、これにより、導電層2、2間に投入される電力の損失がほとんど無くなって効率的な放電を行うことができ、しかも、高熱伝導であるために冷却効率を高くすることができるものである。
本実施形態では、電極3のスペーサ部31と放熱器6の接触部61とに、図1に示すように、互いに連通する位置決め用孔Bが複数設けられている。そして、この位置決め用孔Bには、一方の放熱器6の外側からボルト71が挿通されており、このボルト71の先端は、他方の放熱器6の外側に配設されたナット72に螺合される。また、ボルト71の頭部71aと前記一方の放熱器6の接触部61との間には、コイルばね73が配設されており、電極3及び放熱器6は、このコイルばね73の弾性力によって互いに圧着されている。なお、ナット72の代わりに、前記他方の放熱器6の接触部61にねじ穴を形成して、このねじ穴にボルト71の先端を螺合する構成にしてもよい。また、ボルト71とナット72に代えて、放電容器30と接触部61を合わせた厚さよりも少しだけ長い棒状であって、一方の先端にボルト71と同様の頭部を有し、他方の先端が軸方向に沿って複数に分割された、係止部材を用いてもよい。この係止部材は位置決め用孔Bに挿通され、係止部材の頭部と放熱器6の接触部61との間には、上記ボルト71の場合と同様にコイルばね73が配設される。そして、係止部材の前記他方の先端を径方向外方へと開いて、接触部61の外面に係止させるものである。
本実施形態において、温度調整手段8として電気ヒータなどの加熱手段を設けてもよい。温度調整手段8は、二次電子が放出されやすい温度に絶縁基板1を温度調整するためのものである。すなわち、活性化されたプラズマ生成用ガスGに含まれる電子やイオンが絶縁基板1に作用することによって、絶縁基板1から二次電子が放出されるが、この二次電子が放出されやすい温度に絶縁基板1を温度調整手段8により温度調整する。絶縁基板1はその温度が高いほど二次電子が放出されやすいが、熱膨張による絶縁基板1の損傷を考慮すると、絶縁基板1の温度は100℃程度に抑えて温度調整するのが適当である。そこで、上記の温度調整手段8により絶縁基板1を40〜100℃に温度調整するのが好ましい。このように絶縁基板1の温度を室温よりも高い温度にすることによって、プラズマ処理装置Aの使用開始時において絶縁基板1の表面温度を室温よりも上昇させることができ、このために室温の場合よりも絶縁基板1から二次電子が放出されやすくなり、絶縁基板1から放出された二次電子によりプラズマ生成密度を増加させることができ、放電を容易に開始させることができて始動性が向上すると共に、被処理物Hの洗浄能力や改質能力などのプラズマ処理能力を向上することができるものである。
温度調整手段8は絶縁基板1や放熱器6に内蔵させたり、これらの外面に設けたりすることができ、熱電対等の温度測定手段による絶縁基板1の温度の測定結果などに基づいて、必要に応じて、その動作・停止を制御することができる。
そして、上記のような本実施形態のプラズマ処理装置Aは、大気圧又はその近傍の圧力下(100〜300kPa)でプラズマ処理を行うものであって、具体的には以下のようにして処理を行う。
まず、ガス流通口41から放電空間4内にプラズマ生成用ガスGを流入させて供給する。プラズマ生成用ガスGとしては、希ガス、窒素、酸素、空気をそれぞれ単独で用いたりあるいは複数種を混合したりして用いることができる。空気としては、好ましくは水分を殆ど含まない乾燥空気を用いることができる。希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどを使用することができるが、放電の安定性や経済性を考慮するとアルゴンを用いることが好ましい。また、希ガスや窒素に酸素、空気等の反応ガスを混合して使用することもできる。反応ガスの種類は処理の内容によって任意に選択することができる。例えば、被処理物Hの表面に存在する有機物のクリーニング、レジストの剥離、有機フィルムのエッチング、LCDの表面クリーニング、ガラス板の表面クリーニングなどを行う場合には、酸素、空気、CO、NOなどの酸化性ガスを用いるのが好ましい。また、反応ガスとしてCF、SF、NFなどのフッ素系ガスも適宜用いることができ、シリコンやレジストなどのエッチング、アッシングを行う場合にはこのフッ素系ガスを用いるのが効果的である。また、金属酸化物の還元を行う場合は、水素、アンモニアなどの還元性ガスを用いることができる。
上記のようにプラズマ生成用ガスGを供給するにあたっては、ガスボンベ、ガス配管、混合器、圧力弁等で構成される適宜のガス供給手段(図示せず)を設けることができる。例えば、プラズマ生成用ガスGに含有される各ガス成分が封入された各ガスボンベをガス配管にて混合器に接続し、混合器をガス流通口41に接続して、各ガスボンベから供給されるガス成分を混合器にて所定の割合で混合し、圧力弁により所望の圧力で放電空間4に導出されるようにする。また、プラズマ生成用ガスGは、圧力損失の影響を受けずに、単位時間当たりに所定の流量を供給できる圧力で放電空間4に供給するのが好ましく、その圧力が大気圧あるいはその近傍の圧力(好ましくは100〜300kPa)となるように供給することが好ましい。
上記のプラズマ生成用ガスGは、ガス流通口41から放電空間4内に流入するが、ここで、対向配置した被覆電極3、3の導電層2、2間には電源5により電圧を印加しているので、これにより、放電空間4で放電が発生すると共にこの放電によりプラズマ生成用ガスGが活性化する。すなわち、電源5により導電層2、2間に電圧を印加しているため、放電空間4には電界が発生し、この電界の発生により大気圧下あるいはその近傍の圧力下で放電空間4に気体放電が発生すると共にこの気体放電によりプラズマ生成用ガスGが活性化(プラズマ化)されて放電空間4に活性種(イオンやラジカル等)が生成されるものである。
放電空間4でプラズマ生成用ガスGを活性化した後、この活性化したプラズマ生成用ガスGをプラズマPとして放電空間4の下面開口42よりジェット状に連続的に吹き出して被処理物Hの表面の一部又は全部に吹き付ける。このとき、放電空間4の下面開口42は被覆電極3の幅方向(図3の紙面に直交する方向)に細長く形成されているので、活性化したプラズマ生成用ガスGを幅広で吹き出すことができる。そして、活性化したプラズマ生成用ガスGに含まれる活性種が被処理物Hの表面に作用することによって、被処理物Hのクリーニングなどの表面処理を行うことができる。ここで、放電空間4の下面開口42よりも下方に被処理物Hを配置するにあたって、ローラー、ベルトコンベア等の搬送装置で被処理物Hを搬送するようにしてもよい。このとき、搬送装置で複数の被処理物Hを放電空間4の下方に順次搬送することによって、複数の被処理物Hを連続的にプラズマ処理することもできる。さらに、プラズマ処理装置Aを多関節ロボット等に保持することにより、複雑な立体形状の被処理物Hの表面処理をすることも可能である。また、放電空間4の下面開口42と被処理物Hの表面との間の距離は、プラズマ生成用ガスGのガス流の流速、プラズマ生成用ガスGの種類、被処理物Hや表面処理(プラズマ処理)の内容等によって適宜設定可能であるが、例えば、1〜30mmに設定することができる。
本実施形態は、種々の被処理物Hに対するプラズマ処理に適用することができるが、特に液晶用ガラス材、プラズマディスプレイ用ガラス材、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ガラス材等の、種々のフラットパネルディスプレイ用ガラス材や、プリント配線基板、ポリイミドフィルム等の各種樹脂フィルムなどの表面処理に適用することができる。このようなガラス材に対する表面処理を行う場合には、このガラス材に、ITO(インジウム・チン・オキサイド)からなる透明電極や、TFT(薄膜トランジスタ)液晶を設けたもの、或いはCF(カラーフィルタ)を設けたものなども、表面処理に供することができる。また、樹脂フィルムに対して表面処理を施す場合には、いわゆるロール・トゥ・ロール方式で搬送されている樹脂フィルムに対して、連続的に表面処理を施すことができる。
そして本実施形態では、被覆電極3及び放熱器6の接触部61に、互いに連通する位置決め用孔Bを穿孔し、この位置決め用孔Bにボルト71を貫設することにより、対向する被覆電極3、3の位置決めを正確且つ容易に実現することができる。
また本実施形態は、ボルト71の頭部71aと放熱器6の接触部61との間にコイルばね73を挟むことで、被覆電極3、3を互いに圧着しながらも、コイルばね73の弾性力に遊びを持たせることができる。よって被覆電極3は、位置決め用孔Bの周辺でも、コイルばね73の遊びの分だけ熱変形する余地があることになる。従って本実施形態では、被覆電極3の中で、位置決め用孔Bの周辺とそれ以外の場所との変形量の不均一さを抑制することができる。よって、放電空間4の形状が変形しにくくなり、被覆電極3の破損などのおそれが小さくなるものである。
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態を、図6を参照して説明する。本実施形態は、放熱フィン62の周囲に、冷却手段として冷却ファン63を設けており、その他の構成は上記実施形態1と同様である。上記実施形態1と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態は、放熱フィン62に対向するように、冷却ファン63を設けている。本実施形態では、冷却ファン63を稼働させることで、放熱フィン62のみによって被覆電極3を冷却するよりも効率よく被覆電極3を冷却することができ、被覆電極3の破損などのおそれを小さくすることができる。なお、この冷却ファン63は、熱電対等の温度測定手段による絶縁基板1の温度の測定結果などに基づいて、必要に応じてその動作・停止を制御することができるようになっている。
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態を、図7を参照して説明する。本実施形態では、接触部61と放熱フィン62の代わりに冷却ジャケット64で放熱器6を形成しており、その他の構成は上記実施形態1と同様である。上記実施形態1と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の冷却ジャケット64にも、図7に示すように、被覆電極3のスペーサ部31に連通する位置決め用孔Bが穿孔されている。そして実施形態1と同様に、ボルト71とナット72とコイルばね73とによって、被覆電極3及び冷却ジャケット64を互いに圧着している。
上記の冷却ジャケット64は、実施形態1の放熱フィン62と同様の材質で板状に形成し、その内部に冷却ガスなどの冷媒を流通させて循環させるための循環路64aを設けている。そして、冷却ジャケット64は被覆電極3の外面に圧着されており、放電時に循環路64aに冷媒を流通させることにより、空冷式で被覆電極3の絶縁基板1を冷却し、絶縁基板1の温度上昇を抑制するものである。これにより、被覆電極3の破損などのおそれを小さくすることができる。
また本実施形態では、実施形態1と同様に電気ヒータ等の温度調整手段8を備えても良いが、放熱器6自身を温度調整手段8として用いても良い。すなわち、温度調整した冷媒を循環路64aに流通させることにより、放熱器6(温度調整手段8)によって、絶縁基板1の温度を二次電子が放出されやすい温度に調整することができる。この場合も実施形態1と同様に、絶縁基板1の温度は100℃程度に抑えて温度調整するのが適当であり、絶縁基板1を40〜100℃に温度調整するのが好ましい。
A プラズマ処理装置
G プラズマ生成用ガス
3 被覆電極
31 スペーサ部
4 放電空間
6 放熱器
71 ボルト
72 ナット
73 コイルばね

Claims (7)

  1. 複数の電極をスペーサ部を挟んで対向配置して、これら電極とスペーサ部に囲まれる空間を放電空間とし、この放電空間にプラズマ生成用ガスを供給すると共に前記電極間に電圧を印加することによって、この放電空間内に放電を発生させてプラズマを生成するプラズマ処理装置において、
    前記電極を冷却するための放熱器が、前記複数の電極とスペーサ部とから構成される放電容器の外側に、前記電極に対向して配置されると共に、前記電極、前記スペーサ部、及び前記放熱器には、互いに連通する位置決め用孔が前記電極の対向方向に沿って穿孔されており、
    前記位置決め用孔には、この位置決め用孔の穿孔方向に沿った弾性力により前記電極、前記スペーサ部、及び前記放熱器を互いに圧着させる、取付部材が貫設されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. 前記取付部材は、前記位置決め用孔に貫設されるねじと、軸心に前記ねじが挿通されて前記ねじの頭部と前記放熱器との間に配設されるコイルばねとからなることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
  3. 前記電極は、絶縁基板に導電体を埋設してなる被覆電極であることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。
  4. 前記被覆電極は、複数枚の絶縁シート材の間に前記導電体を設けて一体成形することによって形成されることを特徴とする請求項3記載のプラズマ処理装置。
  5. 前記スペーサ部は前記電極と一体的に成形されており、前記放電空間は、対向して配置され対となっている前記電極のうちで、少なくともいずれか一方の電極の表面に形成された凹部によりなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のプラズマ処理装置。
  6. 前記放熱器は、前記放電容器の外面に圧着される接触部と、この接触部に突設された放熱フィンとを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のプラズマ処理装置。
  7. 前記放熱器を冷却する冷却手段を備えてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のプラズマ処理装置。
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