まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたパラレルハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。図2は、実施例1の制御装置に用いられるナビゲーションシステム23の構成を説明するためのブロック図である。以下、図1および図2に基づいて、駆動系および制御系の構成を説明する。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、無段変速機CVTと、ファイナルギヤFGと、左駆動輪LTと、右駆動輪RTと、を備えている。この駆動系では、エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMGが駆動源となる。
実施例1のハイブリッド駆動系は、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロール発進モード(以下、「WSCモード」という。)等の走行モードを有する。
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、モータアシスト走行モード・走行発電モード・エンジン走行モードの何れかにより走行するモードである。前記「WSCモード」は、「HEVモード」からのP、N→Dセレクト発進時、または、「EVモード」や「HEVモード」からのDレンジ発進時等において、モータ/ジェネレータMGを回転数制御することで第2クラッチCL2のスリップ締結状態を維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら発進するモードである。なお、「WSC」とは「Wet Start clutch」の略である。
前記エンジンEngは、希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとの間の位置に介装される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプーリングによる付勢力にて常時締結(ノーマルクローズ)の乾式クラッチが用いられ、エンジンEng〜モータ/ジェネレータMG間の締結/半締結(スリップ締結)/開放を行なう。この第1クラッチCL1が完全締結状態ならモータトルク+エンジントルクが第2クラッチCL2へと伝達され、開放状態ならモータトルクのみが、第2クラッチCL2へと伝達される。なお、半締結/開放の制御は、油圧アクチュエータに対するストローク制御にて行われる。
前記モータ/ジェネレータMGは、交流同期モータ構造であり、発進時や走行時に駆動トルク制御や回転数制御を行うと共に、制動時や減速時に回生ブレーキ制御による車両運動エネルギーのバッテリー9への回収を行なうものである。
前記第2クラッチCL2は、ノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキであり、クラッチ油圧(押付力)に応じて伝達トルク(クラッチトルク容量)が発生する。この第2クラッチCL2は、無段変速機CVTおよびファイナルギヤFGを介し、エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG(第1クラッチCL1が締結されている場合)から出力されたトルクを左右駆動輪LT、RTへと伝達する。
なお、第2クラッチCL2としては、図1に示すように、独立のクラッチをモータ/ジェネレータMGと無段変速機CVTの間の位置に設定する以外に、無段変速機CVTと左右駆動輪LT、RTの間の位置に設定しても良い。
前記無段変速機CVTは、変速比を無段階に設定しつつそれらを連続的に変えることのできる機であり、実施例1では変速機入力軸inputに接続したプライマリプーリPrPと、変速機出力軸outputに接続したセカンダリプーリSePと、プライマリプーリPrPとセカンダリプーリSePとの間に架け渡されたプーリベルトBEと、を有するベルト式無段変速機である。
プライマリプーリPrPは、変速機入力軸inputに固定された固定シーブと、変速機入力軸inputに摺動自在に支持された可動シーブと、その可動シーブを移動させる第1アクチュエータ(図示せず)と、を有している。セカンダリプーリSePは、変速機出力軸outputに固定された固定シーブと、変速機出力軸outputに摺動自在に支持された可動シーブと、その可動シーブを移動させる第2アクチュエータ(図示せず)と、を有している。
プーリベルトBEは、プライマリプーリPrPとセカンダリプーリSePとの間に巻き掛けられた金属ベルトであり、それぞれの固定シーブと可動シーブとの間に挟持される。実施例1では、固定シーブと可動シーブとのそれぞれに接する傾斜面を両側にもった多数のエレメントを重ね、薄板を層状に重ねると共に円環状に形成したリング2組を、エレメントの両側に挟み込ませることで構成された、いわゆるVDT型ベルトを使用している。
無段変速機CVTは、プライマリプーリPrPのプーリ幅(両シーブ間の間隔)を変化させて各プーリ(シーブ)に対するプーリベルトBEの接触円を変化させるとともに、それに連携させてセカンダリプーリSePのプーリ幅を変化させて各プーリ(シーブ)に対するプーリベルトBEの接触円を変化させることにより、連続的に変速する。ここで、プライマリプーリPrPのプーリ幅が広くなると共に、セカンダリプーリSePのプーリ幅が狭くなると変速比がLow側に変化する。また、プライマリプーリPrPのプーリ幅が狭くなると共に、セカンダリプーリSePのプーリ幅が広くなると変速比がHigh側に変化する。無段変速機CVTは、図示は略すが、第1アクチュエータのデューティソレノイドおよび第2アクチュエータのデューティソレノイドに、後述する変速機コントローラ15により印加される電圧のデューティ比が各々制御されることにより、プライマリプーリPrPおよびセカンダリプーリSePのプーリ幅(変速比)やその変更速度が調整されつつ制御され、変速機入力軸inputの動力を無段変速して変速機出力軸outputに出力する。すなわち、変速機コントローラ15は、無段変速機CVTの変速比やその変更速度を自由に調節することができる。なお、無段変速機としては、上記した無段変速機CVT以外に、トロイダル型CVTであってもよく、実施例1に限定されるものではない。また、無段変速機に代えて、複数の遊星歯車から構成され有段階の変速段を得る機である自動変速機ATを用いてもよい。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、第2クラッチ入力回転数センサ6(=モータ回転数センサ)と、第2クラッチ出力回転数センサ7(=無段変速機入力側回転数センサ)と、インバータ8と、バッテリー9と、アクセルセンサ(アクセルポジションセンサ)10と、エンジン回転数センサ11と、油温センサ(CVT油温センサ)12と、ストロークセンサ(ストローク位置センサ)13と、統合コントローラ14と、変速機コントローラ15と、クラッチコントローラ16と、エンジンコントローラ17と、モータコントローラ18と、バッテリーコントローラ19と、ブレーキセンサ20と、車速センサ21と、無段変速機出力側回転数センサ22と、ナビゲーションシステム23と、を備えている。この各センサ(6、7、10、11、12、13、20、21、22)は、車両情報取得手段として機能する。
前記インバータ8は、直流/交流の変換を行い、モータ/ジェネレータMGの駆動電流を生成する高電圧インバータである。バッテリー9は、モータ/ジェネレータMGからの回生エネルギーを、インバータ8を介して蓄積する高電圧バッテリーである。
前記統合コントローラ14は、アクセル開度、および車速(変速機出力回転数に同期した値)から走行制御のための目標駆動トルクを演算する。そして、その結果に基づき各アクチュエータ(モータ/ジェネレータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、無段変速機CVT)に対する指令値を演算し、各コントローラ15、16、17、18、19へと送信する。ここで、統合コントローラ14は、「HEVモード」である場合、演算した目標駆動トルクをエンジンEngとモータ/ジェネレータMGとに適宜分配し(駆動配分手段)、それに応じて演算した指令値を各アクチュエータに送信する。また、統合コントローラ14は、記憶部14aを有しており、演算した目標駆動トルク、指令値等や、取得した情報等を、記憶部14aに適宜格納し、記憶部14aから適宜取り出す。
前記変速機コントローラ15は、統合コントローラ14からの変速指令を達成するように変速制御を行なう。この変速機コントローラ15には、変速機入力軸inputに取り付けられた第2クラッチ出力回転数センサ7からの回転数Niと、変速機出力軸outputに取り付けられた無段変速機出力側回転数センサ22からの回転数Noと、が入力される。変速機コントローラ15は、統合コントローラ14からの変速指令(制御信号)に基づいて、無段変速機CVTの変速比を制御すべく前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータ(図示せず)へと駆動信号を出力する(変速制御手段)。また、変速機コントローラ15は、必要に応じて無段変速機CVTの運転状態に関するデータを統合コントローラ14に出力する。このため、変速機コントローラ15は、情報取得手段として機能する。
前記クラッチコントローラ16は、第2クラッチ入力回転数センサ6と第2クラッチ出力回転数センサ7と油温センサ12からのセンサ情報を入力すると共に、統合コントローラ14からの第1クラッチ油圧指令値と第2クラッチ油圧指令値に対して、クラッチ油圧(電流)指令値を実現するようにソレノイドバルブの電流を制御する(クラッチ制御手段)。
前記エンジンコントローラ17は、エンジン回転数センサ11からのセンサ情報を入力すると共に、統合コントローラ14からのエンジントルク指令値を達成するようにエンジントルク制御を行なう。
前記モータコントローラ18は、統合コントローラ14からのモータトルク指令値やモータ回転数指令値を達成するようにモータ/ジェネレータMGの制御を行なう。
前記バッテリーコントローラ19は、バッテリー9の充電状態(SOC)を管理し、その情報を統合コントローラ14へと送信する。このため、バッテリーコントローラ19は、情報取得手段として機能する。
ナビゲーションシステム23は、図2に示すように、ナビゲーションコントローラ30と、通信装置31と、位置検出装置32と、地図データ入力装置33と、操作装置34と、外部メモリ35と、表示装置36と、音声入出力装置37とを有する。ナビゲーションコントローラ30は、ナビゲーションシステム23を統括的に制御するものであり、統合コントローラ14との間において、CAN通信等の通信手段により双方向の情報のやり取りが可能とされている。通信装置31は、外部の情報配信センタ38(VICSセンタ38aやサーバ38b等)との通信を行うものであり、VICSセンタ38aやサーバ38b等から交通情報や道路情報を受信する路車間通信装置で構成されている。位置検出装置32は、GPS受信機により現在地および走行経路を検出する衛星航法装置や、ジャイロコンパスなどにより現在地および走行経路を検出する自立航法装置で構成されている。地図データ入力装置33は、地図データや各種の情報を記録した外部メモリ35から地図データ等を入力するものである。操作装置34は、利用者から各種指示を入力するための操作スイッチ、リモートコントロール端末、表示装置36の画面上のタッチパネル等で構成されている。表示装置36は、地図表示画面等の各種表示を行う表示パネル等で構成されている。音声入出力装置37は、各種のガイド音声等を出力したり、利用者からの音声による指示等を入力したりする。
このナビゲーションシステム23は、ナビゲーションコントローラ30の制御下で、目的地までの最適経路等を探索し、その探索した経路(以下、誘導経路という)に沿って乗員を誘導する。また、ナビゲーションシステム23(ナビゲーションコントローラ30)は、道路環境検出機能を備えている。この道路環境検出機能とは、誘導経路の道路曲率半径、道路勾配、交差点・トンネル・踏切等の有無、制限速度等の規制情報、市街路・山岳路等の地域情報、および交通情報等を検出するものである。ナビゲーションシステム23は、ナビゲーションコントローラ30の制御下で、検出した道路環境情報、現在地の情報等を統合コントローラ14へと送信する。このため、ナビゲーションシステム23は、情報取得手段として機能する。
図3は、統合コントローラ14にて実行される本実施例の充放電スケジュールの設定処理内容を示すフローチャートである。図4は、実施例1の統合コントローラ14での充放電スケジュールの設定処理を行う際に用いられる必要駆動力の算出マップを示す図であり、平均速度に対する必要駆動力の関係を示すグラフである。図5は、実際に走行することにより得られる必要駆動力の算出マップの一例を示す図4と同様の図であり、実際の平均速度に対する実際に要求された駆動力の関係を示すグラフである。図6は、充放電スケジュールの設定処理を行う際に用いられる必要出力の算出マップを示す図であり、平均速度に対する必要出力の関係を示すグラフである。図7は、統合コントローラ14にて実行される充放電スケジュールに応じた走行制御における低負荷区間での走行制御処理内容を示すフローチャートである。図8は、実施例1のエンジン間欠走行制御の処理内容を概念的に示す説明図である。
この図3のフローチャートは、ナビゲーションシステム23に対して目的地が設定され、ナビゲーションシステム23が誘導経路を設定すると実行される。このフローチャートでは、基本的に、次のように、ナビゲーションシステム23により探索された誘導経路を進行することを前提として、燃料消費量を最少とするためのエネルギーの蓄積と消費スケジューリング、すなわちエンジンEngとモータ/ジェネレータMGとの運転スケジュールの設定を行う。
先ず、この誘導経路を進行することを前提とする、燃料消費量を最少にするためのエネルギーの蓄積と消費スケジューリングの基本的な方法について説明する。このスケジューリング方法は、基本的に、エンジンEngの出力トルクに対する燃料消費量で見た効率である運転効率の低い区間をモータにより走行する「EVモード」での走行制御とするものである。一般にエンジンEngは、低速(低い出力回転)になるほど運転効率が低下する。このため、実施例1では、目的地までの誘導経路上において、エンジンEngにより走行した場合に運転効率が最も低くなる区間を判定し(以下、判定区間という)、その判定区間を「EVモード」での走行制御とするとともにその分の電力量をバッテリー9に充電すべく他の区間で「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御とした場合の燃料消費量と、当該判定区間を「HEVモード」のエンジン走行モードでの走行制御とした場合の燃料消費量と、を比較し、前者よりも後者が少ない場合に当該判定区間を「EVモード」での走行制御を行う低負荷区間に設定する。すなわち、エンジンEngからの出力トルクにより走行(「HEVモード」のエンジン走行モード)すると運転効率が低くなる区間をモータ/ジェネレータMGからの出力トルクにより走行(「EVモード」での走行制御)し、その分の電力量をエンジンEngからの出力トルクにより走行しても運転効率が高くなる区間で発電するようにする。これにより、誘導経路を走行するために要する全体での燃料消費量を効果的に低減することができる。なお、実施例1では、エンジンEngにより走行した場合に運転効率が最も低くなる区間を判定区間として、上記した判断基準を満たした場合に当該判定区間を「EVモード」での走行制御を行う低負荷区間に設定しているが、この判定区間は、エンジンEngにより走行した場合に運転効率が他の区間よりも低い区間であればよく、また、その判定区間において、上記した判断基準を満たした場合に低負荷区間に設定すればよく、実施例1に限定されるものではない。
以下、図3のフローチャートの各ステップについて図4ないし図6を用いて説明する。
ステップS1では、誘導経路を取得して、ステップS2へ進む。このステップS1では、ナビゲーションシステム23に目的地が入力されることにより、その目的地に対して探索された誘導経路の情報をナビゲーションシステム23から取得し、記憶部14aに格納する。なお、例えば、通勤路等のように繰り返し走行する頻度が高い経路である場合、通行する時刻等に関連付けて経路を記憶部14aに格納(記憶)し、その記憶された経路を記録時刻と略同じ時刻に走行する場合には記録経路から目的地を推定し、乗員による目的地の設定が為されなくても自動的に目的地とその誘導経路を設定するようにしてもよい。また、ステップS1では、ステップS7での誘導経路が変更されたとの判定に続いて実行される場合、その変更された新たな誘導経路を取得することとなる。
ステップS2では、ステップS1での誘導経路の取得に続き、道路環境情報を取得して、ステップS3へ進む。このステップS2では、ナビゲーションシステム23から送信された情報に基づき、車両が現在走行(停止も含む)している位置(地点)(以下、現在地情報という)、探索された誘導経路の道路曲率半径、道路勾配、交差点・トンネル・踏切等の有無、制限速度等の規制情報、市街路・山岳路等の地域情報、および交通情報等を取得し、記憶部14aに格納する。この交通情報とは、例えば、VICSセンタ38aにより提供される渋滞情報や交通規制情報等をいう。
ステップS3では、ステップS2での道路環境情報の取得、あるいは、ステップS8での誘導経路上での道路状況が変化したとの判定に続き、誘導経路上の予測運転パターンを演算して、ステップS4へ進む。このステップS3では、次のように、予測運転パターン、すなわち予測走行速度パターンを演算する。先ず、ステップS2で取得した道路環境情報に基づいて、誘導経路を複数の区間に分割する。この分割は、誘導経路において、信号機、交差点、カーブ、勾配変化地点、道路種別変化地点、渋滞開始地点、渋滞終了地点、高速道路の料金所、合流地点、車線減少地点等の、停止と発進(減速と加速(速度変化))が予測される地点を区分点として区分する。次に、それらの区間毎に、発進(加速)地点からの加速度、走行速度、および停止(減速終了)地点までの減速度を演算し、それらからなる走行速度パターンを作成する。この走行速度は、法定速度を渋滞情報や走行制限情報に基づいて補正することにより設定し、加減速度は、一般的な運転者の平均値を用いればよい。なお、走行速度および加減速度は、過去の運転履歴情報を取得可能な構成として、その運転履歴情報に基づいて設定するものとすることもできる。
ステップS4では、ステップS3での誘導経路上の予測運転パターンの演算に続き、誘導経路の走行に必要な出力である予測必要出力を演算して、ステップS5へ進む。このステップS4では、次のように、誘導経路の走行に必要な出力を演算する。先ず、ステップS3において演算した各区間での予測走行速度パターンに基づいて、各区間での予測平均車速Vm(km/h)を演算し、この予測平均車速Vmから各区間での単位距離辺りの予測必要駆動力Tm(kJ/km)を演算する。この予測必要駆動力Tmの演算は、図4に示すように、予め設定された平均車速Vmに対する必要駆動力Tmの関係を示す算出マップ(テーブル)に基づいて行う。この算出マップにおける必要駆動力Tmの構成要素は、走行抵抗による損失、加速抵抗による損失、トランスミッション(T/M)損失、モータ/ジェネレータMGを駆動する際の電気損失、空調装置等の補機消費損失である。このため、予測必要駆動力Tmを演算する際、空調装置の駆動状況や実際の補機での消費電力量に応じて、上記した算出マップを切り替えたり補正したりしてもよい。また、予め設定した算出マップに替えて、図5に示すように、走行履歴を用いて学習した値を反映した算出マップを用いて予測必要駆動力Tmを演算してもよい。なお、図5では、走行履歴に基づく各値を三角の記号で示している。次に、ステップS2で取得した道路環境情報に基づいて、各区間の平均勾配θ(°)を求める。次に、各区間での平均勾配抵抗Rs(N)を演算する。この平均勾配抵抗Rsは、車両の重量をW(kg)とし、重力加速度をg(m/sec2)とすると、Rs=W・g・sinθで演算することができる。これらに基づいて、区間毎に予測必要駆動力Tmに平均勾配抵抗Rsを加算した値に当該区間の予測平均車速Vmを乗算することにより、各区間での走行に必要な出力(仕事率)である予測必要出力(予測平均パワー)Pm(W)を演算する(Pm=(Tm+Rs)・Vm)。この各区間での予測必要出力Pmは、正の値であるとき予測平均車速Vmでの走行に必要な駆動力を示し、負の値であるとき予測平均車速Vmとするための制動力を示している(図9参照)。なお、上記したように、予測平均車速Vmに対する予測必要駆動力Tm(図4および図5参照)の関係を示す算出マップを用いて予測必要駆動力Tmを演算し、その予測必要駆動力Tmから予測必要出力Pmを演算することに換えて、図6に示すように、予測平均車速Vmに対する予測必要駆動力Tmの関係を示す算出マップを用いて予測必要出力Pmを演算してもよい。
ステップS5では、ステップS4での予測必要出力の演算に続き、目的地までの誘導経路の走行における充放電スケジュールを設定して、ステップS6へ進む。このステップS5では、ステップS4で演算した各区間での予測必要出力Pmに基づいて、誘導経路での充放電スケジュール、すなわち誘導経路を走行する際の区間毎の走行制御の種別(「EVモード」あるいは「HEVモード」(走行発電モード、エンジン走行モードあるいはアシスト走行モード))を設定する。この充放電スケジュールの設定は、以下のように行う。先ず、「EVモード」での走行制御を行う低負荷区間を設定する。この設定は、ステップS4での演算結果に基づいて、エンジンEngからの出力トルクにより走行(「HEVモード」のエンジン走行モード)すると運転効率(エンジンEngの運転効率)が最も低くなる区間すなわち予測必要出力Pmが正の値(駆動力)であって最も低い値の区間を判定し(以下、判定区間という)、その判定区間を「EVモード」での走行制御とするとともにその分の電力量をバッテリー9に充電すべく他の区間で「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御とした場合の燃料消費量よりも、当該判定区間を「HEVモード」のエンジン走行モードでの走行制御とした場合の燃料消費量の方が少ない、とういう条件を満たすと、当該判定区間を低負荷区間として設定することにより行う。なお、この低負荷区間は、同様の方法により複数の区間を設定するものであってもよい。また、この低負荷区間は、上述したように、エンジンEngからの出力トルクにより走行すると運転効率が他の区間よりも低くなる区間を判定区間として、その判定区間が上記条件を満たす場合に設定するものであってもよい。次に、この低負荷区間で必要となる電力量、すなわちこの低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきるための必要な予測電力量Eを演算する。この予測電力量Eは、区間距離をLmとして、区間距離Lmに予測必要出力Pmを乗算することにより演算する(E=Pm・Lm)。次に、誘導経路の各区間のうち、設定した低負荷区間よりも前(現在地から目的地へと向かう方向で見て)の区間であって、「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御を行う高負荷区間を設定する。この設定は、ステップS4での演算結果に基づいて低負荷区間よりも前の各区間の中から、予測必要出力Pmが最も高い区間を選定し、その予測必要出力Pmに加えてモータ/ジェネレータMGで発電させるための充電トルクを確保することのできるエンジン出力トルクを、エンジンEngを発電効率の高い運転点(出力トルクに対して燃料消費量が最小となる最適燃費線上に定められる)で駆動することにより得ることができる、という条件を満たすと当該区間を高負荷区間として設定し、条件を満たさない場合低負荷区間よりも前の各区間の中から次に予測必要出力Pmが高い区間を選定して同様の判断を経て高負荷区間として設定する、ことにより行う。ここで、予測必要出力Pmの高い区間を優先的に高負荷区間として設定するのは、負荷が高いほど燃料利用効率の高い運転点で発電を行うことができることによる。なお、この高負荷区間は、低負荷区間と同様に、予測必要出力Pmが最も高い区間を優先的に設定することに限定する必要はなく、上記した条件を満たすものであればよい。次に、この高負荷区間での走行発電モードによる推定充電量を演算し、当該推定充電量が、バッテリー9のSOCが上限値を超えない範囲内で、上記した予測電力量Eを超えたか否かを判断し、超えていない場合には同様の方法によりその他にも高負荷区間を設定する。換言すると、上記充電によりバッテリー9が満充電となる(SOCの上限値に到達する)、もしくは推定充電量が予測電力量Eとなるように、少なくとも1つ以上の高負荷区間を適宜設定する。このとき、実施例1では、ステップS4での演算結果に基づいて、予測必要出力Pmが負の値(制動力)となる区間における回生による発電量を考慮して、高負荷区間を設定する。ここで、上限値とは、バッテリー9を保護する観点から設定された最大の充電状態(SOC)である。この高負荷区間での推定充電量は、エンジンEngを発電効率の高い運転点で駆動することにより得られるエンジン出力トルクから、当該区間での予測必要出力Pmを減算したトルク値で、モータ/ジェネレータMGを回転駆動させることによる当該モータ/ジェネレータMGからの発電エネルギーでインバータ8を介してバッテリー9に蓄積される電力量を演算することにより、得ることができる。次に、誘導経路の各区間のうち、低負荷区間あるいは高負荷区間として設定されなかった残りの各区間を基本的にエンジンEngの駆動により走行する通常走行制御区間として設定する。以上により、誘導経路を走行する際の区間毎の走行制御の種別を設定することができ、目的地までの誘導経路の走行における充放電スケジュールを設定することができる。この設定した充放電スケジュールは、記憶部14aに格納する。なお、このステップS5では、低負荷区間での予測電力量Eが、誘導経路におけるそれ以前の区間で得ることのできる推定充電量(それ以前の区間において上記した条件を満たす総ての区間を高負荷区間として得られる推定充電量)を上回る場合であっても、当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることができるものとして、上記した充放電スケジュールの設定を行う。このような場合としては、例えば、低負荷区間での予測電力量Eがバッテリー9に蓄積可能な電力量を超えることや、誘導経路における低負荷区間以前の区間が短いこと、等がある。
ステップS6では、ステップS5での充放電スケジュールの設定、あるいは、ステップS9での目的地に到達していないとの判定、に続き、道路状況情報を取得して、ステップS9へ進む。このステップS6では、ナビゲーションシステム23から送信された情報に基づき、道路状況情報すなわち探索された誘導経路における現在地情報および交通情報等を取得し、記憶部14aに格納する。
ステップS7では、ステップS6での道路状況情報の取得に続き、誘導経路が変更されたか否かを判定し、Yesの場合はステップS1へ戻り、Noの場合はステップS8へ進む。このステップS7では、ナビゲーションシステム23から送信された情報に基づいて新たに誘導経路が設定されたか否かを判定する。ステップS7では、経路変更されていない場合、設定されている充放電スケジュールに沿って誘導経路での走行制御を実行すべくステップS8へと進み、経路変更された場合、新たな誘導経路に適合する充放電スケジュールを設定すべくステップS1へと戻る。この新たな誘導経路が設定される場面としては、例えば、新たな目的地が設定されたことや、自車両の走行位置が設定されている誘導経路から逸脱することにより目的地を変更することなく経路を変更する必要が生じたことや、交通規制情報に基づき目的地を変更することなく経路を変更する必要が生じたこと、等があげられる。
ステップS8では、ステップS7での誘導経路は変更されていないとの判定に続き、誘導経路上の道路状況が変化したか否かを判定し、Yesの場合はステップS3へ戻り、Noの場合はステップS9へ進む。このステップS8では、ナビゲーションシステム23から送信された情報に基づいて、現時点(判断時点)での誘導経路上の道路状況が、充放電スケジュールを設定した時点における誘導経路上の道路状況から変化したことを認識すると、道路状況が変化したものと判断する。ステップS8では、道路状況が変化していない場合、設定されている充放電スケジュールに沿って誘導経路での走行制御を実行すべくステップS9へと進み、道路状況が変化した場合、変化した道路状況に適合する充放電スケジュールを設定すべくステップS3へと戻る。
ステップS9では、ステップS8での誘導経路上の道路状況が変化してはいないとの判定に続き、目的地に到達したか否かを判定し、Yesの場合はこのフローチャート(充放電スケジュールの設定処理)を終了し、Noの場合はステップS6へ戻る。このステップS9では、目的地に到達するまで充放電スケジュールの設定処理を行うべく、ナビゲーションシステム23から送信された情報に基づいて、自車両が目的地(その近傍)に到達したか否かを判断し、到達していない場合ステップS6へと戻り、到達するとこのフローチャートを終了する。
統合コントローラ14は、上記したように設定された充放電スケジュールに応じた走行制御を実行すべく、ナビゲーションシステム23から送信された道路状況情報に基づいて誘導経路における自車両の現在地を認識し、設定した充放電スケジュール(ステップS5)に応じて走行制御の種別を切り換える。すなわち、統合コントローラ14は、低負荷区間では基本的に「EVモード」での走行制御を行い、高負荷区間では「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御を行い、残りの各区間では基本的にエンジンEngの駆動により走行する通常走行制御を行う。ここで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置では、低負荷区間において、基本的には「EVモード」での走行制御を行うが、所定の条件下ではエンジン間欠走行制御を行う(図7のフローチャートおよび図8参照)。この低負荷区間における走行制御処理内容を、図7のフローチャートに示す。
次に、統合コントローラ14にて実行される充放電スケジュールに応じた走行制御における低負荷区間での走行制御処理内容を示す図7のフローチャートの各ステップについて説明する。このフローチャートは、上記した演算処理フローチャート(図3参照)において演算した充放電スケジュール(ステップS5)を実行する際、すなわち図3のフローチャートにおいてステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS6が繰り返されている間に行われる走行制御での低負荷区間において、「EVモード」での走行制御と、後述するエンジン間欠走行制御と、の切り換えを適宜行うものである。この図7のフローチャートは、演算された充放電スケジュールにおいて設定された各低負荷区間に対してそこへと進入してから走りきるまでの間(低負荷区間を通過する間)の走行制御の切り換えのために実行される。以下の説明では、このフローチャートの実行における通過の対象となる低負荷区間を、当該低負荷区間という。
ステップS21では、充電量が十分であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS22へ進み、Noの場合はステップS23へ進む。このステップS21では、現時点における充電量で当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることができるか否かを判断するものであり、実施例1では、現時点(判断時点)のバッテリー9のSOC状態の電力量換算値と当該低負荷区間での予測電力量E(ステップS5参照)とを比較することにより、充電量が十分であるか否かを判定する。また、実施例1では、当該低負荷区間をある程度(距離または時間)走行した後は、実際の走行負荷すなわち駆動源(エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG)に要求された駆動力に基づいて当該低負荷区間での必要電力量を演算する。
ステップS22では、ステップS21での充電量が十分であるとの判定に続き、「EVモード」での走行制御を実行して、ステップS24へ進む。このステップS22では、「EVモード」での走行制御を行うこととなるが、充電量が十分であると判定されているとともに低負荷区間であることから低い走行負荷なので、モータ/ジェネレータMGからの出力トルクにより十分に走行することができる。
ステップS23では、ステップS21での充電量が十分ではないとの判定に続き、エンジン間欠走行制御を実行して、ステップS24へ進む。このステップS23では、低負荷区間であることからモータ/ジェネレータMGからの出力トルクで十分に走行することは可能であるが、充電量が十分ではないことから、エンジン間欠走行制御を実行する。このエンジン間欠走行制御とは、燃料消費量の増加を防止しかつ充電量を維持しつつ低負荷区間の走行を可能とするための走行制御であり、主に渋滞区間である低負荷区間内のゴーストップ(低速で加減速が繰り返される)の走行パターンにおいて、加速時および動き出し時の負荷の高いところではエンジンEngを走行および充電に使い、減速時および停止時の負荷の低いところではエンジンEngを止める等の制御を行うものである。実施例1のエンジン間欠走行制御では、図8に示すように、アクセルペダルがONとされる(踏み込まれる)またはブレーキペダルがOFFとされる(踏み込みが解除される)とエンジンEngを起動し、アクセルペダルがOFFとされる(踏み込みが解除される)とエンジンEngを停止する。すなわち、実施例1のエンジン間欠走行制御では、「EVモード」での走行制御と、「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御と、が繰り返され、エンジンEngが間欠的に起動される。
ステップS24では、ステップS22での「EVモード」での走行制御の実行、あるいは、ステップS23でのエンジン間欠走行制御の実行、に続き、低負荷区間が終了したか否かを判定し、Yesの場合はこのフローチャートを終了し、Noの場合はステップS21へ戻る。このステップS24では、自車両が低負荷区間の終了地点に到達するまで低負荷区間における走行制御処理を行うべく、ナビゲーションシステム23から送信された情報に基づいて、自車両が低負荷区間の終了地点に到達したか否かを判断し、到達していない場合ステップS21へと戻り、到達するとこのフローチャートを終了する。
このため、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、自車両が低負荷区間に入ると、バッテリー9の充電量で当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることが可能となるまでは、エンジン間欠走行制御を実行するとともに、走りきることが可能となる(充電量が十分である)と判断すると、その判断時点での自車両の位置から低負荷区間の終了地点に至るまで「EVモード」での走行制御を実行する。
次に、作用を説明する。
図9は、充放電スケジュールの設定の基本的な制御を説明するために、道路状況、予測平均速度、平均勾配、予測平均出力の各特性を示すタイムチャートである。なお、図9の平均勾配の特性の個所に示す破線は、誘導経路における勾配のイメージを示している。図10は、充放電スケジュールに沿う走行制御における本発明の特徴的な制御を説明するために、実際の走行速度、バッテリー9の状態(SOC)、燃料消費量の各特性を示すタイムチャートである。この図9は、出発地(目的地を設定した時点での現在地)から誘導経路上を通って目的地に至る間に単一の低負荷区間が設定された例である。図10は、低負荷区間の直前の区間が高負荷区間に設定され、当該低負荷区間の一部においてエンジン間欠走行制御が実行された例である。以下、図9および図10を用いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を説明する。
本発明のモード切換制御では、上述したように、誘導経路におけるエンジンEngからの出力トルクにより走行(「HEVモード」のエンジン走行モード)すると運転効率が低くなる区間をモータ/ジェネレータMGからの出力トルクにより走行(「EVモード」)し、その分の電力量をエンジンEngからの出力トルクにより走行しても運転効率が高くなる区間で発電するように充放電スケジュールを設定し、その充放電スケジュールに応じてモード切換の制御処理を行う。
すなわち、設定された目的地までの誘導経路において、充放電スケジュールを設定すべく、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進むことにより、判断時点における道路状況を考慮しつつ誘導経路での充放電スケジュール、すなわち現在地から目的地までの間を走行する際の区間毎の走行制御の種別(「EVモード」あるいは「HEVモード」(走行発電モード、エンジン走行モードあるいはアシスト走行モード))を設定する。
図9のタイムチャートの例では、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進み、誘導経路とその道路環境情報とを取得してステップS3へと進み、ステップS3にて道路環境情報に基づいて現在地から目的地までの誘導経路が6つの区間(符号S1〜S6参照)に区分され、各区間における予測運転パターン(予測平均車速Vm)が演算されてステップS4へと進み、ステップS4にて予測平均車速Vmと平均勾配θとに基づいて各区間での走行のための予測必要出力Pmが演算されてステップS5へと進み、ステップS5にて予測必要出力Pmの正の値で最も低い区間である区間S4が低負荷区間に設定されるとともに、それ以前の区間(符号S1〜S3参照)において予測必要出力Pmの最も高い区間である区間S1が高負荷区間に設定され、残りの各区間が通常走行制御区間として設定される。これにより、目的地までの誘導経路の走行における充放電スケジュールが設定される。ここで、区間S1と区間S2とは、同様の道路状況(市街地混雑)であるが、平均勾配θの差異により2つに分割されたものであり、平均勾配θに応じて平均出力Pwも異なっている。同様に、道路状況が渋滞であっても、緩やかな上り勾配である区間S4では、平均出力Pwが正の低い値となっており、緩やかな下り勾配である区間S5では、平均出力Pwが負の値となっている。この後、この設定された充放電スケジュールの実行処理が行われる。
すなわち、図3のフローチャートにおいて、ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9へと進み、ステップS9→ステップS6へと戻る流れが目的地に到達するまで繰り返している間、ナビゲーションシステム23からの誘導経路における自車両の現在地に基づいて、充放電スケジュールに応じて走行制御の種別が適宜切り換えられる。このとき、誘導経路が新たに設定された場合には、図3のフローチャートにおいて、ステップS7→ステップS1へと戻って新たな誘導経路に適合する充放電スケジュールの設定が行われ、誘導経路は変わってないが道路状況に変化が生じた場合には、ステップS8→ステップS3へと戻って変化した道路状況に適合する充放電スケジュールの設定が行われることとなり、その新たな充放電スケジュールに応じて走行制御の種別が適宜切り換えられる。これらの充放電スケジュールに応じた走行制御の種別の切り換えの際、低負荷区間では、エンジン間欠走行制御と「EVモード」での走行制御とが適宜切り換えられる。
すなわち、実施例1では、自車両が低負荷区間に入ると、その時点でのバッテリー9の充電量で見て、当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることが可能となるまでは、エンジン間欠走行制御を実行するとともに、走りきることが可能となると、その判断時点での自車両の位置から低負荷区間の終了地点に至るまで「EVモード」での走行制御を実行する。
ここで、図10のタイムチャートでは、低負荷区間(時刻t1〜時刻t2)の手前での高負荷区間(時刻t0〜時刻t1)において、バッテリー9が満充電(充電状態(SOC)が上限値)とされており、満充電であっても当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御では走りきることができない場面が示されている。この図10のタイムチャートの例では、自車両が低負荷区間に入ると(時刻t1)、図7のフローチャートにおいて、ステップS21にて充電量が十分であるか否かが判定され、十分ではないことからステップS23へと進むことによるエンジン間欠走行制御が行われ、充電量が十分と判定される、すなわちバッテリー9の充電量で当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることができるものとなるまではステップS24→ステップS21へと戻りステップS23へと進む流れが繰り返される。この低負荷区間のうちの時刻t1〜時刻t2の区間では、エンジン間欠走行制御であることから、バッテリー9の充電状態が維持される(図10の例では満充電)とともに、間欠的に行われる「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御の間だけの燃料消費量とすることができる。
その後、ステップS21にて充電量が十分であると判定されると(時刻t2)、ステップS22へと進んで「EVモード」での走行制御へと切り換えられ、当該低負荷区間の終了地点に至るまではステップS24→ステップS21へと戻りステップS22へと進む流れが繰り返され、低負荷区間の終了地点に至る(時刻t3)と、図7のフローチャートによる低負荷区間における走行制御処理が終了する。この低負荷区間のうちの時刻t2〜時刻t3の区間では、バッテリー9の充電量を使いきって「EVモード」での走行制御を行うことから、燃料消費量を0としつつ低負荷区間の終了地点に到達することができる。
上記したように、低負荷区間では、誘導経路上のそれ以前の高負荷区間において充電されたバッテリー9の充電量を使って走行することから、燃料利用効率の高い運転点で発電を行うことができるとともに、運転効率の低くなる区間をモータ/ジェネレータMGからの出力トルクにより走行することができる。このため、燃料利用効率を向上させることができる。
また、低負荷区間が、誘導経路上のそれ以前の高負荷区間において充電されたバッテリー9の充電量では「EVモード」での走行制御で走りきることができない場合、「EVモード」での走行制御で走りきることが可能となるまでは、エンジン間欠走行制御を実行するとともに、走りきることが可能となると低負荷区間の終了地点に至るまで「EVモード」での走行制御を実行することから、燃料消費量を0としつつバッテリー9の充電量を使い切って走行することができるとともに、その残りの低負荷区間での燃料消費量を抑制しつつ走行することができる。これは、次のことによる。例えば、エンジン間欠走行制御を除くと同様の制御を行うハイブリッド車両である場合、低負荷区間に入ると、先ず「EVモード」での走行制御を実行し、バッテリー9の充電量を使い切った後の残りの低負荷区間は、「HEVモード」の走行発電モードもしくはエンジン走行モードが実行されることとなるが、低負荷区間であることから、運転効率が低くなってしまう。これに対し、本発明では、残りの低負荷区間をエンジン間欠走行制御により走行することから、バッテリー9の充電状態を維持しつつ、間欠的に行われる「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御の間だけの燃料消費量とすることができる。すなわち、エンジン間欠走行制御では、加速時および動き出し時の負荷の高いところではエンジンEngを走行および充電に使い、減速時および停止時の負荷の低いところではエンジンEngを止める等の制御を行うものであって、全体で見ると、「HEVモード」の走行発電モードで発電しつつ走行し、その発電量で「EVモード」での走行制御を行うことを、繰り返すものであることから、「HEVモード」の走行発電モードもしくはエンジン走行モードでの走行制御を行うことに比べて、燃料消費量を低減することができる。
さらに、エンジン間欠走行制御では、アクセルペダルがONとされるまたはブレーキペダルがOFFとされるとエンジンEngを起動し、アクセルペダルがOFFとされるとエンジンEngを停止することから、図10の時刻t1〜時刻t2に示すように停止しない(走行速度が0ではない)場合であっても、「EVモード」での走行制御と「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御とが切り換えられてエンジンEngが間欠的に起動されるので、一般的なエンジン車両との比較では勿論、例えば、停止を条件としてエンジンを停止するアイドリングストップ機構を搭載している車両と比較しても、燃料消費量を低減することができる。
ついで、エンジン間欠走行制御では、アクセルペダルがONとされるまたはブレーキペダルがOFFとされるとエンジンEngを起動し、アクセルペダルがOFFとされるとエンジンEngを停止することから、乗員に違和感を覚えさせることなく、加速時および動き出し時の負荷の高いところではエンジンEngを起動させるとともに減速時および停止時の負荷の低いところではエンジンEngを止めることができ、「EVモード」での走行制御と、「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御と、を繰り返すことができる。このように繰り返されるのは、低負荷区間が、駆動源に要求される出力が極めて低い区間であることから、平坦路もしくは極めて小さな上り勾配であって平均車速が低い状態である(例えば、激しい渋滞が生じている区間や極めて低速の制限がある区間等)ので、そのような低い車速を維持するために頻繁に(すなわち低負荷区間の一部という比較的短い区間を走行している中においてという意味での短時間で)ゴーストップもしくは加減速が、繰り返されることによる。なお、エンジン間欠走行制御は、低負荷区間の一部において、「HEVモード」の走行発電モードで発電しつつ走行しその発電量で「EVモード」での走行制御を行うべく、「EVモード」での走行制御と「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御とを切り換えるものであればよく、この切り換えの条件は実施例1に限定されるものではない。
高負荷区間で発電するものであることから、燃料利用効率の高い運転点でエンジンEngを駆動させて高い速度で走行しつつ発電を行うことができる。このとき、高負荷区間であることから、エンジンEngが始動されて燃料利用効率の高い運転点で駆動されても、乗員が違和感を覚えることはない。
発電を行う高負荷区間が、実際の道路環境に応じた回生による発電量を考慮して設定されていることから、「HEVモード」の走行発電モードによる発電量(充電量)を、必要最低限なものとすることができ、燃料利用効率をより向上させることができる。
統合コントローラ14にて実行される充放電スケジュールに応じた走行制御における低負荷区間での走行制御処理である図7のフローチャートにおいて、ステップS21で充電量が十分であるか否かの判定を行う際、当該低負荷区間をある程度(距離または時間)走行した後は、当該低負荷区間での必要電力量を実際の走行負荷すなわち駆動源(エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG)に要求された駆動力に基づいて演算していることから、より現実の燃料消費量に適合させることができ、より精度よく走行制御を行うことができる。
よって、燃料消費量が最少となるようにエンジンとモータとの運転スケジュールを設定するものであって、その運転スケジュールに応じた走行制御での燃料利用効率をより向上させることができる。
次に、実施例2のハイブリッド車両の制御装置について説明する。実施例2のハイブリッド車両の制御装置は、実施例1のハイブリッド車両の制御装置とは、統合コントローラ14にて実行される充放電スケジュールに応じた走行制御における低負荷区間での走行制御処理内容のみが異なる例である。この実施例2のハイブリッド車両の制御装置は、その基本的な構成は実施例1のハイブリッド車両の制御装置と同様であるので、同一機能部分および同一処理内容には実施例1と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここで、図11は、実施例2の統合コントローラ14にて実行される充放電スケジュールに応じた走行制御における低負荷区間での走行制御処理内容を示すフローチャートであり、図12は、充放電スケジュールに沿う走行制御における実施例2の特徴的な制御を説明するために、道路状況、予測平均速度の各特性を示すタイムチャートである。
先ず、図11のフローチャートの各ステップについて説明する。このフローチャートは、図7のフローチャートと同様に、実施例1に示した演算処理フローチャート(図3参照)において演算した充放電スケジュール(ステップS5)を実行する際、すなわち図3のフローチャートにおいてステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS6が繰り返されている間に行われる走行制御での低負荷区間において、「EVモード」での走行制御と、エンジン間欠走行制御と、の切り換えを適宜行うものである。すなわち、図11のフローチャートは、演算された充放電スケジュールにおいて設定された各低負荷区間に対してそこへと進入してから走りきるまでの間(低負荷区間を通過する間)の走行制御の切り換えのために実行される。以下の説明では、このフローチャートの実行における通過の対象となる低負荷区間を、当該低負荷区間という。
ステップS31では、充電量が十分であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS32へ戻り、Noの場合はステップS33へ進む。このステップS31では、現時点における充電量で当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることができるか否かを判断するものであり、実施例1では、現時点(判断時点)のバッテリー9のSOC状態の電力量換算値と当該低負荷区間での予測電力量E(ステップS5参照)とを比較することにより、充電量が十分であるか否かを判定する。また、実施例2でも、当該低負荷区間をある程度(距離または時間)走行した後は、実際の走行負荷すなわち駆動源(エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG)に要求された駆動力に基づいて当該低負荷区間での必要電力量を演算する。
ステップS32では、ステップS31での充電量が十分であるとの判定、あるいは、ステップS34での当該低負荷区間が悪化傾向ではないとの判定、に続き、「EVモード」での走行制御を実行して、ステップS34へ進む。このステップS32では、バッテリー9の電力を最大限利用して当該低負荷区間を走行すべく「EVモード」での走行制御を行う。
ステップS33では、ステップS31での充電量が十分ではないとの判定に続き、バッテリー9の充電状態(SOC)が下限値であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS35へ進み、Noの場合はステップS34へ進む。このステップS33では、バッテリー9の充電状態(SOC)が下限値(正確には下限値以下となることを防止すべく設定された安全値)に到達したか否かを判断する。
ステップS34では、ステップS33でのバッテリー9の充電状態(SOC)が下限値ではないとの判定に続き、当該低負荷区間が悪化傾向であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS35へ進み、Noの場合はステップS32へ進む。この当該低負荷区間が悪化傾向であるとは、当該低負荷区間の時間的な変化で見た予測平均出力Pmの低下や区間距離Lmの増大をいい、例えば、当該低負荷区間が渋滞区間である場合、その渋滞における混雑具合がこの先悪化することが予測される(平均出力Pmが低下する)ことや、その渋滞長(渋滞している区間長)が長くなる(区間距離Lmが大きくなる)ことが予測されること等をいう。このステップS34では、これまでの渋滞の変化や時間的な要素または蓄積された過去の傾向等に基づいて、当該低負荷区間が悪化傾向であるか否かを判断する。
ステップS35では、ステップS33でのバッテリー9の充電状態(SOC)が下限値であるとの判定、あるいは、ステップS34での当該低負荷区間が悪化傾向であるとの判定に続き、エンジン間欠走行制御を実行して、ステップS36へ進む。このステップS35では、充電量が十分ではないことから、あるいは、当該低負荷区間が悪化傾向であるのでより有効にバッテリー9の充電量を利用するために、エンジン間欠走行制御を実行する。このエンジン間欠走行制御とは、燃料消費量の増加を防止しかつ充電量を維持しつつ当該低負荷区間の走行を可能とするための走行制御であり、実施例1と同様に、アクセルペダルがONとされるまたはブレーキペダルがOFFとされるとエンジンEngを起動し、アクセルペダルがOFFとされるとエンジンEngを停止する(図8参照)。
ステップS36では、ステップS32での「EVモード」での走行制御の実行、あるいは、ステップS35でのエンジン間欠走行制御の実行、に続き、当該低負荷区間が終了したか否かを判定し、Yesの場合はこのフローチャートを終了し、Noの場合はステップS31へ戻る。このステップS36では、自車両が当該低負荷区間の終了地点に到達するまで低負荷区間における走行制御処理を行うべく、ナビゲーションシステム23から送信された情報に基づいて、自車両が当該低負荷区間の終了地点に到達したか否かを判断し、到達していない場合ステップS31へと戻り、到達するとこのフローチャートを終了する。
このため、実施例2のハイブリッド車両の制御装置では、自車両が低負荷区間に入ると、バッテリー9の充電量で当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることが可能となる(充電量が十分である)と判断すると、その判断時点での自車両の位置から当該低負荷区間の終了地点に至るまで「EVモード」での走行制御を実行することは実施例1と同様であるが、走りきることが可能ではない場合、直ちにエンジン間欠走行制御を実行するのではなく、当該低負荷区間の傾向に応じて、先に「EVモード」での走行制御を実行したりエンジン間欠走行制御を実行したりする。
次に、作用を説明する。
以下、図12を用いて、実施例2のハイブリッド車両の制御装置における作用を説明する。この図12は、充放電スケジュールに応じた走行制御を実行している最中に、誘導経路の道路状況が変化した例である。
実施例2のモード切換制御では、上述したように、充放電スケジュールの設定処理に関しては実施例1と同様であり、充放電スケジュールに応じた走行制御の種別に切り換えられる際の低負荷区間における、エンジン間欠走行制御と「EVモード」での走行制御との切り換え方法が、実施例1とは異なる。
すなわち、図11のフローチャートにおいて、充電量が十分である場合のステップS31→ステップS32→ステップS36へと進みステップS31へと戻る流れは、実施例1と同様である。これに対し、充電量が十分ではない場合、ステップS31→ステップS33へと進み、ステップS33でバッテリー9の充電状態(SOC)が下限値ではないことを確認した後に、ステップS34で当該低負荷区間が悪化傾向ではない場合、「EVモード」での走行制御を行う機会を逃さないように、直ちに「EVモード」での走行制御を実行する。また、充電量が十分ではない場合であって、当該低負荷区間が悪化傾向である(ステップS34)と、バッテリー9の充電量をより有効に利用すべく、「EVモード」での走行制御のための充電量を維持するために、エンジン間欠走行制御を実行する。さらに、充電量が十分ではない場合であって、バッテリー9の充電状態(SOC)が下限値である(ステップS33)と、「EVモード」での走行制御を実行することができないことから、エンジン間欠走行制御を実行する。これらの流れが、当該低負荷区間の終了地点に到達するまで行われるとともに、充放電スケジュールに応じたその他の走行制御の種別の切り換えも行われる。このとき、誘導経路が新たに設定された場合には、図3のフローチャートでステップS7→ステップS1へと戻って新たな誘導経路に適合する充放電スケジュールの設定が行われ、誘導経路は変わってないが道路状況に変化が生じた場合には、ステップS8→ステップS3へと戻って変化した道路状況に適合する充放電スケジュールの設定が行われ、その新たな充放電スケジュールに応じて、走行制御の種別の切り換えが行われる。
ここで、図12のタイムチャートでは、当初の予測において、区間S´を低負荷区間(時刻t11〜時刻t12)に設定しており、その後、その低負荷区間に自車両が入って図11のフローチャートが実行されている場面において、道路状況に変化が生じることにより区間S´の一部である区間S2´が新たな低負荷区間(時刻t22〜時刻t23)に設定された例である。この図12のタイムチャートの例では、自車両が低負荷区間に入ると(時刻t11)、図11のフローチャートにおいて、ステップS31にて充電量が十分であるか否かが判定され、十分ではないことからステップS33へと進み、ステップS33にてバッテリー9の充電状態が下限値であるか否かが判定され、下限値ではないことからステップS34へと進んで当該低負荷区間が悪化傾向であるか否かが判定され、悪化傾向であることからステップS35へと進んでエンジン間欠走行制御が行われる。すなわち、この例では、当初の予測において、区間S´が混雑していることにより低負荷区間に設定されていたが、この区間S´の混雑の度合いが増すことが予測されたので、当該低負荷区間が悪化傾向であると判定し、先ずエンジン間欠走行制御が実行される。
その後、図12のタイムチャートにおいて、区間S´は、混雑の度合いが増すことにより、混雑した区間S1´(時刻t21〜時刻t22)と渋滞の区間S2´(時刻t22〜時刻t23)と混雑した区間S3´(時刻t23〜時刻t24)とに道路状況が変化した。すると、図3のフローチャートにおいて、ステップS8→ステップS3へと戻り、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進み、ステップS5において変化した道路状況に適合する新たな充放電スケジュールが設定される。この例では、新たな充放電スケジュールにおいて、区間S´の3分割された区間S1´、区間S2´および区間S3´のうち、渋滞の区間S2´が、エンジンEngからの出力トルクにより走行(「HEVモード」のエンジン走行モード)すると運転効率が最も低くなる区間として低負荷区間に設定される。ここで、当初の予測における低負荷区間(区間S´)に入った後(時刻t11)に、エンジン間欠走行制御が行われて、当初の予測における低負荷区間に入った時点(時刻t11)でのバッテリー9の充電量が維持されていることから、新たな充放電スケジュールに応じて走行制御の種別を切り換えるとともに図11のフローチャートに沿って低負荷区間での走行制御処理を行うことにより、その充電量を新たな充放電スケジュールの低負荷区間(区間S2´)における「EVモード」での走行制御に利用することができる。この新たな充放電スケジュールにおける低負荷区間である区間S2´は、区間S´の中において最も運転効率が低くなる区間であることから、当初の予測における低負荷区間(区間S´)で先ずエンジン間欠走行制御を行うことにより、当初の予測における低負荷区間に入る(時刻t11)以前に蓄えたバッテリー9の充電量を、燃料消費量を低減する観点から最も効果的に利用することができる。
また、図示は略すが、図11のフローチャートのステップS34にて当初の予測における低負荷区間が悪化傾向ではないと判定した場合、ステップS32へと進んで「EVモード」での走行制御が行われる。この場合は、図12のタイムチャートとは反対に、当初の予測における低負荷区間として設定された区間(図12の区間S´参照)の区間長が減少することや当該区間の混雑具合が解消されること等により、実際に自車両が当初の予測における低負荷区間の終了地点に到達する時点では、当該低負荷区間が当初の充放電スケジュールとして予測した低い運転効率ではなくなっている可能性が高いことから、当該低負荷区間に入ると直ぐに「EVモード」での走行制御を開始し、バッテリー9の充電状態(SOC)が下限値に到達するまで「EVモード」での走行制御を行い、下限値に到達しても自車両が当該低負荷区間の終了地点に到達していない場合には、図11のフローチャートのステップS31→ステップS33→ステップS35へと進んでステップS36→ステップS31へと戻る流れが繰り返されることにより、自車両が当該低負荷区間の終了地点に到達するまでエンジン間欠走行制御が実行される。このため、当該低負荷区間が悪化傾向ではないことに基づいて、先ず「EVモード」での走行制御を行うことにより、「EVモード」での走行制御を実際に最も運転効率が低くなる位置で確実に実行することができるので、当初の予測における低負荷区間(区間S´)に入る(時刻t11)以前に蓄えたバッテリー9の充電量を、燃料消費量を低減する観点から効果的に利用することができる。
この実施例2のモード切換制御では、低負荷区間では、誘導経路上のそれ以前の高負荷区間において充電されたバッテリー9の充電量を使って走行することから、燃料利用効率の高い運転点で発電を行うことができるとともに、運転効率の低くなる区間をモータ/ジェネレータMGからの出力トルクにより走行することができる。このため、燃料利用効率を向上させることができる。
また、低負荷区間が、誘導経路上のそれ以前の高負荷区間において充電されたバッテリー9の充電量では「EVモード」での走行制御で走りきることができない場合であって、当該低負荷区間が悪化傾向ではないと、直ぐに「EVモード」での走行制御を開始して、バッテリー9の充電状態(SOC)が下限値に到達するまで「EVモード」での走行制御を行い、下限値に到達しても自車両が当該低負荷区間の終了地点に到達していない場合には、自車両が当該低負荷区間の終了地点に到達するまでエンジン間欠走行制御が実行されることから、運転効率の低い当該低負荷区間で確実に「EVモード」での走行制御を実行することができるとともに、その残りの低負荷区間での燃料消費量を抑制しつつ走行することができる。これは、当初の予測における低負荷区間(区間S´)の後半部分を「EVモード」での走行制御とすべく先にエンジン間欠走行制御を行うと、道路状況の変化により低負荷区間(区間S´)の後半部分に相当する個所が、渋滞の解消等により当初の予測よりも運転効率が高くなってしまうことから、先ず「EVモード」での走行制御を実行することにより、運転効率の低くなる区間を「EVモード」での走行制御とすることができなくなることを回避することができることによる。
さらに、低負荷区間が、誘導経路上のそれ以前の高負荷区間において充電されたバッテリー9の充電量では「EVモード」での走行制御で走りきることができない場合であって、当該低負荷区間が悪化傾向であると、先にエンジン間欠走行制御を行うことから、道路状況の変化により当初の予測における低負荷区間よりも運転効率の低くなる区間でバッテリー9の充電量を最大限利用して「EVモード」での走行制御を行うことができるので、燃料消費量をより効果的に低減することができる。
ついで、低負荷区間の時間的な変化の傾向に基いて(実施例2では、当該低負荷区間が悪化傾向であるか否かの判定)、先にエンジン間欠走行制御を行うことと、先に「EVモード」での走行制御を行うことと、を切り替えることにより、実質的に当該低負荷区間においてより運転効率の低くなる区間を抽出し、その抽出したより運転効率の低くなる区間で「EVモード」での走行制御を行うことができるので、燃料消費量をより効果的に低減することができる。
エンジン間欠走行制御では、アクセルペダルがONとされるまたはブレーキペダルがOFFとされるとエンジンEngを起動し、アクセルペダルがOFFとされるとエンジンEngを停止することから、停止しない(走行速度が0ではない)場合であっても、「EVモード」での走行制御と「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御とが切り換えられてエンジンEngが間欠的に起動されるので、一般的なエンジン車両との比較では勿論、例えば、停止を条件としてエンジンを停止するアイドリングストップ機構を搭載している車両と比較しても、燃料消費量を低減することができる。
エンジン間欠走行制御では、アクセルペダルがONとされるまたはブレーキペダルがOFFとされるとエンジンEngを起動し、アクセルペダルがOFFとされるとエンジンEngを停止することから、乗員に違和感を覚えさせることなく、「EVモード」での走行制御と、「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御と、を繰り返すことができる。
高負荷区間で発電するものであることから、燃料利用効率の高い運転点でエンジンEngを駆動させて高い速度で走行しつつ発電を行うことができる。このとき、高負荷区間であることから、エンジンEngが始動されて燃料利用効率の高い運転点で駆動されても、乗員が違和感を覚えることはない。
発電を行う高負荷区間が、実際の道路環境に応じた回生による発電量を考慮して設定されていることから、「HEVモード」の走行発電モードによる発電量(充電量)を、必要最低限なものとすることができ、燃料利用効率をより向上させることができる。
統合コントローラ14にて実行される充放電スケジュールに応じた走行制御における低負荷区間での走行制御処理である図11のフローチャートにおいて、ステップS31で充電量が十分であるか否かの判定を行う際、当該低負荷区間をある程度(距離または時間)走行した後は、当該低負荷区間での必要電力量を実際の走行負荷すなわち駆動源(エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG)に要求された駆動力に基づいて演算していることから、より現実の燃料消費量に適合させることができ、より精度よく走行制御を行うことができる。
よって、燃料消費量が最少となるようにエンジンとモータとの運転スケジュールを設定するものであって、その運転スケジュールに応じた走行制御での燃料利用効率をより向上させることができる。
次に、効果を説明する。
本発明の車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)駆動系に、駆動源としてのエンジンEngおよびモータ(モータ/ジェネレータMG)と、駆動輪(左右後輪LT、RT)とを有し、前記駆動源により充電されるバッテリー(9)と、自車両情報および道路環境情報を取得する情報取得手段(23等)と、前記道路環境情報に基づいて前記エンジンと前記モータとの運転スケジュールを設定する運転スケジュール設定手段(図3のフローチャート)と、前記運転スケジュールに応じて前記駆動系を制御する駆動制御手段(14)と、を備え、前記運転スケジュール設定手段は、前記エンジンの運転効率が他の走行区間よりも低くなる走行区間である低負荷区間を前記モータからの駆動力で走行する電気自動車モードでの走行制御とし、前記低負荷区間での電気自動車モードのための電力量を確保すべく前記エンジンの運転効率が前記低負荷区間での運転効率より高い走行区間である高負荷区間を前記エンジンの駆動により前記モータで発電させつつ走行する走行発電モードでの走行制御とする、前記運転スケジュールを設定するハイブリッド車両の制御装置において、前記駆動制御手段は、前記バッテリーの充電量で前記低負荷区間を前記電気自動車モードでの走行制御で走りきることができない場合、前記低負荷区間において、前記電気自動車モードでの走行制御に加えて、燃料消費量の増加を防止しかつ充電量を維持しつつ低負荷区間の走行を可能とすべく前記走行発電モードと前記電気自動車モードとを繰り返すエンジン間欠走行制御を行う(図7のフローチャートのステップS23あるいは図11のフローチャートのステップS35)。このため、誘導経路上のそれ以前の高負荷区間において充電されたバッテリー9の充電量を使って低負荷区間を走行すべくエンジンとモータとの運転スケジュールを設定するものであって、燃料利用効率をより向上させることができる。
(2)前記駆動制御手段は、燃料消費量の増加を防止しかつ充電量を維持しつつ低負荷区間の走行を可能とすべく前記エンジン間欠走行制御を行う。このため、燃料利用効率をより向上させることができる。
(3)前記駆動制御手段は、前記バッテリーの充電量で前記低負荷区間を前記電気自動車モードでの走行制御で走りきることができない場合、前記低負荷区間において、前記バッテリーの充電量を最大限利用して前記電気自動車モードでの走行制御を行うとともに、残りの区間で前記エンジン間欠走行制御を行う(図7のフローチャートあるいは図11のフローチャート)。このため、燃料利用効率をより向上させることができる。
(4)前記駆動制御手段は、前記バッテリーの充電量で前記低負荷区間を前記電気自動車モードでの走行制御で走りきることができない場合、前記低負荷区間の時間的な変化の傾向に基いて、該低負荷区間が良化傾向であると、先ず前記電気自動車モードでの走行制御を行い(図11のフローチャートのステップS31→ステップS33→ステップS34→ステップS32)、前記低負荷区間が悪化傾向であると、先ず前記エンジン間欠走行制御を行う(図11のフローチャートのステップS31→ステップS33→ステップS34→ステップS35)。このため、実質的に当該低負荷区間においてより運転効率の低くなる区間を抽出し、その抽出したより運転効率の低くなる区間で「EVモード」での走行制御を行うことができるので、燃料消費量をより効果的に低減することができる。
(5)前記駆動制御手段は、前記エンジン間欠走行制御において、アクセルペダルが踏み込まれるまたはブレーキペダルへの踏み込みが解除されると前記エンジンを起動して前記走行発電モードとし、アクセルペダルへの踏み込みが解除されると前記エンジンを停止して前記電気自動車モードとする(図8参照)。このため、停止しない場合であっても、エンジンEngを短期間で間欠的に起動されることができ、燃料消費量を低減することができる。また、乗員に違和感を覚えさせることなく、加速時および動き出し時の負荷の高いところではエンジンを起動させるとともに減速時および停止時の負荷の低いところではエンジンを止めることができ、「EVモード」での走行制御と、「HEVモード」の走行発電モードでの走行制御と、を繰り返すことができる。
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1および実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
なお、各実施例では、図3のフローチャートにより運転スケジュールが設定されているが、エンジンの運転効率が他の走行区間よりも低くなる走行区間である低負荷区間をモータからの駆動力で走行する電気自動車モードでの走行制御とし、低負荷区間での電気自動車モードのための電力量を確保すべく低負荷区間よりも前であってエンジンの運転効率の高い(少なくとも当該低負荷区間での運転効率よりも運転効率が高い)高負荷区間をエンジンの駆動によりモータで発電させつつ走行する走行発電モードでの走行制御とする、運転スケジュールを設定するものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。ここで、高負荷区間は、モータで発電させるための充電トルクを確保することのできるエンジン出力トルクを、エンジンを発電効率の高い運転点で駆動することにより得ることができる、という観点から、運転効率の高いものであることが望ましい。
また、実施例1では、上記したように、自車両が低負荷区間に入ると、バッテリー9の充電量で当該低負荷区間を「EVモード」での走行制御で走りきることが可能となるまでは、エンジン間欠走行制御を実行するとともに、走りきることが可能となる(充電量が十分である)と判断すると、その判断時点での自車両の位置から低負荷区間の終了地点に至るまで「EVモード」での走行制御を実行するものであったが、当該低負荷区間のいずれの場所であってもバッテリー9の充電量を最大限利用するように「EVモード」での走行制御を実行すれば燃料利用効率をより向上させることができるので、先に「EVモード」での走行制御を行うものであっても、中間で「EVモード」での走行制御を行うものであってもよく、実施例1に限定されるものではない。
さらに、実施例2では、上記したように、統合コントローラ14にて実行される充放電スケジュールに応じた走行制御における低負荷区間での走行制御処理において、当該低負荷区間が悪化傾向であるか否かを判定していたが(図11のフローチャートのステップS33参照)、低負荷区間の傾向、すなわち時間的な変化で見て低負荷区間がどのように変化する傾向であるかに基いて判定し、良化傾向であれば先ず「EVモード」での走行制御を行い、かつ悪化傾向であれば先ずエンジン間欠走行制御を行うものであればよく、実施例2に限定されるものではない。例えば、図11のフローチャートのステップS33において、当該低負荷区間が良化傾向であるか否かを判定するものとすることができる。この当該低負荷区間が良化傾向であるとは、当該低負荷区間の時間的な変化で見た予測平均出力Pmの増加や区間距離Lmの減少をいい、例えば、当該低負荷区間が渋滞区間である場合、その渋滞における混雑具合がこの先解消することが予測される(平均出力Pmが増加する)ことや、その渋滞長が短くなる(区間距離Lmが小さくなる)ことが予測されること等をいう。この場合、良化傾向である場合はステップS32へ進み、良化傾向ではない場合はステップS35へ進むものとすることにより、図11のフローチャートと同様の効果を得ることができる。
実施例1および実施例2では、FRハイブリッド車両に適用した例を示したが、例えば、FFハイブリッド車両等に対しても本発明の制御装置を適用することができる。要するに、駆動系に無段変速機を有するハイブリッド車両の制御装置であれば適用することができる。