JP2011020194A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、クレーター摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる被膜を備えた表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、1以上の層を含み、該層のうち少なくとも1の層は、化学式Ti1-XZrXαβ(ただし、MはYおよびSiの少なくとも一方、X、α、βはそれぞれ原子比を示し、Xは0.2≦X≦0.6であり、αは0.02≦α≦0.2、βは0.1≦β≦2である。また、Zは酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される第1化合物を含むY/Si添加チタンジルコニウム層であり、上記第1化合物は、X線回折における(111)面のピーク強度Aと(200)面のピーク強度Bとの比B/Aが0≦B/A≦1となる結晶構造を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具に関する。
種々の被削材を切削加工するのに用いられる表面被覆切削工具は、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼等の硬質の基材に対してその表面の耐摩耗性を改善したり表面保護機能を改善したりすることを目的として、TiN、TiCN、TiAlN等の硬質被膜でその表面を被覆することが行なわれてきた。特にTiAlNからなる被膜は優れた耐摩耗性を示すことから、チタンの窒化物、炭化物、炭窒化物等からなる被膜に代わってこのような表面被覆切削工具の被膜として広く用いられている。
しかしながら、被削材が多様化していることおよび加工効率を向上させるために高速の切削加工が求められることなどの理由から、以前に比し切削工具の寿命は非常に短くなっている。さらに、最近の切削工具の動向として、地球環境保全の観点から切削油剤を用いない乾式の加工(ドライ加工)が求められる傾向にある。
このため切削工具に要求される特性はますます高度なものとなっており、以って表面被覆切削工具の被膜に対しても種々の高度な特性が要求されている。
このような要求に応える試みとして、たとえば(TiaAlbZrc)の窒化物、炭窒化物からなる硬質被膜が提案されている(式中、0<a≦0.5、0<b≦0.5、0.01≦c≦0.5(a、b、cはそれぞれTi、Al、Zrの原子比を示す。)(特許文献1)。この提案においては、被膜の成分としてTiとAlに対してZrを混在させたことにより、膜の残留応力を低減でき、膜の厚さを増加させることができるとされている。
しかしながら、この提案においては、被膜としてAlを必須の構成成分として含むものであるため、Alに起因するクレーター摩耗(すくい面の摩耗現象)を防止することは困難であった。
特開平9−323204号公報
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、クレーター摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる被膜を備えた表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明の表面被覆切削工具は、1以上の層を含み、該層のうち少なくとも1の層は、化学式Ti1-XZrXαβ(ただし、MはYおよびSiの少なくとも一方、X、α、βはそれぞれ原子比を示し、Xは0.2≦X≦0.6であり、αは0.02≦α≦0.2、βは0.1≦β≦2である。また、Zは酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される第1化合物を含むY/Si添加チタンジルコニウム層であり、上記第1化合物は、X線回折における(111)面のピーク強度Aと(200)面のピーク強度Bとの比B/Aが0≦B/A≦1となる結晶構造を有することを特徴とする。
上記化学式Ti1-XZrXαβにおけるXは、0.35≦X≦0.5であることが好ましい。
上記第1化合物は、その結晶粒径が0.1nm以上200nm以下であることが好ましい。
上記Y/Si添加チタンジルコニウム層は、上記第1化合物を含む第1層と、第2化合物を含む第2層とが各々1層以上積層されて形成されており、上記第2化合物は、Si、Cr、Al、Ti、Hf、Ta、Nb、およびVからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含むことが好ましい。
上記第1層は、その厚みが0.5nm以上200nm以下であり、上記第2層は、その厚みが0.5nm以上200nm以下であることが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、被膜として下地層が基材上に形成され、その下地層上にY/Si添加チタンジルコニウム層が形成されており、上記下地層は、Tiと、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む第3化合物を含むことが好ましい。
上記Y/Si添加チタンジルコニウム層は、0.3μm以上10μm以下の厚みを有することが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、クレーター摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備えるものである。このような構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、たとえばドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップ等として極めて有用に用いることができる。そして、本発明の表面被覆切削工具は、Ti合金加工用またはインコネル合金等の耐熱合金加工用のドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、等として特に有用に用いることができる。
<基材>
本発明の表面被覆切削工具の基材としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等をこのような基材の例として挙げることができる。このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。
なお、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていても良く、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。
<被膜>
本発明の表面被覆切削工具の上記基材上に形成される被膜は、1以上の層を含むものである。そして、それらの層のうち少なくとも1の層は、以下で詳述する第1化合物を含むY/Si添加ジルコニウムチタン層である。本発明の被膜は、このY/Si添加ジルコニウムチタン層を含む限り、さらに他の層を含んでいても差し支えない。なお、本発明の被膜は、基材上の全面を被覆するもののみに限られるものではなく、部分的に被膜が形成されている態様を含む。
このような被膜の合計厚み(2以上の層が形成される場合はその総膜厚)は、0.3μm以上15μm以下とすることが好ましく、より好ましくはその上限が10μm以下、さらに好ましくは6μm以下、その下限が0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。その厚みが0.3μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、15μmを超えると残留応力が大きくなり基材との密着性が低下する場合がある。なお、膜厚の測定方法としては、切削工具を切断し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより求めることができる。以下、該被膜についてさらに詳細に説明する。
<Y/Si添加ジルコニウムチタン層>
本発明のY/Si添加ジルコニウムチタン層は、化学式Ti1-XZrXαβ(ただし、MはYおよびSiの少なくとも一方、X、α、βはそれぞれ原子比を示し、Xは0.2≦X≦0.6であり、αは0.02≦α≦0.2、βは0.1≦β≦2である。また、Zは酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される第1化合物を含むものである。このような第1化合物は、Zrを含まない構造の化合物に比し高い硬度を示す。これは恐らく、第1化合物の結晶格子中において、Zrが特定部位のTiに対して侵入型または置換型として混在することにより結晶格子が歪むとともに、結晶粒自体が微細化するためではないかと推測される。
また、Y(イットリウム)およびSiの少なくとも一方を添加することにより、Zrの酸化層の相変態を抑制し、高温でも安定な酸化層を形成することで、切削時の耐摩耗性を向上させることができる。Zrの酸化物は、温度によって結晶構造が可逆的に変化することが知られており、熱疲労が発生するとともに結晶構造の変化による体積膨張、または収縮により酸化層の剥離も発生する為に耐摩耗性が低かった。Y(イットリウム)およびSiの少なくとも一方を添加することによりこの結晶構造変化を抑制でき、耐摩耗性を向上させることができる。
本発明のY/Si添加ジルコニウムチタン層は、不可避不純物を除き第1化合物のみによって構成することができる。しかし、後述のような他の成分(元素)を含むことができるとともに、同じく後述のような第1化合物を含む層と他の化合物を含む層とが積層されて形成されたものであっても良い。
なお、このようなY/Si添加ジルコニウムチタン層は、第1化合物とともに、その第1化合物に起因する(第1化合物の形成時に同時に形成されたり、その形成後に経時的に形成される)副次的化合物を含んでいても差し支えない。そのような副次的化合物は第1化合物に対し少量含まれるものであり、たとえばTiと上記化学式中のZとからなる化合物や、Zrと上記化学式中のZとからなる化合物が挙げられる他、Ti単体やZr単体も挙げることができる。
<第1化合物>
上記Y/Si添加ジルコニウムチタン層に含まれる第1化合物は、化学式Ti1-XZrXαβ(ただし、Y(イットリウム)およびSiの少なくとも一方、X、α、βはそれぞれ原子比を示し、Xは0.2≦X≦0.6であり、αは0.02≦α≦0.2、βは0.1≦β≦2である。また、Zは酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される化合物である。上記化学式中、原子比Xは、好ましくは0.35≦X≦0.5であり、Xの下限はより好ましくは0.4、さらに好ましくは0.44であり、その上限はより好ましくは0.49、さらに好ましくは0.47である。この原子比Xが0.6を超えると優れた耐摩耗性が示されなくなる。
上記第1化合物の構成元素Mは、YおよびSiの少なくとも一方である。すなわち、これらの元素の両方(YおよびSi)、または単独(YまたはSi)を膜内に添加する。上記αはこれらの元素を足し合わせた原子量のTiおよびZrの合計原子量に対する原子比を示し、0.02≦α≦0.2である。その下限が、より好ましくは0.03、さらに好ましくは0.04であり、その上限がより好ましくは0.15、さらに望ましくは0.12である。YおよびSiの少なくとも一方を上記原子比で添加する場合は、Zr酸化物の結晶変態を抑制し、Zrの酸化層の相変態を抑制し、高温でも安定な酸化層を形成することで、切削時の耐摩耗性を向上させることができる。Zrの酸化物は、温度によって結晶構造が可逆的に変化することが知られており、熱疲労が発生するとともに結晶構造の変化による体積膨張、または収縮により酸化層の剥離も発生するために耐摩耗性が低かった。Y(イットリウム)およびSiの少なくとも一方を添加することにより、この結晶構造変化を抑制でき、耐摩耗性を向上させることができる。
本発明の第1化合物は、上記のような化学式で示されることから明らかなように、構成元素として原則的にAlを含むものではないため、クレーター摩耗を極めて有効に低減することができる。しかも、Zrを上記のような原子比で含んだことにより、被膜硬度が大幅に増加し、これらが相乗的に作用することによりクレーター摩耗を飛躍的に低減することができるようになったものと考えられる。
なお、上記の化学式中、Zは酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。すなわち、Zは、これらの元素が各単独で構成されていても良いし、2以上の元素が組み合わされて構成されていても良い。2以上の元素が組み合わされて構成される場合、各元素の原子比は特に限定されるものではないが、窒素が含まれる場合はこれらの構成元素に占める(すなわち上記化学式中のβに対する)窒素の原子比を50%以上とすることが好適である。
また、原子比βは、0.1≦β≦2である限り特に限定されないが、より好ましくは0.4≦β≦1.8である。βが0.1未満の場合、耐摩耗性が低下するため好ましくない。またβが2を超えると、やはり耐摩耗性が低下するため好ましくない。なお、上記のようにZが2種以上の元素で構成される場合は、原子比βはそれらの元素の合計量のTiおよびZrの合計原子量に対する原子比を示すものとする。
<第1化合物の結晶構造>
上記第1化合物は、X線回折における(111)面のピーク強度Aと(200)面のピーク強度Bとの比B/Aが0≦B/A≦1となる結晶構造を有することを特徴とする。すなわち、このように規定される結晶構造は、本発明の第1化合物の配向性が(200)優先配向ではなく(111)優先配向であることを示している。この事実は、無配向であるTiN粉末の上記比B/Aが1.3となり、同じく無配向であるCrN粉末の上記比B/Aが1.25となることからも裏付けられる。なぜなら、本発明の第1化合物がもし無配向ならば当然上記比B/Aは1.25〜1.3の範囲内の数値を示すことが予想されるからである。
上記比B/Aは、より好ましくはその上限が0.8、さらに好ましくは0.5であり、その下限は0となるのが理想である。
このように第1化合物の結晶構造が(111)優先配向を示すことにより、極めて高い耐摩耗性が示される。本発明では、(111)優先配向が(200)優先配向の場合に比し極めて高い潤滑性を有していることを見出しており、それによって切削時の耐摩耗性が向上していると考えられる。
さらに、本発明の第1化合物は、その結晶粒径が0.1nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくはその上限が100nm、さらに好ましくは60nmである。上記結晶粒径が0.1nm未満になるとアモルファス状態のものと区別できなくなり、200nmを超えると切削性能が低下することがある。
このように本発明の第1化合物の結晶粒径は、上記に示した範囲のように微小であることが好ましく、小さくなればなる程緻密化が促進され靭性が向上したものとなり切削性能が向上したものとなる。したがって、その結晶粒径は小さくなればなる程好ましいが、上記のように0.1nm未満になると結晶状態を維持できなくなりアモルファス状態となってしまうため、却って切削性能が低下することになる。
なお、このような結晶粒径は、X線回折における(111)面に起因するピークの半価幅から求めることができる平均値をいう。
<Y/Si添加ジルコニウムチタン層の積層構造>
本発明の上記Y/Si添加ジルコニウムチタン層は、上記第1化合物を含む第1層と、第2化合物を含む第2層とが各々1層以上積層されて形成されているものとすることができ、この第2化合物は、Si、Cr、Al、Ti、Hf、Ta、Nb、およびVからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含むものとすることができる。このような第1層は、その厚みが0.5nm以上200nm以下であることが好ましく、また第2層も、その厚みが0.5nm以上200nm以下であることが好ましい。
ここで、この第2化合物は、Si、Cr、Al、Ti、Hf、Ta、Nb、およびVからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素に対して、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を原子比で0.1以上2以下含むことが好ましい。原子比をこの範囲のものとすることにより、以下のような優れた効果が示される。なお、Si、Cr、Al、Ti、Hf、Ta、Nb、およびVのうち異なった元素が2種以上含まれる場合、その合計量が上記範囲の原子比を満たす限り、各元素間の原子比は特に制限されない。同様にして、硼素、酸素、炭素、および窒素のうち異なった元素が2種以上含まれる場合も、各元素間の原子比は特に制限されない。
上記のような積層構造を採用することにより、次のような優れた効果が示される。すなわち、上記第2化合物は耐酸化性に優れているため、クレーター摩耗の低減作用および耐摩耗性の向上作用に加え、Y/Si添加ジルコニウムチタン層全体として優れた耐酸化性が示される。また、このように組成の異なる2層を積層させたことにより、被膜の厚み方向に亀裂が進展することを極めて有効に抑制することができ、この亀裂の進展による被膜破壊に起因した摩耗現象を効果的に低減することができることから結果的に耐摩耗性をさらに向上させることができる。
ここで、前述のように第1層は、その厚みが0.5nm以上200nm以下であることが好ましく、また同じく第2層も、その厚みが0.5nm以上200nm以下であることが好ましい。この範囲の厚みを有することにより切削時において特に優れた耐摩耗性が示されるからである。そして、上記第1層および第2層の各厚みは、より好ましくはその上限が100nm、さらに好ましくは50nmであり、その下限はより好ましくは1nmである。0.5nm未満の厚みで各層を形成することは困難であり、その厚みが200nmを超えると上記のような優れた効果が示されない場合がある。そして、特に好ましくは上記第1層のみの加算合計厚みが0.3μm以上10μm以下となる場合であり、より好ましくは0.7μm以上5μm以下となる場合である。第1層のみの合計厚みをこれらの範囲とすることにより、上記の効果が最も効果的に発現する。なお、第1層のみの合計厚みがこのような範囲となる限り、第2層のみの合計厚みは特に限定されないが、1μm以上10μm以下の厚みとすれば通常は十分である。このように積層される第1層と第2層との各厚みは、概ね等しいものであっても良いし、異なるものであっても良い。
なお、積層構造とは、上記第1層と第2層とが各々1層以上積層されて形成されていることを示すものであるが、より好ましくは上記第1層と第2層とが各々上下交互に複数積層されることが好適である。なお、このような積層構造において最下層および最上層は第1層または第2層のいずれの層によって形成されていても差し支えない。また、積層数は特に限定されるものではないが、各層それぞれ1層以上8000層以下、より好ましくは20層以上5000層以下とすることができる。
<Y/Si添加ジルコニウムチタン層の厚み>
本発明のY/Si添加ジルコニウムチタン層は、0.3μm以上10μm以下の厚みを有することが好ましい。より好ましくは、その上限が8μm以下、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下であり、その下限が0.7μm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは1μm以上である。
上記厚みが0.3μm以上の場合、クレーター摩耗をより低減することができる。従来、切削工具の膜厚は、厚いほうが耐摩耗性が向上することは知られている。しかし、刃先形状の追従性などを考慮した結果、上記好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下で耐摩耗性と共に靭性に優れる被膜を得られることがわかった。上記厚みが、1μm以上6μm以下の場合に特に優れた上記効果が示される。
<下地層>
本発明の表面被覆切削工具は、被膜として下地層が基材上に形成され、その下地層上に上記Y/Si添加ジルコニウムチタン層が形成されたものとすることができ、この下地層は、Tiと、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む第3化合物を含むことができる。この第3化合物は基材との密着性に優れ、このため基材上に基材と接するようにしてこの下地層を形成し、この下地層上に上記Y/Si添加ジルコニウムチタン層を形成すればこれらの被膜が全体として密着力高く基材上に形成されることになる。
このような第3化合物としては、たとえばTiN、TiAlN、TiC、TiCN、TiBN、TiNO、TiCrN、TiCrNO、TiWN等を挙げることができる。なお、これらの化学式において特に原子比が規定されない場合は、各元素の原子比は必ずしも等比となるものではなく、従来公知の原子比が全て含まれるものとする。たとえばTiNと記す場合、TiとNとの原子比は1:1が含まれる他、2:1、1:0.95、1:0.9等が含まれる(特に断りのない限り、他の化学式の記載において同じ)。すなわち、Tiと、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素との原子比(Ti以外に他の(金属)元素を含む場合はその元素の原子比を含み、硼素、酸素、炭素、または窒素を2種以上含む場合はそれらの各元素間の原子比も含む)は特に限定されず、従来公知の原子比がすべて含まれる。
上記のような下地層は、0.05μm以上2μm以下、より好ましくは0.1μm以上1μm以下の厚みを有していることが好ましい。なお、このような下地層は1の層により構成することができる他、2以上の層により構成することもできる(2以上の層により構成する場合はその合計厚みを上記の範囲のものとする)。
<その他の層など>
本発明の被膜は、上記のようなY/Si添加ジルコニウムチタン層や下地層以外の他の層をさらに1以上含むことができる。たとえばそのような他の層は、下地層とY/Si添加ジルコニウムチタン層との間に形成したり、Y/Si添加ジルコニウムチタン層の上に形成したりすることができる。このような他の層を形成することにより、クレーター摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与するという本発明の効果がさらに向上したり、あるいは潤滑性を付与したり、被削材との溶着を抑制したりすることができるという効果を達成することもできる。
このような他の層を構成する化合物としては、たとえばAl23等の酸化物、TiSiN等のケイ窒化物、TiCN等の炭窒化物等を挙げることができる。なお、このような他の層は、0.05μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上2μm以下の厚みを有していることが好ましい。
<製造方法>
本発明の被膜とりわけY/Si添加ジルコニウムチタン層は、上記の通り結晶性の高い化合物で構成されている必要があるため、本発明の被膜はそのような結晶性の高い化合物で構成されるような成膜プロセスにより形成されていることが好ましい。したがって、本発明の被膜は特に物理蒸着法(PVD法)により形成されることが望ましい。このような物理蒸着法としては、たとえばバランストマグネトロンスパッタリング法、アンバランストマグネトロンスパッタリング法、アークイオンプレーティング法、これらを各組み合わせた方法等を挙げることができる。なお、Y/Si添加ジルコニウムチタン層が上記のような積層構造で形成されている場合であっても、これらの物理蒸着法の下、従来公知の手法により形成することができる。
そして、特に上記のようなY/Si添加ジルコニウムチタン層を好適に形成する具体的な条件を挙げると以下の通りとなる。すなわち、アークイオンプレーティング法を採用する場合、所望の構造の第1化合物が得られるように適切な配合比で各対応する元素を含んだターゲットをアーク式蒸発源にセットし、基板(基材)温度を400〜700℃および該装置内の反応ガス圧を2.0〜6.0Paに設定し、反応ガスとしてたとえば窒素、メタン、酸素等のうちから1以上のガスを選択することによりこれを導入する。そして、基板(負)バイアス電圧を−60V〜−200Vに維持したまま、カソード電極に50〜120Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりY/Si添加ジルコニウムチタン層を形成することができる。
また、アンバランストマグネトロンスパッタリング法を採用する場合、基板(基材)温度を400〜600℃および該装置内の反応ガス圧を300mPa〜800mPaに設定し、所望の第1化合物に対応する反応ガスとしてたとえば窒素、アセチレン、酸素のうちから1以上のガスを選択することによりこれを導入する(なお、反応ガスの導入に際しては、希ガス/反応ガスの比を1〜5に設定することが好ましい)。そして、基板(負)バイアス電圧を0V〜−90Vに維持したまま(このバイアス電圧は負側に高くする程第1化合物の結晶構造の配向性は向上する傾向を示す)、ターゲットに0.12〜0.3W/mm2の電力密度を発生させることによりY/Si添加ジルコニウムチタン層を形成することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の各被膜を構成する各層の化学組成(化合物の組成)は二次電子顕微鏡に付帯のエネルギー分散型ケイ光X線分光計(SEM−EDX)により確認し、各層の厚みは被膜の断面を二次電子顕微鏡(SEM)により観察することにより確認した。
本実施例において基材上に形成される被膜は、以下のように陰極式アークイオンプレーティング法またはスパッタリング法により形成した。
<陰極式アークイオンプレーティング(AIP)法>
まず、基材として、グレードがP30(JIS B 4053−1998)の超硬合金であり、形状がSNGN120408(JIS B 4121−1998)である切削チップを準備し、これを洗浄した後、陰極式アークイオンプレーティング装置(成膜装置)内の基板取り付け位置にセットした。なお、このような成膜装置としては従来公知の構成のものを特に制限なく使用することができる。
そして、真空ポンプにより該装置内を1×10-4Pa以下に減圧するとともに、該装置内に設置されたヒーターにより上記基材の温度を650℃に加熱し、1時間保持した。
次に、アルゴンガスを導入して該装置内の圧力を3.0Paに保持し、基板(基材)バイアス電圧を徐々に上げながら−1500Vとし、基材の表面のクリーニングを15分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
次いで、上記基材表面に形成される被膜(すなわち第1化合物からなるY/Si添加ジルコニウムチタン層)として、その化学組成が以下の表1に示したものとなるように各対応する元素を含んだ各ターゲットを原料蒸発源(アーク式蒸発源)にセットした。基板(基材)温度を550〜650℃および該装置内の反応ガス圧を4.0Paに設定し、表1に示した化学組成に対応する反応ガスとして、窒素、メタン、酸素のうちから1以上のガスを選択することによりこれを導入した。そして、基板バイアス電圧を−80Vに維持したまま、カソード電極に50〜120Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオン等を発生させY/Si添加ジルコニウムチタン層を形成した。
すなわち、アーク式蒸発源から発生した金属イオン、金属元素、またはクラスター等がプラズマ雰囲気中で上記反応ガスと反応することにより、基材上にY/Si添加ジルコニウムチタン層(すなわち第1化合物)が形成(析出)されることになる。なお、反応ガスとしては、最終生成物(第1化合物)が窒化物の場合は窒素を選択し、炭化物の場合はメタン(メタンのみに限られずアセチレン等の炭化水素ガスを特に限定なく使用することができる)と雰囲気ガス(反応ガス分圧制御用)としてアルゴンガスを選択し、酸化物の場合は酸素と雰囲気ガス(反応ガス分圧制御用)としてアルゴンガスを選択することができる。また、その他の炭窒化物や窒酸化物等の場合は、上記の例に基づき2種以上の反応ガスを選択して用いた。
実施例1および実施例2については、金属源としてTi−Zr−Yの合金ターゲットを用いた。実施例3、実施例4、実施例17および実施例18については、金属源としてTi−Zr−Y23合金ターゲットを用いた。実施例3、実施例4、実施例17および実施例18については窒素雰囲気で成膜を行ったが、膜中にはY23起因の酸素が含まれていた。実施例5および実施例6についてはTi−Zr−Si合金ターゲットを用いた。実施例7および実施例8ついてはTi−Zr−Y23−Si合金ターゲットを用いた。
そして、表1に記載した厚みとなったところでアーク式蒸発源に供給する電流を停止し、冷却後該装置内を大気に開放した後、被膜が基材上に形成された表面被覆切削工具を装置から取り出すことにより、本発明の表面被覆切削工具を製造した。なお、表1の「製法」の項において、この陰極式アークイオンプレーティング法により製造された表面被覆切削工具は「AIP」と表記した。
<スパッタリング(SP)法>
まず、基材として、上記の陰極式アークイオンプレーティング法で用いたものと同じ基材を準備し、これを洗浄した後、スパッタリング装置(成膜装置)内の基板取り付け位置にセットした。次いで、上記基材表面に形成される被膜(すなわち第1化合物からなるY/Si添加ジルコニウムチタン層)として、その化学組成が以下の表1に示したものとなるように各対応する元素を含んだ各ターゲットをセットした(実施例9〜16)。該ターゲットは、合金ターゲットでも良いし、金属単体のターゲットを上記化学組成となるように分割して用いることもできる。なお、このような成膜装置としては従来公知の構成のものを特に制限なく使用することができる。
そして、真空ポンプにより該装置内を1×10-4Pa以下に減圧するとともに、該装置内に設置されたヒーターにより上記基材の温度を500℃以上に加熱し、1時間保持した。
次に、アルゴンガスを導入して該装置内の圧力を500mPa〜650mPaに保持し、基板(基材)バイアス電圧を徐々に上げながら−600Vとし、基材の表面のクリーニングを30分間行なった。続いて、基板バイアス電圧を−350Vとし、ホロカソード型ガス活性化源を用いて基材表面のクリーニングをさらに60分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
次いで、基板(基材)温度を500〜600℃および該装置内の反応ガス圧を500mPa〜650mPaに設定し、表1に示した化学組成に対応する反応ガスとして、窒素、アセチレン、酸素のうちから1以上のガスを選択することによりこれを導入した。なお、反応ガスの導入に際しては、希ガス/反応ガスの流量比を1〜5に設定した。
そして、基板バイアス電圧を−90Vに維持したまま、ターゲットに0.12〜0.3W/mm2の電力密度を発生させることにより、基材上に被膜(すなわち第1化合物からなるY/Si添加ジルコニウムチタン層)を形成した。なお、ターゲットに供給する電力密度は被膜が表1記載の厚みとなったところで停止した。
なお、上記の基板バイアス電源およびターゲット供給用電源としては、直流パルス方式を用いた。基板バイアス電源では350kHzの周波数で正と負の電圧を供給し、1周期当りの正電圧を供給する時間は500nsとした。またターゲット供給用電源の周波数は50kHzで1周期当りの正負電圧の供給時間は各々半分ずつとした。
なお、上記反応ガスには必ず希ガス(アルゴンが好ましいがこれのみに限定されない)を混在させた。反応ガスの選択基準は上記陰極式アークイオンプレーティング法と同様である。化学組成に硼素が含まれる場合はターゲットに予め硼素元素を所望量含有させたものを用いた。
このようにして本発明の表面被覆切削工具を製造した。なお、表1の「製法」の項において、このスパッタリング法(アンバランストマグネトロンスパッタリング法)により製造された表面被覆切削工具は「SP」と表記した。実施例9および実施例10については、金属源としてTi−Zr−Yの合金ターゲットを用いた。実施例11および実施例12については、金属源としてTi−Zr−Y23合金ターゲットを用いた。実施例11および実施例12については窒素雰囲気で成膜を行ったが、膜中にはY23起因の酸素が含まれていた。実施例13および実施例14についてはTi−Zr−Si合金ターゲットを用いた。実施例15および実施例16についてはTi−Zr−Y23−Si合金ターゲットを用いた。
<積層構造>
表1の「積層構造」の項において、Y/Si添加ジルコニウムチタン層が前述の第1層と第2層とが積層されて形成されている場合は「有」と表記し、そのような積層構造とはなっていない場合(すなわち単層の場合)は「無」と表記した。
なお、このような積層構造を陰極式アークイオンプレーティング法により形成する場合は、第1層を形成するためのターゲット1(組成は表1記載の第1化合物が得られる組成とした)と第2層を形成するためのターゲット2(組成は表3記載の第2化合物が得られる組成とした)とを装置内側壁に同じ高さでセットし、両ターゲットの中間点(装置のほぼ中心部)に基材をセットした。そして、これらのターゲット1とターゲット2とをともに蒸発させながら基材を回転させることにより、基材がターゲット1の正面に位置するときには第1層が形成され、ターゲット2の正面に位置するときには第2層が形成されるようにした。このようにして積層構造を形成することができるが、ターゲットを蒸発させる条件はY/Si添加ジルコニウムチタン層を形成する上記条件と同様の条件を採用した。
また、このような積層構造をスパッタリング法により形成する場合は、上記の陰極式アークイオンプレーティング法の場合と同様にして基材とターゲット1およびターゲット2とを装置内に配置させ、かつY/Si添加ジルコニウムチタン層を形成する上記スパッタリング条件と同様の条件を採用することにより積層構造を形成することができた。
このようにして得られた積層構造の詳細を表3に示す。表3中、第1層は表1記載の第1化合物により構成され、第2層は表3記載の第2化合物により構成される。そして各層を表3に記載した厚みで上下交互に積層し、表1に記載された厚みのY/Si添加ジルコニウムチタン層を形成した。なお、各積層構造の最下層は第1層とし最上層は第2層とした。
以上のようにして、表1および表3に記載した構成の実施例1〜18の表面被覆切削工具を製造した。これらの実施例の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備えるものであって、この被膜は化学式Ti1-XZrXαβ(ただし、MはYおよびSiの少なくとも一方、X、α、βはそれぞれ原子比を示し、Xは0.2≦X≦0.6であり、αは0.02≦α≦0.2、βは0.1≦β≦2である。また、Zは酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される第1化合物を含むY/Si添加ジルコニウムチタン層であり、この第1化合物は、以下で確認するようにX線回折における(111)面のピーク強度Aと(200)面のピーク強度Bとの比B/Aが0≦B/A≦1となる結晶構造を有することを特徴とするものであった。
<結晶構造の確認>
以上のようにして製造された実施例1〜18の表面被覆切削工具について、θ−2θ法によるX線回折を行なうことにより、Y/Si添加ジルコニウムチタン層(すなわち第1化合物)の結晶構造、すなわち(111)面のピーク強度Aと(200)面のピーク強度Bとの比B/Aと、結晶粒径と、(111)面の面間隔と、(200)面の面間隔を求めた。X線はCuKα線とし、結晶粒径(すなわち第1化合物の結晶粒径)は(111)面の半価幅より算出し、面間隔はピーク強度が最大になる点の2θ角度から算出した。これらの結果を以下の表4に示す。
<比較例1〜11>
比較例1として、第1化合物においてZrを含まない化合物(すなわち具体的にはTiN)による被膜を基材上に形成した表面被覆切削工具を製造した。また、比較例2として、TiAlNからなる被膜を基材上に形成した表面被覆切削工具を製造した。また、比較例3は、実施例2の第1化合物と同じ組成の化合物からなる被膜を形成したものであるが、成膜時のバイアス電圧を0Vに変更することにより(111)面のピーク強度Aと(200)面のピーク強度Bとの比B/Aが1.13となる点において実施例2とは異なる表面被覆切削工具である。
また、比較例4は、第1化合物において上記化学式における原子比Xが0.6を超えることを除き他は実施例2と同様にして得られる表面被覆切削工具である。比較例5は、上記化学式における原子比Xが0.2を下回ることを除き他は実施例2と同様にして得られる表面被覆切削工具である。比較例6は、上記化学式における原子比αが0.2を超えることを除き他は実施例2と同様にして得られる表面被覆切削工具である。比較例7は、上記化学式における原子比αが0.04を下回ることを除き他は実施例2と同様にして得られる表面被覆切削工具である。比較例8は、第1化合物において上記化学式における原子比βが0.2未満となることを除き他は実施例2と同様にして得られる表面被覆切削工具である。
比較例9は、第1化合物において上記化学式における原子比βが2を超えることを除き他は実施例2と同様にして得られる表面被覆切削工具である。また、比較例10および11は、膜厚が異なることを除き他は比較例4と同様にして得られる表面被覆切削工具である。これらの比較例の表面被覆切削工具の物性等を表2および表4に記載した。
<切削試験>
上記のようにして製造された実施例1〜18の表面被覆切削工具および比較例1〜11の表面被覆切削工具について、以下の切削条件により連続旋削試験を8分間実施することにより、逃げ面摩耗量とクレーター摩耗量とを測定した。逃げ面摩耗量が小さいもの程耐摩耗性に優れていることを示し、クレーター摩耗量が小さいもの程クレーター摩耗が低減されていることを示す。その結果を以下の表5に示す。
(切削条件)
被削材:SCM435
切削速度:350m/min
切込み:1.5mm
送り:0.15mm/rev.
乾式/湿式:湿式
Figure 2011020194
Figure 2011020194
Figure 2011020194
Figure 2011020194
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上記表1および表2中、「X」、「α」、「β」、「Z」とは第1化合物である化学式Ti1-XZrXαβ中のX、α,β、Zをそれぞれ示す。また、上記表3中、「第2化合物」の項に記載されている数値は原子比を示す。
表5より明らかなように、本発明の実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、クレーター摩耗の低減化および耐摩耗性の向上の両者において優れた結果を示していることは明らかである。したがって、本発明の表面被覆切削工具は優れた切削性能を有したものである。また、切削試験の耐摩耗性は膜厚の影響を受け、膜厚が大きくなると摩耗量は小さくなることが分かる。すなわち、実施例3、17および18を比較することにより、本発明における第1化合物を含むY/Si添加チタンジルコニウム層を備える場合は、膜厚が大きくなると摩耗量をより低減することができることがわかる。そして、実施例17と比較例10との対比、実施例18と比較例11との対比により、膜厚が1μmまたは10μmの場合においても本発明の優位性を確認することができる。
なお、上記した実施例においては、基材上に被膜としてY/Si添加ジルコニウムチタン層のみを形成した構造であるが、基材上に前述のような下地層を形成し、その下地層上にY/Si添加ジルコニウムチタン層を形成することもでき、基材と被膜との密着性をさらに向上させることができる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. 基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
    前記被膜は、1以上の層を含み、
    前記層のうち少なくとも1の層は、化学式Ti1-XZrXαβ(ただし、MはYおよびSiの少なくとも一方、X、α、βはそれぞれ原子比を示し、Xは0.2≦X≦0.6であり、αは0.02≦α≦0.2、βは0.1≦β≦2である。また、Zは酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される第1化合物を含むY/Si添加チタンジルコニウム層であり、
    前記第1化合物は、X線回折における(111)面のピーク強度Aと(200)面のピーク強度Bとの比B/Aが0≦B/A≦1となる結晶構造を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記化学式Ti1-XZrXαβにおける前記Xは、0.35≦X≦0.5である請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記第1化合物は、その結晶粒径が0.1nm以上200nm以下である請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記Y/Si添加チタンジルコニウム層は、前記第1化合物を含む第1層と、第2化合物を含む第2層とが各々1層以上積層されて形成されており、
    前記第2化合物は、Si、Cr、Al、Ti、Hf、Ta、Nb、およびVからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記第1層は、その厚みが0.5nm以上200nm以下であり、
    前記第2層は、その厚みが0.5nm以上200nm以下である請求項4記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記表面被覆切削工具は、前記被膜として下地層が前記基材上に形成され、その下地層上に前記Y/Si添加チタンジルコニウム層が形成されており、
    前記下地層は、Tiと、硼素、酸素、炭素、および窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む第3化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記Y/Si添加チタンジルコニウム層は、0.3μm以上10μm以下の厚みを有する請求項1〜6のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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