JP2000326107A - 硬質皮膜被覆工具 - Google Patents
硬質皮膜被覆工具Info
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- JP2000326107A JP2000326107A JP13803999A JP13803999A JP2000326107A JP 2000326107 A JP2000326107 A JP 2000326107A JP 13803999 A JP13803999 A JP 13803999A JP 13803999 A JP13803999 A JP 13803999A JP 2000326107 A JP2000326107 A JP 2000326107A
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Abstract
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐酸化性、耐摩耗性を改善し、切削加工の乾式
化、高速化に対応する、TiAlN皮膜を有する、硬質
皮膜被覆工具。 【解決手段】高速度鋼、超硬合金、サーメット、セラミ
ックスの何れかを母材とし、金属成分のみの原子%で、
Siが10〜60で、B、Al、V、Cr、Y、Zr、
Nb、Mo、Hf、Ta、W(成分D)が1種以上で1
0未満、残Tiで、構成される窒化物、炭窒化物、酸窒
化物、酸炭窒化物(化合物E)のいずれかであり、Na
Cl型結晶構造を有し、格子定数が0.417〜0.4
23nmであるa層と、金属成分のみの原子%が、A
l:40越え75以下で、成分Dが1種以上で10未
満、残Tiで構成される化合物Eのいずれかで、NaC
l型結晶構造を有すb層が、それぞれ一層以上交互に被
覆され、母材表面直上には金属成分としてTiを主体と
する窒化物で層厚が0.1〜1μmのc層があり、さら
にc層直上にはb層である、硬質皮膜被覆工具。
化、高速化に対応する、TiAlN皮膜を有する、硬質
皮膜被覆工具。 【解決手段】高速度鋼、超硬合金、サーメット、セラミ
ックスの何れかを母材とし、金属成分のみの原子%で、
Siが10〜60で、B、Al、V、Cr、Y、Zr、
Nb、Mo、Hf、Ta、W(成分D)が1種以上で1
0未満、残Tiで、構成される窒化物、炭窒化物、酸窒
化物、酸炭窒化物(化合物E)のいずれかであり、Na
Cl型結晶構造を有し、格子定数が0.417〜0.4
23nmであるa層と、金属成分のみの原子%が、A
l:40越え75以下で、成分Dが1種以上で10未
満、残Tiで構成される化合物Eのいずれかで、NaC
l型結晶構造を有すb層が、それぞれ一層以上交互に被
覆され、母材表面直上には金属成分としてTiを主体と
する窒化物で層厚が0.1〜1μmのc層があり、さら
にc層直上にはb層である、硬質皮膜被覆工具。
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、金属材料等の切削
加工に使用される硬質皮膜被覆工具に関するものであ
る。
加工に使用される硬質皮膜被覆工具に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来はTiN、TiCN等を被覆した切
削工具が汎用的かつ一般的であった。TiNは比較的耐
酸化性に優れるため、切削時の発熱によって生じる工具
のすくい面摩耗に対して、優れた耐摩耗性を示すだけで
なく、母材との密着性も良好であることが特長である。
また、TiCNは、TiNに比べ高硬度であるため、工
具の逃げ面摩耗に対して優れた特性を示す。しかしなが
ら、金属加工の高能率化を目的とした切削速度の高速化
傾向に対し、上記硬質皮膜では、十分な耐酸化性、耐摩
耗性を示さなくなった。この様な背景から、皮膜の耐酸
化性、耐摩耗性をより向上させる研究がなされ、その結
果、特開昭62−56565号、特開平2−19415
9号に代表されるTiAlN皮膜が開発され切削工具に
適用されている。
削工具が汎用的かつ一般的であった。TiNは比較的耐
酸化性に優れるため、切削時の発熱によって生じる工具
のすくい面摩耗に対して、優れた耐摩耗性を示すだけで
なく、母材との密着性も良好であることが特長である。
また、TiCNは、TiNに比べ高硬度であるため、工
具の逃げ面摩耗に対して優れた特性を示す。しかしなが
ら、金属加工の高能率化を目的とした切削速度の高速化
傾向に対し、上記硬質皮膜では、十分な耐酸化性、耐摩
耗性を示さなくなった。この様な背景から、皮膜の耐酸
化性、耐摩耗性をより向上させる研究がなされ、その結
果、特開昭62−56565号、特開平2−19415
9号に代表されるTiAlN皮膜が開発され切削工具に
適用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】TiAlN皮膜は、そ
の皮膜中に含有するTiとAlの成分比率により異なる
ものの、概略2300〜2800のビッカース硬さを有
すだけではなく、耐酸化性が、前記TiN、TiCNに
比べ優れるため、刃先が高温に達する切削条件下におい
ては、切削工具の性能を著しく向上させる。しかしなが
ら、近年では切削速度が更に高速化する傾向に加え、乾
式での切削加工が環境問題上重要視され、切削工具の使
用環境はますます苛酷なものとなってきている。
の皮膜中に含有するTiとAlの成分比率により異なる
ものの、概略2300〜2800のビッカース硬さを有
すだけではなく、耐酸化性が、前記TiN、TiCNに
比べ優れるため、刃先が高温に達する切削条件下におい
ては、切削工具の性能を著しく向上させる。しかしなが
ら、近年では切削速度が更に高速化する傾向に加え、乾
式での切削加工が環境問題上重要視され、切削工具の使
用環境はますます苛酷なものとなってきている。
【0004】本発明者等の研究によれば、大気中におけ
るTiAlN皮膜の酸化開始温度は、TiNの450℃
に対し、Alの添加量に依存して750〜900℃に向
上する。しかしながら、前述の乾式高速切削加工におい
ては、使用する工具の刃先温度が900℃以上の高温に
達するため、前記TiAlN皮膜では、十分な工具寿命
が得られないのが現状である。
るTiAlN皮膜の酸化開始温度は、TiNの450℃
に対し、Alの添加量に依存して750〜900℃に向
上する。しかしながら、前述の乾式高速切削加工におい
ては、使用する工具の刃先温度が900℃以上の高温に
達するため、前記TiAlN皮膜では、十分な工具寿命
が得られないのが現状である。
【0005】本発明はこうした事情に鑑みなされたもの
であって、従来のTiAlN皮膜に対し、更に耐酸化
性、耐摩耗性を改善し、切削加工の乾式化、高速化に対
応する硬質皮膜被覆工具を提供することが目的である。
であって、従来のTiAlN皮膜に対し、更に耐酸化
性、耐摩耗性を改善し、切削加工の乾式化、高速化に対
応する硬質皮膜被覆工具を提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者等は、硬質皮膜の
耐酸化性、耐摩耗性および密着性に及ぼす、様々な元素
の影響および皮膜の層構造について詳細な検討を行った
結果、Siを適量含有したTiを主成分とする窒化物、
炭窒化物、酸窒化物もしくは酸炭窒化物(以下、TiS
i系窒化物等と記す)と、TiとAlを主成分とした窒
化物、炭窒化物、酸窒化物もしくは酸炭窒化物(以下、
TiAl系窒化物等と記す)に含まれる金属成分を特定
値内に制限した皮膜を、TiSi系窒化物等の格子定数
を0.417nm以上0.423nm以下になるよう、
それぞれ一層以上交互に被覆し、その際、金属成分とし
てTiを主体とする窒化物層を母材表面直上に被覆する
ことで、乾式の高速切削加工において、切削工具の性能
が極めて良好となることを見出し本発明に到達した。
耐酸化性、耐摩耗性および密着性に及ぼす、様々な元素
の影響および皮膜の層構造について詳細な検討を行った
結果、Siを適量含有したTiを主成分とする窒化物、
炭窒化物、酸窒化物もしくは酸炭窒化物(以下、TiS
i系窒化物等と記す)と、TiとAlを主成分とした窒
化物、炭窒化物、酸窒化物もしくは酸炭窒化物(以下、
TiAl系窒化物等と記す)に含まれる金属成分を特定
値内に制限した皮膜を、TiSi系窒化物等の格子定数
を0.417nm以上0.423nm以下になるよう、
それぞれ一層以上交互に被覆し、その際、金属成分とし
てTiを主体とする窒化物層を母材表面直上に被覆する
ことで、乾式の高速切削加工において、切削工具の性能
が極めて良好となることを見出し本発明に到達した。
【0007】すなわち本発明は、高速度鋼、超硬合金、
サーメット、セラミックスの何れかを母材とし、金属成
分のみの原子%で、Siが10%以上60%以下、B、
Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、
Wの1種または2種以上で10%未満、残Tiで構成さ
れる窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれ
かであり、NaCl型結晶構造を有し、かつ格子定数が
0.417nm以上0.423nm以下であるa層と、
金属成分のみの原子%が、Al:40%越え75%以
下、B、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、H
f、Ta、Wの1種または2種以上で10%未満、残T
iで構成される窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化
物のいずれかで、NaCl型結晶構造を有すb層が、そ
れぞれ一層以上交互に被覆され、かつ母材表面直上には
金属成分としてTiを主体とする窒化物で層厚が0.1
μm以上1μm以下のc層があり、さらにc層直上はb
層であることを特徴とする硬質皮膜被覆工具であり、上
記硬質皮膜は、物理蒸着法により被覆されたことが望ま
しい。
サーメット、セラミックスの何れかを母材とし、金属成
分のみの原子%で、Siが10%以上60%以下、B、
Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、
Wの1種または2種以上で10%未満、残Tiで構成さ
れる窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれ
かであり、NaCl型結晶構造を有し、かつ格子定数が
0.417nm以上0.423nm以下であるa層と、
金属成分のみの原子%が、Al:40%越え75%以
下、B、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、H
f、Ta、Wの1種または2種以上で10%未満、残T
iで構成される窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化
物のいずれかで、NaCl型結晶構造を有すb層が、そ
れぞれ一層以上交互に被覆され、かつ母材表面直上には
金属成分としてTiを主体とする窒化物で層厚が0.1
μm以上1μm以下のc層があり、さらにc層直上はb
層であることを特徴とする硬質皮膜被覆工具であり、上
記硬質皮膜は、物理蒸着法により被覆されたことが望ま
しい。
【0008】
【発明の実施の形態】はじめに請求項中記載のa層に関
して、その構成要件について詳しく述べる。一般にTi
AlN皮膜は、大気中で酸化テストを行うと、皮膜表面
近傍のAlが最表面に外向拡散し、そこでアルミナ層を
形成する。本発明者らの研究によれば、このことが耐酸
化性向上の理由と考えられるが、この時、アルミナ層直
下には、Alを含有しない非常にポーラスなTi酸化物
が形成する。静的である酸化テストにおいては、最表面
に形成されたアルミナ層が、酸化の進行である酸素の内
向拡散に対し、酸化保護膜として機能するものの、動的
な切削加工においては、最表面のアルミナ層は、その直
下のポーラスなTi酸化物層より容易に剥離してしま
い、酸化の進行に対し十分な効果を発揮しない。
して、その構成要件について詳しく述べる。一般にTi
AlN皮膜は、大気中で酸化テストを行うと、皮膜表面
近傍のAlが最表面に外向拡散し、そこでアルミナ層を
形成する。本発明者らの研究によれば、このことが耐酸
化性向上の理由と考えられるが、この時、アルミナ層直
下には、Alを含有しない非常にポーラスなTi酸化物
が形成する。静的である酸化テストにおいては、最表面
に形成されたアルミナ層が、酸化の進行である酸素の内
向拡散に対し、酸化保護膜として機能するものの、動的
な切削加工においては、最表面のアルミナ層は、その直
下のポーラスなTi酸化物層より容易に剥離してしま
い、酸化の進行に対し十分な効果を発揮しない。
【0009】しかしながら、TiSi系窒化物等は皮膜
自体の耐酸化性が極めて高いだけでなく、最表面に酸化
保護膜となるSiを含有する非常に緻密な複合酸化物層
が形成され、また、その直下には酸化保護膜の剥離原因
となるポーラスなTi酸化物が形成されないことを確認
した。上記効果を得るには、Siが皮膜の金属成分のみ
の原子%で、10%以上含有していなければならず、逆
に60%を越えて含有すると、皮膜の延性ないしは硬さ
の低下が顕著になり、切削工具としての使用に耐えられ
なくなる。
自体の耐酸化性が極めて高いだけでなく、最表面に酸化
保護膜となるSiを含有する非常に緻密な複合酸化物層
が形成され、また、その直下には酸化保護膜の剥離原因
となるポーラスなTi酸化物が形成されないことを確認
した。上記効果を得るには、Siが皮膜の金属成分のみ
の原子%で、10%以上含有していなければならず、逆
に60%を越えて含有すると、皮膜の延性ないしは硬さ
の低下が顕著になり、切削工具としての使用に耐えられ
なくなる。
【0010】B、Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wは、TiSi系窒化物等の皮膜中に
おいて固溶強化元素として働き、皮膜の高硬度化に有効
である。そのため、必要に応じB、Al、V、Cr、
Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2
種以上を微量添加することが望ましい。しかしながら皮
膜の金属成分のみの原子%で10%以上添加すると、前
述したSi含有による耐酸化性向上効果が得られなくな
る。よって、B、Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wは、1種または2種以上で10%未
満とする。
o、Hf、Ta、Wは、TiSi系窒化物等の皮膜中に
おいて固溶強化元素として働き、皮膜の高硬度化に有効
である。そのため、必要に応じB、Al、V、Cr、
Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2
種以上を微量添加することが望ましい。しかしながら皮
膜の金属成分のみの原子%で10%以上添加すると、前
述したSi含有による耐酸化性向上効果が得られなくな
る。よって、B、Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wは、1種または2種以上で10%未
満とする。
【0011】本発明a層は、その格子定数を0.417
nm以上0.423nm以下にすることで高硬度化が達
成でき、著しく耐摩耗性に優れた皮膜が得られる。発明
者等の研究によれば、請求項記載の成分範囲において
は、単一a層の格子定数は0.424〜0.426nm
であり、単一b層の格子定数は0.415〜0.417
nmと単一b層の方が極端に小さいことを確認してい
る。しかしながら、a層およびb層をそれぞれ一層以上
交互に被覆し、その際の基体に印加するバイアス電圧を
適当な値に制御することで、a層は、その下地に位置す
るb層と結晶格子レベルで整合する。その結果、a層の
結晶格子は単一で存在する場合よりも縮小することとな
り、a層には格子歪みが発生し、その硬さが向上する。
a層およびb層を被覆する際、基体に印加するバイアス
電圧は、アーク放電方式イオンプレーティングや、スパ
ッタリングといった物理蒸着法の違いや、同様の手法で
あっても成膜装置の基本的な仕様によって絶対値は異な
るものの、a層とb層の界面における結晶格子の整合性
を確保するには、両層を近似のバイアス電圧で成膜する
ことにより達成できる。
nm以上0.423nm以下にすることで高硬度化が達
成でき、著しく耐摩耗性に優れた皮膜が得られる。発明
者等の研究によれば、請求項記載の成分範囲において
は、単一a層の格子定数は0.424〜0.426nm
であり、単一b層の格子定数は0.415〜0.417
nmと単一b層の方が極端に小さいことを確認してい
る。しかしながら、a層およびb層をそれぞれ一層以上
交互に被覆し、その際の基体に印加するバイアス電圧を
適当な値に制御することで、a層は、その下地に位置す
るb層と結晶格子レベルで整合する。その結果、a層の
結晶格子は単一で存在する場合よりも縮小することとな
り、a層には格子歪みが発生し、その硬さが向上する。
a層およびb層を被覆する際、基体に印加するバイアス
電圧は、アーク放電方式イオンプレーティングや、スパ
ッタリングといった物理蒸着法の違いや、同様の手法で
あっても成膜装置の基本的な仕様によって絶対値は異な
るものの、a層とb層の界面における結晶格子の整合性
を確保するには、両層を近似のバイアス電圧で成膜する
ことにより達成できる。
【0012】次に請求項中記載のb層に関して、その構
成要件について詳しく述べる。TiAl系窒化物等の皮
膜であるb層におけるAlの役割は、皮膜の耐摩耗性お
よび耐酸化性を向上させることである。皮膜の耐摩摩耗
性および耐酸化性は、皮膜中のAl含有量の増加に伴っ
て向上する。しかしながら、75%を越えて含有する
と、皮膜の硬さが低下し、工具として必要な耐摩耗性が
得られなくなる。そのため、耐摩耗性、耐酸化性をバラ
ンス良く得るためには、b層中のAl含有量を、皮膜の
金属成分のみの原子%で、40%越え75%以下に調整
することが重要である。
成要件について詳しく述べる。TiAl系窒化物等の皮
膜であるb層におけるAlの役割は、皮膜の耐摩耗性お
よび耐酸化性を向上させることである。皮膜の耐摩摩耗
性および耐酸化性は、皮膜中のAl含有量の増加に伴っ
て向上する。しかしながら、75%を越えて含有する
と、皮膜の硬さが低下し、工具として必要な耐摩耗性が
得られなくなる。そのため、耐摩耗性、耐酸化性をバラ
ンス良く得るためには、b層中のAl含有量を、皮膜の
金属成分のみの原子%で、40%越え75%以下に調整
することが重要である。
【0013】B、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wは、TiAl系窒化物等の皮膜中に
おいて固溶強化元素として働き、皮膜の高硬度化に有効
である。そのため、必要に応じB、Si、V、Cr、
Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2
種以上を微量添加することが望ましい。しかしながら皮
膜の金属成分のみの原子%で10%以上添加すると、皮
膜の靭性が極端に低下する。そのため、耐摩耗性、耐酸
化性、靭性をバランス良く得るためには、B、Si、
V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wは1
種または2種以上で10%未満とする。
o、Hf、Ta、Wは、TiAl系窒化物等の皮膜中に
おいて固溶強化元素として働き、皮膜の高硬度化に有効
である。そのため、必要に応じB、Si、V、Cr、
Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2
種以上を微量添加することが望ましい。しかしながら皮
膜の金属成分のみの原子%で10%以上添加すると、皮
膜の靭性が極端に低下する。そのため、耐摩耗性、耐酸
化性、靭性をバランス良く得るためには、B、Si、
V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wは1
種または2種以上で10%未満とする。
【0014】上記a層およびb層は、いずれも母材との
密着性においては十分でない。そのため、母材表面直上
には、b層および母材との密着性に優れ、適度に耐摩耗
性、耐酸化性等を有す金属成分としてTiを主体とする
窒化物のc層が必要である。c層はa層およびb層に比
べ硬さの低いTiNであることが望ましいが、TiNに
周期律表IVa族、Va族、VIa族金属およびAl、S
i、Y、Co等を微量に含有する場合、具体的には金属
成分のみの原子%で10at%未満の含有量においても
同様の効果が得られる。
密着性においては十分でない。そのため、母材表面直上
には、b層および母材との密着性に優れ、適度に耐摩耗
性、耐酸化性等を有す金属成分としてTiを主体とする
窒化物のc層が必要である。c層はa層およびb層に比
べ硬さの低いTiNであることが望ましいが、TiNに
周期律表IVa族、Va族、VIa族金属およびAl、S
i、Y、Co等を微量に含有する場合、具体的には金属
成分のみの原子%で10at%未満の含有量においても
同様の効果が得られる。
【0015】c層の層厚は0.1μm以上1μm以下に
限定される。c層の層厚が厚いほど密着性の向上は顕著
になる。しかしながら、一般に切削中においては、刃先
部の皮膜は斜め断面の形態で摩耗するため、a層および
b層に比べ耐酸化性の低いc層より優先的に酸化が進行
する。そのためc層の層厚が厚い場合、つまり切削中の
摩耗によるc層の露出面積が大きい場合は、c層の優先
酸化が顕著となり、切削工具の性能は著しく向上しな
い。また、極端にc層の層厚が薄い場合は、密着性向上
効果が顕著に表れない。以上のような理由からc層の層
厚を0.1μm以上1μm以下とする。望ましくは0.
2μm以上0.4μm以下である。
限定される。c層の層厚が厚いほど密着性の向上は顕著
になる。しかしながら、一般に切削中においては、刃先
部の皮膜は斜め断面の形態で摩耗するため、a層および
b層に比べ耐酸化性の低いc層より優先的に酸化が進行
する。そのためc層の層厚が厚い場合、つまり切削中の
摩耗によるc層の露出面積が大きい場合は、c層の優先
酸化が顕著となり、切削工具の性能は著しく向上しな
い。また、極端にc層の層厚が薄い場合は、密着性向上
効果が顕著に表れない。以上のような理由からc層の層
厚を0.1μm以上1μm以下とする。望ましくは0.
2μm以上0.4μm以下である。
【0016】以上のように本発明においては、母材との
密着性に優れるc層を母材表面直上に被覆し、その上に
皮膜自体の耐摩耗性および耐酸化性をバランス良く有す
NaCl型結晶構造のb層と、著しく耐酸化性に優れる
a層を、b層と同じNaCl型結晶構造の状態で被覆す
ることが極めて重要であり、その結果、乾式の高速切削
に対応する切削工具を得ることが可能となる。また、母
材表面直上にc層を被覆し、その上にb層を被覆した
後、a層ならびにb層をそれぞれ交互に積層した多層皮
膜によっても同様の効果が得られる。
密着性に優れるc層を母材表面直上に被覆し、その上に
皮膜自体の耐摩耗性および耐酸化性をバランス良く有す
NaCl型結晶構造のb層と、著しく耐酸化性に優れる
a層を、b層と同じNaCl型結晶構造の状態で被覆す
ることが極めて重要であり、その結果、乾式の高速切削
に対応する切削工具を得ることが可能となる。また、母
材表面直上にc層を被覆し、その上にb層を被覆した
後、a層ならびにb層をそれぞれ交互に積層した多層皮
膜によっても同様の効果が得られる。
【0017】また、a層およびb層の各層は必要に応じ
て窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれか
に調整でき、それらを被覆した工具についても同様の効
果が得られる。本発明の硬質皮膜被覆工具は、その被覆
方法については、特に限定されるものではないが、被覆
母材への熱影響、工具の疲労強度、皮膜の密着性、およ
びa層とb層の整合性等を考慮した場合、比較的低温で
被覆でき、被覆した皮膜に圧縮応力が残留するアーク放
電方式イオンプレーティング、もしくはスパッタリング
等の被覆母材側にバイアス電圧を印加する物理蒸着法で
あることが望ましい。以下、本発明を実施例に基づいて
説明する。
て窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれか
に調整でき、それらを被覆した工具についても同様の効
果が得られる。本発明の硬質皮膜被覆工具は、その被覆
方法については、特に限定されるものではないが、被覆
母材への熱影響、工具の疲労強度、皮膜の密着性、およ
びa層とb層の整合性等を考慮した場合、比較的低温で
被覆でき、被覆した皮膜に圧縮応力が残留するアーク放
電方式イオンプレーティング、もしくはスパッタリング
等の被覆母材側にバイアス電圧を印加する物理蒸着法で
あることが望ましい。以下、本発明を実施例に基づいて
説明する。
【0018】
【実施例】小型アークイオンプレーティング装置を用
い、金属成分の蒸発源である各種合金製ターゲット、な
らびに反応ガスであるN2ガス、CH4ガス、Ar/O
2混合ガスから目的の皮膜が得られるものを選択し、被
覆基体温度400℃、反応ガス圧力3.0Paの条件下
にて、被覆基体である超硬合金製6枚刃エンドミル(外
径8mm)および超硬合金製ドリル(外径8mm)に、
全皮膜の厚みが4μmとなるように成膜を行った。な
お、本発明例の全てと、比較例54、55、56、5
8、59については、a層ならびにb層ともに−100
Vの同じバイアス電圧を印加し成膜したが、比較例5
1、52、53、57については、a層を−30V、b
層を−200Vとそれぞれ異なったバイアス電圧を印加
し成膜した。また、本発明例ならびに比較例のc層およ
び従来例については、全て−150Vのバイアス電圧を
印加し成膜した。本発明例および比較例のa層およびb
層の厚みについては、基本的にほぼ1:1であるが、表
中の総積層数が2層のものについては、a層を約0.5
μmとしたため、b層は全皮膜の厚みよりa層、c層
(表中記載)を差し引いた層厚である。
い、金属成分の蒸発源である各種合金製ターゲット、な
らびに反応ガスであるN2ガス、CH4ガス、Ar/O
2混合ガスから目的の皮膜が得られるものを選択し、被
覆基体温度400℃、反応ガス圧力3.0Paの条件下
にて、被覆基体である超硬合金製6枚刃エンドミル(外
径8mm)および超硬合金製ドリル(外径8mm)に、
全皮膜の厚みが4μmとなるように成膜を行った。な
お、本発明例の全てと、比較例54、55、56、5
8、59については、a層ならびにb層ともに−100
Vの同じバイアス電圧を印加し成膜したが、比較例5
1、52、53、57については、a層を−30V、b
層を−200Vとそれぞれ異なったバイアス電圧を印加
し成膜した。また、本発明例ならびに比較例のc層およ
び従来例については、全て−150Vのバイアス電圧を
印加し成膜した。本発明例および比較例のa層およびb
層の厚みについては、基本的にほぼ1:1であるが、表
中の総積層数が2層のものについては、a層を約0.5
μmとしたため、b層は全皮膜の厚みよりa層、c層
(表中記載)を差し引いた層厚である。
【0019】得られた硬質皮膜被覆エンドミルおよびド
リルを用い、次に示す乾式の高速切削条件にて、刃先の
欠けないしは摩耗等により工具が切削不能となるまで加
工を行い、その時の切削長,穴あけ数を工具寿命とし
た。表1に本発明例、表2に比較例の硬質皮膜に関する
詳細およびそれらの切削結果を示す。a層の格子定数に
ついてはX線回折より算出した。併せて表3に従来例の
切削結果を示す。
リルを用い、次に示す乾式の高速切削条件にて、刃先の
欠けないしは摩耗等により工具が切削不能となるまで加
工を行い、その時の切削長,穴あけ数を工具寿命とし
た。表1に本発明例、表2に比較例の硬質皮膜に関する
詳細およびそれらの切削結果を示す。a層の格子定数に
ついてはX線回折より算出した。併せて表3に従来例の
切削結果を示す。
【0020】エンドミル切削条件は、工具として超硬合
金製6枚刃エンドミル、外径8mmを用いて、側面切削
をダウンカットで、被削材はSKD11(HRC6
0)、切り込み量Ad=12mm、Rd=0.2mm、
切削速度=200m/min、送り量0.03mm/t
ooth、切削油=なし、但し、エアーブローを使用で
行った。
金製6枚刃エンドミル、外径8mmを用いて、側面切削
をダウンカットで、被削材はSKD11(HRC6
0)、切り込み量Ad=12mm、Rd=0.2mm、
切削速度=200m/min、送り量0.03mm/t
ooth、切削油=なし、但し、エアーブローを使用で
行った。
【0021】次に、ドリルの切削条件は、工具として超
硬合金製ドリル、外径8mmを用いて、被削材SCM4
40(HRC30)の穴加工を、切削速度=90m/m
in、送り量=0.2mm/rev、切削油=なし、但
し、エアーブローを使用し、穴深さ24mmの止まり穴
の加工で行った。また、加工穴数は最高2000穴で終
わりとした。
硬合金製ドリル、外径8mmを用いて、被削材SCM4
40(HRC30)の穴加工を、切削速度=90m/m
in、送り量=0.2mm/rev、切削油=なし、但
し、エアーブローを使用し、穴深さ24mmの止まり穴
の加工で行った。また、加工穴数は最高2000穴で終
わりとした。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】表1、表2および表3より、本発明例は、
比較例ならびに従来例と比べて、工具寿命が著しく向上
しており、乾式高速切削加工に十分対応することがわか
る。比較例51は、皮膜組成については本発明に含まれ
るものであるが、皮膜の層構造が異なるため、エンドミ
ルおよびドリル、両工具の切削において、皮膜の剥離が
早期に生じ、非常に短寿命となった。比較例53、57
は、皮膜の組成、層構造については本発明に含まれるも
のであるが、a層の格子定数が満足していないため、十
分な皮膜硬さが得られず本発明例に比べ短寿命となっ
た。また、比較例59においても、従来例に比べ比較的
良好な工具寿命を示すものの、c層の層厚が厚いため、
本発明例に比べると短寿命である。
比較例ならびに従来例と比べて、工具寿命が著しく向上
しており、乾式高速切削加工に十分対応することがわか
る。比較例51は、皮膜組成については本発明に含まれ
るものであるが、皮膜の層構造が異なるため、エンドミ
ルおよびドリル、両工具の切削において、皮膜の剥離が
早期に生じ、非常に短寿命となった。比較例53、57
は、皮膜の組成、層構造については本発明に含まれるも
のであるが、a層の格子定数が満足していないため、十
分な皮膜硬さが得られず本発明例に比べ短寿命となっ
た。また、比較例59においても、従来例に比べ比較的
良好な工具寿命を示すものの、c層の層厚が厚いため、
本発明例に比べると短寿命である。
【0026】
【発明の効果】以上の如く、本発明の硬質皮膜被覆工具
は、従来の被覆工具に比べ優れた耐酸化性、耐摩耗性を
有すことから、乾式高速切削加工において格段に長い工
具寿命が得られ、切削加工における生産性の向上だけで
なく環境問題への対応にも極めて有効である。
は、従来の被覆工具に比べ優れた耐酸化性、耐摩耗性を
有すことから、乾式高速切削加工において格段に長い工
具寿命が得られ、切削加工における生産性の向上だけで
なく環境問題への対応にも極めて有効である。
Claims (2)
- 【請求項1】 高速度鋼、超硬合金、サーメット、セラ
ミックスの何れかを母材とし、金属成分のみの原子%
で、Siが10%以上60%以下、B、Al、V、C
r、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種また
は2種以上で10%未満、残Tiで構成される窒化物、
炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかであり、N
aCl型結晶構造を有し、かつ格子定数が0.417n
m以上0.423nm以下であるa層と、金属成分のみ
の原子%が、Al:40%越え75%以下、B、Si、
V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1
種または2種以上で10%未満、残Tiで構成される窒
化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかで、
NaCl型結晶構造を有すb層が、それぞれ一層以上交
互に被覆され、かつ母材表面直上には金属成分としてT
iを主体とする窒化物で層厚が0.1μm以上1μm以
下のc層があり、さらにc層直上はb層であることを特
徴とする硬質皮膜被覆工具。 - 【請求項2】 請求項1記載の硬質皮膜を物理蒸着法に
より被覆したことを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13803999A JP3343727B2 (ja) | 1999-05-19 | 1999-05-19 | 硬質皮膜被覆工具 |
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JP2000326107A true JP2000326107A (ja) | 2000-11-28 |
JP3343727B2 JP3343727B2 (ja) | 2002-11-11 |
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ID=15212607
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-
1999
- 1999-05-19 JP JP13803999A patent/JP3343727B2/ja not_active Expired - Fee Related
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