JP2007283478A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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さち子 小池
Makoto Setoyama
誠 瀬戸山
Hideki Moriguchi
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Abstract

【課題】本発明の目的は、被膜から酸化アルミニウムの結晶粒が容易に脱落することを防止することにより優れた耐摩耗性を有する酸化アルミニウム被膜を備えた表面被覆切削工具を提供することにある。
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された1以上の被膜とを備えるものであって、この被膜は、少なくとも酸化アルミニウム被膜を含み、該酸化アルミニウム被膜は、酸化アルミニウムを含む被膜であって、該酸化アルミニウムは、α型の結晶構造を有し、かつその結晶組織の大きさが1nm以上150nm以下であることを特徴としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、基材上に被膜を形成してなる表面被覆切削工具に関する。
切削工具を構成する基材は、その表面保護を目的とするとともに耐摩耗性や靭性等の諸特性の更なる向上を目的として、各種の被膜でその表面を被覆することが行なわれてきた。中でも酸化アルミニウムは、高い硬度を有し耐摩耗性に特に優れる効果が発揮されるとともに、基材の表面酸化を防止する効果が期待されることから、上記基材の表面を被覆する被膜として用いる試みが古くから行なわれてきた。
しかし、そのような被膜に含まれる酸化アルミニウムは通常200nm以上という大きな結晶組織を有することから(特許文献1)、切削時の衝撃により酸化アルミニウムの結晶粒が容易に被膜から脱落し十分な耐摩耗性を示すことができない場合があった。よって、酸化アルミニウムは本質的に高い硬度を有するにもかかわらず、それを用いた被膜はその効果が十分に発揮し得ないという問題があった。
この問題に対して、被膜に含まれる酸化アルミニウムの結晶粒の大きさを200nm未満とする試みが提案されているが(特許文献2、特許文献3)、未だ十分な耐摩耗性の向上は達成されていない。
特開平07−216549号公報 特表2001−522725号公報 特表2002−543992号公報
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被膜から酸化アルミニウムの結晶粒が容易に脱落することを防止することにより優れた耐摩耗性を有する酸化アルミニウム被膜を備えた表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記の従来技術のように被膜に含まれる酸化アルミニウムの結晶粒の大きさを200nm未満というように小さく設定しても十分な耐摩耗性が得られないのは、その酸化アルミニウムの結晶構造がγ型となっているためではないかという知見を得、この知見に基づき酸化アルミニウム被膜を構成する酸化アルミニウムの結晶構成について、その結晶構造と結晶組織の大きさという2つの局面からさらに検討を重ねることによりついに本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された1以上の被膜とを備えるものであって、この被膜は、少なくとも酸化アルミニウム被膜を含み、該酸化アルミニウム被膜は、酸化アルミニウムを含む被膜であって、該酸化アルミニウムは、α型の結晶構造を有し、かつその結晶組織の大きさが1nm以上150nm以下であることを特徴としている。
上記酸化アルミニウムは、柱状の結晶組織を有することが好ましく、上記酸化アルミニウム被膜は、物理蒸着法により形成されていることが好ましい。
また、上記被膜は、さらに補助酸化物被膜を含み、この補助酸化物被膜は、酸化アルミニウム以外の酸化物を含むことが好ましく、上記酸化アルミニウム被膜に接する下層として形成されていることが好ましい。
また、上記酸化アルミニウム被膜は、−4GPa以上3GPa以下の残留応力を有することが好ましく、ZrO2、HfO2、B23またはTiO2の少なくとも1種を含有しているとともに、0.1μm以上10μm以下の膜厚を有していることが好ましい。
また、上記被膜は、さらに周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜を含むことが好ましい。
そして特に上記被膜は、さらにTi、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜を含むことが好ましく、Ti、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される2種以上の層が、各層の厚みを1nm以上100nm以下の厚みとして周期的に積層されてなる被膜を1以上含むことが好ましい。
また、上記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかにより構成されることが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、上述の通りの構成を有することにより、被膜から酸化アルミニウムの結晶粒が容易に脱落することを防止することにより優れた耐摩耗性を有する酸化アルミニウム被膜を備えたものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された1以上の被膜とを備えるものである。このような基本的構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップとして極めて有用である。
<基材>
本発明の表面被覆切削工具の基材としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等をこのような基材の例として挙げることができる。このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。
なお、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていても良く、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。
<被膜>
本発明の表面被覆切削工具の上記基材上に形成される被膜は、1以上の被膜が積層されて形成されるものであり、少なくともその一の被膜として酸化アルミニウム被膜を含むものである。なお、この被膜は、基材上の全面を被覆するもののみに限られるものではなく、部分的に被膜が形成されていない態様をも含む。
また、このような被膜は、さらに補助酸化物被膜を含むことができ、この補助酸化物被膜は上記酸化アルミニウム被膜に接する下層として形成されていることが好ましい。
さらに、このような被膜は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜を含むことができるとともに、さらに他の組成の被膜を含むこともできる。
なお、このような被膜の合計厚み(総膜厚)は、0.5μm以上15μm以下とすることが好ましく、より好ましくはその上限が10μm以下、さらに好ましくは7μm以下、その下限が1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。その厚みが0.5μm未満の場合、耐摩耗性や耐酸化性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、15μmを超えると耐欠損性が低下するため好ましくない。なお、本発明の被膜には、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどが耐摩耗性を低下させない程度に10原子%以下含有する場合を含む。以下、これらの被膜についてさらに詳細に説明する。
<酸化アルミニウム被膜>
本発明の酸化アルミニウム被膜は、酸化アルミニウム(Al23)を含む被膜であって、該酸化アルミニウムは、α型の結晶構造を有し、かつその結晶組織の大きさが1nm以上150nm以下であることを特徴としている。
このように酸化アルミニウム被膜に含まれる酸化アルミニウムの結晶構造をα型(このような結晶構造を有する酸化アルミニウムを以下単にα−Al23と記すこともある)としたことにより、従来のγ型のもの(以下単にγ−Al23と記すこともある)に比べ酸化アルミニウム自体の硬度をさらに向上させたものである。しかも、その結晶組織の大きさを1nm以上150nm以下という微小な特定範囲のものとしたことにより、被膜から酸化アルミニウムが脱落することによる大きな欠損を有効に防止し、以ってこのような結晶構造の高硬度化とこれらの脱落防止作用とが相乗的に作用することにより、工具の耐摩耗性を飛躍的に向上させることに成功したものである。そして、さらに当該被膜により以下のような更なる優れた効果も示され得る。
すなわち、結晶組織の大きさを上記のように微小な範囲のものとしたことにより、被膜の靭性が大幅に向上し以って切削工具の耐欠損性が飛躍的に向上したとともに、工具表面を極めて平滑なものとすることが可能となったことにより被削材の溶着現象が抑制され更なる耐欠損性および耐被膜剥離性の向上による工具寿命の長期化が達成された。また、このような切削工具自体のメリットばかりではなく、この工具により加工された被削材は、その仕上り面が極めて美麗なものになるという優れた効果が示される。
そして、このような酸化アルミニウムは、柱状の結晶組織を有していることが特に好ましい。各結晶組織間の密着性(結合力)が向上し、被膜からの脱落をより一層低減することができるからである。なお、柱状の結晶組織とは、結晶がある方位に優先的に成長して柱状の組織となったものをいう。
ここで、本発明における酸化アルミニウムを含む被膜とは、酸化アルミニウムを主成分として含む被膜を意味し、不可避不純物が包含されていても差し支えない。また、α型の結晶構造とは、結晶学的にコランダム型の結晶構造を有するものであり、X線回折法(XRD)により同定することができるものである。
また、結晶組織とは、個々の結晶粒を意味するものであるが、上記のように結晶組織が柱状となる場合には個々の柱状晶をも含む概念である。そして、その結晶組織の大きさとは、平均値を表わすものであるが、該結晶が柱状の結晶組織の場合には結晶の成長方向に対する垂直方向の幅の平均値を示し、該結晶が粒状の結晶組織の場合には結晶成長の方向性に関係のない単なる各粒径の平均値を示すものとする。そして、このような平均値は結晶組織の種類に拘わらず、透過型電子顕微鏡を用いて酸化アルミニウム被膜の断面(被膜の厚み方向に平行する任意の断面)中における基材表面と平行な所定の長さの任意の線分上に存在する酸化アルミニウムの結晶粒の個数を測定することにより求められ、その所定長さをその結晶粒の個数で除した値を結晶組織の大きさとする。そして、測定精度の向上を目的として、上記の任意の線分として3本の線分について同様の測定を行なうことにより、その平均値を本発明における結晶組織の大きさとする。当該線分の所定長さは、0.15〜0.5μm程度とすることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.5μm程度とするのが好適である。測定誤差を排除し、酸化アルミニウム被膜全体を代表する結晶組織の大きさを決定するのに十分なものであると考えられるからである。
ここで、上記結晶組織の大きさが150nmを超えると、切削加工時において被膜から酸化アルミニウムが容易に脱落するとともに、被膜の表面粗度の平滑化が得られなくなり工具寿命が大幅に低下する。しかも、被削材加工面の美麗さも劣ることになる。一方、その大きさが1nm未満になると、各結晶組織間の結合力が低下し、被膜の強度が大幅に低下する。
このような結晶組織の大きさは、より好ましくはその上限が120nm以下、さらに好ましくは90nm以下であり、その下限が5nm以上、さらに好ましくは10nm以上である。
このような酸化アルミニウム被膜は、上記の酸化アルミニウム以外の成分としてさらにZrO2、HfO2、B23またはTiO2の少なくとも1種を含有していても差し支えない。これらの成分は、酸化アルミニウムに対して0.1質量%以上40質量%以下の配合比で包含されることができる。
またさらに、該酸化アルミニウム被膜は、Si、Cr、Y、Yb等の元素を20原子%以下含有することができる。このように酸化アルミニウム以外の上記各成分を含むことにより、酸化アルミニウムの微細化が促進され高硬度化や断熱性の向上という特性を付与することができる。なお、酸化アルミニウム被膜が上記のような他の成分を含む場合、これらの他の成分は酸化アルミニウムの結晶格子の正規の位置に置換型として入る場合、該結晶格子間に侵入型として入る場合、金属間化合物を形成する場合、非晶質として存在する場合等、いずれの場合も含まれる。
さらに、上記酸化アルミニウム被膜は、−4GPa以上3GPa以下の残留応力を有することが好ましい。これにより、基材または他の被膜との良好な密着性を確保することができるとともに、被覆による効果を十分に得ることができる。
ここで、上記残留応力とは、被膜に残留する内部応力(固有ひずみ)であって、圧縮残留応力と引張残留応力の両者を含む概念である。本発明において単に残留応力という場合は、圧縮残留応力と引張残留応力の両者を含むものとする(なお、残留応力が解放されて応力が0GPaになった状態も便宜的に含むものとする)。
また、上記圧縮残留応力とは「−」(マイナス)の数値(単位:本発明では「GPa」を使う)で表される応力をいう。なお、数値を使わずに圧縮残留応力の大小を表現する場合は、上記数値の絶対値が大きくなる程、圧縮残留応力が大きいと表現し、また上記数値の絶対値が小さくなる程、圧縮残留応力が小さいと表現するものとする。一般に、圧縮残留応力が大きくなる程高い靭性を示す。また、引張残留応力とは、「+」(プラス)の数値(単位:本発明では「GPa」を使う)で表される応力をいう。
なお、このような残留応力は、X線応力測定装置を用いたsin2ψ法により測定することができ、工具のすくい面または逃げ面の平坦部に位置する任意の点3点(これらの各点は当該部位の応力を代表できるように互いに0.5mm以上の距離を離して選択することが好ましい)以上の応力を該sin2ψ法により測定し、その平均値を求めることにより測定することができる。
このようなX線を用いたsin2ψ法は、多結晶材料の残留応力の測定方法として広く用いられているものであり、たとえば「X線応力測定法」(日本材料学会、1981年株式会社養賢堂発行)の54〜67頁に詳細に説明されている方法を用いれば良い。
このような酸化アルミニウム被膜の残留応力は、より好ましくはその上限が2.5GPa以下、さらに好ましくは2GPa以下、その下限が−3.5GPa以上、さらに好ましくは−3GPa以上の範囲とすることが好適である。なお、3GPaを超える残留応力(引張残留応力)を有する場合には、他の被膜や基材との密着性(接合力)が劣る場合がある一方、残留応力が−4GPa未満になると大きな圧縮応力を有することから被膜の自己破壊を生じる場合がある。
また、このような酸化アルミニウム被膜は、0.1μm以上10μm以下の厚み(多層で形成される場合はその全体の厚み)を有することが好ましく、より好ましくはその上限が6μm以下、さらに好ましくは3μm以下、その下限が0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。その厚みが0.1μm未満の場合、高温時に十分な耐酸化性が示されなくなるとともに十分な耐摩耗性を示さなくなる場合があり、10μmを超えると耐欠損性が低下するため好ましくない場合がある。
上記のような優れた特性を有する本発明の酸化アルミニウム被膜は、物理蒸着法により形成することが最適である。基材を劣化させることなく有利に酸化アルミニウム被膜を形成することができるためである。特に、イオンプレーティング法またはスパッタリング法を採用することが好ましい。イオンプレーティング法は比較的低温における処理であるにもかかわらず緻密な被膜を容易に得ることができ、とりわけアークイオンプレーティング法はさらに成膜速度が速く高い生産効率を得ることができるという利点を有する。また、スパッタリング法は、表面平滑な被膜を容易に作成することができ、被削材に対する耐溶着性に優れた被膜となり、同時に被削材の仕上げ面粗度が良好になるという利点を有する。
このような物理蒸着法としては、従来公知の物理蒸着法をいずれも採用することができるが、非導電性材料である酸化アルミニウムを被覆するためには上述のスパッタリング法が好ましい。中でも、カソードにパルス電源を用いたマグネトロンスパッタリング法を採用することが好ましい。また、スパッタリング法とアークイオンプレーティング法との組み合せや酸化アルミニウム中に導電性物質を分散させて導電性を付与し、アークイオンプレーティング法で成膜する方法も採用できる。
そして、上記のようにα型の結晶構造を有し、かつその結晶組織の大きさが1nm以上150nm以下である酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム被膜をこのような物理蒸着法により形成するためには、特に以下のような条件を採用することが好ましい。すなわち、スパッタリング法として反応性スパッタリング法を採用し、かつ基材に印加するバイアス電圧を通常より大きくすることが好ましく、特に大略−500V〜−50Vの範囲のバイアス電圧を段階的に印加することが好ましい。
本発明の被膜は、このような酸化アルミニウム被膜を1または2以上含むことができる。
<補助酸化物被膜>
本発明の被膜は、上記の酸化アルミニウム被膜以外にさらに補助酸化物被膜を含むことができる。そして、このような補助酸化物被膜は、酸化アルミニウム以外の酸化物を含むものであり、上記酸化アルミニウム被膜に接する下層として形成されていることが好ましい。ここで、酸化アルミニウム以外の酸化物を含むとは、そのような酸化物を主成分として含むことを意味し、不可避不純物が包含されていても差し支えない。
このように補助酸化物被膜を上記酸化アルミニウム被膜に接する下層として形成することにより、上記のような物理蒸着法の採用と相俟って、本発明の酸化アルミニウム被膜を極めて有利に形成することができる。これは恐らく、酸化アルミニウムと親和性の高い酸化物でこの補助酸化物被膜を形成することにより、補助酸化物被膜上にα−Al23の結晶核(シード)を極めて高密度に形成することができ、しかもそのように形成された結晶核を極めて均一に成長させることができるためではないかと考えられる。
したがって、このような補助酸化物被膜に含まれる酸化物としては、酸化アルミニウムと親和性の高い酸化物を用いることが好ましく、たとえばCr23、TiO2、SiO2、ZrO2、Ta2O、HfO2等を挙げることができる。
このような補助酸化物被膜は、上記の酸化アルミニウム被膜と同様に物理蒸着法により形成することが好適である。その理由は、第一に補助酸化物被膜に圧縮残留応力を付与するためであり、第二に酸化アルミニウム被膜が物理蒸着法により形成される場合においてこの酸化アルミニウム被膜と同じ成膜方法を採用することにより製造効率を向上させるためである。このような物理蒸着法は、上記の酸化アルミニウム被膜について述べたのと同様の方法を採用することができ、特に酸化アルミニウム被膜と同一の方法を採用することが好適である。
なお、このような補助酸化物被膜は、直接酸化物を形成して被膜とすることができるとともに、一旦金属窒化物等を形成しそれを酸化することにより当該被膜とすることもできる。
また、この補助酸化物被膜は、残留応力を有することが好ましく、これにより基材または他の被膜(特に酸化アルミニウム被膜)と高い密着性を示すものとなる。ここで、残留応力とは、上記の酸化アルミニウム被膜について既に説明した通りの内部応力であって、好ましくは−4GPa以上3GPa以下、さらに好ましくはその上限が2GPa以下、さらに好ましくは1GPa以下、その下限が−3GPa以上、さらに好ましくは−2GPa以上の範囲の応力とすることが好適である。3GPaを超える残留応力を有する場合には、靭性が劣る(耐欠損性が劣る)ことになり、一方、残留応力が−4GPa未満になると圧縮応力が大きくなり過ぎて被膜の自己破壊による剥離を生じる場合がある。なお、このような残留応力は、酸化アルミニウム被膜で説明したsin2ψ法を用いた同様の方法により測定することができる。
また、このような補助酸化物被膜は、0.05μm以上5μm以下の厚みを有することが好ましく、より好ましくはその上限が3μm以下、さらに好ましくは2μm以下であり、その下限が0.1μm以上である。その厚みが0.05μm未満の場合には、好適な酸化アルミニウム被膜を形成できない場合があり、5μmを超えると耐欠損性が低下することがあるため好ましくない。
なお、本発明の補助酸化物被膜は、酸化アルミニウム被膜に接する下層として形成される以外の積層配置で形成することもでき、また2以上の層に分けて形成することもできる。2以上の層に分けて形成される場合、1の層を酸化アルミニウム被膜に接する下層として形成し、他の層はそれ以外の積層配置として形成することができる。
<第3被膜>
本発明の被膜は、上記で説明した各被膜以外に、さらに周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜を含むことができる。本発明では、このような被膜を、便宜的に第3被膜と記すことにする。
そして、このような第3被膜としては、特にTi、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜を含むことが好ましく、Ti、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される2種以上の層が、各層の厚みを1nm以上100nm以下の厚みとして周期的に積層されてなる被膜を1以上含むことが好ましい。
このような第3被膜は、高硬度で耐摩耗性に優れるとともに、極めて優れた靭性を示すものが好ましい。特に、Ti、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜は、耐酸化性および耐熱性に優れていることから特に優れた耐摩耗性が示されるため極めて有効である。なお、該第3被膜は、物理蒸着法により形成されることが好ましく、圧縮残留応力を有していることが好ましい。
このような第3被膜を物理蒸着法により形成することが好適である理由は、第一に第3被膜に圧縮残留応力を付与するためであり、第二に上記の各被膜が物理蒸着法により形成される場合においてこれらの被膜と同じ成膜方法を採用することにより製造効率を向上させるためである。このような物理蒸着法は、上記の酸化アルミニウム被膜について述べたのと同様の方法を採用することができる。
そして、このような第3被膜を構成する元素または化合物としては、たとえば、Cr、Ti、Al、Si、V、Zr、Hf、TiAl、TiSi、AlCr、TiN、TiON、TiCN、TiCNO、TiBN、TiCBN、TiAlCN、AlN、AlCN、AlCrCN、AlON、CrN、CrCN、TiSiN、TiSiCN、Ti23、TiAlON、ZrN、ZrCN、AlZrN、TiAlN、TiAlSiN、TiAlCrSiN、AlCrN、AlCrSiN、TiZrN、TiAlMoN、TiAlNbN、TiSiN、TiSiCN、AlCrTaN、AlTiVN、TiB2、TiCrHfN、CrSiWN、TiAlCN、TiSiCN、AlZrON、AlCrCN、AlHfN、CrSiBON、TiAlWN、AlCrMoCN、TiAlBN、TiAlCrSiBCNO等を挙げることができる。
とりわけ、Ti、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物としては、Ti、Cr、Al、Si、TiAlN、TiAlNO、TiAlCNO、TiBN、TiCBN、TiSiN、TiSiNO、TiSiCNO、CrTiN、CrTiNO、CrTiCNO、SiAlN、SiAlNO、SiAlCNO、CrSiN、CrSiNO、CrSiCNO、SiAlN、SiAlNO、SiAlCNO、CrSiN、CrSiNO、CrSiCNO、TiAlSiN、TiAlSiNO、TiAlSiCNO、TiAlCrN、TiAlCrNO、TiAlCrCNO、TiCrSiN、TiCrSiNO、TiCrSiCNO、AlCrN、AlCrNO、AlCrSiNO、AlCrCNO、AlCrSiBNO等を挙げることができ、特にAlCrN、AlCrNO、AlCrSiNO、AlCrSiBNO、AlCrCNO等が好適である。
なお、上記の化学式において、各元素の原子比が特に記載されていないものは必ずしも等比となるものではなく、従来公知の原子比が全て含まれるものとする。たとえば単にTiNと記す場合、TiとNとの原子比は1:1が含まれる他、2:1、1:0.95、1:0.9等が含まれる(特に断りのない限り、以下において同じ)。
なお、この第3被膜は、これらの元素または化合物を単層または多層として形成することができ、多層の場合はこれらの元素または化合物からなる層を5nm〜5μmの厚みで積層する場合も含む。そして、特にTi、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される2種以上の層が、各層の厚みを1nm以上100nm以下の厚みとして周期的に積層されてなる被膜を1以上含むことが好ましい。このように上記各層を周期的に積層させることにより、耐酸化性および耐熱性がさらに向上し極めて優れた耐摩耗性が示される。ここで、周期的に積層させるとは、たとえば2種の層を上下交互に積層させるなど、一定の周期性をもって積層させることをいう。なお、各層の厚みが1nm未満となる場合や100nmを超える場合には積層による耐摩耗性の向上効果が示されない場合があるが、その場合であってもこれらの元素や化合物によってもたらされる固有の耐摩耗性の向上効果は示される。各層の厚みはより好ましくは5nm以上60nm以下である。
さらに本発明の第3被膜は、上記のように圧縮残留応力を有することが好ましく、これにより高い靭性を示すものとなる。ここで、圧縮残留応力とは、上記の酸化アルミニウム被膜について既に説明した通りの内部応力であって、好ましくは−10GPa以上−1GPa以下、さらに好ましくはその上限が−1.5GPa以下、さらに好ましくは−2GPa以下、その下限が−8GPa以上、さらに好ましくは−7GPa以上の範囲の応力とすることが好適である。−1GPaを超える残留応力を有する場合には、靭性が劣る(耐欠損性が劣る)ことになり、一方、残留応力が−10GPa未満になると圧縮応力が大きくなり過ぎて被膜の自己破壊による剥離を生じる場合がある。なお、このような圧縮残留応力は、酸化アルミニウム被膜で説明したsin2ψ法を用いた同様の方法により測定することができる。また、第3被膜が多層で形成される場合には、最大の圧縮応力(その絶対値が最大となる圧縮応力)を有する層の応力を第3被膜の圧縮残留応力とするものとする。
また、このような第3被膜は、0.3μm以上10μm以下の厚み(多層で形成される場合はその全体の厚み)を有することが好ましく、より好ましくはその上限が7μm以下、さらに好ましくは5μm以下、その下限が0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。その厚みが0.3μm未満の場合には、十分な耐摩耗性が示されなくなるとともに十分な靭性を示さなくなる場合があり、10μmを超えると耐欠損性が低下することがあるため好ましくない。
なお、このような第3被膜は、基材と酸化アルミニウム被膜(あるいは補助酸化物被膜)との間に形成することができるとともに、酸化アルミニウム被膜上に形成することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の各被膜の化学組成はXPS(X線光電子分光分析装置)によって確認し、残留応力は上記に説明したsin2ψ法により3点の平均値を求めることによって算出した。また、以下では被膜を物理蒸着法であるアンバランスドマグネトロンスパッタリング法とカソードアークイオンプレーティング法の組み合わせにより形成しているが、公知の他の物理蒸着法によって成膜した場合も含む。
<表面被覆切削工具の作製>
まず、基材として次の2種を準備した。すなわち、グレードがJIS規格M20のWC基超硬合金であって、切削チップとしての形状がJIS規格CNMG120408であるもの(後述の耐摩耗性試験に使用するもの)およびグレードがJIS規格P20のWC基超硬合金であって、切削チップとしての形状がJIS規格SDEX42MTであるもの(後述の断続切削試験に使用するもの)を準備した(上記のJIS規格は1998年度版のものである)。そして、それぞれの基材に対して以下のような方法により同様にして被膜を形成した。
すなわち、まず上記基材をカソードにパルスDC電源を用いたアンバランスドマグネトロンスパッタリング装置(成膜装置)に装着した。図1は、その成膜装置10の概略構成を示す模式図である。図1に示す成膜装置10内に複数のアーク蒸発源11、12およびアンバランスドマグネトロンスパッタ蒸発源(以下、UBMスパッタ源と呼ぶ)13、14を配置し、中心点Cを中心とし蒸発源11〜14に各対向するようにして回転する保持具17に基材20である上記切削チップを装着した。なお、必要なガスは、ガス導入口15から成膜装置10内へ導入される。また、成膜装置10内にはヒーター16が備えられている。
本実施例では、アーク蒸発源11、12に所定の原料(例えば、TiAl、Ti、Crなど)をセットし、UBMスパッタ源13、14にも所定の原料(例えばAl、Cr、Tiなど)をセットした。すなわち、UBMスパッタ源により酸化アルミニウム被膜を形成し、アーク蒸発源により第3被膜を形成するものである。なお、補助酸化物被膜に関しては、その組成によりセットする蒸発源および原料の種類を変更させた。すなわち、後述の表1および表2に示したように補助酸化物被膜がCr23およびTiO2の場合はAlがセットされていない方のUBMスパッタ源にCrまたはTiをセットし、一旦CrNを生成するもの(No.11)については第3被膜用の原料がセットされない方のアーク蒸発源にCrをセットした。
続いて、真空ポンプにより該装置のチャンバー内を1×10-3Pa以下に減圧するとともに、該装置内に設置されたヒーター16により上記基材20の温度を650℃に加熱し、1時間保持した。
次に、アルゴンガスを導入してチャンバー内の圧力を3.0Paに保持し、基板バイアス電源の電圧を徐々に上げながら−1000Vとし、基材の表面のクリーニングを15分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
次いで、上記基材表面に形成される被膜として、化学組成および積層構成(膜厚、残留応力等)が以下の表1および表2に示したものとなるように上記蒸発源に上記原料(すなわちターゲット)を各々セットした。No.1〜20の工具の酸化アルミニウム被膜については、基材(基板)温度を500〜850℃に設定し、酸素ガスを流しながらUBMスパッタ源にパルスDC電力を加えつつ基材バイアス電圧を−500V〜−50Vまで段階的に制御して反応性スパッタリング法で形成した。また第3被膜については、基材(基板)温度400〜600℃に設定し、真空もしくは反応ガスとして窒素、メタン(炭素源)、酸素のいずれか1以上のガスを導入させながら、アークイオンプレーティング法で上記基材表面に各構成の被膜を形成した。なお、Cr23またはTiO2の補助酸化物被膜に関しては、上記の酸化アルミニウム被膜と同様の条件を採用することにより形成し、No.11の補助酸化物被膜は上記の第3被膜と同様の条件により一旦CrNを形成し、続いて雰囲気ガスを一旦排気した後酸素ガスを1時間供給することによりCr23を形成した。
このようにして、表1および表2に示したNo.1〜28の被膜をそれぞれの基材上に形成した表面被覆切削工具を作製した。No.1〜20が本発明の実施例であり、No.21〜28は比較例である。
なお、No.14の酸化アルミニウム被膜は、上記のUBMスパッタ源のターゲットにHfを8質量%添加することにより、HfO2が7質量%含まれるようにして形成した。同じく、No.15の酸化アルミニウム被膜は、上記のUBMスパッタ源のターゲットにTiを20質量%添加することにより、TiO2が18質量%含まれるようにして形成した。また、No.16の酸化アルミニウム被膜は、上記のUBMスパッタ源のターゲットにZrを6質量%添加することにより、ZrO2が4質量%含まれるようにして形成した。また、No.18の酸化アルミニウム被膜は、上記のUBMスパッタ源のターゲットにBを4質量%添加することにより、B23が2質量%含まれるようにして形成した。
なお、比較例の酸化アルミニウム被膜は、各実施例の酸化アルミニウム被膜の形成条件に代えて、従来公知のプラズマCVD法(成膜温度1000℃)を採用することにより形成させた。
Figure 2007283478
Figure 2007283478
上記表1および表2において、被膜の積層構成は、左のものから順に基材上に積層させたことを示している(表1および表2中において空欄となっているところは、該当する被膜が形成されないことを示している)。また、上記表1が実施例であり、表2は比較例である。
なお、No.18〜20の第3被膜(No.20のTiNは除く)は、2種の層が周期的に積層されてなる被膜であることを示している。たとえば、No.18は、厚み10nmのAlCrCNOからなる層と厚み13nmのTiAlNOからなる層とが周期的に積層(上下交互に積層)して厚み2.0μmの被膜(各層のうち最大の圧縮残留応力が−2.5GPaとなる)が形成されていることを示す(基材上にはまずAlCrCNOからなる層が形成されることを示す)。No.19および20についてもNo.18と同様の内容を示す。このような周期的な積層は、上記成膜装置10において保持具17の回転速度を調節したり、または半回転毎に反応ガスの種類や流量を調節することにより形成することができる。
なお、実施例の酸化アルミニウム被膜においては、酸化アルミニウムの結晶組織が柱状であることを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認した。また、酸化アルミニウム被膜の酸化アルミニウムの結晶組織の大きさは、上述のようにして測定したが、線分の所定長さは0.5μmとした。
そして、これらの表面被覆切削工具について、下記の条件により、耐摩耗性試験と断続切削試験を行なった。その結果を以下の表3および表4に示す。耐摩耗性試験では、逃げ面摩耗量が0.15mmとなる時間を測定し、その時間が長いもの程耐摩耗性に優れていることを示している。また、断続切削試験では、工具が欠損するまでの時間を測定し、その時間が長いもの程耐欠損性(靭性)に優れていることを示している。
<耐摩耗性試験>
被削材:SCM435丸棒
切削速度:250m/min
切込み:2.0mm
送り:0.3mm/rev.
乾式/湿式:乾式
<断続切削試験>
被削材:SCM435
切削速度:350m/min
切込み:2.0mm
送り:0.2mm/rev.
乾式/湿式:乾式
Figure 2007283478
Figure 2007283478
上記表3は実施例の結果であり、表4は比較例の結果である。表3および表4から明らかなように、No.1〜No.20の本発明の実施例の表面被覆切削工具は、いずれも優れた耐摩耗性を有するとともに耐欠損性(靭性)をも兼ね備えるものであった。すなわち、これらの実施例の表面被覆切削工具は、酸化アルミニウム被膜が高硬度を有するα−Al23で構成され、かつその結晶組織の大きさが小さいことからその酸化アルミニウムの結晶粒の脱落が防止されるとともに表面粗度が平滑なため、これらが相乗的に作用して優れた耐摩耗性ならびに耐欠損性(靭性)を示したものと考えられる。また、このように靭性が向上したことに加えて、表面粗度が平滑なものとなったことから被削材の溶着現象が防止され、以ってこれらの相乗作用により耐欠損性が向上したものと考えられる。
なお、No.2〜5と、No.7〜10とを比較すると明らかなように、酸化アルミニウム被膜の下層として補助酸化物被膜を形成すると、耐摩耗性および耐欠損性がさらに向上することを示している。また、第3被膜としてTi、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される2種以上の層を周期的に積層させた被膜を含むNo.18〜20において、特に優れた耐摩耗性が示されたことにより、これらの被膜が優れた耐酸化性および耐熱性を有していることが確認できた。
これに対して、No.21〜No.28の比較例の表面被覆切削工具は、上記実施例のものに比し耐摩耗性も靭性(耐欠損性)も劣っていた。すなわち、酸化アルミニウム被膜が、本発明の要件を備えていなければ酸化アルミニウムの結晶粒が容易に被膜から脱落したり、表面粗度が劣ったりすることにより、耐摩耗性および耐欠損性が劣ることを示している。
なお、本実施例では、基材としてチップブレーカを有するものを用いたが、チップブレーカを有していないものや、切削工具の上下面全面が研磨されたような工具(チップ)でも本実施例と同様の効果を得ることができる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
成膜装置の概略構成を示す模式図である。
符号の説明
10 成膜装置、11,12 アーク蒸発源、13,14 アンバランスドマグネトロンスパッタ蒸発源、15 ガス導入口、16 ヒーター、17 保持具、20 基材。

Claims (12)

  1. 基材と、該基材上に形成された1以上の被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
    前記被膜は、少なくとも酸化アルミニウム被膜を含み、
    前記酸化アルミニウム被膜は、酸化アルミニウムを含む被膜であって、
    前記酸化アルミニウムは、α型の結晶構造を有し、かつその結晶組織の大きさが1nm以上150nm以下であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記酸化アルミニウムは、柱状の結晶組織を有することを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記酸化アルミニウム被膜は、物理蒸着法により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記被膜は、さらに補助酸化物被膜を含み、
    前記補助酸化物被膜は、酸化アルミニウム以外の酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記補助酸化物被膜は、前記酸化アルミニウム被膜に接する下層として形成されていることを特徴とする請求項4記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記酸化アルミニウム被膜は、−4GPa以上3GPa以下の残留応力を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記酸化アルミニウム被膜は、ZrO2、HfO2、B23またはTiO2の少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記酸化アルミニウム被膜は、0.1μm以上10μm以下の膜厚を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  9. 前記被膜は、さらに周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  10. 前記被膜は、さらにTi、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される1以上の被膜を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  11. 前記被膜は、さらにTi、Cr、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、または該元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される2種以上の層が、各層の厚みを1nm以上100nm以下の厚みとして周期的に積層されてなる被膜を1以上含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  12. 前記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかにより構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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