<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態であるデジタル放送受信装置1の構成を示すブロック図である。デジタル放送受信装置1は、アンテナ2と、チューナ部3と、復調部4と、デマルチプレクサ5と、デコーダ6と、バックエンド部7と、AV(Audio Visual)入出力インタフェース12と、リモコン受光部13とを備えて構成される。バックエンド部7は、選局制御部8と、チャンネル情報記憶部9と、エリア情報記憶部10と、メータ情報取得部11とを備える。
アンテナ2は、放送局から送信されるデジタル放送信号を受信可能である。本実施の形態では、デジタル放送受信装置1は、2つのアンテナ2を備えており、ダイバシティ方式で受信動作を行う。具体的には、デジタル放送受信装置1は、各アンテナ2で受信されたデジタル放送信号の強度に基づいて、2つのアンテナ2のうち受信状態の良好なアンテナ2を選択し、選択したアンテナ2で受信されたデジタル放送信号をチューナ部3に与える。
チューナ部3は、アンテナ2から与えられるデジタル放送信号から特定の周波数の信号を抽出する。チューナ部3が、アンテナ2から与えられるデジタル放送信号のうちのいずれの周波数の信号を抽出するかは、後述するバックエンド部7の選局制御部8によって制御される。換言すれば、チューナ部3は、選局制御部8から与えられる所定の制御信号に基づいて、前記特定の周波数の信号を抽出する。前記特定の周波数は、デジタル放送信号に含まれる複数の物理チャンネル(以下、単に「チャンネル」という場合がある)のうち、いずれかのチャンネルの周波数であり、前記特定の周波数の信号を抽出することは、チャンネルを選局することを意味する。チューナ部3によって、チャンネルを選局して、選局したチャンネルで送信されるデジタル放送信号を取得することは、チューナステップに相当する。
チューナ部3は、選局したチャンネルの信号を復調部4に与える。またチューナ部3は、選局したチャンネルの信号の受信強度を表す受信レベル情報を出力する。チューナ部3から出力された受信レベル情報は、バックエンド部7の選局制御部8に与えられる。
復調部4は、チューナ部3から与えられる信号の復調および誤り訂正を行い、トランスポートストリーム(Transport Stream;略称:TS)を出力する。復調部4から出力されるTSは、デマルチプレクサ5に与えられる。また復調部4は、チューナ部3から与えられる信号の受信C/N比(Carrier to Noise ratio)情報、PLL(Phase Locked Loop)ロック情報、フレームロック情報、および誤り率情報の各種情報のうちの少なくともいずれか1つをバックエンド部7の選局制御部8に出力する。
受信C/N比情報とは、受信された搬送波に対し、受信された雑音情報、すなわちノイズがどれだけ存在するかを示す指標であり、受信C/N比の値は、ノイズが大きければ小さく、ノイズが小さければ大きい。ここで、搬送波とは、番組の映像情報および音声情報(以下「映像・音声情報」と総称する場合がある)、ならびに後述する番組配列情報であるサービス情報(Service Information;略称:SI)などの情報を伝送する無線電波信号である。
PLLとは、搬送波受信システムにおいて、受信帯域幅の中心周波数と受信電波の周波数とのずれを補正するために、ずれの大きさだけ局部発振周波数を変化するようにした周波数制御回路である。PLLによって局部発振周波数が、ずれの大きさだけ変化される、すなわちロックされると、PLLロック情報が出力される。
フレームとは、画像1コマのことである。受信したチャンネルに映像および音声のストリームがある場合は、これらがロックされ、デマルチプレクサ5およびデコーダ6にTSパケットが与えられる。フレームがロックされると、フレームロック情報が出力される。
誤り率とは、映像および音声の連続したTSパケットから成るTSストリームにおいて、電波受信状況の悪化または復調するときのエラーなどによって、データに符号誤りが発生した場合の全データに対する符号誤りのデータの割合である。この割合を表す情報が、誤り率情報である。誤りには、散発的に単独で誤りが発生する「ランダム誤り」と、短い区間に多数の誤りが集中する「バースト誤り」とがある。人間の感覚に訴える映像・音声情報では、ランダム誤りのような多少の誤差があっても問題にならないが、バースト誤りに対しては問題になるので、符号順序を入れ替えて、バースト誤りが短い区間に集中しないようにするインターリーブという手法が用いられる。
デマルチプレクサ5は、復調部4から与えられるTSから、番組特定情報(Program Specific Information;略称:PSI)およびSIを抽出し、抽出したPSIおよびSIを、図示しないメモリに記憶させる。
デマルチプレクサ5は、抽出したPSIおよびSIのうちの少なくとも一方、すなわちPSIおよび/またはSI(以下「PSI/SI」という場合がある)から、TS中の映像TSパケットおよび音声TSパケットのうちの少なくとも1種類のTSパケット識別子(Packet Identifier;略称:PID)の値を検出し、TSを各PIDでフィルタリングして、抽出するべき放送サービス(以下、単に「サービス」という場合がある)の信号、具体的には、映像TSパケットおよび音声TSパケットを分離させて抽出する。デマルチプレクサ5は、信号抽出部に相当する。デマルチプレクサ5によって、TSから抽出するべき放送サービスの信号を抽出することは、信号抽出ステップに相当する。
本実施の形態では、映像TSパケットに含まれる映像の形式および音声TSパケットに含まれる音声の形式は、MPEG−2(Moving Picture Experts Group phase 2)である。映像TSパケットに含まれる映像の形式は、MPEG−2に限定されず、本発明の他の実施の形態では、MPEG(Moving picture Experts Group)2−videoでもよいし、MPEG4−AVC(Advanced Video Coding)でもよいし、他の形式の映像でもよい。また音声TSパケットに含まれる音声の形式は、MPEG−2に限定されず、本発明の他の実施の形態では、MPEG2−BC(Backward Compatible)でもよいし、MPEG2―AAC(Advanced Audio Coding)でもよいし、AC3(Dolby AC3:Audio Code Number 3)でもよいし、他の形式の音声でもよい。また、複数の種類の映像TSパケットおよび音声TSパケットを同時に抽出してもよい。
デマルチプレクサ5は、映像TSパケットおよび音声TSパケットのうちの少なくとも1種類のTSパケットをデコーダ6に与える。デマルチプレクサ5は、番組統合テーブルである番組アソシエーションテーブル(Program Association Table;略称:PAT)断絶情報(以下「PAT途絶情報」という場合がある)、番組対応テーブル(Program Map Table;略称:PMT)断絶情報(以下「PMT途絶情報」という場合がある)、TS同期はずれ情報(以下「TS同期ロスト情報」という場合がある)、およびTSパケットの損失情報(以下「TSパケットロスト情報」という場合がある)の各種情報のうちの少なくともいずれか1つを出力する。
放送波はチューナ部3で受信されて、復調部4によって、連続したTSパケットから成るストリームに変換される。1つのTSパケットは、4バイトのTSヘッダと、184バイトのペイロードと呼ばれる本体とから成る。連続したTSパケットから成るストリームであっても、チューナ部3が受信した電波状況によって、TSパケットは必ずしも連続したものになるわけではない。
TS同期ロスト情報とは、TSパケットの先頭4バイトであるTSヘッダの先頭にあるTS同期バイト(0x47の値で固定)が検出されなかった、つまり連続してTSパケットを取れていないことが判明した場合に、TSパケットが損失したことを示す情報である。TS同期ロスト情報は、TSにおいて188バイト毎に同期バイトが検出されない場合に発せられる。
TSパケットロスト情報は、TSパケットの先頭4バイトのTSヘッダ中に存在する連続カウンタ値が不連続であることを検出したときに発せられる。たとえば、あるTSパケットの連続カウンタ値が「169」であり、次のTSパケットの連続カウンタ値が「170」であれば、これらのTSパケットは連続しているが、あるTSパケットの連続カウンタ値が「169」であり、次のTSパケットの連続カウンタ値が「172」であれば、これらのTSパケットは連続していない。
PMTとは、番組を構成する各符号化信号を伝送するTSパケットのPIDが記載されているものであり、このPMTを伝送するTSパケットのPIDが記載されているものがPATである。このPATおよびPMTの少なくともいずれか1つが取得できれば、映像・音声信号のデコードがほぼ確実となる。PAT途絶情報は、PATが予め定める時間間隔で受信できなかった場合に発せられ、PMT途絶情報は、PMTが予め定める時間間隔で受信できなかった場合に発せられる。
TSには複数のサービスが含まれていることがある。デマルチプレクサ5が、TSに含まれるサービスのうちのいずれのサービスを選局するかは、後述する選局制御部8によって制御される。換言すれば、デマルチプレクサ5は、選局制御部8から与えられる所定の制御信号に基づいて、TSに含まれるサービスを選局する。
デコーダ6は、本実施の形態では、MPEG−2デコーダによって実現される。デコーダ6は、これに限定されるものではなく、映像TSパケットに含まれる映像の形式および音声TSパケットに含まれる音声の形式に応じて、適宜選択される。
デコーダ6は、デマルチプレクサ5から与えられる映像TSパケットおよび音声TSパケットのうちの少なくとも1種類のTSパケットのデコードを行う。デコーダ6は、映像パケットの復号された映像信号および音声パケットの復号された音声信号を、AV入出力インタフェース12を介してケーブル14で接続される映像音声出力装置15に出力する。AV入出力インタフェース12は、信号出力部に相当する。映像音声出力装置15は、たとえばテレビジョン受像機によって実現される。デマルチプレクサ5で抽出されて与えられる放送サービスの信号を、デコーダ6でデコードして、AV入出力インタフェース12によって出力することは、信号出力ステップに相当する。
またデコーダ6は、映像TSパケットのデコード、および音声TSパケットのデコードのうち少なくともいずれか一方の処理が不可能な状態になったとき、デコードエラー情報を出力する。デコードエラー情報としては、デコードエラーが検出されたことを表すデコードエラー検出情報、およびデコードエラー率を表すデコードエラー率情報のうちの少なくともいずれか1つが出力される。
デマルチプレクサ5から出力されるTSストリームは、エンコード、すなわちデジタルデータが一定規則に従って符号変換されたものであり、そのままの状態では再生できない。これを再生するためには、このエンコードされたデータをデコードしなくてはならない。ここで、デコードとは、エンコードの対義語で復号の意であり、エンコードされたデータを元に戻すことをいう。このデコードのときに、誤ってデコードされたデータの全データに対する割合が、デコードエラー率である。
デジタル放送受信装置1は、リモコン受光部13によって、リモートコントローラ(以下「リモコン」という)16と無線通信可能に構成される。利用者によるリモコン16の操作によって送信された選局指示をリモコン受光部13が受信すると、前記選局指示はバックエンド部7、具体的にはバックエンド部7の選局制御部8に与えられる。選局制御部8は、リモコン受光部13から与えられる前記選局指示を受けて、後述するチャンネル情報記憶部9に記憶される地上ネットワークテーブルに記載されたチャンネル情報を取得し、そのチャンネル情報に基づいて選局を行う。具体的には、選局制御部8は、取得したチャンネル情報に基づいて、チューナ部3に対して、選局するべき物理チャンネルを指示する。
デジタル放送受信装置1が、車両などの移動体に搭載、または利用者に携帯されて利用される場合、移動体または利用者の移動に伴って、デジタル放送受信装置1の受信位置が移動する。これによって、受信位置が視聴中の番組の放送局のサービス地域外になったり、地上の構造物による搬送波の遮断および減衰などの影響を受けたりする場合がある。そのような場合には視聴中の番組を放送している放送局からのデジタル放送信号を受信することが不可能となる。このように放送局からのデジタル放送信号を受信することが不可能である状態(以下「受信不可状態」という場合がある)は、選局制御部8によって検出される。
選局制御部8は、チューナ部3、復調部4、デマルチプレクサ5およびデコーダ6から出力される前記各種情報のうちの少なくともいずれか1つに基づいて、「受信不可状態」であることを検出する。
たとえば、選局制御部8は、チューナ部3から与えられる受信レベル情報に基づいて、受信不可状態であることを検出する。具体的には、選局制御部8は、受信レベル情報が表す受信レベルが所定の閾値未満である場合に、受信不可状態であると判断する。
また選局制御部8は、たとえば、復調部4から与えられる受信C/N比情報に基づいて、受信不可状態であることを検出する。具体的には、選局制御部8は、受信C/N比情報が表すC/N比が所定の閾値未満である場合に、受信不可状態であると判断する。また選局制御部8は、たとえば、復調部4から与えられるPLLロック情報に基づいて、PLLロックがはずれたと判断されるときに、受信不可状態であると判断する。また選局制御部8は、たとえば、復調部4から与えられるフレームロック情報に基づいて、フレームロックがはずれたと判断されるときに、受信不可状態であると判断する。また選局制御部8は、たとえば、復調部4から与えられる誤り率情報に基づいて、受信不可状態であることを検出する。具体的には、選局制御部8は、誤り率が所定の閾値を超えると、受信不可状態であると判断する。
また選局制御部8は、たとえば、デマルチプレクサ5から与えられるPAT途絶情報に基づいて、PATの途絶が検出されたと判断されるときに、受信不可状態であると判断する。また選局制御部8は、たとえば、デマルチプレクサ5から与えられるPMT途絶情報に基づいて、PMTの途絶が検出されたと判断されるときに、受信不可状態であると判断する。また選局制御部8は、たとえば、デマルチプレクサ5から与えられるTS同期ロスト情報に基づいて、TS同期ロストが検出されたと判断されるときに、受信不可状態であると判断する。また選局制御部8は、デマルチプレクサ5から与えられるTSパケットの損失情報に基づいて、TSパケットの損失が検出されたと判断されるときに、受信不可状態であると判断する。
また選局制御部8は、たとえば、デコーダ6から与えられるデコードエラー検出情報に基づいて、デコードエラーが検出されたと判断されるときに、受信不可状態であると判断する。また選局制御部8は、たとえば、デコーダ6から与えられるデコードエラー率情報に基づいて、デコードエラー率が所定の閾値以上であると判断されるときに、受信不可状態であると判断する。
選局制御部8は、利用者からの選局要求、および受信の可否に基づいて、いずれの物理チャンネルを選局するかを決定し、チューナ部3およびデマルチプレクサ5を制御して、決定した物理チャンネルを選局させる。具体的には、選局制御部8は、チューナ部3に対して、選局するべき物理チャンネルを指示するとともに、デマルチプレクサ5に対して、抽出するべき放送サービスを指示する。選局制御部8によって、チューナ部3に対して、選局するべき物理チャンネルを指示するとともに、デマルチプレクサ5に対して、抽出するべき放送サービスを指示することは、選局制御ステップに相当する。
チャンネル情報記憶部9は、デジタル放送信号を受信可能な地域と、その地域で受信可能なデジタル放送信号が送信される物理チャンネルとを対応付けたチャンネル情報を記憶する。チャンネル情報記憶部9にチャンネル情報を記憶することは、チャンネル情報記憶ステップに相当する。チャンネル情報記憶部9は、具体的には、デジタル放送受信装置1の現在位置で受信できるデジタル放送信号の物理チャンネルを表すチャンネル情報を、受信可能な全チャンネルに対して管理する地上ネットワークテーブルを記憶している。
エリア情報記憶部10は、デジタル放送信号を受信可能な地域と、その地域に隣接する地域(以下「隣接地域」という場合がある)とを対応付けた隣接地域情報を記憶する。エリア情報記憶部10に隣接地域情報を記憶することは、エリア情報記憶ステップに相当する。エリア情報記憶部10は、本実施の形態では、隣接地域情報として、地域を識別するために地域毎に定められるネットワークID(略称:nwID)と、それに対応する地域の地域管理番号、nwIDのエリアで受信できる可能性があるデジタル放送信号の物理チャンネル、およびnwIDのエリアの隣接地域と判断された地域の地域管理番号のリストである隣接地域テーブルを記憶する。
隣接地域テーブルには、nwID、ならびにそのnwIDに対応する地域の地域管理番号、物理チャンネルおよび隣接地域の地域管理番号の他に、nwIDに対応する地域のサービス名およびTs_IDなどの、受信可能な放送サービスに関するサービス情報などの他のデータが含まれていてもよい。本実施の形態では、隣接地域テーブルは、nwIDと、そのnwIDに対応する地域の地域管理番号、物理チャンネル、サービス名、Ts_IDおよび隣接地域の地域管理番号を含む。隣接地域テーブルの、ある1つの地域管理番号には、複数の物理チャンネル、Ts_ID、およびサービス名が登録されることがある。さらに、同一の物理チャンネル、Ts_ID、およびサービス名が他の地域管理番号に登録されることがあってもよい。
選局制御部8は、視聴中のチャンネルのサービスが受信不可状態となった場合に、エリア情報記憶部10に記憶された隣接地域テーブルから、それまで視聴していたチャンネルのnwIDに基づいて、それまで視聴していた地域の地域管理番号とその地域管理番号に対応する隣接地域とを取得することができる。それまで視聴していたチャンネルのサービスと同一のサービスのサーチを行う場合には、隣接地域に登録されたサービスの中からサービス名またはTs_IDが同一のサービスを探し、そのサービスを放送している物理チャンネルからサーチを行えばよい。
メータ情報取得部11は、たとえばデジタル放送受信装置1が移動体に搭載されて利用される場合に、デジタル放送受信装置1が搭載された移動体が移動したときの速度および移動距離などの情報を、移動体たとえば自動車の速度メータおよび距離メータなどのメータから取得し、取得した情報をメータ情報として選局制御部8に与える。
次に、デジタル放送受信装置1が利用者によって選択された特定のサービスを受信中に他の地域へ移動したことによって当該サービスを受信できなくなり、同一のサービスをサーチする場合について説明する。図2は、デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が、第1地域Aから第2地域B、第2地域Bから第3地域C、第3地域Cから第4地域D、第4地域Dから第1地域Aへと順に移動する様子を模式的に示す図である。図2では、第1〜第4地域A〜Dの地域境界線20を二点鎖線で示しており、本実施の形態の各地域A〜Dは4本の地域境界線20で囲まれた長方形の領域である。
本実施の形態では、移動体が第1地域Aから第2地域B、第2地域Bから第3地域C、第3地域Cから第4地域D、第4地域Dから第1地域Aへと順に移動することを想定している。第1地域Aは、第2地域Bおよび第4地域Dと隣接し、第3地域Cは、第4地域Dと隣接している。また本実施の形態では、図2に示すように、第2地域Bと第3地域Cとの間に、いずれの地点の電波状態も極めて悪い地域(以下「難受信地域」という場合がある)Rが存在することを想定している。第1地域AのnwIDは「0x0010」であり、第2地域BのnwIDは「0x002C」であり、第3地域CのnwIDは「0x00F4」であり、第4地域DのnwIDは「0x0107」である。
図3は、チャンネル情報記憶部9に記憶されている第1地域Aにおける地上ネットワークテーブル30の一例を示す図である。図4は、チャンネル情報記憶部9に記憶されている第2地域Bにおける地上ネットワークテーブル31の一例を示す図である。移動体が図2に示す第1地域Aから第2地域Bに移動した場合には、参照すべき地上ネットワークテーブルが、図3に示す第1地域Aにおける地上ネットワークテーブル(以下「第1地域A用地域ネットワークテーブル」という場合がある)30から、図4に示す第2地域Bにおける地上ネットワークテーブル(以下「第2地域B用地域ネットワークテーブル」という場合がある)31へと変更される。
第1地域A用地上ネットワークテーブル30には、図3に示すように、Ts_IDが「0xF1A0」のサービスとして、物理チャンネル(略称:物理Ch)が「10」、サービス名が「BBC News」、マルチ周波数ネットワーク(Multi Frequency Network;略称:MFN)のチャンネル(略称:MFN Ch)が「20,30」のサービスと、Ts_IDが「0xF3C6」のサービスとして、物理Chが「13」、サービス名が「BBC Weather」、MFN Chが「14,31」のサービスと、Ts_IDが「0xFFA0」のサービスとして、物理Chが「17」、サービス名が「SBS Dorama」、MFN Chが「−(なし)」のサービスと、Ts_IDが「0xFFB0」のサービスとして、物理Chが「21」、サービス名が「Quiz Frontier」、MFN Chが「38」のサービスとが記憶されている。
また第2地域B用地上ネットワークテーブル31には、図4に示すように、Ts_IDが「0xE060」のサービスとして、物理Chが「12」、サービス名が「CNN Sports」、MFN Chが「25」のサービスと、Ts_IDが「0xF1A0」のサービスとして、物理チャンネルが「31」、サービス名が「BBC News」、MFN Chが「46」のサービスと、Ts_IDが「0xF3C6」のサービスとして、物理チャンネルが「38」、サービス名が「BBC Weather」、MFN Chが「−(なし)」のサービスとが記憶されている。
図3および図4に示す第1地域Aおよび第2地域Bにおける地上ネットワークテーブル30,31から、第1地域Aと第2地域Bとで放送する物理チャンネルは異なるが、「BBC News」S1および「BBC Weather」S2は、それぞれ同一のサービス名および同一のTs_IDで放送されていることがわかる。
移動体が、たとえば第1地域Aを移動している間は、デジタル放送受信装置1は、チャンネル情報記憶部9に記憶されている図3に示す第1地域A用地上ネットワークテーブル30を参照して、サービスのチャンネル情報を取得している。第1地域A用地上ネットワークテーブル30に限らず、各地域の地上ネットワークテーブルは、一度チャンネルスキャンをした後は、チャンネル情報記憶部9に地域毎の全ての地上ネットワークテーブルが保持されていてもよいし、移動体の移動によってデジタル放送受信装置1が位置する地域が移動し、移動前の地域の地上ネットワークテーブルを参照する必要がなくなった場合は削除されてもよい。移動前の地上ネットワークテーブルを削除するように構成される場合は、デジタル放送受信装置1は、地域が移動する毎に全てのチャンネルのスキャンを行い、各チャンネルのチャンネル情報を取得し、その地域の地上ネットワークテーブルを新たに作成する。
図5は、本発明の第1の実施の形態における同一サービスの各地域における受信状況と経過時間との関係を示すグラフである。図5に示す例では、サービス「BBC News」の受信状況と経過時間との関係を示す。図5において、横軸は、移動開始からの経過時間[s]を表し、縦軸は、各経過時間におけるデジタル放送受信装置1の現在位置の地域を表す。図5では、サービスの視聴可能時間、すなわち受信可能時間を黒塗りで示し、同一サービスのサーチを実行している時間を白抜きで示している。
まず、移動体に搭載されたデジタル放送受信装置1が、第1地域A(nwID=0x0010)において、サービス「BBC News」を受信しているものとする。サービス「BBC News」を受信中に、デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が第1地域Aから第2地域B(nwID=0x002C)に移動し、サービスが受信不可となった時刻をt1とする。受信不可となると、デジタル放送受信装置1は、第2地域Bにおいて、同一サービスのサーチを実行する。サーチによって第2地域Bにおいてサービス「BBC News」が受信可能となり、利用者によって視聴可能となった時刻をt2とする。
さらに、サービス「BBC News」を受信中に移動体が第2地域Bから難受信地域Rに移動し、サービスが受信不可となった時刻をt3とする。難受信地域Rにおいては、同一サービスのサーチを実行しても同一サービスを受信することができないので、サーチが継続される。その後、移動体が難受信地域Rから第3地域C(nwID=0x00F4)に移動し、第3地域Cにおいて同一サービスのサーチを実行し、サービス「BBC News」が受信可能となり、利用者によって視聴可能となった時刻をt4とする。
続けて移動体が第3地域Cから第4地域D(nwID=0x0107)に移動し、サービスが受信不可となった時刻をt5とする。第4地域Dにおいて同一サービスのサーチを実行し、サービス「BBC News」が受信可能となり、利用者が視聴可能となった時刻をt6とする。続けて移動体が第4地域Dから元の第1地域Aに移動し、サービスが受信不可となった時刻をt7とし、第1地域Aにおいて同一サービスのサーチを実行し、サービス「BBC News」が受信可能となり、利用者が視聴可能となった時刻をt8とする。
図6は、本発明の第1の実施の形態におけるエリア情報記憶部10に記憶される隣接地域テーブル32を示す図である。デジタル放送受信装置1は、図5に示すように、特定サービスを受信中に他の地域へ移動し、当該サービスを受信できなくなったときは、同一サービスをサーチする。サーチの結果、前記サービスを受信することができた場合は、デジタル放送受信装置1のエリア情報記憶部10に記憶されている隣接地域テーブル32が更新される。
本実施の形態では、図6に示すように、隣接地域テーブル32は、地域を表す「A」および「B」などの地域管理番号と、地域管理番号で表される地域に対応するnwIDと、地域管理番号で表される地域の隣接地域とを関連付けて記憶している。隣接地域は、「A」および「B」などの地域管理番号を用いて記憶される。また本実施の形態では、チャンネル情報記憶部9に記憶される地上ネットワークテーブルから、サービス名、Ts_IDおよび物理チャンネルなどの情報を地域管理番号毎の情報として、隣接地域テーブル32に記憶するように構成されている。
前述のように、デジタル放送受信装置1は、あるサービスを受信中に地域の移動によってサービスが受信不可となり、利用者が視聴不可となった場合は、移動先の地域において同一サービスのサーチを実行する。本実施の形態では、デジタル放送受信装置1は、サービスが受信不可となった時刻から、サービスが受信可能となる時刻までの時間を求め、求めた時間が予め定める閾値(以下「閾値時間」という場合がある)ΔT以下であれば、移動先の地域を移動元の地域の隣接地域として登録し、求めた時間が閾値時間ΔTを超えていれば、移動先の地域を移動元の地域の隣接地域として登録しない。閾値時間ΔTは、バックエンド部7のソフトウェア内で適切に定義されるものであり、仕様によって決まる。具体的には、閾値時間ΔTは、実際の走行試験および放送エリアのマップなどに基づいて、仕様に応じて決められる。
閾値時間ΔTは、たとえば、前述の図2に示す第2地域Bと第3地域Cとが互いに隣接地域であると判断されないように、第2地域Bと第3地域Cとの間に介在される難受信地域Rを移動する時間よりも短い時間に設定される。この場合、前述の図5に示すグラフにおいて、(t2−t1)≦ΔT、(t4−t3)>ΔT、(t6−t5)≦ΔT、(t8−t7)≦ΔTであるので、第1地域Aと第2地域B、第3地域Cと第4地域D、ならびに第4地域Dと第1地域Aとは、互いに隣接地域であると判断されるが、第2地域Bと第3地域Cとは互いに隣接地域ではないと判断される。したがって図6に示すように、隣接地域テーブル32において、第1地域Aの隣接地域には、第2地域Bおよび第4地域Dが登録され、第4地域Dの隣接地域には、第1地域Aおよび第3地域Cが登録されるが、第2地域Bの隣接地域には、第1地域Aのみが登録され、第3地域Cの隣接地域には、第4地域Dのみが登録される。
図7および図8は、本発明の第1の実施の形態におけるデジタル放送受信装置1の同一サービスのサーチ動作に関する選局制御部8の処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、移動体に搭載されたデジタル放送受信装置1が、アンテナ2を介してデジタル放送信号を受信し、復号した映像信号および音声信号を、AV入出力インタフェース12を介して映像音声出力装置15に出力していることを前提とする。換言すれば、デジタル放送受信装置1の利用者が、デジタル放送受信装置1によって復号された特定のサービス、たとえばサービス「BBC News」を、映像音声出力装置15によって視聴していることを前提とする。
デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が各地域を移動する過程で、サービスが受信不可となり、利用者が視聴不可となったときに、同一サービスのサーチを行う場合、選局制御部8は、図7および図8に示すフローチャートに従った動作をする。図7および図8に示すフローチャートの処理は、利用者によってデジタル放送受信装置1の電源が投入、すなわちオンされ、デジタル放送受信装置1に電力が供給されると開始され、ステップa1に移行する。
ステップa1では、選局制御部8は、利用者によって選択されたサービスが受信不可であるか否かを判断し、受信不可であると判断した場合は、ステップa2に移行し、受信不可ではない、つまり受信可能であると判断した場合は、受信不可であると判断されるまで待機する。たとえば前述の図2に示すように、第1地域Aから第2地域Bに移動した場合、利用者が視聴中のサービスが受信不可であると判断され、ステップa2に移行する。
ステップa2では、選局制御部8は、エリア情報記憶部10の隣接地域テーブル32に、受信不可となる前の地域、すなわち移動前の地域に対して、隣接地域が登録されているか否かを判断し、登録されていると判断した場合は、ステップa3に移行し、登録されていないと判断した場合は、図8のステップa7に移行する。
ステップa3では、選局制御部8は、エリア情報記憶部10に記憶された隣接地域テーブル32から、受信不可となる前の地域に対応する隣接地域欄に登録された隣接地域の中から地域を1つ選択し、選択した隣接地域に対応する欄に記載されたチャンネル情報を参照して、この隣接地域において、利用者によって選択されたサービスと同一のサービス(以下「同一サービス」という場合がある)を放送している物理チャンネルとして、物理チャンネル欄に登録されている物理チャンネルを求め、求めた物理チャンネルをサーチし、ステップa4に移行する。
本実施の形態では、選局制御部8は、選択した隣接地域に対応するサービス名欄に登録されたサービス名が、受信していたサービスのサービス名と一致するか、または選択した隣接地域に対応するTs_ID欄に登録されたTs_IDが、受信していたサービスのTs_IDと一致する場合に、同一のサービスであると判断する。そして、選局制御部8は、同一のサービスであると判断されたサービスを放送している物理チャンネルとして、物理チャンネル欄に登録されている物理チャンネルを求め、求めた物理チャンネルのサーチを行う。
たとえば、第1地域Aから第2地域Bに移動した場合、選局制御部8は、隣接地域テーブル32から、受信不可となる前の地域である第1地域に対応する隣接地域欄に登録された隣接地域、すなわち第2地域Bおよび第4地域Dを求める。選局制御部8は、これらの隣接地域B,Dの中から1つの地域、たとえば第2地域Bを選択し、第2地域B欄に記載されたサービス名またはTs_IDから同一サービスであると判断し、この同一サービスが登録されている物理チャンネルをサーチする。
ステップa4では、選局制御部8は、同一サービスを受信可能であるか否かを判断し、同一サービスを受信可能であると判断した場合は、ステップa5に移行し、同一サービスを受信可能でない、すなわち受信不可能であると判断した場合は、ステップa6に移行する。
ステップa5では、選局制御部8は、チューナ部3を制御して、見つかった同一サービスのチャンネルを選局する。ステップa5の処理の終了後は、ステップa1に戻り、前述の処理を繰返す。
ステップa6では、選局制御部8は、受信不可となる前の地域に対して登録されている全ての隣接地域でサーチが終了したか否かを判断し、全ての隣接地域でサーチが終了していると判断した場合は、図8のステップa7に移行し、サーチが終了していないと判断した場合は、ステップa3に戻り、隣接地域テーブル32の隣接地域欄に登録された隣接地域から先程選択した地域とは異なる地域を選択して、前述の処理を繰返す。たとえば、第1地域Aから第2地域Bに移動した場合に、先のステップa3において第2地域Bが選択された場合は、選局制御部8は、ステップa3において第4地域Dを選択し、第4地域D欄に記載されたサービス名またはTs_IDが一致するサービスを同一サービスであると判断して、そのサービス名欄またはTs_ID欄に対応する物理チャンネル欄に登録されている物理チャンネルをサーチする。
続いて図8のステップa7では、選局制御部8は、デジタル放送受信装置1の現在位置の地域における地上ネットワークテーブルがチャンネル情報記憶部9に記憶されているか否かを判断し、記憶されていると判断した場合は、ステップa10に移行し、記憶されていないと判断した場合は、ステップa8に移行する。
ステップa8では、選局制御部8は、チャンネルスキャンを行い、現在位置の地域における地上ネットワークテーブルを作成した後、ステップa9に移行する。ステップa9では、選局制御部8は、作成した地上ネットワークテーブルをチャンネル情報記憶部9に記憶させ、ステップa10に移行する。
ステップa10では、選局制御部8は、チャンネル情報記憶部9に記憶された、現在位置の地域における地上ネットワークテーブルを取得し、ステップa11に移行する。
ステップa11では、選局制御部8は、ステップa10で取得した地上ネットワークテーブルから同一サービスをサーチする。具体的には、選局制御部8は、ステップa10で取得した地上ネットワークテーブルに登録された物理チャンネルに対して、先程まで受信可能であった特定のサービス、たとえばサービス「BBC News」と同一のサービスのサーチを行う。サーチは、本実施の形態では、地域ネットワークテーブルに登録されたサービス名またはTs_IDが、先程まで受信可能であったサービスと一致するか否かに基づいて行われる。
ステップa12では、選局制御部8は、同一サービスを受信可能であるか否かを判断し、同一サービスを受信可能であると判断した場合は、ステップa13に移行し、同一サービスを受信可能でない、すなわち受信不可能であると判断した場合は、ステップa16に移行する。選局制御部8は、ステップa10で取得した地域ネットワークテーブルに登録されたサービス名またはTs_IDが、先程まで受信可能であったサービスと一致するか否かを判断し、一致する場合は、同一サービスを受信可能であると判断し、一致しない場合は、同一サービスを受信可能でない、すなわち受信不可能であると判断する。
このように選局制御部8は、現在位置の地域における地域ネットワークテーブルを参照して、同一サービスのサーチを行う。たとえば第1地域Aから第2地域Bに移動してステップa1で受信不可であると判断された場合、選局制御部8は、チャンネル情報記憶部9に格納された第2地域B用地上ネットワークテーブル31を参照する。第2地域B用地上ネットワークテーブル31がチャンネル情報記憶部9に記憶されていない場合には、選局制御部8は、ステップa8において、チャンネルスキャンを行って第2地域B用地上ネットワークテーブル31を作成する必要がある。
ステップa13では、選局制御部8は、現在位置の地域が、受信不可となる前の地域の隣接地域として隣接地域テーブル32に登録されているか否かを判断し、隣接地域として登録されていると判断した場合は、図7のステップa5に移行し、隣接地域として登録されていないと判断した場合は、ステップa14に移行する。
ステップa14では、選局制御部8は、受信していたサービスが受信不可となった時刻から受信可能となった時刻までの経過時間が、予め定める閾値である閾値時間ΔT以下であるか否かを判断する。たとえば移動体が第1地域Aから第2地域Bに移動した場合、選局制御部8は、第1地域Aにて受信していた特定のサービスが受信不可となった時刻t1から、同一サービスのサーチによって第2地域Bにて同一サービスの受信が可能となった時刻t2までの経過時間(t2−t1)を求め、この経過時間(t2−t1)が閾値時間ΔT以下であるか否かを判断する。選局制御部8は、経過時間が閾値時間ΔT以下であると判断した場合は、ステップa15に移行し、経過時間が閾値時間ΔTを超えると判断した場合は、図7のステップa5に移行し、前述の処理を行う。
ステップa15では、選局制御部8は、エリア情報記憶部10内の隣接地域テーブル32の受信不可となる前の地域と、同一サービスが受信可能となった地域とを、互いに隣接地域として隣接地域テーブル32に登録する。具体的には、選局制御部8は、隣接地域テーブル32の受信不可となる前の地域、たとえば第1地域Aの欄に対応する隣接地域欄に、受信可能となった地域、たとえば第2地域Bを登録し、続けて第2地域B欄に対応する隣接地域欄に第1地域Aを登録する。
ステップa15の処理の終了後は、図7のステップa5に移行し、同一サービスの受信を続ける。前述のステップa14で経過時間が閾値時間ΔTを超えていると判断された場合、選局制御部8は、ステップa15を経ずに図7のステップa5に移行、すなわち隣接地域テーブル32への隣接地域の登録を行わずに、そのままステップa5に移行し、同一サービスの受信を続ける。
ステップa16では、選局制御部8は、ステップa10で取得した地上ネットワークテーブルに登録されている全てのチャンネルのサーチが終了したか否かを判断する。選局制御部8は、全てのチャンネルのサーチが終了していると判断した場合は、図7のステップa1に戻り、新たなチャンネルを選局することなく、前述の処理を繰返す。選局制御部8は、全てのチャンネルのサーチが終了していないと判断した場合は、ステップa11に戻り、他のチャンネルについて、前述の処理を繰返す、すなわち同一サービスのサーチを再度行う。
以上のように本実施の形態によれば、選局制御部8の指示に基づいて、チューナ部3で物理チャンネルが選局されて、その物理チャンネルで送信されるデジタル放送信号が取得され、このデジタル放送信号から、目的とする放送サービスの信号がデマルチプレクサ5で抽出され、AV入出力インタフェース12によって出力される。エリア情報記憶部10には隣接地域情報として、隣接地域テーブル32が記憶され、チャンネル情報記憶部9には各地域のチャンネル情報として、地上ネットワークテーブルが記憶される。
図2に示すように、デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が地域間を移動することによって、放送サービスが受信可能状態から受信不可状態に変化すると、図7および図8に示すフローチャートに従って、受信していた放送サービスと同一の放送サービスが選局制御部8によってサーチされる。
現在位置の地域が隣接地域テーブル32に隣接地域として登録されていない場合、図8のステップa14において、受信していたサービスが受信不可状態になった時点から、そのサービスと同一のサービスがサーチによって受信可能となる時点までの経過時間が求められる。その経過時間が閾値時間ΔT以下であると判断されると、ステップa15において、受信可能状態のときに位置していた地域と、サーチによって同一のサービスが受信可能となった地域とが、互いに隣接する隣接地域として隣接地域テーブル32に登録される。
これによって選局制御部8は、次回のサーチのときには、図7のステップa3において、隣接地域テーブル32に登録されている隣接地域のチャンネル情報に基づいて、受信できる可能性のある物理チャンネルを優先的にサーチすることができる。具体的には、選局制御部8は、隣接地域テーブル32の隣接地域欄に登録されている地域に対応するサービス名欄またはTs_ID欄を参照し、サービス名欄に登録されたサービス名またはTs_ID欄に登録されたTs_IDから同一サービスであると判断して、そのサービス名欄またはTs_ID欄に対応する物理チャンネル欄に登録されている物理チャンネルをサーチすればよい。
したがって、たとえば図8のステップa7,a10〜a11のように、現在位置の地域の地上ネットワークテーブルに基づいて、地上ネットワークテーブルに登録されている全チャンネルを昇順または降順にサーチする場合、および図8のステップa7〜a11のように、現在位置の地域の地上ネットワークテーブルが記憶されていないときに、全チャンネルを昇順または降順にサーチする場合に比べて、高速にサーチを行うことができる。これによって、受信可能な放送サービスのチャンネルを可及的に短時間で設定することができる。
また本実施の形態では、図7のステップa2〜a4において、隣接地域テーブル32に基づくサーチの結果、同一サービスが受信可能であると判断された場合は、受信不可から受信可能までの経過時間が閾値時間ΔT以下であるか否かの判断を行わず、経過時間が閾値時間ΔTを超えていても、隣接地域を削除せずに、そのままステップa5に移行する。また図8のステップa13において、同一サービスが受信可能となった地域が隣接地域として登録されていると判断された場合も、ステップa14における受信不可から受信可能までの経過時間が閾値時間ΔT以下であるか否かの判断を行わず、経過時間が閾値時間ΔTを超えていても、隣接地域を削除せずに、そのままステップa5に移行する。この図8のステップa13において、同一サービスが受信可能となった地域が隣接地域として登録されていると判断される場合は、たとえば、隣接地域テーブル32において、隣接地域で受信可能な物理チャンネルとして登録されていない物理チャンネルで、同一サービスを受信可能な場合である。
このように本実施の形態では、隣接地域として登録されている地域で同一サービスが受信可能であると判断されたとき、すなわちサービスが受信可能状態から受信不可状態に変化したときの移動が、隣接地域テーブル32に互いに隣接する地域として登録された地域間の移動であるとき、経過時間が閾値時間ΔT以下である場合および経過時間が閾値時間ΔTを超える場合の両方の場合において、隣接地域テーブル32に互いに隣接する地域として登録された地域の登録を維持する。
つまり本実施の形態では、一度登録された隣接地域については、受信不可から受信可能までの経過時間に関わらず、たとえば経過時間が閾値時間ΔTを超えても削除せず、また経過時間が閾値時間ΔT以下であっても隣接地域の更新を行わず、登録を維持する。
たとえば、隣接地域テーブル32において、ある地域管理番号欄に対応する隣接地域欄に登録された隣接地域の数が相当数増えてきた場合、同一サービスを受信可能な隣接地域を見出すまでに時間がかかることがある。この場合、前述のように隣接地域テーブル32に基づいて同一サービスのサーチを行った結果、同一サービスが受信可能になったとしても、閾値時間ΔTの値によっては、受信不可から受信可能までの経過時間が閾値時間ΔTを超えてしまうことがある。
経過時間が閾値時間ΔTを超える場合に、登録されている隣接地域を削除すると、次に隣接地域テーブル32に基づいてサーチを行うときに、隣接地域として登録されていた地域で受信できる可能性のある物理チャンネルを優先的にサーチすることができず、同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでの時間が長くなってしまう。
このように同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでの時間が長くなってしまうことを防ぐために、本実施の形態では、前述のように、一度隣接地域として登録されている地域については、経過時間が閾値時間ΔTを超えていても、隣接地域テーブル32の更新の際に隣接地域欄から削除しないようにしている。これによって、受信できる可能性のある物理チャンネルを優先的にサーチすることができるので、同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでの時間が長くなってしまうことを防ぐことができる。
また既に隣接地域として登録済みの地域について、経過時間が閾値時間ΔT以下であるときに隣接地域としての登録処理を行い、隣接地域を更新することは、不要な処理であり、処理の煩雑化を招くだけである。したがって本実施の形態では、既に隣接地域として登録済みである地域については、経過時間が閾値時間ΔT以下であったとしても、隣接地域の更新は行わずに、そのままステップa5に移行し、同一サービスの受信を行っている。これによって、処理の煩雑化を防ぐことができる。
また本実施の形態では、図6に示すように、隣接地域テーブル32は、nwIDに対応する地域で受信可能な放送サービスに関するサービス情報、たとえばサービス名、Ts_IDおよび物理チャンネルを含む。選局制御部8が隣接地域テーブル32に基づいて同一サービスをサーチするときには、隣接地域テーブル32の隣接地域欄に登録されている地域に対応するサービス名欄またはTs_ID欄を参照し、サービス名欄に登録されたサービス名またはTs_ID欄に登録されたTs_IDが一致するサービスを同一サービスであると判断して、そのサービス名欄またはTs_ID欄に対応する物理チャンネル欄に登録されている物理チャンネルをサーチすればよい。これによって選局制御部8は、同一サービスを受信できる可能性がある物理チャンネルを優先的にサーチすることができるので、同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでに要する時間を短縮することができる。
<第2の実施の形態>
次に本発明の第2の実施の形態のデジタル放送受信装置について説明する。本実施の形態のデジタル放送受信装置は、前述の第1の実施の形態のデジタル放送受信装置1と構成が同一であるので、図示および第1の実施の形態と共通する説明を省略する。本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、前述の図2に示すように、デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が、第1地域Aから第2地域B、第2地域Bから第3地域C、第3地域Cから第4地域D、第4地域Dから第1地域Aへと順に移動し、第2地域Bと第3地域Cとの間には、いずれの地域の電波状態も極めて悪い難受信地域Rが存在する場合を想定している。また、第1地域Aおよび第2地域Bなどの地上ネットワークテーブルの構成は、前述の第1の実施の形態と同一である。
本実施の形態では、第3地域Cでデジタル放送受信装置1の電源がオフ(Off)され、第4地域Dでデジタル放送受信装置1の電源が再度オン(On)される点が、前述の第1の実施の形態と異なる。
図9は、本発明の第2の実施の形態における同一サービスの各地域における受信状況とデジタル放送受信装置1の移動距離との関係を示すグラフである。図9において、横軸は、デジタル放送受信装置1の移動距離[m]を表し、縦軸は、各移動距離におけるデジタル放送受信装置1の現在位置の地域を表す。図9では、サービスの視聴可能区間、すなわち受信可能区間を黒塗りで示し、同一サービスのサーチを実行している区間を白抜きで示している。
まず、移動体に搭載されたデジタル放送受信装置1が、第1地域A(nwID=0x0010)において、サービス「BBC News」を受信しているものとする。サービス「BBC News」を受信中に、デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が第1地域Aから第2地域B(nwID=0x002C)に移動し、サービスが受信不可となった時点でのデジタル放送受信装置1の移動距離(以下、単に「移動距離」という場合がある)をL1とする。受信不可となると、デジタル放送受信装置1は、第2地域Bにおいて同一サービスのサーチを実行する。サーチによって第2地域Bにおいてサービス「BBC News」が受信可能となった時点での移動距離をL2とする。移動距離は、メータ情報取得部11から与えられる値に基づいて取得される。メータ情報取得部11は、たとえば自動車の距離メータを常に監視しておき、一の地域から他の地域に移動し、サービスが受信不可となった時点で検出される自動車の走行距離を取得し、取得した値を選局制御部8に与える。選局制御部8は、メータ情報取得部11から与えられた値に基づいて、移動体の移動距離を求める。
さらに、サービス「BBC News」を受信中に移動体が第2地域Bから難受信地域Rに移動し、サービスが受信不可となった時点での移動距離をL3とする。難受信地域Rにおいては、同一サービスのサーチを実行しても同一サービスを受信することができないので、サーチが継続される。その後、移動体が難受信地域Rから第3地域C(nwID=0x00F4)に移動し、第3地域Cにおいて同一サービスのサーチを実行し、サービス「BBC News」が受信可能となった時点での移動距離をL4とする。
続けて第3地域Cにおいて利用者によってデジタル放送受信装置1の電源がオフにされた時点での移動距離をL5とする。その後、移動体が第3地域Cから第4地域D(nwID=0x0107)に移動し、第4地域Dにおいて利用者によってデジタル放送受信装置1の電源がオンにされた時点での移動距離をL6とする。その後、第4地域Dにおいて同一サービスのサーチを実行し、サービス「BBC News」が受信可能となった時点での移動距離をL7とする。
続けて移動体が第4地域Dから元の第1地域Aに移動し、サービスが受信不可となった時点での移動距離をL8とし、第1地域Aにおいて同一サービスのサーチを実行し、サービス「BBC News」が受信可能となった時点での移動距離をL9とする。
図10は、本発明の第2の実施の形態におけるエリア情報記憶部10に記憶される隣接地域テーブル33を示す図である。デジタル放送受信装置1は、図9に示すように、特定サービスを受信中に他の地域へ移動し、当該サービスを受信できなくなったときは、同一サービスをサーチする。サーチの結果、前記サービスを受信することができた場合は、デジタル放送受信装置1のエリア情報記憶部10に記憶されている隣接地域テーブル33が更新される。
図10に示すように、隣接地域テーブル33は、前述の第1の実施の形態と同様に、地域を表す「A」および「B」などの地域管理番号と、地域管理番号で表される地域に対応するnwIDと、地域管理番号で表される地域の隣接地域とを関連付けて記憶している。隣接地域は、「A」および「B」などの地域管理番号を用いて記憶される。また本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、チャンネル情報記憶部9に記憶される地上ネットワークテーブルから、サービス名、Ts_IDおよび物理チャンネルなどの情報を地域管理番号毎の情報として、隣接地域テーブル33に記憶するように構成されている。
前述のように、デジタル放送受信装置1は、あるサービスを受信中に地域の移動によってサービスが受信不可となった場合は、移動先の地域において同一サービスのサーチを実行する。本実施の形態では、デジタル放送受信装置1は、サービスが受信不可となった時点から、サービスが受信可能となった時点までの移動距離を求め、求めた移動距離が予め定める閾値(以下「閾値距離」という場合がある)ΔL以下であれば、移動先の地域を移動元の地域の隣接地域として登録し、求めた移動距離が閾値距離ΔLを超えていれば、移動先の地域を移動元の地域の隣接地域として登録しない。閾値距離ΔLは、バックエンド部7のソフトウェア内で適切に定義されるものであり、仕様によって決まる。具体的には、閾値距離ΔLは、実際の走行試験および放送エリアのマップなどに基づいて、仕様に応じて決められる。
閾値距離ΔLは、たとえば、前述の図2に示す第2地域Bと第3地域Cとが互いに隣接地域であると判断されないように、第2地域Bと第3地域Cとの間に介在される難受信地域Rを移動する距離よりも短い距離に設定される。この場合、前述の図9に示すグラフにおいて、(L2−L1)≦ΔL、(L4−L3)>ΔL、(L9−L8)≦ΔLであるので、第1地域Aと第2地域B、ならびに第4地域Dと第1地域Aとは、互いに隣接地域であると判断されるが、第2地域Bと第3地域Cとは、互いに隣接地域ではないと判断される。
また移動距離L5は、サービスが受信不可となった時点での移動距離に相当し、移動距離L7は、サービスが受信可能となった時点での移動距離に相当するが、移動距離L5は、デジタル放送受信装置1の電源がオフにされた時点での移動距離であり、移動距離L7は、移動距離L6でデジタル放送受信装置1の電源がオンにされた後、同一サービスのサーチを実行し、サービス「BBC News」が受信可能となった時点での移動距離である。したがってデジタル放送受信装置1は、移動距離L5と移動距離L7との移動距離差は求めずに、第3地域Cと第4地域Dとを互いに隣接地域として認識しないようにしている。すなわちデジタル放送受信装置1は、電源のオン、オフを伴う移動距離差については求めずに、電源のオン、オフの前後の地域が互いに隣接地域として認識されないように構成される。
したがって本実施の形態の隣接地域テーブル33では、図10に示すように、前述の図6に示す第1の実施の形態における隣接地域テーブル32と同様に、第1地域Aの隣接地域には、第2地域Bおよび第4地域Dが登録され、第2地域Bの隣接地域には、第1地域Aが登録されるが、第3地域Cの隣接地域には、第4地域Dは登録されず、また第4地域Dの隣接地域には、第1地域Aのみが登録され、第3地域Cは登録されない。
図11および図12は、本発明の第2の実施の形態におけるデジタル放送受信装置1の同一サービスのサーチ動作に関する選局制御部8の処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様に、移動体に搭載されたデジタル放送受信装置1が、アンテナ2を介してデジタル放送信号を受信し、復号した映像信号および音声信号を、AV入出力インタフェース12を介して映像音声出力装置15に出力していることを前提とする。
本実施の形態において、デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が各地域を移動する過程で、サービスが受信不可となり、利用者が視聴不可となったときに、同一サービスのサーチを行う場合、選局制御部8は、図11および図12に示すフローチャートに従った動作をする。図11および図12に示すフローチャートの処理は、利用者によってデジタル放送受信装置1の電源が投入、すなわちオンされ、デジタル放送受信装置1に電力が供給されると開始され、ステップb1に移行する。
図11に示すフローチャートのステップb1〜ステップb6の各処理は、図7に示すフローチャートのステップa1〜ステップa6の各処理と同様であるので、説明を省略する。本実施の形態では、ステップb2において、選局制御部8が、エリア情報記憶部10の隣接地域テーブル33に隣接地域が登録されていないと判断した場合は、図12のステップb7に移行する。
またステップb5において、選局制御部8が、見つかった同一サービスのチャンネルの選局をした後は、ステップb1に戻り、ステップb1からの処理を繰返す。さらにステップb6において、選局制御部8が、受信不可となる前の地域に対して登録されている全ての隣接地域でサーチが終了していると判断した場合は、図12のステップb7に移行し、サーチが終了していないと判断した場合は、ステップb3に戻り、サーチを繰返す。
図12に示すフローチャートのステップb7〜ステップb13、ステップb16およびステップb17の各処理は、図8に示すフローチャートのステップa7〜ステップa13、ステップa15およびステップa16と同様であるので、説明を省略する。本実施の形態では、ステップb13において、選局制御部8は、現在位置の地域が隣接地域として登録されていると判断すると図11のステップb5に移行し、現在位置の地域が隣接地域として登録されていないと判断するとステップb14に移行する。
ステップb14では、選局制御部8は、受信していたサービスが受信不可となった時点から受信可能となった時点までの移動距離が、予め定める閾値である閾値距離ΔL以下であるか否かを判断する。たとえば移動体が第1地域Aから第2地域Bに移動した場合、選局制御部8は、第1地域Aにて受信していた特定のサービスが受信不可となった時点から、同一サービスのサーチによって第2地域Bにて同一サービスの受信が可能となるまでの移動距離差(L2−L1)を求め、この移動距離差が閾値距離ΔL以下であるか否かを判断する。選局制御部8は、閾値距離ΔL以下であると判断した場合は、ステップb15に移行し、閾値距離ΔLを超えていると判断した場合は、隣接地域テーブル33への隣接地域の登録は行わずにそのまま図11のステップb5に移行し、サービスの受信を継続する。
ステップb15では、選局制御部8は、ステップb11で行ったサーチが、電源オン時の受信不可状態からのサーチか否か、すなわち受信不可状態が、デジタル放送受信装置1の電源が投入されたときに生じたものか否かを判断する。
選局制御部8は、ステップb15において、電源オン時の受信不可状態からのサーチではない、すなわち受信不可状態が電源を投入したときに生じたものではないと判断した場合は、ステップb16に移行し、エリア情報記憶部10内の隣接地域テーブル33において、受信不可となる前の地域と、同一サービスが受信可能となった地域とを、互いに隣接地域として登録する。たとえば移動体が第1地域Aから第2地域Bに移動した場合、選局制御部8は、隣接地域テーブル33の受信不可となる前の地域である第1地域Aの隣接地域欄に、受信可能となった地域である第2地域Bを登録し、続けて第2地域Bの隣接地域欄に第1地域Aを登録する。ステップb16の処理の終了後は、図11のステップb5に移行し、同一サービスの受信を続ける。
選局制御部8は、前述のステップb14において、移動距離が閾値距離ΔLを超えていると判断した場合、ステップb15およびステップb16を経ずに図11のステップb5に移行、すなわち隣接地域テーブル33への隣接地域の登録を行わずに、そのままステップb5に移行し、同一サービスの受信を続ける。また選局制御部8は、ステップb15において、電源オン時の受信不可状態からのサーチであると判断した場合は、ステップb16を経ずに図11のステップb5に移行し、同一サービスの受信を続ける。
またステップb17において、選局制御部8が、ステップb10で取得した地上ネットワークテーブルに登録されている全てのチャンネルのサーチが終了していると判断した場合は、図11のステップb1に戻り、全てのチャンネルのサーチが終了していないと判断した場合は、ステップb11に戻り、他のチャンネルについて、同一サービスのサーチを繰返す。
以上のように本実施の形態によれば、前述の第1の実施の形態と同様に、選局制御部8の指示に基づいて、チューナ部3で物理チャンネルが選局されて、その物理チャンネルで送信されるデジタル放送信号が取得され、このデジタル放送信号から、目的とする放送サービスの信号がデマルチプレクサ5で抽出され、AV入出力インタフェース12によって出力される。エリア情報記憶部10には隣接地域情報として、隣接地域テーブル33が記憶され、チャンネル情報記憶部9には各地域のチャンネル情報として、地上ネットワークテーブルが記憶される。
本実施の形態では、図2に示すように、デジタル放送受信装置1を搭載した移動体が地域間を移動することによって、放送サービスが受信可能状態から受信不可状態に変化すると、図11および図12に示すフローチャートに従って、受信していた放送サービスと同一の放送サービスが選局制御部8によってサーチされる。
現在位置の地域が隣接地域テーブル33に隣接地域として登録されていない場合、図12のステップb14において、受信していたサービスが受信不可状態になった時点から、そのサービスと同一のサービスがサーチによって受信可能となる時点までの移動距離が求められる。その移動距離が閾値距離ΔL以下であると判断されると、ステップb15を経て、ステップb16において、受信可能状態のときに位置していた地域と、サーチによって同一のサービスが受信可能となった地域とが、互いに隣接する隣接地域として隣接地域テーブル33に登録される。
これによって選局制御部8は、次回のサーチのときには、図11のステップb3において、隣接地域テーブル33に登録されている隣接地域のチャンネル情報に基づいて、受信できる可能性のある物理チャンネルを優先的にサーチすることができる。
したがって、たとえば図12のステップb7,b10〜b11のように、現在位置の地域の地上ネットワークテーブルに基づいて、地上ネットワークテーブルに登録されている全チャンネルを昇順または降順にサーチする場合、および図12のステップb7〜b11のように、現在位置の地域の地上ネットワークテーブルが記憶されていないときに、全チャンネルを昇順または降順にサーチする場合に比べて、高速にサーチを行うことができる。これによって、受信可能な放送サービスのチャンネルを可及的に短時間で設定することができる。
また本実施の形態では、図12のステップb14において、受信不可から受信可能までの移動距離が閾値距離ΔL以下であると判断されても、ステップb15において、電源オン時の受信不可状態からのサーチではないと判断されなければ、ステップb16には移行しない。すなわち本実施の形態では、ステップb14において、受信不可から受信可能までの移動距離が閾値距離ΔL以下であると判断され、かつステップb15において、電源オン時の受信不可状態からのサーチではないと判断されると、ステップb16において、受信可能状態のときに位置していた地域と、サーチによって同一のサービスが受信可能となった地域とが、互いに隣接する隣接地域として隣接地域テーブル33に登録される。
これによって、隣接地域ではない地域同士が、電源のオン、オフによって隣接地域であると誤って判断されることを防ぎ、誤った隣接地域が隣接地域テーブル33に登録されることを防ぐことができる。したがって、選局制御部8が隣接地域テーブル33に登録された隣接地域に基づいてサーチを行うときに、受信できない物理チャンネルを誤ってサーチすることを防ぐことができるので、サーチに要する時間を短縮することができる。
前述の第1の実施の形態では、電源のオン、オフについては考慮していなかったが、第1の実施の形態においても、本実施の形態と同様に、電源のオン、オフについて考慮することが好ましい。具体的には、前述の図8のステップa14とステップa15との間に、図12のステップb15と同様のステップ、すなわちステップa11で行ったサーチが、電源オン時の受信不可状態からのサーチか否かを判断するステップを設けることが好ましい。このステップにおいて、電源オン時の受信不可状態からのサーチではないと判断した場合はステップa15に移行し、電源オン時の受信不可状態からのサーチであると判断した場合は、ステップa15に移行せずに、そのままステップa5に移行するように構成する。
これによって、本実施の形態と同様に、隣接地域ではない地域同士が、電源のオン、オフによって隣接地域であると誤って判断されることを防ぎ、誤った隣接地域が隣接地域テーブル32に登録されることを防ぐことができる。したがって、選局制御部8が隣接地域テーブル32に登録された隣接地域に基づいてサーチを行うときに、受信できない物理チャンネルを誤ってサーチすることを防ぐことができるので、サーチに要する時間を短縮することができる。
また本実施の形態では、前述の第1の実施の形態と同様に、図11のステップb2〜b4において、隣接地域テーブル33に基づくサーチの結果、同一サービスが受信可能であると判断された場合は、受信不可から受信可能までの移動距離が閾値距離ΔL以下であるか否かの判断を行わず、移動距離が閾値距離ΔLを超えていても、隣接地域を削除せずに、そのままステップb5に移行する。また図12のステップb13において、同一サービスが受信可能となった地域が隣接地域として登録されていると判断された場合も、ステップb14における移動距離が閾値距離ΔL以下であるか否かの判断を行わず、移動距離が閾値距離ΔLを超えていても、隣接地域を削除せずに、そのままステップb5に移行する。
このように本実施の形態では、隣接地域として登録されている地域で同一サービスが受信可能であると判断されたとき、すなわちサービスが受信可能状態から受信不可状態に変化したときの移動が、隣接地域テーブル33に互いに隣接する地域として登録された地域間の移動であるとき、移動距離が閾値距離ΔL以下である場合および移動距離が閾値距離ΔLを超える場合の両方の場合において、隣接地域テーブル33に互いに隣接する地域として登録された地域の登録を維持する。
つまり本実施の形態では、一度登録された隣接地域については、受信不可から受信可能までの移動距離に関わらず、たとえば移動距離が閾値距離ΔLを超えても削除せず、また移動距離が閾値距離ΔL以下であっても隣接地域の更新を行わず、登録を維持する。
たとえば、隣接地域テーブル33において、ある地域管理番号欄に対応する隣接地域欄に登録された隣接地域の数が相当数増えてきた場合、同一サービスを受信可能な隣接地域を見出すまでに時間がかかることがある。この場合、前述のように隣接地域テーブル33に基づいて同一サービスのサーチを行った結果、同一サービスが受信可能になったとしても、閾値距離ΔLの値によっては、受信不可から受信可能までの移動距離が閾値距離ΔLを超えてしまうことがある。
移動距離が閾値距離ΔLを超える場合に、登録されている隣接地域を削除すると、次に隣接地域テーブル33に基づいてサーチを行うときに、隣接地域として登録されていた地域で受信できる可能性のある物理チャンネルを優先的にサーチすることができず、同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでの時間が長くなってしまう。
このように同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでの時間が長くなってしまうことを防ぐために、本実施の形態では、前述のように、一度隣接地域として登録されている地域については、移動距離が閾値距離ΔLを超えていても、隣接地域テーブル33の更新の際に隣接地域欄から削除しないようにしている。これによって、受信できる可能性のある物理チャンネルを優先的にサーチすることができるので、同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでの時間が長くなってしまうことを防ぐことができる。
また既に隣接地域として登録済みの地域について、移動距離が閾値距離ΔL以下であるときに隣接地域としての登録処理を行い、隣接地域を更新することは、不要な処理であり、処理の煩雑化を招くだけである。したがって本実施の形態では、既に隣接地域として登録済みである地域については、移動距離が閾値距離ΔL以下であったとしても、隣接地域の更新は行わずに、そのままステップb5に移行し、同一サービスの受信を行っている。これによって、処理の煩雑化を防ぐことができる。
また本実施の形態では、図10に示すように、隣接地域テーブル33は、前述の第1の実施の形態と同様に、nwIDに対応する地域で受信可能な放送サービスに関するサービス情報、たとえばサービス名、Ts_IDおよび物理チャンネルを含む。選局制御部8が隣接地域テーブル33に基づいて同一サービスをサーチするときには、隣接地域テーブル33の隣接地域欄に登録されている地域に対応するサービス名欄またはTs_ID欄を参照し、サービス名欄に登録されたサービス名またはTs_ID欄に登録されたTs_IDが一致するサービスを同一サービスであると判断して、そのサービス名欄またはTs_ID欄に対応する物理チャンネル欄に登録されている物理チャンネルをサーチすればよい。これによって選局制御部8は、同一サービスを受信できる可能性がある物理チャンネルを優先的にサーチすることができるので、同一サービスを受信可能な物理チャンネルを見出すまでに要する時間を短縮することができる。
前述の各実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば図1に示すデジタル放送受信装置1の構成は、一例に過ぎず、必要に応じて他のハードウェアブロックおよびソフトウェアブロックを含んで構成されてもよい。
また、図1に示すデジタル放送受信装置1では、デコーダ6によってデコードされ、映像表示装置15によって映像を再生する場合の構成を示しているが、この構成は一例に過ぎず、デジタル放送波のコンテンツを表示させることが可能であればよく、そのデータ形式とその再生機構とは前述の構成に限定されない。
図2に示す地域の模式図では、4本の地域境界線20で囲まれた長方形の領域としていたが、地域境界線20で規定される各地域の形状は、円形およびポリゴンなどのいかなる形状のものであってもよい。
また図2に示すデジタル放送受信装置1を搭載した移動体として、自動車を想定した模式図を示しているが、移動体としては列車などの他の車両であっても、本発明を好適に実施することができる。さらには、携帯電話機などにデジタル放送受信装置1が組込まれている場合は、携帯電話機を持ち歩く利用者が移動体として適用される。
図7および図11に示す隣接地域テーブル32,33には、前述のように、nwID、隣接地域、およびサービス名などの各情報を保持しているが、必要に応じてサービスIDおよび系列局IDなどの他のデータを保持してもよい。