JP2011007814A - 情報取得方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】対象物に関する情報を飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて取得する取得する際に、対象物のイオン化を促進するための物質を用いて対象物のイオン化を促進して対象物を飛翔させる。
【選択図】図9
Description
(1)二次元電気泳動や高速液体クロマトグラフ(HPLC)による分離精製と、
(2)放射線分析、光学的分析、質量分析等の検出系
との組み合わせにより行われてきた。
前記対象物のイオン化を促進するための物質を用いて前記対象物のイオン化を促進して前記対象物を飛翔させる工程と、
前記飛翔した対象物の質量に関する情報を飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて取得する工程とを備えることを特徴とする情報取得方法である。
前記対象物に前記対象物のイオン化を促進する物質を接触させるための手段と、
前記対象物と前記対象物のイオン化を促進する物質との接触部にイオンビームを照射するための手段とを備え、
前記照射手段による照射により、少なくとも一部がイオン化された前記対象物の質量に関する情報を取得することを特徴とする情報取得装置である。
前記対象物のイオン化を促進するための物質を付与する工程と、
集束し、パルス化し、かつ走査可能な一次ビームを用い、前記対象物をイオン化し、前記対象物を飛翔させる工程と、
前記飛翔した対象物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得する工程を備えることを特徴とする情報取得方法である。
生体組織の構成物を含む試料を前記対象物として用意する工程、
前記構成物に由来するイオン種のイオン化を促進するための処理を行う工程、
集束したイオンビームを前記対象物に照射し、前記構成物に由来するイオン種を飛翔させる工程、及び
前記飛翔したイオン種の強度を飛行時間型質量分析計を用いて測定し、該測定値に基づいて前記構成物の分布状態に関する情報を得る工程、を有することを特徴とする情報取得方法である。
生体組織の構成物を含む試料を用意する工程、
前記試料を基材表面に接触させて前記構成物の少なくとも一部を前記基材側に移動させる工程、
前記構成物の少なくとも一部が移動した前記基材を前記対象物として、集束したイオンビームを前記対象物に照射し、前記構成物に由来するイオン種を飛翔させる工程、及び
前記飛翔したイオン種の強度を飛行時間型質量分析計を用いて測定し、該測定値に基づいて前記構成物の分布状態に関する情報を得る工程、を有することを特徴とする情報取得方法である。
前記構成物を基材表面に接触させて前記構成物の少なくとも一部を前記基材側に移動させる機構、
前記構成物の少なくとも一部が移動した前記基材を前記対象物として、集束したイオンビームを前記対象物に照射し、前記構成物に由来するイオン種を飛翔させ、該飛翔したイオン種の強度を測定する飛行時間型質量分析計、及び
前記測定値に基づいて前記構成物の分布状態に関する情報を得るための測定結果解析機構、とを備えたことを特徴とする情報取得装置である。
(1)前記対象物そのものの質量(親分子の質量)に、金属元素、並びに、アルカリ金属元素の中の少なくとも一つが付加した質量数に相当するイオン、
(2)前記対象物そのものの質量(親分子の質量)に、金属元素、並びに、アルカリ金属元素の中の少なくとも一つが付加し、これに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が付加した質量数に相当するイオン、
(3)前記対象物そのものの質量(親分子の質量)に、金属元素、並びに、アルカリ金属元素の中の少なくとも一つが付加し、これに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が付加し、さらに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が脱離した質量数に相当するイオン、
のいずれかの質量に関する情報であることを包含する。
前記試料を基材表面に接触させて前記構成物の少なくとも一部を前記基材側に移動させる工程、前記構成物の少なくとも一部が移動した前記基材を前記対象物として、集束したイオンビームを前記対象物に照射し、前記構成物に由来するイオン種を飛翔させる工程、及び前記飛翔したイオン種の強度を飛行時間型質量分析計を用いて測定し、該測定値に基づいて前記構成物の分布状態に関する情報を得る工程、を有することを特徴とする。
I.第一の形態に関する発明についての説明
本発明の第一の形態は、対象物のイオン化を促進するための物質を用いて前記対象物を飛翔させ、前記飛翔した対象物を識別できる二次イオンの質量に関する情報を得ることを特徴としている。さらに、一次イオンの走査により得られる前記対象物の二次元分布状態の検出(イメージング)であることを特徴としている。
(1)基板上に対象物を配置した後に付与する、
(2)基板上に配置される対象物の特定の一種類または複数に対し、予め付与する、
(3)基板上に対象物が配置される前に、予め基板表面に付与する、
のいずれかである。付与の方法としては化学修飾が挙げられる。
尚、金以外の多原子イオンとして、ビスマスイオンやC60イオンなどを使用することもできる。
II.本発明の第二の形態に関する発明についての説明
本発明の第二の形態は、対象物のイオン化を促進するための物質を用いて前記対象物を飛翔させ、前記飛翔した対象物を識別できる二次イオンの質量に関する情報を得ることを特徴としている。さらに、一次イオンの走査により得られる前記対象物の二次元分布状態を検出(イメージング)できることを特徴としている。前記対象物をイオン化し、前記対象物を飛翔させるために用いられる一次ビームとしては集束し、パルス化し、かつ走査可能であれば特に限定されない。一次ビームに使用可能な例としては、イオン、中性粒子、電子、レーザー光などが挙げられる。この中でもイオンビームを用いることが好ましい。
III.本発明の第三の形態に関する発明についての説明
本発明の第三の形態にかかる情報取得方法は、タンパク質をはじめとする生体組織構成物の分布状態に関する情報を得るものである。本発明は、生体組織の断片について、切断面が平坦となるように切り出した薄片試料を用いて、その表面上に存在する例えばタンパク質分子の存在量分布をTOF−SIMS法によって測定することを包含する。
生体組織の構成物を含む試料を前記対象物として用意する工程、
前記構成物に由来するイオン種のイオン化を促進するための処理を行う工程、
集束したイオンビームを前記対象物に照射し、前記構成物に由来するイオン種を飛翔させる工程、及び
前記飛翔したイオン種の強度を飛行時間型質量分析計を用いて測定し、該測定値に基づいて前記構成物の分布状態に関する情報を得る工程、を有することを特徴とする。
に対し、モル比で1倍から100倍の銀イオンが付与されることが好ましく、モル比で2倍から10倍の銀イオンが付与されることが特に好ましい(即ち、ペプチド鎖長やその存在量に依存する)。一般的には、薄片試料表面に付与される増感物質の総量は、銀イオンを例にあげると、1011〜1013イオン/cm2程度となる(即ち単分子膜レベル以下)。増感物質を含む溶液における、増感物質の含有濃度は、1μmol/mL〜10μmol/mLの範囲に選択することが望ましい。
本発明の第四の形態にかかる情報取得方法は、タンパク質をはじめとする生体組織構成物の分布状態に関する情報を得るものである。本発明は、生体組織の断片について、一旦、その断片表面を平坦な表面を有する基材上に接触させることで、その切断面の表面上に存在している、例えばタンパク質分子を含む液層を基材表面に転写することを包含する。その後、この基材表面に転写された、タンパク質分子を含む液層を乾燥処理して、タンパク質成分を乾燥体として、表面上に付着させた後、TOF−SIMSで分析することをできる。従って、TOF−SIMSによる測定に際して、下地となる基材表面は平坦とすることができ、測定対象の表面形状に依存する、測定精度の変動を本質的に排除できる。
対象物を構成する構成物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得し、取得した質量情報に基づいて前記構成物の分布状態に関する情報を得る情報取得方法であって、
生体組織の構成物を含む試料を用意する工程、
前記試料を基材表面に接触させて前記構成物の少なくとも一部を前記基材側に移動させる工程、
前記構成物の少なくとも一部が移動した前記基材を前記対象物として、集束したイオンビームを前記対象物に照射し、前記構成物に由来するイオン種を飛翔させる工程、及び
前記飛翔したイオン種の強度を飛行時間型質量分析計を用いて測定し、該測定値に基づいて前記構成物の分布状態に関する情報を得る工程、を有することを特徴とする。
採取された前記生体組織試料の一つの表面上に存在している特定のタンパク質に対して、その転写効率を向上させる処理を施した後、
転写を施す表面に対して、前記生体組織試料の一つの表面を密に接触させる操作を行う態様とすることも可能である。
前記特定のタンパク質に対する反応性を示す官能基として、マレイミド基を表面上に導入されているものとすることができる。
一方、転写板表面上に転写されているタンパク質分子の存在量の分布は、対応する生体組織断面におけるタンパク質分子の存在量の分布を反映している。
合成ペプチドをスポッティングしたチップの作製
不純物を含まないシリコン基板上にTiを5nm、次いでAuを100nm成膜した。このAu付きシリコン基板は、下記合成ペプチドをスポッティングする前に以下の処理を行った。
実施例1で作製したチップのTOF−SIMS分析
実施例1で作製したチップを風乾し、これをION TOF社製TOF−SIMS IV型装置を用いて分析した。測定条件を以下に要約する。
一次イオンのパルス周波数:2.5kHz(400μs/shot)
一次イオンパルス幅:約1ns
一次イオンビーム直径:約5μm
測定領域:300μm×300μm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算回数:256
このような条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した結果、正の二次イオン質量スペクトルにおいて、合成ペプチドIの親分子にAuが付加した質量に相当する二次イオンを検出することができた。また、合成ペプチドIの親イオンに準じる、この二次イオンを用い、該合成ペプチドIの二次元分布状態を反映した二次元イメージ像を得ることができた。
実施例1で作製したチップの銀鏡反応処理
実施例1で作製したチップを風乾し、ほぼ水分が蒸発したところで、このチップに対し以下の処理(銀鏡反応)を行った。
実施例3で処理したチップのTOF−SIMS分析
実施例2と同じ条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した。その結果、正の二次イオン質量スペクトルにおいて、合成ペプチドIの親分子にAgが付加し、さらに、酸素が2原子付加した質量に相当する二次イオンを検出することができた。この領域のスペクトル拡大図を図1(a)に、同位体存在比を基に算出した理論スペクトルを図(b)にそれぞれ示した。図1中、矢印を付けたピークは上記のイオン[(合成ペプチドI)+(Ag)+2(O)]+に相当するもので、矢印二本はそれぞれ二つのAgの同位体(質量数:107,109)に対応している。右側の矢印を付けたピークは109Agを含むもので、そのm/z値(775.1)は、[(合成ペプチドI)+(109Ag)+2(O)]+の理論値にほぼ一致した。また、合成ペプチドIの親イオンに準じる、この二次イオンを用いることで、該合成ペプチドIの二次元分布状態を反映した二次元イメージ像を得ることができた。
絶縁基板上に合成ペプチドをスポッティングしたチップの作製
まず、特開平11−187900号公報に記載の方法に準じて、石英ガラス基板の表面処理を行った。
実施例5で作製したチップの銀鏡反応処理
実施例3に示した方法と同様の方法で銀鏡反応処理を行った。この試料を以下のTOF−SIMS分析に供した。
実施例5で作製したチップおよび実施例6で処理したチップのTOF−SIMS分析
実施例2と同じ条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した。その結果、実施例6の銀鏡反応処理を行ったチップの正の二次イオン質量スペクトルにおいて、実施例4に示したものと同様のピークを観測した。合成ペプチドIの親イオンに準じる、この二次イオンを用いることで、該合成ペプチドIの二次元分布状態を反映した二次元イメージ像を得ることができた。
シリコン基板へのペプチドのスポッティングおよび銀イオン処理
基板としては不純物を含まないシリコン基板をアセトンおよび脱イオン水の順番で洗浄し、乾燥させた物を用いた。Phoenix Pharmaceuticals社より購入したMorphiceptin(ペプチド配列:Tyr−Pro−Phe−Pro、C28H33N4O6(平均分子量:521.58、同位体存在比が最も高い元素からなる分子の質量:521.24)の10μM水溶液を脱イオン水を用いて調製した。この水溶液を、マイクロピペッターを用いて、前記シリコン基板上にスポッティングした。このようにして作成した基板を冷蔵庫内で乾燥した後、前記Mophiceptin水溶液をスポッティングした位置に重ねて約10μMの硝酸銀水溶液をマイクロピペッターを用いて、スポッティングした。この基板を風乾した後、TOF−SIMS分析に用いた。
実施例8で作製したチップのTOF−SIMS分析
実施例8で作製したチップを風乾し、これをION TOF社製TOF−SIMS IV型装置を用いて分析した。測定条件を以下に要約する。
一次イオンのパルス周波数:7.5kHz(150μs/shot)
一次イオンパルス幅:約1ns
一次イオンビーム直径:約3μm
測定領域:200μm×200μm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算時間:600秒
このような条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した。その結果、正の二次イオン質量スペクトルにおいて、Morphiceptinの親分子にAgが付加した質量に相当する二次イオンを検出することができた。この領域のスペクトル拡大図を図2(a)に、同位体存在比を基に算出した理論スペクトルを図2(b)にそれぞれ示した。図2中、矢印を付けたピークは上記のイオン[(Morphiceptin)+(Ag)]+に相当するもので、矢印二本はそれぞれ二つのAgの同位体(質量数:107,109)に対応している。右側の矢印を付けたピークは109Agを含むもので、そのm/z値は、[(Morphiceptin)+(109Ag)]+の理論値(630.15)にほぼ一致した。また、Morphiceptinの親イオンに準じる、この二次イオンを用いることで、該Morphiceptinの二次元分布状態を反映した二次元イメージ像を得ることができた。(図2(c))
(実施例10)
ガラス基板(絶縁基板)へのペプチドのスポッティングおよび銀イオン処理
25.4mm×25.4mm×1mmの合成石英基板をアセトンおよび蒸留水の順番で洗浄し、乾燥させた物を用いた。Phoenix Pharmaceuticals社より購入したMorphiceptin(ペプチド配列:Tyr−Pro−Phe−Pro、C28H33N4O6(平均分子量:521.58、同位体存在比が最も高い元素からなる分子の質量:521.24)の10μM水溶液を脱イオン水を用いて調製した。これに小過剰の硝酸銀を加えた。前記の水溶液を、マイクロピペッターを用いて、前記合成石英基板上にスポッティングした。このようにして作成した基板を冷蔵庫内で乾燥した後、TOF−SIMS分析に用いた。
実施例10で作製したチップのTOF−SIMS分析
実施例10で作製したチップを風乾し、これをION TOF社製TOF−SIMS IV型装置を用いて分析した。測定条件を以下に要約する。
一次イオンのパルス周波数:10kHz(100μs/shot)
一次イオンパルス幅:約1ns
一次イオンビーム直径:約3μm
測定領域:200μm×200μm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算時間:1200秒
このような条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した。
Au/Si基板上へのペプチドをスポッティングおよびナトリウムイオン処理
不純物を含まないシリコン基板上にAuを100nm成膜した。このAu付きシリコン基板は下記合成ペプチドをスポッティングする直前に作成した物を用いた。
実施例12で作製したチップのTOF−SIMS分析
実施例12で作製したチップを風乾し、これをION TOF社製TOF−SIMS IV型装置を用いて分析した。測定条件を以下に要約する。
一次イオンのパルス周波数:7.5kHz(150μs/shot)
一次イオンパルス幅:約1ns
一次イオンビーム直径:約3μm
測定領域:200μm×200μm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算回数:64
このような条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した。その結果、正の二次イオン質量スペクトルにおいて、合成ペプチドIの親分子にNaが付加した質量に相当する二次イオンを検出することができた。この領域のスペクトル拡大図を図4(a)に、同位体存在比を基に算出した理論スペクトルを図4(b)にそれぞれ示した。図5中、矢印を付けたピークは上記のイオン[(合成ペプチドI)+(Na)]+に相当するもので、そのm/z値は、[(合成ペプチドI)+(Na)]+の理論値(1612.58)にほぼ一致した。また、合成ペプチドIの親イオンに準じる、この二次イオンを用いることで、該合成ペプチドIの二次元分布状態を反映した二次元イメージ像を得ることができた。(図4(c))
〔比較例1〕
Au/Si基板上へのペプチドのスポッティング(化学修飾処理なし)と、TOF−SIMS分析
不純物を含まないシリコン基板上にAuを100nm成膜した。このAu付きシリコン基板は下記合成ペプチドをスポッティングする直前に作成した物を用いた。
(実施例14)
シリコン基板へのペプチドのスポッティングおよび銀イオン処理
基板としては不純物を含まないシリコン基板をアセトン、イソプロパノール、および脱イオン水の順番で洗浄し、乾燥させた物を用いた。
ペプチド2):Ghrelin(1−5)−NH2(Des−Octanoyl3)(Phoenix Pharmaceuticals社製;ペプチド配列:Gly−Ser−Ser−Phe−Leu−NH2、(平均分子量:508.10)
ペプチド3):合成ペプチド3(シグマジェノシスジャパン社製;(ペプチド配列:Gly−Gly−Gly−Gly−Cys−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly、(平均分子量:634.61)
また、イオン化促進物質として、硝酸銀を同様に脱イオン水に溶解した。
実施例14で作製したチップのTOF−SIMS分析
実施例14で作製したチップを風乾し、これをION TOF社製TOF−SIMS IV型装置を用いて分析した。測定条件を以下に要約する。
一次イオンのパルス周波数:10kHz
一次イオンパルス幅:約1ns
一次イオンビーム直径:約3μm
測定領域:300μm×300μm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算時間:210秒
このような条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した。その結果、正の二次イオン質量スペクトルにおいて、各ペプチドの親分子にAgが付加した質量に相当する二次イオンを検出することができた。この領域のスペクトル拡大図を図7にそれぞれ示した。図7中、矢印を付けたピークは上記のイオン[(各ペプチド分子)+(Ag)]+に相当するもので、矢印二本はそれぞれ二つのAgの同位体(質量数:107,109)に対応していた。
シリコン基板へのペプチド・銀イオン混合溶液のスポッティング
実施例14と同様に処理したシリコン基板を用意した。また、3種類のペプチド溶液と硝酸銀溶液も実施例14と同様に用意した。更に、ペプチド1)溶液と、硝酸銀溶液、ペプチド2)溶液と硝酸銀溶液、ペプチド3)溶液と硝酸銀溶液を、それぞれ実施例14と同じバブルジェット(R)プリンターのインクタンクに充填する直前に混合し、実施例14と同様にスポッティングした分析用基板を用意した。
シリコン基板へのペプチド、ナトリウムイオン混合溶液のスポッティング
実施例16と、イオン化促進剤を硝酸銀溶液から、炭酸ナトリウム水溶液に変えた以外は、同様にして作製した分析用基板を用意した。これを実施例15と同様にして分析した。この際各ペプチドの親分子にNaが付加した質量に相当する二次イオンを用いて、二次元イメージを構成したところ、選択した二次イオンのm/z値に応じたイメージが得られた。これをプリンターでの印字ファイルと比較したところ、プリンターでスポッティングした順に、各ペプチド+Naの質量に対応したイメージが得られていることが確認できた。
ガラス基板へのペプチドのスポッティングおよび銀イオン処理
1インチ角の合成石英基板を洗剤洗浄、脱イオン水洗浄した後に、アセトン、イソプロピルアルコール、および酢酸ブチルの順番で洗浄し、120℃20分乾燥させた物を用意した。
実施例18で作製したチップのTOF−SIMS分析
実施例18で作製したチップを風乾し、これをION TOF社製TOF−SIMS IV型装置を用いて分析した。測定条件を以下に要約する。
一次イオンのパルス周波数:2.5kHz(400μs/shot)
一次イオンパルス幅:約1ns
一次イオンビーム直径:約3μm
測定領域:300μm×300μm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算時間:1200秒
このような条件で正および負の二次イオン質量スペクトルを測定した。その結果、正の二次イオン質量スペクトルにおいて、実施例15に示したものと同様な各ペプチドの親イオンに準じる、二次イオンを検出することができ、これらのイオンにより、二次イオン像を構成したところ、各ペプチドの配置位置に応じたイメージが得られた。
前処理室付情報取得装置
図9は本実施例の情報取得装置を示す簡略図である。
ペプチド4):CasoxinD(Phoenix Pharmaceuticals社製;ペプチド配列 Tyr−Val−Pro−Phe−Pro−Pro−Phe;平均分子量866.03)
更に、別のノズル46に硝酸銀溶液を加え、また別のノズル47には、通常バブルジェットプリンター用インクに用いられるマゼンタインクを充填した。
一次イオンのパルス周波数:5kHz(200μs/s)
一次イオンパルス幅:約1ns
測定領域:300μm×300μm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算回数:128
その結果、正の二次イオン質量スペクトルにおいて、各ペプチドの親分子にAgが付加した質量に相当する二次イオンを検出することができた。
本例では、生体組織の試料薄片をスライドガラスの平坦な表面上に貼り付け、その試料薄片の表面に対して、下記する手順により増感物質による処理を施す例を示す。
一次イオン:25 keV Ga+、0.1 pA(パルス電流値)、ランダムスキャンモード
一次イオンのパルス周波数:10 kHz(100μs/shot)
一次イオン・パルス幅:1ns (Duty比 1/100,000)
一次イオン・ビーム径:約0.5μm
電子線照射: パルス電流量 10μA; パルス幅 96μs
<二次イオン>
二次イオン検出モード:positive
二次イオン引き出し電圧:2kV
測定領域:50μm×50μm
二次イオンimageのpixel数:128×128
積算回数:256
ホルダ温度: 0℃
上記の測定条件では、二次元イメージングにおける空間分解能は、1μmに相当する。
本例では、金表面に固定された牛胸腺アルブミン(BSA)を対象として、TOF−SIMS法による二次元分析能力の確認を行った。
<一次イオン>
一次イオン:25 keV Ga+、0.1 pA(パルス電流値)、ランダムスキャンモード
一次イオンのパルス周波数:10 kHz(100μs/shot)
一次イオン・パルス幅:1ns (Duty比 1/100,000)
一次イオン・ビーム径:約0.5μm
電子線照射: パルス電流量 10μA; パルス幅 96μs
<二次イオン>
二次イオン検出モード:positive
二次イオン引き出し電圧:2kV
測定領域:50μm×50μm
二次イオンimageのpixel数:128×128
積算回数:256
ホルダ温度: 0℃
上記の条件で、径約50μmのスポット部分のTOF−SIMS分析を行ったところ、Pro残基由来のフラグメントイオンと考えられるC4H6N+(M/Z=68)、C4H8N+(M/Z=50)、
Arg残基由来のフラグメントイオンと考えられるCH3N+(M/Z=29)、C2H7N3 +(M/Z=73)、C4H10N3 +(M/Z=100)、C4H11N3 +(M/Z=101)、C5H8N3 +(M/Z=110)、
Trp残基由来のフラグメントイオンと考えられるC9H8N+(M/Z=130)、C10H11N+(M/Z=145)、C11H8NO+(M/Z=170)、
Cys残基由来のフラグメントイオンと考えられるC2H6NS+(M/Z=76)、CHS+(M/Z=45)
などに対応するピークが観測された。また、これらの二次イオンによる二次元分布像からは、バブルジェット(R)法で形成した、径約50μmのスポットに対応する輪郭を確認することができた。
本例では、下記する手順により、生体組織の試料薄片を平坦な金属表面上に接触させ、試料薄片の表面から金属表面上に転写されるタンパク質分子に関して、TOF−SIMS法を利用して、タンパク質分子の種類ごとの二次元分布解析を行う例を示す。
(実施例24)
本例では、実施例21に示した方法をさらに発展させた方法について述べる。実施例21と異なる点は、プロテアーゼによる消化処理を、基材上への病変切片の貼り付け後に実施する点と、上記消化処理をバブルジェット(R)法などのインクジェット法による液滴付与により実施する点である。その際、消化酵素を含む液滴を安定して吐出させるために、吐出液に界面活性剤などを加えてもよい。このように、消化酵素を用いて注目するタンパク質を限定分解する処理と、TOF−SIMS分析で左記分解物に由来するイオン種のイオン化を促進するための物質を付与する処理の両者を、ともにインクジェット法を用いて行うことで、病変組織内における上記タンパク質の初期分布状態を反映した二次元分布状態を得ることができる。なお、消化酵素で限定分解された分解物のイオン種から、分解前のタンパク質を特定するには開示されているプロテオーム解析結果(各種データベース)を利用することができる。
Claims (5)
- 対象物に関する情報を取得する方法であって、
対象物を含む生体組織に対し、前記対象物を得るために、前記生体組織を限定分解する物質を加える工程と、
前記生体組織を限定分解する物質を加える工程後に、前記対象物を飛翔させるために、前記対象物を含む物質に一次イオンを照射する工程と、
前記飛翔した対象物の質量に関する情報を、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて取得する工程と
を備えることを特徴とする情報取得方法。 - 前記対象物がタンパク質またはペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の情報取得方法。
- 前記飛翔した対象物が、
(1)前記対象物の親分子に相当するイオン、
(2)前記対象物の親分子に、特定の金属または金属クラスターが付加した質量数に相当するイオン、
(3)前記対象物の親分子に、特定の金属または金属クラスターが付加し、これに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が付加した質量数に相当するイオン、
(4)前記対象物の親分子に、特定の金属または金属クラスターが付加し、これに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が付加し、さらに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が脱離した質量数に相当するイオン、
(5)前記対象物の部分構造に、特定の金属または金属クラスターが付加した質量数に相当するイオン、
(6)前記対象物の部分構造に、特定の金属または金属クラスターが付加し、これに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が付加した質量数に相当するイオン、
(7)前記対象物の部分構造に、特定の金属または金属クラスターが付加し、これに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が付加し、さらに、水素、炭素、窒素、酸素の中から選ばれる1から10のいずれかの数の原子(複数元素の組み合わせを含む)が脱離した質量数に相当するイオン、のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報取得方法。 - 前記飛翔した対象物の検出結果に基づき、一次ビームの走査により得られる前記対象物の二次元分布状態の情報を取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報取得方法。
- 前記生体組織を限定分解する物質が消化酵素であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報取得方法。
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