JP2011001653A - ポリアクリロニトリル系繊維の製造方法 - Google Patents

ポリアクリロニトリル系繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来法と比べて高強度で高配向のポリアクリロニトリル系繊維を提供し、高強度炭素繊維前駆体を提供するものである。
【解決手段】 ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の30%以上であるポリアクリロニトリル系ポリマーを、紡糸溶液中にポリマー成分が12重量%以下となるように含有する紡糸溶液とし、該溶液を凝固浴中に吐出させて凝固糸にするとともに、この凝固糸を凝固浴中で2倍以上に延伸した後、さらに延伸工程を有することを特徴とするポリアクリロニトリル系繊維の製造方法であり、紡糸溶液に用いる溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドであり、凝固浴溶媒が80重量%以上のエタノールを含有することを特徴とするポリアクリロニトリル系繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度炭素繊維を得るための、炭素繊維前駆体であるポリアクリロニトリル系繊維の製造方法に関するものである。
ポリアクリロニトリル系ポリマーからなる繊維を前駆体とする炭素繊維は、その優れた力学的性質により、航空宇宙用途を始め、スポーツ・レジャー用途等の高性能複合材料の補強繊維素材として商業的に生産・販売されている。また近年では自動車・船舶用途、建材用途など一般産業分野への用途要求が増加している。そして市場においてはこれらの複合材料の高性能化のためにより高強度、高弾性の炭素繊維が要求されている。
炭素繊維はその前駆体となる繊維を耐炎化、炭化熱処理をして得ることができ、その前駆体としては、ポリアクリロニトリル系繊維が広く用いられている。炭素繊維を得るための前駆体としてのポリアクリロニトリル系繊維は、炭素繊維の強度や弾性率を優れたものにするために、マクロおよびミクロの欠陥が少ないこと、強度・弾性率が高く、ポリマー鎖が繊維軸方向に高度に配向していることが重要になる。
このような観点から、これまで炭素繊維の高強度、高弾性化を目的として、高強度、高配向のポリアクリロニトリル系繊維について提案がなされてきた。その中で、紡糸方式に関しては、各種有機溶媒、無機溶媒を使用して液体中で延伸して繊維を高配向化させる手法や空中延伸が提案されている。
例えば、ポリアクリロニトリル系ポリマーの紡糸溶液を凝固浴中に吐出して凝固させた後、得られた凝固糸を、凝固浴中の凝固溶液より高い濃度で溶剤を含む延伸浴中で延伸し、水洗、乾燥した炭素繊維前駆体を焼成して高強度炭素繊維を得る製造方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この製造方法では、糸条の持ち込み溶液による延伸浴の濃度変化によって繊維の糸斑が発生しやすくなり、結果として高強度の炭素繊維を得ることができないほか、延伸浴中で繊維表面を溶解させながら延伸させるために溶着によるマクロな欠陥ができやすく高強度、高配向の炭素繊維前駆体を得ることは難しかった。
さらに、ポリアクリロニトリル系ポリマーの紡糸溶液を乾湿式紡糸法にて凝固糸とした後に、溶剤を含有したままの凝固糸を、溶剤を含む延伸浴中で延伸し、水洗、2次延伸して炭素繊維前駆体を得て、焼成して炭素繊維とする製造方法が記されている(特許文献2)。しかしながら該方法でも同様に、延伸浴の濃度変化によって糸斑が発生しやすく、結果として高強度の炭素繊維前駆体を得ることが難しかった。
さらに、ポリアクリロニトリル系ポリマーを溶液紡糸する際に、凝固浴中で2段以上、繊維製造工程全体で5段以上に多段延伸を行う製造方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、該文献で記載されている延伸では総延伸倍率が十分ではなく、高強度の炭素繊維前駆体を得ることは難しかった。
一方、原料重合体の高重合度化の手法としては、重合平均分子量71万のポリアクリロニトリル系ポリマーを用いた乾湿式紡糸法によって炭素繊維前駆体を紡糸した後、空気中で延伸を行って高強度炭素繊維を得る方法が記載されているが(特許文献4)、ここで得られる繊維は高分子量化の効果が小さく、高強度炭素繊維前駆体としてはまだ不十分である他、高分子量化したことによる延伸方法の改善は特に示されていなかった。
さらに、重合平均分子量が134万のポリアクリロニトリル系ポリマーを用いて紡糸する方法が記載されているが(特許文献5)、凝固浴を−40℃に保持しなくてはならず、コストアップと操業性が低いといった問題があった。つまり、高強度炭素繊維前駆体を生産性良く得るためには、単にポリアクリロニトリル系ポリマーの分子量を上げるだけでは十分ではなく、同時に紡糸方法を適正化しなくてはならない問題があった。
このように、従来の技術はいずれも高強度・高配向な炭素繊維前駆体繊維およびその製造方法として未だ不十分なものであり、より高強度、高配向のポリアクリロニトリル系繊維が求められていた。
特開昭61−56326号公報 特開平5−5224号公報 特開昭55−163217号公報 特開昭63−275713号公報 特開平1−104820号公報
本発明の課題は、上記従来技術に対して高強度・高配向な炭素繊維前駆体となるポリアクリロニトリル系繊維を安定して製造する方法を提供することにある。
前記課題を達成するために、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
本発明の第1の発明は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の30%以上であるポリアクリロニトリル系ポリマーを、紡糸溶液中にポリマー成分が12重量%以下となるように含有する紡糸溶液とし、該溶液を凝固浴中に吐出させて凝固糸にするとともに、この凝固糸を凝固浴中で2倍以上に延伸した後、凝固浴を出てからさらに延伸することを特徴とするポリアクリロニトリル系繊維の製造方法である。
本発明の第2の発明は、紡糸溶液に用いる溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドであり、凝固浴溶媒が80重量%以上のエタノールを含有することを特徴とする請求項1記載のポリアクリロニトリル系繊維の製造方法である。
本発明によれば、前記の目的が達成される。そして、本発明の製造方法により得られるポリアクリロニトリル系繊維は高強度、高配向を示し、炭素繊維前駆体として好適に用いることができる。
以下、本発明のポリアクリロニトリル系繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明で用いるポリアクリロニトリル系ポリマーは、アクリロニトリルホモポリマー及び/又は用途に応じてアクリロニトリルモノマーと他種モノマーとの共重合体を用いることができる。他種モノマーの例としては、アクリル繊維の風合いや染色性を変える目的でスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類、さらにp−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。アクリロニトリルモノマーと他種モノマーとの比率は繊維の用途に応じて適宜選択可能であるが、好ましくはポリアクリロニトリル系ポリマーを構成するアクリロニトリルモノマーが40重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。アクリロニトリルモノマーの比率を上げることで、本発明の炭素繊維前駆体から得られるポリアクリロニトリル系ポリマーからなる繊維にアクリル独自の特性が保たれる。
そのほか、炭素繊維前駆体として用いる場合は、耐炎化工程でのポリアクリロニトリル系ポリマーの環化の進行を促進する目的でカルボン酸基、もしくはそのエステル化物を有するモノマーもしくはアクリルアミド系モノマーを共重合してもよい。ポリアクリロニトリル系ポリマーの総重量に対して環化促進のためのモノマーを0.5重量%以上共重合することが好ましく、1.0重量%以上共重合すれば環化が促進されてさらに好ましい。共重合成分の上限としては、実質共重合困難になる20重量%以下である。
本発明で用いるポリアクリロニトリル系ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の30%以上であることが必要である。ポリスチレン換算分子量から導出する重量平均分子量が300万以上のポリアクリロニトリル系ポリマーを全ピーク面積の30%以上含有することにより、紡糸溶液が凝固浴中での変形に追随できる曳糸性を有するようになり、凝固浴中で繊維を2倍以上に延伸することが可能になる。さらに、凝固浴で延伸を加えたことにより、その後の浴延伸や乾熱延伸、水蒸気下での加熱延伸等の通常の延伸工程と合わせて40倍以上の高倍率延伸が可能になり、高配向、高強度の炭素繊維前駆体が得られる。上限としては、ポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の100%である。
重量平均分子量が300万〜1500万の成分を30%以上含有するポリアクリロニトリル系ポリマーを合成するための重合方法としては公知の方法が採用でき、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法等を適用することができる。その中でも懸濁重合法では、重合時に発生する反応熱を効果的に除熱することができ、生産性が向上するため好ましい。
紡糸を行う方法に関しては、紡糸溶液を口金から吐出し、凝固浴を通過させる公知の溶液紡糸法を用いればよく、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法のいずれの方法でも用いることができる。例えば、湿式紡糸法により紡糸を行う場合は、ポリアクリロニトリル系ポリマーに対して固化能力のある溶媒で満たした凝固浴中に吐出する湿式紡糸、ポリマー原液を一旦空中を走行させてから凝固浴に導く乾湿式紡糸が適用できる。
本発明で用いる紡糸溶液は、重合平均分子量が300万〜1500万の高分子量のポリマー成分を含有することで紡糸溶液が高粘度化しやすい。紡糸溶液中にポリマー成分が12重量%より多い場合には、紡糸時の吐出斑が発生しやすくなるために得られる繊維の糸斑が大きくなること、また、高濃度にした際は、凝固浴中での延伸倍率を上げられなくなる問題があり、高強度のポリアクリロニトリル系繊維を得ることが困難になる。このため、紡糸溶液中にポリマー成分が12重量%以下の紡糸溶液とすることが必要である。この点から、紡糸溶液中のポリマー成分が9重量%以下であれば均一な紡糸溶液として吐出を安定化させることができるため、さらに好ましい。一方で、高強度ポリアクリロニトリル系繊維を得るためには繊維を高緻密化することも重要であり、この点からは紡糸溶液濃度を高くすることが好ましく、紡糸溶液中のポリマー成分が1重量%以上であることが好ましい。
本発明で用いるポリアクリロニトリル系ポリマーの紡糸溶液の溶媒としては、通常の溶液紡糸に用いられる溶媒を使用可能であり、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤や、ロダン塩、硝酸などの無機溶剤、その他ポリアクリロニトリル系繊維の溶液紡糸で一般的に用いられる溶剤のいずれの溶剤でも使用することができるが、回収の容易さを考慮すると有機溶剤を用いることが好ましい。
また、本発明の凝固浴中で延伸する目的のためには、凝固浴を5℃以下にすることが好ましい。凝固浴温度を下げることで、凝固浴中での繊維の固化を抑制し、凝固浴中での延伸を糸切れさせることなく行うことができるためである。この点から選択する紡糸溶媒においては、溶媒の固化点温度が−1℃以下であることが好ましく、ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
本発明で用いる凝固浴の溶媒としては、ポリアクリロニトリル系ポリマーが溶解しない溶媒を用いることができ、凝固溶媒として、水、メタノール、エタノールなどがあげられ、これら溶媒を単独で用いても良いし、ポリアクリロニトリル系ポリマーを溶解する溶媒との混合溶液としてもよい。また、凝固浴で延伸を行う点から、紡糸溶液との溶媒置換を徐々に進行させることが好ましい状態であり、具体的には溶媒置換の遅い溶媒の組み合わせとし、凝固浴を5℃以下とすることが好ましい。この点から、紡糸溶液に用いる溶媒がジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドの場合には、凝固浴の溶媒としてはアルコール系溶媒であることが好ましく、80重量%以上のエタノールを含有する溶液を用いることがさらに好ましい。
本発明は、紡糸溶液を凝固浴中に吐出させて凝固糸にするとともに、この凝固糸を凝固浴中で2倍以上に延伸することを特徴とするものである。凝固浴中で溶媒置換が進行する初期の過程で延伸を行うことにより、ポリマー鎖の運動性が高く繊維の構造形成が進行する前に変形させることが可能になり、その後の工程でさらに延伸することで、得られるポリアクリロニトリル系繊維をより高強度、高配向とすることが可能になる。これは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の30%以上であるポリアクリロニトリル系ポリマーを使用することで高曳糸性を有するために可能となるものである。凝固浴での延伸倍率は得られるポリアクリロニトリル系繊維を高配向とするために2倍以上とすることが必要であり、この点から4倍以上であることがさらに好ましい。
また本発明においては、高強度のポリアクリロニトリル系繊維を得るために凝固浴内で繊維を固化させながら規定倍率の延伸を行うことが必要であり、例えば、紡糸工程で口金と最初のローラー間の速度比である紡糸ドラフトは含まない。これは、口金から吐出直後の紡糸溶液中では、凝固浴中での延伸と比較してポリアクリロニトリル系ポリマーの配向緩和が起こりやすいため、ポリアクリロニトリル系繊維を高配向化させるのに不十分であるためである。
凝固浴中で延伸する形態としては種々の方法を採用することができ、ロール延伸、水流による延伸等が用いられるが、浴中でロールに把持させて速度コントロールすることで得られるポリアクリロニトリル系繊維の物性をコントロールしやすいため、ロール延伸とすることが好ましい。
また、凝固浴から引き取られたポリアクリロニトリル系繊維は、適度な繊維直径とするため、また、ポリアクリロニトリル系ポリマーを高配向化させるために延伸を行う。延伸は凝固浴での延伸に引き続き、通常の液浴延伸、空気中延伸、スチーム延伸等により行ってもよいし、これらを組み合わせて多段階で行うことができる。凝固浴から繊維を引き上げる引取りローラー以降の延伸倍率は、目的に応じ適宜調整することができるが、後述する上限延伸倍率は10倍以上とすることが好ましい。また、工程の途中もしくは最後に適宜、乾燥、給油、洗浄を行っても良い。
本発明でいう高強度のポリアクリロニトリル系繊維の指標としては、繊維の強度が6.5cN/dtex以上であればよく、7.0cN/dtex以上では、さらに好ましい炭素繊維前駆体となる。また、高配向のポリアクリロニトリル系繊維の指標としては、繊維の弾性率が60cN/dtex以上であればよく、80cN/dtex以上であればさらに好ましい炭素繊維前駆体となる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.重量平均分子量
測定しようとする重合体をその濃度が0.1重量%となるように、N,N−ジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解して検体溶液を得る。得られた検体溶液についてGPC装置を用い、次の条件で測定したGPC曲線から分子量の分布曲線を求めピーク面積比を算出した。測定は3回行い、Mw、ピーク面積比の値を平均して用いた。
・カラム:極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速:0.8ml/min
・温度:40℃
・試料濾過:メンブレンフィルター(0.45μmカット)
・注入量:20μl
・検出器:示差屈折率検出器
重量平均分子量は、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも3種類用いて、溶出時間−分子量の検量線を作成し、その検量線上において該当する溶出時間に対応するポリスチレン換算の分子量を読み取ることにより求めた。
ポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比は下記式によって導出した
面積比=A/B×100(%)
A:GPC曲線において、分子量が300万から1500万である範囲の面積
B:GPC曲線において、分子量が3000から1500万である範囲の面積
本実施例では、GPC装置として(株)島津製作所製CLASS−LC2010を、カラムとして東ソー(株)製TSK−GEL−α―M(×2)+東ソー(株)製TSK−guard Colume αを、N,N−ジメチルホルムアミドおよび臭化リチウムとして和光純薬工業(株)製を、メンブレンフィルターとしてミリポアコーポレーション製0.45μ−FHLP FILTERを、示差屈折率検出器として(株)島津製作所製RID−10AVを、検量線作成用の単分散ポリスチレンとして、分子量189000、354000、707000、1110000および4480000のものをそれぞれ用いた。
B.ポリマー溶液の粘度
粘度測定法により、下記の測定装置および条件を用いて測定し、下記の剪断速度の範囲内で実測された粘度の値を溶液粘度として使用した。
粘度測定装置:BROOKFIELD製 DV−II+Pro VISCOMETER
恒温装置:BROOKFIELD製 TC500
剪断速度:10〜20sec−1
C.上限延伸倍率
速度の異なるローラー間で繊維糸条を延伸する際、10分間連続して糸切れなく巻取りできる最大の延伸倍率を上限延伸倍率とした。
D.繊維の力学特性
ポリアクリロニトリル系繊維10mの繊維重量を測定して2回の平均値から繊維の繊度を求めた後、引っ張り速度=10mm/分とし、JIS L1013に示される条件で5回測定し、荷重−伸長曲線を求めた。次に破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り伸度として強伸度曲線を求めた。
実施例1
アクリロニトリル100重量部、イタコン酸0.2重量部、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.01重量部、ポリビニルアルコール(重合度2000)1.5重量部、および水290重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。70℃で4時間加熱処理を行い水系懸濁重合法により重合し、ポリアクリロニトリル系ポリマーを得た。得られたポリマー粉末を水、エタノールで十分に洗浄し、乾燥して乾燥ポリマーを得た。得られたポリアクリロニトリル系ポリマーは、イタコン酸共重合率が0.3重量%、ポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比は全ピーク面積の40%であった。
得られたポリアクリロニトリル系ポリマー7重量部を、攪拌しながらN,N−ジメチルホルムアミド93重量部に溶解し、さらに70℃に加温して12時間攪拌し、液中のポリアクリロニトリルポリマー濃度が7重量%、45℃での溶液粘度が1700poiseの紡糸原液を得た。この紡糸原液を30℃の温度で口金吐出孔径0.99mm、孔深度2mmの口金から、単孔吐出あたりの吐出量が0.77ml/minになるように空気中に押出し、2℃に温度コントロールしたエタノールとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶液からなる凝固浴に導入した。吐出された繊維を凝固浴内中の第一ローラーで4m/minで引取り、同じく凝固浴中の16.8m/minの第二ローラーとの間で凝固浴中で4.2倍に引き伸ばしたのち、第二ローラーと等速の凝固浴外の第三ローラーで引き上げ凝固糸条とした。この凝固糸条を、エタノール浴中で十分洗浄した後、200℃に加熱した加熱ローラーと、25℃の引き取りローラー間で延伸を行った。このときの上限延伸倍率は32倍であった。凝固浴中で延伸を行うことにより、凝固浴以降の延伸倍率とあわせた全体で高倍率延伸が可能になり、強度、弾性率の高いポリアクリロニトリル系繊維を得た。
得られたポリアクリロニトリル系繊維を、240℃の空気中で耐炎化張力0.3cN/dtexで80分耐炎化処理を行ったところ、糸切れなく耐炎化繊維が得られた、耐炎化処理での工程通過性は良好であった。得られた耐炎化繊維を、200℃から400℃に2分で昇温し、400〜500℃を40秒で昇温し、最高温度700℃で2分、延伸比1.10で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに1500℃で3分、張力0.9cN/dtexの下で炭化処理することにより炭化糸を得た。炭化処理においても糸切れなく工程通過性が良好であった。
実施例2
凝固浴の温度を20℃とした以外は実施例1と同様にして凝固糸条とし、さらに、200℃でのローラーによる上限延伸倍率が24倍となった以外はすべて実施例1と同様にしてポリアクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維は、高強度、高弾性率のポリアクリロニトリル系繊維であり、実施例1と同様の耐炎化、炭化処理においても糸切れなく、工程通過性が良好であり、炭素繊維前駆体として好ましいものであった。
実施例3
液中のポリアクリロニトリルポリマー濃度を10重量%とし、200℃のローラーによる上限延伸倍率が16倍となった以外はすべて実施例1と同様にして、ポリアクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維は、高強度、高弾性率のポリアクリロニトリル系繊維であり、実施例1と同様の耐炎化、炭化処理においても糸切れなく、工程通過性が良好であり、炭素繊維前駆体として好ましいものであった。
実施例4
凝固浴中での延伸倍率を3.1倍とした以外はすべて実施例1と同様にして、ポリアクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維は、高強度、高弾性率のポリアクリロニトリル系繊維であり、実施例1と同様の耐炎化、炭化処理においても糸切れなく、工程通過性が良好であり、炭素繊維前駆体として好ましいものであった。
実施例5
得られたポリアクリロニトリル系ポリマー7重量部を、ジメチルスルホキシド溶液とし、20℃に温度コントロールした水とジメチルスルホキシドの混合溶液からなる凝固浴に導入した以外は実施例2と同様にして、凝固糸条を得た。この凝固糸条を、水浴中で十分洗浄した後、実施例2と同様の条件で延伸を行った。得られた繊維は高強度、高弾性率のポリアクリロニトリル系繊維であり、実施例1と同様の耐炎化、炭化処理においても糸切れなく、工程通過性が良好であり、炭素繊維前駆体として好ましいものであった。
比較例1
アクリロニトリル100重量部とイタコン酸0.5重量部を、ジメチルスルホキシド溶媒中で通常の溶液重合法により重合し、イタコン酸共重合率が0.3重量%、ポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が0%のポリアクリロニトリル系ポリマーを得た。このポリアクリロニトリル系ポリマーと、実施例1で用いたポリアクリロニトリル系ポリマーを7対1の比で混合し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の5%のポリアクリロニトリル系ポリマーを得た。
このポリマーをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、液中のポリアクリロニトリルポリマー濃度が7重量%の紡糸原液を得た。この紡糸溶液を実施例1と同様の紡糸条件で口金から吐出して凝固浴に導いた。凝固浴中での2倍延伸では糸切れしたため、凝固浴中にて4m/minの第一ローラーと6m/minの第二ローラーとの間で1.5倍の延伸を行い凝固浴から引き上げた。200℃での上限延伸倍率が8倍と低下したものの、ポリアクリロニトリル系繊維を得た。
得られた繊維は実施例1で得られた繊維と比較し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の5%と低いために凝固浴中で延伸可能な倍率が低く、また上限延伸倍率も低いため、強度、弾性率共に低い繊維しか得られなかった。
比較例2
液中のポリアクリロニトリルポリマー濃度を18重量%とした以外はすべて実施例1と同様の紡糸条件で口金から吐出して凝固浴に導いた。吐出直後に糸斑が発生し、200℃での上限延伸倍率が8倍となったポリアクリロニトリル系繊維を得た。しかし、繊維の太斑を要因として糸切れするため、実施例1で得られた繊維と比較し、強度、弾性率共に低い繊維しか得られなかった。
比較例3
凝固浴内中の第一ローラー、第二ローラーを共に4m/minとし、凝固浴中で延伸しない以外は実施例1と同様にして紡糸を行い、凝固糸を得た。この凝固糸を実施例1と同様に洗浄し、200℃で延伸したところ、上限延伸倍率は24倍となった。凝固浴中で延伸しないために、強度、弾性率の低い繊維しか得られなかった。
Figure 2011001653

Claims (2)

  1. ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が300万〜1500万であるピーク面積比が全ピーク面積の30%以上であるポリアクリロニトリル系ポリマーを、紡糸溶液中にポリマー成分が12重量%以下となるように含有する紡糸溶液とし、該溶液を凝固浴中に吐出させて凝固糸にするとともに、この凝固糸を凝固浴中で2倍以上に延伸した後、凝固浴を出てからさらに延伸することを特徴とするポリアクリロニトリル系繊維の製造方法。
  2. 紡糸溶液に用いる溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドであり、凝固浴溶媒が80重量%以上のエタノールを含有することを特徴とする請求項1記載のポリアクリロニトリル系繊維の製造方法。
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