以下、本発明のエアバッグのカバー体及びエアバッグ装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2において、1は自動車の車体を構成するドア部であり、このドア部1は、車室2に設けられた図示しない座席の側方に位置している。なお、以下、方向については、車両である自動車の直進方向を基準とし、所定方向としての上方(図1及び図2に示す矢印U方向)、ドア部1側から車室2の中央側に向かう方向である車室内側方(図1に示す矢印C方向)、車室2の中央側からドア部1側に向かう方向である車室外側方(図1に示す矢印D方向)、及び前方(図2に示す矢印F方向)などの方向を説明する。
そして、このドア部1は、図2に示すように、ドア部1の全体を囲む枠状のフレーム11を備え、このフレーム11に囲まれた部分の下側部がドア本体部12となり、このフレーム11に囲まれた部分の上側部の開口が、ウインドシールドでありサイドガラスあるいはサイドウィンドウガラスと呼ばれる窓ガラス14により開閉される。そして、この窓ガラス14及び窓ガラス14により開閉される開口の部分が、所定面であり側面部を構成する窓部15となっている。そして、ドア本体部12は、金属板などから形成された被取付部材である部材としてのインナパネル16と、このインナパネル16の車室外側方に離間して位置する金属板などから形成されたアウタパネル17とを備えている。そして、インナパネル16の車室内側方は、一部が樹脂などにて形成された内装材である主ドアトリム18で覆われているとともに、上側部の後部の一部がエアバッグ装置21を構成するとともに内装材であるカバー体22で覆われている。なお、図1において、24は、窓ガラス14、インナパネル16、アウタパネル17、及びエアバッグ装置21のカバー体22に密着するウェザーストリップなどとも呼ばれるシール部材である。
そして、エアバッグ装置21は、乗員保護装置であり、主として側面衝突時あるいは横転時などに被保護物としての乗員の頭部を保護するいわゆるドアマウントエアバッグで、カバー体22に加え、袋状をなすエアバッグ31と、このエアバッグ31にガスを供給するガス発生装置である図示しないインフレータと、これらカバー体22、エアバッグ31、及びインフレータが取り付けられる取付体34とを備え、これら部材を組み合わせて、エアバッグモジュールであるエアバッグ装置21が構成されている。さらに、このエアバッグ装置21には、図示しないハーネスを介して、制御装置が接続されている。
そして、エアバッグ31は、単数あるいは複数の基布を縫い合わせて袋状としたもので、例えば、2枚の略同形状の基布であるメインパネルの外周部同士を縫い合わせて、扁平な袋状に構成されている。そして、通常時は、ロール状及び蛇腹状などの所定の方法により小さく折り畳まれている。
また、インフレータは、略円柱状のインフレータ本体部を備え、このインフレータ本体部の一端側にガス噴射部が設けられているとともに、他端部にコネクタが設けられ、このコネクタにハーネスが接続されている。そして、このインフレータは、ハーネスを介して制御装置から点火信号が流れることにより、内部に充填した推進薬を反応させ、あるいは内部のボンベに貯留したガスを開放などして、ガス噴射部からガスを噴射し、直接的にあるいはパイプを介してエアバッグ31にガスを供給する。
また、取付体34は、例えば金属により一体あるいは複数の部材を組み合わせて構成され、本実施の形態では、それぞれ金属板で形成された第1及び第2のプレート41,42を互いに接合し、全体として断面略Y字状に形成されている。そして、この実施の形態では、第1のプレート41は、第2のプレート42の車室2側に位置し、かつ第2のプレート42よりも下側に延設され、第1のプレート41の中間位置に第2のプレート42の下端部が溶接などして接合されている。そして、第1のプレート41の下側に突出した部分には、下側部に円孔43aを有する車体取付部43が形成されている。そして、この車体取付部43の上側部の第1のプレート41と第2のプレート42との間に、上側を開口した収納部44が構成され、この収納部44に折り畳んだエアバッグ31及びインフレータなどが収納されている。
そして、車体取付部43の上側に位置する第2のプレート42の上側部には、円孔を有する複数の取付固定受部45が形成されているとともに、これら取付固定受部45同士の間に位置して、上端部である先端部が外側に折り返され、プレート補強部46が形成されている。
また、車体取付部43の上側に位置する第1のプレート41には、上端部である先端部から、複数のカバー係止部48が一体に突設されている。これらカバー係止部48は、外側さらには下側に突設された断面略L字状の爪すなわちフック状をなしている。さらに、この第1のプレート41には、カバー係止部48の下方に位置して、円孔を有する複数のカバー固定受部49が切り起こしなどして形成されている。
そして、取付体34は、車体取付部43の円孔43aに、ボルト、リベット、あるいはビスなどの固定具51を挿入して車体取付部43がインナパネル16に取り付けて固定され、ドア部1に支持される。また、後述するように、取付体34の上側の取付固定受部45及びカバー固定受部49は、それぞれ、ボルト、リベット、あるいはビスなどの固定具52,53によりカバー体22に取り付けて固定され、カバー係止部48は、カバー体22に係止して取り付けられている。
そして、カバー体22は、エアバッグドアパネルあるいはエアバッグ用リッドなどとも呼ばれるもので、表面側すなわち車室2側に露出する樹脂製のアウタ部61と、このアウタ部61の背面側すなわち裏面側に振動溶着などで取り付けられた樹脂製のインナ部62とを積層した積層体として構成され、取付体34にエアバッグ31などを組み付けたモジュールの上方及び乗員に対向する車室内側方などを覆うようになっている。
そして、アウタ部61は、主ドアトリム18と連続的な形状に形成され、主ドアトリム18とともにドア本体部12を覆う内装材を構成するいわばシームレスパネルであり、ドア本体部12の上側を覆う上面パネル部64と、この上面パネル部64の車室内側方の縁部に連続し、下方に延設された側面パネル部65と、上面パネル部64の車室外側方の縁部に連続し、下方に向かって側面パネル部65より短く延設されたアウタ縁片部である縁片部66と、これら上面パネル部64、側面パネル部65、及び縁片部66の後側の縁部に連続して後面を覆う一体あるいは別体に形成された図示しない端部パネル部とを備えている。そして、上面パネル部64は、ドア部1の意匠に応じて平面状あるいは曲面状などに形成され、本実施の形態では、車室外側方に向かって若干上方に向かう傾斜面状に形成され、ドア部1のシール部材24などが車室2の車室内側方すなわち乗員側から見えないように覆っている。また、側面パネル部65は、主ドアトリム18の形状に応じて曲面状に形成され、下側の縁部には、主ドアトリム18に係合して連結されるトリム連接部69が形成されているとともに、図2に示すように、下側の一部にエンブレム取付部70が設けられ、このエンブレム取付部70に、エンブレム71が取り付けられている。また、縁片部66は、巻き込み部とも呼ばれるもので、裏面側すなわち下方に向いてほぼ垂直状に延設されていわばアンダー形状となり、シール部材24などが車室2側から見えないようにして外観を向上するため上面パネル部64の高さ位置を高く設定した構成において、ドア部1の内部が車室外側方などからも露出しないように覆い、外観を向上しているとともに、シール部材24に密着し、ドア部1の内側に雨水などが浸入しないようにしている。また、後側パネル部は、リッドカバーとも呼ばれるもので、ハーネスなどを挿通させる後側キャップ部が設けられている。
そして、このアウタ部61には、図2などに示すように、主として上面パネル部64に区画部72が形成され、この区画部72により区画された内側に、扉部73を構成するアウタ扉部74が形成されている。そして、区画部72は、リッドテアラインとも呼び得る薄肉部である弱部であり、上面パネル部64の車室内側方の側面パネル部65との接続部分あるいは接続部分の近傍に沿ってカバー体22の長手方向である前後方向に延びる長辺部72aと、この長辺部72aの前後の端部から車室外側方に延びて縁片部66の縁部に至る短辺部72bとを備えた平面略コの字状に形成されている。そして、この区画部72は、アウタ部61の上面パネル部64及び縁片部66の裏面側が切削などして凹設されて他の部分より脆弱に形成され、破断するテアラインあるいは容易に屈曲するヒンジとして機能する。すなわち、この区画部72は、エアバッグ31が膨張展開する圧力により一部あるいは全部が開裂すなわち破断し、通常は短辺部72bの部分がアウタ破断部として破断し、破断しなかった長辺部72aは容易に変形して屈曲するヒンジ部として機能する。そして、区画部72の外側は、上面パネル部64から側面パネル部65にかけて、エアバッグ31の膨張展開時にも展開しない非展開部であり、アウタ取付部を構成するアウタ本体部75となっている。
また、このアウタ部61は、主として硬質な樹脂にて形成され、本実施の形態では、図1に示すように、いわば硬質の樹脂であるポリプロピレン(PP)を射出成形した基材である板状のアウタ基板部76の意匠面である表面側に、いわゆるリム(RIM)成形により外観や触感を向上するためのウレタン例えば無発泡ウレタンあるいは発泡ウレタン表皮(PUR)である表皮層77を薄く一体的に加飾して形成されている。
一方、インナ部62は、バッキング部あるいはエアバッグ用インナーなどとも呼ばれるもので、本実施の形態では、アウタ部61のアウタ基板部76を構成する材料よりも軟質の変形可能な材料にて形成された軟質樹脂製で、例えばエラストマー系の樹脂であるTPO樹脂(サーモプラスチックオレフィン)を金型に射出成形して形成すなわち成型された第1のインナ部81と、アウタ部61のアウタ基板部76と同一あるいは同様の硬質の樹脂であるポリプロピレン(PP)を射出成形した板状の第2のインナ部82の2個の部材を備えている。なお、第2のインナ部82は、第1のインナ部81と同一の軟質の樹脂であるTPO樹脂で形成することもできる。そして、第1のインナ部81は、上面パネル部64及び側面パネル部65の上側部の裏面側に位置して、振動溶着などによりアウタ部61に一体的に溶着して接合した状態で取り付けられ、第2のインナ部82は、側面パネル部65の下側部の裏面側に位置して振動溶着などによりアウタ部61に一体的に溶着して接合した状態で取り付けられている。そして、これら第1及び第2のインナ部81,82により、カバー体22が取付体34など他の部材に取り付けられるようになっている。
そして、第1のインナ部81は、インナアッパあるいはアッパーインナーなどとも呼び得るもので、図1、図3及び図4に示すように、アウタ部61の上面パネル部64のアウタ扉部74の裏面側に取り付けられて扉部73を構成するインナ扉部84と、アウタ部61の上面パネル部64のアウタ本体部75及び側面パネル部65の裏面側に取り付けられて非展開部である取付部を構成するインナ取付部としてのインナ本体部85と、扉部73を構成するインナ扉部84の長手方向に沿った一側部である車室内側方とインナ本体部85とを変形可能に連結しヒンジ部を構成するインナヒンジ部としてのヒンジ本体部86と、扉部73を構成するインナ扉部84の長手方向に沿った他側部である車室外側方から展開方向である上方の略反対側である略下方の所定方向に突設された支持部としての支持片部87と、インナ本体部85の複数カ所から裏面側である車室外側方に膨出するように形成された係止取付部89と、インナ扉部84の裏面側の支持片部87の基端部である上端部の複数カ所から車室外側方に突出するように形成された衝撃吸収部を構成する台部90とが一体に形成されている。
そして、インナ扉部84は、略平板状をなし、表面側から支持片部87の反対側に向かい所定の方向に沿って格子状などに突設された図示しない溶着リブを振動溶着し、アウタ扉部74の裏面の略全面に沿って密着して一体的に取り付けられ、扉部73を構成している。
また、インナ本体部85は、アウタ本体部75の裏面に密着して溶着される板状のインナ基板部93と、このインナ基板部93の前後の端部近傍の裏面側から垂直板状に突設されたインナ端板部94を備えている。そして、インナ基板部93は、アウタ本体部75の裏面側の形状に沿って湾曲した板状に形成され、インナ扉部84と交差する面をなしてインナ扉部84の車室内側方に位置するとともに、前後方向の両端部では、インナ扉部84の前側及び後側に延設されている。そして、このインナ基板部93は、インナ扉部84と同じく表面側から支持片部87の反対側に向かい所定の方向に沿って格子状などに突設された図示しない溶着リブを振動溶着し、アウタ本体部75の裏面に沿って密着して一体的に取り付けられ、非展開部を構成している。
なお、図1及び図5などの図においては、構成の理解を容易にするため、アウタ部61とインナ部62と振動溶着した部分に隙間を空けて図示している。
また、ヒンジ本体部86は、インナ扉部84の一側部である車室内側方の縁部とインナ本体部85とを一体に変形可能に連結し、非展開部に対し、長手方向である前後方向に沿った仮想的な軸を中心として、扉部73を展開すなわち回動可能に連結して支持している。そして、このヒンジ本体部86は、アウタ部61の区画部72の長辺部72aに対向し、この長辺部72aを跨ぐようにして、裏面側すなわち下方から車室外側方に向かい断面略U字状をなして湾曲して膨出している。さらに、このヒンジ本体部86は、複数のスリット部86aにより、複数の片状に分割されている。また、前後の端部のスリット部86aに連続し、端部スリット部86bが車室外側方の縁部まで延設されている。この端部スリット部86bは、インナ扉部84の前後の端部とインナ本体部85のインナ基板部93との間に位置し、区画部72の短辺部72bに対向する部分となる。なお、この端部スリット部86bは、本実施の形態では、切り溝であるスリットとして形成したが、薄肉の破断予定部として形成することもできる。
また、支持片部87は、エアバッグリッドあるいは縦壁などとも呼び得るもので、インナ扉部84の車室外側方の端部近傍から略下方の所定方向に向かい板状をなして一体に突設されている。そして、この支持片部87の先端側すなわち下端側の複数カ所には、他の部分より突設された取付固定部96が設けられている。そして、これら取付固定部96は、前後方向に略等間隔で、それぞれ先端側が半円状の舌片状のリベット座とも呼び得るもので、それぞれ半円を構成する円の中心に位置してモジュール取付孔あるいはリベット孔とも呼び得る円孔状の取付孔96aが設けられている。そして、図1に示すように、この取付孔96aに挿入されるリベットなどの固定具52により、取付固定部96すなわち支持片部87の先端側である下側部が取付体34の取付固定受部45に固定して取り付けられる。
さらに、この支持片部87には、中間位置、すなわち、取付固定部96の上側部に位置し、かつ、インナ扉部84の下面から離間して位置し、前後方向すなわち扉部73の長手方向に沿って、破断予定部99が形成されている。この破断予定部99は、テアライン、脆弱部、あるいはインナ破断部とも呼び得るもので、車室外側方から凹設された溝状をなし、支持片部87の他の部分すなわち上下に隣接する部分より厚さ寸法が小さく、例えば0.5mm程度の板厚で脆弱に形成され、エアバッグ31が膨張展開する圧力により破断するようになっている。
そして、この破断予定部99の下側に沿った部分は、各取付固定部96を前側から後側まで連続して一体に連結する平板状をなしている。一方、破断予定部99の上側に沿った部分には、複数のテアライン開口部101が形成されているとともに、これらテアライン開口部101同士の間に位置して、衝撃吸収部を構成する台部90が形成されている。そして、各テアライン開口部101は、少なくとも、取付固定部96の取付孔96aの上方、いわば直上に位置し、さらに、取付固定部96の上方に位置しない位置にも形成されている。そして、各テアライン開口部101は、支持片部87を貫通する矩形の開口で、インナ本体部85の裏面から破断予定部99に接する位置まで形成され、いわば、取付固定部96の上方では、破断予定部99とテアライン開口部101とが一体的に形成されている。
さらに、各台部90は、ボックス部あるいはブロック部などとも呼び得るもので、図1及び図3に示すように、案内部としての案内板部103と、この案内板部103から上側に突設された側板部104とを備えている。そして、案内板部103は、略平板状をなし、破断予定部99の上側の縁部に沿った位置から車室外側方に突設され、インナ扉部84の下方に離間し、かつ、インナ扉部84とほぼ平行に配置されている。また、これら案内板部103の扉部73の長手方向に沿った寸法、すなわち支持片部87からの突出方向に対する幅寸法は、互いに同一ではなく、扉部73の長手方向の中央部分では、支持片部87の幅寸法は比較的小さく設定される一方、扉部73の長手方向の両端部分では、中央部分に対して、支持片部87の幅寸法は比較的大きく設定されている。そして、幅寸法の小さい案内板部103については、幅方向の中央部分から側板部104が突設され、中央部分がインナ扉部84に連結されてリブを備えた形状となっている。一方、幅寸法の大きい案内板部103については、幅方向の両側部分から側板部104が突設されてインナ扉部84に連結されて箱状となっている。また、これら案内板部103及び側板部104の板厚は、1.8mm以上2.5mm以下に設定されている。あるいは、側板部104は、荷重を受けた時にたわむように、1.8mm以上2.0mm以下とし、案内板部103は、縁片部66に力を伝達するために側板部104よりも強度を上げて、1.8mm以上4.0mm以下とすることもできる。
そして、インナ部62をアウタ部61に取り付けた状態で、破断予定部99と縁片部66の先端部とはほぼ同じ高さ位置にあり、案内板部103の先端部は、アウタ部61の縁片部66の下端部である先端部に沿って当接する。すなわち、案内板部103の下面が縁片部66の先端部の端縁に滑らかに連設して、下面にエアバッグ31を案内するいわば滑り台部が構成される。さらに、この台部90を含む部分は、単なる板状の部分よりも変形しにくい形状で、かつ、所定の力が加わった状態で、衝撃を吸収しつつ潰れ変形すなわち座屈する衝撃吸収部を構成する。この衝撃吸収部は、上記のように、扉部73の長手方向の両端部分については箱状となり、扉部73の長手方向の中央部分についてはリブを備えた断面略H字状となっている。さらに、破断予定部99が破断した状態で、支持片部87の破断により形成された端縁部と、縁片部66の先端部との間の空間部の下側が、案内板部103により覆われるようになっている。
また、案内板部103の幅寸法に対応し、テアライン開口部101については、扉部73の長手方向の中央部分では、幅寸法は比較的大きく、扉部73の長手方向の両端部分では、中央部分に対して、幅寸法は比較的小さく形成されている。
一方、インナ本体部85の係止取付部89は、係合部受容部とも言い得るもので、図1及び図3に示すように、インナ本体部85のインナ基板部93の複数カ所から内側に空間を有するように車室外側方に凸状に膨出し、インナ部62のインナ基板部93をアウタ部61のアウタ基板部76に溶着して取り付けた状態で、このアウタ部61のアウタ基板部76とともに箱状をなすように形成されている。すなわち、各係止取付部89は、いわば衝撃吸収ボックス体を構成し、単なる板状の部分よりも変形しにくい形状で、かつ、所定の力が加わった状態で、衝撃を吸収しつつ潰れ変形すなわち座屈して、インナ本体部85の剛性と衝撃吸収特性とを両立するようになっている。そして、各係止取付部89は、図3に示すように、インナ基板部93の略垂直状の部分の車室外側方に離間して位置する略垂直状の係合受基部としての支持板基部89aと、この支持板基部89aの上端部とインナ基板部93を連結する傾斜した傾斜支持板部89bと、これらインナ基板部93、支持板基部89a、及び傾斜支持板部89bの両側部を連結する一対の側部支持板部89cとが一体に形成されている。さらに、傾斜支持板部89bには、フック引掛用の取付用開口部89dが形成され、支持板基部89aには、車室内側方及び車室外側方のそれぞれに補強リブ部89eが一体に突設されている。そして、インナ基板部93と係止取付部89とがインナ部62の長手方向に沿っていわば交互に形成されて凹凸状をなし、外部から力が加わった際に長手方向に沿ってたわむように湾曲可能となっている。また、インナ基板部93は、アウタ部61のアウタ基板部76に沿って配置されるとともにこのアウタ基板部76に溶着して一体的に接合して取り付けられる。
一方、第2のインナ部82は、インナロアあるいはロアインナーなどとも呼び得るもので、第1のインナ部81とは別体であり、図1に示すように、第1のインナ部81の下方に位置してアウタ基板部76の裏面側に密着し溶着などして取り付けられた板状の下基板部82aと、この下基板部82aから裏面側である車室外側方に突設された複数の第2取付部82bとが一体に形成されている。また、この実施の形態では、各第2取付部82bは、車室外側方の下方に向かって傾斜した方向を軸方向とする筒状に形成されている。
また、このエアバッグ装置21のインフレータに接続される制御装置は、CPUを備えるとともに、単数あるいは複数のセンサが接続され、乗員、衝突、車体の角度などの状態に応じてインフレータを起動させる点火信号を送るようになっている。
次に、このエアバッグ装置21の製造工程を説明する。
まず、カバー体22は、アウタ部61、及びインナ部62の第1及び第2のインナ部81,82をそれぞれ金型を用いて樹脂にて一体に形成し、これら第1及び第2のインナ部81,82をアウタ部61に振動溶着して一体的に接合する。ここで、アウタ部61の表皮層77については、他の工程に対して適宜の順序で形成できるが、例えば、アウタ部61のアウタ基板部76、インナ部62の第1及び第2のインナ部81,82をそれぞれ形成し、アウタ基板部76の裏面に第1のインナ部81を振動溶着し、次いで、アウタ基板部76の表面に表皮層77を反応射出形成で形成し、最後に、アウタ基板部76の裏面に第2のインナ部82を振動溶着することができる。
そして、取付体34の収納部44にインフレータと折り畳んだエアバッグ31を収納し、これら部材をカバー体22で覆った状態で、図1に示すように、エアバッグモジュールとして構成される。そして、このカバー体22のエアバッグモジュールへの取付作業は、取付体34のカバー係止部48を係止取付部89の取付用開口部89dに挿入し、補強リブ部89eに嵌合するようにして支持板基部89aに係止し、カバー体22の上側部の車室内側方の部分を取付体34で支持する。また、取付体34のカバー固定受部49に車室外側方の下方から挿入したビスなどの固定具53を第2取付部82bに螺合して固定し、カバー体22の下側部を取付体34で支持する。
さらに、カバー体22の支持片部87を、破断予定部99に沿って開くように変形すなわち屈曲し、取付固定部96を取付体34のプレート42に沿わせる。この状態で、取付固定部96の取付孔96aから取付体34の取付固定受部45にリベットなどの固定具52を挿入し、この固定具52をかしめるなどして、取付固定部96を取付体34に固定し、カバー体22の上側部の車室外側方の部分を取付体34で支持する。すなわち、この状態で、支持片部87の下側部は、上下方向に沿って垂直状に取付体34に取り付けられるとともに、支持片部87の上側部は、折り畳んで収納されたエアバッグ31の上側部に臨むように傾斜して配置されている。
このようにして、前後方向から見て、すくなとも3カ所でカバー体22を取付体34に支持し、カバー体22が安定して支持される。
そして、インフレータと制御装置とを電気的に接続するとともに、取付体34の車体取付部43を固定具51でドア部1のインナパネル16に取り付け、カバー体22の下端のトリム連接部69を主ドアトリム18に係合するとの簡略な作業により、エアバッグ装置21がドア部1に設置される。
この状態で、カバー体22の上面パネル部64などにより、取付体34にエアバッグ31などを組み付けたモジュールのエアバッグ膨出側である上方が覆われるとともに、カバー体22の側面パネル部65などにより、乗員側である車室内側方など覆われ、カバー体22が、モジュールの上方と乗員側とを連続して覆う内装パネルとして機能するようになっている。また、この状態で、カバー体22の側面パネル部65は、乗員の側部に近接して対向した状態となる。
次に、エアバッグ装置21の展開時の動作を説明する。
図1、及び図5(a)に示すエアバッグ31の収納状態から、自動車の車体が側面衝突などの衝撃を受け、あるいは横転などすると、センサなどの信号に基づき制御手段が判断してインフレータを起動し、エアバッグ31にガスを供給する。すると、このエアバッグ31は、収納部44が開口する上側(矢印U方向に)に向かって膨張展開を開始し、カバー体22の扉部73を下側から上方に向かって押圧する。そして、この押圧する圧力により、インナ部62の支持片部87の破断予定部99が破断するとともに、アウタ部61の区画部72の一部または全部、少なくとも短辺部72bを破断する。
そして、エアバッグ31がさらに膨張展開すると、このエアバッグ31により押圧された扉部73がアウタ部61の長辺部72a及びインナ部62のヒンジ本体部86を支点として車室内側方に回動し、エアバッグ31のエアバッグ膨出用通路を形成する。なお、アウタ部61の区画部72の長辺部72aが破断せずに接続された状態の場合には、この長辺部72aが支点となり、ヒンジ本体部86は伸びるように変形して、扉部73が円滑に回動する。また、長辺部72aが破断した場合には、ヒンジ本体部86は伸びるように変形しながら支点となり、扉部73が円滑に回動する。そして、このエアバッグ膨出用通路から突出したエアバッグ31は、扉部73を回動させながら、この扉部73と窓部15との間を介し、図5(b)に示すように、窓部15に沿って上側に円滑に膨張展開し、側方に移動する乗員を拘束して頭部などを保護する。
また、エアバッグ装置21の展開時、あるいは非展開時に、乗員が側方に移動してエアバッグ装置21に当接した場合には、略箱状などをなす各係止取付部89及び台部90が潰れ変形するとともに、カバー体22が長手方向に沿ってたわむように湾曲し、衝撃を吸収して乗員を保護する。
このように、本実施の形態によれば、ドア部1内に収納したエアバッグ31をドア部1の上面から上方に膨張展開するいわゆるドアマウントエアバッグを構成し、車両の座席に着席した乗員を拘束して頭部などを保護できる。
すなわち、カバー体22に覆われたエアバッグ31にガスを供給することにより、支持片部87の破断予定部99を円滑に破断し、ヒンジ部を支点として扉部73を円滑に開いてエアバッグ31を車室2の窓部15に沿って所定方向である上方に向かって円滑迅速に展開させることができる。そして、この破断予定部99は、支持片部87に設けたため、外観に影響を与えることなく、破断の特性を自由に設定でき、扉部73を円滑に開くことができる。
そして、カバー体22は、車室内側方の上部に設けた係止取付部89が取付体34のカバー係止部48に係止され、車室外側方の上部に設けた取付固定部96が固定具52で取付体34の取付固定受部45に固定され、車室内側方の高さ方向の中央部あるいは下部に設けた第2取付部82bが固定具53で取付体34のカバー固定受部49に固定されて、カバー体22が取付体34にがたつくことなく安定して支持される。
また、カバー体22の扉部73は、扉部73の長手方向に沿った他側部である車室外側方をインナ扉部84から突設された支持片部87により取付体34に取り付けられて支持され、扉部73の長手方向に沿った一側部である車室内側方をヒンジ部すなわち区画部72の長辺部72a及びヒンジ本体部86を介してインナ本体部85の係止取付部89で取付体34に取り付けられて支持されているとともに、扉部73の他側部には箱状あるいは断面略H字状の台部90を設け、一側部には箱状の係止取付部89を設けたため、長手寸法の大きいカバー体22の剛性を容易に向上でき、カバー体22を変形しにくくできる。そこで、ドア部1の開閉時や、乗員がカバー体22に力を加えた場合などにも、扉部73を含みカバー体22が変形することなく外観を良好に維持できる。
そして、扉部73の他側部である車室外側方には、アンダー形状となる縁片部66を設けたとともに、破断予定部99を設けた支持片部87は縁片部66から離間した位置に突設したため、外観を向上できるとともに、破断予定部99の破断の特性を自由に設定でき、扉部73を円滑に開くことができる。
そして、破断予定部99は、インナ扉部84から離間した位置に設けられ、さらに、この破断予定部99の縁部とアンダー形状となる縁片部66との間の空間をインナ部62のいわば滑り台形状の案内板部103で覆い、支持片部87から案内板部103に係る部分で展開するエアバッグ31を案内することにより、エアバッグ31がアンダー形状となる縁片部66を屈曲するように押圧して干渉することを抑制できるとともに、エアバッグ31が支持片部87と縁片部66との間に入り込むようにして干渉することを抑制できる。そこで、低温条件下であっても、硬質なポリプロピレン樹脂で形成された縁片部66を保護しつつ、カバー体22を保護しつつエアバッグ31を円滑に展開できる。
さらに、この案内板部103から側板部104を突設して、箱状などの台部90として補強したため、エアバッグ31の展開時に力が加わっても、案内板部103が撓んだり移動することなく、エアバッグ31を安定して案内できる。
さらに、これら案内板部103及び側板部104の板厚は、例えば1.8mm以上2.5以下に設定され、展開するエアバッグ31を案内できるとともに、展開するエアバッグ31の力を受けて若干の変形は許容され、さらに、乗員がカバー体22に当接した際には座屈するように変形することが可能であり、台部90の案内板部103及び側板部104などが座屈可能な衝撃吸収部として機能し、カバー体22の衝撃吸収特性を容易に向上でき、乗員を保護できるとともに、カバー体22を保護することができる。
さらに、係止取付部89は、一対の側部支持板部89cを設けた略箱状で、これら側部支持板部89cによりインナ基板部93に連続し、いわばインナ基板部93に凹凸をつけてインナ基板部93と係止取付部89とが交互にそれぞれ複数配置され、すなわち、アウタ部61に溶着して接合されるインナ基板部93の両側に近接しさらには連続して係止取付部89を配置している。そこで、カバー体22が乗員に対向する第2の面部の一般部と取付体34との間の僅かな空間においても、係止取付部89の直近に大きい面積で溶着面を確保でき、溶着強度が大きくなり、エアバッグ31の展開時などに係止取付部89に大きな力が加わった場合にも、インナ部62の破損やカバー係止部48の外れを確実に防止して、インナ部62とアウタ部61とが強固に接合した状態を容易に保持できる。
このように、インナ部62は、アウタ部61より軟質で変形可能な樹脂にて形成されているとともに、扉部73の両側部に衝撃吸収部となる台部90及び係止取付部89を設けたため、衝撃吸収特性を容易に良好に設定でき、エアバッグ31の非展開時における乗員保護性能を容易に向上できる。そこで、専用の衝撃吸収部材などを設ける必要がなく、製造コストを低減できるとともに、エアバッグ装置21の内側に大きな空間を確保する必要がなく、エアバッグ装置21の小形化が可能になり、車室2を狭めることなく利用でき、車室2の幅方向の寸法に余裕がなく、乗員がドア部1に近接する車室2ついても、エアバッグ装置21をドア部1に配置できる。
また、カバー体22は、比較的硬質のアウタ部61と比較的軟質のインナ部62とを積層してカバー体22を構成し、インナ部62に一体に形成した支持片部87に破断予定部99を設けたため、アウタ部61のアウタ基板部76に形成する継ぎ目となる分割部あるいは破断予定部を少なくして、意匠面を大きく確保し、樹脂製のアウタ部61で上面側から側面部まで連続してインナ部62を覆って外観を向上でき、外観の良好な車室2用の内装材を構成できるとともに、カバー体22を車室外側方の縁片部66まで回動させ、エアバッグ31の膨出用通路を大きく形成し、エアバッグ31を円滑に膨張展開させることができる。
また、このエアバッグ装置21は、取付体34にインフレータ、エアバッグ31、及びドアトリムの一部を構成するカバー体22を取り付けた状態でエアバッグモジュールが構成されるため、エアバッグ装置21のモジュール化、ユニット化が可能になり、保管、搬送や車体のドア部1への組み付け作業などの作業性を向上できる。
また、扉部73の長手方向に沿って配置された破断予定部99を、断続的に形成したテアライン開口部101を互いに連結するように形成し、いわばテアライン開口部101により破断予定部99を断続的に形成したため、全長に連続する破断予定部のみを設ける構成に比べ、前後に長手寸法の大きい扉部73を、支持片部87の取付固定部96を設けた部分から迅速に切り離し、扉部73を円滑かつ迅速に展開させることができる。
そこで、本実施の形態のように、アウタ部61について、アウタ基板部76の表面に表皮層77を一体的に形成し、表皮層77にスリットを入れて扉部73の展開特性を調整することが容易ではないカバー体22についても、インナ部62の破断予定部99を円滑迅速に破断させることで、アウタ部61とインナ部62とを接合した扉部73の展開特性を容易に設定できる。
また、複数カ所に分割して設けられた破断予定部99の長さを各部位にて変更し、強度の強弱をつけることにより、エアバッグ31の展開時の扉部73のたわみなどを抑制し、扉部73を円滑に展開させることができる。すなわち、エアバッグ31の折り畳み形状や、インフレータの取付位置などインフレータから導入されるガス流の状態に応じて決まるエアバッグ31内部の圧力差、すなわちエアバッグ31がインナ扉部84すなわち扉部73を押圧する力の分布状態に対応し、支持片部87の複数のテアライン開口部101及び破断予定部99すなわち台部90の形状を設定し、本実施の形態では、扉部73の長手方向の中央部分では、テアライン開口部101は比較的大きくすなわち破断予定部99は比較的短く設定する一方、扉部73の長手方向の両端部分では、中央部分に対して、テアライン開口部101は小さくすなわち破断予定部99は長く設定したため、扉部73を長手方向に沿って均一に円滑に展開させることができる。
また、上記のように、エアバッグ31の膨張展開時には、インナ部62の支持片部87に設けた破断予定部99と、アウタ部61に設けた区画部72の少なくとも短辺部72bが破断すれば良いため、広い温度域で扉部73を円滑に回動させ、エアバッグ31を円滑に膨張展開させることができる。
また、カバー体22の扉部73は、車室内側方に回動するため、エアバッグ31を車室外側方に案内し、エアバッグ31を窓部15の窓ガラス14に沿って円滑に展開できる。
なお、上記の実施の形態では、台部90は、一部について、案内板部103の両側から側板部104を突設した箱状とし、他の部分について、案内板部103の中央部の1カ所から側板部104を突設した断面略H字状としたが、この構成に限られず、箱状の台部90のみを形成し、あるいは、断面略H字状の台部90のみを形成することもできる。あるいは、台部90は、案内板部103とインナ扉部84との間に空間を有しない中実の構成とすることもできる。
また、上記の実施の形態では、カバー体22は、ドア部1の一部を覆うものとして説明したが、この構成に限られず、適宜の形状とすることができ、ドア部1の全体を一体に覆うドアトリムとして形成することもできる。さらに、ドア部1以外のインストルメントパネルなどに備えられるエアバッグ装置に適用することもできる。
また、上記の実施の形態では、カバー体22は、アウタ部61とインナ部62とを積層し、さらに、アウタ部61は、アウタ基板部76の表面にリム(RIM)成形により表皮層77を薄く一体的に形成したが、この構成に限られず、例えば、表皮層77を形成しない構成とし、あるいは、アウタ部61とインナ部62とを一体に形成することもできる。
また、アウタ部61の区画部72は、金型による成型の後に裏面側を切削して形成する構成に限られず、例えば、アウタ基板部76の表面に表皮層77を形成する構成では、アウタ基板部76の金型による成型の時にインジェクション型に突条を設けて同時に成型することもできる。
また、テアライン開口部101は、矩形状の通孔に限られず、適宜の形状の通孔とし、あるいは、破断予定部99の長手方向に沿って細長いスリット状とすることもできる。
また、ヒンジ本体部86及び区画部72により構成されるヒンジ部は、カバー体22の上側部と側面部との角部に配置する他、カバー体22の上側部やカバー体22の側面部に配置することもできる。
また、インフレータやエアバッグの形状や構成は上記のものに限られず、種々の構成のものを用いることができる。