以下、本発明のエアバッグ装置のカバー体及びエアバッグ装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2において、1は自動車の車体を構成するドア部であり、このドア部1は、車室2に設けられた図示しない座席の側方に位置している。なお、以下、方向については、車両である自動車の直進方向を基準とし、所定方向としての上方(図1及び図2に示す矢印U方向)、ドア部1側から車室2の中央側に向かう方向である車室内側方(図1に示す矢印C方向)、車室2の中央側からドア部1側に向かう方向である車室外側方(図1に示す矢印D方向)、及び前方(図2に示す矢印F方向)などの方向を説明する。
そして、このドア部1は、図2に示すように、ドア部1の全体を囲む枠状のフレーム11を備え、このフレーム11に囲まれた部分の下側部がドア本体部12となり、このフレーム11に囲まれた部分の上側部の開口が、ウインドシールドでありサイドガラスあるいはサイドウィンドウガラスと呼ばれる窓ガラス14により開閉される。そして、この窓ガラス14及び窓ガラス14により開閉される開口の部分が、所定面であり側面部を構成する窓部15となっている。そして、ドア本体部12は、金属板などから形成された被取付部材である部材としてのインナパネル16と、このインナパネル16の車室外側方に離間して位置する金属板などから形成された図示しないアウタパネルとを備えている。そして、インナパネル16の車室内側方は、一部が樹脂などにて形成された内装材である主ドアトリム18で覆われているとともに、上側部の後部の一部がエアバッグ装置21を構成するとともに内装材であるカバー体22で覆われている。
そして、エアバッグ装置21は、乗員保護装置であり、主として側面衝突時あるいは横転時などに被保護物としての乗員の頭部を保護するいわゆるドアマウントエアバッグで、カバー体22に加え、袋状をなすエアバッグ31と、このエアバッグ31にガスを供給するガス発生装置である図示しないインフレータと、これらカバー体22、エアバッグ31、及びインフレータが取り付けられる取付体34とを備え、これら部材を組み合わせて、エアバッグモジュールであるエアバッグ装置21が構成されている。さらに、このエアバッグ装置21には、図示しないハーネスを介して、制御装置が接続されている。
そして、エアバッグ31は、単数あるいは複数の基布を縫い合わせて袋状としたもので、例えば、2枚の略同形状の基布であるメインパネルの外周部同士を縫い合わせて、扁平な袋状に構成されている。そして、通常時は、ロール状及び蛇腹状などの所定の方法により小さく折り畳まれている。
また、インフレータは、略円柱状のインフレータ本体部を備え、このインフレータ本体部の一端側にガス噴射部が設けられているとともに、他端部にコネクタが設けられ、このコネクタにハーネスが接続されている。そして、このインフレータは、ハーネスを介して制御装置から点火信号が流れることにより、内部に充填した推進薬を反応させ、あるいは内部のボンベに貯留したガスを開放などして、ガス噴射部からガスを噴射し、直接的にあるいはパイプを介してエアバッグ31にガスを供給する。
また、取付体34は、例えば金属により一体あるいは複数の部材を組み合わせて構成され、本実施の形態では、それぞれ金属板で形成された第1及び第2のプレート41,42を互いに接合し、全体として断面略Y字状に形成されている。そして、この実施の形態では、第1のプレート41は、第2のプレート42の車室2側に位置し、かつ第2のプレート42よりも下側に延設され、第1のプレート41の中間位置に第2のプレート42の下端部が溶接などして接合されている。そして、第1のプレート41の下側に突出した部分には、下側部に円孔43aを有する車体取付部43が形成されている。そして、この車体取付部43の上側部の第1のプレート41と第2のプレート42との間に、上側を開口した収納部44が構成され、この収納部44に折り畳んだエアバッグ31及びインフレータなどが収納されている。
そして、車体取付部43の上側に位置する第2のプレート42の上側部には、円孔を有する複数の取付固定受部45が形成されている。
また、車体取付部43の上側に位置する第1のプレート41には、上端部である先端部から、複数のフック状のカバー係止部48が一体に突設されている。さらに、この第1のプレート41には、カバー係止部48の下方に位置して、円孔を有する複数のカバー固定受部49が切り起こしなどして形成されている。
そして、取付体34は、車体取付部43の円孔43aに、ボルト、リベット、あるいはビスなどの固定具を挿入して車体取付部43がインナパネル16に取り付けて固定され、ドア部1に支持される。また、後述するように、取付体34の上側の取付固定受部45及びカバー固定受部49は、それぞれ、ボルト、リベット、あるいはビスなどの固定具52,53によりカバー体22に取り付けて固定され、カバー係止部48は、カバー体22に係止して取り付けられている。
そして、カバー体22は、エアバッグドアパネルあるいはエアバッグ用リッドなどとも呼ばれるもので、表面側すなわち車室2側に露出する樹脂製のアウタ部61と、このアウタ部61の背面側すなわち裏面側に振動溶着などで取り付けられた樹脂製のインナ部62とを積層した積層体として構成され、取付体34にエアバッグ31などを組み付けたモジュールの上方及び乗員に対向する車室内側方などを覆うようになっている。
そして、アウタ部61は、主ドアトリム18と連続的な形状に形成され、主ドアトリム18とともにドア本体部12を覆う内装材を構成するいわばシームレスパネルであり、ドア本体部12の上側を覆う上面パネル部64と、この上面パネル部64の車室内側方の縁部に連続し、下方に延設された側面パネル部65と、これら上面パネル部64、及び側面パネル部65の後側の縁部に連続して後面を覆う一体あるいは別体に形成された図示しない端部パネル部とを備えている。そして、上面パネル部64は、ドア部1の意匠に応じて平面状あるいは曲面状などに形成され、本実施の形態では、車室外側方に向かって若干上方に向かう傾斜面状に形成されている。また、側面パネル部65は、主ドアトリム18の形状に応じて曲面状に形成され、下側の縁部には、主ドアトリム18に係合して連結されるトリム連接部69が形成されている。また、後側パネル部は、リッドカバーとも呼ばれるもので、ハーネスなどを挿通させる後側キャップ部が設けられている。
そして、このアウタ部61には、図2などに示すように、主として上面パネル部64に区画部72が形成され、この区画部72により区画された内側に、扉部73を構成するアウタ扉部74が形成されている。そして、区画部72は、薄肉部である弱部であり、上面パネル部64の車室内側方の側面パネル部65との接続部分あるいは接続部分の近傍に沿ってカバー体22の長手方向である前後方向に延びる長辺部72aと、この長辺部72aの前後の端部から車室外側方に延びて縁部に至る短辺部72bとを備えた平面略コの字状に形成されている。そして、この区画部72は、アウタ部61の上面パネル部64の裏面側が切削などして凹設されて他の部分より脆弱に形成され、破断するテアラインあるいは容易に屈曲するヒンジとして機能する。すなわち、この区画部72は、エアバッグ31が膨張展開する圧力により一部あるいは全部が開裂すなわち破断し、通常は短辺部72bの部分がアウタ破断部として破断し、破断しなかった長辺部72aは容易に変形して屈曲するヒンジ部として機能する。そして、区画部72の外側は、上面パネル部64から側面パネル部65にかけて、エアバッグ31の膨張展開時にも展開しない非展開部であり、アウタ取付部を構成するアウタ本体部75となっている。
また、このアウタ部61は、主として硬質な樹脂にて形成され、本実施の形態では、いわば硬質の樹脂であるポリプロピレン(PP)を射出成形した基材である板状のアウタ基板部76の意匠面である表面側に、必要に応じてウレタンなどの表皮層77を薄く一体的に加飾して形成されている。
一方、インナ部62は、バッキング部あるいはエアバッグ用インナーなどとも呼ばれるもので、本実施の形態では、いわば上下に分割され、図1に示すように、アウタ部61のアウタ基板部76を構成する材料よりも軟質の変形可能な材料にて形成された軟質樹脂製で、例えばエラストマー系の樹脂であるTPO樹脂(サーモプラスチックオレフィン)を金型に射出成形して形成すなわち成型された第1のインナ部81と、アウタ部61のアウタ基板部76と同一あるいは同様の硬質の樹脂であるポリプロピレン(PP)を射出成形した板状の第2のインナ部82の2個の部材を備えている。そして、第1のインナ部81は、上面パネル部64及び側面パネル部65の上側部の裏面側に位置して、振動溶着などによりアウタ部61に一体的に溶着して接合した状態で取り付けられ、第2のインナ部82は、側面パネル部65の下側部の裏面側に位置して振動溶着などによりアウタ部61に一体的に溶着して接合した状態で取り付けられている。そして、これら上下の第1及び第2のインナ部81,82により、カバー体22が取付体34など他の部材に取り付けられるようになっている。
そして、第1のインナ部81は、インナアッパあるいはアッパーインナーなどとも呼び得るもので、アウタ部61の上面パネル部64のアウタ扉部74の裏面側に取り付けられて扉部73を構成するインナ扉部84と、アウタ部61の上面パネル部64のアウタ本体部75及び側面パネル部65の裏面側に取り付けられて非展開部である取付部を構成するインナ取付部としてのインナ本体部85と、扉部73を構成するインナ扉部84の長手方向に沿った一側部である車室内側方とインナ本体部85とを変形可能に連結しヒンジ部を構成するインナヒンジ部としてのヒンジ本体部86と、扉部73を構成するインナ扉部84の長手方向に沿った他側部である車室外側方から展開方向である上方の略反対側である略下方の所定方向に突設された支持部としての支持片部87と、インナ本体部85の複数カ所から裏面側である車室外側方に膨出するように形成された係止取付部89となどが一体に形成されている。
そして、インナ扉部84は、略平板状をなし、図示しない溶着リブを振動溶着し、アウタ扉部74の裏面の略全面に沿って密着して一体的に取り付けられ、扉部73を構成している。
また、インナ本体部85は、アウタ本体部75の裏面に密着して溶着される板状のインナ基板部93と、このインナ基板部93の前後の端部近傍の裏面側から垂直板状に突設された図示しないインナ端板部を備えている。そして、インナ基板部93は、アウタ本体部75の裏面側の形状に沿って湾曲した板状に形成され、インナ扉部84と交差する面をなしてインナ扉部84の車室内側方に位置するとともに、前後方向の両端部では、インナ扉部84の前側及び後側に延設されている。そして、このインナ基板部93は、インナ扉部84と同じく図示しない溶着リブを振動溶着し、アウタ本体部75の裏面に沿って密着して一体的に取り付けられ、非展開部を構成している。
なお、図1においては、構成の理解を容易にするため、アウタ部61とインナ部62と振動溶着した部分に隙間を空けて図示している。
また、ヒンジ本体部86は、インナ扉部84の一側部である車室内側方の縁部とインナ本体部85とを一体に変形可能に連結し、非展開部に対し、長手方向である前後方向に沿った仮想的な軸を中心として、扉部73を図1に示す矢印R方向に展開すなわち回動可能に連結して支持している。そして、このヒンジ本体部86は、アウタ部61の区画部72の長辺部72aに対向し、この長辺部72aを跨ぐようにして、裏面側すなわち下方から車室外側方に向かい断面略U字状をなして湾曲して膨出している。
また、支持片部87は、エアバッグリッドあるいは縦壁などとも呼び得るもので、インナ扉部84の車室外側方の端部近傍から略下方の所定方向に向かい板状をなして一体に突設されている。そして、この支持片部87の先端側すなわち下端側の複数カ所には、取付固定部96が設けられ、それぞれ円孔状の取付孔96aが設けられている。そして、この取付孔96aに挿入されるリベットなどの固定具52により、取付固定部96が取付体34の取付固定受部45に固定して取り付けられる。さらに、この支持片部87には、図示しない破断予定部が形成され、エアバッグ31が膨張展開する圧力により破断するようになっている。
一方、インナ本体部85の係止取付部89は、インナ本体部85のインナ基板部93の複数カ所から内側に空間を有するように車室外側方に凸状に膨出し、インナ部61のインナ基板部93をアウタ部62のアウタ基板部76に溶着して取り付けた状態で、このアウタ部61のアウタ基板部76とともに箱状をなすように形成されている。そして、この係止取付部89には、フック引掛用の取付用開口部89aが形成されている。また、インナ基板部93は、アウタ部61のアウタ基板部76に沿って配置されるとともにこのアウタ基板部76に溶着して一体的に接合して取り付けられる。
一方、第2のインナ部82は、インナロアあるいはロアインナーなどとも呼び得るもので、第1のインナ部81とは別部材であり、図1に示すように、第1のインナ部81の下側に位置してアウタ基板部76の裏面側に密着し溶着などして取り付けられた板状の下基板部101と、この下基板部101から裏面側である車室外側方に突設されたインナ取付部を構成する固定点である複数の第2取付部102とが一体に形成されている。また、この実施の形態では、各第2取付部102は、車室外側方の下方に向かって傾斜した方向を軸方向とする筒状に形成されている。そして、硬質の樹脂にて形成された第2のインナ部82の第2取付部102には、タッピングねじなどの固定具53を強固に取り付け固定できるようになっている。
さらに、これら第1のインナ部81と第2のインナ部82とが互いに対向する端縁部105,106は、所定の直線Sに対し、それぞれ少なくとも1カ所で直線Sを越えて、対向するインナ部82,81側に突出する突出部107,108が設けられ、いわば一方を凸とし他方を凹とした入れ子形状となっている。すなわち、第1のインナ部81と第2のインナ部82との境目である第1のインナ部81と第2のインナ部82とが互いに対向する端縁部105,106は、直線ではなく、前後方向すなわちカバー体22の長手方向すなわちテアラインの長手方向すなわちヒンジ部の回動軸に沿った直線Sに対して、第1のインナ部81から下方に複数例えば2カ所の突出部107が突設され、第2のインナ部82から下方に複数例えば3カ所の突出部108が突設され、これら突出部107,108が交互に組み合わされた状態になっている。また、これら突出部107,108の長手方向の端部は、それぞれ傾斜した状態になっている。すなわち、直線Sに対して、第1のインナ部81と第2のインナ部82はそれぞれ少なくとも1カ所で交差し、さらに、直線Sに対して、第1のインナ部81と第2のインナ部82との少なくとも一方は複数カ所で交差し、他方は少なくとも1カ所で交差し、さらには、第1のインナ部81と第2のインナ部82はそれぞれ複数カ所で交差するようになっている。
なお、この実施の形態では、第1のインナ部81の端縁部105は、係止取付部89を横切るように形成され、すなわち、係止取付部89の上下方向の長手寸法は、突出部107に位置する係止取付部89では大きく、突出部107に位置しない係止取付部89は小さく形成されている。
また、このエアバッグ装置21のインフレータに接続される制御装置は、CPUを備えるとともに、単数あるいは複数のセンサが接続され、乗員、衝突、車体の角度などの状態に応じてインフレータを起動させる点火信号を送るようになっている。
次に、このエアバッグ装置21の製造工程を説明する。
まず、カバー体22は、アウタ部61、及びインナ部62の第1及び第2のインナ部81,82をそれぞれ金型を用いて樹脂にて一体に形成し、これら第1及び第2のインナ部81,82をアウタ部61に振動溶着して一体的に接合する。
そして、取付体34の収納部44にインフレータと折り畳んだエアバッグ31を収納し、これら部材をカバー体22で覆った状態で、図1に示すように、エアバッグモジュールとして構成される。そして、このカバー体22のエアバッグモジュールへの取付作業は、取付体34のカバー係止部48を係止取付部89の取付用開口部89aに挿入して係止し、カバー体22の上側部の車室内側方の部分を取付体34で支持する。また、取付体34のカバー固定受部49に車室外側方の下方から挿入したビスなどの固定具53を第2取付部102に螺合して固定し、カバー体22の下側部を取付体34で支持する。
さらに、カバー体22の支持片部87の取付固定部96を取付体34のプレート42に沿わせ、取付固定部96の取付孔96aから取付体34の取付固定受部45にリベットなどの固定具52を挿入し、この固定具52をかしめるなどして、取付固定部96を取付体34に固定し、カバー体22の上側部の車室外側方の部分を取付体34で支持する。
このようにして、前後方向から見て、すくなとも3カ所でカバー体22を取付体34に支持し、カバー体22が安定して支持される。
そして、インフレータと制御装置とを電気的に接続するとともに、取付体34の車体取付部43を固定具でドア部1のインナパネル16に取り付け、カバー体22の下端のトリム連接部69を主ドアトリム18に係合するとの簡略な作業により、エアバッグ装置21がドア部1に設置される。
この状態で、カバー体22の上面パネル部64などにより、取付体34にエアバッグ31などを組み付けたモジュールのエアバッグ膨出側である上方が覆われるとともに、カバー体22の側面パネル部65などにより、乗員側である車室内側方など覆われ、カバー体22が、モジュールの上方と乗員側とを連続して覆う内装パネルとして機能する。
次に、エアバッグ装置21の展開時の動作を説明する。
図1、及び図2(a)に示すエアバッグ31の収納状態から、自動車の車体が側面衝突などの衝撃を受け、あるいは横転などすると、センサなどの信号に基づき制御手段が判断してインフレータを起動し、エアバッグ31にガスを供給する。すると、このエアバッグ31は、収納部44が開口する上側(矢印U方向に)に向かって膨張展開を開始し、カバー体22の扉部73を下側から上方に向かって押圧する。そして、この押圧する圧力により、インナ部62の支持片部87の破断予定部が破断するとともに、アウタ部61の区画部72の一部または全部、少なくとも短辺部72bを破断する。
そして、エアバッグ31がさらに膨張展開すると、このエアバッグ31により押圧された扉部73がアウタ部61の長辺部72a及びインナ部62のヒンジ本体部86を支点として車室内側方(図1に示す矢印R方向)に回動し、エアバッグ31のエアバッグ膨出用通路を形成する。そして、このエアバッグ膨出用通路から突出したエアバッグ31は、扉部73を回動させながら、この扉部73と窓部15との間を介し、図2(b)に示すように、窓部15に沿って上側に円滑に膨張展開し、側方に移動する乗員を拘束して頭部などを保護する。
このように、本実施の形態によれば、ドア部1内に収納したエアバッグ31をドア部1の上面から上方に膨張展開するいわゆるドアマウントエアバッグを構成し、車両の座席に着席した乗員を拘束して頭部などを保護できる。
そして、カバー体22は、アウタ部61の内側面に互いに独立した複数のインナ部81,82を接合したため、各インナ部81,82の特性を異ならせることにより、カバー体の特性を容易に良好にできるとともに、各インナ部81,82の形成を容易にできる。すなわち、本実施の形態では、第1のインナ部81を比較的軟質の樹脂で形成したため、この第1のインナ部81に設けたヒンジ本体部86及び破断予定部の特性を良好にして、カバー体22の扉部73の展開特性すなわちエアバッグ31の展開特性を良好にし、エアバッグ31を円滑迅速に展開できるとともに、第2のインナ部82を比較的硬質の樹脂で形成したため、この第2のインナ部82に設けた第2取付部102により、カバー体22を取付体34に強固に取り付けて保持することができるとの特性を容易に両立できる。
さらに、これらインナ部81,82は、互いに対向する端縁部105,106を直線状とせず、互いに所定の直線Sを越えて相手側のインナ部82,81側に突出する突出部107,108を設けて入れ子形状としたため、いわば段差効果を持たせて応力を分散し、各インナ部81,82が対向する境目の部分の剛性を向上できる。すなわち、エアバッグ31の展開時などには、カバー体22に大きな応力が加わるが、本実施の形態では、アウタ部61に直線状に力が加わることを防止でき、エアバッグ31の展開時の大きな力を受けた際にもアウタ部61が変形しにくく、カバー体22の剛性を向上できる。そこで、別部材を用いた補強やアウタ部61の厚さ寸法を大きくするなどの必要がなく、カバー体22の製造コストの低減や軽量化を容易に実現できる。
このようにして、エアバッグ装置21について、カバー体22の剛性を確保しつつ製造コストの低減や軽量化が可能になり、乗員の側部を保護するエアバッグ装置21の製造コストの低減や軽量化を容易にできる。
また、インナ部62を分割して形成したため、個々のインナ部81,82を小形化するとともに形状を単純化し、金型による製造を容易にできる。特に、ドアマウントのエアバッグ装置21について、上面パネル部64から側面パネル部65に大きく湾曲したアウタ部61の内側に取り付けるインナ部62を一体に形成しようとすると、アンダーカット部が多く、型抜きが困難で金型の構造が複雑になり製造コストが上昇しやすいが、本実施の形態では、インナ部62を上下に分割したため、個々のインナ部81,82を製造する金型を簡略化し、製造コストを低減できる。
また、カバー体22は、車室内側方の上部に設けた係止取付部89が取付体34のカバー係止部48に係止され、車室外側方の上部に設けた取付固定部96が固定具52で取付体34の取付固定受部45に固定され、車室内側方の高さ方向の中央部あるいは下部に設けた第2取付部102が固定具53で取付体34のカバー固定受部49に固定されて、カバー体22が取付体34にがたつくことなく安定して支持される。
また、カバー体22の扉部73は、扉部73の長手方向に沿った他側部である車室外側方をインナ扉部84から突設された支持片部87により取付体34に取り付けられて支持され、扉部73の長手方向に沿った一側部である車室内側方をヒンジ部すなわち区画部72の長辺部72a及びヒンジ本体部86を介してインナ本体部85の係止取付部89で取付体34に取り付けられて支持されているため、長手寸法の大きいカバー体22の剛性を容易に向上でき、カバー体22を変形しにくくできる。そこで、ドア部1の開閉時や、乗員がカバー体22に力を加えた場合などにも、扉部73を含みカバー体22が変形することなく外観を良好に維持できる。
また、破断予定部は、支持片部87に設けたため、外観に影響を与えることなく、破断の特性を自由に設定でき、扉部を円滑に開くことができる。
また、カバー体22は、アウタ部61とインナ部62とを積層して構成したため、アウタ部61のアウタ基板部76に形成する継ぎ目となる分割部あるいは破断予定部を少なくして、意匠面を大きく確保し、樹脂製のアウタ部61で上面側から側面部まで連続してインナ部62を覆って外観を向上でき、外観の良好な車室2用の内装材を構成できる。
また、このエアバッグ装置21は、取付体34にインフレータ、エアバッグ31、及びドアトリムの一部を構成するカバー体22を取り付けた状態でエアバッグモジュールが構成されるため、エアバッグ装置21のモジュール化、ユニット化が可能になり、保管、搬送や車体のドア部1への組み付け作業などの作業性を向上できる。
また、カバー体22の扉部73は、車室内側方に回動するため、エアバッグ31を車室外側方に案内し、エアバッグ31を窓部15の窓ガラス14に沿って円滑に展開できる。
なお、上記の実施の形態では、第1のインナ部81から2個の突出部107を突設し、第2のインナ部82から3個の突出部108を突設したが、この構成に限られるものではない。例えば、図3に示すように、一方、例えば第2のインナ部82から1個の突出部108を突設し、この突出部108の両側を囲むように位置して、第1のインナ部81から2個の突出部107を突設することもできる。また、図4に示すように、一方の突出部108を、他方の突出部107に対して大きく形成することもできる。また、図5に示すように、第1のインナ部81及び第2のインナ部82から多数の略同形状の突出部107,108を突設し、交互に組み合わせることもできる。また、図1(b)に示すように、各突出部107,108の両側部を傾斜させる他、図3ないし図5に示すように、各突出部107,108の両側部を直角に屈曲して垂直状に設けることもできる。
また、上記の実施の形態では、カバー体22は、ドア部1の一部を覆うものとして説明したが、この構成に限られず、適宜の形状とすることができ、ドア部1の全体を一体に覆うドアトリムとして形成することもできる。さらに、ドア部1以外のインストルメントパネルなどに備えられるエアバッグ装置に適用することもできる。
また、アウタ部61の区画部72は、金型による成型の後に裏面側を切削して形成する構成に限られず、例えば、アウタ基板部76の表面に表皮層77を形成する構成では、アウタ基板部76の金型による成型の時にインジェクション型に突条を設けて同時に成型することもできる。