JP2011000791A - 結晶性液晶ポリマーの成形方法及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ポリイミド等のスーパーエンジニアリングプラスチックスに代わる樹脂として結晶性液晶ポリマーに着目し、高い強度があり、且つ寸法的に比較的大きな液晶ポリマーの成形品を得る方法を提供すること。
【解決手段】 結晶性液晶ポリマーの粉末を所定の金型に入れ、冷圧で圧縮して前記ポリマーの予備成形体を作成する第一工程、及び該予備成形体を加熱加圧する第二工程を含むことを特徴とする、結晶性液晶ポリマーの成形方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 結晶性液晶ポリマーの粉末を所定の金型に入れ、冷圧で圧縮して前記ポリマーの予備成形体を作成する第一工程、及び該予備成形体を加熱加圧する第二工程を含むことを特徴とする、結晶性液晶ポリマーの成形方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、結晶性液晶ポリマー成形品の製造法及びその成形体に関し、さらに詳しくは、結晶性液晶ポリマーの粉末を出発原料として用いた、結晶性液晶ポリマーの成形方法及びこの方法により製造した結晶性液晶ポリマー成形体に関するものである。
従来、結晶性液晶ポリマーを用いた成形品の製造法としては通常、射出成形法が用いられている。これは結晶性液晶ポリマーが溶融温度などの物性が射出成形に向いていると考えられてきたからである。射出成形された結晶性液晶ポリマー成形品は、該ポリマーの有する配向性のために小さな製品としては高い強度が得られるため、薄肉あるいは複雑な形状の電気・電子部品、たとえばリレー部品、コイルボビン、コネクター、スイッチ、ボリューム部品、プリント基板、コンミテーターやセパレーターなどのモーター部品、あるいはコイル、水晶振動子、ICチップなどの素子等の封止などに使用されている。しかし、寸法的に大きいものになると該ポリマーの有する配向性のために割れやすいなどの強度上の問題が生じるため実用に供することができなかった。特許文献1によれば、液晶ポリエステル樹脂のペレットを用いて射出成形法により約63mm×約63mm×約3mmの板状の射出成形品を一度作成し、さらにこれを圧縮成形機にて圧縮及び引き続く冷プレスをすることにより約250mm×約250mm×約200μm厚さのフィルムを作成することが知られている。また、特許文献2では、液晶ポリエステル樹脂の成形に関して、射出成形の他に押出成形や圧縮成形等の適用の可能性を開示するが、具体的には液晶ポリマーのペレットを用いた射出成形による成形が挙げられているにすぎない。いずれの場合もフィルム状あるいは薄肉状のものであって寸法的に小さなものが得られているにすぎない。
一方、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリベンゾイミダゾール等のスーパーエンジニアリングプラスチックスを圧縮成形して得られる寸法的に大きな成形品は、耐熱性、物理的性質等に優れるため、半導体あるいは液晶ディスプレイ等の製造装置用の部品等の分野で広く用いられている。しかし、これらは高価なため経済的な問題があり、また成形上もかなりの高温を要するなどの難点があった。また、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の場合、比較的低温で圧縮成形できるが、非常に高価であり経済的な面で使用上の問題があった。これらに代わる、成形条件が比較的穏やかで経済性に優れた樹脂の成形法の確立が望まれていた。
本発明の目的は、ポリイミド等のスーパーエンジニアリングプラスチックスに代わる樹脂として結晶性液晶ポリマーに着目し、高い強度があり、且つ寸法的に比較的大きな液晶ポリマーの成形品を得る方法を見出すことにある。
本発明者らは、結晶性液晶ポリマーの粉末を出発原料として用い、これを少なくとも二段階で成形することによって、上記の課題が解決されることを見出した。
それゆえ、本発明は、結晶性液晶ポリマーの粉末を所定の金型に入れ、冷圧で圧縮して前記ポリマーの予備成形体を作成する第一工程、及び該予備成形体を加熱加圧する第二工程を含むことを特徴とする、結晶性液晶ポリマーの成形方法に関する。
本発明で使用される結晶性液晶ポリマーは、好ましくは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、
(1)次式で示されるエチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体(東レ社製シベラス(商品名)等)、
(2)フェノール及びフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体(住友化学社製スミカスーパー(商品名)、ソルベイ社製ザイダー(商品名)等)、次式は一般的な4,4−ジヒドロキシビフェノールとテレフタル酸の例を示す、
(3)次式で示される2,6−ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体で代表されるポリアリレート(ポリプラスチック社製ベクトラ(商品名)等)
等が挙げられる。
(1)次式で示されるエチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体(東レ社製シベラス(商品名)等)、
特に、本発明においては前記各種の結晶性液晶ポリマーの中でも、溶融温度が比較的低いため上記のポリアリレートを用いることが好ましい。ポリマーの分子量にもよるが、ポリアリレートの場合、280〜340℃程度の溶融温度を示す。また、他のタイプの結晶性液晶ポリマーが成形された場合、茶褐色系の色を呈するのに対して、上記ポリアリレートは通常、白乃至クリーム色の薄い色を呈するため成形体の用途上、非常に優位であり、また、所望の有彩色への着色も可能性である。
結晶性液晶ポリマーは、例えば前記(2)のタイプのものは粉末状でも合成されるが、市販されているのは、ペレット状であり、通常、ガラス繊維、シリカ等を添加した状態で市販されている。また、その他のタイプのものは、通常、ペレット状で合成され、その一部は無添加のポリマーとしてペレット状で市販されるが、その多くはガラス繊維、シリカ等を添加した混合系材料のペレットとして市販されている。本発明においてはガラス繊維、シリカ等を含まない、すなわち無添加のペレット状ポリマーを予め粉砕して粉末状にしたものを用いる。この粉末の平均粒径は本発明の成形上、レーザー回折法により測定して、400μm以下であることが好ましく、より好ましくは120μm以下である。また、第二工程で結晶性液晶ポリマーが溶融した時に粘性が低くなるため金型の隙間から流れてしまい成形時にバリとして溶出する恐れが強いため、平均粒径は30μm以上であることが好ましく、また50μm以上であることがより好ましい。金型としてキャビティタイプのものを使用する場合には粉末が非常に微細であってもこのような問題が生じにくいため、本発明においては金型としてキャビティもしくはキャビティタイプのものを用いることが好ましい。
結晶性液晶ポリマーの粉砕には、例えば乾式粉砕あるいは湿式粉砕の適用が可能であり、これらはバッチ式あるいは連続式のいずれであってもよい。本発明において用いる結晶性液晶ポリマーは帯電しやすいため、湿式粉砕を適用することが好ましい。湿式粉砕を施す装置は、液体中の結晶性液晶ポリマーを粉砕することができるものであればいずれも使用できるが、粉砕と共に水スラリーの移送作用を併せ持つものが好ましい。上記液体としては、好ましくは水あるいは水性媒体、特に好ましくは純水であり、分散剤を添加することもできる。湿式粉砕を施す装置としては、サンドミル、アトライター、ボールミル等の粉砕媒体を用いたミルを用いたもの、ホモジナイザー、ポンプ等をしようでき、粉砕機の種類や粉砕翼の種類を選択することにより任意の径粒の粉末を得ることができる。粉砕後、得られた粉末は、好ましくは真空加熱により乾燥させる。
本発明による成形方法を行なうには、第一工程において、結晶性液晶ポリマーの粉末を所定の金型に入れ、冷圧で圧縮して予備成形体を作成する。第一工程では、金型の容量、ポリマーの比重及びその嵩密度から計算した量のポリマーを金型に充填し、冷圧により圧縮する。第一工程では、ポリマー粉末を金型に入れる前に、好ましくは30〜200℃で1〜24時間程度、より好ましくは140〜170℃で3〜8時間程度乾燥させる。冷圧で圧縮するには、ポリマー粉末を室温において所定の金型に入れ、最終成形体の所望の厚みの1〜10%、好ましくは2〜5%高くなるまで、加圧する。好ましくは、1〜800Kgf/cm2、より好ましくは30〜600Kgf/cm2に加圧して前記ポリマーの予備成形体を作成する。金型としては通常のものが使用可能であるが、例えばダイと上下のパンチで構成されるダイタイプの金型を用いると最終製造後の成形体の取り出しが容易であるため好ましい。また、前述のようにキャビティ(凹部)を有する金型等を用いれば、ポリマー溶融時のポリマーの漏れがないという利点がある。尚、第一工程と第二工程で用いる金型としては、両工程で同じものを用いることもできるし、別のものとすることもできる。しかし、両工程を連続的の行なうことができるので工程管理上や製造効率の点から前者が好ましい。
次いで、第二工程に移る。まず、上記予備成形体を第一工程で使用した金型から取り出した後、別の金型に入れるか、あるいは第一工程で使用した金型をそのまま第二工程にも使用する場合はそのままの金型を用い、金型の上面を覆う蓋材を被せるかあるいは内蓋をした後、圧縮成形機で加熱加圧する。圧前記ダイタイプの金型を使用する場合は、上下のパンチが内蓋に相当し、該パンチで上下から加圧する。この第二工程では、金型の材料や圧縮成形機の種類に応じた昇温速度に沿って、好ましくは、結晶性液晶ポリマーの溶融温度乃至+50℃の金型の温度まで加温すると共に1〜300Kgf/cm2まで加圧する。より好ましくは、280〜450℃、特に300〜350℃の金型の温度で20〜150Kgf/cm2に加圧する。ポリマーが溶融した時点で加熱加圧を止め、さらに一定時間、圧を加えながら溶融温度付近の温度を保持して最終成形体の所望の厚みまで圧縮したところで加圧を止め、次いで成形体を室温で冷却する。
本発明の第一工程及び第二工程において使用する圧縮成形機としては、加熱機能を有するものが用いられる。圧縮成形機の加圧能力は10〜400tであることが好ましく、使用する結晶性液晶ポリマーの物性に応じて選択される。両工程で用いる圧縮成形機は同一のものである必要はないが、工程管理上同一であることが好ましい。
本発明に使用する結晶性液晶ポリマーには、成形体の用途にもよるが、帯電防止剤、導電剤又は剛性付与剤を添加することが好ましい。帯電防止剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤(例えば、花王社製“エレクトロストリッパーPC−3(商品名)”)、非イオン系界面活性剤(例えば、日本油脂社製“エレガン(商品名)“)、カチオン系界面活性剤(例えば、日本油脂社製“ニューエレガン(商品名)“)、その他、三洋化成社製“ペレスタット(商品名)”等が用いられ、結晶性液晶ポリマーに対して、10重量%まで、好ましくは3〜6重量%添加することができる。導電剤としては、例えば、カーボンナノファイバー(例えば、昭和電工社製“VGCF(商品名)”)、カーボンナノチューブのようなカーボンブラック等が用いられ、結晶性液晶ポリマーに対して、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%添加することができる。剛性付与剤としては、例えば、ホウ酸アルミニウムウィスカ(例えば、四国化成社製”アルボレックス(商品名)“)、ガラス繊維等の無機フィラー等が用いられ、結晶性液晶ポリマーに対して、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%添加することができる。更に、本発明に使用する結晶性液晶ポリマーには、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、無機系又は有機系着色剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤等の各種添加剤を添加することもできる。
本発明の成形方法によれば、従来のスーパーエンジニアリングプラスチックスよりも安価な結晶性液晶ポリマーを用いて、比較的穏やかな成形条件で寸法的に大きなもの、例えば、熱板の大きさに依存するが、50cm角、あるいは1m角の成形体を得ることができる。結晶性液晶ポリマーからは、従来、射出成形による小部品しか得られなかったが、本発明により大型部品への加工が可能となる加工用部材が得られる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
結晶性液晶ポリマー(ポリプラスチック社製ベクトラA950(商品名))のペレットから、日機装社製のマイクロトラック(Version 10.1.2-018SD)を使用したレーザー回折法により測定して平均粒径95μmの粉末(A)を湿式粉砕により作成した。また、同ペレットから、同じく日機装社製のマイクロトラック(Version 10.1.2-018SD)を使用したレーザー回折法により測定して平均粒径359μmの粉末(B)を乾式粉砕により作成した。これら2種の粉末224gをそれぞれ150℃で6時間及び150℃で24時間、真空乾燥機を用いて乾燥させた後、200×200mm×4mmの大きさのキャビティを持つ金型に入れ、冷圧(室温、50Kgf/cm2)、最終成形体の所望の高さの+3%まで圧縮して、それぞれ前記ポリマー粉末から予備成形体(A1)及び(B1)を得た。
次いで、予備成形体(A1)及び(B1)をそれぞれ上記金型に入れたまま、さらに金型温度を320℃まで上昇させ、圧力を50Kgf/cm2まで上げたところで加熱加圧を止め、さらにこの圧力で温度を320℃付近に保持した後、最終成形体の所望の高さに達したところで成形作業を終了した。ここまで5分間を要した。その後、放圧すると共に室温に戻し、さらに室温にて冷却して、成形体(A2)及び(B2)をそれぞれ得た。なお、上記二段階での成形には、25t油圧式圧縮成形機(東邦プレス社製)を使用した。得られた成形体(A2)及び(B2)は、いずれも薄いクリーム色を呈し、A2の引張試験の結果は次の通りであった。
測定項目及び方法は次の通り。
試験方法:JIS K 7162参考
試験片形状: IB形ダンベル試験片
試験温度: 23℃
試験速度: 5mm/min
標線間距離:50mm
チェック間距離: 115mm
測定数: n=5
試験装置: インストロン社製5582型万能材料試験機
試験方法:JIS K 7162参考
試験片形状: IB形ダンベル試験片
試験温度: 23℃
試験速度: 5mm/min
標線間距離:50mm
チェック間距離: 115mm
測定数: n=5
試験装置: インストロン社製5582型万能材料試験機
本発明で得られる結晶性液晶ポリマー成形体は、従前の射出成形体に比べて寸法的に大きいものとして得られるため、ポリイミド等のスーパーエンジニアリングプラスチックスの成形体が用いられていた分野である半導体あるいは液晶ディスプレイ等の製造装置用部品等の分野に好適である。
Claims (9)
- 結晶性液晶ポリマーの粉末を所定の金型に入れ、冷圧で圧縮して前記ポリマーの予備成形体を作成する第一工程、及び該予備成形体を加熱加圧する第二工程を含むことを特徴とする、結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- 第一工程を、室温で1〜800Kgf/cm2に加圧して行うことを特徴とする、請求項1に記載の結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- 第二工程を、結晶性液晶ポリマーの溶融温度乃至+50℃の金型の温度で1〜300Kgf/cm2に加圧して行うことを特徴とする、請求項1もしくは請求項2に記載の結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- 第二工程を、金型の温度を280〜450℃として行うことを特徴とする、請求項3に記載の結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- 結晶性液晶ポリマーがポリエステル系結晶性液晶ポリマーである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- ポリエステル系結晶性液晶ポリマーがポリアリレートである、請求項5に記載の結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- ペレットを粉砕させた結晶性液晶ポリマーの粉末を用いることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- 湿式粉砕法により粉砕させた結晶性液晶ポリマーの粉末を用いることを特徴とする、請求項7に記載の結晶性液晶ポリマーの成形方法。
- 請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法により製造した結晶性液晶ポリマー成形体。
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JP2009145408A JP2011000791A (ja) | 2009-06-18 | 2009-06-18 | 結晶性液晶ポリマーの成形方法及びその成形体 |
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WO2019221094A1 (ja) * | 2018-05-18 | 2019-11-21 | ポリプラスチックス株式会社 | 熱プレス成形品用粉状液晶性樹脂及び熱プレス成形品 |
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2009
- 2009-06-18 JP JP2009145408A patent/JP2011000791A/ja not_active Withdrawn
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WO2019221094A1 (ja) * | 2018-05-18 | 2019-11-21 | ポリプラスチックス株式会社 | 熱プレス成形品用粉状液晶性樹脂及び熱プレス成形品 |
CN112119115A (zh) * | 2018-05-18 | 2020-12-22 | 宝理塑料株式会社 | 热压成型品用粉状液晶性树脂和热压成型品 |
TWI808176B (zh) * | 2018-05-18 | 2023-07-11 | 日商寶理塑料股份有限公司 | 熱壓成形品用粉狀液晶性樹脂及熱壓成形品 |
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