JP2010503731A - 肺サーファクタント製剤および粘液クリアランスの促進方法 - Google Patents

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Abstract

粘液クリアランスを増大し、例えば嚢胞性線維症といった肺疾患を処置するための方法および組成物を開示する。該方法は、肺サーファクタントを単独または高浸透圧剤と組み合わせて用い、粘液クリアランスを増大するために有効な量を患者に投与する。該組成物は、浸透圧活性剤と組み合わせた肺サーファクタントを含む。

Description

関連出願
本出願は、2006年9月19日に出願された米国仮特許出願第60/845,991号に基づく優先権を主張し、内容全般が本明細書に援用される。
本発明は薬理に関する。例えば嚢胞性線維症、原発性線毛機能不全、気管支拡張症、喘息および人工呼吸器関連肺炎などの肺疾患において粘液クリアランスを促進する治療を提供する。
特許、公開された出願、技術論文および学術論文を含む様々な文献は、本明細書を通して引用される。これらの各々の引用文献は、全般が参照により援用される。
嚢胞性線維症(CF)は、およそ3,500出生に1人発生する劣性遺伝性疾患である。CFは、嚢胞性線維症膜調節遺伝子における変異、およびその結果としてのイオン輸送障害に起因する。これらの変異の結果は、肺および気道を閉塞する異常に濃い粘着性のある粘液の分泌である(非特許文献1参照)。CF患者の気道におけるイオン輸送の異常は、気道表面液体の脱水を引き起こす。次いで、気道粘液は気道表面に付着し、最終的にCFの気道を閉塞し、細菌定着および慢性感染症の基質として作用する。
CFに加えて、多くの他の慢性または一過性の肺疾患は、肺および気道における粘液分泌物の滞留を特徴とする。これらには、急性または慢性気管支炎および他の慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、細気管支炎、原発性または続発性線毛機能不全、喘息、副鼻腔炎および肺炎が含まれる。
肺サーファクタント(PS)は、肺の完全性において重要である(非特許文献2参照)。肺サーファクタントは上皮細胞により合成され、およそ90%の脂質および10%のタンパク質から成る(非特許文献3参照)。PSは、肺の肺胞表面全体、および肺胞へと導く末端の誘導気道を保護し、肺胞内に通常存在する流体(fluid)の表面張力を継続的に調節することにより、呼吸を容易にする。末端の誘導気道の表面張力を低下させることにより、サーファクタントは、開存性を維持する(すなわち、気道を開いた状態に維持する)(非特許文献4参照)。開存性の喪失は、気道の閉塞および肺機能不全を引き起こす。ヒトにおいて、PSは主に、リン脂質、およびSP-A、SP-B、SP-CならびにSP-Dと呼ばれる4つのサーファクタントポリペプチドを有する(非特許文献5;および非特許文献6参照)。SP-A、-B、および-Cは表面張力の低下に重要である。ヒトにおいて、SP-Bの欠損は致死的である。SP-Aは、炎症性メディエーターおよび生成物によるサーファクタント活性の阻害に対する抵抗を助ける(非特許文献7参照)。SP-Dは病原体の食作用を促進し、免疫調節性、抗炎症性、および抗酸化性の特性を有する(非特許文献8参照)。
天然および合成された肺サーファクタントは、様々な肺疾患(特に、喘息、細気管支炎、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、肺炎、および新生児呼吸促迫症候群を含む)を治療するそれらの能力について研究された(非特許文献4参照)。ウシのサーファクタント抽出物によるCF患者の治療は、少なくとも一部は、患者の肺におけるPSの沈着が不十分で、肺機能または酸素化能(oxygenation)における改善をもたらさなかったけれども、ほとんどの場合においては患者の症状の測定可能な改善が認められた(非特許文献9参照)。対照的に、エアロゾル化サーファクタント脂質パルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)による治療は慢性気管支炎の患者における肺機能および痰輸送能(sputum transportability)を改善することが報告された(非特許文献10参照)。
高浸透圧液およびエアロゾルは、気道からの粘液分泌物のクリアランスの促進に用いられ、それにより肺機能を改善する。例えば、高浸透圧乾燥粉末マンニトールは、非-CF気管支拡張症の成人被験者の肺機能を改善すること、および表面接着力を低下させて喀痰(expectorated sputum)の咳嗽クリアランス(cough clearance)を増大させることが報告された(非特許文献11参照)。吸入を介した高張生理食塩水(1M)のCF患者への投与は、粘液クリアランスを促進し、患者の肺機能を改善することが報告された(例えば、非特許文献12参照)。しかしながら、高張生理食塩水の作用は一時的であり、高張生理食塩水だけでは患者における多くの閉塞された気道の開存性を回復させることはできない(非特許文献13参照)。加えて、高張生理食塩水の吸入はいくらかの患者において気管支収縮をもたらし得て、炎症を増強させることがある(非特許文献14;および、非特許文献15参照)。そのように、CF、および粘液クリアランスおよび患者の肺機能を増強し、同時に気道の開存性を回復する、副作用の少ない、他のそのような肺疾患のための治療が必要とされている。
Gibson RL et al. (2003) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 168:918-51 Griese M et al. (2005) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 170:1000-5 Devendra G et al. (2002) Respir. Res. 3:19-22 Griese M (1999) Eur. Respir. J. 13:1455-76 Tierney DF et al. (1989) Am. J. Physiol. 257:L1-L12 Griese M (1999) Eur. Respir. J. 13:1455-76 Griese M et al. (2005) Respir. Res. 6:133-42 Clark H et al. (2003) Arch. Dis. Child 88:981-4 Griese M et al. (1997) Eur. Respir. J. 10:1989-97 Anzueto A et al. (1997), J. Am. Med. Assoc. 278:1426-1431 Daviskas E, et al. (2005) Respirology 10:46-56 Donaldson SH et al. (2006) N. Engl. J. Med. 354:241-50 Elkins MR et al. (2006) N. Engl. J. Med. 354:229-40 Didier C et al. (2001) Chest 120:1815-21 Suri R et al. (2002) Am. J. Respir. Crit. Care Med 166:352-5
本発明の一態様は、過剰な粘液分泌、粘液クリアランス障害または炎症性肺疾患を特徴とする肺疾患を有する患者の粘液クリアランスを促進する方法を特徴とする。該方法は、患者の粘液クリアランスを促進するのに有効な量の少なくとも一つの肺サーファクタントを患者に投与することを含む。該方法により治療可能な肺疾患は、これらに限定はされないが、嚢胞性線維症、急性または慢性気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、原発性または続発性線毛機能不全、COPD、喘息、肺炎または副鼻腔炎を含む。
ある実施態様において、該肺サーファクタントは、SP-Bポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは少なくとも10アミノ酸残基であって約60以下のアミノ酸残基を含むポリペプチドと混合された1以上の医薬的に許容されるリン脂質を含む合成肺サーファクタントである。該ポリペプチドは、式(Za Ub)c Zd(式中、ZはRおよびKからなる群から独立して選択される親水性のアミノ酸残基であり;UはLおよびCからなる群から独立して選択される疎水性のアミノ酸残基であり;aは1または2であり;bは約3から約8の平均値を有し;cは1から10であり;および、dは0から2である)により示される、交互の疎水性および親水性のアミノ酸残基領域を有する配列を含む。様々な実施態様において、該肺サーファクタントは、液滴(liquid instillate)、または液体エアロゾルもしくは乾燥エアロゾル(dry aerosol)で投与される。
上記の方法に従った患者の治療により、該肺サーファクタントを投与されていない患者に比べて、限定はされないが、気道の開存性の改善、炎症の低減、気道閉塞の低減、肺機能の維持または増大、および健康に関連した生活の質(HRQOL)の向上を含めた改善がもたらされる。
本発明の別の態様は、さらに浸透圧活性剤(osmotically active agent)を患者に投与することを含む、上記の方法を特徴とする。該肺サーファクタントは浸透圧活性剤を同時にあるいは連続して投与することができる。
該浸透圧活性剤は、医薬的に許容される糖、糖アルコールまたは塩であり得る。ある実施態様において、該浸透圧活性剤はNaClであり、生理食塩水として処方される。一般的には、該生理食塩水は約0.13から約1.2 Osmの塩化ナトリウムを含有する。
上記の方法に従った患者の治療はまた、該肺サーファクタントを投与されていない患者に比べて、限定はされないが、気道の開存性の改善、炎症の低減、気道閉塞の低減、肺機能の維持または増強、および健康に関連した生活の質(HRQOL)の向上を含めた改善をももたらす。
本発明の別の態様は、粘液クリアランスを促進するための医薬組成物を特徴とし、このものは肺サーファクタントおよび浸透圧活性剤を含む。様々な実施態様において、該浸透圧活性剤は糖、糖アルコールまたは塩であり、肺サーファクタントは、SP-Bポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは少なくとも10アミノ酸残基であって約60以下のアミノ酸残基を含むポリペプチドと混合された1以上の医薬的に許容されるリン脂質を含む合成肺サーファクタントである。該ポリペプチドは、式(Za Ub)c Zd(式中、ZはRおよびKからなる群から独立して選択される親水性のアミノ酸残基であり;UはLおよびCからなる群から独立して選択される疎水性のアミノ酸残基であり;aは1または2であり;bは約3から約8の平均値を有し;cは1から10であり;および、dは0から2である)で示される、交互の疎水性および親水性のアミノ酸残基領域を有する配列を含む。
ある実施態様において、該浸透圧活性剤は塩である。該組成物は、浸透圧重量モル濃度が約220〜1200 mOsm/kg、遊離アニオン濃度が約20〜200 mmol/l、pHが約6.8から8.0であり得る。
特定の態様において、該組成物は、塩としてNaClを含み、該肺サーファクタントは1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG)、パルミチン酸(PA)、およびKLLLLKLLLLKLLLLKLLLLK(KL4, 配列番号1)の配列を有するペプチドを含む。該組成物は、好ましくはエアロゾルデリバリー用に処方され、そして1日あたりの総リン脂質相当量である約20から200 mgの肺用量に送達するように特別に処方され得る。
されている。
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明および実施例を参照することにより理解されるだろう。
図1は、ルシナクタント(10, 20, 30 mg/ml)またはNaClの濃度を増加させて調製した30 mg/mlの凍結乾燥KL4サーファクタント製剤のエアロゾル出力速度(μl/秒)を示す図面である。エアロゾル発生器はアエロネブプロ(Aeroneb Pro)であり;データのポイントは3つの試料、各々の3つの測定値を示し;エラーバーを表示した。 図2は、ルシナクタント(10, 20, 30 mg/ml)またはNaClの濃度を増加させて調製した30 mg/mlの凍結乾燥KL4サーファクタント製剤のエアロゾル出力速度(μl/秒)を示す図面である。エアロゾル発生器はパリLCスター(Pari LC Star)であり; データのポイントは3つの試料、各々の3つの測定値を示し;エラーバーを表示した。
(実施態様の詳細な説明)
本発明の方法および他の態様に関する様々な用語が、本明細書および請求項全般に用いられる。そのような用語は、他に指示のない限り、当分野における通常の意味である。他の特別に定義された用語は、ここで提示する定義と一致するように解釈されるべきである。
定義:
他に断らない限り、本明細書中で用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、本発明の属する分野の当業者により通常解されるのと同様の意味を有する。本明細書中に記載のものと同様または同等のいずれの方法および材料を本発明の試験の実施に用いることができるけれども、好ましい材料および方法をここに記載する。本発明の説明および主張において、以下の用語が用いられる。
また、本明細書中で用いる用語は特定の実施態様のみを説明するためのものであり、制限されることを意図しないと理解すべきである。本明細書および特許請求の範囲で用いられるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、該内容が明確に他を示さない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、表現「肺サーファクタント」には、2以上の肺サーファクタントの組み合わせなどが含まれる。
例えば量、持続時間などといった測定可能な値に関して言及するとき本明細書中で用いられる「約」は、特定の値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、より一層好ましくは±0.1%の、開示する方法の実施に適切な変動を含むことを意味する。
用語「治療する」または「治療」は、損傷、病状または症状の軽減あるいは寛解における成功または成功の兆候のことをいい、いずれの客観的または主観的要素(例えば、軽減、緩和、症状の減衰、あるいは、該損傷、病状または症状を患者にとってより許容できるようにすること、変性または衰退速度の遅延、変性の最終時点での衰弱をより低減すること、患者の身体的または精神的健康の向上、もしくは延命など)が含まれる。症状の治療または寛解は、客観的または主観的パラメータに基づき得る;健康診断、神経学的検査、および/または精神医学的評価の結果などが含まれる。
「有効な量」または「治療上有効な量」は、本明細書中、相互交換可能に用いられ、特定の生物学的結果をもたらすのに有効であると本明細書中に記載された、化合物、製剤、物質、または組成物の量をいう。そのような結果には、限定はされないが、当分野において望ましい任意の方法により決定される、患者における粘液クリアランス、肺機能および/または気道の開存性の増大、および嚢胞性線維症または他の肺疾患の治療、が含まれ得る。
「医薬的に許容される」とは、組成、製剤化、安定性、患者の許容および生物学的利用能に関して、薬理学/毒性学的観点から患者にとって、および物理学的/化学的観点から製薬化学者にとって許容され得る特性および/または物質をいう。「医薬的に許容され得る担体」とは、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、投与される宿主に対して毒性のない媒体をいう。
「サーファクタント活性」とは、いずれの物質(例えば有機分子、タンパク質またはポリペプチド)の単独または他の分子との組み合わせのいずれかの気/水界面での表面張力を低下させる能力をいう。該測定は、in vitroアッセイによるウィルヘルミーバランス(Wilhelmy Balance)または脈動バブルサーファクトメーター(pulsating bubble surfactometer)で行い得る (例えば、King et al. (1972) Am. J. Physiol. 223:715-726、および、Enhorning G (1977) J. Appl. Physiol. 43:198-203)。簡単に言うと、エンホーニングサーファクトメーター(Enhorning Surfactometer)(Surfactometer International社製、トロント、オンタリオ)で、最大半径(0.55 mm)から最少半径(0.4 mm)の間で20サイクル/分の速度で脈動するバブルの気液界面(liquid-air interface)の圧力勾配(δP)を測定する。37℃の水-封入、20μl試料容器中で生成した気泡を、光学顕微鏡で観察する一方、その圧力変化を、0および-2cm H2Oで校正したストリップチャートレコーダーで記録した。加えて、肺に入る空気の一定圧におけるコンプライアンスまたはエアフローの増加のin vivo測定を容易に行い得る(Robertson B (1980) Lung 158:57-68)。このアッセイにおいて、評価される試料を、帝王切開により未熟な状態で娩出されたウサギ胎仔または子羊胎仔に、カニューレ処置した気管を通じて投与した。肺コンプライアンス、血液ガス圧(blood gas tension)および人工呼吸器圧(ventilator pressure)の測定結果は、活性の指標を提示する。脈動バブルの表面張力を低下させる能力として評価されるサーファクタント活性のin vitroアッセイ、およびウサギ胎仔を用いたin vivoアッセイは、Revak SD et al. (1986) Am. Rev. Respir. Dis. 134:1258-1265により詳述される。
「エアロゾル」とは、ガス中に浮遊させた液体または固体粒子をいう。本発明の方法で用いられるように、エアロゾルは治療学的に活性な製剤を含む。該エアロゾルは、溶液、懸濁液、エマルション、粉末、固体、または半固体製剤の形状であり得る。
「浸透圧モル濃度(Osmolarity)」とは、溶液中の浸透圧活性粒子(osmotically active particle)の濃度のことをいい、溶液のリットル当りの溶質のオスモルを単位として表される。浸透圧重量モル濃度(Osmolality)とは、溶液中の浸透圧活性粒子の濃度のことをいい、溶液のキログラム当りの溶質のオスモルを単位として表される。浸透圧モル濃度および浸透圧重量モル濃度は、本明細書中「Osm」または「mOsm」と略され、溶液のリットル当りかキログラム当りかのいずれで測定されたかに基づいて区別される。「オスモル」は、溶液中で解離して1モルの浸透圧活性粒子を形成する物質の量である。
本発明で用いる「浸透圧活性」剤とは、気道または肺の上皮表面において膜-不透過性(すなわち、本質的に非吸収性)である。本明細書中で用いる用語「気道表面」、「肺表面」または「肺の表面」には、肺気道表面(例えば気管支および細気管支、肺胞表面、ならびに鼻および副鼻腔の表面など)が含まれる。浸透圧活性剤は、本明細書中時に「浸透圧調節物質(osmolyte)」といわれる。
(詳細な記載)
高張生理食塩水は閉塞された気道の開存性の回復には十分でなかったけれども、エアロゾル化高張生理食塩水をCF患者に投与した場合、肺機能を改善し、粘液クリアランスを増大させることが認められた。本発明によると、肺サーファクタントは、洗浄剤様効果を通して、粘液粘着性を低下させることにより、粘膜線毛咳嗽クリアランスの改善、および気道閉塞の緩和を助けることが期待される。本発明は、肺サーファクタントを単独または浸透圧活性剤と組み合わせて用いることで、異常な粘液産生または粘液クリアランス障害を特徴とする肺疾患の患者に、より大きな有用性をもたらす。
従って、本発明の一態様は、異常な粘液産生または粘液クリアランス障害を含む肺疾患の治療方法を特徴とする。該方法は、患者の粘液クリアランスを促進するのに有効な量の肺サーファクタントを患者に投与することを含む。該方法は適宜、肺サーファクタントを浸透圧活性剤とともに投与することを含み得る。該方法はさらに、他の粘液作動薬(mucokinetic)、粘液溶解薬または治療薬との併用療法を含み得る。
本発明の別の態様は、異常な粘液産生または粘液クリアランス障害を含む肺疾患の治療用の医薬組成物を特徴とする。これらの組成物は、浸透圧活性剤と組み合わせた肺サーファクタントを含む。様々な態様において、本明細書中でより詳細に述べるように、組成物の浸透圧モル濃度は、治療される肺疾患のタイプに応じて調節され、ほぼ等浸透圧(例えば、副鼻腔炎または慢性気管支炎の軽症型の治療の場合)から、非常に高浸透圧(例えば、嚢胞性線維症の治療の場合)の範囲に及び得る。
粘液クリアランスの促進方法:
粘液産生が過剰で濃い、あるいは肺および気道から除去されにくいという肺疾患を患っている患者の、粘液クリアランスの促進および肺機能の改善のための方法を提供する。そのような疾患には、限定はされないが、嚢胞性線維症、急性または慢性気管支炎、 人工呼吸器関連肺炎、気管支拡張症、細気管支炎、原発性または続発性線毛機能不全、COPD、喘息、肺炎および副鼻腔炎が含まれる。
該方法の一つに、肺および気道からの粘液クリアランスの改善に有効な剤形および投与計画で、外因性肺サーファクタント(PS)を患者に投与することが含まれる。機序により制限する意図はないが、PSの投与は、表面張力を低下させて粘膜のプラグの流動性を高め、それにより粘液クリアランスを促進して去痰薬のように作用することにより、気道からの粘液クリアランスを改善すると考えられる。粘液が肺の隔絶された領域(inaccessible area)から消失し、それにより、他の治療薬が到達できるようになり得る。加えて、特定のサーファクタント(例えば、ルシナクタントおよび他の非動物由来サーファクタント)は抗炎症性性質を持つことが示されており、このことは、CF、および炎症および感染症(例えば、緑膿菌)が一因である上記に記載した肺疾患のその他の兆候および症状を低減するのに極めて有用であり得る。
別の方法は、PSと浸透圧活性剤の併用療法を含む。例えば高浸透圧生理食塩水などの浸透圧活性剤は、気道からの粘液分泌物のクリアランスを促進し、それにより肺機能を改善させることが示された。しかしながら、そのような剤は、気道の開存性をうまく回復させられないことがあり、一部の患者で気道収縮を引き起こし得り、炎症を悪化させる場合もある。浸透圧活性剤と併用したPSの投与は、これらの負の副作用のいくつかを緩和するとともに、上記のとおり、肺および気道における表面張力の低下および粘液流動性の増大のさらなる有益性をもたらす。
前述の方法のいずれも、治療される疾患のさらなる療法(当業者に承認されているであろう他の治療薬(例;ステロイド、一酸化窒素、抗酸化剤、または反応性酸素スカベンジャー、副腎皮質ステロイド、去痰薬、粘液溶解薬、気管支拡張剤、利尿剤、抗菌または抗感染薬、降圧薬、あるいは抗炎症剤(例えば、ほんの数例だけ挙げると、PLA2阻害剤、プロテアーゼまたはエラスターゼ阻害剤、PDE-4阻害剤など))を併用した治療を含む)と組み合わせてもよい。そのような剤を用いる場合、サーファクタント製剤および浸透圧活性剤と同時にまたは連続して投与することができる。さらなる治療薬の連続投与は、高浸透圧剤およびサーファクタント製剤の投与前または同時にすることができる。連続投与は異なる時点で実施できる。従って、各成分は、目的とする治療効果を得るために、十分に近い時間だが別々に投与することができる。当業者は、本発明の特定の薬剤を投与する、適切なタイミング、順序および量を決定することができる。
肺サーファクタント:
現在用いられている、または今後呼吸促迫症系および他の肺疾患用に開発されるいずれの肺サーファクタントも、本発明での使用に適している。これらには、天然および合成の肺サーファクタントが含まれる。本明細書中で用いられる合成PSとは、無タンパク質の肺サーファクタントおよび合成ペプチド含有肺サーファクタントの両方のことをいい、天然サーファクタントタンパク質のペプチド模倣薬が含まれる。現在のPS製品としては、限定はされないが、ルシナクタント(サーファキシン(Surfaxin)(登録商標), Discovery Laboratories, Inc.製, Warrington, PA)、ウシ脂質サーファクタント(BLES(登録商標), BLES Biochemicals, Inc.製, London, Ont)、カルファクタント(calfactant)(インファサーフ(Infasurf)(登録商標), Forest Pharmaceuticals製, St. Louis, MO)、天然ウシサーファクタント(アルベオファクト(Alveofact)(登録商標), Thomae, ドイツ), ウシサーファクタント (サーファクタントTA(Surfactant TA)(登録商標), 東京田辺製薬製, 日本)、ポラクタントα(poractant alfa)(クロサーフ(Curosurf)(登録商標), Chiesi Farmaceutici SpA製, Parma, イタリア)、プマクタント(pumactant)(アレック(Alec)(登録商標), Britannia Pharmaceuticals製, UK)、ベラクタント(beractant) (サーバンタ(Survanta)(登録商標), Abbott Laboratories, Inc.製, Abbott Park, IL)およびパルミチン酸コルホスセリル(エクソサーフ(Exosurf)(登録商標), GlaxoSmithKline, plc製, Middlesex, U.K.)が挙げられる。好ましい態様において、PSは合成ペプチドを含む。その他の利点として、このタイプの合成PSは天然のPSまたは動物由来タンパク質を含むPSよりも免疫原性が低い。従って、慢性症状の治療に必要な反復曝露に、より適している。
ある態様において、本発明の肺サーファクタントは、動物源からまたは合成的に誘導し得るカチオン性ペプチドを含む。本明細書中での使用に典型的なペプチドには、天然および非天然の肺サーファクタントポリペプチド(例えば、動物由来SP-A、SP-B、SP-CまたはSP-Dポリペプチドの一つあるいは組み合わせ;組換えSP-A、SP-B、SP-CまたはSP-Dポリペプチド;合成由来SP-A、SP-B、SP-C、またはSP-Dポリペプチド; SP-A、SP-B、SP-CおよびSP-Dアナログ; SP-A, SP-B, SP-CおよびSP-Dポリペプチド模倣物; 活性を保持した、その保存的に修飾した変異体; および活性を保持した、そのフラグメント)が含まれる。肺サーファクタントポリペプチド模倣物は通常はポリペプチドであり、ヒトサーファクタントタンパク質の本質的特性を模倣するのに用いられる。ある好ましい実施態様において、該肺サーファクタントポリペプチドは、少なくとも約10、好ましくは少なくとも11のアミノ酸残基、および、約80以下、より通常は約35未満、好ましくは約25未満のアミノ酸残基から成るカチオン性ペプチドを含む。
本明細書中での使用のための肺サーファクタントポリペプチドの典型的なアミノ酸配列、遺伝子工学技術によるそれらの単離方法および製造方法が当分野において知られている。例えば、米国特許第5,874,406号; 5,840,527号; 4,918,161号; 5,827,825号; 6,660,833号、5,006,343号; 5,455,227号; 5,223,481号; 第5,753,621号; 第5,891,844号; 第4,861,756号; 第5,272,252号; 第5,024,95号; 第5,238,920号; 第5,302,481号; 第6,022,955号;第5,874,406号; 第5,840,527号; 第5,827,825号; 第6,013,619号; 第6,660,833号; および国際公開第8603408号および第8904326号を参照のこと。本明細書中での使用に好ましい肺サーファクタントペプチドはSP-BもしくはSP-Cポリペプチド、またはポリペプチド模倣物である。
好ましい合成肺サーファクタントは、1以上のリン脂質およびポリペプチドを含み、ここで、該ポリペプチドは、リン脂質と混合されると、リン脂質単独のサーファクタント活性よりも優れたサーファクタント活性を有する合成肺サーファクタントを形成する。本明細書中での使用に特に好ましい肺サーファクタントポリペプチドは、SP-Bポリペプチドまたはポリペプチド模倣物である。SP-Bは、天然の肺サーファクタント中のタンパク質であり、表面張力の低下および酸素交換の促進に最も重要なサーファクタントタンパク質であることが知られている。SP-Bポリペプチド模倣物は小さい疎水性のポリペプチドで、通常はサイズが約80アミノ酸未満である。多くのSP-Bポリペプチド模倣物が、繰り返し疎水性カチオン性モチーフを有する。天然のSP-Bポリペプチドと同様に、SP-B模倣物は、末端の誘導気道の表面張力を低下させ、酸素交換を促進することが好ましい。さらに、そのようなSP-B模倣物(例えば、ルシナクタント)を含むサーファクタント製剤は、抗菌特性および非免疫原性を有すると考えられている。
本発明での使用に好ましいSP-B模倣物はKL4ペプチドであり、リジンおよびロイシン残基の繰り返しを有するカチオン性ペプチドである。KL4は肺サーファクタントポリペプチド模倣物ファミリーの代表的なものであり、例えば、米国特許第5,260,273号、第5,164,369号、第5,407,914号および第6,613,734号に記載されている。KL4ペプチドの製造方法は、米国特許第5,164,369号で知ることができる。
ある実施態様において、肺サーファクタントポリペプチド模倣物とは、0未満、好ましくは-1以下、より好ましくは-2以下の複合性の疎水性を持つアミノ酸残基配列を有するポリペプチドのことをいう。ペプチドの複合体の疎水性値は、ペプチド中の各アミノ酸残基にHopp et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 78: 3824-3829, 1981に記載するその対応する親水性値を割り当てることにより決定される。指定のペプチドについて、該疎水性値を合計し、その合計が複合性疎水性値を表す。これら疎水性のポリペプチドは典型的に、SP18の疎水性領域の機能を果たす。従って、ある実施態様において、肺サーファクタントポリペプチドの該アミノ酸配列はSP18の疎水性および親水性の残基のパターンを模倣し、SP18の疎水性領域の機能を果たす。SP18は既知の肺サーファクタントアポタンパク質であり、Glasser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 84: 4007-4001, 1987により詳細に記載されている。しかし、当然のことながら、本発明のポリペプチドおよび他のサーファクタント分子は、天然のSP18と同様の配列を有する分子に限定されない。一方、本発明のある好ましいサーファクタント分子は、特定のアミノ酸残基配列に関し、同様のサーファクタント活性および交互の荷電/非荷電(または疎水性/親水性)残基配列を有することを除いて、ほとんどSP18に類似していない。
ある実施態様において、本明細書中で使用される典型的なポリペプチドは交互の疎水性と親水性アミノ酸残基領域を有し、そしてこれは、式:
(ZaUb)cZd
により示される少なくとも10アミノ酸残基を有することを特徴とする。ここで、ZおよびUは、ZおよびU各々が独立して選択されるようなアミノ酸残基である。Zは親水性のアミノ酸残基であり、好ましくはR、D、EおよびKからなる群から選択される。Uは疎水性のアミノ酸残基であり、好ましくはV、I、L、C、YおよびFからなる群から選択される。該文字「a」、「b」、「c」および「d」は、親水性または疎水性残基の数を表す番号である。該文字「a」は、約1から約5、好ましくは約1から約3の平均値を有する。該文字「b」は、約3から約20、好ましくは約3から約12、最も好ましくは約3から約10の平均値を有する。該文字「c」は、1から10、好ましくは2から10、最も好ましくは3から6の平均値を有する。該文字「d」は、約0から3、好ましくは1から2の平均値を有する。
ある実施態様において、サーファクタントポリペプチドは、式:
(ZaJb)cZd
[式中、ZはR、D、EおよびKからなる群から独立して選択されるアミノ酸残基であり;Jはα-アミノ脂肪族カルボン酸であり;aは約1から約5の平均値を有し;bは約3から約20の平均値を有し;cは1から10であり;および、dは0から3である。]
により示されるアミノ酸残基の交互配置を有する配列を含む。
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、式:
(BaUb)cBd
[式中、Bは、H、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリンおよび3-ヒドロキシプロリンからなる群から独立して選択されるアミノ酸残基であり;そして、Uは、V、I、L、C、YおよびFからなる群から独立して選択されるアミノ酸残基である。]
で示されるアミノ酸残基領域の交互配置を有する。1つの好ましい変形態様において、Bはコラーゲン由来のアミノ酸であり、好ましくは5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリンおよび3-ヒドロキシプロリンからなる群から独立して選択され;aは約1から約5の平均値を有し;bは約3から約20の平均値を有し;cは1から10であり;および、dは0から3である。
ある実施態様において、本発明のサーファクタントポリペプチドは、式:
(BaJb)cBd
[式中、BはH、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリンおよび3-ヒドロキシプロリンからなる群から独立して選択されるアミノ酸残基であり;そして、Jはα-アミノ脂肪族カルボン酸であり;aは約1から約5の平均値を有し;bは約3から約20の平均値を有し;cは1から10であり;およびdは0から3である。]
で示されるアミノ酸残基の交互配置を有する配列を含む。
関連する式の中に「J」を含む様々な態様において、Jは4から6の炭素数を包括的に有するα-アミノ脂肪族カルボン酸である。他の変化態様において、Jは、6以上の炭素数を包括的に有するα-アミノ脂肪族カルボン酸である。さらに他の変化態様において、Jはα-アミノブタン酸、α-アミノペンタン酸、α-アミノ-2-メチルプロパン酸およびα-アミノヘキサン酸からなる群から選択される。
ある実施態様において、本発明のサーファクタントポリペプチドは、式:
(ZaUb)cZd
[式中、Zは、R、D、EおよびKからなる群から独立して選択されるアミノ酸残基であり;そして、Uは、V、I、L、C、YおよびFからなる群か;V、I、L、CおよびFからなる群か;あるいは、LおよびCからなる群から独立して選択されるアミノ酸残基であり;aは約1から約5の平均値を有し;bは約3から約20の平均値を有し;cは1から10であり;そして、dは0から3である。]
で示されるアミノ酸残基の交互配置を有する配列を含む。
前述の式において、ZとU、ZとJ、BとU、およびBとJは、各々独立して選択されるアミノ酸残基である。加えて、前述の式の各々において、aは通常、約1から約5の平均値を有し;bは通常、約3から約20の平均値を有し;cは1から10であり;そして、dは0から3である。
ある実施態様において、ZおよびBは荷電したアミノ酸残基である。他の好ましい実施態様において、ZおよびBは親水性または正に荷電したアミノ酸残基である。ある変化態様において、Zは好ましくはR、D、EおよびKからなる群から選択される。関連する態様において、Zは好ましくはRおよびKからなる群から選択される。さらに別の好ましい態様において、Bは、H、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリンおよび3-ヒドロキシプロリンからなる群から選択される。好ましい1実施態様において、BはHである。別の好ましい実施態様において、Bはコラーゲン構成アミノ酸残基であり、5-ヒドロキシリジン、(δ-ヒドロキシリジン)、4-ヒドロキシプロリンおよび3-ヒドロキシプロリンからなる群から選択される。
ある実施態様において、UおよびJは、好ましくは、非荷電のアミノ酸残基である。 別の好ましい態様において、UおよびJは疎水性のアミノ酸残基である。1態様において、Uは好ましくは、V、I、L、C、YおよびFからなる群から選択される。別の好ましい態様において、Uは、V、I、L、CおよびFからなる群から選択される。さらに別の好ましい態様において、Uは、LおよびCからなる群から選択される。様々な好ましい態様において、UはLである。
同様に、ある実施態様において、Bはアミノ酸であり、好ましくは、H、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリンおよび3-ヒドロキシプロリンからなる群から選択される。また、Bは、コラーゲン由来のアミノ酸(5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリンおよび3-ヒドロキシプロリンを含む)からなる群から選択することもできる。
ある実施態様において、荷電および非荷電のアミノ酸は、修飾アミノ酸の群から選択される。例えば、好ましい1実施態様において、荷電したアミノ酸は、シトルリン、ホモアルギニンまたはオルニチン(ごく一部だが)からなる群から選択される。同様に、様々な好ましい実施態様において、非荷電のアミノ酸は、α-アミノブタン酸、α-アミノペンタン酸、α-アミノ-2-メチルプロパン酸およびα-アミノヘキサン酸からなる群から選択される。
本発明のある実施態様において、「a」、「b」、「c」および「d」は、荷電または非荷電の残基(または親水性もしくは疎水性の残基)の数を示す番号である。様々な実施態様において、「a」は、約1から約5、好ましくは約1から約3、より好ましくは約1から約2、そしてさらに好ましくは1である平均値を有する。
様々な実施態様において、「b」は、約3から約20、好ましくは約3から約12、より好ましくは約3から約10、さらに好ましくは約4〜8の範囲の平均値を有する。好ましい1実施態様において、「b」は約4である。
様々な実施態様において、「c」は1から10、好ましくは2から10、より好ましくは3-8または4-8の範囲、そしてさらに好ましくは3から6である。好ましい1実施態様において、「c」は約4である。
様々な実施態様において、「d」は0から3または1から3である。好ましい1実施態様において、「d」は0から2、または1から2であり;別の好ましい実施態様において、「d」は1である。
アミノ酸残基が独立して選択されると記載することは、各々、特定の群からの残基が選択されることを意味する。すなわち、例えば、「a」が2である場合、Zで示される親水性の残基の各々は独立して選択され、従って、RR、RD、RE、RK、DR、DD、DE、DKなどが含まれ得る。「a」および「b」が平均値を有すると記載することは、繰り返し配列(例えば、ZaUb)中の残基の数はペプチド配列内で多少変動できるけれども、「a」および「b」の平均値は各々、約1から約5および約3から約20であろうことを意味する。
例えば、以下の表2中の名称が「KL8」であるペプチドについて式(ZaUb)cZdを使用する場合、該式をK1L8K1L8K1L2と書き換えることができ、式中、「b」の平均値は6であり[すなわち、(8+8+2)/3=6]、cは3であり、dは0である。
本発明のポリペプチドはまた、様々な改変(例えば、保存的または非保存的のいずれかの挿入、欠失、および置換)を成すことができ、そのような改変はそれらの使用に特定の利点をもたらす。
さらなる残基を、例えば、「リンカー」を提供する目的で、本発明のポリペプチドの末端のどちらかに加えることができ、そのことによって、そのようなポリペプチドを、標識もしくは固体マトリックスまたは担体に容易に結合することができる。本発明のポリペプチドとともに用いることができる標識、固体マトリックスおよび担体は当分野で知られている。
アミノ酸残基リンカーは、通常、少なくとも一つの残基であり、40以上の残基、より多くの場合は1から10残基であり得る。結合に用いられる典型的なアミノ酸残基はチロシン、システイン、リジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸などである。加えて、本発明のポリペプチド配列は、NH2末端のアシル化(例えば、アセチル化、またはチオグリコール酸アミド化)、カルボキシ末端のアミド化(例えば、アンモニア、メチルアミン)などにより修飾された配列により、天然の配列と異なり得る。
ある実施態様において、本発明で用いることのできる例示的なSP-Bポリペプチド模倣物としては、限定はされないが、以下の表に示されるものが挙げられる。
Figure 2010503731
該肺サーファクタントは通常、1以上の脂質を含有する。これらの実施態様において、該サーファクタント組成物は、例えばわずか約0.05から100 %重量パーセント脂質など、得られた組成物がサーファクタント活性を有する範囲で含有することができる。重量パーセントは、組成物重量中の化合物重量の割合パーセントを示す。従って、50重量パーセント脂質を有する組成物は、例えば、50グラム脂質/100グラム総組成物を含有する。ここで用いる用語「脂質」は、通常は両親媒性である、天然、合成または半合成(すなわち、改変天然物(modified natural lipid))の化合物のことをいう。該脂質は通常、親水性の成分および疎水性の成分を含有する。例示的な脂質としては、限定はされないが、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、中性脂肪、リン脂質、油、糖脂質、界面活性剤(サーファクタント)、脂肪族アルコール、ワックス、テルペンおよびステロイドが挙げられる。用語、半合成(または改変天然物)は、ある方法で化学的に修飾された天然化合物を示す。好ましくは、脂質は、脂肪酸、アルコール、そのエステルおよびエーテル、脂肪族アミン、あるいはそれらの組み合わせである。
リン脂質の例としては、天然および/または合成リン脂質が挙げられる。用いることのできるリン脂質には、限定はされないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴ脂質、ジアシルグリセリド、カルジオリピン、セラミド、セレブロシドなどが挙げられる。例示的なリン脂質には、限定はされないが、ジパルミトイル ホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)(C12:0)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)(C14:0)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジフタロイル(diphytanoyl)ホスファチジルコリン、ノナデカノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)(C18:1)、ジパルミトレオイルホスファチジルコリン(C16:1)、リノレオイルホスファチジルコリン(C18:2)、ミリストイルパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、ステアロイル(steroyl)ミリストイルホスファチジルコリン(SMPC)、ステアロイルパルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルパルミトオレオイルホスファチジルコリン(PPoPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイル ホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン(POPS)、大豆レシチン、卵黄レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、および卵ホスファチジルコリン(EPC)が挙げられる。
脂肪酸および脂肪アルコールの例としては、限定はされないが、ステロール、パルミチン酸、セチルアルコール、ラウリン酸、ミスチリン酸、ステアリン酸、フィタン酸、ジパルミチン酸などが挙げられる。好ましくは、該脂肪酸はパルミチン酸であり、好ましくは、該脂肪アルコールはセチルアルコールである。
脂肪酸エステルの例として、限定はされないが、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸コレステリル、パルミチン酸パルミチル、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、トリパルミチンなどが挙げられる。
半合成または改変天然脂質の例は、化学的に修飾された上記の脂質のうちのいずれか一つである。該化学的修飾には多くの修飾が含まれる;しかしながら、好ましい修飾は、脂質の目的とする部位への1以上のポリエチレングリコール(PEG)基の結合である。主にポリエチレングリコール(PEG)は生体適合性があり、無毒で、非免疫原性および水溶性のポリマーである(Zhao and Harris, ACS Symposium Series 680: 458-72, 1997)ことから、PEGは、バイオマテリアル、バイオテクノロジーおよび医薬で広く用いられている。ドラッグデリバリーの分野では、PEG誘導体がタンパク質への共有結合(すなわち、「ペグ化(PEGylation)」)に広く用いられ、免疫原性、タンパク質分解および腎クリアランスを低下させ、溶解性を高められている(Zalipsky, Adv. Drug Del. Rev. 16: 157-82, 1995)。
PEGと結合した脂質は、本明細書中「PEG-脂質」と呼ばれる。PEG-脂質が用いられる場合、好ましくはそれらはアルコールおよび/またはアルデヒド中に存在する。
該肺サーファクタントは、他の賦形剤(限定はされないが、例えばブドウ糖、フルクトース、ラクトース、マルトース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、トレハロースなどの様々な糖が含まれる)、サーファクタント(例えばポリソルベート-80、ポリソルベート-20、ソルビタントリオレエート、チロキサポールなど)、ポリマー(例えばPEG、デキストランなど)、塩(例えばNaCl、CaCl2など)、アルコール(例えばセチルアルコール)、および緩衝剤を含むことができる。
典型的なサーファクタント組成物は、当分野で周知の方法を用いて調製できる。例えば、ある実施態様において、脂質およびポリペプチドを含有する例示的なサーファクタント組成物は、サーファクタントポリペプチド溶液をリポソームの懸濁液と混合するか、該サーファクタントポリペプチドをリポソームの懸濁液と混合するか、または該サーファクタントポリペプチドおよびリン脂質を直接、有機溶媒の存在下で混合することにより、調製できる。
好ましくは、該肺サーファクタントは、リン脂質および遊離脂肪酸または脂肪アルコール、例えば、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)、POPG(パルミトイル-オレイルホスファチジルグリセロール)およびパルミチン酸(PA)(例えば、米国特許第5,789,381号を参照)を含む。
ある好ましい実施態様において、該肺サーファクタントは、ルシナクタント、または合成サーファクタントタンパク質 KLLLLKLLLLKLLLLKLLLL (KL4; 配列番号1)を含む別の肺サーファクタント製剤である。ルシナクタントは、DPPC、POPG、パルミチン酸(PA)および該KL4ペプチド(およそ7.5 : 2.5 : 1.35 : 0.267の重量比)の組み合わせである。ある実施態様において、該製剤は、例えば5、10、15、20、25または30 mg/mlリン脂質含量の濃度で製剤化される。ある他の実施態様において、該製剤は、例えば40、50、60、70、80、90、100、110、120 mg/ml以上のリン脂質含量といったより高濃度で、KL4濃度の上昇に付随して、製剤化される。
他の実施態様において、該肺サーファクタントはエアロゾルとしてのデリバリー用に製剤化される。エアロゾルデリバリーに適した製剤の例は国際公開第2006/071796号に記載されている。ある場合において、さらに有利な点は凍結乾燥させた肺サーファクタントを利用することであり、それにより適切な医薬媒体中に再構築することができる。そのような製剤およびそれらの製造方法の例は国際公開第2006/055532号に記載されている。
浸透圧活性剤:
本明細書中に記載の肺サーファクタントと適合し得るいずれの医薬的に許容され得る浸透圧活性剤も、本発明での使用に適切であると考えられる。イオン性浸透圧調節物質(例えば塩)を含めた様々なそのような剤が当分野では知られており(例えば米国特許第6,926,911号を参照)、あるいはそれらは非イオン性浸透圧調節物質(例えば糖、糖アルコール)および有機性浸透圧調節物質であり得る。浸透圧重量モル濃度は通常、300 mOsm/kgに調整されるが、1200 mOsm/kgまでは有用であり得て、耐容性が良好である。
適切なイオン性浸透圧調節物質としては、医薬的に許容されるアニオンおよび医薬的に許容されるカチオンから成るいずれの塩が含まれる。そのような化合物としては、限定はされないが、アニオンおよびカチオンが挙げられ、それはFDAが認可した市販の塩(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Vol. II, pg. 1457 (19th Ed. 1995)を参照)に含まれ、また、それらの通常の組み合わせを含むいずれの組み合わせでも用いることができる。適当な塩としては、限定はされないが、数例挙げると、塩化カリウム、塩化コリン、ヨウ化コリン、塩化リチウム、塩化メグルミン、L-リジンクロリド、D-リジンクロリド、塩化アンモニウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、グルコン酸カリウム、ヨウ化カリウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄および臭化カリウムが含まれる。
本発明での使用に適した糖および糖アルコールとしては、限定はされないが、グリセロール、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、トレオースおよびエリトルロース、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、ソルボースおよびタガトース)、 グルコース、マンノース、ガラクトース、ラフィノース、ラフィノース、スタキオース、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、アラビトールが挙げられる。適当であれば、DおよびL型の各々の糖または糖アルコールの両方とも、本発明での使用が考えられる。
本発明での使用に適した有機性浸透圧調節物質としては、限定はされないが、(1)ポリオール(多価アルコール)、例えばイノシトール、ミオイノシトールおよびソルビトール; (2)メチルアミン、例えばコリン、ベタイン、カルニチン(L-、D-およびDL型)、ホスホリルコリン、リゾ-ホスホリルコリン、グリセロホスホリルコリン、クレアチンおよびクレアチンリン酸;および、(3)アミノ酸、例えばD-およびL型のグリシン 、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、アルパラギン酸、プロリンおよびタウリン、が挙げられる。
いくつかの好ましい実施態様において、該浸透圧活性剤はナトリウム塩である。ナトリウム塩のアニオンは、限定はされないが、アセテート、シトレート、ラクテート、カルボネート、ビカルボネート、ホスフェート、ヨージド、フルオライドまたはブロミドなどのいずれの適当なアニオンであることができ、好ましくはクロリドである。該ナトリウム塩は、一塩基または二塩基であることができる。溶液形態中の該浸透圧活性剤は約pH5から約pH9の範囲であることができ、好ましくは約pH6から約pH8である。
投与:
単独あるいは浸透圧活性剤と組み合わせた該肺サーファクタントを、肺送達(例えば、固体または液体粒子状形態で呼吸器系への吸入による)により患者に投与する。吸入による投与は、定量噴霧式吸入器(MDI)を用いて行われ得る。定量噴霧式吸入器は、貯蔵容器から分散量の薬剤を放出する。化学噴霧剤を用いて貯蔵容器から薬剤を押し出す(pMDI)か、または、吸入力を用いて保持チャンバーから薬剤を引き出すことにより、薬剤の放出がなされる。定量噴霧式吸入器は、患者が貯蔵容器を押す場合、または直接薬剤を吸入する場合に薬剤を放出し得る。吸入による投与は、ドライパウダー吸入器(DPI)と呼ばれるMDIの形態を用いて行うことができる。吸入力を用いて保持チャンバーから薬剤を引き出すことにより、薬剤の放出がなされる。
好ましくは、投与はネブライザー(エアロゾル発生器)を用いて行われる。一実施態様において、該エアロゾル発生器は、超音波ネブライザー、振動膜(vibrating membrane)ネブライザーまたは振動ふるい(vibrating screen)ネブライザーである。本方法は全てのタイプのネブライザーまたはアトマイザーに適応できるので、ジェットネブライザーもまた用いることができる。一実施態様において、該エアロゾル発生器は、アエロネブ(Aeroneb)(登録商標)Professional Nebulizer (Aerogen Inc., Mountain View, CA, USA)である。あるいは、パリ エフロー(Pari eFlow) (Pari, Richmond, VA)またはアキタ(Akita)1もしくは2 (Activaero, Germany)を用いてもよい。別の実施態様において、該エアロゾル発生器は、キャピラリーエアロゾル発生器、例えばChrysalis Technologies, Richmond, VA製のソフトミスト発生器(soft-mist generator)である(Nguyen TT et al. (2003) J. Aerosol Med. 16:189)。
本発明の方法は、高出力吸入器を用いて肺サーファクタントおよび浸透圧活性剤を患者に投与することが好ましい。これらには、約0.5 ml/分以上の出力速度、および約15%以上の肺沈着を産生するハンドヘルドおよび卓上装置が含まれ(例えば、上記のアエロネブ、パリ エフロー、ChrysalisおよびActivaero装置)、粘液クリアランスを促進するためにサーファクタントおよび他の活性剤の気道への十分な沈着を確実なものとする。
他の実施態様において、エアロゾル化肺サーファクタントは、国際公開第2005/115520号および第2006/026237号に記載の通り投与することができる。投与は、別の非侵襲的な肺の呼吸療法(気道陽圧の管理が含まれる)と併用することができる。該用語「非侵襲的な肺の呼吸療法」とは、気管内挿管を必要としない呼吸療法のことをいい、持続的気道陽圧法(CPAP)、二相性気道陽圧法(BiPAP)、同期式間欠的強制換気(SIMV)などが挙げられる。そのような療法を用いることは、当業者によって認識されている、様々な呼吸ガスの使用を含む。非侵襲的な肺の呼吸療法に用いられる呼吸ガスを、ここでは、「CPAPガス」、「CPAPエアー」、「nCPAP」、「換気ガス」、「換気エアー」、または単に「エアー」と呼ぶことがある。しかしながら、それらの用語は非侵襲的な肺の呼吸療法に通常用いられるガスのタイプいずれも含むことを意図しており、限定はされないが、調整ガス(conditioning gas)として上記のガスおよびガスの組み合わせが含まれる。ある実施態様においては、非侵襲的な肺の呼吸療法に用いられるガスは調整ガスと同一である。他の実施態様においては、各々のガスはお互い異なっている。
ある実施態様において、本発明の肺送達方法はCPAPと併用して用いられる。CPAPの使用は機能的残気量の増大をもたらし、酸素化を改善することが示された。喉頭が拡張され、声門上気道抵抗は正常である。呼吸胸腹部運動(respiratory thoracoabdominal movement)の同調性も改善され、気道閉塞に続くHering-Breuer膨張反射も改善される。CPAPは、例えば睡眠時無呼吸、いびき、ARDS、IRDSなどといった様々な症状の治療に有用であることが示された。
CPAPは、圧力源およびデリバリー装置(delivery device)またはデリバリー器具(delivery apparatus)を必要とする。CPAP生成気流は通常、経鼻呼吸チューブ(nasal airway)付近で、用時調製の(fresh)加湿ガスの噴出からの運動エネルギーを気道陽圧に変換することにより、生成される。約5から約12リットル/分の呼吸ガスの持続的流速により、約2から約10 cm H2Oの対応するCPAPを生成する。様々な改変がCPAPシステムに適用でき、それには患者の必要性に基づいて圧力量を決めることができるセンサーが含まれる。
通常、CPAPの達成に適した流速および圧力は、治療を受ける患者の特徴に基づく。適当な流速および圧力は、担当の臨床医により容易に算出され得る。本発明は、様々な流速の換気ガス(低、中、高の流速が含まれる)の使用を包含する。ある実施態様において、該エアロゾルは、流量および/または圧力の速いまたは高い頻度の変化の間、供給され得る。高頻度とは、通常、0.5ヘルツ以上とされる。別法として、エアロゾルは、陽圧を加えないで、すなわち同時呼吸療法としてのCPAPを行わずに、供給することができる。ある実施態様において、該エアロゾルは、速いまたは高い頻度の振動性パーカッション(oscillatory percussion)の間、胸部に供給することができる。
患者に送達されるCPAP生成気流は、肺および気道が許容できないレベルに乾燥するのを防ぐ水分量を有することが好ましい。従って、該CPAP生成気流は、好ましくは約70%より大きい相対湿度に達するように、ハイドレーター(hydrator)などを通してバブルすることにより、加湿されることが多い。より好ましくは、湿度は約85%以上、さらに好ましくは98%である。
CPAP-誘導気流の適切な源は、水中チューブCPAP(水中呼気抵抗(underwater expiratory resistance))ユニットである。これは普通、「バブル」CPAPと呼ばれる。圧力の別の好ましい源は、呼気フローバルブ(expiratory flow valve)であり、これはCPAP回路の呼気側(expiratory limb)で可変抵抗バルブ(variable resistance valve)を用いる。これは通常、人工呼吸器を介してなされる。別の好ましい源は、インファント フロー ドライバー(Infant Flow Driver)または「IFD」(Electro Medical Equipment, Ltd., Brighton, Sussex, UK)である。IFDは、経鼻レベルで圧力を生じ、通常のフロー源およびマノメーターを用いて、CPAP効果をもたらし得る高圧供給ジェットを生じる。高圧供給ジェットの方向は、患者の労力により鼻腔中で発揮される圧力に応答し、吸気サイクルの間の空気圧の変動を減少させることが文献で示唆されている。上で論じたシステムに類似した特徴を有するものを含む他のCPAPシステムもまた、本発明により意図される。
エアロゾル化デリバリーによって生じたエアロゾル流は、経鼻デリバリー装置(例えばマスク、単一の経鼻プロング(nasal prong)、両鼻プロング、鼻咽頭プロング、経鼻カニューレなどが含まれる)を介して患者に送達するのが好ましい。デリバリー装置は、外傷を最小限にし、エアロゾルの無駄を避けるために密封状態に維持され、患者が呼吸に費やす労力を最小限にするように選択される。
エアロゾル製剤として用いる場合、該サーファクタント製剤は浸透圧活性剤と共にまたはなしで、微粉化形態で、適宜適当な噴霧剤と組み合わせて供給することができる。有用な噴霧剤は、通常、周囲条件においてガスであり、加圧下で凝縮されており、例えば、低級アルカンおよびフッ素化アルカン(例えばフレオン)が挙げられる。該サーファクタント組成物がエアロゾルとして送達されるある実施態様において、該エアロゾルは、加圧下で適当な容器に充填することができる。
浸透圧活性剤およびサーファクタント製剤もまた、乾燥エアロゾルとして投与することができる。そのような製剤は、エアロゾル化粉末製剤を患者が吸引することにより投与される。例えば、粉末製剤は単一の剤形(例えばカプセルまたはカートリッジ)で供給され得て、そして米国特許第7,025,059号または第7,025,058号の通り投与され得る。
本発明の方法の実施のために調製される、固体または液体粒子型の製剤としては、呼吸用サイズの粒子、すなわち、吸入の際に、鼻腔、口および気管を経て最終的に気管支および肺の肺胞まで到達するのに十分に小さいサイズの粒子が含まれる。一般に、肺送達においては、サイズが約1から10ミクロン、および約3〜6ミクロン(GSD<2)の範囲の粒子が、呼吸可能な範囲内である。ある実施態様において、平均粒子サイズは、直径が少なくとも約1か、少なくとも約2か、少なくとも約3か、少なくとも約4か、少なくとも約5か、あるいは少なくとも約6ミクロンである。他の実施態様において、該粒子サイズは、直径が約6未満か、約7未満か、約8未満か、約9未満か、あるいは約10ミクロン未満である。呼吸用には大きすぎるエアロゾル化粒子は、喉に沈着して飲み込まれる可能性があるため、エアロゾル中の呼吸可能でない粒子の量をできるだけ少なくすることが好ましい。エアロゾル化治療薬、特にエアロゾル化抗生物質のデリバリーが当分野で知られている(例えば、米国特許第7,025,058号、第7,025,059号、第5,767,068号、および第5,508,269号、参照)。
液滴またはエアロゾルとしての肺サーファクタントもまた、患者が侵襲的な機械的人工呼吸法によりサポートされている間、投与することができる。該肺サーファクタントは、経口経路(例えば気管内チューブ)、人工的経路(例えば気管切開チューブ)、または経鼻経路(経鼻マスク、プロング、カニューレなどを用いて)を介して投与することができる。1実施態様において、該サーファクタント製剤は、侵襲的な機械的人工呼吸法の実施にも利用される、気管内または気管切開チューブを介して送達される。他の実施態様において、該サーファクタント製剤は、非侵襲的な機械的人工呼吸法の実施に利用されるデリバリー方法を介して送達することができる。
治療上有効な量:
過剰な粘液産生または粘液クリアランス障害といった肺疾患に苦しむ患者の治療のため、治療上有効な量の肺サーファクタントが、単独または浸透圧活性剤と併用して、患者に投与される。治療上有効な量は、臨床的に有意な粘液クリアランスの増強、肺機能の改善、および/または気道開存性の改善をもたらし、炎症反応または気管支収縮を促進または維持しないことが好ましい。
治療上有効な量は、限定はされないが、性、大きさ、身長、体重、年齢、患者の全体の健康状態、製剤のタイプ、投与の様式もしくは方法、または肺疾患の重篤性を含むあらゆる変数に依存し得る。適当な有効量は、通常の最適化手法、実施者の熟練した知識に基づく判断力および当業者には明白な他の要素を用いて、当業者により普通に決定され得る。好ましくは、本明細書中に記載された浸透圧活性剤およびサーファクタント製剤の治療上有効な量は、患者に重大な毒性を引き起こすことなく、治療的有用性をもたらす。
剤または化合物の毒性および治療効力は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手法により決定することができる(例えば、LD50 (集団の50%が死に到る量)およびED50 (集団の50%に治療効果のある量)の決定)。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比率として表すことができる。大きな治療指数を示す剤または組成物が好ましい。そのような剤または組成物の用量は、好ましくは毒性がほとんどないか全くないED50を有する範囲内の血中濃度である。該用量は、用いられる剤形および投与経路に依存して、この範囲内で変動させてもよい。
本発明の方法において、少なくとも1つの肺サーファクタントを患者に投与する。単一のサーファクタント用量は、例えば、総リン脂質(TPL)/患者のkgが約20から約300 mg、より好ましくは約60から約175 mg TPL/kgの範囲である。ある実施態様において、単一のサーファクタント用量は、少なくとも約20か、30か、40か、50か、または60 TPL/kgである。ある実施態様において、単一のサーファクタント用量は、最大約70か、80か、90か、100か、110か、120か、130か、140か、150か、160か、170か、180か、190か、200か、210か、220か、230か、240か、250か、260か、270か、280か、290か、または300 TPL/kgまでである。もちろん、当然のことながら、正確なサーファクタント用量は、例えば性別、大きさ、身長、体重、年齢、患者の全体の健康状態、製剤のタイプ、投与の様式もしくは方法、または肺疾患の重篤性、ならびに担当の臨床医の知識と技量の範囲内の他の要素に依存し得る。例えば国際公開第2005/115520号および第2006/026237号に記載の、サーファクタント組成物がエアロゾルとして送達される実施態様において、肺サーファクタントの有効量は、例えば、約1 mg TPL/kgサーファクタントから約1000 mg TPL/kgサーファクタントであり得る。ある実施態様において、肺サーファクタントの有効量は、約2 mg TPL/kg以上のサーファクタントである。ある実施態様において、有効量は、最大約175 mg TPL/kgサーファクタントである。他の実施態様において、肺サーファクタントの有効量は、最大約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900または約1,000 mg TPL/kgまでである。サーファクタント組成物が乾燥粉末製剤として送達されるある実施態様において、肺サーファクタントの有効量は、例えば、約1 mg TPL/kgサーファクタントから約1000 mg以上のTPL/kgサーファクタント、好ましくは約2 mg TPL/kgサーファクタントから約175 mg TPL/kgサーファクタントである。他のデリバリー方法としては、洗浄、肺洗浄などが挙げられる。そのように用いる場合、用量範囲は当分野の技術の範囲内が良い。ある実施態様において、用量は調節され、1日あたり約20 mg以上または30 mg以上の肺用量のTPL、1日あたり最大約150 mg、160 mg、170 mg、180 mg、190 mgまたいは200 mgまでの肺用量のTPL、例えば、1日あたり約20〜200 mgの範囲の肺用量のTPL、より具体的には1日あたり約30-150 mgの範囲の肺用量のTPL、さらに具体的には1日あたり約60 mg 肺用量のTPLで患者に与えられる。最適には、該サーファクタントは、動物由来、非免疫原性でなく、KL4ペプチドを含む。
他の実施態様において、本明細書中に例示された浸透圧活性剤および少なくとも1つのサーファクタントを患者に投与する。緩衝剤の浸透圧重量モル濃度は、少なくとも約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850あるいは900 m0sm/kgであり得る。最大約300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,050、1,100、1,150、1,200、1,250、1,300、1,350、1,400、1,450あるいは1,500 mOsm/kgまで及び得る。ある実施態様において、緩衝剤の浸透圧重量モル濃度は約100 mOsm/kgから約1500 mOsm/kgまで及び得る。より具体的には、緩衝剤の浸透圧重量モル濃度は、約150〜1000 mOsm/kg、より具体的には約200〜800 mOsm/kg、およびさらに具体的には約250〜300 mOsm/kgに及ぶ。
治療は、浸透圧活性剤および/またはサーファクタント製剤の最適用量未満である小用量から始めることができ、その後、該条件の下で最適な効果が得られるまでの一連の治療にわたって用量を増やす。必要に応じ、一日の総投与量を分割して、一日を通して少しずつ投与しても良い。併用療法においては、肺疾患の性質および重篤性に依存して、様々な投与計画が有効であり得る。例えば、以下により詳細に述べるように、肺サーファクタントおよび浸透圧活性剤を一緒に投与してもよく、実際には同一の医薬組成物に含んでよい。あるいは、サーファクタントおよび浸透圧活性剤を連続して投与してもよい。別の実施態様において、投与計画には、肺サーファクタントおよび浸透圧活性剤の交互治療が含まれ得る。
肺疾患の効果的な治療のため、当業者は治療される患者に適した投与計画および投与量を勧めてよい。必要な期間、毎日1から10回、またはそれ以上、投与することが好ましいこともある。投与計画はまた、投与形態(例えば、乾燥エアロゾル、液滴または液体エアロゾル)、または患者個々の要求に応じて変えてもよい。医師または他の開業医により治療的または予防的効果を得るのに適当と見なされた期間、投与を続ける。例えば、1週間以上、1か月以上、または1年以上、患者の生涯を含めて、治療を続けることができる。
例示的な実施態様において、ルシナクタント(KL4ペプチドを含有)と同様の剤形を有する合成肺サーファクタントが用いられ、必要に応じて、例えばリン脂質の含量および割合、出発物質の希釈度などを調節することによりエアロゾル化に適合させる。KL4サーファクタントは、約5から30 mg/mlの用量でエアロゾル化される場合、好ましくは、上記のとおり効率的な薬剤-ネブライザーシステムから投与される。例えば、20 mg/mlのルシナクタントを5〜7 ml、振動メッシュ式(vibrating mesh)ネブライザー(エフロー、アエロネブ)を介して毎日3回送達し得る。あるいは、20 mg/mlのルシナクタントを3 ml、アキタII吸入システム(Activaero GmbH, Wohraer Str. 37 D-35285 Gemunden/Wohra, ドイツ)を用いて毎日3回送達し得る。
上述のいずれの投与計画においても、熟練した臨床医は、治療期間(例えば、7、14、21、28日)の後、気道開存性、肺機能の改善などの臨床的指標(例えば、FEV1 および他の一般的な検査、粘液線毛クリアランスおよび健康に関連した生活の質(HRQOL;例えば、Revicki DA, et al., Pharmacoeconomics. 1992 Jun;1(6):394-408を参照)を診断して、治療効果を判断することができるだろう。
医薬組成物:
本発明の別の態様は、浸透圧活性剤および少なくとも一つの肺サーファクタントを、過剰な粘液分泌または粘液クリアランス障害を特徴とする肺疾患の治療に有効な量で含有する組成物を特徴とする。これらの医薬組成物は、個々の成分が化学的、物理的または生物学的に互いに不適合でない限り、上記の肺サーファクタントおよび浸透圧活性剤のいずれの組み合わせを含んでもよい。該医薬組成物はまた、上記のものと一致するさらなる治療薬または他の成分を含んでもよい。個々の成分について上述したようにまた、医薬組成物は、液滴、液体エアロゾルまたは乾燥エアロゾルとして送達されるように処方され得る。
好ましい実施態様において、該肺サーファクタントは、ルシナクタントまたは、リン脂質とSP-Bの合成ポリペプチド模倣物(例えばKL4)の混合物を含有する同様の製剤であり、該浸透圧活性剤は塩(例えば塩化ナトリウム)である。ある実施態様において、組成物の浸透圧重量モル濃度は約220〜800 mOsm/kg、またはより具体的には約250〜300 mOsm/kgの範囲に及び得る。特定の状況、例えば嚢胞性線維症の治療において、浸透圧重量モル濃度は最大900〜1200またはそれ以上のmOsm/kgまでであり得る。従って、ある実施態様において、組成物の浸透圧重量モル濃度は、約200より大きいか、約210より大きいか、約220より大きいか、約230より大きいか、約240より大きいか、約250より大きいか、約260より大きいか、約270より大きいか、約280より大きいか、約290より大きいか、約300より大きいか、約310より大きいか、約320より大きいか、約330より大きいか、約340より大きいか、約350より大きいか、約360より大きいか、約370より大きいか、約380より大きいか、約390より大きいか、約400 mOsm/kgより大きい。ある実施態様において、組成物の浸透圧重量モル濃度は、最大300か、310か、320か、330か、340か、350か、360か、370か、380か、390か、400か、410か、420か、430か、440か、450か、460か、470か、480か、490か、500か、510か、520か、530か、540か、550か、560か、570か、580か、590か、600か、610か、620か、630か、640か、650か、660か、670か、680か、690か、700か、710か、720か、730か、740か、750か、760か、770か、780か、790か、800か、850か、900か、950か、1,000か、1,050か、1,100か、1,150か、または1,200 mOsm/kgであり得る。組成物の遊離アニオン含量は、約20〜200 mmol/lまたは、より具体的には、約20〜50 mmol/lの範囲であり得る。ある実施態様において、組成物の遊離アニオン含量は、少なくとも約20か、30か、40か、または50 mmol/lまでであり得る。他の実施態様において、組成物の遊離アニオン含量は、最大約40か、50か、60か、70か、80か、90か、100か、110か、120か、130か、140か、150か、160か、170か、180か、190か、または200 mmol/lまでであり得る。組成物のpHは通常、少なくとも約6.8である。該pHは、最大約7.4か、7.5か、7.6か、7.7か、7.8か、7.9か、または8.0までの範囲であり得る。特定の実施態様において、該pHは、約6.8〜8.0または、より具体的には、約6.8〜7.4の範囲であり得る。組成物中のサーファクタントの濃度は通常、少なくとも約5か、10か、15か、20か、25か、あるいは30 mg/mlである。組成物中のサーファクタントの濃度は、最大約10か、20か、30か、40か、50か、または60mg/mlまたはそれ以上までであり得る。ある実施態様において、組成物中のサーファクタントの濃度は、例えば、約5〜60 mg/ml、より具体的には約10〜30 mg/ml、さらに具体的には約15〜20 mg/ml(エアロゾル製剤にはこの後者の希釈が特に適している)の範囲であり得る。当然のことながら、医薬組成物のサーファクタント濃度および/または浸透圧重量モル濃度は、治療される肺疾患の性質および重篤性に応じて調節され得る。例えば、軽度の慢性気道炎の治療は、例えば300〜500 mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を有する組成物を必要とする一方、嚢胞性線維症の治療には、例えば400〜1200 mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を有する組成物が用いられるであろう。極端な高浸透圧療法に関連した副作用を減らすため、肺サーファクタントの濃度も増大する必要があり得る。気管支拡張剤、例えば吸入β-アゴニスト(例えば、アルブテロール)、による前処置もまた、エアロゾル化サーファクタントの最適な肺沈着を確実なものとするのに有用である。
肺サーファクタントおよび浸透圧活性剤を含有する医薬組成物は、標準的な製薬手法に従って調製される。例えば、製剤は薄膜エバポレーター技術(thin film evaporator technique)などの様々な方法により液体分散体(liquid dispersion)として、または凍結乾燥物として作製することができる。浸透圧剤を、製造中のサーファクタントに含み得る。あるいは、それを、例えば、液体分散体を希釈するか、または浸透圧剤を含有する溶液で凍結乾燥物を再構築するかのいずれかによって、使用時にサーファクタントと組み合わすことができる。さらに、乾燥浸透圧剤を、使用時に、液体サーファクタント(分散液または再構築した凍結乾燥物のいずれか)に添加することができる。
(実施例)
以下の実施例を提供し、本発明をより詳細に説明する。それらは例証であり、本発明を制限するものではない。
サーファクタント製剤の粘性に及ぼす高いモル濃度の塩の効果の測定
表 1に記載のとおり、濃度を高めたNaClを肺サーファクタント-含有溶液に添加した。これらの実施例に用いた緩衝剤はトリス(トリスヒドロキシメチルアミノエタン; トリサミン(Trisamine))であった。表中、「分散液」とは、i)液体分散体として調製された製剤のことをいい、「lyo」とは:凍結乾燥物として産生した後、使用時に再構築される製剤のことをいう。
Figure 2010503731
次いで、各製剤を、25℃でその見かけ粘度を評価した。サーファクタント製剤の見かけ粘度を、40 mm /1 ゜アクリルコーン(acrylic cone)を備えたTA AR1000 Rheometer (TA Instruments, New Castle, Del., USA)を用いて、25℃以上で測定した。サーファクタント製剤を冷蔵庫から取り出し、30分間、室温で平衡化した。およそ350 μlの無希釈のサーファクタントを血流計にのせ、設定温度で熱平衡化した。経時的剪断速度(0から200秒-1)における直線的増加、続く6分の総実行時間にわたる剪断速度(200から0秒-1)における直線的減少によるステップフロー方法で、試料を分析した。増加および減少の間、157秒-1の剪断速度で測定された見かけ粘度の値を、平均化して記録した。各サーファクタント製剤を各温度で3回分析した。
粘度の測定結果を表2に示す。該結果は、試料の見かけ粘度においてNaCl濃度は識別可能な効果を示さないことを証明する。
Figure 2010503731
in vitroにおけるサーファクタント-塩製剤の活性の測定
各サーファクタント-塩溶液を、in vitroでの表面活性を決定するために評価した。試料を、pH 7.6の20 mMのトリス-Ac/130 mM NaClバッファーまたはマッチングバッファー: 0.13、0.5または1.0M NaClを含有する20 mMのトリス-Ac(pH 7.6)に希釈した。in vitro活性測定の結果を、表3(20 mM トリス-Ac/130 mM NaCl)および4(マッチングバッファー)に示す。0.13 NaClバッファーを用いて希釈した場合、試料のin vitro活性に及ぼすNaCl濃度の効果は観察されなかった。
Figure 2010503731
Figure 2010503731
サーファクタント-塩製剤のエアロゾル出力速度の測定
各サーファクタント-塩溶液を、そのエアロゾル出力速度を決定するために評価した。 エアロゾル出力速度を、アエロネブプロ振動メッシュネブライザーおよびパリLCスタージェット式ネブライザーを用いて測定した。試料を、各ネブライザーを用いて3回行った。アエロネブプロネブライザーの結果を図1、およびパリLCスターネブライザーの結果を図2に示す。
エアロゾル出力速度を、10 mg/ml、20 mg/mlおよび30 mg/mlで測定した。エアロゾル出力速度は10 mg/ml試料が最大で、20 mg/ml試料で観測された出力速度は10mg/ml試料に比べてわずかに減少し、30 mg/ml試料で観測された出力速度は10 mg/mlおよび20 mg/ml試料に比べてさらに減少していた(図1)。エアロゾル出力速度のわずかな減少が、10 mg/mlおよび20 mg/ml試料において、増加させた塩濃度で観察された (図1)。対照的に、30 mg/ml試料は、塩濃度の増加に伴って比較的定常的なエアロゾル出力速度を示した(図1)。
パリLCスターネブライザーを用いて観察された出力速度は、アエロネブネブライザーを用いて観察された速度よりも全体的に、とりわけ10 mg/mlおよび20 mg/ml試料において小さかった。試験した全ての塩濃度において、10 mg/ml試料の出力速度は20 mg/mlおよび30 mg/ml試料よりも大きく、20 mg/mlおよび30 mg/ml試料はほぼ同一の出力速度が観察された(図2)。出力速度に及ぼすNaCl濃度の増加の有意な効果はいずれの試料においても認められなかった(図2)。エフロー装置(Pari)はアエロネブプロと同様の技術を用いており、エフロー装置を用いた出力速度は同程度かまたはわずかに高い。
高浸透圧剤と肺サーファクタントの同時投与の臨床的有効性の評価
この机上の実施例は、上記の試験により同定された高浸透圧剤およびサーファクタントの組み合わせ候補を、肺疾患の患者におけるそれらの有効性について評価し得る方法について説明する。
本発明の化合物および肺疾患の治療方法の安全性および有効性を臨床的に評価するために、以下の方法を用いる。試験は、二重盲検、多重-解析(location)、ランダム化、媒体-制御、並行群評価(parallel group evaluation)で構築され、2から12週間にわたって実施される。該研究は異なる高浸透圧剤-サーファクタント組み合わせをプラセボと比較する。
研究に加えるための選択において、被験者を以下のスケジュールで評価する:FEV1を週1回、粘液線毛クリアランスおよび生活の質を研究の開始時と終了時に測定する。
被験者を以下の群の一つにランダムに割り振る:(a)高浸透圧剤とサーファクタント;(b) プラセボ(0.9%等張生理食塩水中)。個々を、毎日3回、3 mlの20 mg/ml KL4サーファクタントをAkita 2 エアロゾル発生器により送達させることで、4週間治療する。膜装置は超音波処理により毎日清浄し、ハンドセットは毎週交換する。
該研究は、以下の有効な変数:(a)肺機能の維持、すなわち、経時での1秒の強制呼気量(FEV1); (b)強制肺活量(FVC); (c)粘液クリアランス速度; (d)全肺気量に対する残気量の比率(RV:TLC); (d)胸部X線スコア; (e)有効な生活の質の測定(CFQoL); (f)気道閉塞の発生または低減、を評価する。
本発明は上記に記載および例示した実施態様に限定されないが、添付の特許請求の範囲内で変形および変更することができる。

Claims (27)

  1. 過剰な粘液分泌、粘液クリアランス障害または炎症性肺疾患を特徴とする肺疾患を有する患者における粘液クリアランスを促進するための方法であって、患者の粘液クリアランスを促進するのに有効な量の少なくとも1つの肺サーファクタントを患者に投与することを含む、該方法。
  2. 肺疾患が、嚢胞性線維症、急性または慢性気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、原発性または続発性線毛機能不全、COPD、喘息、肺炎、または副鼻腔炎である、請求項1に記載の方法。
  3. 該肺サーファクタントが、SP-Bポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは少なくとも10アミノ酸残基であって約60以下のアミノ酸残基を含むポリペプチドと混合された、1以上の医薬的に許容されるリン脂質を含む、合成肺サーファクタントであって、該ポリペプチドは、式:
    (Za Ub)c Zd、
    (式中、
    Zは、RおよびKからなる群から独立して選択される親水性のアミノ酸残基であり;
    Uは、LおよびCからなる群から独立して選択される疎水性のアミノ酸残基であり;
    aは、1または2であり;
    bは、約3から約8の平均値を有し;
    cは、1から10であり;および
    dは、0から2である)
    で示される、交互の疎水性および親水性のアミノ酸残基領域を有する配列を含む、
    請求項1に記載の方法。
  4. 該肺サーファクタントを液滴で投与する、請求項1に記載の方法。
  5. 肺サーファクタントを液体エアロゾルまたは乾燥エアロゾルで投与する、請求項1に記載の方法。
  6. 患者における気道の開存性を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて改善する、請求項1に記載の方法。
  7. 患者における肺炎症を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて低減する、請求項1に記載の方法。
  8. 患者における気道閉塞を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて低減する、請求項1に記載の方法。
  9. 肺機能を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて維持または高める、請求項1に記載の方法。
  10. 生活の質を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて改善する、請求項1に記載の方法。
  11. さらに浸透圧活性剤を該患者に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
  12. 該肺サーファクタントを浸透圧活性剤と同時または連続して投与する、請求項11に記載の方法。
  13. 浸透圧活性剤が医薬的に許容される糖、糖アルコールまたは塩である、請求項11に記載の方法。
  14. 浸透圧活性剤がNaClであり、生理食塩水として処方される、請求項13に記載の方法。
  15. 該生理食塩水が約0.13から約1.2 Osmの塩化ナトリウムを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 患者における気道の開存性を、浸透圧活性剤のみにより処置された患者と比べて改善する、請求項11に記載の方法。
  17. 患者における肺炎症を、浸透圧活性剤のみにより処置された患者と比べて低減する、請求項11に記載の方法。
  18. 患者における気道閉塞を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて低減する、請求項11に記載の方法。
  19. 肺機能を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて維持または高める、請求項11に記載の方法。
  20. 生活の質を、肺サーファクタントを投与されていない患者と比べて向上させる、請求項11に記載の方法。
  21. 肺サーファクタントおよび浸透圧活性剤を含有する、粘液クリアランスを促進するための医薬組成物。
  22. 該浸透圧活性剤が糖、糖アルコールまたは塩であり、該肺サーファクタントがSP-Bポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは少なくとも10のアミノ酸残基であって約60以下のアミノ酸残基を含むポリペプチドと混合された、1以上の医薬的に許容されるリン脂質を含む、合成肺サーファクタントであって、該ポリペプチドは式:
    (Za Ub)c Zd、
    (式中、
    Zは、RおよびKからなる群から独立して選択される親水性のアミノ酸残基であり;
    Uは、LおよびCからなる群から独立して選択される疎水性のアミノ酸残基であり;
    aは、1または2であり;
    bは、約3から約8の平均値を有し;
    cは、1から10であり;および
    dは、0から2である)
    で示される、交互の疎水性および親水性のアミノ酸残基領域を有する配列を含む、
    請求項21に記載の組成物。
  23. 浸透圧活性剤が塩である、請求項21に記載の組成物。
  24. 浸透圧重量モル濃度が約220〜1200 mOsm/kg、遊離アニオン濃度が約20〜200 mmol/l、およびpHが約6.8から8.0である、請求項21に記載の組成物。
  25. 該塩がNaClであり、該肺サーファクタントが1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG)、パルミチン酸(PA)、およびKLLLLKLLLLKLLLLKLLLLK(KL4, 配列番号1)の配列を有するペプチドを含む、請求項23に記載の組成物。
  26. エアロゾルデリバリー用に処方された、請求項21に記載の組成物。
  27. 1日あたりの総リン脂質相当量の約20から200 mg肺用量を送達するように処方された、請求項25に記載の組成物。
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