JP2010502191A - 新規クロストリジウム種の単離および性質決定 - Google Patents

新規クロストリジウム種の単離および性質決定 Download PDF

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Abstract

新規クロストリジウム細菌種(クロストリジウム・ラグスダレイ、ATCC BAA−622および/またはPTA−7826、「P11」)を提供する。P11は、廃ガスから、生物燃料として有用な産物を合成可能である。特に、P11は、COをエタノールに変換可能である。したがって、この新規細菌は、廃ガス(例えば合成ガスおよび製油所廃棄物)を有用な産物に変換する。P11はまた、アセテートの産生も触媒する。

Description

発明の分野
本発明は、一般的に、廃棄物から生物燃料を産生可能な細菌に関する。特に、本発明は、新規クロストリジウム種(ATCC寄託番号第BAA−622号および/または第PTA−7826号の同定特徴を有するクロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei))、ならびに該クロストリジウム種を用いて、COからエタノールおよび他の有用な産物を合成する方法を提供する。
発明の背景
米国政府が、石油輸入に対する国家の依存状態を軽減するために、再生可能な資源を開発する方法を発見する、より多くの構想に資金供給を始めたのは、1970年代の石油危機になってからのことだった(Klass、1998)。また、米国政府が、ガソリンに混合するために、生物に基づく溶媒産生に新たに関心を持ったのも、このときだった。特に関心対象であり、そしてさらに近年、より関心対象となっているものの1つがバイオエタノール(バイオマス由来のエタノール)である。
現在、バイオエタノール産生の主な様式は、直接発酵を通じたものであり、これは米国において、エタノール産出の90%を占める(Licht、2001)。直接発酵は、酵母または細菌などの糖分解性微生物が糖をエタノールに変換するプロセスである。これらの糖は、単糖(すなわちグルコース)であってもまたは複合糖類(すなわちデンプン、セルロース、ヘミセルロース)であってもよい。コーンスターチは、今日、エタノール産生プラントにおいて用いられる主な基質である。コーンスターチ以外に、リグノセルロース系バイオマス(すなわち、草、小さい樹木、紙くず、おがくず)もまた、このプロセスのための基質として研究されてきている。リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、およびリグニンで構成される。リグノセルロース系バイオマスの直接発酵に伴う問題は、微生物利用の前に、バイオマスを個々の構成要素に分解するため、付随する前処理プロセスが必要であることである。これは、材料、プラント設計、廃棄物管理などの領域において、より多くのコストを付加する。
燃料エタノールを産生するのに利用可能な資源から最大限を得るために、別の方法が調べられてきている。これらの代替法の1つが間接発酵である。間接発酵は、リグノセルロース系バイオマスを熱分解して(燃やしてガスを産生して)、そして産生されたガスを細菌によってエタノールに変換するプロセスである。産生されたガスは、一般的に合成ガスと称される。熱分解されたバイオマスまたは石炭の産物である合成ガス(CO−H−CO)は、バイオマスから燃料アルコールへの間接発酵における潜在的な役割に関して、認識されてきたし、そして現在も認識されている(Zeikus、1980、Bredwellら、1980)。
酢酸生成細菌などの嫌気性微生物は、合成ガスを有用な産物、特にエタノールなどの液体バイオ燃料に変換する多様な経路を提供する。こうした細菌は、化学的プロセスを用いて達成されうるよりも、より高い特異性、より高い収量およびより低いエネルギーコストで、合成ガスの変換を触媒する(Vegaら、1990; Phillipsら、1994)。廃ガスおよび他の基質から生物燃料を産生可能ないくつかの微生物が同定されてきている:
合成ガスから液体燃料を産生する際に使用するための3つの株の酢酸生成菌(Drake、1994)が記載されてきている:ブチリバクテリウム・メチロトロフィクム(Butyribacterium methylotrophicum)(Grethleinら、1990; Jainら、1994b);クロストリジウム・オートエタノゲヌム(Clostridium autoethanogenum)(Abriniら、1994);クロストリジウム・リュングダーリー(Clostridium ljungdahlii)(Aroraら、1995; Barikら、1988; Barikら、1990;およびTannerら、1993)。これらのうち、クロストリジウム・リュングダーリーおよびクロストリジウム・オートエタノゲヌムは、COをエタノールに変換することが知られる。
Gaddyらに対する米国特許5,173,429は、合成ガス中のCOおよびHOおよび/またはCOおよびHからエタノールおよびアセテートを産生する嫌気性微生物、クロストリジウム・リュングダーリー、ATCC第49587号を開示する。
Jainらに対する米国特許5,192,673は、クロストリジウム・アセトビチリクム(Clostridium acetobytylicum)の突然変異体株、および該株を用いてブタノールを作製するためのプロセスを開示する。
Gaddyらに対する米国特許5,593,886は、クロストリジウム・リュングダーリー、ATCC第55380号を開示する。この微生物は、基質として廃ガス(例えばカーボンブラック廃ガス)を用いて、アセテートおよびエタノールを嫌気的に産生可能である。
Gaddyらに対する米国特許5,807,722は、クロストリジウム・リュングダーリー、ATCC第55380号などの嫌気性細菌を用いて、廃ガスを、有機酸およびアルコールなどの有用な産物に変換するための方法および装置を開示する
Gaddyらに対する米国特許6,136,577は、クロストリジウム・リュングダーリー、ATCC第55988号および第55989号などの嫌気性細菌を用いて、廃ガスを、有機酸およびアルコール(特にエタノール)などの有用な産物に変換するための方法および装置を開示する。
Gaddyらに対する米国特許6,136,577は、クロストリジウム・リュングダーリーの嫌気性株を用いて、廃ガスを、有機酸およびアルコール(特に酢酸)などの有用な産物に変換するための方法および装置を開示する。
Gaddyらに対する米国特許6,753,170は、酢酸の産生のための嫌気性微生物発酵プロセスを開示する。
合成ガスから液体燃料を産生する際に使用するための酢酸生成菌の他の株もまた、記載されてきている:例えば、ブチリバクテリウム・メチロトロフィクム(Grethleinら, 1990, Appl. Biochem. Biotech. 24/24:875−884);およびクロストリジウム・オートエタノゲヌム(Abriniら, 1994, Arch. Microbiol. 161:345−351)。
発酵を介して生物燃料などの有用な産物を産生可能なさらなる微生物を発見し、そして開発する、継続中の必要性が依然としてある。特に、頑強で、培養および維持が比較的容易であり、そして生物燃料などの関心対象の産物を優れた収量で提供する微生物を提供することが好適であろう。
参考文献、これらの各々は、本明細書に援用される。
Figure 2010502191
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発明の概要
本発明は、比較的一般的な基質から、価値がある有機流体を高収量で産生可能な、新規の生物学的に純粋な嫌気性細菌(称号BAA−622のもとに、2002年10月、バージニア州マナサスのAmerican Type Culture Collectionに寄託され、そして再び、称号PTA−7826のもとに2006年6月14日に寄託された、「P11」とも称される、クロストリジウム・ラグスダレイ)を提供する。特に、該微生物は、COを発酵させることによって、エタノールおよび酢酸を産生可能である。COの1つの一般的な供給源は、石炭ガス化のガス性副産物である、合成ガスである。したがって、該微生物は、そうでなければ廃棄物である物質を、価値ある産物に変換可能であり、そのうちいくつかが生物燃料である。合成ガス、およびしたがってCOはまた、容易に入手可能な低コスト農業原料から、熱分解によって産生可能であり、エネルギー産生の経済的および環境的懸念の両方に取り組む手段を提供する。したがって、本発明の細菌は、ガス化/発酵経路を介して、バイオマスの生物燃料への間接変換に関与する。
クロストリジウム・ラグスダレイの培養物は、非常に安定であり、そして活性を保持しながら、1年以上にわたって、室温または38℃のインキュベーター中で保管可能である。
微生物、クロストリジウム・ラグスダレイの生物学的に純粋な培養物を提供することが本発明の目的である。該微生物は、ATCC第BAA−622号および/または第PTA−7826号の同定特徴のすべてを有する。さらに、本発明はエタノールを産生するための組成物を提供する。該組成物は、1)COの供給源、および2)クロストリジウム・ラグスダレイを含む。本発明の1つの態様において、COの供給源は合成ガスである。
さらに別の態様において、本発明は、エタノールを産生する方法を提供する。該方法は、COの供給源およびクロストリジウム・ラグスダレイを、前記クロストリジウム・ラグスダレイがCOをエタノールに変換するのを可能にする条件下で合わせる工程を含む。
本発明は、1)COの供給源をクロストリジウム・ラグスダレイと合わせる容器;および2)クロストリジウム・ラグスダレイが、COをエタノールに変換することを可能にする、前記容器中の条件を制御する制御装置を含む、エタノールを産生するための系をさらに提供する。本発明の1つの態様において、系にはまた、1)合成ガスを産生するための第二の容器;および2)容器に合成ガスを輸送するための輸送装置、ここで、該合成ガスはCOの供給源として働く、も含まれる。こうした系は図5に例示され、この図は、場合による第二の容器200および輸送装置201とともに、容器100および制御装置101を示す。
株P11のネガティブ染色された細胞の透過型電子顕微鏡写真。バー、1μm。 フルクトースを基質とした場合の株P11の最適pHの決定。 フルクトースを基質とした場合の株P11の最適温度の決定。 16S rDNA遺伝子配列類似性に基づき、そして近隣結合法を用いて構築した系統樹、C.ラグスダレイ、ATCC BAA−622および/またはPTA−7826、ならびにクロストリジウム属の代表的な種の位置を示す。16s rRNA配列のGenBank寄託番号を株番号の次に示す。 P11を用いて、合成ガスからエタノールを産生するための系の概略図。
発明の好ましい態様の詳細な説明
本発明は、嫌気性条件下で、COおよび他の容易に入手可能な基質から、価値ある産物を高収量で産生可能な、新規酢酸生成細菌の発見に基づく。特に、該微生物は、COを発酵させることによって、エタノール、ブタノールおよびアセテートなどの価値ある液体産物を産生し、エタノールが主な産物である。「発酵」によって、我々は、基質が電子の供給源および電子シンク(基質の一部の酸化および基質の一部の還元)の両方として働き、これをアルコールおよび酸などの産物の産生に使用可能である、生理学的プロセスを意味する。その結果、この生物は、そうでなければ廃ガスになるであろうものを、生物燃料などの有用な産物に変換することが可能である。本発明の嫌気性微生物は、本明細書において、「P11」と称される、ATCC寄託物BAA−622および/またはPTA−7826に示される精製培養物の特徴を示す、新規クロストリジウム種である。
P11の形態学的および生化学的特性が解析されてきており、そしてこれを本明細書において、以下の実施例セクションに記載する。P11の特定の特性は、他のクロストリジウム属種に類似であるが、P11は、この種がこの属の新規の種であることを示す、ユニークな特徴を所持する。P11は、クロストリジウム・ラグスダレイと命名されており、そしてこの種の代表と考えられる。
本発明の生物学的に純粋な培養物中の該細菌は、嫌気性条件下で、以下の反応にしたがって、基質CO+HOおよび/またはH+COからエタノールを産生する能力を有する:
エタノール合成
6CO+3HO→COH+4CO (1)
6H2+2CO→COH+3HO (2)
これらの基質の供給源に関して、当業者は、CO、COおよびHの多くの供給源が存在することを認識するであろう。例えば、基質の好ましい供給源は、合成ガス、製油所廃ガス、酵母発酵およびいくつかのクロストリジウム発酵によって産生されるガス(ある程度のHを含有する)、ガス化セルロース系物質、石炭ガス化などの「廃」ガスである。あるいは、こうしたガス性基質は、必ずしも、他のプロセスの副産物として産生されず、P11を利用する本発明の発酵反応で使用するために、特に産生されてもよい。当業者は、微生物が発酵反応を実行するのに適した条件下で、基質ガスの十分な量を細菌に提供可能である限り、本発明の実施に、基質ガスの任意の供給源を用いてもよいことを認識するであろう。反応式(1)によって示される反応のHOの供給源は、典型的には、生物が培養されている水性培地である。
本発明の好ましい態様において、CO、COおよびHの供給源は合成ガスである。基質として使用するための合成ガスは、例えば石炭ガス化のガス性副産物として得られうる。したがって、細菌は、そうでなければ廃棄物となる物質を、価値ある生物燃料に変換する。あるいは、特に細菌発酵の目的のために、容易に入手可能な低コスト農業原料のガス化によって、合成ガスを産生して、それによってバイオマスの燃料アルコールへの間接発酵のための経路を提供してもよい。大部分の種類の植物がこの目的のために使用可能であるため、合成ガスに変換可能な原料には多くの例がある。好ましい原料には、限定されるわけではないが、スイッチグラスなどの多年草、トウモロコシ茎葉などの作物残渣、おがくずなどの加工廃棄物などが含まれる。当業者は、こうした出発物質からの合成ガスの生成を熟知している。一般的に、合成ガスは、主に、熱分解、部分的酸化、および水蒸気改質によって、乾燥バイオマスから、ガス化装置中で生成され、主な産物は、CO、HおよびCOである。(用語「ガス化」および「熱分解」は、類似のプロセスを指す。どちらのプロセスもバイオマスが曝露される酸素の量を限定する。ガス化は、少量の酸素を許容し(これはまた、「部分的酸化」とも称されることも可能である)、そして熱分解はより多くの酸素を許容する。用語「ガス化」は、時に、ガス化および熱分解の両方を含むように用いられる。)典型的には、産物ガスの一部をリサイクルして、産物収量を最適にし、残渣タール形成を最小限にする。石灰および/またはドロマイトを用いて、合成ガス中の望ましくないタールおよびコークスのCOへのクラッキングを実行してもよい。これらのプロセスは、例えば、Reed, 1981(Reed, T.B., 1981, Biomass gasification: principles and technology, Noves Data Corporation, ニュージャージー州パークリッジ)に詳細に記載される。
さらに、基質ガス供給源の組み合わせを利用してもよい。例えば、CO、COおよびHの主な供給源は合成ガスであってもよいが、これに、他の供給源から、例えば多様な商業的供給源から、ガスを補充してもよい。例えば、上記の反応式(1)にしたがった反応は、4分子のCOを生成し、そして反応式(2)にしたがった反応は、6分子のH2を利用するが、COを2分子しか利用しない。Hが十分でない限り、CO増加が生じうる。しかし、培地にさらにH2を補充すると、CO利用の増加が生じ、そしてその結果、さらにより多くのエタノールの産生が生じるであろう。
本発明の細菌によるCOの発酵によって生じる主な産物はエタノールである。しかし、アセテートもまた産生可能である。アセテート産生は、以下の反応を介して起こりうる:
アセテート合成
4CO+2HO→CHCOOH+2CO (3)
4H+2CO→CHCOOH+2HO (4)
本発明の生物は、嫌気性条件下で培養されなければならない。「嫌気性条件」によって、我々は、培地に溶解した酸素が欠如していることを意味する。
一般的に、本発明の酢酸生成菌を培養するための培地は、ATCC培地1754(R.S. Tannerによって開発)などの液体培地である。しかし、当業者は、別の培地、例えば、初期pH 6で、H2:COまたはCO:CO雰囲気下のATCC培地1045を利用してもよいことを認識するであろう。さらに、任意のいくつかの目的のため、多様な培地補充物、例えば、緩衝剤、金属、ビタミン、塩などを添加してもよい。特に、当業者は、関心対象の産物の収量の増加または最適化を生じる、栄養素操作および適応などの技術を熟知している。例えば、「非増殖」条件下(すなわち細菌増殖および複製を支持しない条件下)で微生物を培養すると、発酵産物のより高い産生が生じうる。これはおそらく、非増殖条件下では、細菌の資源が、生殖に費やされず、そしてしたがって、他の合成活性に自由に使用可能であるためである。非増殖条件の例には、例えば、培養を最適でない温度またはpHに維持すること、栄養素および炭素供給源を限定することなどが含まれる。一般的に、非増殖条件は、培養中で、細菌が望ましい密度に到達した後に実行されるであろう。また、培地を最適化することによって、他のものよりも1つの産物を支持する、例えばアセテートよりもエタノールの産生を支持することが可能である。例えば、標準的な培地中のものに比較して鉄濃度を10倍増加させると、酢酸の産生が減少する一方、産生されるエタノール濃度は倍になる。当業者は、所望の産物の産生を最適化するための方法を熟知しており、そしてP11細菌を用いたこうした最適化法はすべて、本発明に含まれると意図される。例えば、こうした技術のための指針を提供する、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)を用いて実行された研究を参照されたい(例えば、Bahlら, 1986, Appl Environ. Microbiol. 52:169−172;ならびにJainらに対する米国特許5,192,673およびGaddyらに対する米国特許5,173,429を参照されたい、これら両方の完全な内容が、本明細書に援用される)。
特に:Tanner, 1997, Manual Environ. Microbiol., p.52−60, ASM Press; Tanner, 2002, Manual Environ. Microbiol. 第2版, p.62−70; Wiegelら, 2005, An Introduction to the Family Clostridiaceae, The Prokaryotes, Release 3.20; Tanner, 2006, Manual Environ. Microbiol. 第3版, ASM Pressによる概説に記載されるような、Balch技術(BalchおよびWolfe, 1976, Appl. Environ. Microbiol. 32:781−791; Balchら, 1979, Microbiol. Rev. 43:260−296)を用いて、クロストリジウム・ラグスダレイを培養してもよい。これには、培養物質を調製するための嫌気性チャンバー、および密封された試験管または容器中で、どのようなものであれ望ましいガス相を確立するガス交換マニホールドの補助が伴う。酸性pHの使用など、溶媒産生酢酸生成菌の培養に関する、より具体的な詳細は、Tannerら, 1993, Int. J. Syst. Bacteriol. 43:232−236およびLiouら, 2005, Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 55:2085−2091に見られる。エタノール産生を増進する方法には、すべての培地構成要素(アンモニウム、ホスフェートおよび微量金属など)の最適化、培養pHの調整、突然変異誘発およびクローンスクリーニング等が含まれる。
本発明の生物によるCOの発酵は、さらなる修飾を加えまたは加えず、当業者に知られる任意のいくつかの種類の装置において、あるいは現在開発中の他のスタイルの発酵装置において、実行可能である。例には、限定されるわけではないが、気泡塔反応装置、2段階バイオリアクター、トリクルベッド反応装置、膜反応装置、固定細胞を含有する充填層反応装置などが含まれる。こうした装置の主な必要条件には、無菌性、嫌気性条件、ならびに適切な条件または温度、圧力、およびpHが維持されること;ならびに十分量の基質が培養に供給されること;産物を容易に回収可能であること;などが含まれる。反応装置は、例えば、伝統的な攪拌タンク反応装置、固定されたまたは懸濁された細胞を含むカラム発酵装置、連続フロー型反応装置、高圧反応装置、細胞リサイクルを伴う懸濁細胞反応装置、および上に列挙するような他の例などであってもよい。さらに、反応装置を、上述の任意の反応装置を含有する、連続および/または平行反応装置系に配置してもよい。例えば、1つのセットの条件下で細胞を増殖させ、そして別のセットの条件下で、増殖を最小限にしてエタノール(または他の産物)を生成するのに、多数の反応装置が有用であることが可能である。
一般的に、発酵は、培地中で、所望のレベルの産物が産生されるまで、例えば、所望の量のエタノールが産生されるまで、進行されるであろう。典型的には、このレベルのエタノールは、少なくとも約1グラム/培地1リットル〜約50グラム/リットルの範囲内であり、少なくとも約30グラム/リットル(またはそれ以上)のレベルが好ましい。しかし、約1〜10、または約10〜20、または約20〜30、または約30〜40、または約40〜50グラム/リットルを産生するように最適化される細胞または細胞培養系もまた、意図される。P11は、少なくとも60g/Lのエタノール濃度中で生存可能のままであり、そして増殖するであろう。あるいは、ある一定の産生率を達成したとき、例えば、所望の産物の産生速度が、例えば細菌廃棄物の増加、基質入手可能性の減少、産物によるフィードバック阻害、生存細菌数の減少、または当業者に知られるいくつかの他の何らかの理由によって、減少した際に、産生を停止してもよい。さらに、任意の液体産物を含めて、使用した培地を同時に除去しつつ、新鮮な培地の連続補充を可能にする連続培養技術が存在する(すなわちケモスタット様式)。
本発明の細菌によって産生される産物を培養物から除去して、そして当業者に知られるいくつかの任意の方法によって精製してもよい。例えば、エタノールを除去して、そして例えば溶媒抽出;共沸混合物への蒸留、その後、共沸蒸留;分子ふるい脱水;パーベーパレーション;またはフロースルー・ゼオライト・チューブによって、さらにプロセシングしてもよい。当業者は、エタノール脱水後の蒸留のための、産業における2つの主な技術が、共沸蒸溜および分子ふるい脱水であることを認識するであろう(例えばKohl, S. ”Ethanol 101−7: Dehydration” in Ethanol Today, March 2004: 40−41を参照されたい)。さらに、産物の数に応じて、いくつかの純粋な産物を得るために、いくつかの分離技術を使用する必要がありうる。同様に、アセテートを除去して、そして類似のプロセスによって、さらにプロセシングしてもよい。
本発明のいくつかの態様において、エタノール(または関心対象の他の産物)を産生するため、P11を純粋な培養物として培養する。しかし、他の態様において、P11を他の生物と一緒に培養してもよい。
実施例
実施例1
合成ガスを効率的に代謝し、そしてエタノールを産生することが可能な新規微生物触媒を発見する取り組みの中で、新規の中温性で一酸化炭素を利用する酢酸生成菌であるクロストリジウム・ラグスダレイを単離し、そして本明細書において以下に記載する。既知のクロストリジウム・リュンダーリー(Clostridium ljundahlii)株PETCに対する比較によって、該新規生物の性質決定を部分的に行った。
材料および方法
生物。クロストリジウム・リュンダーリー株PETCを、Ralph S. Tanner博士によって維持されたフルクトース・ストック培養物から得て、そして参照対象株として用いた。先に記載された方法(Bryant、1972)によって、CO:N:CO(75:15:10)の雰囲気および6.0の初期pH下で、オクラホマ大学のDuck Pondの新鮮な水沈降物を接種した嫌気性濃縮物から、株P11を得た。本明細書に記載する一酸化炭素酸化クロストリジウムは、クロストリジウム・ラグスダレイと命名された。この細菌は、株P11と称され、そして元来、American Type Culture Collectionに、株ATCC BAA−622として寄託され、そして後に、ATCC PTA−7826として再び寄託された。
培地。この研究で用いた培地は、Balch & Wolfe(1976)によって記載される厳密な嫌気的技術を用いて調製され、そしてTanner(2002)によって記載された無機塩、微量金属およびビタミン溶液を含有し、酵母抽出物(1g/L、Difco)が補充された(表1〜4)。
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NaHCOが欠失しており、そして初期pHが6.3であることを除いて、有機およびガス性基質上の増殖を、先に記載するように行った(Tannerら、1993)。レザズリン(1mg/L)を酸化還元指示薬として用いた。コロニー形態描写のため、2%の濃度で、培地に精製アガーを添加した(表5)。熱不安定性基質をフィルター滅菌し(オートクレーブはしない)、そして接種前に、無菌ストック溶液から、最終濃度5g/Lまで添加した。基質としてフルクトースを含有する培地中で、最適温度およびpH(初期pH)を決定した。最適pHを決定するため、培地を、(1.0g/L)のHOMOPIPES(ホモピペラジン−N,N’−ビス−2−[エタンスルホン酸](Research Organics、オハイオ州クリーブランド)、MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)、またはTES(N−トリス[ヒドロキシメチル]メチル−2−アミノエタンスルホン酸))で緩衝した。増殖を開始するのに、フルクトースで増殖させた細胞の0.1ml(〜2%)接種物を用いた。これらの実験に用いたすべての培地構成要素は、別に記載しない限り、Sigma(Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)から得られた。
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生化学的反応。Smibert & Krieg(1994)によって記載される方法により、エスクリンおよびデンプン加水分解、ゼラチナーゼ産生、ならびにインドール産生に関する生化学的アッセイを実行した。CHEMetricsテストキットおよび520nmに設定されたspectronic 20Dを用いて、硝酸還元を測定した。フルクトースを補充した培地中で、中間期から後期指数増殖期に増殖した細胞をアッセイに用いた。
発酵バランス。フルクトース上での増殖に関して、発酵バランスを決定した。フェノール−硫酸・炭水化物アッセイを用いてフルクトースを測定した(Duboisら、1956)。80/120 Carbopak B−DA/4%カーボワックス樹脂20M(Supelco、ペンシルバニア州ベルフォンテ)を充填した2mスチールカラムを装備したVarian 3400上、炎イオン化検出装置(FID)を装備したガスクロマトグラフ(GC)によって、アセテートおよびエタノールを同時に測定した。カラム、インジェクター、および検出装置温度は、それぞれ、155、200、および200℃であった。ヘリウムがキャリアーガスであり、そして流速を30ml min−1に設定した。熱伝導度検出装置(TCD)(Varian、テキサス州シュガーランド)およびPorapak Super Q 2mスチールカラム(Alltech、ミシガン州ディアフィールド)を装備したガスクロマトグラフを用いて、COを測定した。カラム温度を60℃に設定し、流速は15ml min−1であり、そしてキャリアーガスとしてヘリウムを用いた。
電子および位相差顕微鏡法。基質として0.5%酵母抽出物上で増殖させた指数増殖期細胞を透過型電子顕微鏡法に用いた。カーボンでコーティングしたFormvarグリッド上に細胞をスプレッドし、1%グルタルアルデヒドで固定し、そして0.5%リンタングステン酸塩(phosphotunsgate)(pH 7.0)で染色した。JEOL JEM 2000 FX TEMを用いて細胞を調べ、そして写真撮影した。Olympus CH−2位相差顕微鏡を用いて細胞を観察した。
分析法。アルミニウム密封試験管中、600nm(Spectronic 20D; Milton Roy)で分光光度的に増殖を測定した(Balch & Wolfe、1976)。株P11が基質を利用可能であることを立証するため、複製試験管中で連続してトランスファーした後に、増殖が起こらなければならなかった。基質、マレートに関しては、25mM KHPO、pH 2.5および10%(v/v)メタノールの移動相を用いて、Alltech、Prevail有機酸カラム(4.6x150mm、5μm; Alltech、ミシガン州ディアフィールド)を用い、214nmに設定したUV検出装置を装備したHPLC(「高性能液体クロマトグラフィー」)によって、利用を分析した。
mol%G+C(グアニンに加えてシトシン)分析のためのDNAを、Marmur法の修飾法(Johnson、1994)にしたがって単離し、そしてリゾチーム、プロテイナーゼKおよびRNaseでの処理を含んだ。少なくとも6時間のリゾチーム処理が最も有効であることが見いだされた。HPLCによってG+C含量を測定した(Mesbahら、1989)。25mM KHPO、pH 2.5および4%(v/v)アセトニトリルの移動相、ならびに254nmに設定したUV検出装置とともに、Alltech、Prevail C18逆相カラム(4.6x250mm、5μm粒子サイズ; Alltech、イリノイ州ディアフィールド)を用いた。
BOX−PCRゲノムフィンガープリンティング。Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から得たBOXA1Rプライマー、およびVersalovicら(1994)のプロトコルを用いて、反復DNA PCRフィンガープリンティングを実行した。PCR混合物は、最終体積25μl中に、2.5μlの10X緩衝剤B(500mM KClおよび100mM Tris・HCl、Fisher Scientific)、2μl MgCl・6HO(25mM、Fisher Scientific)、0.25μl Taqポリメラーゼ(Fisher Scientific)、各0.5μlのデオキシヌクレオシド三リン酸(10mM、Promega、ウィスコンシン州マディソン)、1μlプライマー、および試料DNAを含有した。初期変性工程(94℃、4分間、1サイクル)、30の反応サイクル(94℃1分間、50℃1分間、72℃8分間)、および最終伸長工程(72℃8分間)のプロトコルを用いて、Robocycler Gradient 40 Temperature Cycler(Stratagene、テキサス州シーダークリーク)上で、PCR反応を実行した。100塩基対ラダー(Fisher Scientific)とともに、5%ポリアクリルアミド垂直ゲル上で、26℃および120mAmpで17時間、PCR産物(10μl)を泳動した。NucleoCam Digital Image Documentation System(Nucleo Tech Corp.、カリフォルニア州サンマテオ)を用いて、エチジウムブロミド染色ゲル画像を分析した。16S rDNA配列分析。Chandlerら(1997)に記載される方法にしたがって、配列分析を実行した。
DNAハイブリダイゼーション。先に記載された、Wayneら(1987)の方法を用いて、DSMZで、DNAハイブリダイゼーションアッセイを実行した。
ヌクレオチド配列分析。株P11 ATCC BAA−622の16s rDNA遺伝子配列のGenBank寄託番号は、AY1700378およびDQ20022である。
結果および考察
細胞形態。株P11の細胞はまれにしか運動性でなく、棒状であり、グラム陽性染色され、そして単独でまたは鎖状で存在した。細胞は、0.7〜0.8μm x 4〜5μmであり、そして周毛性に鞭毛が生えていた(図1を参照されたい)。胞子はまれにしか存在しないが、存在する場合、非膨張性であり、そして末端近傍(subterminal)から末端に位置した。コロニーは、栄養アガー上、円状に見え、透明で、そして平らであった。
生理学。クロストリジウム・ラグスダレイは、厳密に嫌気性であった。酵母抽出物は増殖を刺激したが、これが存在しない場合、長期の遅滞期後に、最低限の増殖が観察された。H/COまたはCO/COがあると独立栄養増殖が起こり、そして以下の基質があると、化学有機栄養増殖が観察された:ピルベート、D−トレオース、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース、スクロース、エタノール、1−プロパノール、カザミノ酸、グルタメート、セリン、コリン、およびアラニン(表6)。マレートまたはフォルメートは、5.0〜6.5のpH範囲で調べた場合であっても、初期には増殖を支持しなかった。しかし、試験したpH範囲内で、約30日間インキュベーションした後、C.リュングダーリーは、マレートを単独の炭素供給源として増殖可能であった。これは、この生物が、試験した条件下で、マレートへの適応を必要としうることを示す。グルコース上で増殖させた場合のC.リュングダーリーで、同様の必要条件が示されている。表6は、株P11およびクロストリジウム・リュングダーリー株PETCの間の比較、ならびに単独の炭素およびエネルギー供給源としての基質上での増殖を示す。
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株P11は、初期pH6.3で最適に増殖し;初期pH値が4.0〜8.5の間の値で増殖が起きた(図2)。初期pH 6.3で、緩衝されていない培地中で培養すると、最終pHは4.1と測定された。増殖に最適の温度は37℃であり(図3);P11が増殖する温度範囲は18〜37℃であった。
最適条件下で、フルクトースおよびCOとともに増殖させた際の株P11の倍加時間は、それぞれ、0.143h−1および0.175h−1であった。しかし、キシロースとともに増殖させた場合、倍加時間は有意に減少し(0.220h−1)、キシロースが株P11の好ましい炭素およびエネルギー供給源でありうることが示された。
株P11は、1mmolのフルクトースから2.35mmolの酢酸を産生し;それに加えて、最終産物として、0.63mmolのCOおよび0.5mmolのエタノールが産生された(表7)。他の酢酸生成生物、アセトバクテリウム・ウッディー(Acetobacterium woodii)、アセトバクテリウム・ウィエリンゲ(Acetobacterium wieringae)およびアセトバクテリウム・カルビノリクム(Acetobacterium carbinolicum)もまた、ヘキソースの発酵中にエタノールを産生することが観察されている(Buschhornら、1989)。アセテートは、H/CO上で増殖させた際、有意な量で形成される唯一の産物であり、これは、C.ラグスダレイが、おそらく、アセチル補酵素A(アセチル−Co−A)Wood/Ljungdahl経路(Drake 1994)を利用することを示す。
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BOX−PCRゲノムフィンガープリンティング。C.リュングダーリーおよび株P11由来のPCR産物のゲル電気泳動の結果を比較した(未提示)。どちらも、共通して、サイズがおよそ1,310塩基対のバンド、サイズがおよそ1,210塩基対のバンド、サイズがおよそ980塩基対のバンド、サイズがおよそ820塩基対のバンド、サイズがおよそ400塩基対のバンドを有した。C.リュングダーリーはまた、サイズが2,000塩基対、1,770塩基対、1,410塩基対、1,370塩基対、1,260塩基対、1,040塩基対、680塩基対、および360塩基対のPCR産物バンドを有した。株P11は、1,500塩基対のユニークなバンドを有した。
したがって、これらの2つのクロストリジウムは、この技術を用いると、異なっていることが容易に示された。ゲノムフィンガープリンティングは、DNA−DNAハイブリダイゼーションの代替法ではないが、この技術の使用は、近縁細菌株を区別しようと望む多くの研究室には価値あるツールとなりうる。
遺伝子分析。P11の16S rDNA遺伝子配列の系統分析によって、この生物が、クロストリジウム属のクラスターI(Collinsら、1994)、本質的にはJohnson & Francis(1975)のI群に属することが示された。このクラスターにおいて、株P11は、5つの他のクロストリジウム:C.リュングダーリー、C.チロブチリクム(C. tyrobutyricum)、C.マグヌム(C. magnum)、C.パステウリアヌム(C. pasteurianum)、およびC.スカトロゲネス(C. scatologenes)のユニット内に位置した。株P11の16S rDNA配列は、やはりCO上で増殖可能な酢酸生成菌である、クロストリジウム・リュングダーリーのもの、ATCC M59097(Tannerら、1993)と最も類似であった(99.9%)(図4)。
株P11およびC.リュングダーリー間の16S rDNA類似性が高いため、DNA−DNAハイブリダイゼーション研究を実行した。決定された値は57パーセントであり、株P11が新規の種であることが明らかに示された。DNAのmol%G+Cは29〜30%(n=5)であり、近縁クロストリジウム属種のものとやはり類似であった。
本実施例は、C.リュングダーリーおよび関連種に対する表現型上の相違、ならびに70%未満のDNA−DNA関連性を有する(Wayneら、1987)という明らかな基準の両方に基づいて、クロストリジウム・ラグスダレイ株P11が、別個の新規の種であることを示す。
実施例2
最も望ましい結果を得るために、固有の特性を変化させることなく、効果、および生物内に含有されることがすでに見出されている特定の特徴を改善するか、最大にするかまたは最小にする研究は、最適化と定義されうる。最適化研究は、増殖、ならびに所望の発酵産物の産生を改善する戦略を開発する際の非常に重要な要素である。本発明者らの場合、エタノールが所望の最終産物である。
材料および方法
細菌株および培地。研究を通じて、クロストリジウム株P11を用いた。一酸化炭素培地(COM)を用いて、培養物を培養し、そして維持した。増殖温度は37℃であった。COMは、最初にN/COで10psi(70kPa)に加圧され、そして次いで121℃で15分間オートクレーブされた、定義されていない緩衝培地である。該培地は、再蒸留水1リットルあたり:25mlのミネラル溶液(表1)、10mlの微量金属溶液(表2)、10mlのビタミン溶液(表3)、1.0gの酵母抽出物、10gのMES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)、0.001gのレザズリン、4.0gのシステイン・HCl、および4.0のNaS・9HOを含有し;この培地の初期pHは6.1〜6.3であった。厳密な嫌気的技術(Balch & Wolfe、1976)を用いて、培地を調製した。一酸化炭素は、210kPa(30psi)で提供される単独の基質であった。別に記載しない限り、30psiの圧下で、単独のまたは主な基質としてCOを用いてすべての増殖実験を行い、そして培地内へのガス拡散を最大にするため、水平にしてインキュベーションした。別に記載しない限り、標準接種物サイズは、中間期から後期指数増殖期に増殖しているストック培養物からトランスファーした約2%(v/v)であった。
分析法。アルミニウム密封試験管中、600nm(Spectronic 20D; Milton Roy)で分光光度的に増殖を測定した(Balch & Wolfe、1976)。80/120 Carbopak B−DA/4%カーボワックス樹脂20M(Supelco、ペンシルバニア州ベルフォンテ)を充填した2mスチールカラムを装備したVarian 3400上、炎イオン化検出装置(FID)を装備したガスクロマトグラフ(GC)によって、アセテートおよびエタノールを同時に測定した。カラム、インジェクター、および検出装置温度は、それぞれ、155、200、および200℃であった。ヘリウムがキャリアーガスであり、そして流速を30ml min−1に設定した。水素イオン濃度を電極によって測定した。
代謝阻害剤研究。フルオロ酢酸(FA)およびトリフルオロ酢酸(TFA)(Sigma Chemical Co.)のフィルター滅菌した嫌気性ストック溶液を最終濃度4.5Mに調製した。調製前に、FAおよびTFA粉末を、嫌気性チャンバー中の小さいビーカー中に一晩放置して、捕捉されたいかなる酸素も粉末から拡散されるのを可能にした。増殖収量に比較して、最大エタノール産生になるような、酢酸生成を阻害する最小阻害濃度(MIC)および最大有効濃度を決定するため、5mM〜210mMの範囲の最終濃度をアッセイした。通常、P11を接種する1日前に阻害剤を培地に添加して、嫌気性が維持されることを確実にした。すべての添加は、シリンジによって嫌気性に行った。この研究中、分光計によって増殖を定期的に測定した。休止細胞期終了の少し前に、液体試料(1ml)を採取し、そしてGCおよびHPLCによって分析するまで、凍結保存(−20℃)した。
半連続バッチ培養。100〜200mLの間の非修正COMを含有する500mL血清ボトルを用いて、長期半連続バッチ培養実験を行った。振盪条件(50rpm)中で増殖させた1つの培養と一緒に観察するために、pH 5.5に修正したCOMもまた添加した。7〜10日ごとに、新鮮な非修正および修正COMを使用済みの液体培地と交換し、そして気体雰囲気へのH/COをの添加/交換およびCOによって、培養を維持した。COを少なくとも30psiまで添加した。培地交換中、増殖およびpH測定値を記録し、そして液体試料(1.0mL)をここから採取し、そしてGCおよびHPLCによってエタノールおよびアセテートを分析するまで、凍結保存(−20℃)した。
エタノール耐性。CO代謝および溶媒産生に対するエタノールの影響を株P11で調べた。これらの研究経過中、株P11が生存可能な初期最大濃度を決定した。1リットルあたり、15〜35グラムの範囲のエタノール濃度を含有するCOMを含むBalch試験管にP11を接種し、そしておよそ10日間、増殖を測定した。細胞が定常期のままになったら液体試料(1.0mL)を抽出し、そしてGCおよびHPLCによって分析するまで凍結保存(−20℃)した。細胞が生存するための最大エタノール濃度を決定した後、株P11を高溶媒条件に適応させるため、異なる濃度のエタノール(20、30、40、および50g/L)を含有する100〜200mLの間のCOMを含有する500mL血清ボトルを用いて、半連続バッチ培養実験を行った。フィルター滅菌したエタノールを、あらかじめ滅菌したBalch試験管に添加し、そして次いで、N/CO2でパージして酸素を除去することによって、エタノールで修正したCOMを調製した。培地を滅菌した後、エタノールを適切な濃度まで添加した。上記ですでに樹立した半連続バッチ培養から、P11細胞をこれらのボトルに接種した。増殖およびpHを定期的に測定した。これらの測定のために抽出した培地の一部を、エタノールおよび酢酸濃度の分析用に取り置いた。
微量金属。鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、銅(Cu)、およびニッケル(Ni)を多様な濃度で調べて、増殖収量およびエタノール産生に対する影響を決定した。非修正(1X)および修正(0Xおよび10X)培地の3つ組試験管に株P11を接種し、これらの個々の微量金属を各々、元来の金属濃度の10Xおよび0Xで、COMに添加するかまたはCOMから除去した。培養物に48時間ごとにCOを供給した。
また、小規模バッチ条件をシミュレートするため、160mL血清ボトル中、2つ組で、この実験を完了した。上記金属各々に関してストック溶液を調製し、そして煮沸および脱気前、培地調製物中に添加した。0μM金属試験濃度のための細胞において、金属イオン・キャリーオーバーを最小限にし、そして存在する金属の量を枯渇させるため、増殖実験を開始する前に、少なくとも6回のトランスファーを行った。細胞をより高い濃度の金属に適応させるため、各設定に関して、少なくとも2回のトランスファーを行った。この実験を3つ組で行い、そして7日間にわたって増殖を測定し、その後、pHおよびエタノール濃度分析を完了した。
酵母抽出物。0〜2.0%の範囲の多様な濃度の酵母抽出物を調べて、増殖およびエタノール産生に対する影響を決定した。7日間にわたって増殖を測定し、そして実験終了時に、pHおよびエタノール濃度を決定した。以下の濃度パーセントの酵母抽出物を調べた:0、0.025、0.05、0.1、0.2。COが主な基質および炭素供給源であった。先のように、少なくとも6回の連続トランスファーを用いることによって、株P11を、より低い濃度に適応させ、そしてより高い濃度に関しては少なくとも2回の連続トランスファーを用いた。
pH。CO代謝からのエタノール産生を増進するのに最適な条件を決定するため、最適pH研究を完了した。最適pHを決定するため、培地を、(1.0g L−1)のHOMOPIPES(ホモピペラジン−N,N’−ビス−2−[エタンスルホン酸](Research Organics、オハイオ州クリーブランド)、MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)、またはTES(N−トリス[ヒドロキシメチル]メチル−2−アミノエタンスルホン酸))で緩衝した。増殖を開始するのに、COで増殖させた定常期細胞の0.1ml(〜2%)接種物を用いた。これらの実験に用いたすべての培地構成要素は、別に記載しない限り、Sigma(Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)から得られた。これらの実験の完了時、pHを決定し、そしてエタノールおよびアセテート濃度を分析した。
pHに関する2セットの実験を行った。Balch試験管中で第一のpH実験を行い、そしてpHを維持することなく、5日間にわたって増殖を調べた。小さい血清ボトル(120mL)中で第二の実験を行って、エタノール産生に最適なpHを決定した。第二の設定では、滅菌1N HClまたは1N NaOHを添加することによって、pHを調節した。
結果
代謝阻害剤−FA/TFA。フルオロ酢酸(FA)およびトリフルオロ酢酸(TFA)に関して確立されたMICは、それぞれ100mMおよび150mMであった。アッセイした多様な濃度のFAおよびTFAの存在下で、エタノールおよびアセテート産生に関して、P11では、明らかな傾向は確立されなかった(表8を参照されたい)。20mM FAを含有するCOM中で増殖させた場合、P11対照に比較して、増殖収量(OD)または最終産物に有意な相違は観察されなかった。しかし、30mM以上のFAの存在下で、アセテート産生はほぼ90パーセント減少し、そしてエタノール産生および増殖収量は、それぞれ50および40パーセント減少した。エタノール対アセテート比は、80パーセント増加した。
30mM TFAを含有するCOM中で増殖させた場合、産生されるエタノールおよびアセテートは、それぞれ126および52パーセント増加したが、溶媒対酸比はわずかにしか増加しなかった(50%)。増殖収量は不変のままであった。これは、用いたどちらの阻害剤に関しても、カーボンフローが、酸から溶媒産生にシフトし、FAの場合のみに増殖に影響があったことを示唆する。
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半連続バッチ培養
P11増殖収量は、4ヶ月間にわたって監視した間、安定なままであるかまたは増加し続けた。希釈に関して修正した後、1つのP11培養の増殖収量は、2.4OD単位に達した。すべての培養物のpHは、一貫して、ほぼ4.3と測定された。最高の非修正エタノール収量が95mM(4.4g/L)であったのに対して、修正COM(pH5.5)は、252mM(11.6g/L)の最高エタノール収量およびエタノール対アセテート比を達成した。アセテート濃度の増加およびエタノール産生の減少は、ある期間にわたって培養された場合に一般的に示される傾向であった(おそらく株変性の指標)。例外は、pH 5.5で開始したP11培養であった(データ未提示)。
エタノール耐性
15、20、25、30、および35g/Lで修正したCOM中で株P11を増殖させ、そして株P11が30g/Lまでのエタノール濃度に初期耐性であり、最低阻害濃度は35g/Lであることを見いだした。エタノールを含まない非修正対照に比較して、すべてのエタノール濃度の存在下で、増殖は遅延された。25g/L修正培養では98時間で増殖したことを例外として、修正培養に関しては、測定可能な培養は、48時間まで達成されなかった(データ未提示)。最高エタノール濃度での最適増殖は、20g/Lで生じた。
20g/L濃度の存在下で増殖する培養を用いて、そして半連続バッチ培養を開始し、そして維持した。20g/Lで培養が樹立された場合、30g/Lに適応させる試みは成功した。この適応プロセスは、50g/Lの濃度に到達するまで続いた。この値を超えると、数回試みたものの、50g/Lより高い濃度では培養は樹立不能であった。50g/Lの濃度での増殖は、0.55OD単位を超えて維持されることは不能であったが、監視の間中、このレベルに近い値を維持した。アセテートおよびエタノール産生は、監視の間中、入り混じった結果を示し、そしてしたがって、これらの培養では明確な傾向は確立されなかった。
微量金属
P11におけるCO代謝に対する、金属除去および添加の影響を試験した。Fe、Co、Cu、およびNiの除去は、CO代謝を制限した。しかし、Moの非存在下では、CO代謝はわずかに増加した。増加したレベルのMo、Fe、Co、Cu、およびNi(それぞれ200μM、80μM、12μM、および8μM)は、CO代謝を刺激し、そして48時間供給した後に特に顕著であった(データ未提示)。
溶媒対酸比は、Mo以外のすべての金属を除去すると改善された。FeおよびNiを除去した場合、溶媒対酸比に300および400パーセント近い増加があった。CoおよびCuの除去はアセテート産生を減少させ、溶媒対酸比を増加させ、一方、Mo除去はアセテート産生を増加させた。
酵母抽出物
株P11は、最初に、0%酵母抽出物濃度では増殖せず、そして上述の他の濃度でのみ増殖実験を行った。しかし、ほぼ4週間後、増殖の証拠が観察された。この時点以降、1〜2週間ごとにトランスファーを行い、そして最初の試験管にCOを再供給した。少なくとも15回トランスファーを行った。したがって、P11は、複雑な培地構成要素である酵母抽出物の非存在下でも、増殖に適応可能である。
エタノール産生に関する最適pH効果
増殖およびアルコール:酸比を測定した。C.ラグスダレイにおけるCO代謝およびエタノール産生に関する最適pHは、5.5〜6.0の間であると決定された。5.5および6.0の初期pHでの培養のエタノール:アセテート比は、それぞれ、0.7:1および0.6:1であった。
考察
FA/TFA
以前、50mM濃度のフルオロ酢酸は、好熱性クロストリジウムの増殖を阻害することが示されている(Rothstein、1986)。本明細書に提示するデータの重要性は、同一条件中で維持された対照株に比較した際、フルオロ酢酸およびトリフルオロ酢酸の存在下で、P11によるエタノール産生の増加が示されたことである。
株P11は、初期単離に際して、1リットルあたり30グラムの濃度のエタノールによって阻害された。Yamanoら、1998の適応技術と同様に、適応によって、より高い濃度のエタノールに耐性を示すよう培養物を適応させた。現在までに、培養物は、1リットルあたり50グラムのエタノール濃度で、完全に機能するよう適応している。この例は、産業微生物学で用いられる適応法を用いて、エタノールおよび/または酢酸産生の微生物触媒としての株P11の性能を増進可能であることを示す。
本発明は好ましい態様に関して記載されてきているが、当業者は、付随する請求項の精神および範囲内で修飾を加えて、本発明を実施可能であることを認識するであろう。したがって、本発明は、上述のような態様に限定されるべきではなく、本明細書に提供する説明の精神および範囲内のすべての修飾および同等物をさらに含むはずである。
100 容器
101 制御装置
200 第二の容器
201 輸送装置
クロストリジウム・ラグスダレイ:称号BAA−622のもとに、2002年10月、バージニア州マナサスのAmerican Type Culture Collectionに寄託され、そして再び、称号PTA−7826のもとに2006年6月14日に寄託された。

Claims (6)

  1. ATCC第BAA−622号または第PTA−7826号の同定特徴のすべてを有する微生物、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)の生物学的に純粋な培養物。
  2. COの供給源、および
    クロストリジウム・ラグスダレイ
    を含む、エタノールを産生するための組成物。
  3. COの前記供給源が合成ガスである、請求項2の組成物。
  4. COの供給源およびクロストリジウム・ラグスダレイを、前記クロストリジウム・ラグスダレイがCOをエタノールに変換することを可能にする条件下で合わせる
    工程を含む、エタノールを産生する方法。
  5. COの供給源をクロストリジウム・ラグスダレイと合わせる容器;および
    前記クロストリジウム・ラグスダレイが、前記COをエタノールに変換することを可能にする、前記容器中の条件を制御する制御装置
    を含む、エタノールを産生するための系。
  6. 合成ガスを産生するための第二の容器;および
    前記容器に前記合成ガスを輸送するための輸送装置、ここで、前記合成ガスは前記COの供給源として働く
    をさらに含む、請求項5の系。
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