JP6622194B2 - 連続ガス発酵のための多段リアクタシステム及びプロセス - Google Patents

連続ガス発酵のための多段リアクタシステム及びプロセス Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法111(a)条の下での非仮出願であり、米国特許法119(e)条の下で2013年7月4日に出願された米国仮出願第61/843,046号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、多段バイオリアクタシステムを利用してガス状基質を連続発酵するためのシステム及びプロセスに関する。本発明は、複数のバイオリアクタが中央ブリードラインによって接続され、その中央ブリードラインが接続されたバイオリアクタ間の流体連通を可能にするシステムを提供する。複数のバイオリアクタの起動時間を減少させるためのプロセスも提供される。複数のバイオリアクタを使用した柔軟な連続的ガス発酵のためのプロセスがさらに提供される。
エタノールは急速に、世界中で主要な水素豊富液体輸送燃料になっている。2005年のエタノールの世界規模の消費は、推定122億ガロンであった。燃料エタノール業界の世界市場はまた、欧州、日本、米国、及びいくつかの発展途上国でのエタノールへの関心の高まりにより、将来急成長することが予測されている。
例えば、米国では、エタノールは、エタノール10%混合ガソリンであるE10を生成するために使用される。E10ブレンドでは、エタノール成分は、酸素化剤として作用し、燃焼効率を改善し、大気汚染物質の生成を削減する。ブラジルでは、エタノールは、ガソリンにブレンドされた酸素化剤として、かつそれ自体で純燃料として、輸送燃料需要の約30%を満たす。また、欧州では、温室効果ガス(GHG)排出の結果を取り巻く環境問題が刺激となり、欧州連合(EU)は加盟国に対してバイオマス由来のエタノール等の持続可能な輸送燃料の消費に関して義務的目標を設定している。
燃料エタノールの大部分は、サトウキビから抽出された蔗糖、または穀類作物から抽出されたデンプン等の作物由来の炭水化物を主要な炭素源として使用する伝統的な酵母ベースの発酵プロセスによって生成される。しかしながら、これらの炭水化物供給原料のコストは、人間の食物または動物の飼料としてのそれらの価値によって影響を受けるが、エタノール生成のデンプンまたは蔗糖を生産する作物の耕作は、すべての地域で経済的に持続可能ではない。したがって、より少ないコストかつ/またはより豊富な炭素資源を燃料エタノールに変換するための技術を開発することに関心が寄せられている。
COは、石炭または石油及び石油由来の製品などの有機材料の不完全燃焼の主要な遊離したエネルギーの高い副産物である。例えば、豪州の鉄鋼産業は、年間500,000トンを超えるCOを生成し、大気中に放出していると報告されている。
接触プロセスは、主にCO及び/またはCOと水素(H)からなるガスを様々な燃料及び化学物質に変換するために使用され得る。微生物はまた、これらのガスを燃料及び化学物質に変換するために使用され得る。これらの生物学的プロセスは、化学反応より一般に遅いが、より高い特異性、より高い収率、より低いエネルギーコスト、及び中毒に対するより高い耐性を含む接触プロセスに勝るいくつかの利点を有する。
COを唯一の炭素源として増殖する微生物の能力は、1903年に初めて発見された。これは後に、独立栄養増殖のアセチル補酵素A(アセチルCoA)生化学的経路(ウッド−リュングダール(Woods−Ljungdahl)経路及び一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCoAシンターゼ(CODH/ACS)経路としても知られている)を使用する生物の特性であると断定された。カルボキシド栄養性(carboxydotrophic)生物、光合成生物、メタン生成及び酢酸生成生物を含む多数の嫌気性生物は、COを様々な最終生成物、すなわちCO、H、メタン、n−ブタノール、酢酸塩、及びエタノールに代謝することが示される。COを唯一の炭素源として使用しながら、すべてのこのような生物は、これらの最終生成物のうちの少なくとも2つを生成する。
クロストリジウム属の細菌などの嫌気性細菌は、アセチルCoA生化学的経路を介してCO、CO、及びHからエタノールを生成することが示される。例えば、ガスからエタノールを生成する様々なクロストリジウムリュングダーリイ(Clostridium ljungdahli)の株は、国際特許公開第00/68407号、欧州特許第117309号、米国特許第5,173,429号、同第5,593,886号、及び同第6,368,819号、国際特許公開第98/00558号、ならびに国際特許公開第02/08438号に記載される。細菌のクロストリジウムオートエタノゲナム種(Clostridium autoethanogenum sp)もまた、ガスからエタノールを生成することが知られている(Abrini et al.,Archives of Microbiology 161,pp345−351(1994))。
しかしながら、ガスの発酵による微生物によるエタノール生成は常に、酢酸塩及び/または酢酸の同時生成と関連付けられる。利用可能な炭素の一部がエタノールではなく酢酸塩/酢酸に変換されるため、このような発酵プロセスを用いたエタノールの生成効率は、望ましいとは言えない場合がある。また、酢酸塩/酢酸の副産物が何らかの他の目的に使用され得ることがない限り、これは、廃棄物処理問題を引き起こし得る。酢酸塩/酢酸は、微生物によってメタンに変換されるため、GHG排出に寄与する可能性がある。
の存在下でのCOの微生物発酵は、実質的に完全な炭素のアルコールへの移行につながり得る。しかしながら、十分なHがない場合、一部のCOは、アルコールに変換されるが、以下の式に示されるように、相当部分がCOに変換される。
6CO+3HO→COH+4CO
12H+4CO→2COH+6H
COの生成は、全体的な炭素捕捉の非効率を表しており、放出される場合、温室効果ガス排出に寄与する可能性もある。
開示内容が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第2007/117157号は、一酸化炭素を含有するガスの嫌気性発酵によってアルコール、特にエタノールを生成するプロセスを説明している。発酵プロセスの副産物として生成された酢酸塩は、水素ガス及び二酸化炭素ガスに変換され、これらのいずれかまたは両方は、嫌気性発酵プロセスで使用され得る。開示内容が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第2008/115080号は、多発酵段階でアルコール(複数可)の生成のためのプロセスを説明している。第1のバイオリアクタでガス(複数可)の嫌気性発酵の結果として生成された副産物は、第2のバイオリアクタで生成物を生成するために使用され得る。さらに、第2の発酵段階の副産物は、第1のバイオリアクタに生成物を生成するために再循環され得る。
米国特許第7,078,201号及び国際特許公開第02/08438号はまた、発酵が実施される液体栄養培地の条件(例えば、pH及び酸化還元電位)を変えることによってエタノールを生成するための発酵プロセスを改善することを説明している。これらの公表文献で開示されるように、類似のプロセスがブタノール等の他のアルコールを生成するために使用され得る。
1つ以上の酸及び/または1つ以上のアルコールを生成するための発酵プロセスに対する小さな改善であっても、このようなプロセスの効率、より具体的には商業的実現可能性に大きな影響を与え得る。本発明の目的は、当該技術分野において既知である不利益を克服し、かつ様々な有用な生成物の最適な生成のための新しい方法を公衆に提供するシステム(複数可)及び/または方法(複数可)を提供することである。
第1の態様では、連続発酵のためのバイオリアクタシステムであって、
a.発酵ブロスを生成するための1つ以上の微生物によるガス状基質の発酵に適合した2つ以上の一次バイオリアクタと、
b.1つ以上の生成物を生成するための1つ以上の微生物によるガス状基質の発酵に適合した1つ以上の二次バイオリアクタと、
c.中央ブリードラインと、を備え、
システムの一次バイオリアクタのうちの少なくとも2つは、中央ブリードラインを介して互いに流体連通可能であり、かつ少なくとも1つの二次バイオリアクタと流体連通可能である、システムが提供される。一実施形態では、一次バイオリアクタの発酵ブロスで生成された1つ以上の酸の少なくとも一部は、1つ以上の二次バイオリアクタ(複数可)でその対応するアルコールに変換される。
第1の形態の一実施形態では、すべてのバイオリアクタは、酸(複数可)及び/またはアルコール(複数可)を含む生成物を生成するようにガス状基質の発酵のために構成される。特定の実施形態では、ガス状基質は、CO、H、CO、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態では、ガス状基質は、CO及び任意にHを含む。代替的実施形態では、ガス状基質は、CO及びHを含む。
本発明の一実施形態では、一次バイオリアクタは、発酵ブロスを中央ブリードラインに流すための出口導管を備える。ある特定の態様では、一次バイオリアクタ及び二次バイオリアクタは、発酵ブロスを中央ブリードラインから受容するための入口導管を備える。特定の実施形態では、中央ブリードラインに接続されたバイオリアクタ間の流体連通は、入口導管と一体化した弁(植菌弁とも称される)によって制御される。これらの弁は、操作者によって開放または閉鎖されるかどうかによって一次バイオリアクタから他の一次バイオリアクタ及び/または二次バイオリアクタへの発酵ブロスの流路を制御する。
特定の実施形態では、一次バイオリアクタは、1つ以上の微生物の増殖を主に促進し、かつ1つ以上の生成物を生成する条件で操作される。特定の実施形態では、二次バイオリアクタは、ガス状基質から1つ以上の生成物を生成する条件で主に操作される。一実施形態では、一次リアクタで生成された発酵ブロスは、中央ブリードラインを介して二次バイオリアクタに流され、一次バイオリアクタから二次バイオリアクタに流された発酵ブロス内の1つ以上の酸の少なくとも一部は、二次バイオリアクタでその対応するアルコールに変換される。
第1の態様の一実施形態では、バイオリアクタシステムは、少なくとも2つの一次バイオリアクタ及び少なくとも1つの二次バイオリアクタを備え、すべてのバイオリアクタは、中央ブリードラインを介して接続される。特定の実施形態では、システムは、2〜16個の一次バイオリアクタ及び1〜16個の二次バイオリアクタを備える。さらなる実施形態では、システムは、2〜8個の一次バイオリアクタ及び1〜8個の二次バイオリアクタを備える。好ましい実施形態では、システムは、4個の一次バイオリアクタ及び4個の二次バイオリアクタを備える。
第1の態様の一実施形態では、中央ブリードラインは、システムのすべてのバイオリアクタに接続され、一次バイオリアクタのすべて及び/または二次バイオリアクタのすべての間で流体連通を可能にする。一実施形態では、中央ブリードラインは、一次バイオリアクタのうちの少なくとも1つから二次バイオリアクタのうちの少なくとも1つに発酵ブロスを提供する。特定の実施形態では、各一次バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して1つの対応する二次バイオリアクタを供給する。操作中、バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して一次バイオリアクタ及び対応する二次バイオリアクタの別個のトレーンで動作され、任意の所定の一次バイオリアクタからの発酵ブロスの少なくとも一部は、中央ブリードラインを介して二次バイオリアクタに提供される。代替的実施形態では、すべての一次バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して時間分割構成ですべての二次バイオリアクタに発酵ブロスを供給し、任意の所定の二次バイオリアクタへの発酵ブロスの流路は、二次バイオリアクタの入口導管と一体化した弁によって制御される。
特定の実施形態では、定常状態の発酵中、発酵ブロスは、中央ブリードラインを介して一次バイオリアクタから二次バイオリアクタに連続的に提供される。少なくとも1つの発酵生成物を含む発酵ブロスは、一次バイオリアクタ及び二次バイオリアクタの両方から連続的に除去される。特定の実施形態では、追加の培地は、一次バイオリアクタ及び二次バイオリアクタに供給され、それにより実質的に一定容積の発酵ブロスがシステムのすべてのバイオリアクタで維持される。特定の実施形態では、生成物が生成される速度は、一次バイオリアクタ及び二次バイオリアクタの両方で実質的に同じである。しかしながら、好ましい実施形態では、生成物が生成される速度は、一次バイオリアクタよりも二次バイオリアクタで実質的に速い。
一実施形態では、中央ブリードラインは、一次バイオリアクタのうちの少なくとも1つから少なくとも1つの他の一次バイオリアクタに発酵ブロスを提供する。この構成では、1つの一次バイオリアクタからの発酵ブロスは、少なくとも1つの他の一次バイオリアクタに植菌するために使用される。特定の実施形態では、第1の一次バイオリアクタは、植菌器によって植菌され、これは、操作可能であると、中央ブリードラインを介して発酵ブロスの少なくとも一部を少なくとも1つの他の一次バイオリアクタに流す。中央ブリードラインは、発酵ブロスの少なくとも一部を1つの操作可能な一次バイオリアクタから複数の操作不能な一次バイオリアクタに同時に流し、かつ/または個々の操作不能な一次バイオリアクタに流すために利用され、それにより各々が直列に確立される。好ましい実施形態では、中央ブリードラインは、システムの全起動時間を短縮させるために、発酵ブロスの一部を操作可能な一次バイオリアクタから複数の操作不能な一次バイオリアクタに同時に流すために利用される。
さらなる実施形態では、少なくとも1つの操作可能な一次バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して発酵ブロスを少なくとも1つの操作不能な二次バイオリアクタに流す。この構成では、操作可能な一次バイオリアクタ(複数可)からの発酵ブロスは、システム内の二次バイオリアクタのうちの1つまたは実質的にすべてに植菌するために使用される。特定の実施形態では、二次バイオリアクタは、システム内の実質的にすべての一次バイオリアクタの植菌の完了前に、中央ブリードラインを介して一次バイオリアクタから発酵ブロスを個々に流される。代替的実施形態では、すべての二次バイオリアクタは、システム内のすべての一次バイオリアクタが植菌されると、中央ブリードラインを介して一次バイオリアクタから発酵ブロスを同時に流される。
特定の実施形態では、一次及び/または二次バイオリアクタは、エタノール、酢酸、2,3−ブタンジオール、ブタノール、イソプロパノール、乳酸塩、コハク酸塩、メチルエチルケトン(MEK)、プロパンジオール、2−プロパノール、アセトイン、イソブタノール、シトラマレイン酸(citramalate)、ブタジエン、ポリ乳酸、イソブチレン、3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)、アセトン、及び脂肪酸を含む生成物を生成するために、CO、CO、H、及びこれらの混合物からなる群から選択されるガス状基質の発酵に使用される。典型的に、このような基質の微生物発酵は、カルボキシド栄養性細菌によって液体栄養培地内で実施される。ある特定の実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、クロストリジウム属から選択される。さらなる実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、クロストリジウムオートエタノゲナム、クロストリジウムリュングダーリイ、クロストリジウムラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)、及びクロストリジウムカルボキシジボランス(Clostridium carboxydivorans)からなる群から選択される。特定の実施形態では、発酵は、液体栄養培地中に懸濁された微生物によって行われる。
一実施形態では、一次バイオリアクタで生成された1つ以上の酸生成物の少なくとも一部は、二次バイオリアクタでその対応するアルコールに変換される。特定の実施形態では、少なくとも1つの一次リアクタで生成された酢酸の少なくとも一部は、二次バイオリアクタ(複数可)でエタノールに変換される。
第2の態様では、中央ブリードラインを利用して複数のバイオリアクタに植菌するためのプロセスであって、
a.液体栄養培地を含む第1の一次バイオリアクタにガス状基質を供給することと、
b.第1の一次バイオリアクタに1つ以上の微生物を植菌することと、
c.ガス状基質を発酵させて、1つ以上の微生物及び1つ以上の生成物を含む発酵ブロスを生成することと、
d.第1の一次バイオリアクタから発酵ブロスの少なくとも一部を流して、中央ブリードラインを介して1つ以上の他の一次バイオリアクタに植菌することと、
e.微生物増殖を主に促進する条件で少なくとも1つの他の一次バイオリアクタを操作することと、
f.1つ以上の一次バイオリアクタから発酵ブロスの少なくとも一部を流して、中央ブリードラインを介して1つ以上の二次バイオリアクタに植菌することと、を含む、プロセスが提供される。
第3の態様では、複数のバイオリアクタにわたってガス状基質の安定した状態の発酵を維持するためのプロセスであって、
a.1つ以上の微生物を含有する液体栄養培地を含む2つ以上の一次バイオリアクタにガス状基質を供給することと、
b.2つ以上の一次バイオリアクタ内のガス状基質を発酵させて、1つ以上の微生物及び1つ以上の生成物を含む発酵ブロスを生成することと、
c.中央ブリードラインを介して1つの一次バイオリアクタから1つ以上の二次バイオリアクタに発酵ブロスの少なくとも一部を流すことと、
d.(c)の一次バイオリアクタのうちの1つ以上が操作可能であるか否かを決定することであって、一次バイオリアクタのうちの1つ以上が操作不能な場合、1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタからの発酵ブロスの少なくとも一部が、中央ブリードラインを介して(c)の1つ以上の二次バイオリアクタに提供される、決定することと、を含む、プロセスが提供される。
第2及び第3の態様の特定の実施形態では、プロセスは、第1の態様に記載されるようなシステムで用いられる。特定の実施形態では、プロセスは、中央ブリードラインを介して流体連通した2つ以上のバイオリアクタを備える連続ガス発酵のために構成された多段バイオリアクタシステムで用いられる。好ましい実施形態では、システムは、中央ブリードラインを介してすべて流体連通した4個の一次バイオリアクタ及び4個の二次バイオリアクタを備える。
一実施形態では、1つ以上の一次バイオリアクタ及び/または二次バイオリアクタは、1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタから中央ブリードラインを介して提供された発酵ブロスを用いて植菌される。特定の実施形態では、各操作不能な一次バイオリアクタは、操作可能な一次バイオリアクタから直列に植菌され、操作可能な一次バイオリアクタからの発酵ブロスは、中央ブリードラインを介して後続の操作不能な一次バイオリアクタに提供される。好ましい実施形態では、1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタは、複数の操作不能な一次バイオリアクタに同時に植菌するために使用され、1つ以上の一次バイオリアクタからの発酵ブロスは、中央ブリードラインを介して複数の操作不能な一次バイオリアクタに実質的に同時に流される。
特定の実施形態では、1つ以上の二次バイオリアクタは、少なくとも1つの操作可能な一次バイオリアクタから中央ブリードラインを介して提供された発酵ブロスから植菌される。特定の実施形態では、1つ以上の二次バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して提供された発酵ブロスから植菌され、発酵ブロスは、複数の一次バイオリアクタにより混合される。
一実施形態では、バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して一次バイオリアクタ及び対応する二次バイオリアクタの別個のトレーンで動作され、任意の所定の一次バイオリアクタからの発酵ブロスの少なくとも一部は、中央ブリードラインを介して二次バイオリアクタに提供される。一次バイオリアクタの発酵ブロスが崩壊し(すなわち、一次リアクタが操作不能になり)、一次バイオリアクタがもはや十分な量の発酵ブロスをその対応する二次バイオリアクタに供給できない場合、二次バイオリアクタには、中央ブリードラインを介して残りの一次バイオリアクタのうちの少なくとも1つから十分な量の発酵ブロスが提供される。特定の実施形態では、対応する二次バイオリアクタには、すべての残りの一次バイオリアクタから十分な量の発酵ブロスが提供される。特定の実施形態では、1つ以上の残りの一次バイオリアクタ及び/または二次バイオリアクタ内の液体栄養培地は、一次バイオリアクタのうちの1つが操作不能になる前のように実質的に同じ量のガスが利用されるために実質的に増加する。
次に、操作不能な一次バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して操作不能な一次バイオリアクタに提供された1つ以上の残りの一次バイオリアクタで利用可能な追加の発酵ブロスの少なくとも一部から再開される。
二次バイオリアクタが操作不能になる場合、システム内の1つ以上の操作可能な二次バイオリアクタには、中央ブリードラインを介して操作可能な一次バイオリアクタのうちの1つ以上から発酵ブロスが提供される。特定の実施形態では、操作可能な一次バイオリアクタ及び操作可能な二次バイオリアクタの両方のうちの1つ以上の中の液体栄養培地レベルは、二次バイオリアクタのうちの1つが操作不能になる前のように実質的に同じ量のガスが利用されるために実質的に増加する。次に、操作不能な二次バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して操作不能な二次バイオリアクタに提供された1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタ及び/または操作可能な二次バイオリアクタで利用可能な余剰発酵ブロスの少なくとも一部から再植菌される。
一次バイオリアクタ及び/または二次バイオリアクタへのガス供給が限られてくる場合、一次バイオリアクタ及び/または二次バイオリアクタのうちの少なくとも1つは、一時的に停止され得る。特定の実施形態では、二次バイオリアクタより多くの一次バイオリアクタが操作可能なままである。特定の実施形態では、操作可能な一次バイオリアクタ及び/または操作可能な二次バイオリアクタのうちの1つ以上の中の液体栄養培地レベルは増加する。ガス供給が実質的に正常なレベルに戻ると、停止された(操作不能な)バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタ及び/または操作可能な二次バイオリアクタで利用可能な余剰発酵ブロスの少なくとも一部から再植菌される。
様々な実施形態では、発酵は、カルボキシド栄養性細菌の1つ以上の株を含む微生物培養物を用いて実施される。様々な実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、クロストリジウム、モーレラ(Moorella)、オキソバクター(Oxobacter)、ペプトストレプトコッカス、アセトバクテリウム、真正細菌、またはブチリバクテリウムから選択される。一実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、クロストリジウムオートエタノゲナムである。特定の実施形態では、細菌は、受託番号DSMZ10061またはDSMZ23693の下でGerman Resource Centre for Biological Material(DSMZ)Inhoffenstraβe 7 B,38124 Braunschweig,Germanyで堆積された細菌の識別特徴を有する。
ガス状基質は、産業プロセスの副産物として得られたガスを含み得る。ある特定の実施形態では、産業プロセスは、鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、バイオマスのガス化、石炭のガス化、発電、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。あるいは、ガス状基質は、天然ガス、シェールガス、関連した石油ガス、及びバイオガスを含む発生源からの改質ガスである。本発明の一実施形態では、ガス状基質は、合成ガスである。一実施形態では、ガス状基質は、製鋼所から得られるガスを含む。
本発明はまた、用途の仕様において言及またはそれに指示された部分、要素、及び特徴を、個別にまたは集合的に、該部分、要素、または特徴のうちの2つ以上の任意またはすべての組み合わせで含み、特定の整数が本明細書に記載され、それが本発明の関連する当該技術分野において既知の等価物を有する場合、このような既知の等価物は、個別に記載されるかのように本明細書に組み込まれると見なされる。
次に、本発明は、添付の図を参照しながら詳細に記載される。
正常な動作中に、各一次バイオリアクタが中央ブリードラインを介して発酵ブロスを1つの対応する二次バイオリアクタに提供する、多段バイオリアクタシステムの実施形態を示す。 正常な動作中に、すべての一次バイオリアクタが中央ブリードラインを介して発酵ブロスをすべての二次バイオリアクタに提供する、多段バイオリアクタシステムの代替的実施形態を示す。
定義
特に定義されない限り、本明細書全体にわたって使用されるような以下の用語は、次のように定義される。
用語「バイオリアクタ」及び/または「リアクタ」は、固定化細胞リアクタ、ガスリフトリアクタ、気泡塔リアクタ(BCR)、循環ループリアクタ、中空繊維膜バイオリアクタ(HFM BR)等の膜リアクタ、またはトリクルベッドリアクタ(TBR)などの1つ以上の容器及び/もしくは塔または配管構成からなる任意の発酵デバイスを含む。
用語「中央ブリードライン」は、多段バイオリアクタシステム内のすべてのバイオリアクタに接続されるライン、管、チャネル、または導管を含み、これは、発酵ブロスの一部がシステム内の少なくとも1つのバイオリアクタからシステム内の少なくとも1つの他のバイオリアクタに流すことを可能にする。好ましくは、バイオリアクタから除去された発酵ブロスは、中央ブリードラインに提供される前に分離器に流されていない。
用語「トレーン」、「リアクタトレーン」などは、一次バイオリアクタが少なくとも1つの二次バイオリアクタに接続されるシステムを包含するよう意図される。特定の実施形態では、リアクタトレーンは、トレーンに接続された第3または第4のバイオリアクタを含む。この用語は、複数の一次リアクタが複数の二次または三次リアクタに接続されるシステムを含む。
用語「ガス状基質」は、発酵において炭素源及び任意にエネルギー源として微生物によって使用される化合物または成分を含有する任意のガスを含む。ガス状基質は典型的に、相当割合のCO、好ましくは体積で少なくとも5%〜100%のCOを含有する。
基質がいくらかの水素を含有することは必要ではないが、Hの存在は、本発明の方法に従う生成物形成に有害であるべきではない。特定の実施形態では、水素の存在は、アルコール生成の全体的な効率の改善をもたらす。例えば、特定の実施形態では、基質は、H:COの約2:1、1:1、または1:2の比を含み得る。一実施形態では、基質は、体積で30%以下のH、体積で20%以下のH、体積で15%以下のH、または体積で10%以下のHを含む。他の実施形態では、基質流は、低濃度のH、例えば、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、もしくは1%未満を含み、または実質的に水素を含まない。基質はまた、例えば、体積で1%〜80%のCO、または体積で1%〜30%のCOなどのいくらかのCOを含有し得る。一実施形態では、基質は、体積で20%以下のCOを含む。特定の実施形態では、基質は、体積で15%以下のCO、体積で10%以下のCO、体積で5%以下のCOを含み、または実質的にCOを含まない。
用語「液体栄養培地」は、1つ以上の微生物を用いた発酵に好適な栄養素を含む液体培地を含む。液体栄養培地は、使用される微生物(複数可)の増殖を許可するのに十分なビタミン及び/またはミネラルを含有する。COを用いた発酵に好適な嫌気性培地は、当該技術分野において既知である。例えば、好適な培地は、Beibel(2001)に記載される。
本明細書で使用されるとき、用語「生成物」は、微生物発酵によって生成された基質を包含することが意図される。生成物は、アルコール、酸、または他の化学物質を含み得る。生成物はまた、微生物発酵プロセスによって生成されたガスを含み得る。
特に文脈上必要としない限り、語句「発酵」、「発酵プロセス」、または「発酵反応」などは、本明細書で使用されるとき、プロセスの増殖期及び生成物の生合成期の両方を包含することが意図される。
用語「操作可能な」、「正常な動作」、「安定した発酵」などは、バイオリアクタ内、または2つ以上のリアクタのトレーン内の1つ以上の微生物の培養が発酵プロセスの増殖期及び/または生成物の生合成期である状況を指す。反対に、用語「操作不能な」は、リアクタ内、もしくは2つ以上のバイオリアクタのトレーン内の1つ以上の微生物の培養が停止した状況、または生成物が回収され得る時点まで発酵プロセスがもはやリアクタ内で生じていない状況を指す。
ガス状基質に関連して使用されるとき、用語「限られたガス」または「限られた」は、微生物が取り込み得る基質の最適(または最大)量未満の量でガス状基質が1つ以上のバイオリアクタに供給される状況を包含することが意図される。
用語「流体連通」は、液体がブリードラインを介して2つ以上のバイオリアクタ間を流れる状況を包含することが意図される。特定の実施形態では、2つ以上のバイオリアクタ間を流れる液体は、発酵ブロスである。ある特定の実施形態では、液体は、透過流または細胞欠失流である。ある特定の実施形態では、液体流は、中央ブリードラインに入る前に処理区間を通過する。当業者であれば、処理区間がこれらに限定されないが、バイオマスの除去、タンパク質の除去、生成物流の少なくとも一部の分離及び除去、さらなる栄養素または水の添加を含む任意の数の処理段階を含み得ることを理解するであろう。
以下の説明は、本発明の特定の実施形態、すなわち、一次基質としてCOを用いたエタノール及び/または酢酸塩の生成に注目するが、本発明は、本発明に関連する当業者に既知であるように、代替的アルコール及び/または酸の生成、ならびに代替的基質の使用に適用可能であり得ることを理解されるべきである。例えば、二酸化炭素及び水素を含有するガス状基質が使用されてもよい。さらに、本発明は、エタノール、酢酸、2,3−ブタンジオール、ブタノール、イソプロパノール、乳酸塩、コハク酸塩、メチルエチルケトン(MEK)、プロパンジオール、2−プロパノール、アセトイン、イソブタノール、シトラマレイン酸(citramalate)、ブタジエン、ポリ乳酸、イソブチレン、3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)、アセトン、及び脂肪酸を生成する発酵に適用可能であり得る。本方法はまた、水素を生成することに有用であり得る。例として、これらの生成物は、モーレラ属、クロストリジウム、ルミノコッカス、アセトバクテリウム、真正細菌、ブチリバクテリウム、オキソバクター、メタノサルチナ、及びデスルホトマクルムからの微生物を使用した発酵によって生成され得る。
本発明者らは、ガス状基質の連続発酵を可能にする多段バイオリアクタシステムを考案した。このシステムは、中央ブリードラインによって結合された複数のバイオリアクタを備え、このブリードラインは、システムの複数のバイオリアクタ間の発酵ブロスの流体連通を可能にする。ガス発酵システムは、当該技術分野において既知であるが、このようなシステムは典型的に、バッチプロセスを伴う。連続ガス発酵システムもまた既知であるが、これらは、単一バイオリアクタまたは最高2つの結合されたバイオリアクタの独立したトレーンを伴う。このようなプロセスは、最初に開始するのに相当時間量がかかることが既知であり、2つのバイオリアクタのうちの1つが操作不能(すなわち、培養崩壊)になる場合に柔軟性がない。1つのバイオリアクタでのこのような崩壊の場合、プロセス全体が再開しなければならず、大幅なダウンタイムをもたらす。複数のバイオリアクタを中央ブリードラインに結合する驚くべき利点は、複数のバイオリアクタのより速い開始/植菌、及び操作中のより大きい柔軟性を実質的に可能にすることである。中央ブリードラインにより、単一バイオリアクタは植菌器からシステム内の各バイオリアクタに個々に植菌する代わりに、複数の他の結合されたバイオリアクタに植菌することができる。また、中央ブリードラインにより、複数のバイオリアクタは中央ブリードラインを介して結合されたバイオリアクタに発酵ブロスを提供することによってシステム内の任意の所定のバイオリアクタの損失を補うことができ、これはまた、そうしなければ独立したトレーン構成である場合に操作不能になるであろう。したがって、システムのアップタイムは、中央ブリードラインによって提供された柔軟性によって最大化される。
本発明のシステムは、複数の一次バイオリアクタ及び二次バイオリアクタを備え、すべてのバイオリアクタは、中央ブリードラインを介して流体連通している。特定の実施形態では、ガス状基質は、システムの一次及び二次バイオリアクタの両方に提供される。特定の実施形態では、一次バイオリアクタは、1つ以上の微生物の増殖を促進し、1つ以上の生成物を生成するためにガス状基質を主に利用する条件下で操作される。特定の実施形態では、二次バイオリアクタは、一次バイオリアクタのガス状基質から1つ以上の生成物を生成する条件下で操作される。ある特定の実施形態では、発酵ブロスの少なくとも一部は、一次バイオリアクタから少なくとも1つの二次バイオリアクタに流され、発酵ブロス内の1つ以上の酸の少なくとも一部は、二次バイオリアクタでその対応するアルコールに変換される。このような構成では、一次バイオリアクタは、1つ以上の微生物及び/または1つ以上の生成物を含む発酵ブロスの一部を中央ブリードラインに提供する。次に、この発酵ブロスは、中央ブリードラインを介して1つ以上の二次バイオリアクタに流される。中央ブリードラインに接続されたバイオリアクタ間の流体連通は、バイオリアクタの入口導管と一体化した弁/植菌弁によって制御される。これらの弁は、操作者によって開放または閉鎖されかどうかによって、一次バイオリアクタから他の一次バイオリアクタ及び/または二次バイオリアクタに発酵ブロスの流路を制御する。
正常な動作中、バイオリアクタは、中央ブリードラインを介して流体連通した一次バイオリアクタ及び対応する二次バイオリアクタの別個のトレーンで動作される。このトレーン構成により、連続発酵が可能であり、特定の実施形態では、一次バイオリアクタから提供された発酵ブロスが1つ以上の酸を含有するとき、より高い生成物力価が可能である。
ある特定の実施形態では、発酵ブロスは、ブリードポンプによって一次バイオリアクタから除去される。一次バイオリアクタ内のブロスのレベルは、中央ブリードラインへのブリードポンプによる連続ブロス除去、及び追加の液体栄養培地の一定の供給によって一定に保たれる。追加の液体栄養培地はまた、二次バイオリアクタに導入されてもよく、発酵ブロスは、ブロスレベルを一定に保つために、透過流または別個のブリード流のいずれかとして除去される。
特定の実施形態では、一次バイオリアクタからの発酵ブロスの一部は、中央ブリードラインを介して二次バイオリアクタに直接流される。しかしながら、ある特定の実施形態では、発酵ブロスは、中央ブリードラインに流される前、または二次バイオリアクタに提供される前のいずれかで処理される。処理は、発酵ブロスへの栄養素、金属、及びビタミンBの添加、ならびに/またはバイオマス、生成物、酸、有機分子、及び/もしくは無機分子の除去を含み得る。
本発明の実施形態では、システムは、1つ以上の生成物へのガス状基質の発酵における用途を有し、該生成物は、酸、アルコール、及びジオールを含む。特に、エタノール、酢酸、及び2,3−ブタンジオールは、COを含むガス状基質の発酵によって生成される。
本システムは、任意の数の一次バイオリアクタ及び二次バイオリアクタからなり得る。特定の実施形態では、多段バイオリアクタシステムは、少なくとも2つの一次バイオリアクタ及び少なくとも1つの二次バイオリアクタを備え、すべてのバイオリアクタは、中央ブリードラインを介して接続される。特定の実施形態では、システムは、2〜16個の一次バイオリアクタ及び1〜16個の二次バイオリアクタを備える。さらなる実施形態では、システムは、2〜8個の一次バイオリアクタ及び1〜8個の二次バイオリアクタを備える。しかしながら、好ましい実施形態では、システムは、4個の一次バイオリアクタ及び4個の二次バイオリアクタを備える。
システムのバイオリアクタは、固定化細胞リアクタ、ガスリフトリアクタ、気泡塔リアクタ(BCR)、中空繊維膜バイオリアクタ(HFM BR)等の膜リアクタ、またはトリクルベッドリアクタ(TBR)などの発酵に好適な任意のものであり得る。バイオリアクタは、生成物の所望の体積に好適な任意の大きさのものであり得る。特定の実施形態では、二次バイオリアクタは、一次リアクタより実質的に大きい。あるいは、すべてのバイオリアクタは、実質的に同じ大きさであり得る。典型的に、ガス状基質は、ガス吸気ポートを介してバイオリアクタに導入される。ガス状基質は、任意の既知の散布手段によってバイオリアクタに散布され得る。しかしながら、特定の実施形態では、ガスは、1つ以上の微小な気泡スパージャまたは散布器によって導入される。リアクタ内に含まれる微生物によって利用されないガス、または発酵反応中に微生物によって副産物として生成されたガスは、ガス排出ポートを通ってリアクタから出る。
特定の実施形態では、システムのバイオリアクタは、発酵ブロスを中央ブリードラインに流すための出口導管と、中央ブリードラインから発酵ブロスを受容するための入口導管とを備える。バイオリアクタ内に生成された生成物は、透過流導管を介して除去され、これは、透過流として生成物を含有する発酵ブロスを回収区間に流す。特定の実施形態では、透過流は、細胞循環系と一体化する。細胞循環系は、微生物がさらなる発酵のためにリアクタに戻されるための手段を透過水から別個の微生物に提供する。細胞循環モジュールは、細胞を保持しながらブロス透過水を連続的に引き込む。当業者であれば、細胞循環部材がこれらに限定されないが、細胞循環膜またはディスクスタック遠心分離器を含み得ることを理解するであろう。
本発明の驚くべき利点は、中央ブリードラインにより、動作中の一次バイオリアクタと二次バイオリアクタとの間の異なる希釈率が可能になることである。これはまた、システム内の様々な数の一次及び二次バイオリアクタを可能にする。同じ数の一次バイオリアクタ及び二次バイオリアクタがある実施形態では、希釈率は実質的に同じである。一次バイオリアクタより多くの二次バイオリアクタがある実施形態では、希釈率は、二次バイオリアクタ内の微生物の滞留時間を増やすために二次バイオリアクタでは実質的により低い。
本明細書に記載される多段バイオリアクタシステム及びプロセスがガス発酵に適用されることが好ましいが、システム及び/またはプロセスは、複数のリアクタを利用して代替的発酵プロセスに使用され得ることが理解されるであろう。
本発明のシステム及びプロセスの様々な実施形態は、添付の図に記載される。以下の実施形態は、4個の一次バイオリアクタ及び4個の二次バイオリアクタを有する発酵システムを対象にするが、任意の数の一次及び二次バイオリアクタがシステムで利用されてもよい。
図1及び2の両方の以下の説明では、システムのすべてのブリードポンプは、105と称され、システムのすべての植菌弁は、106と称される。同様に、システムのすべての二次バイオリアクタは、109と称される。
図1は、中央ブリードライン107によって接続された多段バイオリアクタシステムの図である。開始時に、一次バイオリアクタ101は、ガス状基質及び液体栄養培地を供給される間、植菌器から植菌される。一次バイオリアクタ101が操作可能であると、ブリードポンプ105は、一次バイオリアクタ101から中央ブリードライン107に発酵ブロスを流す。次に、一次バイオリアクタ102の植菌弁106は開放され、植菌のための発酵ブロスを提供する。同じプロセスは、操作可能であると一次バイオリアクタ101から一次バイオリアクタ103に、同様に、一次バイオリアクタ102から一次バイオリアクタ104に植菌するために使用される。代替的実施形態では、一次バイオリアクタ101が操作可能であると、これは、発酵ブロスを中央ブリードライン107に連続的に流し、同時に一次バイオリアクタ102〜104のすべてに提供される。
すべての一次バイオリアクタ101〜104が操作可能であると、ブリード弁108は開放され、一次バイオリアクタ101〜104からの発酵ブロスの一部は、植菌のために中央ブリードライン107を通って二次バイオリアクタ109に流される。ある特定の実施形態では、発酵ブロスの一部は、植菌のために中央ブリードライン107を介して確立された一次バイオリアクタ101〜104から個々の二次バイオリアクタ109に流される。代替的実施形態では、一次バイオリアクタ101〜104からの発酵ブロスは、植菌のために中央ブリードライン107を介してすべての二次バイオリアクタに同時に連続的に流される。
操作中、一次バイオリアクタ101〜104は、本明細書に記載されるような1つ以上の生成物を生成するためにガス状基質を発酵させる。特定の実施形態では、一次バイオリアクタ101〜104は、1つ以上の微生物の増殖を実質的に促進し、かつ1つ以上の生成物を生成するように構成される。1つ以上の微生物及び/または1つ以上の生成物を含む発酵ブロスは、ブリードポンプ105によって一次バイオリアクタ101〜104のうちの1つ以上から除去され、中央ブリードライン107を通って二次バイオリアクタ109のうちの少なくとも1つに流される。特定の実施形態では、1つの一次バイオリアクタ、例えば、一次バイオリアクタ101は、正常な操作で中央ブリードライン107を介して1つの対応する二次バイオリアクタ109に発酵ブロスを提供する。特定の実施形態では、二次バイオリアクタ109は、ガス状基質からの1つ以上の生成物を生成する条件で操作される。特定の実施形態では、一次バイオリアクタから受容された発酵ブロス内の1つ以上の酸生成物の少なくとも一部は、その対応する酸に変換される。
一次バイオリアクタのうちの1つが操作不能になる場合、例えば、一次バイオリアクタ101の発酵ブロスは崩壊し、一次バイオリアクタ101は、対応する二次バイオリアクタ109が操作可能のままであることを可能にするために十分な量のブロスをもはや供給することができず、二次バイオリアクタ109には、中央ブリードライン107を介して残りの一次バイオリアクタのうちの少なくとも1つ、例えば、一次バイオリアクタ102〜104から操作のための十分な量の発酵ブロスが提供される。特定の実施形態では、対応する二次バイオリアクタ109には、残りの一次バイオリアクタ102〜104から十分な量の発酵ブロスが提供される。残りの一次バイオリアクタ102〜104及び二次バイオリアクタ109内の発酵ブロスのレベルは、一次リアクタ101が操作不能になる前のように実質的に同じ量のガスが利用されるために実質的に増加する。次に、一次バイオリアクタ101は、一次バイオリアクタ102〜104で利用可能な追加の発酵ブロスの少なくとも一部から再植菌され、中央ブリードラインを介して一次バイオリアクタ101に提供される。
二次バイオリアクタ109のうちの1つが操作不能になる場合、システム内の1つ以上の残りの二次バイオリアクタ109には、中央ブリードライン107を介して一次バイオリアクタ101〜104のうちの1つ以上から発酵ブロスが提供される。特定の実施形態では、一次バイオリアクタ101〜104及び残りの二次バイオリアクタ109のうちの1つ以上での発酵ブロスのレベルは、二次バイオリアクタ109のうちの1つが操作不能になる前のように実質的に同じ量のガスが利用されるために実質的に増加する。次に、下がった二次バイオリアクタ109は、1つ以上の一次バイオリアクタ101〜104及び/または残りの二次バイオリアクタ109で利用可能な追加の発酵ブロスの少なくとも一部から再開され、中央ブリードライン107を介して下にある二次バイオリアクタ109に提供される。
一次バイオリアクタ101〜104へのガス供給が限られてくる場合、一次バイオリアクタ101〜104及び/または二次バイオリアクタ109のうちの少なくとも1つは、一時的に停止され得る。特定の実施形態では、二次バイオリアクタ109より実質的に多くの一次バイオリアクタ101〜104が動作しているままである。特定の実施形態では、残りの一次バイオリアクタ101〜104及び/または残りの二次バイオリアクタ109のうちの1つ以上での発酵ブロスのレベルは増加する。ガス供給が正常レベルに戻されると、停止された任意のバイオリアクタは、1つ以上の残りの一次バイオリアクタ101〜104及び/または残りの二次バイオリアクタ109で利用可能な追加の発酵ブロスの少なくとも一部から再植菌され、追加の発酵ブロスは、中央ブリードライン107を介して操作不能なバイオリアクタに提供される。
図2は、中央ブリードライン107によって接続された代替的な多段バイオリアクタシステムの図である。植菌のためのプロセス、操作、一次/二次バイオリアクタの崩壊、及び限定されたガス供給は、図1に関して上記に記載されるものと実質的に同じである。しかしながら、図2における中央ブリードライン107の設計により、すべての一次バイオリアクタ101〜104からの発酵ブロスは混ぜ合わせられ、中央ブリードライン107を介して二次バイオリアクタ109に流されることが可能である。中央ブリードライン107を通って流れる発酵ブロスは、すべての二次バイオリアクタ109に等しく分布されるか、または時分割構成で一度に1つの二次バイオリアクタ109に提供され得る。時分割構成では、各二次バイオリアクタ109は、バッチプロセスで受容された発酵ブロスを発酵することができる。
発酵
ガス状基質(上記の背景技術の項で記載されたものなど)からエタノール及び他のアルコールの生成のためのプロセスは既知である。例示的プロセスとしては、例えば、国際特許公開第2007/117157号及び国際特許公開第2008/115080号、ならびに米国特許第6,340,581号、同第6,136,577号、同第5,593,886号、同第5,807,722号、及び同第5,821,111号に記載されるものが挙げられ、これらの各々が参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの嫌気性細菌は、n−ブタノール及びエタノールを含むアルコール、ならびに酢酸へのCOの発酵を実施することができることが既知であり、本発明のプロセスでの使用に好適である。本発明での使用に好適なこのような細菌の例としては、国際特許公開第00/68407号、欧州特許第117309号、米国特許第5,173,429号、同第5,593,886号、同第6,368,819号、国際特許公開第98/00558号、及び国際特許公開第02/08438号に記載されるものを含むクロストリジウムリュングダーリイ、クロストリジウムカルボキシジボランス(Liou et al.,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 33:pp2085−2091)、ならびにクロストリジウムオートエタノゲナム(Abrini et al.,Archives of Microbiology 161:pp345−351)の株などのクロストリジウム属のものが挙げられる。他の好適な細菌としては、モーレラ種 HUC22−1(Sakai et al.,Biotechnology Letters 29:pp1607−1612)を含むモーレラ属の細菌、及びカルボキシドサーマス(Svetlichny,V.A.,et al.(1991),Systematic and Applied Microbiology 14:254−260)属の細菌が挙げられる。これらの公表文献の各々の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、他のカルボキシド栄養性嫌気性細菌は、当業者によって本発明のプロセスで使用され得る。また、本開示を考慮すると、2つ以上の細菌の混合培養物が本発明のプロセスで使用され得ることが理解されるであろう。
本発明の方法で使用される細菌の培養は、嫌気性細菌を用いて基質を培養及び発酵するために当該技術分野において既知であるあらゆるプロセスを用いて行われ得る。例示的な技術は、以下の「実施例」の項で提供される。さらなる例として、発酵のためのガス状基質を用いて以下の物品に一般に記載されるこれらのプロセスには、下記の文献が利用され得る。(i)K.T.Klasson,et al.(1991).Bioreactors for synthesis gas fermentations resources.Conservation and Recycling,5;145−165;(ii)K.T.Klasson,et al.(1991).Bioreactor design for synthesis gas fermentations.Fuel.70.605−614;(iii)K.T.Klasson,et al.(1992).Bioconversion of synthesis gas into liquid or gaseous fuels.Enzyme and Microbial Technology.14;602−608;(iv)J.L.Vega,et al.(1989).Study of gaseous substrate Fermentation:Carbon Monoxide Conversion to Acetate.2.Continuous Culture.Biotech.Bioeng.34.6.785−793;(vi)J.L.Vega,et al.(1989).Study of gaseous substrate fermentations:Carbon monoxide conversion to acetate.1.Batch culture.Biotechnology and Bioengineering.34.6.774−784;(vii)J.L.Vega,et al.(1990).Design of Bioreactors for Coal Synthesis Gas Fermentations.Resources,Conservation and Recycling.3.149−160;これらのすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
一実施形態では、微生物は、クロストリジウムオートエタノゲナム、クロストリジウムリュングダーリイ、クロストリジウムラグスダレイ、クロストリジウムカルボキシジボランス、クロストリジウムダラケイ(Clostridium drakei)、クロストリジウムスカトロゲネス(Clostridium scatologenes)、クロストリジウムアセチカム(Clostridium aceticum)、クロストリジウムフォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウムマグナム(Clostridium magnum)を含むカルボキシド栄養性クロストリジウムの群から選択される。さらなる実施形態では、微生物は、C.オートエタノゲナム種、C.リュングダーリイ種、及びC.ラグスダレイ種、ならびに関連の分離株を含むカルボキシド栄養性クロストリジウムのクラスタからのものである。これらは、C.オートエタノゲナムJAI−1(DSM10061)(Abrini,Naveau,&Nyns,1994)の株、C.オートエタノゲナムLBS1560(DSM19630)(国際特許公開第/2009/064200号)の株、C.オートエタノゲナムLBS1561(DSM23693)の株、C.リュングダーリイPETC(DSM13528=ATCC 55383)(Tanner,Miller,&Yang,1993)の株、C.リュングダーリイERI−2(ATCC 55380)(米国特許第5,593,886号)の株、C.リュングダーリイC−01(ATCC 55988)(米国特許第6,368,819号)の株、C.リュングダーリイ、O−52(ATCC 55989)(米国特許第6,368,819号)の株、C.ラグスダレイP11(ATCC BAA−622)(国際特許公開第2008/028055号)の株、「C.コスカチイ(coskatii)」(US20110229947)及び「クロストリジウム種」(Tyurin&Kiriukhin,2012)等の関連の分離株、またはC.リュングダーリイOTA−1(Tirado−Acevedo O.Production of Bioethanol from Synthesis Gas Using Clostridium ljungdahlii.PhD thesis,North Carolina State University,2010)等の変異株に限定されないがこれらを含む。これらの株は、クロストリジウムrRNAクラスタI内にサブクラスタを形成し、それらの16S rRNA遺伝子は、約30%の同様の低いGC含有量と99%超同一である。しかしながら、DNA−DNA再結合及びDNA指紋法の実験は、これらの株が別種に属することを示した(国際特許公開第2008/028055号)。
上記のクラスタのすべての種は、類似の形態及び大きさを有し(対数増殖細胞が0.5〜0.7×3〜5μmであり)、中温性であり(30〜37℃の最適増殖温度)、厳格な嫌気性生物である(Abrini et al.,1994;Tanner et al.,1993)(国際特許公開第2008/028055号)。さらに、それらはすべて、同じpH範囲(5.5〜6の最適な初期pHを有するpH4〜7.5)、類似の増殖率を有するガスを含有するCOによる力強い独立栄養増殖、ならびに主発酵の最終生成物としてエタノール及び酢酸、及びある特定の条件下で形成された少量の2,3−ブタンジオール及び乳酸を有する類似の代謝プロファイルなどの同じ主要な系統発生特性を共有する(Abrini et al.,1994;Koepke et al.,2011;Tanner et al.,1993)(国際特許公開第2008/028055号)。インドール生成は、すべて3つの種を同様に用いて観察された。しかしながら、これらの種は、様々な糖類(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、または他の基質(例えば、ベタイン、ブタノール)の基質利用において区別している。さらに、これらの種のうちのいくつかは、ある特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)への栄養要求性株であることを見出したが、他の種を見出さなかった。ガス摂取に関与するウッド−リュングダール経路遺伝子の組織及び数は、核配列及びアミノ酸配列の違いにかかわらず、すべての種で同じであると見出した(Koepke et al.,2011)。カルボン酸を対応するアルコールに還元することも、これらの微生物の範囲に示された(Perez,Richter,Loftus,&Angenent,2012)。したがって、これらの特性は、C.オートエタノゲナムまたはC.リュングダーリイのような1つの微生物に特異ではなく、むしろカルボキシド栄養性エタノール合成クロストリジウムの一般的な特性であり、機構がこれらの株にわたって同様に作用することが予期され得るが、能力の差があり得る(Perez et al.,2012)。
本発明での使用に好適な例示的な微生物の1つは、クロストリジウムオートエタノゲナムである。一実施形態では、クロストリジウムオートエタノゲナムは、German Resource Centre for Biological Material(DSMZ)に識別寄託番号19630で寄託された株の識別特徴を有するクロストリジウムオートエタノゲナムである。別の実施形態では、クロストリジウムオートエタノゲナムは、DSMZ寄託番号DSMZ10061の識別特徴を有するクロストリジウムオートエタノゲナムである。さらなる実施形態では、クロストリジウムオートエタノゲナムは、DSMZ寄託番号DSMZ23693の識別特徴を有するクロストリジウムオートエタノゲナムである。
発酵は、任意の好適なバイオリアクタで実施され得る。本発明のいくつかの実施形態では、バイオリアクタは、微生物が培養される第1の増殖リアクタと、増殖リアクタからの発酵ブロスが供給され、かつ発酵生成物の大部分(例えば、エタノール及び酢酸塩)が生成される第2の発酵リアクタとを備える。
本発明の様々な実施形態によれば、発酵反応のための炭素源は、COを含有するガス状基質である。ガス状基質は、産業プロセスの副産物として、または自動車の排ガス等のいくつかの他の供給源から得られるCO含有の廃ガスであり得る。ある特定の実施形態では、産業プロセスは、製鋼所で行われるような鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭のガス化、発電、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、CO含有ガスは、任意の簡便な方法を用いて大気に排出される前に産業プロセスにより捕捉され得る。代替的実施形態では、CO含有ガスは、天然ガス、シェールガス、関連の石油ガス、及びバイオガスを含む源からの専用改質ガスである。ガス状CO含有基質の組成に応じて、それを発酵に導入する前にちり粒子等のあらゆる所望されない不純物を除去するために処理することも望ましい場合がある。例えば、ガス状基質は、既知の方法を用いてろ過されるか、またはスクラブされてもよい。
CO含有ガス状基質は理想的に、体積で少なくとも5%〜100%のCO、体積で20%〜95%のCO、体積で40%〜95%のCO、体積で60%〜90%のCO、または体積で70%〜90%のCOなどの相当割合のCOを含有する。6%等のより低い濃度のCOを有するガス状基質もまた、H及びCOも存在するときに特に適切であり得る。
ガス状基質が何らかの水素を含有することは必要ではないが、水素の存在は一般に、本発明の方法に従う生成物形成に有害ではないであろう。しかしながら、本発明のある特定の実施形態では、ガス状基質は、実質的に水素を含まない(1%未満)。ガス状基質はまた、体積で1%〜30%、または5%〜10%のCOなどのいくらかのCOを含有することができる。
前に述べたように、基質流の中の水素の存在は、全体的な炭素捕捉及び/またはエタノール生産性の効率の改善につながり得る。例えば、国際特許公開第0208438号は、様々な組成のガス流を用いてエタノールの生成を説明している。好ましい一実施形態では、63%のH2、32%のCO、及び5%のCHを含む基質流は、微生物増殖及びエタノール生成を促進するためにバイオリアクタ内のC.リュングダーリイの培養に提供された。培養が安定した状態に達し、微生物増殖がもはや主な目的ではなかったとき、基質流は、少し過剰のCOを提供し、かつエタノール生成を促進するために、15.8%のH、36.5%のCO、38.4%のN、及び9.3%のCOに切り替えられた。この文献はまた、CO及びHの濃度が高い場合及び低い場合のガス流を説明している。
したがって、アルコール生成及び/または全体的な炭素捕捉を改善するために、基質流の組成を変えることが必要であり得る。加えてまたはあるいは、この組成は、発酵反応の効率を最適化し、アルコール生成及び/または全体的な炭素捕捉を最終的に改善するために変えられ(すなわち、CO、CO、及び/またはHのレベルが調整され)得る。
いくつかの実施形態では、CO含有ガス状基質は、メタン、エタン、プロパン、石炭、天然ガス、原油、石油精製所(石油コークスまたはペトコークス(petcoke)を含む)からの低価値残渣、固形都市廃棄物、またはバイオマスなどの有機物質のガス化から供給され得る。バイオマスは、サトウキビからの砂糖、トウモロコシもしくは穀物からのデンプンなどの食料品の抽出及び処理中に得られる副産物、または林業によって発生した非食用バイオマス廃棄物を含む。これらの炭素質材料のいずれかは、合成ガス(相当量のH及びCOを含む合成ガス)を生成するためにガス化、すなわち、酸素で部分的に燃焼され得る。ガス化プロセスは典型的に、より少ない量のCO、HS、メタン、及び他の不活性物質とともに、0.4:1〜1.2:1のH対COのモル比で合成ガスを生成する。生成されたガスの比は、当該技術分野において既知の手段によって様々であり得、国際特許公開第200701616号に詳細に記載される。しかしながら、例として、以下のガス化装置の条件は、CO:Hの生成物比:原料組成(特にC:H比)、動作圧、温度プロファイル(製品構成の消火に影響を与える)、及び用いられる酸化剤(空気、酸素富化空気、純O、または水蒸気;水蒸気がより高いCO:H比をもたらす傾向がある)を調整するために変えられ得る。したがって、ガス化装置の動作条件は、発酵プロセスでのアルコール生産性及び/また全体的な炭素捕捉の向上のための最適化または望ましい組成を提供するために、発酵または1つ以上の他の流とのブレンドに望ましい組成を基質流に提供するように調整され得る。
他の実施形態では、COを含む基質は、炭化水素の水蒸気改質から得られ得る。天然ガス炭化水素等の炭化水素は、以下に従ってCO及びHを得るために高温で改質され得る。
O→nCO+(m/2+n)H
例として、水蒸気のメタン改質は、ニッケル触媒の存在下で、高温(700〜1100℃)で水蒸気をメタンと反応させて、CO及びHを生成することを含む。結果として得られる流(変換されたCHの1モルごとに1モルのCO及び3モルのHを含む)は、発酵槽に直接流されるか、または発酵プロセスでエタノール生産性及び/もしくは全体的な炭素捕捉を向上させるために別の源からの基質流とブレンドされ得る。メタノール等のアルコールはまた、同様の様式で使用され得るCO及びHを生成するために改質され得る。
別の実施形態では、COを含む基質は、製鋼プロセスから得られる。製鋼プロセスでは、鉄鉱石は、破砕及び微粉砕され、焼結またはペレット化などの前処理に付され、その後、高炉(BF)に流され、そこで精錬される。精錬プロセスでは、コークスは、還元剤として作用して鉄鉱石を還元する炭素源として役割を果たす。コークスは、材料を加熱及び溶解するための熱源として働く。熱金属は、酸素転炉(BOF)で高速ジェットの純酸素を熱金属の表面に対して注入することによって脱炭される。酸素は、熱金属中の炭素と直接反応して一酸化炭素(CO)を生成する。したがって、高CO含有量のガス流がBOFから排出される。本発明のある特定の実施形態によれば、この流は、1つ以上の発酵反応を供給するために使用される。しかしながら、当業者には明白であるように、COは、製鋼プロセス内の他の場所で生成され得、本発明の様々な実施形態によれば、このような代替供給源は、BOFからの排ガスの代わりに、または排ガスと組み合わせて使用され得る。供給源(すなわち、製鋼プロセス内の特定の段階)に応じて、排出されるガスのCO含有量は、それによって変動し得る。また、特にバッチ加工方式のプラントでは、1つ以上のこのような流に中断が生じる期間があり得る。
典型的には、製鋼所の脱炭プロセスから排出される流は、高濃度のCOと低濃度のHを含む。このような流は、更なる処理をほとんどまたは全くせずにバイオリアクタに直接流され得るが、高効率のアルコール生成及び/または全体的な炭素捕捉を達成するために、基質流の組成を最適化することが望ましい場合がある。例えば、基質流中のH濃度は、流がバイオリアクタに流される前に増大し得る。
本発明の特定の実施形態によれば、2つ以上の供給源からの流は、望ましくかつ/または最適の基質流を生成するために組み合わせ及び/またはブレンドされ得る。例えば、製鋼所の転炉からの排ガスなどの高濃度のCOを含む流は、製鋼所のコークス炉からのオフガスなどの高濃度のHを含む流と組み合わせられ得る。
製鋼プロセスの初期段階は典型的に、コークスを用いた鉄鉱石の還元を含む。コークスは、鉄鉱石を溶融及び還元するために使用される固体の炭素燃料源であり、典型的に製鋼所の現場で生成される。コークス製造プロセスでは、瀝青炭が一連の炉に供され、これは、密閉され、酸素の不在下において高温で、典型的には14〜36時間持続する周期で加熱される。炉に残った固体炭素がコークスである。これが消火塔に取られ、そこで散水または不活性ガス(窒素)の循環によって冷却され、その後、ふるいにかけられ、高炉に送られる。
このプロセス中に生成された揮発性化合物は通常、ガスが炉を加熱するための燃料として使用される前に、タール、アンモニア、ナフタレン、フェノール、軽油、及び硫黄を除去するために処理される。コークス製造の結果として生成されたガスは典型的に、高H含有量を有する(典型的な組成:55%H、25%CH、6%CO、3%N、2%他の炭化水素)。したがって、コークス炉ガスの少なくとも一部は、COを含む流とブレンドするために発酵プロセスに迂回され、アルコール生産性及び/または全体的な炭素捕捉を向上させることができる。培養物に有毒であり得る副産物を除去するためにコークス炉ガスを発酵槽に流す前にそれを処理することが必要であり得る。
あるいはまたは加えて、転炉からの排気流などのCOを含む間欠流は、前述のようにガス化プロセスで生成される合成ガスなどのCO及び任意にHを含む実質的に連続した流と組み合わせ、及び/またはブレンドされ得る。ある特定の実施形態では、これは、バイオリアクタへの実質的に連続した基質流の供給を維持するであろう。特定の実施形態では、ガス化装置によって生成された流は、望ましくまたは最適な組成を有する実質的に連続した基質流を維持するために、産業発生源からのCOの間欠的生成に従って増加及び/または減少され得る。別の実施形態では、ガス化装置の条件は、望ましくまたは最適なCO及びHの組成を有する実質的に連続した基質流を維持するために、産業発生源からのCOの間欠的生成に従って、CO:Hの比を増加または減少させるために前述のように変更されてもよい。
典型的に、本発明で使用される基質流はガス状であるが、本発明は、それに限定されない。例えば、一酸化炭素は、液体中のバイオリアクタに提供されてもよい。例えば、液体は、ガスを含有する一酸化炭素で飽和され、その後、その液体は、バイオリアクタに添加されてもよい。これは、標準的な方法論を用いて達成され得る。例として、マイクロバブル分散物発生器(Hensirisak et al.,Scale−up of microbubble dispersion generator for aerobic fermentation;Applied Biochemistry and Biotechnology Volume 101,Number 3,October,2002)は、この目的に使用され得る。
細菌の増殖及びCOからエタノールへの発酵を生じさせるために、CO含有基質ガスに加えて、好適な液体栄養培地がバイオリアクタに供給される必要があることが理解されるであろう。栄養培地は、使用される微生物を増殖させるのに十分なビタミン及びミネラルを含有する。COを唯一の炭素源として使用するエタノールの発酵に好適な嫌気性培地が当該技術分野において既知である。例えば、好適な培地は、上記に参照された米国特許第5,173,429号及び同第5,593,886号、国際特許公開第02/08438号、国際特許公開第2007/115157号、ならびに国際特許公開第2008/115080号に記載される。本明細書の「実施例」は、他の例示的な培地を提供する。
発酵は望ましくは、所望の発酵(例えば、COからアルコール)が生じるのに適切な条件下で実施されるべきである。考慮されるべき反応条件としては、圧力、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地の酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽リアクタを使用する場合)、植菌レベル、液相中のCOが制限的にならないことを確保する最大ガス基質濃度、及び生成物抑制を回避するための最大生成物濃度が挙げられる。
最適な反応条件は部分的に、使用される特定の微生物による。しかしながら、一般に、発酵は、周囲圧力より高い圧力で実施されることが好ましい場合がある。高められた圧力での操作により、気相から液相へのCO移動速度の著しい増加が可能になり、その液相でCOは、微生物によってエタノール生成のための炭素源として取り込まれる。これは、ひいては、バイオリアクタが大気圧より高い圧力で維持される場合、滞留時間(流入ガス流速で割ったバイオリアクタ中の液体体積として定義される)が減少され得ることを意味する。
また、所定のCO−エタノール変換速度は一部、基質の滞留時間の関数であり、所望の滞留時間を達成することは、ひいては、バイオリアクタの必要容量を決定し、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクタの容量、その結果として、発酵設備の資本コストを大きく削減することができる。米国特許第5,593,886号に付与された実施例によれば、リアクタの容量は、リアクタの動作圧力の増加に線形比例して減少され得、すなわち、10気圧の圧力で操作されるバイオリアクタには、1気圧の圧力で操作されるリアクタの容量の10分の1のみが必要である。
ガスからエタノールへの発酵を高圧で実施することの利点は、他の場所にも記載されている。例えば、国際特許公開第02/08438号は、30psig及び75psigの圧力下で実施されたガス−エタノール発酵で、それぞれ150g/l/日及び369g/l/日のエタノール生産性が得られたことを説明している。しかしながら、類似の培地及び流入ガス組成を用いて大気圧で実施された例となる発酵では、1日あたり1リットルにつき10〜20分の1のエタノールを生成することを見出した。
CO含有ガス状基質の導入速度は、液相中のCO濃度が制限的にならないことを確保するようなものであることも望ましい。これは、COが制限された条件であれば、エタノール生成物が培養物によって消費されるという結果であり得るためである。
特定の実施形態では、微生物培養は、典型的にCOを含む基質を利用して、酢酸塩及び/またはエタノールを含む生成物を生成するC.オートエタノゲナムなどの酢酸生成菌を含む。このような実施形態では、微生物培養は、増殖及び酢酸生成を促進するために発酵ブロス内の望ましい条件下で増殖され得る。酢酸生成菌の増殖(または生成)期は典型的に、同時アルコール生成をほとんどまたは全くせずに、細胞性物質(バイオマス蓄積)及び酢酸生成の増加と関連付けられる。本発明の特定の実施形態では、微生物培養は、発酵ブロスに存在する酸が対応するアルコール(例えば、酢酸塩からエタノール、及び/または酪酸塩からブタノール)に変換されるように摂動される。酸からアルコールへの変換は、相変換と称され得る。
本発明の特定の実施形態では、微生物培養は、生成期中の培養によって生成された酸がアルコールに変換されるように摂動され得る。本発明の一実施形態では、本方法は、微生物発酵によって所望の酸の生成を結び付け、その後、その酸を使用して、本明細書に前述された方法に従ってその対応するアルコールを生成するバッチ供給または連続プロセスである。この実施形態では、本方法は、a)一次バイオリアクタで、基質(好ましくは一酸化炭素を含む基質、より好ましくは一酸化炭素を含むガス状基質)を発酵させて、1つ以上の酸を生成するステップ、b)二次バイオリアクタで、一酸化炭素を含む基質の存在で1つ以上の細菌株を培養するステップ、ならびにc)1つ以上の細菌株が1つ以上の酸に対応するアルコールを生成する変換期にある時点で(a)から二次バイオリアクタに1つ以上の酸を導入するステップを少なくとも含む。関連した実施形態では、さらなる増殖反応は、細菌を一次バイオリアクタ及び/または二次バイオリアクタに供給することができる。
何らかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、C.オートエタノゲナムなどの本発明に従った酢酸生成菌によって酸からアルコールへの変換は、アルデヒド酵素の酸化還元酵素(AOR)を含む生化学的経路を介して生じることが考慮される。AORは、非活性化カルボン酸をアルデヒドに還元することができる固有のタングステン含有酵素である。アルデヒドは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによってアルコールにさらに還元され得る。AORは、ソルベント生成能経路の重要な分岐を表す。タングステン補助因子は、酵素活性に不可欠であると示されている。これらの酵素は、クロストリジウム、デスルフィトバクテリウム、及びパイロコッカスなどの発酵性微生物に見出され得る。最良に特徴付けられたAORは、4つが特徴付けられた5つをゲノムが含むパイロコッカスフリオサスに属する。P.フリオサスの第1のAORは、広い基質範囲を有するが、アミノ酸由来のアルデヒドを好む。その結晶構造から、モリブドプテリンに基づくタングステン結合部位の存在が明らかになった。第2のAORは、グリセルアルデヒド−3−リン酸フェレドキシンオキシドレダクターゼ(GFOR)で、グリセルアルデヒド−3−リン酸のみを利用し、第3のAOR、ホルムアルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ(FOR)は、1〜3炭素アルデヒドを好む。第4のAORであるWOR5は、広い基質範囲を有する。AORは、クロストリジウムフォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)及びサーモアセチカム(thermoaceticum)からも精製されている。生成物回収。
発酵反応の生成物は、既知の方法を用いて回収され得る。例示的な方法としては、国際特許公開第2007/117157号、国際特許公開第2008/115080号、ならびに米国特許第6,340,581号、同第6,136,577号、同第5,593,886号、同第5,807,722号、及び同第5,821,111号に記載される方法が挙げられる。しかしながら、簡潔に、単なる例として、エタノールは、発酵ブロスから、分別蒸留または蒸発、及び抽出発酵などの方法によって回収され得る。
発酵ブロスからのエタノール蒸留により、エタノールと水の共沸混合物(すなわち、エタノール95%及び水5%)が得られる。無水エタノールは、その後、当該技術分野において周知である分子ふるいエタノール脱水技術を用いて得られ得る。
抽出発酵法は、発酵生体に対する毒性リスクの低い水混和性溶媒を使用して、エタノールを希釈発酵ブロスから回収する方法である。例えば、オレイルアルコールは、このタイプの抽出プロセスに使用され得る溶媒である。このプロセスでは、オレイルアルコールを発酵槽に連続的に導入すると、この溶媒が上昇し、発酵槽の上部に層を形成し、発酵槽は、これを連続的に抽出し、遠心分離機に送り込む。次に、水及び細胞は、そのオレイルアルコールから容易に分離され、発酵槽に戻されるが、エタノールを含んだ溶媒は、フラッシュ蒸発ユニットに送り込まれる。エタノールの大部分は、蒸発し凝結するが、非揮発性のオレイルアルコールは、発酵での再使用のために回収される。
酢酸塩もまた、当該技術分野において既知の方法を用いて発酵ブロスから回収され得る。例えば、活性炭フィルタを含む吸着システムが使用され得る。この場合、微生物細胞は通常、好適な分離法を用いて発酵ブロスから最初に除去される。生成物回収のために細胞を含まない発酵ブロスを生成する多数のろ過ベースの方法は、当該技術分野において既知である。次に、細胞を含まないエタノール及び酢酸塩を含有する透過物を活性炭を詰めたカラムに通して酢酸塩を吸着させる。酸の形態の酢酸塩(酢酸)が塩(酢酸塩)の形態よりも活性炭に容易に吸着される。したがって、活性炭カラムに通す前に発酵ブロスのpHを3未満に下げて大部分の酢酸塩を酢酸形に変換するのが好ましい。
活性炭に吸着された酢酸は、当該技術分野において既知の方法を用いて溶離によって回収され得る。例えば、エタノールは、結合した酢酸塩を溶離するために使用されてもよい。ある特定の実施形態では、発酵プロセスそのものによって生成されたエタノールは、酢酸塩を溶離するために使用され得る。エタノールの沸点は、78.8℃であり、酢酸の沸点は、107℃であるため、エタノール及び酢酸塩は、蒸留などの揮発性ベースの方法を用いて容易に相互に分離され得る。
発酵ブロスから酢酸塩を回収するための他の方法が当該技術分野において既知あり、本発明のプロセスに使用され得る。例えば、米国特許第6,368,819号及び同第6,753,170号は、発酵ブロスから酢酸の抽出に使用され得る溶媒及び共溶媒系を説明している。エタノールの抽出発酵のために上記に記載されたオレイルアルコールベースの系と同様に、米国特許第6,368,819号及び同第6,753,170号に記載される系は、酢酸を抽出するために発酵微生物の存在下または不在下のいずれかで発酵ブロスと混合され得る水非混和性の溶媒/共溶媒を説明している。次に、酢酸を含有する溶媒/共溶媒は、蒸留によってブロスから分離される。その後、第2の蒸留ステップは、酢酸を溶媒/共溶媒系から精製するために使用され得る。
発酵反応の生成物(例えば、エタノール及び酢酸塩)は、発酵ブロスから、ブロスの一部を発酵バイオリアクタから連続的に除去し、微生物細胞をブロスから分離し(ろ過によって都合よく)、かつ1つ以上の生成物をブロスから同時または順次回収することによって回収され得る。上記に記載された方法を用いて、エタノールは、蒸留によって都合よく回収され得、酢酸塩は、活性炭上への吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、発酵バイオリアクタに戻され得る。エタノール及び酢酸塩が除去された後に残る無細胞透過物もまた、発酵バイオリアクタに戻され得る。バイオリアクタに戻される前に、追加の栄養素(ビタミンBなど)が栄養培地を補充するために無細胞透過物に添加されてもよい。また、ブロスのpHが活性炭への酢酸の吸着を増強するために上記に記載されるように調整された場合、そのpHは、バイオリアクタに戻される前に発酵バイオリアクタでブロスのpHと類似したpHに再調整されるべきである。
CO除去
本発明のある特定の実施形態によれば、CO除去に使用されるシステムは、混合流からCOを選択的に分離するための手段、COを生成物に変換する手段、及び/またはCOを貯蔵もしくはさらなる使用のために用意するための手段を含む。あるいは、このプロセスは、流中のCOを生成物及び/または貯蔵もしくはさらなる使用に好適な物質に直接変換するための手段を含む。
一実施形態では、COは、以下に提供された例示的方法などの当該技術分野において既知の任意の分離手段を用いて、混合ガス流から選択的に分離される。本発明の実施形態に使用され得る他のCO分離の他の方法としては、CaOなどの金属酸化物による抽出、及び多孔質炭素の使用、またはアミン抽出などの選択的溶媒抽出が挙げられる。
水性モノエタノールアミン(MEA)、ジグリコールアミン(DGA)、ジエタノールアミン(DEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、及びメチルジエタノールアミン(MDEA)などのアミンは、天然ガス流及び精製プロセス流からCO及び硫化水素を除去するために工業的に広く使用されている。
そのようなプロセスで分離されたCOは、永久的に貯蔵され得る。地質学的貯蔵(地中隔離)、海洋貯蔵、及び鉱物貯蔵(例えば、金属炭酸塩への変換)などの永久的なCO貯蔵の多くの実施例が当該技術分野において既知である。
地質学的貯蔵は、一般に超臨界形の二酸化炭素を地下の地層に直接注入することを含む。油田、ガス田、含塩層、採掘不可能な炭層、及び塩分充満玄武岩層が貯蔵場所として提案されている。様々な物理的(例えば、高不透過性のキャップロック)及び地球化学的なトラップ機構は、COが地表に逃げるのを防止するために使用され得る。よく選択され、設計され、管理された地質学的貯蔵場所の場合、気候変動に関する政府間パネルの見積では、COは数百万年間トラップされることができ、その場所は、注入されたCOの99%以上を1,000年以上保持する見込みとのことである。
海洋貯蔵のいくつかの選択肢も提案されている。(i)船舶またはパイプラインによって水深1000m以上の海中にCOを「溶解」注入し、その後COを溶解させる;(ii)水深3000m以上の海底にCOを直接「湖」堆積させ、そこでCOは水より高密度になり、「湖」を形成すると考えられ、COの環境中への溶解を遅らせる;(iii)COを重炭酸塩に変換する(石灰石を用いる);及び(iv)海底に既に存在する固体包接水和物中にCOを貯蔵するか、またはより多くの固体包接化合物の増殖に使用する。
鉱物貯蔵では、COは、豊富に得られる金属酸化物と発熱反応して安定した炭酸塩を生成する。このプロセスは、長年にわたって自然に生じ、地表の石灰石の多くはそれに由来している。反応速度は、例えば、高温及び/もしくは高圧で反応させることによって、または鉱物の前処理によってより速くすることができるが、この方法は、さらなるエネルギーを必要とし得る。
あるいは、分離されたCOは、炭化水素への直接または間接変換など、生成物を製造するために使用されてもよい。炭化水素を生成するための周知のプロセスは、CO及びHからメタノールを製造するためのプロセスである。水の触媒的または電気化学的解離によって酸素及び水素イオンを生成し、この水素イオンを用いてCOを炭化水素に変換し得ることも当該技術分野において既知である。COが2400℃まで加熱される場合、これは、一酸化炭素と酸素に分解する。次に、フィッシャートロプシュ法を用いて、COを炭化水素に変換することができる。このようなプロセスでは、COは、発酵プロセスに戻され得る。例として、必要な温度は、日光をガスの上に集める鏡を含むチャンバを用いることによって達成され得る。
あるいは、分離されたCOは、生成物を生成するために更なる発酵(複数可)で使用されてもよい。当業者であれば、COを生成物に変換する微生物発酵反応の多くの実施例があることを理解するであろう。例えば、COは、メタン生成微生物を用いた嫌気性発酵によってメタンに変換されてもよい。これ及び他の関連した発酵プロセスの実施例は、前述の国際特許公開第2006/108532号に開示される。COを用いて生成物を生成する発酵反応のさらなる実施例は、前述の国際特許公開第2007/117157号及び国際特許公開第2008/115080号で提供される。
COはまた、合成ガス生成における望ましい原料である。COを改質装置(ガス化装置)に供給して、メタン消費を減少させ、H:CO比を改良/増大することができる。したがって、一実施形態では、分離されたCOの少なくとも一部は、発酵プロセスに組み込まれたガス化装置に供給してもよい。
本発明の別の実施形態では、分離されたCOは、コンクリートセメントなどの製品に変換され得る。サンゴが殻や礁を作るときにサンゴによって作り出される海洋セメントを模倣したプロセスでは、マグネシウム及び/またはカルシウムをCOと結合させて炭酸塩を製造することができる。
COはまた、藻類の光合成プロセスによって容易に吸収され、これは、廃水流から炭素を捕捉するために使用され得る。藻類は、CO及び日光の存在下で迅速に成長し、これを収穫してバイオディーゼル及び/またはアルコールなどの製品に変換することができる。
あるいは、COは、追加の分離ステップの必要なしに流から直接捕捉されてもよい。例えば、特定の実施形態では、COを含む流、好ましくは、ガス流は、第2の発酵プロセスによって流されて、COを生成物に変換してもよい。
ガス分離
本発明のある特定の実施形態によれば、ガス分離に使用されるプロセスは、極低温分別法、分子ふるい法、吸着法、圧力スイング吸着法、または吸収法のうちの1つ以上のステップを含む。どのプロセスが使用されるにしても、ガス分離を実施して、ガス流から以下の成分:H、O、CO、及びCOのうちの1つ以上の少なくとも一部を単離することができる。加えてまたはあるいは、本発明の実施形態によるガス分離は、ガス流(例えば、N、O)から1つ以上の部分を除去するために使用され、それにより残りは、バイオリアクタなどでより効率的に使用され得るようにする。
吸着は、ガス、液体、または溶質を固体または液体の表面に蓄積することである。吸収は、固体または液体などの一つの物質が、その分子間の微小孔または空隙から液体またはガスなどの別の物質を取り込むプロセスである。
圧力スイング吸着(PSA)は、ガスの精製に使用され得る断熱プロセスであり、高圧下で圧力容器に含まれた固定床中の好適な吸着剤による吸着によって随伴不純物を除去する。吸着剤の再生は、向流減圧によって、かつ前に回収されたほぼ生成物品質のガスを用いて低圧でパージすることによって達成される。生成物の連続フローを得るために、好ましくは少なくとも2つの吸着装置が提供され、それにより少なくとも1つの吸着装置は、ガス流(廃ガス/排ガス/バイオガスのガス流など)を受容し、実際に所望純度の生成物を生成するようにする。同時に、減圧、パージ、及び吸着圧に戻す再加圧という次のステップは、他の吸着装置(複数可)によって実行される。吸着及び除去される不純物の種類に応じて、一般的な吸着剤が当業者によって容易に選択され得る。好適な吸着剤としては、ゼオライト分子ふるい、活性炭、シリカゲル、または活性アルミナが挙げられる。吸着床の組み合わせが互いの上に使用され、それにより吸着装置の中味をいくつかの異なる区間に分割することができる。圧力スイング吸着法は、圧力、温度、フロー、及びガス状の吸着される相の組成などのパラメータにおける、振り子のように揺れ動く規則的変動を含む。
PSAを用いるガスの精製または分離は通常、周囲温度に近い供給ガス温度で実施され、それにより除去される成分は選択的に吸着される。吸着は、理想的には同様の周囲温度で吸着剤の再生を可能するのに十分に可逆的であるべきである。PSAは、CO、CO、及びHを含む最も一般的なガスの処理及び/または精製に使用され得る。圧力スイング吸着技術の実施例は、Ruthven,Douglas M.et al.,1993 Pressure Swing Adsorption,John Wiley and Sonsに詳細に記載される。
分子ふるいは、ガス及び液体の吸着剤として使用される正確かつ均一な大きさの微小孔を含む材料である。その孔を通過するのに十分に小さい分子が吸着されるが、より大きい分子は吸着されない。分子ふるいは、一般的なフィルタに類似しているが、分子レベルで動作する。分子ふるいは、アルミノケイ酸塩鉱物、粘土、多孔質ガラス、微小孔チャコール、ゼオライト、活性炭、または窒素及び水などの小分子が拡散できる開口構造を有する合成化合物からなることが多い。分子ふるいの再生法としては、圧力変化(例えば、酸素濃縮器中で)、加熱、及びキャリヤーガスによるパージが挙げられる。
膜は、例えば、水素を窒素及びメタンのようなガスから分離し、水素を回収し、メタンをバイオガスから分離し、または水蒸気、CO、HS、もしくは揮発性有機液体を除去するために使用されてもよい。多孔質及び非孔質膜を含む様々な膜は、本開示を考慮する上で当業者に明白であるように、所望の目的を果たすために選択され得る。例えば、パラジウム膜は、Hのみを透過させる。特定の実施形態では、COは、CO透過性の膜を用いて流から分離され得る。流から分離されたCOは、前述のガス化装置などのCO除去装置に流され得る。
極低温分別法は、ガス流を圧縮することと、それを蒸留による分離が可能になるのに十分に低い温度まで冷却することとを含む。これは、例えば、COを除去するために使用され得る。ある特定の成分(例えば、水)は通常、極低温分別を実施する前に流から除去される。
同じ技術はまた、ガス流から酸素を除去して、CO及び/またはCO豊富な嫌気性流を生成するために使用され得る。加えて、酸素は、例えば、燃焼排ガスを、通性好気性微生物、還元炭素基質、及び微生物に必要な栄養素を含む密閉発酵槽に流すことによって生物学的に除去され得る。通性好気性微生物は、酸素を消費して、CO及び/またはCO豊富な嫌気性流を作り出すことができる。
をガス流から分離または除去するための代替的方法もまた、当該技術分野において周知である。しかしながら、例として、酸素は単純に、熱銅または触媒コンバータを用いて減少され、及び/または除去され得る。
ガス分離プロセスを特定のガス発生源に合わせて調整することにより、別の方法で商業的に実現不能な生物変換プロセスを商業的に実現可能にすることができる。例えば、自動車の排気流からのCOの適切な分離により、使用可能なエネルギー源がその流から得られてもよく、不必要なガス排出が低減され得る。本発明の一実施形態によれば、ガス状基質は、CO及びHを含有する合成ガスを含み、ガス分離は、流から水素を除去するために実施され、それにより水素が単離され、発酵プロセス以外で燃料として使用され得るようになる。COは、発酵反応を供給するために使用され得る。
間欠ガス流
本発明の様々な態様によれば、発酵基質は、産業発生源から誘導される。典型的には、産業発生源由来の基質はガス状であり、このようなガスは、組成及び/または圧力が様々である場合があり、場合によっては間欠性であり得る。ある特定の実施形態では、本発明は、特に基質供給が間欠的または非連続的性質である場合に、生成物を生成するために発酵用バイオリアクタへのガス状基質の供給を改良及び/または「滑らかに」するための手段を提供する。ガス状基質流の連続性を改良または「平滑化」するための任意の既知の手段が使用され得るが、本発明の特定の実施形態は、間欠的な基質流を受容し、かつ実質的に連続した基質流をバイオリアクタに送達するように適合された少なくとも1つの緩衝手段を含むプロセスまたはシステムを含む。
特定の実施形態では、緩衝手段は、間欠ガス流を受容するように適合された貯蔵タンクを含む。間欠流は、貯蔵タンクに入る前に圧縮されてもよく、あるいは、貯蔵タンクは、基質流を受容するときに膨張するように構成されてもよい。例えば、緩衝貯蔵タンクは、ガス状基質を収容するために上昇及び降下するように適合された「浮き屋根」を含み得る。浮き屋根型の貯蔵タンクは、ガス供給における需給変動に対応するために使用されるものなど、当該技術分野において既知である。貯蔵タンクは、発酵バイオリアクタに実質的に連続した基質流を供給するように適合されてもよく、したがって、タンクを出る流の流速を制御するための手段を含み得る。
このような実施形態では、貯蔵タンクは、基質貯留槽としての役割を果たす。しかしながら、代替的実施形態によれば、緩衝貯蔵タンクは、同じ機能を果たす代替の貯蔵形態に置き換えられてもよい。例えば、代替的形態は、吸収、吸着、及び圧力、ならびに/または温度スイングの1つ以上を含んでもよい。加えてまたはあるいは、基質は、必要とされるまで、貯留槽で液体中に溶解されるか、または多孔質固体材料などのマトリクスに保持され得る。本発明の特定の実施形態では、基質は、貯蔵タンクで液体に溶解され、必要な場合に溶液の状態でバイオリアクタに直接送達され得る。
あるいは、バイオリアクタ自体は、発酵液体栄養培地上の上部空間が間欠流のための緩衝器として機能するように構成されてもよい。例えば、このシステムは、ガス状基質流(利用可能な場合)を圧縮し、それをバイオリアクタに流すための手段を含み得る。バイオリアクタの上部空間の圧力は、追加の基質が提供されるときに増加する。このようにして、基質は、微生物発酵による生成物への変換のために連続的に入手できるようになる。
別の実施形態では、システムは、複数の間欠的供給源からのガス状基質流を受容するように適合され得る。このようなシステムは、バイオリアクタに実質的に連続した基質流を提供するために、流間で組み合わせ及び/または切り替えるための手段を含み得る。
発酵反応に使用される微生物は典型的に、許容可能な温度範囲を有し、それを上回るかまたは下回ると反応速度は著しく遅くなる。したがって、システムは、冷却手段を含み得、基質流の入手が限られている場合、バイオリアクタ中の培地は冷却されて、発酵反応を緩徐化し、基質の需要を低下させ得る。反対に、基質流の入手が増加した場合は、バイオリアクタ内部の温度は、反応速度を増大するために温度範囲の上方限界に上げられてもよい。
あるいはまたは加えて、冷却手段は、発酵システムに対するピークの冷却負荷を削減するために冷却負荷を平準化するように構成されてもよい。例えば、所定の期間(ガスが処理されている間)中、ガス供給流内の熱及び/または発酵の発熱に対処するのに必要な冷却負荷が2MWであると仮定されたい。この期間中、発酵タンクの内容物を一定温度に維持するために、熱をこの速度で除去してタンク内の一定温度を維持しなければならない。反対に、ガスが処理されず、発熱が本質的に止まっている期間中、冷却負荷はゼロである。したがって、特に大規模工業用途の場合、冷却負荷が非常に大きくなる期間があり、これがシステムに著しい制約を課すことになる。冷却負荷を平準化することによって最大の必要な冷却速度は減少する。したがって、連続(またはより連続)ベースであっても、小規模の冷却システムで操作することが可能である。
前述の実施例のパラメータを使用するが、ガスが処理されている期間及びガスが処理されていない期間が等期間であると仮定すると、熱は、発酵タンクから連続的に1MWで除去され得る。これらの条件下では、ガスが処理されているときの除熱速度は熱の注入/発生についていけず、発酵タンク内の温度は上昇することになる。ガスは止まったが冷却が続くと、発酵タンク内の温度は降下する。このように、1MWの連続負荷用の大きさの冷却システムが、半分の時間しか動作しない2MW負荷用の大きさのシステムよりも必要となる。しかしながら、温度上昇とその後の降下は、タンク内部の温度を微生物の許容範囲内に維持するために制限されなければならない。したがって、特定の実施形態によれば、一定ではないが、冷却負荷は、最大及び最小の冷却負荷間に小さい差しかないという点で、その内部での変動がより緩やかかつ/またはより限定的であり得るように「滑らかにする」ことができる。
発酵のための資源としての産業オフガス
本発明の他の態様によれば、産業廃ガスが発酵反応に使用され、その際、それに好適なガスにするために使用される追加のスクラビングまたは前処理ステップがないかまたはごく最小限である。
廃ガスは、様々な産業プロセスからのものであってよい。本発明は、高容量のCOを含有する産業煙道ガスなどのガス状基質からのエタノール生成を支持することに特に適用可能性を有する。例としては、鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭のガス化、バイオマスのガス化、発電、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造時に生成されるガスが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、廃ガスは、製鋼プロセス中に発生する。例えば、当業者であれば、製鋼プロセスの様々な段階で発生する廃ガスは、高いCO及び/またはCO2濃度を有することを理解するであろう。特に、酸素転炉(例えば、BOFまたはKOBM)などの様々な製鋼法において鋼の脱炭中に生成される廃ガスは、高CO含有量及び低O2含有量を有しており、嫌気性カルボキシド栄養性発酵のための好適な基質となっている。
鋼の脱炭中に生成される廃ガスは任意に、水に流して粒状物質を除去した後、廃棄物集積所または廃ガスを大気中に排出するための煙道に流される。典型的に、このガスは、1つ以上のファンを用いて廃棄物集積所に送り込まれる。
本発明の特定の実施形態では、鋼の脱炭中に生成される廃ガスの少なくとも一部は、好適な導管手段によって発酵システムに転用される。例として、パイプまたは他の移送手段を製鋼所の廃ガス集積所に接続して、廃ガスの少なくとも一部を発酵システムに転用することができる。さらに、廃ガスの少なくとも一部を発酵システムに振り向けるために1つ以上のファンを使用することができる。本発明の特定の実施形態では、導管手段は、鋼の脱炭中に生成される廃ガスの少なくとも一部を発酵システムに提供するように適合される。バイオリアクタにガスを供給するための制御及び手段は、本発明に関連する分野の当業者に容易に明らかであろう。
製鋼所は、鋼及びその後の廃ガスを実質的に連続的に生成するように適合させることができるが、このプロセスの特定の態様は間欠的な場合がある。典型的には、鋼の脱炭は、数分から数時間続くバッチプロセスである。したがって、導管手段は、鋼の脱炭中に生成されるガスなどの廃ガスの少なくとも一部を、その廃ガスが所望の組成を有していると判定される場合に発酵システムに振り向けるように適合され得る。
発酵プロセスに使用されるバイオリアクタの内容物のpHは、必要に応じて調整され得る。適切なpHは、本発明に関連する分野の当業者に理解されるように、使用される栄養培地及び微生物を考慮して、特定の発酵反応に必要とされる条件に応じて異なるであろう。好ましい一実施形態では、クロストリジウムオートエタノゲナムを利用するCOを含有するガス状基質の発酵では、pHは、約5.5〜6.5、最も好ましくは約5.5に調整され得る。さらなる例としては、モーレラサーモアセチカ(Moorella thermoacetica)を用いる酢酸生成の場合のpH5.5〜6.5、クロストリジウムアセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)を用いるブタノール生成の場合のpH4.5〜6.5、及びカルボキシドサーマスハイグロゲナフォルマンス(Carboxydothermus hygrogenaformans)を用いる水素生成の場合のpH7が挙げられる。当業者であれば、バイオリアクタを所要pHに維持するための好適な手段を認識するであろう。しかしながら、例として、NaOHなどの塩基水溶液及びHSOなどの酸水溶液が発酵培地のpHの上げ下げ及び所望pHの維持に使用され得る。
本発明のさらなる利点は、廃ガスを発酵反応に利用する前にそのガスに対して実施されるスクラビング及び/または他の処理プロセスがないかまたはごく最小限であるため、そのガスが産業プロセスに由来する追加の材料を含有し、その追加の材料が少なくとも一部、発酵反応のための供給原料として使用され得るという点である。
流のブレンド
前述のように、発酵反応の効率、アルコール生成、及び/または全体的な炭素捕捉を改善するために、産業廃水流を1つ以上のさらなる流とブレンドすることが望ましい場合がある。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明のいくつかの実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、下記に従ってCOをエタノールに変換する。
6CO+12H+3HO→COH+4CO
しかしながら、H2の存在下では、全体的な変換は次の通りである。
6CO+12H+3HO→3COH
したがって、産業用流が高いCO含有量を有するが、Hが最小限であるかまたはそれを含まない場合、Hを含む1つ以上の流を、COを含む廃水流とブレンドした後、ブレンドされた基質流を発酵槽に提供することが望ましい場合がある。発酵の全体的な効率、アルコール生産性、及び/または全体的な炭素捕捉は、ブレンドされた流中のCO及びHの化学量論に依存する。しかしながら、特定の実施形態では、ブレンドされた流は、実質的に以下のモル比、20:1、10:1、5:1、3:1、2:1、1:1、または1:2でCO及びHを含み得る。
加えて、発酵の異なる段階で特定の比率のCO及びHを提供することが望ましい場合がある。例えば、比較的高いH含有量(1:2のCO:H)を有する基質流は、開始時の発酵段階及び/または急速微生物増殖期に提供されてもよい。しかしながら、増殖期が緩徐化し、それにより培養物が実質的に安定した微生物密度で維持されるようになると、CO含有量は増加し得る(少なくとも1:1または2:1以上など、その場合H濃度は0以上であり得る)。
流のブレンドはまた、特にCOを含む廃水流が間欠的な性質である場合、さらなる利点を有し得る。例えば、COを含む間欠廃水流は、CO及び任意にHを含む実質的に連続した流とブレンドされ、発酵槽に提供され得る。本発明の特定の実施形態では、実質的に連続した流の組成及び流速は、実質的に連続した組成及び流速の基質流を発酵槽に供給することを維持するために、間欠流に従って変えることができる。
2つ以上の流をブレンドして所望の組成を達成することは、すべての流の流速を変動させることを含んでもよく、または1つ以上の流は、他の流(複数可)が基質流を所望の組成に「調整」もしくは最適化するために変動されながら一定に維持されてもよい。連続的に加工される流の場合、さらなる処理(例えば緩衝)は、ほとんどまたは全く必要なく、流は、発酵槽に直接供給され得る。しかしながら、1つ以上の流が間欠的に得られる場合、ならびに/または流が連続的に得られるが、可変速度で使用及び/もしくは生成される場合、流の緩衝貯蔵庫を提供することが必要な場合がある。
当業者であれば、ブレンドする前に流の組成及び流速を監視することが必要であることを理解するであろう。ブレンドされた流の組成の制御は、構成の流の割合を変えて、標的または望ましい組成を達成することによって達成され得る。例えば、ベース負荷ガス流が主にCOであってもよく、高濃度のHを含む第2のガス流が特定のH:CO比を達成するためにブレンドされてもよい。ブレンドされた流の組成及び流速は、当該技術分野において既知の任意の手段によって監視され得る。ブレンドされた流の流速は、ブレンド操作とは無関係に制御され得るが、個々の構成の流が取り出され得る速度は、限度内に制御されなければならない。例えば、間欠的に生成され、緩衝貯蔵庫から連続的に取り出される流は、緩衝貯蔵庫の容量が枯渇したり容量一杯になったりしないような速度で取り出されなければならない。
ブレンドの時点で、個々の構成ガスは、混合チャンバに入り、これは典型的に、小型容器またはパイプの一部である。このような場合、この容器またはパイプには、個々の成分の撹乱及び迅速な均一化を促進するように配置されたバッフルなどの静的混合デバイスが提供され得る。
ブレンドされた流の緩衝貯蔵庫もまた、バイオリアクタへの実質的に連続した基質流の供給を維持するために必要に応じて提供され得る。
所要または望ましいブレンドを達成するために、構成の流の組成及び流速を監視し、流のブレンドを適切な割合に制御するように適合されたプロセッサが、任意にシステムに組み込まれ得る。例えば、特定の成分は、アルコール生産性及び/または全体的な炭素捕捉の効率を最適化するために、必要に応じてまたは利用可能な様式で供給されてもよい。
CO及びHを常に特定の比率で供給することが可能でなく、また費用効果的でもない場合がある。したがって、上記に記載されるように2つ以上の流をブレンドするように適合されたシステムは、利用可能な資源を用いて比率を最適化するように適合され得る。例えば、Hの不適切な供給が利用可能である場合、システムは、最適な流を供給し、アルコール生成及び/または全体的な炭素捕捉における改善された効率を達成するために、過剰なCOをシステムから迂回させるための手段を含み得る。本発明のある特定の態様では、システムは、少なくとも2つの流の流速及び組成を連続的に監視し、それらを組み合わせて最適な組成の単一のブレンドされた基質流、及び最適化された基質流を発酵槽に流すための手段を生み出すように適合される。アルコールを生成するためにカルボキシド栄養性微生物を用いる特定の実施形態では、基質流の最適な組成は、少なくとも0%のH及び約1:2までのCO:Hを含む。
非制限的な例として、本発明の特定の実施形態は、CO源として鋼の脱炭由来の転炉ガスの利用を含む。典型的に、このような流は、Hをほとんどまたは全く含まないため、より望ましいCO:H比を達成するために、COを含む流を、Hを含む流と組み合わせるのが望ましい場合がある。Hは、製鋼所のコークス炉で大量に生成されることが多い。したがって、Hを含むコークス炉からの廃水流は、所望の組成を達成するためにCOを含む転炉からの廃水流とブレンドされ得る。
加えてまたはあるいは、ガス化装置は、様々な供給源からCO及びHを生成するために提供され得る。ガス化装置によって生成される流は、望ましい組成を達成するためにCOを含む流とブレンドされ得る。当業者であれば、ガス化装置の条件が特定のCO:H比を達成するために制御され得ることを理解するであろう。さらに、ガス化装置は、増強及び減弱されて、ガス化装置によって生成されるCO及びHを含む流の流速を増加及び減少させることができる。したがって、ガス化装置からの流は、アルコール生産性及び/または全体的な炭素捕捉を増大するために、COを含む基質流とブレンドされてCO:H比を最適化することができる。さらに、ガス化装置は、増強及び減弱されて様々な流速及び/または組成の流を提供することができ、これは、望ましい組成の実質的に連続した流を達成するためにCOを含む間欠流とブレンドされ得る。
COを含む基質流とブレンドされ得るCO及び/またはHの他の供給源は、天然ガス及び/またはメタンなどの炭化水素の改質ならびにメタノールの改質を含む。
本発明の実施形態が上記に記載される。しかしながら、一実施形態で必要な特定のステップまたは段階が別の実施形態において必要でない場合があることが理解されるべきである。反対に、特定の実施形態の説明に含まれるステップまたは段階は、具体的に記載されない実施形態において任意に有利に利用されてもよい。
本発明は、任意の既知の移行手段によってシステム(複数可)を通ってまたはその周囲を移動し得るあらゆる種類の流を参照して広範に記載されるが、ある特定の実施形態では、基質及び/または排気流は、ガス状である。当業者であれば、特定の段階が好適な導管手段などによって連結されるか、または流をシステム全体にわたって受容するか、もしくは流すように構成可能であり得ることを理解するであろう。ポンプまたは圧縮装置は、特定の段階への流の供給を促進するために提供されてもよい。さらに、圧縮装置は、1つ以上の段階、例えばバイオリアクタに提供されるガスの圧力を上昇させるために使用され得る。上記に論じられるように、バイオリアクタ内のガスの圧力は、その中で実施される発酵反応の効率に影響を与え得る。したがって、圧力は、発酵の効率を改善するように調整され得る。一般的な反応に対する好適な圧力は、当該技術分野において既知である。
加えて、本発明のシステムまたはプロセスは任意に、プロセスの全体効率を改善するために他のパラメータを調節及び/または制御するための手段を含み得る。1つ以上のプロセッサは、プロセスの特定のパラメータを調節及び/または制御するためにシステムに組み込まれ得る。例えば、特定の実施形態は、基質及び/または排気流(複数可)の組成を監視するための判定手段を含んでもよい。加えて、特定の実施形態は、基質流(複数可)が特定の段階に好適な組成を有すると判定手段が判定する場合、特定のシステム内の特定の段階または要素へのその流の送達を制御するための手段を含み得る。例えば、ガス状基質流が発酵反応に有害であり得る低レベルのCOまたは高レベルのOを含む場合、基質流は、バイオリアクタから離れて迂回されてもよい。本発明の特定の実施形態では、システムは、基質流の行き先及び/または流速を監視及び制御するための手段を含み、それにより所望または好適な組成を有する流が特定の段階に送達され得るようにする。
加えて、プロセスにおける1つ以上の段階の前またはその間に特定のシステム構成要素または基質流(複数可)を加熱または冷却することが必要であり得る。このような例では、既知の加熱または冷却が使用され得る。例えば、熱交換器は、基質流を加熱または冷却するために用いられてもよい。
さらに、システムは、特定の段階の操作または効率を改善するために1つ以上の前/後処理ステップを含み得る。例えば、前処理ステップは、粒状物質及び/または長鎖炭化水素もしくはタールをガス状基質流から除去するための手段を含み得る。実施され得る他の前または後操作は、例えば、バイオリアクタ生産段階などの特定の段階からの所望の生成物(複数可)の分離(例えば、蒸留によるエタノールの除去)を含む。
本発明は、不要な実験をすることなく読者が本発明を実践することを可能にするために、ある特定の好ましい実施形態を参照して本明細書に記載された。当業者であれば、本発明が具体的に記載されたもの以外の多くの変形及び修正に実践され得ることを理解するであろう。本発明は、そのようなすべての変形及び修正を含むことが理解されるべきである。さらに、表題、見出しなどが本文献の読者の理解に役立つために提供され、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書に引用されるすべての出願、特許、及び公表文献の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
より具体的には、当業者に理解されるように、本発明の実施形態の実装は、1つ以上の要素を含み得る。その様々な態様において本発明を理解するのに必要なそのような要素のみが特定の実施例または説明に示され得る。しかしながら、本発明の範囲は、記載された実施形態に限定されず、1つ以上の追加のステップ及び/もしくは1つ以上の代わりのステップを含むシステム及び/もしくは方法、ならびに/または1つ以上のステップを省略するシステム及び/もしくは方法を含む。
本明細書においていずれかの先行技術への言及も、その先行技術があらゆる国において努力傾注分野の共通の一般的知識の一部を形成していることの承認または何らかの形態の示唆であるとは受け取られず、受け取られるべきでない。
本明細書及び以下のあらゆる請求項を通じて、特に文脈上必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの用語は、排他的意味とは反対に包括的意味、すなわち、「含むが、限定されない」の意味で解釈されるべきである。

Claims (9)

  1. 複数のバイオリアクタにわたってガス状基質の安定した発酵を維持するためのプロセスであって、
    a.1つ以上の微生物を含有する液体栄養培地を含む2つ以上の一次バイオリアクタにガス状基質を供給することと、
    b.前記2つ以上の一次バイオリアクタ内の前記ガス状基質を発酵させて、1つ以上の微生物及び1つ以上の生成物を含む発酵ブロスを生成することと、
    c.中央ブリードラインを介して1つの一次バイオリアクタから1つ以上の二次バイオリアクタに前記発酵ブロスの少なくとも一部を流すことと、
    d.(c)の前記一次バイオリアクタのうちの1つ以上が操作可能であるか否かを決定することとを含み、ここで、前記一次バイオリアクタのうちの1つ以上が操作不能な場合、1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタからの発酵ブロスの少なくとも一部が、前記中央ブリードラインを介して(c)の前記1つ以上の二次バイオリアクタに提供される、前記プロセス。
  2. 前記一次バイオリアクタは、微生物増殖を主に促進する条件で操作され、前記二次バイオリアクタは、1つ以上の生成物を主に生成する条件で操作される、請求項1に記載の前記プロセス。
  3. 中央ブリードラインを利用して複数のバイオリアクタに植菌するためのプロセスであって、
    a.液体栄養培地を含む第1の一次バイオリアクタにガス状基質を供給することと、
    b.前記第1の一次バイオリアクタに1つ以上の微生物を植菌することと、
    c.前記ガス状基質を発酵させて、1つ以上の微生物及び1つ以上の生成物を含む発酵ブロスを生成することと、
    d.中央ブリードラインを介して前記第1の一次バイオリアクタから前記発酵ブロスの少なくとも一部を流して1つ以上の他の一次バイオリアクタまたは二次バイオリアクタに、実質的に同時に植菌することと、
    e.微生物増殖を主に促進する条件で前記1つ以上の他の一次バイオリアクタを操作することと、
    f.前記中央ブリードラインを介して前記1つ以上の一次バイオリアクタから前記発酵ブロスの少なくとも一部を同時に流して、1つ以上の二次バイオリアクタに植菌することとを含み、前記二次バイオリアクタは、前記1つ以上の生成物を主に生成する条件で操作される、前記プロセス。
  4. 中央ブリードラインを利用して複数のバイオリアクタに植菌するためのプロセスであって、
    a.液体栄養培地を含む第1の一次バイオリアクタにガス状基質を供給することと、
    b.前記第1の一次バイオリアクタに1つ以上の微生物を植菌することと、
    c.前記ガス状基質を発酵させて、1つ以上の微生物及び1つ以上の生成物を含む発酵ブロスを生成することと、
    d.中央ブリードラインを介して前記第1の一次バイオリアクタから前記発酵ブロスの少なくとも一部を流して、少なくとも1つの他の一次バイオリアクタに植菌することと、
    e.微生物増殖を主に促進する条件で前記少なくとも1つの他の一次バイオリアクタを操作することと、
    f.前記中央ブリードラインを介して前記1つ以上の一次バイオリアクタから前記発酵ブロスの少なくとも一部を流して、少なくとも1つの二次バイオリアクタに植菌することとを含み、前記二次バイオリアクタは、前記1つ以上の生成物を主に生成する条件で操作される、前記プロセス。
  5. 前記一次バイオリアクタまたは二次バイオリアクタへの前記ガス状基質の前記供給が限られているかどうかを決定することをさらに含み、ガス状基質の前記供給が限られている場合、少なくとも1つの一次バイオリアクタまたは二次バイオリアクタは、前記ガス状基質の十分な供給が再開するまで一時的に停止される、請求項2に記載の前記プロセス。
  6. 少なくとも1つの一次バイオリアクタまたは少なくとも1つの二次バイオリアクタが操作不能となるとき、1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタまたは1つ以上の操作可能な二次バイオリアクタ内の発酵ブロスの体積を増加させることと、前記ガス状基質を前記操作不能なバイオリアクタから前記操作可能なバイオリアクタに迂回させ、それにより安定した生成物形成を維持することと、をさらに含む、請求項1に記載の前記プロセス。
  7. (d)の前記操作不能な一次バイオリアクタは、前記中央ブリードラインを介して1つ以上の操作可能な一次バイオリアクタによって再植菌される、請求項1に記載の前記プロセス。
  8. 前記生成物は、エタノール、2,3−ブタンジオール、及び酢酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の前記プロセス。
  9. 前記ガス状基質は、CO、CO、H、またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の前記プロセス。
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