JP2010500844A - 伝送線路 - Google Patents

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Abstract

本発明は、サイズを最小化させながらも、誘導性素子の物性値を種々に変化させることのできる伝送線路である。本発明の伝送線路は、伝送部、接地部及び誘導性素子を備える。誘導性素子は、伝送部と接地部を接続させ、所定のパターンを有すると共に、基板の両面の間に設けられる。このため、本発明によれば、全体のサイズを増大させながらも、誘導性素子の物性値、特に、インダクタンス値を種々に変化させることができ、伝送線路が適用される形態に能動的に対応して自由に設計可能である。

Description

本発明は伝送線路に係り、さらに詳しくは、構造を改善して誘導性素子の物性値を種々に変化させながらも、装置の小型化を図ることのできる伝送線路に関する。
一般に、伝送線路とは、複数の導体から構成され、導体相互間に分布している電気的な媒介変数、例えば、単位長さ当たりの抵抗、インダクタンス、コンダクタンス、キャパシタンスによる波動の伝播作用を利用する導体系を意味する。
一方、最近には、このような伝送線路を用いてLH(Left−Handed)特性を実現する方法に関する研究が盛んになされている。LH特性とは、電場と磁場、さらには電磁波の伝播方向が、右手の法則とは反対に、左手の法則に従う特性を言い、人工的な「メタマテリアル(metamaterial)」についての理論と関連している。ここで、「メタマテリアル」とは、自然系によく見られない特殊な電磁気的性質を示すように人工的な方法により合成された物質を通称する用語である。
以下、図1及び図2に基づき、LH特性を示す伝送線路の構成を説明する。
直列インダクターと並列キャパシターの等価回路により表わされる通常の伝送線路等価モデルにおいてインダクタンスとキャパシターの位置を変えて直列キャパシターと並列インダクターとから構成された伝送線路構造においては、これを介して伝送される電磁波の位相速度が反転する現象が現れる。
図1は、このように直列キャパシターと並列インダクターとから構成された伝送線路に対する等価回路を示している。このように構成された伝送線路において位相速度と群速度を計算すると、互いに逆方向を向かうLH伝播特性を示す。
一方、RH(Right-Handed)特性を示す伝送線路(以下、「RH伝送線路」)とLH特性を示す伝送線路(以下、「LH伝送線路」)を組み合わせたより一般的な構造は、CRLH(Composite Right/Left Handed)特性を示す伝送線路(以下、「CRLH伝送線路」)であることが知られている。CRLH伝送線路の等価回路は、図2に示す通りである。
図2のように配置された構造は、特定の周波数帯域において直列接続部と並列接続部のインダクター及びキャパシターのうちどちらか一方の成分の影響が著しく現れるかどうかによって、LHまたはRH伝送線路の特徴を示す。
直列部と並列部の共振周波数においては、阻止帯域特性を示す。図2に示す通常のCRLH伝送線路の伝送特性からこれを容易に確認することができる。具体的に、低い周波数帯域においては主に直列キャパシターCLと並列インダクターLLの作用によりLH伝送特性が現れ、逆に、高い周波数帯域においては直列インダクターLRと並列キャパシターCRが主に作用してRH伝送特性が現れる。そして、これらの両領域の間に電磁波の阻止帯域が存在していることを示す。
以下、図3に基づき、CRLH伝送線路モデルを実際に実現した伝送線路の構成を説明する。
実際の実現に当たって、各インダクター及びキャパシターは、集中素子としては表面実装型(Surface Mount Device;SMD)チップ型の容量性素子と誘導性素子を取り付けて使用するか、あるいは、回路パターンの上にインターディジタル(interdigital;IDT)容量性素子と誘導性素子を形成して分布定数回路として実現される。
図3は、回路パターンの上にIDT容量性素子と誘導性素子を形成した方式により構成した従来CRLH伝送線路の一例を示している。
従来の伝送線路は、大きく、容量性素子10と、誘導性素子50及び接地部30を備えている。
容量性素子10は、IDTパターンを有する素子から形成され、長手方向に沿って一定の間隔をあけて配置されるような構造を有する。そして、誘導性素子50は容量性素子10と同じ平面上に設けられ、容量性素子10の間から側方向に突出したスタブの形状を呈している。
接地部30は、基板1の他方の面に設けられた接地面の形状をしており、誘導性素子の一方の端と導電性の接続素子15により電気的に接続される。ここで、接続素子15は、基板1の両面を貫通する貫通孔を介して形成可能である。
ここで、直列のキャパシターCLはIDTパターンの容量性素子10により形成され、並列インダクターLLは先端が短絡された誘導性素子50により形成される。
そして、IDT構造と接地面との間の寄生容量成分が並列キャパシターCRを形成し、IDTパターンの上に存在する電流により直列インダクターLRが形成されて、全体的にCRLH伝送線路として動作することになる。
しかしながら、上述した従来の伝送線路は、下記の問題点がある。
直列キャパシターはIDTの具体的な形状やこれらの間の間隔などを調節して容易にキャパシタンス値を変化することができるが、インダクターにおいてインダクタンス値を変化させるには多くの制約があった。すなわち、インダクタンスを増大させるためには、容量性素子と同じ平面上において側方向に突出した誘導性素子の長さを長くしなければならないため、基板の幅が増大する結果、装置が全体的に大きくなってしまうという問題点があった。
一方、上述した方法とは異なり、基板の間に穿設された貫通孔の上に形成された導電性物質から誘導性素子を実現することができるが、この場合には、基板の幅が定まり、且つ、材質などが定まるため、設計条件に合うようにインダクタンス値を変化させることができないという問題点があった。
本発明は上記の従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、構造を改善して装置を小型化させながらも、インダクタンス値を増大させることのできる伝送線路を提供するところにある。
本発明の他の目的は、要求条件に能動的に対応して自由に形状設計を行うことのできる伝送線路を提供するところにある。
上述した目的を達成するために、本発明は、基板の一方の面に形成されて電気的な信号を伝送する導電性の伝送部と、前記基板の他方の面に形成される接地部と、前記基板の両面の間に所定のパターンを有するように形成され、前記伝送部と接地部を互いに接続して前記伝送部を接地する誘導性素子と、を備える伝送線路を提供する。
そして、前記伝送部は、長手方向に沿って一定の間隔をあけて配置される1以上の容量性素子を備えることが好ましい。ここで、前記容量性素子は、IDT型のパターンを有することが好ましい。
一方、前記誘導性素子は、基板の上下方向に延在する螺旋状素子を備えていてもよい。そして、前記基板は複数形成され、前記誘導性素子は前記複数の基板間の貼合面の上に形成されてもよい。
そして、前記誘導性素子は、渦巻き型素子を備えていてもよい。さらに、前記誘導性素子は導電性接続素子により前記伝送部または前記接地部と接続され、前記接続素子は螺旋状であることが好ましい。
上記の構成を有する本発明による伝送線路は、下記の如き効果がある。
先ず、第一に、基板の両面の間に誘導性素子を備えることにより、インダクタンス値を種々に変化することができるというメリットがある。すなわち、伝送線路の空間活用度を高めて、結果的に装置の小型化を図ることができ、伝送線路のサイズを最小化させながらも、インダクタンス値を増大することができる。
第二に、伝送線路を所望の条件及び所望の周波数帯域に合わせて能動的に対応して設計することができるというメリットがある。具体的に、基板の両面の間に設けられる誘導性素子の形状を種々に変形させて、所望の設計条件を満足するインダクタンス値を実現することができる。
通常のLH伝送線路の等価回路を示す回路図である。 通常のCRLH伝送線路の等価回路を示す回路図である。 従来のCRLH伝送線路の構成を示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態による伝送線路を概略的に示す斜視図である。 図4の側面図である。 図4の誘導性素子と接続素子を示す斜視図である。 本発明の第2の実施形態による伝送線路を概略的に示す斜視図である。 図7の側面図である。
以下、添付図面に基づき、本発明の目的が具体的に実現可能な本発明の好適な実施形態を説明する。この実施形態を説明するに当たって、同じ構成に対しては同じ名称及び同じ符号が使用され、これによる付加的な説明は省略する。
先ず、図4から図6に基づき、本発明の第1の実施形態による伝送線路の構成を説明する。
図4は、この実施形態による伝送線路を概略的に示す斜視図であり、図5は、図4の側面図であり、図6は、図4の誘導性素子と接続素子を示す斜視図である。
この実施形態による伝送線路は、大きく、伝送部110と、接地部130及び誘導性素子150を備えている。
伝送部110は、基板10の一方の面に設けられて電気的な信号を伝送する。ここで、基板10は、絶縁性を有する誘電体からなることが好ましく、伝送部110は、基板10の上に薄膜の金属素子により形成されてもよく、あるいは、エッチングなどの方法により基板10の上に導電性物質を塗布して形成されてもよい。
一方、伝送部110は、長手方向に沿って繰り返し配置される容量性素子115とスタブ117を備えている。
この実施形態において、容量性素子115は、図4に示すように、IDTパターンを有する素子が互いに一定の距離をあけてかみ合うような形状をしている。そして、スタブ117は、容量性素子115の間に設けられ、後述する第1の接続素子25により誘導性素子150と電気的に接続される。
接地部130は、基板10の他方の面に設けられ、誘導性素子150を介して伝送部110と接続されて伝送部110を接地する。この実施形態において、接地部130は、基板10の下面に形成された接地面の形状をしている。
誘導性素子150は、基板10の両面の間に設けられ、所定のパターンを有しており、一定のインダクタンス値を有する。
一方、この実施形態において、基板10は、第1の基板20と、第1の基板20の下部に貼り付けられる第2の基板30と、を備えている。そして、図5に示すように、第1の基板20の上面には伝送部110が設けられ、第2の基板30の下面には接地部130が設けられる。
そして、誘導性素子150は、縦方向に薄い薄膜の形状をしており、第1の基板20と第2の基板30との間の貼合面の上に設けられる。
誘導性素子150の具体的な形状には制限がなく、種々の設計要求条件に合わせて製作可能である。この実施形態においては、図6に示すように、渦巻き型素子の形状を例示している。この場合、渦巻き型素子のサイズや間隔などを調節することにより、インダクタンス値を変更することができる。
併せて、誘導性素子150は、伝送部110及び接地部130と導電性接続素子25、35により電気的に接続される。ここで、基板10は、貫通孔により両面が貫通されており、貫通孔の上に導電性接続素子25、35が設けられて素子同士が電気的に接続される。
具体的に、誘導性素子150と伝送部110は第1の基板20の上に設けられる第1の接続素子により電気的に接続され、誘導性素子150と接地部130は第2の基板30の上に設けられる第2の接続素子35により電気的に接続される。
第1及び第2の接続素子25、35の形状には制限がなく、この実施形態においては、接続素子25、35が、図6に示すように、導電性材質からなる円筒状の素子であることを例示している。そして、誘導性素子150と接続素子25、35は一体に形成されてもよく、それぞれ別体に製作してこれらを組み合わせてもよい。
このように構成された伝送線路において、直列のキャパシターCLはIDTパターンに形成された容量性素子115により形成され、並列インダクターLLは基板10の両面の間に設けられた誘導性素子150により形成される。
そして、IDTパターンの容量性素子115と接地面との間の寄生容量成分が並列キャパシターCRを形成し、IDTパターンの上に存在する電流により直列インダクターLRが生成されて、全体的にCRLH伝送線路の構造として動作する。
一方、この実施形態においては、2枚の基板10が貼り合わせられており、誘導性素子150が両基板10の貼合面の上に設けられている形態を例示しているが、これとは異なり、3以上の基板10が貼り合わせられ、基板10の間に形成された複数の貼合面のうち少なくともいずれか1面の上に誘導性素子150が設けられるように伝送線路を構成することも可能である。
この場合、誘導性素子150は1以上となり、それぞれの素子間は基板10の貫通孔の上に設けられた接続素子により電気的に接続可能である。
以下、図7及び図8に基づき、本発明の第2の実施形態による伝送線路の構成を説明する。
この実施形態も、上述した第1の実施形態と同様に、基本的に、伝送部210と、接地部230および誘導性素子250を備え、伝送部210は、容量性素子215とスタブ217が繰り返し配置されている形態を有する。
但し、この実施形態は、基板40の両面の間に設けられる誘導性素子250が、2枚の基板40の間の貼合面の上に設けられる代わりに、基板40間の貫通孔43の上において一定のパターンを有するように構成される。
すなわち、図7に示すように、基板40は貫通孔43により両面が貫通されており、貫通孔43の上に誘導性素子250が一定のパターンをもって形成されている。
誘導性素子250のパターンの形状には制限がなく、図7及び図8は、誘導性素子250が螺旋状素子からなり、上下方向に延在する形態を示している。
誘導性素子250の一方の端は伝送部210のうちスタブ217と電気的に接続され、誘導性素子250の他方の端は基板40の下部に形成された接地部230に電気的に接続される。
一方、伝送線路は、上述した第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて構成することができる。すなわち、複数の基板が貼り合わせられた形態を有する基板40において、基板40の貼合面の間に誘導性素子250を備え、それぞれの接続素子を螺旋状の誘導性素子250から形成して伝送線路を構成することができる。
本発明を図示の一実施形態を参考として説明したが、これは単なる例示的なものに過ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者であれば、これより種々の変形及び均等な他の実施形態が可能であるということは理解できるであろう。よって、本発明の真の技術的な保護範囲は特許請求の範囲の技術的な思想により定まるべきである。
以上、主としてLH特性を示す伝送線路を例にとって説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、直列のキャパシターと並列のインダクターを形成するための種々の形態の伝送線路に汎用的に適用可能である。
よって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の精神から逸脱することなく変形可能であり、このような変形は本発明の範囲に属する。

Claims (7)

  1. 基板の一方の面に形成されて電気的な信号を伝送する導電性の伝送部と、
    前記基板の他方の面に形成される接地部と、
    前記基板の両面の間に所定のパターンを有するように形成され、前記伝送部と接地部を互いに接続して前記伝送部を接地する誘導性素子と、
    を備える伝送線路。
  2. 前記伝送部は、長手方向に沿って一定の間隔をあけて配置される1以上の容量性素子を備える請求項1に記載の伝送線路。
  3. 前記容量性素子は、インターディジタル(IDT)型のパターンを有する請求項2に記載の伝送線路。
  4. 前記誘導性素子は、基板の上下方向に延在する螺旋状素子を備える請求項1から3のいずれかに記載の伝送線路。
  5. 前記基板は複数形成され、前記誘導性素子は前記複数の基板間の貼合面の上に形成される請求項1から3のいずれかに記載の伝送線路。
  6. 前記誘導性素子は、渦巻き型素子を備える請求項1から3のいずれかに記載の伝送線路。
  7. 前記誘導性素子は導電性接続素子により前記伝送部または前記接地部と接続され、前記接続素子は螺旋状である請求項1に記載の伝送線路。
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