JP2010287596A - 半導体レーザモジュール,およびこれを備えたラマン増幅器 - Google Patents

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Abstract

【目的】活性層温度をほぼ一定に保つ。
【構成】半導体ゲインチップ11に駆動電流が供給されると,半導体ゲインチップ11の前方端面から光が出射する。半導体ゲインチップ11の後方端面および光ファイバ4中のFBG4aによって光反射が繰返されてレーザ発振が生じる。TEC15上に,半導体ゲインチップ11および温度を測定するサーミスタ13が設けられており,TEC15はサーミスタ13の温度が所定温度に保たれるように制御される。半導体ゲインチップ11およびサーミスタ13は共通のサブマウント21上に配置されており,かつヒートパスワイヤ46によって接続されている。サブマウント21およびヒートパスワイヤ46を介して半導体ゲインチップ11の熱がサーミスタ13に伝達される。サーミスタ13を所定温度に保つと,半導体ゲインチップ11(その活性層)の温度も所定温度に保たれる。
【選択図】図2

Description

この発明は,半導体レーザモジュール,および半導体レーザモジュールを備えたラマン増幅器に関する。
半導体レーザまたは半導体ゲインチップ(以下,LDと呼ぶ)は活性層を含み,活性層に電流を供給することによってレーザ光(光)を発生する。活性層に電流を供給すると活性層の温度が上昇する。活性層の温度変動はLDから出射されるレーザ光(光)の波長に影響を及ぼすので,LDが格納されるモジュール内部には一般にLDを冷却するための熱電クーラ(ThermoElectric Cooler :TEC)が設けられ,このTEC上にLDが搭載される。TEC上には温度を測定するためのサーミスタも搭載される。サーミスタによって測定される温度が所定温度(たとえば,25℃)となるようにTECは制御される。
TECはLDの活性層温度を所定温度に維持することを目的としてモジュール内部に設けられるものであるが,上述のように,TECは,活性層温度ではなくサーミスタ温度を所定温度に維持するように動作する。すなわち,TECによる温度制御(冷却)によってサーミスタ温度を所定温度に維持することはできるが,それがLDの活性層温度を一定にすることには必ずしもつながらない。
図6(A),(B)は,LDに供給する駆動電流を変化させたときの,活性層およびサーミスタの温度変化(実線が活性層温度,破線がサーミスタ温度)を示している。図6(A)はTECによる温度制御を行っていないとき(TEC制御無し)のグラフであり,図6(B)はTECを用いた温度制御を行ったとき(TEC制御時)のグラフである。図6(C)は,TECを用いた温度制御を行っている状態において,比較的小さい駆動電流をLDに供給したとき(実線)および比較的大きい駆動電流をLDに供給したとき(一点鎖線)の,LDから出射されるレーザ光(光)の波長と出力(パワー)との関係を示すグラフである。
図6(A)に示すように,TECによる温度制御を行っていない場合,活性層温度およびサーミスタ温度は,いずれも駆動電流を大きくするにしたがって上昇する。特に,活性層温度は急激に上昇する。駆動電流を大きくするにしたがって活性層温度とサーミスタ温度の乖離が大きくなる。
図6(B)を参照して,TECを用いた温度制御を行うと,上述したように,サーミスタ温度が所定温度に保たれる。しかしながら,駆動電流を大きくするにしたがって活性層温度は上昇し,サーミスタ温度との乖離は大きくなる。駆動電流を大きくすると活性層温度が上昇するので,出射されるレーザ光(光)の波長は長波長側にずれてしまう(図6(C))。光ファイバ中に形成された回折格子(FBG:Fiber Bragg Grating )を外部反射器とする外部共振器型半導体レーザモジュールでは,特に,FBGが持つ反射波長と半導体ゲインチップの持つ光学利得波長とが大きくずれてしまうと,引込み範囲から外れ,FBGによる発振が得られなくなる。
サーミスタを極力LDに近づけて配置することによってサーミスタ温度と活性層温度の乖離はある程度は改善され,レーザ光の波長ずれはある程度改善する(たとえば,特許文献1)。しかしながら,根本的な改善をもたらすものではない。
特開2002−141599号公報
この発明は,活性層温度をほぼ一定に保つことができるようにすることを目的とする。
この発明による半導体レーザモジュールは,半導体基板上に活性層を有する光導波路が形成され,前記活性層に電流が注入されることで発生した光が前記光導波路を導波され,該光導波路の一方の端に形成された前方端面より前記光が出射される半導体ゲインチップと,前記前方端面と光学的に結合し,内部に所定波長の光を反射する回折格子を有する光ファイバとを有し,前記光導波路の他方の端に形成された後方端面と前記回折格子とを前記光が往復することで共振器が構成される外部共振器型半導体レーザと,温度変化を抵抗値の変化として出力する温度検出素子と,前記温度検出素子が出力する抵抗値が所定値になるように制御される熱電クーラとを含む半導体レーザモジュールであって,前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子は,前記熱電クーラ上に搭載された保持台上に配置され,前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子は前記保持台を熱経路とする熱的接続状態を有し,かつ前記保持台を経由する熱経路に加えて前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子とを接続する別の熱経路が少なくとも一つ形成されていることを特徴とする。熱電クーラは,半導体レーザモジュールの外部に設けられる制御回路(クーラ制御回路)によって制御される。温度検出素子からの測定温度を表わすデータ(抵抗値)に基づいて,クーラ制御回路は,温度検出素子が所定温度を維持するように,熱電クーラを制御する。
半導体ゲインチップに含まれる活性層に電流が注入されると,活性層において光が発生する。半導体ゲインチップの前方端面から出射された光は,レンズを介して回折格子(FBG)が一部に形成されている光ファイバに入射する。半導体ゲインチップの後方端面と回折格子との間で光反射が繰返されることによってレーザ発振が生じる。得られたレーザ光が光ファイバ中を導波する。
半導体ゲインチップの後方端面は光反射器として機能するので,高い反射率で光を反射する必要がある。また,FBGによる外部共振モードをより安定に得るために,半導体ゲインチップの前方端面は光反射率を低くする必要がある。一実施態様では,前記半導体ゲインチップの前方端面に反射防止膜が,後方端面に反射膜がそれぞれ設けられる。たとえば,前記後方端面に設けられる反射膜には,光反射率が90%以上のものが用いられる。
半導体ゲインチップと温度検出素子は保持台上に配置されているので,半導体ゲインチップからの熱は保持台を経由して温度検出素子に伝導される。すなわち,半導体ゲインチップと温度検出素子とは,保持台を熱経路とする熱的接続状態を有する。この発明による半導体レーザモジュールは,前記保持台による熱経路に加えて,前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子とを熱伝導によって接続する別の熱経路を持つ。この別の熱経路を介しても,半導体ゲインチップからの熱は温度検出素子に伝導されて,温度検出素子が加熱される(温められる)。
この発明によると,半導体ゲインチップからの熱が保持台を経由して温度検出素子に伝導されるのに加えて,保持台とは異なる別の熱経路を介しても温度検出素子に伝導されるので,半導体ゲインチップの活性層の温度と温度検出素子の温度との間の乖離が小さくなる。したがって,サーミスタによる測定温度が所定温度になるように熱電クーラを制御すると,活性層もほぼ所定温度に維持される。発振波長の安定化が図られる。
一実施態様では,前記別の熱経路は金属ワイヤによって形成される。この場合,半導体ゲインチップおよび前記サーミスタの少なくともいずれか一方に,前記金属ワイヤを介した半導体ゲインチップおよび前記温度検出素子間の通電を阻止する絶縁膜が設けられる。半導体ゲインチップには光を発生させるために,温度検出素子には抵抗値を計測するために,それぞれ電流が通電されるので,前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子を結ぶ金属ワイヤ(別の熱経路)が,半導体ゲインチップと温度検出素子を電気的に短絡させるものであってはならないからである。半導体ゲインチップおよび前記サーミスタの少なくともいずれか一方に絶縁膜が設けられることによって,半導体ゲインチップとサーミスタとの間の通電(短絡)が阻止される。
金属ワイヤによって別の熱経路を形成する場合,直径の太い金属ワイヤを用いるとより多くの熱量を伝えることができる。直径の太い金属ワイヤを用いるのに代えて,または加えて,半導体ゲインチップと温度検出素子とを複数本の金属ワイヤによって接続するようにしてもよい。
この発明による半導体レーザモジュールは,広い電流範囲にわたって安定してFBG発振したレーザ光を出射することができるので,ラマン増幅器における励起光源として用いるのに適している。この発明は,上述した半導体レーザモジュール,および前記半導体レーザモジュールからのレーザ光が励起光として入射し,誘導ラマン増幅を生じさせる光ファイバを備えたラマン増幅器も提供する。
(A)は半導体レーザモジュールの内部構造を示す平面図を,(B)は半導体レーザモジュールの内部構造を示す側断面図を,それぞれ示す。 半導体ゲインチップおよびサーミスタの配線を示す一部拡大斜視図である。 半導体レーザモジュールを含むレーザユニットの電気的構成を示すブロック図である。 (A)はTECによる温度制御を行わないときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(B)はTECによる温度制御を行っているときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(C)はTECによる温度制御を行っているときの,レーザ光の波長および出力の関係を示すグラフを,それぞれ示す。 ラマン増幅器のブロック図を示す。 従来技術を示すものであり,(A)はTECによる温度制御を行わないときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(B)はTECによる温度制御を行っているときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(C)はTECによる温度制御を行っているときの,レーザ光の波長および出力の関係を示すグラフを,それぞれ示す。
図1(A)は半導体レーザモジュールの内部構造を平面図によって,図1(B)は半導体レーザモジュールの内部構造を側断面図によって,それぞれ示している。図1(A),(B)において,ワイヤ(導線)の図示は省略されている。
図1(A),(B)を参照して,半導体レーザモジュール1は,内部が中空の直方体状のパッケージ(筐体)2を備え,パッケージ2の内部に,光を出射する半導体ゲインチップ11,半導体ゲインチップ11から出射される光を集光するレンズ12,温度を測定する(温度変化を抵抗値の変化として出力する)サーミスタ13,および半導体ゲインチップ11の後方端面から出射する光を受光して半導体ゲインチップ11の出力をモニタするためのフォトダイオード14が格納されている。半導体ゲインチップ11およびサーミスタ13はサブマウント(保持台)21上に載置され,レンズ12はレンズホルダ22に保持され,フォトダイオード14はPDサブマウント23の壁面に固定されている。サブマウント21,レンズホルダ22およびPDサブマウント23は,いずれも基板24上に固定されている。
詳細な図示は省略するが,半導体ゲインチップ11は,半導体基板上に,活性層を含む組成,不純物の種類と量等の異なる複数の半導体層が積層されて構成されている。活性層は光の導波方向にストライプ状に形成されている。そして,活性層において生じる光が活性層の上下に形成された複数の半導体層に閉込められ,活性層を含む複数層で光導波路が構成される。
パッケージ内部の底面に熱電クーラ(ThermoElectric Cooler )(たとえば,ペルチェ素子)(以下,TECと呼ぶ)15が固定されている。TEC15上に,上述した半導体ゲインチップ11,レンズ12,サーミスタ13およびフォトダイオード14が搭載された基板24が固定されている。
パッケージ2の左右壁面のそれぞれから,複数のリード端子26が外方に突き出している。パッケージ2の内部において,リード端子26の端部と上述した半導体ゲインチップ11,サーミスタ13,フォトダイオード14およびTEC15が,ワイヤによって電気的に接続されている。
パッケージ2の前壁面に,光ファイバ4が中心に配置された円筒状のフェルール3が固定されている。
半導体ゲインチップ11に駆動電流を順方向に供給すると,活性層において光が発生する。活性層において発生した光は半導体ゲインチップ11の前方端面(出射端面)から出射してレンズ12に入射する。レンズ12において集光された光が光ファイバ4に入射する。
光ファイバ4中に,回折格子(FBG)4a(以下,FBG4aと言う)が形成されている。半導体ゲインチップ11の前方端面から出射した光のうち,FBG4aのブラッグ波長およびその近傍の波長を持つ光がFBG4aにおいて反射される。FBG4aにおいて反射された光は,光ファイバ4,レンズ12を介して再び半導体ゲインチップ11に戻り,活性層で光学利得を受けて増幅され,半導体ゲインチップ11の後方端面において反射される。半導体ゲインチップ11の後方端面とFBG4aとの間で光反射が繰返されることによってレーザ発振が生じ,レーザ光が光ファイバ4に入射する。このように,光を発生し,かつ後方端面において光を反射する半導体ゲインチップ11と,外部反射器として機能するFBG4aとによって,外部共振器型半導体レーザが構成されている。なお,FBG4aにおいて反射された光を半導体ゲインチップ11に戻す必要があるので,パッケージ2中にアイソレータは設けられていない。半導体ゲインチップ11の前方端面には反射防止膜を,後方端面には反射膜を,それぞれ設けてもよい。後方端面に設けられる反射膜には,たとえば,光反射率を90%とするものが用いられる。
図2は,サブマウント21上に載置されている半導体ゲインチップ11およびサーミスタ13の拡大斜視図を示している。
半導体ゲインチップ11の上面および下面に,それぞれ上面電極31,下面電極32が形成されている。上面電極31と下面電極32との間に順方向の駆動電流を通電することによって,上述したように,半導体ゲインチップ11の前方端面および後方端面から光が出射する。
サブマウント21上には,3つの電極パッド33,34,35が設けられている。
電極パッド33は,半導体ゲインチップ11の上面電極31とリード端子26(図1(A)参照)の一つとを電気的に接続するために用いられる。電極パッド33に2つの金属製(たとえば,金,銅など)ワイヤ41,42の一端がボンディングされている。一方のワイヤ41の他端がリード端子26にボンディングされ,他方のワイヤ42の他端が半導体ゲインチップ11の上面電極31にボンディングされているる。電極パッド33および2本のワイヤ41,42を介して,半導体ゲインチップ11の上面電極31とリード端子26とが電気的に接続される。
電極パッド34は,半導体ゲインチップ11の下面電極32とリード端子26の一つ(半導体ゲインチップ11の上面電極31に接続されるリード端子とは異なる端子であるのは言うまでもない)を電気的に接続するために用いられる。電極パッド34は,サブマウント21上の半導体ゲインチップ11の載置範囲に形成され,かつその一部が半導体ゲインチップ11の載置範囲をはみ出して形成されている。半導体ゲインチップ11の載置範囲をはみ出している電極パッド34の箇所に,ワイヤ43の一端がボンディングされている。ワイヤ43の他端はリード端子26にボンディングされている。電極パッド34およびワイヤ43を介して,半導体ゲインチップ11の下面電極32とリード端子26とが電気的に接続される。
サーミスタ13は金属酸化物(マンガン,コバルト,ニッケルなど),半導体(シリコン)などの電気抵抗が温度に応じて変化することを利用して温度を測定する。サーミスタ13の電気抵抗変化を計測するためにサーミスタ13にも電流が通電される。サーミスタ13の上面の一部に上面電極36が,サーミスタ13の下面全体に下面電極37が,それぞれ形成されている。電極パッド35がサブマウント21上のサーミスタ13の載置範囲に形成され,かつその一部がサーミスタ13の載置範囲をはみ出して形成されている。電極パッド35とサーミスタ13の下面電極37は通電している。サーミスタ13の上面電極36およびサーミスタ13の下面電極37と通電している電極パッド35に,ワイヤ44,45の一端がそれぞれボンディングされ,これらの他端が2つのリード端子26にそれぞれボンディングされている。ワイヤ44,45を介して,サーミスタ13に電流が通電される。
半導体ゲインチップ11およびサーミスタ13に電流を通電するワイヤ41〜45の他に,半導体ゲインチップ11とサーミスタ13を接続する金属製(たとえば,金,銅など)ワイヤ46が存在する。ワイヤ46は,その一端が半導体ゲインチップ11の上面電極31に,他端がサーミスタ13の上面に,それぞれボンディングされている。
ワイヤ(熱伝導体)46は,ワイヤ41〜45とは異なり,半導体ゲインチップ11,サーミスタ13に電流を通電するためのものではなく,半導体ゲインチップ11とサーミスタ13の熱的接続状態を得るためのものである。サーミスタ13の上面の一部に絶縁膜(たとえば, SiO2 膜)38が設けられ,絶縁膜38上にパッド39が設けられている。ワイヤ46の他端は,絶縁膜38上のパッド39にボンディングされている。絶縁膜38が存在するので,ワイヤ46を通して半導体ゲインチップ11とサーミスタ13との間に電流は流れない。通電に用いられず,熱伝導に用いられるワイヤ46を,以下,「ヒートパスワイヤ46」と呼ぶ。もちろん,絶縁膜38は,サーミスタ13側ではなく,半導体ゲインチップ11側に設けてもよい。ヒートパスワイヤ46によって半導体ゲインチップ11における発熱(温度上昇)がサーミスタ13に伝達され,半導体ゲインチップ11とサーミスタ13との熱的接続状態が得られる。ヒートパスワイヤ46を導入することによる作用,効果の詳細は後述する。
図3は,上述した半導体レーザモジュール1を含むレーザユニットの電気的構成を示すブロック図である。半導体レーザモジュール1と,半導体レーザモジュール1の外部に設けられる駆動電源51,自動出力制御回路(APC:Auto Power Control回路)52,およびTECコントローラ53とによって,レーザユニットは構成される。
駆動電源51から半導体ゲインチップ11に駆動電流が供給される。駆動電源51からの駆動電流は,APC回路52から与えられる制御信号に基づいて制御される。
APC回路52は,フォトダイオード14からの出力電流が所定値になるように駆動電源51を制御する。フォトダイオード14は半導体ゲインチップ11の後方に配置されており,後方端面から出射される光を受光して,これに応じた電流を出力する。半導体ゲインチップ11の後方端面から出射される光の出力は前方端面から出射される光の出力と比例するので,フォトダイオード14からの出力電流が所定値となるように駆動電源51を制御することによって,半導体ゲインチップ11の前方端面から出射される光出力(パワー)が所定値に維持される。
APC回路52の設定に基づいて半導体ゲインチップ11に供給される駆動電流が決定され,かつ半導体ゲインチップ11から出射される光のパワー(レーザ発振後のレーザ光のパワー)が決定される。求められる出力特性に応じて,様々なパワーの光を半導体レーザモジュール1から出射させることができる。
駆動電源51からの駆動電流が半導体ゲインチップ11に供給されると,半導体ゲインチップ11の活性層が発熱する。半導体ゲインチップ11は,TECコントローラ53から与えられる制御信号にしたがって動作するTEC15によって冷却される。
TECコントローラ53は,サーミスタ13による測定温度が所定温度(たとえば,25℃)になるように,TEC15を制御する。すなわち,サーミスタ13には駆動電源51から電流が供給され,温度変化に伴って変化する抵抗値が,サーミスタ13に接続されたTECコントローラ53によって検知される。TECコントローラ53はサーミスタ13の抵抗値に基づいて,この抵抗値が所定値に維持されるようにTEC15を制御する。これによりサーミスタ13の測定温度が所定温度(たとえば,25℃)に維持される。
上述したように,駆動電流が供給されると半導体ゲインチップ11の活性層が発熱する。サブマウント21は,窒化アルミニウム,銅タングステン等の熱伝導性を持つ材質で作られており,半導体ゲインチップ11からサブマウント21を経由して伝わる熱によって,サーミスタ13の温度も上昇する。この場合,TECコントローラ53は上昇したサーミスタ13の温度を下げるようにTEC15を制御する。
ここで,半導体ゲインチップ11とサーミスタ13とは,ヒートパスワイヤ46によって接続されている。このため,半導体ゲインチップ11に駆動電流が供給されることによって半導体ゲインチップ11の活性層が発熱すると,ヒートパスワイヤ46を伝達する熱によって,サーミスタ13は加熱される。すなわち,サーミスタ13は,半導体ゲインチップ11からのサブマウント21を経由した熱伝導によって加熱されるとともに,ヒートパスワイヤ46を経由した熱伝導によっても加熱される。
半導体ゲインチップ11における発熱をサブマウント21を経由した熱伝導のみでサーミスタ13に伝達させるとすると,サーミスタ13の温度は半導体ゲインチップ11の活性層の温度と一致しなくなる。特に半導体ゲインチップ11に供給される駆動電流が大きい場合,サーミスタ13の温度と半導体ゲインチップ11の活性層の温度との間には大きな乖離が生じる。その結果,サーミスタ13は所定温度に維持されるが,活性層は所定温度に維持されずに上昇する。レーザ光の発振波長が長波長側に変動してしまう(図6(A)〜(C)参照)。
しかしながら,サーミスタ13は,上述したように,サブマウント21を経由した熱伝導のみならず,半導体ゲインチップ11とサーミスタ13を直接に接続するヒートパスワイヤ46からの熱も伝達される。半導体ゲインチップ11の活性層の温度が高くなればなるほど,ヒートパスワイヤ46を経由してサーミスタ13に伝わる熱量は大きくなる。したがって,サーミスタ13による測定温度は,半導体ゲインチップ11の活性層の温度上昇を反映したものとなる。
図4(A)〜(C)は,図6(A)〜(C)に対応するもので,半導体ゲインチップ11とサーミスタ13とを,ヒートパスワイヤ46によって直接に接続した場合のグラフを示している。
図4(A)を参照して,ヒートパスワイヤ46を用いて半導体ゲインチップ11とサーミスタ13とを接続することによって,活性層温度とサーミスタ温度の乖離幅を小さくすることができる。図4(B)を参照して,活性層温度とサーミスタ温度の乖離幅が小さくされた結果,TECコントローラ53およびTEC15によってサーミスタ13が所定温度に維持されると,活性層温度もほぼ所定温度に近い温度に維持される。駆動電流を大きくしても,出射光の波長のずれはほとんど生じない(図4(C))。半導体レーザモジュール1を,様々なパワーを持つレーザ光を得るための光源として用いても(駆動電流を変動させても),安定した波長のレーザ光を得ることができる。
ヒートパスワイヤ46にはAu(金),Al(アルミニウム),Cu(銅)などの熱伝導率の良好な素材が用いられる。また,熱平衡状態に達するまでの時間を短くするには,直径の大きなワイヤをヒートパスワイヤ46として用いるか,または複数本のヒートパスワイヤ46によって半導体ゲインチップ11とサーミスタ13を接続すればよい。
図5は,上述した半導体レーザモジュール1(レーザユニット)を励起光用光源として用いたラマン増幅器のブロック図を示している。
ラマン増幅器60では,半導体レーザモジュール1から出射されたレーザ光が励起光としてカプラ61を通じて増幅用光ファイバ62に入力する。増幅用光ファイバ62において誘導ラマン散乱が生じ,レーザ光の波長(励起光波長)から約100nm程度長波長側に利得が生じる。増幅用光ファイバ62に信号光が入射すると,増幅用光ファイバ62中に生じた利得によって信号光が増幅される(ラマン増幅)。半導体レーザモジュール1は,比較的パワーの大きいレーザ光を出射することができるので,信号光を長距離にわたって伝送することができる。また,半導体レーザモジュール1は駆動電流を大きくしても波長ずれを生じることなく安定してレーザ発振するので,ラマン利得を安定して得ることができる。
1 半導体レーザモジュール
4 光ファイバ
4a 回折格子(FBG)
11 半導体ゲインチップ
13 サーミスタ
14 フォトダイオード
15 熱電クーラ(TEC)
21 サブマウント
38 絶縁膜
46 ヒートパスワイヤ
60 ラマン増幅器
62 増幅用光ファイバ

Claims (4)

  1. 半導体基板上に活性層を有する光導波路が形成され,前記活性層に電流が注入されることで発生した光が前記光導波路を導波され,該光導波路の一方の端に形成された前方端面より前記光が出射される半導体ゲインチップと,前記前方端面と光学的に結合し,内部に所定波長の光を反射する回折格子を有する光ファイバとを有し,前記光導波路の他方の端に形成された後方端面と前記回折格子とを前記光が往復することで共振器が構成される外部共振器型半導体レーザと,
    温度変化を抵抗値の変化として出力する温度検出素子と,
    前記温度検出素子が出力する抵抗値が所定値になるように制御される熱電クーラとを含む半導体レーザモジュールであって,
    前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子は,前記熱電クーラ上に搭載された保持台上に配置され,
    前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子は前記保持台を熱経路とする熱的接続状態を有し,かつ前記保持台を経由する熱経路に加えて前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子とを接続する別の熱経路が少なくとも一つ形成されている,
    半導体レーザモジュール。
  2. 金属ワイヤによって前記別の熱経路が形成されており,
    前記半導体ゲインチップおよび前記温度検出素子の少なくともいずれか一方に,前記金属ワイヤを介した半導体ゲインチップおよび前記温度検出素子間の通電を阻止する絶縁膜が設けられている,
    請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
  3. 複数本の金属ワイヤによって前記半導体ゲインチップと前記温度検出素子が接続されている,
    請求項2に記載の半導体レーザモジュール。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体レーザモジュール,および
    前記半導体レーザモジュールからのレーザ光が励起光として入射し,誘導ラマン増幅を生じさせる光ファイバ,
    を備えたラマン増幅器。
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