JP2010285531A - 潤滑剤および摺動構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑性に優れ、かつ、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制できる潤滑剤および摺動構造体を提供すること。
【解決手段】摺動剤の増ちょう剤としてフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体を用いるとともに、この増ちょう剤を80質量%以上配合する。また、摺動構造体の第1摺動部材として焼入れおよび焼き戻しされてなる鋼材を用い、第2摺動部材としてイオン窒化表面層を持つ鋼材を用い、摺動剤としてフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体(増ちょう剤)を80質量%以上配合したものを用いる。
【選択図】図1
【解決手段】摺動剤の増ちょう剤としてフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体を用いるとともに、この増ちょう剤を80質量%以上配合する。また、摺動構造体の第1摺動部材として焼入れおよび焼き戻しされてなる鋼材を用い、第2摺動部材としてイオン窒化表面層を持つ鋼材を用い、摺動剤としてフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体(増ちょう剤)を80質量%以上配合したものを用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は、互いに摺接する複数の摺動部材間に介在し、摺動部材同士を滑らかに摺接させるための潤滑剤、および、この潤滑剤と2つの摺動部材とを含む摺動構造体に関する。
潤滑剤の一種として、基油(潤滑油)と、基油に分散されている増ちょう剤と、を含むもの(所謂グリース)が知られている。この種の潤滑剤を摺動部材間に介在させることで、摺動部材間の摩擦を少なくして摺動部材同士を滑らかに摺接させることができる。
潤滑剤および摺動構造体に求められる特性として、潤滑性(摺動部材同士の動摩擦係数を低減できる性能)と、耐荷重性(摺動部材に形成されている潤滑剤膜の損傷を抑制して、摺動部材同士の焼き付きを防止する性能)とが知られている。潤滑性に劣る潤滑剤は、摺動部材間の摩擦抵抗を充分に低減できず、摺動部材の摩耗や発熱を充分に抑制できない。また、摩擦抵抗によって摺動部材から剥離する可能性もある。耐荷重性に劣る潤滑剤は、摺動部材から剥離し易い。何れの場合にも、潤滑剤が摺動部材から剥離すると、摺動部材同士が焼き付くおそれがある。
潤滑剤および摺動構造体の潤滑性を向上させる方法として、モリブデン化合物等の添加剤を配合した潤滑剤によって摺動部材の表面に潤滑性反応膜を形成する方法や、潤滑剤にポリマー等の増粘剤を配合し基油の粘度を高めて摺動部材に対する潤滑剤の層(潤滑剤層、所謂潤滑油膜)の保持性を向上させる方法が提案されている。しかし近年では、この種の潤滑剤よりも、さらに潤滑性に優れる潤滑剤が求められている。また、この種の潤滑剤からなる潤滑剤層は、比較的軟質である。このため、摺動部材の片当たりなどで摺動部材が潤滑剤層に高面圧で接触すると、潤滑剤層が荷重に耐えられず摺動部材から剥離する場合がある。潤滑剤層が剥離すると、摺動部材同士が直接接触して焼き付くおそれがある。したがって、これらの方法によると、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制するのは困難である。
酸化防止剤を潤滑剤に配合することで、潤滑剤に含まれる基油の酸化劣化を防止して潤滑剤の耐久性を向上させる方法も提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。特許文献1〜2には、酸化防止剤としてフラーレンを使用することで、潤滑剤の酸化劣化を抑制でき、摺動部材の焼き付きを抑制できることが開示されている。
しかし特許文献1〜2の技術によっても、潤滑剤層の剥離を抑制できないため、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制するのは困難である。また、特許文献1〜2の技術によると、潤滑剤の潤滑性は向上しない。
ところで、フラーレンを含む化合物として、フラーレン−グラファイト積層体が知られている(例えば、特許文献3〜4、非特許文献1〜2参照)。フラーレン−グラファイト積層体は、2以上のグラファイト層の層間に分子状または単層膜(分子膜)状のフラーレンが介在してなるものである。フラーレン−グラファイト積層体に剪断方向の力が作用すると、グラファイト層間でフラーレンの回転または揺らぎ等が生じると考えられる。この作用(所謂固体内滑り)によって、フラーレン−グラファイト積層体自体の摩擦係数は非常に小さい。したがって、上述した酸化防止剤としてのフラーレンにかえて、フラーレン−グラファイト積層体を潤滑剤に配合することで、潤滑剤の潤滑性を向上させ得る可能性がある。
三浦浩治、外2名、「C60分子封入グラファイトフィルムの作成とその超潤滑特性」、トライボロジスト、2005年、第50巻、第7号、p.553−556
三浦浩治、外1名、「フラーレン/グラファイト薄膜の超低摩擦性」、表面技術、2007年、第58巻、第1号、p.8−12
本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、油材と増ちょう剤とを含む潤滑剤に、さらに、フラーレン−グラファイト積層体の破砕体(以下、単に破砕体と呼ぶ)を配合した潤滑剤によっても、摺動部材同士の摩擦係数をさほど低減できないことを見出した。したがって、単にフラーレン−グラファイト積層体を潤滑剤に配合するだけでは、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制するのは困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、潤滑性に優れ、かつ、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制できる潤滑剤および摺動構造体を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の摺動剤は、基油と、該基油に分散されている増ちょう剤と、を含む潤滑剤であって、該増ちょう剤は、2以上のグラファイト層と該グラファイト層間に介在しているフラーレンとを含むフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体からなり、該増ちょう剤は該潤滑剤全体を100質量%としたときに80質量%以上含まれていることを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の摺動構造体は、第1摺動部材と、該第1摺動部材に対して摺接する第2摺動部材と、該第1摺動部材と該第2摺動部材との間に介在している潤滑剤と、を含む摺動構造体であって、該潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、を含み、該増ちょう剤は、2以上のグラファイト層と、該グラファイト層間に介在しているフラーレンと、を含むフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体からなり、該増ちょう剤は、該増ちょう剤と該基油との質量の和を100質量%としたときに80質量%以上含まれ、該第1摺動部材は、焼入れおよび焼き戻しされてなる鋼材であり、該第2摺動部材は、イオン窒化表面層を持つ鋼材であることを特徴とする。
本発明の摺動構造体において、前記第1摺動部材のビッカース硬さは625HV〜675HVであり、前記第2摺動部材のビッカース硬さは775HV〜825HVであることが好ましい。
本発明の摺動剤および本発明の摺動構造体は下記の(1)〜(3)の何れかを備えることが好ましく、(1)〜(3)の複数を備えることがより好ましい。
(1)前記基油はエステル油を含む。
(2)前記エステル油は、ジエステル油およびポリオールエステル油から選ばれる少なくとも一種である。
(3)前記増ちょう剤の平均2次粒子径は1μm〜10μmである。
本発明の潤滑剤および本発明の摺動構造体に含まれる潤滑剤(以下、単に本発明の潤滑剤と略する)は、基油と、基油に分散されている増ちょう剤と、を含み、増ちょう剤として、上述した破砕体を用いるものである。すなわち、本発明の潤滑剤は、極めて多量の破砕体を含む。破砕体は、フラーレン−グラファイト積層体と同様に、低摩擦係数である。また、基油と増ちょう剤とが最適なバランスで配合されていることで、本発明の潤滑剤における基油と増ちょう剤(破砕体)とは分離し難い。このため、本発明の潤滑剤によると、潤滑剤自身の粘性によって、摺動部材の摺動面に油膜状の潤滑剤層を安定して形成できる。本発明の潤滑剤は、これらの協働により、潤滑性に優れる。また、本発明の潤滑剤は潤滑性に優れるため、摺動部材同士の摩擦抵抗を大きく軽減できる。このため、摺動部材からの潤滑剤の剥離を信頼性高く抑制でき、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制できる。よって、本発明の潤滑剤および摺動構造体は、潤滑性に優れ、かつ、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制できる。
また、本発明の摺動構造体は第1摺動部材と第2摺動部材との摩擦係数(以下、摺動構造体の摩擦係数と略す)が非常に小さい。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明の摺動構造体において、一方の摺動部材(第1摺動部材)は焼入れおよび焼き戻しされてなる鋼材であるため、比較的軟質である。また、他方の摺動部材(第2摺動部材)は、イオン窒化表面層を持つ鋼材であるため、第1摺動部材に比べて遙かに硬質である。このため、潤滑剤を介在した状態で、第1摺動部材と第2摺動部材とを摺接させた場合には、潤滑剤に含まれる破砕体の一部(特に第1摺動部材側に位置するグラファイト層)が第1摺動部材に噛み込むと考えられる。これに対し、破砕体の残りの部分(特に第2摺動部材側に位置する部分、グラファイト層間に介在するフラーレンを含む部分)は、硬質の第2摺動部材には噛み込まない。換言すると、破砕体の一部は第1摺動部材に固定され、他の部分は第2摺動部材に対して相対的に移動可能である。このため、第1摺動部材および破砕体(潤滑剤)と、第2摺動部材とは互いに摺接可能であり、かつ、破砕体自身の固体内滑りによって、摺動構造体の摩擦係数が非常に小さくなる。
なお、第1摺動部材のビッカース硬さを625HV〜675HVとする場合には、第1摺動部材が、破砕体を一部固定するのに充分な程度に軟質であり、かつ、破砕体の全体が第1摺動部材に噛み込まない程度に硬質である。また、第2摺動部材のビッカース硬さを775HV〜825HVとする場合には、破砕体の一部および/または全体が噛み込まない程度に第2摺動部材が硬質である。さらに、第2摺動部材のビッカース硬さを775HV〜825HVとする場合には、第2摺動部材が充分に硬質になることで第2摺動部材の耐摩耗性が大きくなる。このため、第2摺動部材の摩耗粉の潤滑剤への混入を抑制でき、耐久使用時における摺動構造体の摩擦係数上昇を抑制できる。これらの協働によって、第1摺動部材のビッカース硬さを625HV〜675HVとし、第2摺動部材のビッカース硬さを775HV〜825HVとする場合には、摺動構造体の摩擦係数がさらに小さくなる。
上記(1)を備える本発明の潤滑剤は、基油として極性基を持つエステル油を使用することで、基油によって破砕体を化学的に保持でき、基油と破砕体との分離をさらに抑制できる。このため、上記(1)を備える本発明の潤滑剤は、さらに潤滑性に優れる。
上記(2)を備える本発明の潤滑剤は、基油によって破砕体をさらに安定して保持でき、基油と破砕体との分離をより一層抑制できる。このため、上記(2)を備える本発明の潤滑剤は、より一層潤滑性に優れる。
上記(3)を備える本発明の潤滑剤は、増ちょう剤(すなわち破砕体)の平均2次粒子径を充分に小さくしたことで、破砕体と摺動部材との摩擦抵抗を充分に小さくできる。また、破砕体の平均2次粒子径を充分に大きくしたことで、破砕体自身の構造に由来する固体内滑りを充分に発揮できる。これらの協働によって、上記(3)を備える本発明の潤滑剤は、さらに潤滑性に優れる。
本発明の潤滑剤における基油としては、鉱油や化学合成油等、一般的な潤滑剤(グリース)に用いられる各種の潤滑油を使用することができるが、上述したようにエステル油を用いるのが好ましい。なお、エステル油と多種の潤滑油との混合油を用いることもできる。
エステル油としては、ジエステル油、ポリオールエステル油等が好ましく用いられる。具体的には、ジエステル油としては、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)等を選択できる。ポリオールエステル油としては、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトールエステル油、トリメチルプロパンエステル油等を選択できる。エステル油としては、これらを単独で用いても良いし、複数種混合して用いても良い。
本発明の潤滑剤における破砕体としては、上述した特許文献3〜4、非特許文献1〜2に開示されているフラーレン−グラファイト積層体を破砕したものが使用される。なお、ここで言う破砕とは、切断、裁断等を含む概念である。このうちフラーレンは、炭素原子が6員環と5員環とで相互に繋がった中空状のボール分子である。フラーレンとしては、C60分子に限らず、C70分子、C76分子、C78分子、C80分子、C82分子、C84分子、C88分子、C90分子、C92分子、C94分子、C96分子等の種々の分子数および分子構造を持つものを使用できる。また、これらの2種以上のフラーレン(フラーレン分子)を混合したものを使用することもできる。
フラーレンは少なくともグラファイト層間に介在していれば良く、単層をなしていても良いし、多層をなしていても良いが、単層をなしている方が好ましい。フラーレンが単層をなしている場合には、固体内滑りが生じ易く、摩擦を低減する効果が高いためである。グラファイト層は2層以上あればよく、その形状は特に問わない。したがって、本発明の潤滑剤における破砕体は、例えば、グラファイト−フラーレン−グラファイトの3層構造であっても良いし、グラファイト−フラーレン−グラファイト−フラーレン−グラファイト・・・の4以上の多層構造であっても良い。また、最外層のグラファイト層のさらに外層にフラーレンが存在していても良い。
フラーレンは、グラファイト層に蒸着されていても良いし、他の方法でグラファイト層間に介在させても良い。例えば、先ず複数層のグラファイト層を硝酸と硫酸の混合液に浸漬し、乾燥、加熱することでグラファイト層間を広げ、次いで層間が広げられたグラファイト層間に、昇華させたフラーレンを挿入する方法を用いても良い。なお、図1に示すように、破砕体におけるフラーレンの6員環とグラファイト層の6員環とは、少しずれた状態で配置(所謂AB積層)されるのが良い。この場合には、フラーレンの6員環とグラファイト層の6員環とが噛合するような挙動を示し、固体内滑りが非常に動摩擦の少ない状態で生じるとされているためである。
フラーレン−グラファイト積層体を製造する方法としては、特許文献3〜4、非特許文献1〜2に開示されている方法が挙げられる、例えば、以下の第1の方法や第2の方法によると、フラーレン−グラファイト積層体を製造できる。第1の方法は、多層状をなすグラファイト層の層間を広げ、この層間にフラーレンを挿入する方法である。第2の方法は、フラーレンをグラファイト層に蒸着する方法である。なお、本発明の潤滑剤における破砕体としては、第1の方法および第2の方法を適宜組み合わせて製造したフラーレングラファイト積層体を破砕したものを用いても良いし、第1の方法および/または第2の方法を一部改変した方法でて製造したフラーレングラファイト積層体を破砕したものを用いても良い。
(第1の方法)
先ず、100%硫酸と100%硝酸とを硫酸:硝酸=4:1(体積比)で混合した。この混合液50mlに、長さ2.2mm、幅2.2mm、厚さ0.2mmのグラファイト(Highly oriented pyrolytic graphite、Veeco製、Grade-ZYH)を入れた。なお、このグラファイトは多層状をなす。グラファイトを入れた混合液を、スターラを用いて20℃で16時間撹拌した。撹拌後、取り出したグラファイトを純水で洗浄し酸を中和した。
先ず、100%硫酸と100%硝酸とを硫酸:硝酸=4:1(体積比)で混合した。この混合液50mlに、長さ2.2mm、幅2.2mm、厚さ0.2mmのグラファイト(Highly oriented pyrolytic graphite、Veeco製、Grade-ZYH)を入れた。なお、このグラファイトは多層状をなす。グラファイトを入れた混合液を、スターラを用いて20℃で16時間撹拌した。撹拌後、取り出したグラファイトを純水で洗浄し酸を中和した。
次いで、グラファイトを炉に入れ、100℃で1〜2分加熱して、乾燥させた。乾燥後、1050℃で15秒加熱して、グラファイトの層間を広げた。加熱後のグラファイトを、70%エタノール水溶液中で超音波洗浄し、再度乾燥した。
乾燥後の広がったグラファイト3.77mgと、フラーレン(C60、MTR製、純度99.98%以上)7.54mgとを石英管に入れ、石英管を真空にした状態で密封した。
フラーレンおよびグラファイトが密封された石英管を炉に入れ、600℃で2週間加熱し、昇華したフラーレンをグラファイト層間に挿入した。以上の工程でフラーレン−グラファイト積層体を得た。
(第2の方法)
フラーレンとして、C60および/またはC70を用いた。このフラーレンを入れたBN坩堝を真空槽内に設置し、BN坩堝の上方に薄片状のグラファイトを配置した。真空槽内のBN坩堝を400℃に加熱することで、フラーレンを蒸発させ、グラファイトの表面に蒸着させた。フラーレンが蒸着したグラファイトを真空槽から取り出し、その上層(詳しくは、フラーレンが蒸着している層の上層)に薄片状のグラファイトを積層した。以上の工程で、フラーレン−グラファイト積層体を得た。
フラーレンとして、C60および/またはC70を用いた。このフラーレンを入れたBN坩堝を真空槽内に設置し、BN坩堝の上方に薄片状のグラファイトを配置した。真空槽内のBN坩堝を400℃に加熱することで、フラーレンを蒸発させ、グラファイトの表面に蒸着させた。フラーレンが蒸着したグラファイトを真空槽から取り出し、その上層(詳しくは、フラーレンが蒸着している層の上層)に薄片状のグラファイトを積層した。以上の工程で、フラーレン−グラファイト積層体を得た。
本発明の摺動構造体における第1摺動部材と第2摺動部材とは、例えば、直線移動しつつ摺接しても良いし、回転移動しつつ摺接しても良い。直線移動と回転移動との組み合わせであっても良い。なお、第1摺動部材と第2摺動部材とは双方が移動しても良いし、一方のみが移動しても良い。本発明の摺動構造体は、スプラインジョイント、すべり軸受け等の種々の摺動構造体として利用できる。
第1摺動部材は、焼入れおよび焼き戻しされてなる鋼材であれば良く、鋼材の材料、焼入れ温度、焼き戻し温度等は特に問わない。第2摺動部材はイオン窒化表面層を持つ鋼材であればよく、焼入れおよび焼き戻し後にイオン窒化処理されてなる鋼材であっても良い。
本発明の潤滑剤には、基油と増ちょう剤以外に、一般的な潤滑剤に含まれる各種の添加剤を配合しても良い。本発明の潤滑剤に配合できる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、防錆剤、金属不活性化剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種のみを配合しても良いし、2種以上を配合しても良い。
以下、本発明の潤滑剤および摺動構造体を具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油とからなる。詳しくは、増ちょう剤と基油との質量の和を100質量%としたときに、破砕体は80質量%含まれ、基油は20質量%含まれている。破砕体としては、フラーレン−グラファイト積層体を破砕して得られたものを用いた。破砕体の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定し、この測定値を基に算出した破砕体の平均2次粒子径(体積基準、対数平均径)は3μmであった。基油としては、エステル油を用いた。
実施例1の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油とからなる。詳しくは、増ちょう剤と基油との質量の和を100質量%としたときに、破砕体は80質量%含まれ、基油は20質量%含まれている。破砕体としては、フラーレン−グラファイト積層体を破砕して得られたものを用いた。破砕体の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定し、この測定値を基に算出した破砕体の平均2次粒子径(体積基準、対数平均径)は3μmであった。基油としては、エステル油を用いた。
(潤滑剤の調製)
上記の工程で得た破砕体と、エステル油(ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS))とを混合し、実施例1の潤滑剤を得た。
上記の工程で得た破砕体と、エステル油(ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS))とを混合し、実施例1の潤滑剤を得た。
(実施例2)
実施例2の潤滑剤は、基油として鉱油の一種であるパラフィン油を用いたこと以外は、実施例1の潤滑剤と同じものである。
実施例2の潤滑剤は、基油として鉱油の一種であるパラフィン油を用いたこと以外は、実施例1の潤滑剤と同じものである。
(比較例1)
比較例1の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例1の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例1の潤滑剤における基油は、実施例1と同じエステル油である。比較例1の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、50質量%の破砕体と、50質量%の基油とを含む。
比較例1の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例1の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例1の潤滑剤における基油は、実施例1と同じエステル油である。比較例1の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、50質量%の破砕体と、50質量%の基油とを含む。
(比較例2)
比較例2の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例2の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例2の潤滑剤における基油は、実施例2と同じ鉱油(パラフィン油)である。比較例2の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、50質量%の破砕体と、50質量%の基油とを含む。
比較例2の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例2の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例2の潤滑剤における基油は、実施例2と同じ鉱油(パラフィン油)である。比較例2の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、50質量%の破砕体と、50質量%の基油とを含む。
(比較例3)
比較例3の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例1の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例3の潤滑剤における基油は、実施例1と同じエステル油である。比較例3の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、20質量%の破砕体と、80質量%の基油とを含む。
比較例3の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例1の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例3の潤滑剤における基油は、実施例1と同じエステル油である。比較例3の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、20質量%の破砕体と、80質量%の基油とを含む。
(比較例4)
比較例4の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例2の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例4の潤滑剤における基油は、実施例2と同じ鉱油(パラフィン油)である。比較例4の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、20質量%部の破砕体と、80質量%の基油とを含む。
比較例4の潤滑剤は、増ちょう剤と基油との配合割合以外は、実施例2の潤滑剤と同じものである。すなわち、比較例4の潤滑剤における基油は、実施例2と同じ鉱油(パラフィン油)である。比較例4の潤滑剤は、増ちょう剤(破砕体)と基油との質量の和を100質量%としたときに、20質量%部の破砕体と、80質量%の基油とを含む。
(比較例5)
比較例5の潤滑剤は、増ちょう剤と、基油と、添加剤とからなる。増ちょう剤と基油と添加剤との質量比は20:75:5である。詳しくは、増ちょう剤と基油との質量の和を100質量%としたときに、増ちょう剤は約21質量%含まれ、基油は約79質量%含まれている。増ちょう剤としてはリチウム石鹸を用い、基油としては実施例2と同じ鉱油を用い、添加剤としてはMo−DTC(モリブデンジチオカーバメート)を用いた。
比較例5の潤滑剤は、増ちょう剤と、基油と、添加剤とからなる。増ちょう剤と基油と添加剤との質量比は20:75:5である。詳しくは、増ちょう剤と基油との質量の和を100質量%としたときに、増ちょう剤は約21質量%含まれ、基油は約79質量%含まれている。増ちょう剤としてはリチウム石鹸を用い、基油としては実施例2と同じ鉱油を用い、添加剤としてはMo−DTC(モリブデンジチオカーバメート)を用いた。
(比較例6)
比較例6の潤滑剤は、添加剤としてフラーレン(C60)を用いたこと以外は比較例5の潤滑剤と同じものである。
比較例6の潤滑剤は、添加剤としてフラーレン(C60)を用いたこと以外は比較例5の潤滑剤と同じものである。
(評価試験)
実施例1、2、比較例1〜6の潤滑剤の離油度、耐荷重性、摩擦係数を測定した。評価試験の結果を表1に示す。離油度測定試験の結果を表すグラフを図2に示す。耐荷重性測定試験の結果を表すグラフを図3に示す。摩擦係数測定試験の結果を表すグラフを図4に示す。各試験は以下のようにおこなった。
実施例1、2、比較例1〜6の潤滑剤の離油度、耐荷重性、摩擦係数を測定した。評価試験の結果を表1に示す。離油度測定試験の結果を表すグラフを図2に示す。耐荷重性測定試験の結果を表すグラフを図3に示す。摩擦係数測定試験の結果を表すグラフを図4に示す。各試験は以下のようにおこなった。
(離油度測定試験)
JIS K2220 11に基づいて、各潤滑剤の離油度(質量%)を測定した。離油度が5質量%以下である場合を「離油度が非常に小さい(◎)」と評価し、離油度が5質量%を超え10質量%以下である場合を「離油度が小さい(○)」と評価し、離油度が10質量%を超える場合を「離油度が大きい(×)」と評価した。離油度の小さい(または非常に小さい)潤滑剤は、形状維持性に優れるため、摺動部材の摺動面に安定した潤滑剤層を形成できる。
JIS K2220 11に基づいて、各潤滑剤の離油度(質量%)を測定した。離油度が5質量%以下である場合を「離油度が非常に小さい(◎)」と評価し、離油度が5質量%を超え10質量%以下である場合を「離油度が小さい(○)」と評価し、離油度が10質量%を超える場合を「離油度が大きい(×)」と評価した。離油度の小さい(または非常に小さい)潤滑剤は、形状維持性に優れるため、摺動部材の摺動面に安定した潤滑剤層を形成できる。
表1および図2に示すように、実施例1、比較例5および比較例6の潤滑剤の離油度は非常に小さく(◎)、実施例2の潤滑剤の離油度も小さかった(○)。これに対して、比較例1〜比較例4の潤滑剤の離油度は大きかった(×)。この結果から、実施例1の潤滑剤および実施例2の潤滑剤、すなわち、増ちょう剤として80質量%以上の破砕体を用いた本発明の潤滑剤は、形状維持性に優れ、潤滑剤として充分に使用できることがわかる。特に、エステル油を基油として用いた実施例1の潤滑剤は、比較例5および比較例6の潤滑剤(すなわち、増ちょう剤としてリチウム石鹸を用いた一般的な潤滑剤)と同程度に形状維持性に優れ、潤滑剤として特に好ましく使用できることがわかる。
(耐荷重性測定試験)
ASTM(アメリカ材料試験協会)「高速四球耐荷重性能試験(ASTM D2596)」に基づいて、各潤滑剤の耐荷重性(N)を測定した。耐荷重性が2000Nを超える場合を「耐荷重性に非常に優れる(◎)」と評価し、耐荷重性が1500Nを超え2000N以下である場合を「耐荷重性に優れる(○)」と評価し、耐荷重性が1500N以下である場合を「耐荷重性に劣る(×)」と評価した。耐荷重性が大きい潤滑剤は、摺動部材同士の焼き付きを抑制できる。
ASTM(アメリカ材料試験協会)「高速四球耐荷重性能試験(ASTM D2596)」に基づいて、各潤滑剤の耐荷重性(N)を測定した。耐荷重性が2000Nを超える場合を「耐荷重性に非常に優れる(◎)」と評価し、耐荷重性が1500Nを超え2000N以下である場合を「耐荷重性に優れる(○)」と評価し、耐荷重性が1500N以下である場合を「耐荷重性に劣る(×)」と評価した。耐荷重性が大きい潤滑剤は、摺動部材同士の焼き付きを抑制できる。
表1および図3に示すように、実施例1および実施例2の潤滑剤は耐荷重性に非常に優れ(◎)、比較例5および比較例6の潤滑剤は耐荷重性に優れ(○)、比較例1〜比較例4の潤滑剤は耐荷重性に劣っていた(×)。この結果から、増ちょう剤として80質量%以上の破砕体を用いることで、摺動部材同士の焼き付きを信頼性高く抑制できることがわかる。
(摩擦係数測定試験)
往復摺動試験機(TE−77試験機)により、各潤滑剤を介在させたときの試験機の摩擦係数を測定した。詳しくは、速度(振動数)0.6Hz、荷重100N、ストローク5mm、室温下、試験時間10分で、試験開始から10分後(最後の摺動時)の平均摩擦係数(μ)を求めた。摩擦係数(μ)が0.05以下の場合を「摩擦係数が非常に小さい(◎)」と評価し、摩擦係数が0.05を超え0.06以下の場合を「摩擦係数が小さい(○)」と評価し、摩擦係数が0.06を超える場合を「摩擦係数が大きい(×)」と評価した。
往復摺動試験機(TE−77試験機)により、各潤滑剤を介在させたときの試験機の摩擦係数を測定した。詳しくは、速度(振動数)0.6Hz、荷重100N、ストローク5mm、室温下、試験時間10分で、試験開始から10分後(最後の摺動時)の平均摩擦係数(μ)を求めた。摩擦係数(μ)が0.05以下の場合を「摩擦係数が非常に小さい(◎)」と評価し、摩擦係数が0.05を超え0.06以下の場合を「摩擦係数が小さい(○)」と評価し、摩擦係数が0.06を超える場合を「摩擦係数が大きい(×)」と評価した。
表1および図4に示すように、実施例1の潤滑剤を用いた場合の摩擦係数は非常に小さく(◎)、実施例2の潤滑剤を用いた場合の摩擦係数は小さかった(○)のに比べて、比較例1〜比較例4の潤滑剤を用いた場合の摩擦係数は大きかった(×)。この結果から、破砕体を80質量%以上配合した潤滑剤は摩擦係数を小さくできること、および、油材としてエステル油を用いた潤滑剤は摩擦係数をさらに小さくできることがわかる。なお、比較例1〜比較例4の潤滑剤は、油材に対する破砕体の配合量が少ないために、増ちょう剤としての破砕体の効果が充分に発揮されず、形状維持性に劣り(離油度が大きく)、安定した潤滑剤層を形成できなかったと考えられる。
また、実施例1および実施例2の潤滑剤を用いた場合の摩擦係数は、比較例5〜比較例6の潤滑剤を用いた場合の摩擦係数(×)に比べても小さかった。この結果から、増ちょう剤として破砕体を用いることが、摩擦係数の低減(すなわち潤滑性の向上)に大きく寄与することがわかる。
(実施例3)
実施例3の摺動構造体は、第1摺動部材と第2摺動部材と潤滑剤とを備える。第1摺動部材はディスク状をなす鋼材(SCr440)を母材とし、この母材を焼入れした後に焼き戻ししたものである。第1摺動部材のビッカース硬度はHv650であった。第2摺動部材はプレート状をなす鋼材(第1摺動部材と同じSCr440)を母材とし、この母材を焼入れした後に焼き戻しし、さらに、イオン窒化処理したものである。したがって、第2摺動部材はイオン窒化表面層を持つ。第2摺動部材のビッカース硬度はHv800であった。実施例3の摺動構造体における潤滑剤は、実施例1の潤滑剤であった。
実施例3の摺動構造体は、第1摺動部材と第2摺動部材と潤滑剤とを備える。第1摺動部材はディスク状をなす鋼材(SCr440)を母材とし、この母材を焼入れした後に焼き戻ししたものである。第1摺動部材のビッカース硬度はHv650であった。第2摺動部材はプレート状をなす鋼材(第1摺動部材と同じSCr440)を母材とし、この母材を焼入れした後に焼き戻しし、さらに、イオン窒化処理したものである。したがって、第2摺動部材はイオン窒化表面層を持つ。第2摺動部材のビッカース硬度はHv800であった。実施例3の摺動構造体における潤滑剤は、実施例1の潤滑剤であった。
(比較例7)
比較例7の摺動構造体は、潤滑剤以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例7の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
比較例7の摺動構造体は、潤滑剤以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例7の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
(比較例8)
比較例8の摺動構造体は、第2摺動部材以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例8の摺動構造体における第2摺動部材は、イオン窒化処理しなかったこと以外は実施例3の摺動構造体における第2摺動部材と同じものである。
比較例8の摺動構造体は、第2摺動部材以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例8の摺動構造体における第2摺動部材は、イオン窒化処理しなかったこと以外は実施例3の摺動構造体における第2摺動部材と同じものである。
(比較例9)
比較例9の摺動構造体は、潤滑剤以外は比較例8の摺動構造体と同じものである。比較例9の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
比較例9の摺動構造体は、潤滑剤以外は比較例8の摺動構造体と同じものである。比較例9の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
(比較例10)
比較例10の摺動構造体は、第1摺動部材以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例10の摺動構造体における第1摺動部材は、焼入れ、焼き戻し後に第2摺動部材と同様のイオン窒化処理したこと以外は実施例3の摺動構造体における第1摺動部材と同じものである。
比較例10の摺動構造体は、第1摺動部材以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例10の摺動構造体における第1摺動部材は、焼入れ、焼き戻し後に第2摺動部材と同様のイオン窒化処理したこと以外は実施例3の摺動構造体における第1摺動部材と同じものである。
(比較例11)
比較例11の摺動構造体は、潤滑剤以外は比較例10の摺動構造体と同じものである。比較例11の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
比較例11の摺動構造体は、潤滑剤以外は比較例10の摺動構造体と同じものである。比較例11の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
(比較例12)
比較例12の摺動構造体は、第1摺動部材および第2摺動部材以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例12の第1摺動部材は、焼入れ、焼き戻しをしなかったこと以外は実施例3の摺動構造体における第1摺動部材と同じものである。第1摺動部材のビッカース硬度はHv260であった。比較例12の摺動構造体における第2摺動部材は、焼入れ、焼き戻し、およびイオン窒化処理をしなかったこと以外は実施例3の摺動構造体における第2摺動部材と同じものである。第2摺動部材のビッカース硬度はHv260であった。
比較例12の摺動構造体は、第1摺動部材および第2摺動部材以外は実施例3の摺動構造体と同じものである。比較例12の第1摺動部材は、焼入れ、焼き戻しをしなかったこと以外は実施例3の摺動構造体における第1摺動部材と同じものである。第1摺動部材のビッカース硬度はHv260であった。比較例12の摺動構造体における第2摺動部材は、焼入れ、焼き戻し、およびイオン窒化処理をしなかったこと以外は実施例3の摺動構造体における第2摺動部材と同じものである。第2摺動部材のビッカース硬度はHv260であった。
(比較例13)
比較例13の摺動構造体は、潤滑剤以外は比較例12の摺動構造体と同じものである。比較例13の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
(摺動構造体としての摩擦係数測定試験)
往復摺動試験機(TE−77試験機)により、実施例3の摺動構造体および比較例7〜比較例13の摺動構造体の摩擦係数を測定した。詳しくは、各摺動構造体における第1摺動部材、および第2摺動部材を、それぞれ往復摺動試験機に取り付けた。次いで、各摺動構造体における潤滑剤を第1摺動部材と第2摺動部材との間に介在させた。そして、速度(振動数)0.6Hz、荷重100N、ストローク5mm、室温下、試験時間10分で、第2摺動部材を第1摺動部材に対して摺接させつつ往復動させ、試験開始から10分後(最後の摺動時)の平均摩擦係数(μ)を求めた。試験の結果を表2に示す。
比較例13の摺動構造体は、潤滑剤以外は比較例12の摺動構造体と同じものである。比較例13の摺動構造体における潤滑剤は、比較例5の潤滑剤であった。
(摺動構造体としての摩擦係数測定試験)
往復摺動試験機(TE−77試験機)により、実施例3の摺動構造体および比較例7〜比較例13の摺動構造体の摩擦係数を測定した。詳しくは、各摺動構造体における第1摺動部材、および第2摺動部材を、それぞれ往復摺動試験機に取り付けた。次いで、各摺動構造体における潤滑剤を第1摺動部材と第2摺動部材との間に介在させた。そして、速度(振動数)0.6Hz、荷重100N、ストローク5mm、室温下、試験時間10分で、第2摺動部材を第1摺動部材に対して摺接させつつ往復動させ、試験開始から10分後(最後の摺動時)の平均摩擦係数(μ)を求めた。試験の結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例3の摺動構造体の摩擦係数は、比較例8の摺動構造体の摩擦係数および比較例10の摺動構造体の摩擦係数に比べて小さかった。この結果から、第1摺動部材として焼入れ、焼き戻ししたもの(ビッカース硬さの小さいもの)を用い、第2摺動部材としてイオン窒化処理したもの(ビッカース硬さの大きいもの)を用いることで、摺動構造体の摩擦係数を大きく低減できることがわかる。
また、実施例3の摺動構造体の摩擦係数は比較例7の摺動構造体の摩擦係数よりも小さく、比較例8の摺動構造体の摩擦係数は比較例9の摺動構造体の摩擦係数よりも小さく、比較例10の摺動構造体の摩擦係数は比較例11の摺動構造体の摩擦係数よりも小さく、比較例12の摺動構造体の摩擦係数は比較例13の摺動構造体の摩擦係数よりも小さかった。この結果から、増ちょう剤として80質量%以上の破砕体を含む本発明の潤滑剤を用いることで、摺動構造体の摩擦係数を大きく低減できることがわかる。
本発明の潤滑剤は、特に、スプラインジョイント用の潤滑剤として好ましく使用できる。また、本発明の摺動構造体は、特に、スプラインジョイントとして好ましく使用できる。
Claims (9)
- 基油と、該基油に分散されている増ちょう剤と、を含む潤滑剤であって、
該増ちょう剤は、2以上のグラファイト層と該グラファイト層間に介在しているフラーレンとを含むフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体からなり、
該増ちょう剤は、該増ちょう剤と該基油との質量の和を100質量%としたときに80質量%以上含まれていることを特徴とする潤滑剤。 - 前記基油はエステル油を含む請求項1に記載の潤滑剤。
- 前記エステル油は、ジエステル油およびポリオールエステル油から選ばれる少なくとも一種である請求項1または請求項2に記載の潤滑剤。
- 前記増ちょう剤の平均2次粒子径は1μm〜10μmである請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の潤滑剤。
- 第1摺動部材と、該第1摺動部材に対して摺接する第2摺動部材と、該第1摺動部材と該第2摺動部材との間に介在している潤滑剤と、を含む摺動構造体であって、
該潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、を含み、
該増ちょう剤は、2以上のグラファイト層と、該グラファイト層間に介在しているフラーレンと、を含むフラーレン−グラファイト積層体が破砕されてなる破砕体からなり、
該増ちょう剤は該潤滑剤全体を100質量%としたときに80質量%以上含まれ、
該第1摺動部材は、焼入れおよび焼き戻しされてなる鋼材であり、
該第2摺動部材は、イオン窒化表面層を持つ鋼材であることを特徴とする摺動構造体。 - 前記第1摺動部材のビッカース硬さは625HV〜675HVであり、
前記第2摺動部材のビッカース硬さは775HV〜825HVである請求項5に記載の摺動構造体。 - 前記基油はエステル油である請求項5または請求項6に記載の摺動構造体。
- 前記エステル油は、ジエステル油およびポリオールエステル油から選ばれる少なくとも一種である請求項5〜請求項7の何れか一つに記載の潤滑剤。
- 前記増ちょう剤の平均2次粒子径は1μm〜10μmである請求項5〜請求項8の何れか一つに記載の摺動構造体。
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