[ポリエステル樹脂]
本発明のポリエステル樹脂は、特定のジカルボン酸成分と特定のジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂である。
(ジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸成分(芳香族ジカルボン酸成分(1)、ジカルボン酸成分(1)などということがある)と、脂肪族ジカルボン酸成分(脂肪族ジカルボン酸成分(2)、ジカルボン酸成分(2)などということがある)とを含む。
<芳香族ジカルボン酸成分>
芳香族ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体などが含まれる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、アレーンジカルボン酸[例えば、ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸;メチルテレフタル酸、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルベンゼンジカルボン酸など)、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などのC6−14アレーン−ジカルボン酸、好ましくはC6−12アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくはC6−10アレーン−ジカルボン酸など]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC6−10アリールC6−10アレーンジカルボン酸]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などのジフェニルC1−4アルカン−ジカルボン酸など)などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールケトン−ジカルボン酸]、フルオレン骨格を有するジカルボン酸{例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(カルボキシメチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−4アルキル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC6−10アリール)フルオレン]、ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレン)、9,9−ジアルキル−ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7−ジカルボキシ−9,9−ジメチルフルオレンなどの9,9−ジC1−10アルキル−ジカルボキシフルオレン)など}などが挙げられる。
また、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル{例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C1−4アルキルエステル、特にC1−2アルキルエステル]など}、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。なお、芳香族ジカルボン酸における1又は2のカルボキシル基が、誘導体化されていてもよい。例えば、芳香族ジカルボン酸エステルは、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。なお、芳香族ジカルボン酸成分は、ポリエステル樹脂の製造方法に応じて選択できるが、溶融重合法では、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステルなどを使用する場合が多い。
芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。特に、芳香族ジカルボン酸成分は、多環式芳香族ジカルボン酸成分(多環式芳香族ジカルボン酸成分(1A)、ジカルボン酸成分(1A)などということがある)を含んでいてもよい。芳香族ジカルボン酸成分を多環式芳香族ジカルボン酸成分で構成すると、ポリエステル樹脂の屈折率などを大きくでき、ポリエステル樹脂の光学的特性をより一層向上できる。
多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、多環式芳香族ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体(前記例示の誘導体など)が挙げられる。多環式芳香族ジカルボン酸としては、前記芳香族ジカルボン酸のうち、縮合多環式芳香族ジカルボン酸(例えば、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジカルボキシフルオレン、9,9−ジアルキル−ジカルボキシフルオレンなどの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸)、アリールアレーンジカルボン酸(例えば、ビフェニルジカルボン酸など)、ジアリールアルカンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸など)、ジアリールケトンジカルボン酸(ジフェニルケトンジカルボン酸など)、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン、9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレンなどが挙げられる。
これらの多環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
好ましい多環式芳香族ジカルボン酸成分は、縮合多環式芳香族ジカルボン酸(例えば、縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸)成分であり、特にナフタレンジカルボン酸成分が好ましい。
多環式芳香族ジカルボン酸成分(1A)の割合は、芳香族ジカルボン酸成分(1)全体に対して、例えば、5モル%以上(例えば、10〜100モル%程度)、好ましくは15モル%以上(例えば、20〜90モル%程度)、さらに好ましくは25モル%以上(例えば、30〜70モル%程度)であってもよく、通常20〜70モル%(例えば、25〜60モル%)程度であってもよい。なお、上記割合は、ポリエステル樹脂のポリマー骨格における割合に対応している(以下、特に断りのない限り、割合の記載において同じ)。すなわち、上記割合は、ポリエステル樹脂において、芳香族ジカルボン酸成分(1)由来の骨格(エステル骨格)全体に対する多環式芳香族ジカルボン酸成分(1A)由来の骨格(エステル骨格)の割合を表す。
芳香族ジカルボン酸成分は、多環式芳香族ジカルボン酸成分と、単環式芳香族ジカルボン酸成分(単環式芳香族ジカルボン酸成分(1B)、ジカルボン酸成分(1B)などということがある)とで構成してもよい。多環式芳香族ジカルボン酸成分と、単環式芳香族ジカルボン酸成分(および脂肪族ジカルボン酸成分)とを組み合わせて使用することにより、高屈折率などの特性を維持しつつ、ポリエステル樹脂を十分に高分子量化させることができる。
単環式芳香族ジカルボン酸成分としては、単環式芳香族ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体(前記例示の誘導体など)が挙げられる。単環式芳香族ジカルボン酸としては、前記芳香族ジカルボン酸のうち、単環式アレーンジカルボン酸[例えば、ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アルキルベンゼンジカルボン酸など)など]などが挙げられる。
これらの単環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
好ましい単環式芳香族ジカルボン酸成分には、ベンゼンジカルボン酸が含まれ、特に、非対称のベンゼンジカルボン酸成分(例えば、イソフタル酸成分、フタル酸成分など)が好ましい。
多環式芳香族ジカルボン酸成分(1A)と単環式芳香族ジカルボン酸(1B)とを組み合わせる場合、これらの成分の割合は、前者/後者(モル比)=99/1〜1/99(例えば、95/5〜5/95)の範囲から選択でき、例えば、90/10〜10/90(例えば、88/12〜12/88)、好ましくは85/15〜15/85(例えば、80/20〜20/80)、さらに好ましくは75/25〜25/75(例えば、70/30〜30/70)、特に65/35〜35/65(例えば、60/40〜40/60)程度であってもよい。
<脂肪族ジカルボン酸成分>
脂肪族ジカルボン酸成分(脂肪族ジカルボン酸成分(2)、ジカルボン酸成分(2)などということがある)としては、通常、飽和脂肪族ジカルボン酸成分を好適に使用できる。
このような脂肪族ジカルボン酸成分(飽和脂肪族ジカルボン酸成分)は、例えば、下記式(2A)で表される化合物およびそのエステル形成性誘導体(前記芳香族ジカルボン酸成分の項で例示の誘導体など)から選択された少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸成分(アルカンジカルボン酸成分、炭化水素基が置換していてもよいアルカンジカルボン酸成分)であってもよい。
(式中、Aは直接結合又はアルカンを示し、Raは炭化水素基を示し、pは0以上の整数を示す。)
上記式(2A)において、Aで表されるアルカンとしては、例えば、C1−14アルカン(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのC1−10アルカン、好ましくはC1−8アルカン、さらに好ましくはC1−6アルカン)などが挙げられる。好ましい基AはC1−4アルカンであり、さらに基AはC1−3アルカンであるのが好ましく、特にC1−2アルカンであるのが好ましい。
また、前記式(2A)において、炭化水素基Raとしては、例えば、飽和炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基、好ましくはC5−6シクロアルキル基など)など]、芳香族炭化水素基[例えば、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)など]などが挙げられる。なお、炭化水素基Raには、置換基(例えば、アルコキシ基、アシル基、ハロゲン原子など)を有する炭化水素基も含まれる。また、基Raは、pが2以上であるとき、同一又は異なる基であってもよい。
これらの炭化水素基Raのうち、代表的な炭化水素基には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが含まれる。これらの中でも、特に、前記式(2A)において、炭化水素基Raとして、少なくともアリール基又はアラルキル基を含む化合物(およびそのエステル形成性誘導体)は、複屈折性を低減する効果に優れている。
前記式(2A)において、基Raの置換数pは、例えば、0〜8、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0〜2であってもよい。特に、前記式(2A)において、pが1以上(例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2)である化合物(およびそのエステル形成性誘導体)は、分岐した炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸成分であり、無置換の(すなわち、前記式(2A)においてp=0の)脂肪族ジカルボン酸成分に比べて、ポリエステル樹脂の複屈折性を効率よく低減できる場合がある。
代表的な前記脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸成分[例えば、シュウ酸、シュウ酸のエステル形成性誘導体(例えば、シュウ酸ジメチルなどのシュウ酸C1−4アルキルエステル)など]、炭化水素基を有していてもよいマロン酸成分{例えば、マロン酸、アルキルマロン酸(例えば、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ブチルマロン酸、イソブチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、ジプロピルマロン酸などのC1−10アルキル−マロン酸、好ましくはC1−6アルキル−マロン酸、さらに好ましくはC1−4アルキル−マロン酸)、アリールマロン酸(例えば、フェニルマロン酸、4−メチルフェニルマロン酸、4−クロロフェニルマロン酸、4−メトキシフェニルマロン酸などのC6−14アリール−マロン酸、好ましくはC6−10アリール−マロン酸、さらに好ましくはC6−8アリール−マロン酸)、アラルキルマロン酸(例えば、ベンジルマロン酸などのC6−10アリールC1−6アルキル−マロン酸、好ましくはC6−8アリールC1−4アルキル−マロン酸、さらに好ましくはフェニルC1−2アルキル−マロン酸)、これらのエステル形成性誘導体[例えば、マロン酸C1−4アルキルエステル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル)、アルキルマロン酸C1−4アルキルエステル、アリールマロン酸C1−4アルキルエステルなど]など}、これらのマロン酸成分に対応するC2−10アルカン−ジカルボン酸成分{例えば、炭化水素基を有していてもよいコハク酸成分[例えば、コハク酸、アルキルコハク酸(例えば、2−メチルコハク酸、2,3−ジブチルコハク酸などのC1−10アルキル−コハク酸)、これらのエステル形成性誘導体など]、炭化水素基を有していてもよいグルタル酸成分[例えば、グルタル酸、アルキルグルタル酸(例えば、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸などのC1−10アルキル−グルタル酸)、これらのエステル形成性誘導体など]、炭化水素基を有していてもよいアジピン酸成分[例えば、アジピン酸、アルキルアジピン酸(例えば、3−メチルアジピン酸などのC1−10アルキル−アジピン酸)など]、これらに対応するピメリン酸成分、スベリン酸成分、アゼライン酸成分、セバシン酸成分、ウンデカンジカルボン酸成分、ドデカンジカルボン酸成分など)など}などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
好ましい脂肪族ジカルボン酸成分は、炭化水素基を有していてもよいC1−4アルカン−ジカルボン酸成分(例えば、前記式(2A)においてAがC1−4アルカンである化合物およびそのエステル形成性誘導体)などである。これらの中でも、炭化水素基を有していてもよいC1−3アルカン−ジカルボン酸成分(例えば、前記式(2A)においてAがC1−3アルカンである化合物およびそのエステル形成性誘導体)が好ましく、特に炭化水素基(中でも少なくとも1つのアリール基又はアラルキル基)を有していてもよいマロン酸成分が好ましい。
なお、このような炭化水素基を有していてもよいマロン酸成分は、例えば、下記式(2a)で表される化合物およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種であってもよい。
(式中、Ra1およびRa2は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。)
上記式(2a)において、炭化水素基としては、前記Raの項で例示の炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)が挙げられる。
ジカルボン酸成分において、脂肪族ジカルボン酸成分(2)の割合は、芳香族ジカルボン酸成分(1)100モルに対して、例えば、0.01〜50モル(例えば、0.05〜40モル)、好ましくは0.1〜35モル(例えば、0.3〜30モル)、さらに好ましくは0.5〜25モル(例えば、0.8〜20モル)程度であってもよく、通常0.5〜30モル(例えば、1〜25モル)程度であってもよい。
また、芳香族ジカルボン酸成分(1)が、前記のように多環式芳香族ジカルボン酸成分(1A)および単環式芳香族ジカルボン酸成分(1B)を含む場合、単環式芳香族ジカルボン酸成分(1B)および脂肪族ジカルボン酸成分(2)の総量の割合は、多環式芳香族ジカルボン酸成分(1A)100モルに対して、例えば、5〜500モル(例えば、10〜500モル)、好ましくは15〜450モル(例えば、20〜400モル)、さらに好ましくは30〜350モル(例えば、40〜300モル)程度であってもよく、通常50〜250モル(例えば、60〜200モル)程度であってもよい。
ジカルボン成分は、代表的には、下記条件(Ia)、(Ib)および(Ic)から選択された少なくとも1つの条件を充足する場合が多い。
(Ia)芳香族ジカルボン酸成分(1)が、多環式芳香族ジカルボン酸成分(1A)と、単環式芳香族ジカルボン酸成分(1B)とを含む
(Ib)前記式(2A)中のAがC1−3アルカン(好ましくはC1−2アルカン、特にメタン)である
(Ic)前記式(2A)中のpが1以上の整数(例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2)である。
上記の中でも、特に、少なくとも条件(Ia)を充足するか、又は少なくとも条件(Ic)を充足してもよい。
少なくとも(Ia)を充足する場合としては、例えば、(Ia)のみを充足する場合、又は(Ia)および(Ib)を充足する場合などが挙げられる。
また、少なくとも条件(Ic)を充足する場合としては、(Ic)のみを充足する場合、又は(Ib)および(Ic)を充足する場合などが挙げられる。これらのいずれにおいても、特に、上記(Ia)を充足してもよい。
なお、ジカルボン酸成分は、本発明の効果を害しない範囲であれば、芳香族ジカルボン酸成分(1)および脂肪族ジカルボン酸成分(2)以外の他のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。このような他のジカルボン酸成分としては、例えば、飽和脂環族ジカルボン酸成分[例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、これらのエステル形成性誘導体など]、不飽和ジカルボン酸成分{例えば、不飽和脂肪族ジカルボン酸成分(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体)、不飽和脂環族ジカルボン酸成分[例えば、シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)、これらのエステル形成性誘導体など]など}などが含まれる。これらの他のジカルボン酸成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、ジカルボン酸全体に対する芳香族ジカルボン酸成分(1)および脂肪族ジカルボン酸成分(2)の総量の割合は、例えば、70モル%以上(例えば、70〜100モル%)、好ましくは80モル%以上(例えば、85〜100モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜100モル%)であってもよい。
なお、必要に応じて、ジカルボン酸成分に加えて、3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸など)を少量[例えば、ジカルボン酸成分とポリカルボン酸成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜5モル%程度)]使用してもよい。
(ジオール成分)
ジオール成分は、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有するジオール(単に、フルオレン骨格を有するジオールなどということがある)を少なくとも含んでいる。このようなフルオレン骨格を有するジオールは、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有している限り、フルオレンや、フルオレンの9位に置換したアリール基に、置換基(後述の置換基など)を有していてもよい。
このようなフルオレン骨格を有するジオールは、代表的には、下記式(3)で表される化合物であってもよい。
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、R1は置換基を示し、R2はアルキレン基を示し、R3は置換基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは0以上の整数である。)
上記式(3)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(特に、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環に対応する縮合多環式芳香族炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素としては、ナフタレン、アントラセンなどが挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環(特にベンゼン環)が含まれる。
基R1としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R1は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
また、前記式(3)において、基R2で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの芳香族炭化水素環Zにおいて、基R2は同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
オキシアルキレン基(OR2)の数(付加モル数)mは、1以上であればよく、例えば、1〜12(例えば、1〜8)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数mは、異なる環Zに対して、同一であっても、異なっていてもよい。
また、前記式(3)において、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基[すなわち、−O−(R2O)m−H]の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、ヒドロキシル基含有基は、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位、(例えば、フェニル基の3位、4位など)に置換していればよく、好ましくは4位に置換していてもよい。また、ヒドロキシル基含有基は、環Zが縮合多環式炭化水素環である場合、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
環Zに置換する置換基R3としては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1−20アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR4[式中、R4は炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などの基−SR4(式中、R4は前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
これらのうち、代表的には、基R3は、炭化水素基、−OR4(式中、R4は炭化水素基を示す。)、−SR4(式中、R4は前記と同じ。)、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基であってもよい。
好ましい基R3としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。特に、R3は、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基R3は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
具体的なフルオレン骨格を有するジオール(又は前記式(3)で表される化合物)には、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(3)において、mが1である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(3)において、mが2以上である化合物)などが含まれる。
また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
これらのフルオレン骨格を有するジオールは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、前記ジオール成分は、フルオレン骨格を有するジオール(ジオール成分(A1)ということがある)のみで構成してもよく、フルオレン骨格を有するジオールを含む限り、フルオレン骨格を有するジオール以外の他のジオール成分を含んでいてもよい。
このような他のジオール成分(ジオール成分(A2)ということがある)としては、例えば、脂肪族ジオール{例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)、脂環族ジオール[例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)など]など}、芳香族ジオール{ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、芳香脂肪族ジオール[例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど]、ビフェノール、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどの前記式(3)においてmが0である化合物}などが挙げられる。他のジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
これらのうち、効率よく高分子量化するためには、他のジオール成分として、C2−4アルカンジオール、ポリC2−4アルカンジオールなどの脂肪族ジオール(例えば、特にエチレングリコールなどのC2−4アルカンジオール)を好適に併用してもよい。
ジオール成分において、フルオレン骨格を有するジオール(ジオール成分(A1))の割合は、ジオール成分全体に対して、30モル%以上(例えば、40〜100モル%)の範囲から選択できる。特に、ポリエステル樹脂中に高濃度でフルオレン骨格を導入しつつ、効率よく高分子量化するという観点からは、例えば、50モル%以上(例えば、55〜100モル%程度)、好ましくは60モル%以上(例えば、65〜99モル%程度)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、75〜95モル%程度)であってもよく、通常60〜90モル%程度であってもよい。
また、他のジオール成分を併用する場合、ジオール成分(A1)と、ジオール成分(A2)(脂肪族ジオール成分など)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99/1〜50/50、好ましくは95/5〜60/40(例えば、93/7〜65/35)、さらに好ましくは90/10〜70/30(例えば、88/12〜75/25)程度であってもよい。
なお、必要に応じて、ジオール成分に加えて、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール成分[アルカンポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなど)、フルオレン骨格を有するポリオール(例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレンなど)など]を少量[例えば、ジオール成分とポリオール成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜5モル%程度)]使用してもよい。
(樹脂特性および製造方法)
本発明のポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合成分とする(又はジカルボン酸成分とジオール成分とが重合した)樹脂であり、種々の特性、特に光学的特性において優れている。
例えば、本発明のポリエステル樹脂は、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アリール)フルオレン骨格および芳香族ジカルボン酸成分由来の骨格を有しているため、高い屈折率を有している。しかも、光学的異方性がなく、後述するように、芳香族ジカルボン酸成分由来の骨格を有しているにもかかわらず、延伸処理(配向処理)しても優れた低複屈折性を有している。また、本発明のポリエステル樹脂は、透明性にも優れている。
このような本発明のポリエステル樹脂の屈折率は、例えば、波長589nmにおいて、1.58以上(例えば、1.59〜1.8程度)、好ましくは1.6以上(例えば、1.6〜1.75程度)、さらに好ましくは1.61以上(例えば、1.615〜1.7程度)であってもよく、通常1.62以上(例えば、1.62〜1.69、好ましくは1.63〜1.68程度)であってもよい。
本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量は、例えば、5000〜500000程度の範囲から選択でき、例えば、7000〜300000、好ましくは8000〜200000、さらに好ましくは10000〜150000程度であってもよく、通常12000〜100000(例えば、13000〜70000)程度であってもよい。本発明では、多環式芳香族ジカルボン酸成分と9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有するジオールとを組み合わせても、上記のようにポリマーとして十分な分子量のポリエステル樹脂を得ることができる。
また、本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、90〜250℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは110〜200℃程度であってもよい。
なお、本発明のポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを反応(重合又は縮合)させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、使用するジカルボン酸成分の種類などに応じて適宜選択でき、慣用の方法、例えば、溶融重合法(ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。好ましい方法は、溶融重合法である。本発明では、溶融重合法であっても、効率よくポリマー化できる。
また、反応において、ジカルボン酸成分における9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有するジオールや、ジカルボン酸成分における芳香族ジカルボン酸成分や脂肪族ジカルボン酸成分の使用量(使用割合)は、前記と同様の範囲から選択できるが、必要に応じて各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、ジオール成分において、脂肪族ジオール成分を併用する場合、脂肪族ジオール成分をポリエステル樹脂における脂肪族ジオール成分由来の骨格の所望の割合よりも過剰に使用してもよい。また、反応は、重合方法に応じて、適宜溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
反応は、樹脂が着色するのを防ぎ、より穏和な条件で所定の重合度の樹脂を得るためには、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、ポリエステル樹脂の製造に利用される種々の触媒、例えば、金属触媒などが使用できる。金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、バリウムなど)、遷移金属(亜鉛、カドミウム、鉛、コバルトなど)などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などが例示できる。これらの触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜10×10−4モル程度であってもよい。
反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、減圧下(例えば、1×102〜1×104Pa程度)で行うこともできる。反応温度は、重合法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、150〜300℃、好ましくは180〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃程度であってもよい。
[成形体]
本発明のポリエステル樹脂は、前記のように、高耐熱性、優れた光学的特性(高屈折率、低複屈折性、高透明性など)を有している。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂(又はその樹脂組成物、以下、樹脂組成物を含めてポリエステル樹脂ということがある)で構成された成形体も含まれる。成形体の形状は、特に限定されず、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
このような成形体は、前記ポリエステル樹脂で構成されていればよく、前記ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物で構成してもよい。このような樹脂組成物は、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤(シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末など)、耐熱性改良剤(硫黄化合物やポリシランなど)、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
特に、本発明のポリエステル樹脂は、種々の光学的特性に優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂で形成されたフィルム(光学フィルム)も含まれる。
このようなフィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記ポリエステル樹脂を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
フィルムは、延伸フィルムであってもよい。本発明のフィルムは、延伸フィルムであっても、低複屈折性を高いレベルで維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1〜10倍(好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍)程度であってもよく、通常1.1〜2.5倍(好ましくは1.2〜2.3倍、さらに好ましくは1.5〜2.2倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸(例えば、縦横両方向に1.5〜5倍延伸)であっても偏延伸(例えば、縦方向に1.1〜4倍、横方向に2〜6倍延伸)であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸(例えば、縦方向に2.5〜8倍延伸)であっても横延伸(例えば、横方向に1.2〜5倍延伸)であってもよい。
なお、延伸フィルムの厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
本発明のフィルムは、このような延伸フィルムであっても、優れた低複屈折性を有している。例えば、前記フィルム(又は前記ポリエステル樹脂)の波長600nmにおける複屈折率(又は複屈折)は、延伸倍率1.7倍(例えば、Tg+30℃条件での延伸倍率1.7倍)の一軸延伸フィルムにおいて、5×10−4以下(例えば、0〜4.5×10−4)、好ましくは4.5×10−4以下(例えば、0.1×10−4〜4×10−4)、さらに好ましくは4×10−4以下(例えば、0.2×10−4〜3.7×10−4)、通常0.3×10−4〜4.5×10−4程度であってもよく、特に3×10−4以下(例えば、0.1×10−4〜2.5×10−4、好ましくは0.3×10−4〜2.2×10−4、さらに好ましくは0.5×10−4〜2×10−4程度)とすることもできる。なお、複屈折率は、フィルム面内において、ある方向(例えば、延伸方向)における屈折率と、この方向に垂直な方向(延伸方向に垂直な方向)における屈折率との差の絶対値として表すことができる。
また、前記フィルム(又は前記ポリエステル樹脂)の波長600nmにおけるレタデーション値(Re値)は、延伸倍率1.7倍の一軸延伸フィルム(例えば、Tg+30℃条件での延伸倍率1.7倍)において、例えば、0〜200nm(例えば、1〜150nm)、好ましくは100nm以下(例えば、3〜100nm)、さらに好ましくは80nm以下(例えば、5〜60nm)、特に50nm以下(例えば、10〜40nm)程度であってもよい。なお、リタデーション値は、複屈折率×フィルム厚みとして算出できる。
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(又は未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限がなく、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、フィルムの評価は以下の方法によって行った。
(1)屈折率
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、光源波長589nm、測定温度20℃で測定した。
(2)複屈折性
「RETS-100」(大塚電子株式会社製)を用い、測定方式は平行ニコル回転法にて、波長600nmでリタデーションを測定し、このリタデーション値を測定部位の厚みで割ることで算出した。
(実施例1)
反応器に、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)0.8モル、エチレングリコール2.2モル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.49モル、イソフタル酸ジメチル0.50モル、およびマロン酸0.01モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、エステル交換反応を行った後、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、290℃、1トル以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。この後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の49モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、1モル%がマロン酸由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは42,900、ガラス転移温度Tgは150℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度180℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、3.4×10−4であった。
(実施例2)
実施例1において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを0.49モルから0.45モルに代えるとともに、マロン酸を0.01モルから0.05モルに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の45モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がマロン酸由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは43,500、ガラス転移温度Tgは150℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度180℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.8×10−4であった。
(実施例3)
実施例1において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを0.49モルから0.35モルに代えるとともに、マロン酸を0.01モルから0.15モルに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の35モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、15モル%がマロン酸由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは39,300、ガラス転移温度Tgは151℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度181℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.8×10−4であった。
(実施例4)
実施例1において、マロン酸0.01モルをマロン酸ジエチル0.01モルに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の49モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、1モル%がマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは47,200、ガラス転移温度Tgは150℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度180℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、3.2×10−4であった。
(実施例5)
実施例4において、マロン酸ジエチル0.01モルを0.05モルに代えたこと以外は、実施例4と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の45モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは45,800、ガラス転移温度Tgは150℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度180℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、3.6×10−4であった。
(実施例6)
実施例4において、マロン酸ジエチル0.01モルを0.15モルに代えたこと以外は、実施例4と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の35モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、15モル%がマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは45,700、ガラス転移温度Tgは149℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.648であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度179℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.1×10−4であった。
(実施例7)
実施例1において、マロン酸0.01モルを、フェニルマロン酸ジエチル0.01モルに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の49モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、1モル%がフェニルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは40,000、ガラス転移温度Tgは148℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度178℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.3×10−4であった。
(実施例8)
実施例7において、フェニルマロン酸ジエチル0.01モルを0.05モルに代えたこと以外は、実施例7と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の45モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がフェニルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは42,500、ガラス転移温度Tgは147℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度177℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.5×10−4であった。
(実施例9)
実施例7において、フェニルマロン酸ジエチル0.01モルを0.15モルに代えたこと以外は、実施例7と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の35モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、15モル%がフェニルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは37,300、ガラス転移温度Tgは144℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度174℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.6×10−4であった。
(実施例10)
実施例1において、マロン酸0.01モルを、ベンジルマロン酸ジエチル0.01モルに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の49モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、1モル%がベンジルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは45,200、ガラス転移温度Tgは149℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度179℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、3.2×10−4であった。
(実施例11)
実施例10において、ベンジルマロン酸ジエチル0.01モルを0.05モルに代えたこと以外は、実施例10と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の45モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がベンジルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは40,800、ガラス転移温度Tgは146℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.648であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度176℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.8×10−4であった。
(実施例12)
実施例10において、ベンジルマロン酸ジエチル0.01モルを0.15モルに代えたこと以外は、実施例10と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の35モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、15モル%がベンジルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは37,500、ガラス転移温度Tgは143℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度173℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.8×10−4であった。
(実施例13)
実施例5において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.45モルを0.5モルに、イソフタル酸ジメチル0.5モルを0.45モルに代えたこと以外は、実施例5と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の50モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸由来、45モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは39,800、ガラス転移温度Tgは147℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度177℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.4×10−4であった。
(実施例14)
実施例13において、イソフタル酸ジメチル0.45モルを0.35モルに、マロン酸ジエチル0.05モルを0.15モルに代えたこと以外は、実施例13と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の50モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、35モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、15モル%がマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは37,400、ガラス転移温度Tgは147℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度177℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.6×10−4であった。
(実施例15)
実施例7において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.49モルを0.5モルに、イソフタル酸ジメチル0.5モルを0.4モルに、フェニルマロン酸ジエチル0.01モルを0.10モルに代えたこと以外は、実施例7と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の50モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、40モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、10モル%がフェニルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは38,400、ガラス転移温度Tgは148℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.651であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度178℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.2×10−4であった。
(実施例16)
実施例10において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.49モルを0.50モルに、イソフタル酸ジメチル0.50モルを0.45モルに、ベンジルマロン酸ジエチル0.01モルを0.05モルに代えたこと以外は、実施例10と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の50モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、45モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がベンジルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは37,900、ガラス転移温度Tgは147℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度177℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.1×10−4であった。
(実施例17)
実施例16において、イソフタル酸ジメチル0.45モルを0.40モルに、ベンジルマロン酸ジエチル0.05モルを0.10モルに代えたこと以外は、実施例16と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の50モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、40モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、10モル%がベンジルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは39,800、ガラス転移温度Tgは145℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度175℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.2×10−4であった。
(実施例18)
実施例2において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.45モルを0.475モルに、イソフタル酸ジメチル0.50モルを0.475モルに代えたこと以外は、実施例2と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の47.5モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、47.5モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がマロン酸由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは39,900、ガラス転移温度Tgは150℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度180℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、4.2×10−4であった。
(実施例19)
実施例18において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.475モルを0.45モルに、イソフタル酸ジメチル0.475モルを0.45モルに、マロン酸0.05モルを0.1モルに代えたこと以外は、実施例18と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の45モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、45モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、10モル%がベンジルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは36,600、ガラス転移温度Tgは151℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度181℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、2.9×10−4であった。
(実施例20)
実施例8において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.45モルを0.475モルに、イソフタル酸ジメチル0.50モルを0.475モルに代えたこと以外は、実施例8と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の47.5モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、47.5モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がフェニルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは38,000、ガラス転移温度Tgは147℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度177℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.8×10−4であった。
(実施例21)
実施例20において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.475モルを0.45モルに、イソフタル酸ジメチル0.50モルを0.45モルに、フェニルマロン酸ジエチル0.05モルを0.1モルに代えたこと以外は、実施例20と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の45モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、45モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、10モル%がベンジルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは33,600、ガラス転移温度Tgは145℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度175℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.2×10−4であった。
(比較例1)
実施例1において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.49モルを0.50モルに代え、マロン酸を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の50モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは42,000、ガラス転移温度Tgは149℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.649であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度179℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、5.7×10−4であった。
得られた結果をまとめた表を以下の表1に示す。なお、表1において、「BPEF」は「9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル」フルオレン」を、「EG」は「エチレングリコール」を、「2,6−NDCM」は「2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル」を、「DMI」はイソフタル酸ジメチルを示す。
(実施例22)
実施例7において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.49モルを1,4−ナフタレンジカルボン酸0.49モルに代えたこと以外は、実施例7と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の49モル%が1,4−ナフタレンジカルボン酸由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、1モル%がフェニルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは46,600、ガラス転移温度Tgは137℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度167℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.5×10−4であった。
(実施例23)
実施例22において、1,4−ナフタレンジカルボン酸0.49モルを0.45モルに、フェニルマロン酸ジエチル0.01モルを0.05モルに代えたこと以外は、実施例22と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の45モル%が1,4−ナフタレンジカルボン酸由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来、5モル%がフェニルマロン酸ジエチル由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは41,600、ガラス転移温度Tgは136℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度166℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、1.4×10−4であった。
(比較例2)
実施例22において、1,4−ナフタレンジカルボン酸0.49モルを0.50モルに代え、フェニルマロン酸ジエチルを使用しなかったこと以外は、実施例22と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来であり、また、ジカルボン酸成分の50モル%が1,4−ナフタレンジカルボン酸由来、50モル%がイソフタル酸ジメチル(すなわち、イソフタル酸)由来のポリエステル樹脂であることがわかった。
また、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは54,700、ガラス転移温度Tgは138℃であった。
そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、厚み500μmのフィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.650であった。
さらに、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率1.7倍、延伸温度168℃で一軸延伸し、延伸フィルムを得た。このフィルムの複屈折性を測定したところ、5×10−4であった。
得られた結果をまとめた表を以下の表2に示す。なお、表2において、「BPEF」、「EG」、および「DMI」は前記と同じであり、「1,4−NDA」は「1,4−ナフタレンジカルボン酸」を示す。