JP2010270400A - 原子力プラント用蒸気発生器管 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温水環境で長時間にわたり使用してもNiの溶出が極めて少ない原子力プラント用蒸気発生器管の提供
【解決手段】 含Crニッケル基合金長尺管の内表面に、厚さが0.2〜1.5μmであり、かつ下記(1)式で規定される関係を満足するクロム酸化物被膜を形成したことを特徴とする原子力プラント用蒸気発生器管。
|t1−t2|≦0.5μm ・・・(1)
但し、t1およびt2は、1本の管の両端それぞれにおけるクロム酸化被膜の厚さ(μm)である。
【選択図】 なし
【解決手段】 含Crニッケル基合金長尺管の内表面に、厚さが0.2〜1.5μmであり、かつ下記(1)式で規定される関係を満足するクロム酸化物被膜を形成したことを特徴とする原子力プラント用蒸気発生器管。
|t1−t2|≦0.5μm ・・・(1)
但し、t1およびt2は、1本の管の両端それぞれにおけるクロム酸化被膜の厚さ(μm)である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、高温水環境で長期間にわたり使用しても、Niの溶出が少ない原子力プラント用蒸気発生器管に係り、特に、原子力プラント用部材等の用途に好適な原子力プラント用蒸気発生器管に関する。
ニッケル基合金は、機械的性質に優れているので種々の部材として使用されている。特に原子炉の部材は高温水に曝されるので、耐食性に優れたニッケル基合金が使用されている。例えば、加圧水型原子炉(PWR)の蒸気発生器の部材には60%Ni−30%Cr−10%Fe合金などが使用される。
これらの部材は、数年から数10年の間、原子炉の炉水環境である300℃前後の高温水の環境で用いられることになる。ニッケル基合金は、耐食性に優れており腐食速度は遅いものの、長期間の使用により微量のNiが母材から溶出する。
溶出したNiは、炉水が循環する過程で、炉心部に運ばれ燃料の近傍で中性子の照射を受ける。Niが中性子照射を受けると核反応により放射性Coに変換する。この放射性Coは、半減期が非常に長いため、放射線を長期間放出し続ける。従って、Niの溶出量が多くなると、定期検査などをおこなう作業者の被曝線量が増大する。
被曝線量を少なくすることは、軽水炉を長期にわたり使用していく上で非常に重要な課題である。従って、これまでにも材料側の耐食性の改善や原子炉水の水質を制御することによりニッケル基合金中のNiの溶出を防止する対策が採られてきた。
特許文献1にはニッケル基合金伝熱管を10-2〜10-4 Torrという真空度の雰囲気で、400〜750℃の温度域で焼鈍してクロム酸化物を主体とする酸化被膜を形成させ、耐全面腐食性を改善する方法が開示されている。
特許文献2にはニッケル基析出強化型合金の溶体化処理後に、10-3Torr〜大気圧空気下の酸化雰囲気で時効硬化処理及び酸化被膜形成処理の少なくとも一部を兼ねて行なう加熱処理を施す原子力プラント用部材の製造方法が開示されている。
特許文献3にはニッケル基合金製品を露点が-60℃〜+20℃である水素または水素とアルゴンの混合雰囲気中で熱処理するニッケル基合金製品の製造方法が開示されている。
特許文献4にはNiとCrとを含有する合金ワークピースを、水蒸気と少なくとも1種の非酸化性ガスとのガス混合物に曝して、クロム富化層を形成させる方法が開示されている。
特許文献5には、ニッケル基合金管の内表面に、高温水環境でNiの溶出を抑制する2層構造の酸化被膜を確実かつ高能率に生成させる熱処理方法として、連続式熱処理炉の出側に少なくとも2基のガス供給装置を設けるか、出側および入側にそれぞれ1基のガス供給装置を設け、これらのガス供給装置のうちの1基と炉内を貫通するガス導入管とを用いて、熱処理炉に装入する前のワーク管の内部に、その進行方向の先端側から露点が-60℃から+20℃までの範囲内にある水素または水素とアルゴンの混合ガスからなる雰囲気ガスを供給しつつ管を炉に装入して650〜1200℃で1〜1200分保持する際、管の先端が炉の出側に到達した後に、管の内部への雰囲気ガスの供給を他のガス供給装置からの供給に切り替える操作を繰り返す熱処理方法が開示されている。
特許文献1に開示の方法によって形成される被膜は、その厚さが不十分であるため、長期間の使用により被膜が損傷するなどして、溶出防止効果が失われてしまうという問題がある。
特許文献2に開示の方法には、酸化したNiが被膜中に取り込まれやすく、使用中にこのNiが溶出するという問題がある。
そして、特許文献3および4に開示の方法のように、水蒸気量(露点)を制御して酸化被膜を形成させる方法、特許文献5に開示の方法のように、雰囲気ガスとして露点を制御した水素ガスまたは水素とアルゴンガスを用いる熱処理方法では、水蒸気の入側と出側とで均一な酸化被膜を形成することが困難である。これは下記の理由による。
例えば、長尺管の酸化被膜の様な連続処理の場合、生成する酸化被膜の厚さは、酸素ポテンシャルだけでなく、被処理材の表面における酸化性ガスの濃度境界層を通しての拡散性に律速される。ここで、濃度境界層とは、被処理材の表面と表面から離れた箇所(例えば、管内側の中心軸付近)とにおけるガスの濃度分布の境界層をいう。この拡散性は、ガスの拡散係数、動粘性係数等の物理的性質およびガスの濃度、流速等の酸化処理条件による影響を受ける。水蒸気(H2O)は、上記の拡散性がCO2等の他の酸化性ガスに対して大きいので、水蒸気以外に酸化性ガスが存在しない雰囲気下での酸化処理を施す場合、水蒸気の入側と出側とで均一な酸化被膜を形成することが困難となる。
酸化被膜の厚さは、薄すぎると耐Ni溶出性の効果が得られないが、厚すぎると剥離しやすくなり、逆に、耐Ni溶出性が劣化する。本発明者らの研究によれば、酸化被膜の厚さは、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの範囲で調整する必要がある。
例えば、酸化性ガス濃度を制御すれば、管内面に形成される酸化被膜の組成の調整を行うことができる。しかし、この方法により被膜厚さの調整は困難である。一方、加熱温度、時間等の熱処理条件を制御することにより、被膜厚さを調整できるが、この方法でも微調整が難しい。また、焼きなまし等他の目的を兼ねた熱処理の場合、被膜厚さの観点からこれらの熱処理条件を変えることは難しい。
本発明者らは、鋭意研究を行い、酸化性ガス濃度および雰囲気ガス流量の関係を制御することより、被膜の厚さを制御することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、安価で、かつ均一にクロム酸化物を含Crニッケル基合金長尺管の表面に形成させた原子力プラント用蒸気発生器管を提供することを目的とする。
本発明は、下記の(A)に示す原子力プラント用蒸気発生器管を要旨とする。
(A)含Crニッケル基合金長尺管の内表面に、厚さが0.2〜1.5μmであり、かつ下記(1)式で規定される関係を満足するクロム酸化物被膜を形成したことを特徴とする原子力プラント用蒸気発生器管。
|t1−t2|≦0.5μm ・・・(1)
但し、t1およびt2は、1本の管の両端それぞれにおけるクロム酸化被膜の厚さ(μm)である。
|t1−t2|≦0.5μm ・・・(1)
但し、t1およびt2は、1本の管の両端それぞれにおけるクロム酸化被膜の厚さ(μm)である。
含Crニッケル基合金長尺管は、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Fe:15.0%以下、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるものがよい。また、Niの一部に代えて、下記群から選ばれた少なくとも1つの元素を含有するものでもよい。
1群:質量%で、Nbおよび/またはTaをいずれか単体または合計で3.15〜4.15%
2群:質量%で、Moを8〜10%
1群:質量%で、Nbおよび/またはTaをいずれか単体または合計で3.15〜4.15%
2群:質量%で、Moを8〜10%
なお、「クロム酸化物被膜」とは、Cr2O3を主体とする酸化被膜を意味し、Cr2O3以外の酸化物、例えば、MnCr2O4、TiO2、Al2O3、SiO2などの酸化物が含まれていてもよい。また、含Crニッケル基合金の表面にクロム酸化物からなる酸化被膜を有するのであれば、クロム酸化物層の上層(外側の層)および/または下層(内側の層)に他の酸化物層が形成されていてもよい。
本発明の原子力プラント用蒸気発生器管(Steam Generator tubing)によれば、原子力発電プラントにおける高温水環境で長時間にわたり使用してもNiの溶出が極めて少ない。
1.管内に供給する雰囲気ガスについて
本発明の原子力プラント用蒸気発生器管を製造する際には、含Crニッケル基合金長尺管を、二酸化炭素ガスおよび非酸化性ガスからなる雰囲気ガス、二酸化炭素ガスの一部に代えて5vol%以下の酸素ガスおよび/または7.5vol%以下の水蒸気を含む雰囲気ガスで加熱することにより、含Crニッケル基合金長尺管内面にクロム酸化物被膜を形成させるのが好ましい。
本発明の原子力プラント用蒸気発生器管を製造する際には、含Crニッケル基合金長尺管を、二酸化炭素ガスおよび非酸化性ガスからなる雰囲気ガス、二酸化炭素ガスの一部に代えて5vol%以下の酸素ガスおよび/または7.5vol%以下の水蒸気を含む雰囲気ガスで加熱することにより、含Crニッケル基合金長尺管内面にクロム酸化物被膜を形成させるのが好ましい。
二酸化炭素は、微量でも含まれておれば、クロム酸化物を形成するため、特に下限を定めないが、0.0001vol%以上含まれる場合にその効果が顕著となる。二酸化炭素ガスの濃度の上限については、特に限定しないが、製造コストを低減させる観点からは、50vol%以下とするのが好ましく、10vol%以下とするのが更に好ましい。
二酸化炭素ガスは、高温環境下で含Crニッケル基合金長尺管の内面にクロム酸化物被膜を形成させる作用を有する。即ち、二酸化炭素ガスからなる雰囲気下では、下記の反応式に示すように、含Crニッケル基合金長尺管(M)にCO2が吸着し、CO2から直接O(酸素)がNi基合金に取り込まれ、クロム酸化物が生成するのである。
CO2 + M → CO + MO
CO2 + M → CO + MO
ここで、二酸化炭素は水蒸気よりも拡散性が小さいため、形成されるクロム酸化物被膜の厚さが供給されるガス濃度、流量等の酸化処理条件による影響を受けにくい。このため、従来の水蒸気雰囲気下で行なう酸化処理よりも均一な酸化被膜を管内面に形成させることができるのである。二酸化炭素ガスを用いるメリットとしては、従来の露点発生装置で水分濃度を制御していた方法よりも安価に所望の酸化処理雰囲気を作ることができる点も挙げられる。
酸素ガスも二酸化炭素ガスと同様に、クロム酸化物を形成するため、二酸化炭素ガスの一部に代えて、雰囲気ガスに含まれていても良い。しかし、酸素ガスを多量に含有させると、クロム酸化物被膜の形成を促進して母材中のCr濃度を低下させ、耐食性を劣化させる。このため、酸素ガスを含有させる場合には、その濃度を5vol%以下とするのがよい。酸素は、微量でも含まれておれば、上記の効果を有するため、特に下限を定めないが、その効果が顕著となるのは、0.0001vol%以上含まれる場合である。
水蒸気も二酸化炭素ガスと同様に、クロム酸化物を形成するため、二酸化炭素ガスの一部に代えて、雰囲気ガスに含まれていても良い。しかし、水蒸気を多量に含有させると、Niの酸化が起こりやすくなり、被膜中のNi濃度が増加し、使用環境中においてNiが溶出するおそれがある。このため、水蒸気を含有させる場合は、その濃度を7.5vol%以下とするのが好ましい。より好ましい上限は2.5vol%である。一方、水蒸気濃度の下限は特に制限はないが、Ni溶出の抑制に有効なクロム酸化被膜を十分に形成するためには、0.01vol%以上とするのがよい。より好ましい下限は、0.1 vol%である。
このように、本発明の原子力プラント用蒸気発生器管を製造する際には、二酸化炭素ガスおよび非酸化性ガスからなる雰囲気ガス、または、二酸化炭素ガスの一部に代えて5vol%以下の酸素ガスおよび/もしくは7.5vol%以下の水蒸気を含む雰囲気ガスを供給して、含Crニッケル基合金長尺管内面の酸化処理を行なうことが好ましい。
非酸化性ガスとしては、例えば、水素ガス、希ガス(Ar、He等)、一酸化炭素ガス、窒素ガス、炭化水素ガスなどが挙げられる。これらの非酸化性ガスのうち、一酸化炭素ガス、窒素ガス、炭化水素ガスを用いた場合は、浸炭や窒化の懸念があるため、水素ガスおよび希ガスの少なくとも1種が含まれるのが好ましい。これらの非酸化性ガスのガス濃度を調整することで、二酸化炭素ガス、または更に酸素ガスおよび/もしくは水蒸気の濃度を適宜調整できる。
なお、水素ガスは、工業的に熱処理の雰囲気ガスとしてよく利用されており、これを二酸化炭素ガスの希釈に用いれば、製造コストを下げることができる。よって、雰囲気ガスを二酸化炭素ガスおよび水素ガスからなるガス雰囲気として熱処理をすることが最も好ましい。
水蒸気を含有させる場合の雰囲気ガスの濃度は、二酸化炭素ガスおよび非酸化性ガス、または更に、酸素ガスの濃度を調整した後、露点管理により水蒸気濃度を調整することにより管理できる。また、非酸化性ガスを用いて露点を調整した後、二酸化炭素ガスまたは更に酸素ガスを添加してもよい。
なお、雰囲気ガスは、酸素ガスを水素ガスまたは炭化水素ガスと混合する場合は、安全上の観点から、爆発が起きないように配慮する必要がある。そのため、水素ガスまたは炭化水素ガスを用いる場合は、二酸化炭素ガスおよび非酸化性ガス、または更に水蒸気の混合ガス雰囲気下で加熱処理を行なう。
2.管内面に形成する被膜厚さについて
耐Ni溶出性は、被膜の厚さに依存するので、被膜厚さを制御する必要がある。被膜厚さは、0.2μm未満では耐Ni溶出性は不十分である。バッチ溶出試験により、被膜厚さとNi溶出性の関係を調べたところ、0.2μm以上でNi溶出抑制効果が認められ、被膜厚さが0.3μm以上になると更に耐Ni溶出性が向上する。
耐Ni溶出性は、被膜の厚さに依存するので、被膜厚さを制御する必要がある。被膜厚さは、0.2μm未満では耐Ni溶出性は不十分である。バッチ溶出試験により、被膜厚さとNi溶出性の関係を調べたところ、0.2μm以上でNi溶出抑制効果が認められ、被膜厚さが0.3μm以上になると更に耐Ni溶出性が向上する。
しかし、被膜厚さが厚くなるほど、剥離が発生しやすくなり、被膜の剥離は、厚さが1.5μmを超えると顕著となる。被膜厚さの上限は0.95μmとするのが望ましく、より望ましい上限は0.8μmである。
3.管内面に供給する雰囲気ガスの流量について
管内面に存在するCrのみを酸化させるためには、管内を低酸素ポテンシャル環境にする必要がある。このような環境下では、酸化性ガスの供給が酸化反応を律速していると考えられる。一方、雰囲気ガスを管内に供給すると濃度勾配が生じるが、このときのガス拡散性は、酸化性ガス濃度および雰囲気ガスの流量に依存すると考えられる。酸化性ガスの供給は、ガス拡散性に依存するので、酸化性ガス濃度および雰囲気ガスの流量にも依存すると考えることができるのである。
管内面に存在するCrのみを酸化させるためには、管内を低酸素ポテンシャル環境にする必要がある。このような環境下では、酸化性ガスの供給が酸化反応を律速していると考えられる。一方、雰囲気ガスを管内に供給すると濃度勾配が生じるが、このときのガス拡散性は、酸化性ガス濃度および雰囲気ガスの流量に依存すると考えられる。酸化性ガスの供給は、ガス拡散性に依存するので、酸化性ガス濃度および雰囲気ガスの流量にも依存すると考えることができるのである。
そこで、本発明者らは、このような観点から種々の実験を行い、下記の(A)式で規定される関係を満足する条件で雰囲気ガスを供給することにより、管内面に形成されるクロム酸化被膜を所望の厚さにすることができることを見出した。
0.5≦C×Q1/2≦7.0 ・・・(A)
但し、式中の記号の意味は下記の通りである。
C:酸化性ガス濃度(vol%)
Q:雰囲気ガスの流量 (リットル/分)
0.5≦C×Q1/2≦7.0 ・・・(A)
但し、式中の記号の意味は下記の通りである。
C:酸化性ガス濃度(vol%)
Q:雰囲気ガスの流量 (リットル/分)
上記(A)式の下限は、1.0とするのが望ましく、上限は4.0とするのが望ましい。
4.加熱処理温度および加熱処理時間について
加熱処理温度および加熱処理時間については特に制限はないが、例えば、加熱温度は500〜1250℃の範囲、加熱時間は10秒〜35時間の範囲とすることができる。それぞれの限定理由は下記の通りである。
加熱処理温度および加熱処理時間については特に制限はないが、例えば、加熱温度は500〜1250℃の範囲、加熱時間は10秒〜35時間の範囲とすることができる。それぞれの限定理由は下記の通りである。
加熱温度:500〜1250℃
加熱温度は、適切な酸化被膜の厚さおよび組成ならびに合金の強度特性を得ることができる範囲であればよい。具体的には、加熱温度が500℃未満の場合、クロムの酸化が不十分となる場合があるが、1250℃を超えると、含Crニッケル基合金材の強度を確保できなくなるおそれがある。従って、加熱温度は500〜1250℃の範囲とするのがよい。
加熱温度は、適切な酸化被膜の厚さおよび組成ならびに合金の強度特性を得ることができる範囲であればよい。具体的には、加熱温度が500℃未満の場合、クロムの酸化が不十分となる場合があるが、1250℃を超えると、含Crニッケル基合金材の強度を確保できなくなるおそれがある。従って、加熱温度は500〜1250℃の範囲とするのがよい。
加熱時間:10秒〜35時間
加熱時間は、適切な酸化被膜の厚さと組成を得ることができる範囲で設定すればよい。即ち、クロム酸化物を主体とする酸化被膜を形成するためには、10秒以上加熱することが望ましいが、35時間を超えて加熱しても、酸化被膜はほとんど生成しなくなる。従って、加熱時間は10秒〜35時間の範囲とするのがよい。
加熱時間は、適切な酸化被膜の厚さと組成を得ることができる範囲で設定すればよい。即ち、クロム酸化物を主体とする酸化被膜を形成するためには、10秒以上加熱することが望ましいが、35時間を超えて加熱しても、酸化被膜はほとんど生成しなくなる。従って、加熱時間は10秒〜35時間の範囲とするのがよい。
なお、連続式熱処理炉で被膜形成処理を行う場合は、加熱時間を短くして生産性を向上させる必要がある。加熱温度が高いほど加熱時間を短くできるため、加熱温度は1000〜1200℃の範囲とすれば、加熱時間は10秒〜60分の範囲、更に好ましくは1〜20分の範囲とすることで、本発明の厚さの被膜を形成することができる。
5.被膜厚さのばらつきについて
管の長手方向における被膜厚さのバラツキが大きく、局部的に厚さの薄い被膜が形成されると、その部分でNi溶出量が多くなる。そのため、被膜厚さのバラツキは小さい方がよい。即ち、クロム酸化物被膜の厚さは、下記(1)式で規定される関係を満足する必要がある。
管の長手方向における被膜厚さのバラツキが大きく、局部的に厚さの薄い被膜が形成されると、その部分でNi溶出量が多くなる。そのため、被膜厚さのバラツキは小さい方がよい。即ち、クロム酸化物被膜の厚さは、下記(1)式で規定される関係を満足する必要がある。
|t1−t2|≦0.5μm ・・・(1)
但し、t1およびt2は、1本の管の両端それぞれにおけるクロム酸化被膜の厚さ(μm)である。
但し、t1およびt2は、1本の管の両端それぞれにおけるクロム酸化被膜の厚さ(μm)である。
なお、上記(1)式の右辺は、0.3μmとするのが好ましい。
雰囲気ガスが拡散性の大きい水蒸気と非酸化性ガスの混合ガスでは、被膜厚さのバラツキが大きい。このため、拡散性の小さい二酸化炭素ガスおよび非酸化性ガスとの混合ガス、または更に他の酸化性ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。これにより、被膜厚さのバラツキを少なくすることができる。
Ni基合金管の被膜形成処理は、製品として出荷される管長さで熱処理されるため、その熱処理をした後、1本の管の両端部からの試片を切り出し、被膜厚さを測定する。
6.含Crニッケル基合金の素管の化学組成について
本発明の含Crニッケル基合金の素管の化学組成としては、例えば、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Fe:15.0%以下、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるものがよい。各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
本発明の含Crニッケル基合金の素管の化学組成としては、例えば、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Fe:15.0%以下、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるものがよい。各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.15%以下
Cは、0.15%を超えて含有させると、耐応力腐食割れ性が劣化するおそれがある。従って、Cを含有させる場合には、その含有量を0.15%以下にするのが望ましい。更に望ましいのは、0.06%以下である。なお、Cは、合金の粒界強度を高める効果を有する。この効果を得るためにはCの含有量は0.01%以上とするのが望ましい。
Cは、0.15%を超えて含有させると、耐応力腐食割れ性が劣化するおそれがある。従って、Cを含有させる場合には、その含有量を0.15%以下にするのが望ましい。更に望ましいのは、0.06%以下である。なお、Cは、合金の粒界強度を高める効果を有する。この効果を得るためにはCの含有量は0.01%以上とするのが望ましい。
Si:1.00%以下
Siは製錬時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存する。このとき、1.00%以下に制限するのがよい。その含有量が0.50%を超えると合金の清浄度が低下することがあるため、Si含有量は0.50%以下に制限するのが望ましい。
Siは製錬時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存する。このとき、1.00%以下に制限するのがよい。その含有量が0.50%を超えると合金の清浄度が低下することがあるため、Si含有量は0.50%以下に制限するのが望ましい。
Mn:2.0%以下
Mnは、2.0%を超えると合金の耐食性を低下させるので、2.0%以下とするのが望ましい。Mnは、Crと比べ酸化物の生成自由エネルギーが低く、加熱によりMnCr2O4として析出する。また、拡散速度も比較的早いため、通常は、加熱により母材近傍にCr2O3が優先的に生成し、その外側に上層としてMnCr2O4が形成される。MnCr2O4層が存在すれば、使用環境中においてCr2O3層が保護され、また、Cr2O3層が何らかの理由で破壊された場合でもMnCr2O4によりCr2O3の修復が促進される。このような効果が顕著となるのは、0.1%以上含有させた場合である。従って、望ましいMn含有量は0.1〜2.0%であり、更に望ましいのは、0.1〜1.0%である。
Mnは、2.0%を超えると合金の耐食性を低下させるので、2.0%以下とするのが望ましい。Mnは、Crと比べ酸化物の生成自由エネルギーが低く、加熱によりMnCr2O4として析出する。また、拡散速度も比較的早いため、通常は、加熱により母材近傍にCr2O3が優先的に生成し、その外側に上層としてMnCr2O4が形成される。MnCr2O4層が存在すれば、使用環境中においてCr2O3層が保護され、また、Cr2O3層が何らかの理由で破壊された場合でもMnCr2O4によりCr2O3の修復が促進される。このような効果が顕著となるのは、0.1%以上含有させた場合である。従って、望ましいMn含有量は0.1〜2.0%であり、更に望ましいのは、0.1〜1.0%である。
P:0.030%以下
Pは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。従って、P含有量は0.030%以下に制限するのが望ましい。
Pは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。従って、P含有量は0.030%以下に制限するのが望ましい。
S:0.030%以下
Sは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。従って、S含有量は0.030%以下に制限するのが望ましい。
Sは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。従って、S含有量は0.030%以下に制限するのが望ましい。
Cr:10.0〜40.0%
Crは、クロム酸化物からなる酸化被膜を生成させるために必要な元素である。合金表面にそのような酸化被膜を生成させるためには、10.0%以上含有させるのが望ましい。しかし、40.0%を超えると相対的にNi含有量が少なくなり、合金の耐食性が低下するおそれがある。従って、Crの含有量は10.0〜40.0%が望ましい。特に、Crを14.0〜17.0%含む場合には、塩化物を含む環境での耐食性に優れ、Crを27.0〜31.0%含む場合には、更に、高温における純水やアルカリ環境での耐食性にも優れる。
Crは、クロム酸化物からなる酸化被膜を生成させるために必要な元素である。合金表面にそのような酸化被膜を生成させるためには、10.0%以上含有させるのが望ましい。しかし、40.0%を超えると相対的にNi含有量が少なくなり、合金の耐食性が低下するおそれがある。従って、Crの含有量は10.0〜40.0%が望ましい。特に、Crを14.0〜17.0%含む場合には、塩化物を含む環境での耐食性に優れ、Crを27.0〜31.0%含む場合には、更に、高温における純水やアルカリ環境での耐食性にも優れる。
Fe:15.0%以下
Feは、15.0%超えると含Crニッケル基合金の耐食性が損なわれるおそれがある。そのため、15.0%以下とする。また、Niに固溶し高価なNiの一部に替えて使用できる元素であるので、4.0%以上含有させることが望ましい。Feの含有量は、NiとCrのバランスから決めればよく、Crを14.0〜17.0%含む場合には、6.0〜10.0%とし、Crを27.0〜31.0%含む場合には、7.0〜11.0%とするのが望ましい。
Feは、15.0%超えると含Crニッケル基合金の耐食性が損なわれるおそれがある。そのため、15.0%以下とする。また、Niに固溶し高価なNiの一部に替えて使用できる元素であるので、4.0%以上含有させることが望ましい。Feの含有量は、NiとCrのバランスから決めればよく、Crを14.0〜17.0%含む場合には、6.0〜10.0%とし、Crを27.0〜31.0%含む場合には、7.0〜11.0%とするのが望ましい。
Ti:0.5%以下
Tiは、その含有量が0.5%を超えると、合金の清浄性を劣化させるおそれがあるので、その含有量は0.5%以下とするのが望ましい。更に望ましいのは、0.4%以下である。但し、合金の加工性向上および溶接時における粒成長の抑制の観点からは、0.1%以上の含有させることが望ましい。
Tiは、その含有量が0.5%を超えると、合金の清浄性を劣化させるおそれがあるので、その含有量は0.5%以下とするのが望ましい。更に望ましいのは、0.4%以下である。但し、合金の加工性向上および溶接時における粒成長の抑制の観点からは、0.1%以上の含有させることが望ましい。
Cu:0.50%以下
Cuは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.50%を超えると合金の耐食性が低下することがある。従って、Cu含有量は0.50%以下に制限するのが望ましい。
Cuは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.50%を超えると合金の耐食性が低下することがある。従って、Cu含有量は0.50%以下に制限するのが望ましい。
Al:2.00%以下
Alは製鋼時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存する。残存したAlは、合金中で酸化物系介在物となり、合金の清浄度を劣化させ、合金の耐食性および機械的性質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、Al含有量は2.00%以下に制限するのが望ましい。
Alは製鋼時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存する。残存したAlは、合金中で酸化物系介在物となり、合金の清浄度を劣化させ、合金の耐食性および機械的性質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、Al含有量は2.00%以下に制限するのが望ましい。
上記の含Crニッケル基合金は、上記の元素を含み、残部はNiおよび不純物からなるものであればよいが、耐食性、強度などの性能の向上を目的として、Nb、Ta、Moを適量添加してもよい。
Nbおよび/またはTa:いずれか単体または合計で3.15〜4.15%
NbおよびTaは、炭化物を形成しやすいので、合金の強度を向上させるのに有効である。また、合金中のCを固定するので、粒界のCr欠乏を抑制し、粒界の耐食性を向上させる効果もある。従って、これらの元素の一方または両方を含有させてもよい。上記の効果は、いずれか一方の元素を含有させる場合にはその単体の含有量、両方の元素を含有させる場合にはその合計の含有量が3.15%以上で顕著となる。
NbおよびTaは、炭化物を形成しやすいので、合金の強度を向上させるのに有効である。また、合金中のCを固定するので、粒界のCr欠乏を抑制し、粒界の耐食性を向上させる効果もある。従って、これらの元素の一方または両方を含有させてもよい。上記の効果は、いずれか一方の元素を含有させる場合にはその単体の含有量、両方の元素を含有させる場合にはその合計の含有量が3.15%以上で顕著となる。
しかし、Nbおよび/またはTaの含有量が過剰な場合には、熱間加工性および冷間加工性を損なうとともに、加熱脆化に対する感受性が高くなるおそれがある。従って、いずれか一方の元素を含有させる場合にはその単体の含有量、両方の元素を含有させる場合にはその合計の含有量が4.15%以下とするのが望ましい。従って、NbおよびTaの一方または両方を含有させる場合の含有量は、単体または合計で3.15〜4.15%とするのが望ましい。
Mo:8〜10%
Moは、耐孔食性を向上させる効果があり、必要に応じて含有させてもよい。上記の効果は8%以上で顕著となるが、10%を超えると、金属間化合物が析出して耐食性を劣化させるおそれがある。従って、Moを含有させる場合の含有量は8〜10%とするのが望ましい。
Moは、耐孔食性を向上させる効果があり、必要に応じて含有させてもよい。上記の効果は8%以上で顕著となるが、10%を超えると、金属間化合物が析出して耐食性を劣化させるおそれがある。従って、Moを含有させる場合の含有量は8〜10%とするのが望ましい。
上記含Crニッケル基合金の素管の組成として代表的なものは、以下の二種類である。
(a) C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:14.0〜17.0%、Fe:6.0〜10.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなる含Crニッケル基合金。
(b) C:0.06%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:27.0〜31.0%、Fe:7.0〜11.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなる含Crニッケル基合金。
上記(a)の合金は、Crを14.0〜17.0%含み、Niを75%程度含むため塩化物を含む環境での耐食性に優れる合金である。この合金においては、Ni含有量とCr含有量のバランスの観点からFeの含有量は6.0〜10.0%とするのが望ましい。
上記(b)の合金は、Crを27.0〜31.0%含み、Niを60%程度含むため、塩化物を含む環境のほか、高温における純水やアルカリ環境での耐食性にも優れる合金である。この合金においてもNi含有量とCr含有量のバランスの観点からFeの含有量は7.0〜11.0%とするのが望ましい。
7.含Crニッケル基合金の素管の製造方法
含Crニッケル基合金の素管の製造方法としては、所定の化学組成の含Crニッケル基合金を溶製してインゴットとした後、通常、熱間加工−焼きなましの工程、または、熱間加工―冷間加工―焼きなましの工程で製造される。さらに、母材の耐食性を向上させるため、TT処理(Thermal Treatment)と呼ばれる特殊熱処理が施されることもある。
含Crニッケル基合金の素管の製造方法としては、所定の化学組成の含Crニッケル基合金を溶製してインゴットとした後、通常、熱間加工−焼きなましの工程、または、熱間加工―冷間加工―焼きなましの工程で製造される。さらに、母材の耐食性を向上させるため、TT処理(Thermal Treatment)と呼ばれる特殊熱処理が施されることもある。
上記の熱処理方法は、上記の焼きなましの後に行ってもよく、また焼きなましを兼ねて行ってもよい。焼きなましを兼ねて行えば、従来の製造工程に加えて酸化被膜形成のための熱処理工程を追加する必要がなくなり、製造コストが嵩まない。また、前述したように、焼きなまし後にTT処理を行う場合は、これを酸化被膜形成の熱処理と兼ねて行ってもよい。さらには、焼きなましとTT処理の両者を酸化被膜形成の処理としてもよい。
実験に供する素管は、下記の製造方法により製造した。まず、表1に示す化学組成の合金を真空中で溶解、鋳造し、インゴットを得た。このインゴットを熱間鍛造してビレットにした後、熱間押出製管法により管に成形した。このようにして得た管をコールドピルガーミルによる冷間圧延により、外径23.0mm、肉厚1.4mmとした。次いで、この冷間圧延後の管を1100℃の水素雰囲気中で焼きなました後、冷間抽伸法により製品寸法が外径16.0mm、肉厚1.0mm、長さ18000mm(断面減少率=50%)の管に仕上げた。その後、各管の内外面をアルカリ性脱脂液およびリンス水で洗い、さらに内面をアセトン洗浄した。このようにして得た素管に対し、表2に示す条件の熱処理を実施した。
なお、No.1〜3では、ガス供給装置からヘッダーを介して素管に33.3リットル/分の雰囲気ガスを供給しつつ、加熱してクロム酸化被膜を形成させた。また、No.4〜13では、ヘッダーに設けた21ヶのノズルにそれぞれ素管を接続し、ヘッダーを介してガス供給装置から7Nm3/hの量の雰囲気ガスを供給した(管1本当たりで5.6リットル/分)。
熱処理後の1本の管の両端を切り出し、EDX(Energy Dispersive X-ray micro-analyzer)にて被膜組成を調査したところ、クロム酸化物からなる酸化被膜が形成されていることが判明した。その横断面を走査型電子顕微鏡(SEM ;Scanning Electron Microscope)で観察して管の両端における酸化被膜の厚さを測定し、それぞれの管端での厚さをt1、t2とし、両厚さのバラツキを|t1−t2|として評価した。そして、表3には、0.30μm以下の場合を「◎」、0.30μmより大きく0.50μm以下の場合を「○」、0.50μmを超える場合を「×」として示した。
また、上記の熱処理後の各管の両端で酸化被膜厚さを測定して被膜厚さの薄かった側から試験片を採取して溶出試験に供した。溶出試験では、オートクレーブを使用し、加圧水型原子炉一次系模擬水中でNiイオンの溶出量を測定した。その際、試験片の内表面にTi製ロックを用いて原子炉一次系模擬水を封じ込めることにより、冶具等から溶出してくるイオンにより試験液が汚染するのを防いだ。試験温度は320℃とし、1000時間原子炉一次系模擬水である500ppmB+2ppmLi+30ccH2/kgH2O(STP)中に潰漬した。試験終了後、直ちに溶液を高周波プラズマ溶解法(ICP)により分析し、Niイオンの溶出量を調べた。以上の結果を、表3に併せて示す。0.05ppm以下の場合を「◎」、0.05ppmより大きく0.30ppm以下の場合を「○」、0.30ppmを超える場合を「×」として示した。
表3に示すように、No.1〜11では、管内面に形成されたクロム酸化物被膜の厚さは本発明範囲を満足し、さらに管長手方向での酸化被膜厚さのバラツキは小さく、Ni溶出量は0.30ppm以下の範囲で少ない。
これに対し、No.12およびNo.13では、被膜厚さが薄いか、管長手方向での酸化被膜厚さのバラツキが大きく、Ni溶出量も0.30ppmを超えていた。
本発明の原子力プラント用蒸気発生器管(Steam Generator tubing)によれば、原子力発電プラントにおける高温水環境で長時間にわたり使用してもNiの溶出が極めて少ない。
Claims (3)
- 含Crニッケル基合金長尺管の内表面に、厚さが0.2〜1.5μmであり、かつ下記(1)式で規定される関係を満足するクロム酸化物被膜を形成したことを特徴とする原子力プラント用蒸気発生器管。
|t1−t2|≦0.5μm ・・・(1)
但し、t1およびt2は、1本の管の両端それぞれにおけるクロム酸化被膜の厚さ(μm)である。 - 含Crニッケル基合金長尺管が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Fe:15.0%以下、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の原子力プラント用蒸気発生器管。
- 含Crニッケル基合金長尺管が、Niの一部に代えて、下記群から選ばれた少なくとも1つの元素を含有することを特徴とする請求項2に記載の原子力プラント用蒸気発生器管。
1群:質量%で、Nbおよび/またはTaをいずれか単体または合計で3.15〜4.15%
2群:質量%で、Moを8〜10%
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