JP4529761B2 - Ni基合金の製造方法 - Google Patents
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Description
(8)前記Ni基合金が原子力プラント用部材として用いられることを特徴とする上記(1)から(7)までのいずれかに記載のNi基合金の製造方法。
本発明のNi基合金の製造方法においては、Crを含むNi基合金を、二酸化炭素ガスならびに一酸化炭素ガス、窒素ガスおよび炭化水素ガスの中から選択される少なくとも1種のガスからなる混合ガス雰囲気下で加熱して合金表面にクロム酸化物からなる酸化被膜を形成させることを最大の特徴とする。
CO2 + Metal → CO + Metal−O
加熱温度:500〜1250℃
加熱温度は、適切な酸化被膜の厚さおよび組成ならびに合金の強度特性を得ることができる範囲であればよい。具体的には、加熱温度が500℃未満の場合、クロムの酸化が不十分となる場合があるが、1250℃を超えると、Ni基合金材の強度を確保できなくなるおそれがある。従って、加熱温度は500〜1250℃の範囲とするのが望ましい。
加熱時間は、適切な酸化被膜の厚さと組成を得ることができる範囲で設定すればよい。即ち、クロム酸化物を主体とする酸化被膜を形成するためには、10秒以上加熱することが望ましいが、35時間を超えて加熱しても、酸化被膜はほとんど生成しなくなる。従って、加熱時間は10秒〜35時間の範囲とするのが望ましい。
本発明の製造方法に供されるNi基合金としては、例えば、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Fe:15.0%以下、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金がある。各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、0.15%を超えて含有させると、耐応力腐食割れ性が劣化するおそれがある。従って、Cを含有させる場合には、その含有量を0.15%以下にするのが望ましい。更に望ましいのは、0.06%以下である。なお、Cは、合金の粒界強度を高める効果を有する。この効果を得るためには、Cの含有量は0.01%以上とするのが望ましい。
Siは製錬時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存する。このとき、1.00%以下に制限する必要がある。その含有量が0.50%を超えると合金の清浄度が低下することがあるため、Si含有量は0.50%以下に制限するのが望ましい。
Mnは、2.0%を超えると合金の耐食性を低下させるので、2.0%以下とするのが望ましい。Mnは、Crと比べ酸化物の生成自由エネルギーが低く、加熱によりMnCr2O4として析出する。また、拡散速度も比較的早いため、通常は、加熱により母材近傍にCr2O3が優先的に生成し、その外側に上層としてMnCr2O4が形成される。MnCr2O4層が存在すれば、使用環境中においてCr2O3層が保護され、また、Cr2O3層が何らかの理由で破壊された場合でもMnCr2O4によりCr2O3の修復が促進される。このような効果が顕著となるのは、0.1%以上含有させた場合である。従って、望ましいMn含有量は0.1〜2.0%であり、更に望ましいのは、0.1〜1.0%である。
Pは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。従って、P含有量は0.030%以下に制限するのが望ましい。
Sは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。従って、S含有量は0.030%以下に制限するのが望ましい。
Crは、クロム酸化物からなる酸化被膜を生成させるために必要な元素である。合金表面にそのような酸化被膜を生成させるためには、10.0%以上含有させるのが望ましい。しかし、40.0%を超えると相対的にNi含有量が少なくなり、合金の耐食性が低下するおそれがある。従って、Crの含有量は10.0〜40.0%が望ましい。特に、Crを14.0〜17.0%含む場合には、塩化物を含む環境での耐食性に優れ、Crを27.0〜31.0%含む場合には、更に、高温における純水やアルカリ環境での耐食性にも優れる。
Feは、15.0%超えるとNi基合金の耐食性が損なわれるおそれがある。そのため、15.0%以下とする。また、Niに固溶し高価なNiの一部に替えて使用できる元素であるので、4.0%以上含有させることが望ましい。Feの含有量は、NiとCrのバランスから決めればよく、Crを14.0〜17.0%含む場合には、6.0〜10.0%とし、Crを27.0〜31.0%含む場合には、7.0〜11.0%とするのが望ましい。
Tiは、その含有量が0.5%を超えると、合金の清浄性を劣化させるおそれがあるので、その含有量は0.5%以下とするのが望ましい。更に望ましいのは、0.4%以下である。但し、合金の加工性向上および溶接時における粒成長の抑制の観点からは、0.1%以上の含有させることが望ましい。
Cuは合金中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.50%を超えると合金の耐食性が低下することがある。従って、Cu含有量は0.50%以下に制限するのが望ましい。
Alは製鋼時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存する。残存したAlは、合金中で酸化物系介在物となり、合金の清浄度を劣化させ、合金の耐食性および機械的性質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、Al含有量は2.00%以下に制限するのが望ましい。
NbおよびTaは、炭化物を形成しやすいので、合金の強度を向上させるのに有効である。また、合金中のCを固定するので、粒界のCr欠乏を抑制し、粒界の耐食性を向上させる効果もある。従って、これらの元素の一方または両方を含有させてもよい。上記の効果は、いずれか一方の元素を含有させる場合にはその単体の含有量、両方の元素を含有させる場合にはその合計の含有量が3.15%以上で顕著となる。
Moは、耐孔食性を向上させる効果があり、必要に応じて含有させてもよい。上記の効果は8%以上で顕著となるが、10%を超えると、金属間化合物が析出して耐食性を劣化させるおそれがある。従って、Moを含有させる場合の含有量は8〜10%とするのが望ましい。
Claims (8)
- Crを含むNi基合金を、二酸化炭素ガスと、一酸化炭素ガス、窒素ガスおよび炭化水素ガスの中から選択される少なくとも1種のガスと、5Vol.%以下の酸素ガスとからなる混合ガス雰囲気下で加熱してNi基合金表面にクロム酸化物からなる酸化被膜を形成させることを特徴とするNi基合金の製造方法。
- 混合ガス雰囲気の二酸化炭素ガスの濃度が、0.0001〜50Vol.%であることを特徴とする請求項1に記載のNi基合金の製造方法。
- 質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Fe:15.0%以下、Ti:0.5%以下、Cu:0.50%以下およびAl:2.00%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金を、二酸化炭素ガスならびに一酸化炭素ガス、窒素ガスおよび炭化水素ガスの中から選択される少なくとも1種のガスからなる混合ガス雰囲気下で加熱してNi基合金表面にクロム酸化物からなる酸化被膜を形成させることを特徴とするNi基合金の製造方法。
- 前記Ni基合金が、Niの一部に代えて、質量%で、Nbおよび/またはTaをいずれか単体または合計で3.15〜4.15%含有することを特徴とする請求項3に記載のNi基合金の製造方法。
- 前記Ni基合金が、Niの一部に代えて、質量%で、Moを8〜10%含有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のNi基合金の製造方法。
- 混合ガス雰囲気が、更に5Vol.%以下の酸素ガスを含むことを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれかに記載のNi基合金の製造方法。
- 混合ガス雰囲気の二酸化炭素ガスの濃度が、0.0001〜50Vol.%であることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれかに記載のNi基合金の製造方法。
- 前記Ni基合金が原子力プラント用部材として用いられることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載のNi基合金の製造方法。
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