JP2010263103A - 薄膜トランジスタ、及びその製造方法 - Google Patents

薄膜トランジスタ、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温で短時間の簡便なプロセスにより形成可能であり、トランジスタ特性に優れ、安定性の高い薄膜トランジスタ、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層を有する薄膜トランジスタにおいて、該ゲート絶縁層が該半導体層と接触する側の表面層と、該表面層とは組成または密度が異なる無機絶縁材料層とからなり、該表面層が酸素存在下で光照射処理またはプラズマ照射処理が施された無機膜であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【選択図】なし

Description

本発明は、低温で簡便なプロセスにより形成可能であり、高移動度で安定性の高い薄膜トランジスタ、及びその製造方法に関する。
ガラス基板上にアモルファスシリコン等の薄膜を形成し、これを活性層として用いる電界効果型薄膜トランジスタ(TFT)、またこれらを用いたアクティブマトリクス回路等はよく知られている。
しかしながら、アモルファスシリコンを用いたTFTはキャリア移動度が低く、また連続駆動時の特性が不安定であるため、有機ELアクティブマトリクス回路等に用いるには、キャリア移動度の高い、安定な薄膜トランジスタが求められている。
高移動度のTFTとして、ポリシリコン薄膜を用いたTFTが開発されているが、高精度な制御が求められるレーザーアニーリングが必要となるなど、製造プロセスが煩雑であり、素子間の性能ばらつきも問題となっている。
簡便な製造プロセスが適用できるTFTとして、有機半導体を用いたTFTがよく知られているが、キャリア移動度が低く、連続駆動時の性能劣化、素子間のバラツキが大きいため、有機ELアクティブマトリクス回路等に用いるには不十分であることがわかってきた。簡便な製造プロセスが適用でき、連続駆動時の安定性やキャリア移動度が高く、素子間のバラツキの小さい高移動度のTFTとして、近年、金属酸化物半導体を用いたTFTの開発が活発に行われている。
中でも、In−Ga−Zn−Oの組成を持つアモルファス金属酸化物が薄膜トランジスタの半導体として優れていることがわかってきた(例えば、特許文献1〜3参照)。
更に、簡便、低温、大気圧下形成が可能な溶液プロセスで、酸化物半導体層を形成する方法についても開示されている(例えば、特許文献4参照)。
しかし、これらの方法の多くは、半導体として機能させるために400℃以上での高温焼成が必要とされており、樹脂基板に適用できる方法とは言い難いのが実状である。同様に、薄膜トランジスタの構成要素の一つであるゲート絶縁層においても、スパッタやCVD等の真空プロセスや、高温での熱酸化や焼成等の高温プロセスで形成されており、フレキシブルデバイスを目指す上で必要な樹脂基板上に、簡便なプロセスで形成可能で、且つ優れたトランジスタ性能を有する薄膜トランジスタは、これまで殆ど開示されていないのが現状である。
因みに、低温、大気圧下形成が可能な溶液プロセスでゲート絶縁層を形成する方法はいくつか知られている。例えば、ポリイミド、ポリビニルフェノールなどのポリマー膜を前駆体溶液から形成する方法、無機酸化物微粒子の分散液から塗膜後、乾燥する方法、テトラエトキシシランなどのアルコキシド体や、ポリシラザン、ポリメタロキサンなどの酸化物前駆体溶液を塗布後、乾燥・焼成する方法などがある。
ポリマー膜は溶媒耐性、絶縁性、硬度などの点で懸念があるため、無機酸化物膜が好ましい。しかし、薄膜トランジスタのゲート絶縁層に適用可能なレベルの絶縁特性を得るためには、乾燥膜を更に高温で焼成する必要がある。
近年、ポリシラザンなどの塗布材料を用い、低温処理で絶縁性のよい無機酸化物膜を得る方法が知られるようになった(例えば、特許文献5、6参照)。
通常、ポリシラザンを転化して形成したシリカ絶縁膜は、例えば、450℃以上の高温処理を施しても反応が完結しないため、絶縁膜内部に残存する未反応物や中間体や副生成物等が絶縁特性劣化の原因となる。特にこの絶縁膜を薄膜トランジスタのゲート絶縁層に用いた場合、オフ電流の上昇や移動度低下など、トランジスタ特性に大きく影響を及ぼすことも分かってきた。
中でも、前述したような酸化物半導体を薄膜トランジスタの半導体層に用いた場合、その悪影響は大きい。恐らく、有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタであれば、半導体層の形成は通常、室温付近あるいは100℃以下の低温で行われるが、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタで高性能を得るためには、焼成などの熱処理プロセスが必要となり、その際に悪影響を与えているのではないかと考えている。
例えば、スパッタで形成した酸化物半導体層であればポストベーク時、酸化物半導体前駆体からなる塗布材料を用いて形成した酸化物半導体層であれば転化焼成時などに、絶縁膜中に残存する未反応のポリシラザンの転化反応が進行して生成したアンモニアなどの窒素を含有する副生成物や、元々絶縁膜中に残留していた副生成物などが半導体層へと拡散することで、性能劣化を引き起こしているのではないかと予測している。
特許文献5、6に開示されているような、UVオゾン酸化によってポリシラザンを転化する方法であれば、絶縁性の良好なシリカ膜が得られることが分かってはきたものの、全ての絶縁膜をシリカに転化するためには、少なくとも2〜3時間以上の長時間を必要としており、また特に特許文献6に開示されているような抵抗率の高い膜は、100nm以下の薄膜でしか得られておらず、薄膜トランジスタのゲート絶縁層として用いるには、実用的な技術とは言い難いのが現状である。
特開2006−165527号公報 特開2006−165528号公報 特開2007−73705号公報 特開2001−244464号公報 国際公開第06/19157号パンフレット 特開2001−159824号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温で短時間の簡便なプロセスにより形成可能であり、トランジスタ特性に優れ、安定性の高い薄膜トランジスタ、及びその製造方法を提供することである。
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
1.基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層を有する薄膜トランジスタにおいて、該ゲート絶縁層が該半導体層と接触する側の表面層と、該表面層とは組成または密度が異なる無機絶縁材料層とからなり、該表面層が酸素存在下で光照射処理またはプラズマ照射処理が施された無機膜であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
2.前記光照射処理における光が紫外光であることを特徴とする前記1に記載の薄膜トランジスタ。
3.前記表面層が前駆体材料から形成した膜を転化することで形成された無機膜であることを特徴とする前記1または2に記載の薄膜トランジスタ。
4.前記前駆体材料が無機高分子材料を含む溶液または分散液であることを特徴とする前記3に記載の薄膜トランジスタ。
5.前記無機高分子材料がポリシラザンであることを特徴とする前記4に記載の薄膜トランジスタ。
6.X線電子分光法により前記表面層から検出される窒素原子が元素組成百分率で10at%以下であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
7.X線電子分光法により前記表面層から検出される窒素原子が元素組成百分率で5at%以下であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
8.前記半導体層が酸化物半導体を含むことを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
9.前記酸化物半導体が少なくともIn、Zn、Snのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする前記8に記載の薄膜トランジスタ。
10.前記酸化物半導体が少なくともGa、Alのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする前記8または9に記載の薄膜トランジスタ。
11.前記半導体層が酸化物半導体の前駆体を含む溶液または分散液を用いて形成された膜を含むことを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
12.前記半導体層が酸化物半導体の前駆体を塗布して得られた膜にマイクロ波を照射して形成された膜を含むことを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
13.前記1〜12のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを製造することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
本発明の上記手段により、低温で短時間の簡便なプロセスにより形成可能であり、トランジスタ特性に優れ、安定性の高い薄膜トランジスタ及びその製造方法を提供することができる。
薄膜トランジスタ素子の代表的な素子構成を示す図である。 薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの1例を示す概略の等価回路図である。 実施形態における薄膜トランジスタ製造の各工程を説明する断面模式図である。
以下、本発明について詳述する。
本発明は、基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層を有する薄膜トランジスタにおいて、該ゲート絶縁層が該半導体層と接触する側の表面層と、該表面層とは組成または密度が異なる無機絶縁材料層とからなり、該表面層が酸素存在下で光照射処理またはプラズマ照射処理が施された無機膜であることを特徴とする。
〔半導体層〕
本発明に係る半導体層は、シリコンなどの無機半導体、あるいはペンタセンやペンタセン誘導体などの有機半導体からなる層でもよいが、酸化物半導体を含有することが好ましい。
本発明の実施態様としては、当該酸化物半導体が、亜鉛またはインジウムを含有する酸化物半導体であることが好ましい。この場合、当該酸化物半導体が、亜鉛とインジウムを含む酸化物、亜鉛とガリウムを含む酸化物、またはインジウムとガリウムを含む酸化物のうちのいずれかを含有する酸化物半導体であることが好ましい。また、当該酸化物半導体が、亜鉛とインジウムとガリウムとからなる酸化物またはインジウムとガリウムとからなる酸化物を含有する酸化物半導体であることがより好ましい。
本発明においては、当該半導体層が、酸化物半導体の前駆体を用いた溶液プロセスで形成された膜で構成された態様であるあることが好ましい。また、当該半導体層が、酸化物半導体の前駆体を塗布して得られた膜にマイクロ波を照射して形成された膜で構成された態様であるあることが好ましい。
以下、当該半導体層の構成要素である酸化物半導体等について詳細な説明をする。
〔酸化物半導体〕
本発明において、酸化物半導体は酸化物半導体の前駆体を含む溶液または分散液溶液から形成されることが好ましい。
(酸化物半導体の前駆体)
本発明において、酸化物半導体の前駆体は、加熱または酸化的な分解により金属酸化物半導体に転化する材料である。具体的な材料としては、金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子含有化合物としては金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
金属塩、ハロゲン金属化合物、有機金属化合物の金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩が好ましく、更に硝酸塩、酢酸塩等を、ハロゲン金属化合物としては、塩化物、ヨウ化物、臭化物等を好適に用いることができる。
有機金属化合物としては、下記の一般式(I)で示すものが挙げられる。
一般式(I) R MR
式中、Mは金属、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。
のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。Rのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。また、アルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンとも言う)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。
これらの基の炭素原子数は18以下が好ましい。また直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子にしたものでもよい。有機金属化合物の中では、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有するものが好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも1つ有する金属化合物が最も好ましい。
金属塩の内では、硝酸塩が好ましい。硝酸塩は高純度品が入手しやすく、また使用時の媒体として好ましい水に対する溶解度が高い。硝酸塩としては、硝酸インジウム、硝酸錫、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム等が挙げられる。
以上の酸化物半導体の前駆体の内、好ましいのは金属の硝酸塩、金属のハロゲン化物、アルコキシド類である。具体例としては、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウムなどが挙げられる。
中でも、本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体として、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることが好ましい。
本発明においては、前駆体として上記金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることにより、キャリア移動度の大きく、TFT素子としたときon/off比の大きい良好な特性を示す金属酸化物半導体を得ることができる。
これらの金属塩は他の無機塩、また有機金属化合物を用いる場合に比べ、加水分解、脱水反応を含むと予想される酸化反応のエネルギーが小さいこと、酸化物生成過程で発生する分解物が効率よく気化、排出されるために膜に残存しにくく、生成した酸化物中に存在する炭素などの不純物成分が少ないため、良好な半導体特性が得られるものと推定される。
不純物低減、半導体特性の向上の観点から、上記金属塩の中でも硝酸塩が最も好ましい。
金属塩、特に硝酸塩で得られる半導体特性向上の効果は、加熱温度が100℃以上、400℃以下の温度範囲で得られる非晶質の金属酸化物半導体において、特に顕著である。非晶質酸化物の半導体の良好な状態が金属塩を原料とした半導体薄膜で得られることは従来知られておらず、顕著な効果と言える。
これらの塩を用いると、また半導体変換処理として電磁波(マイクロ波)で実質低温において変換するとき照射時間を短くでき好ましい。
(酸化物半導体の前駆体薄膜の成膜方法)
これらの金属酸化物半導体の前駆体を含有する薄膜を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などを用いることができるが、本発明においては、前述した金属酸化物半導体の前駆体を適切な溶媒に溶解した溶液を用い、基板上に塗設することが好ましく、これにより生産性を大幅に向上させることができる。
金属酸化物半導体の前駆体を溶解する溶媒としては、水の他、金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではないが、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、更に、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなどの脂肪族炭化水素溶媒、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を好適に用いることができる。
中でも、金属塩などの溶解性、塗布後の乾燥性の観点から水及び低級アルコールが好ましく、低級アルコールの中ではメタノール、エタノール、プロパノール(1−プロパノール及びイソプロパノール)が乾燥性の観点で好ましい。また、溶媒として低級アルコールを単独で用いてもよいし、水と任意の割合で混合して用いてもよい。溶解性と溶液安定性及び乾燥性の観点から、水とこれら低級アルコール類を混合して本発明の「水溶液」を作製することが好ましい。低級アルコールを混合して水溶液を作製すると、大きな組成の変化を行わず表面張力を下げることができるので、インクジェット塗布等において出射性が向上するので好ましい。
本発明に係る水溶液とは、溶媒中の水含有率が30質量%以上の混合溶媒及び水(水含有率=100質量%)に溶質(本発明では金属塩とその他必要に応じて添加される添加剤)を溶解した溶液を意味する。金属塩等溶質の溶解性、溶液安定性の観点から、好ましくは水含有率は50質量%以上であり、更に好ましくは水含有率が70質量%以上である。
また、乾燥性及びインクジェット出射性、薄膜トランジスタの特性などの半導体特性を考慮した場合、溶媒比率で5質量%以上の低級アルコール添加が好ましく、いずれの特性(乾燥、出射性と溶液安定性)も満たすには水/低級アルコール比率が5/5〜95/5であることが好ましい。
更にアルコール類添加の効果として、半導体特性の向上の効果が認められる。例えば、薄膜トランジスタの移動度、on/off比、閾値などの特性の向上が認められる。この効果の原因について明確でないが、加熱による酸化物の生成プロセスに影響しているものと推察される。
金属ハロゲン化物及び/または金属アルコキシドを用いた場合には、比較的極性の高い溶媒が好ましく、中でも、沸点が100℃以下の水、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、またはこれらの混合物を用いると乾燥温度を低くすることができため、樹脂基板に塗設することが可能となり、より好ましい。特に、水またはアルコール類を50質量%以上含有すること溶媒が好ましい。
また、溶媒中に金属アルコキシドと種々のアルカノールアミン、α−ヒドロキシケトン、β−ジケトンなどの多座配位子であるキレート配位子を添加すると、金属アルコキシドを安定化したり、カルボン酸塩の溶解度を増加させたりすることができ、悪影響が出ない範囲で添加することが好ましい。
酸化物半導体の前駆体材料を含有する液体を基材上に適用して薄膜を形成する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法。ミスト法、など、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられ、また、これによりパターン化する方法などが挙げられる。塗布膜からフォトリソグラフ法、レーザーアブレーションなどによりパターン化してもよい。これらの内、好ましいのは薄膜の塗布が可能なインクジェット法、スプレーコート法等である。
例えば、インクジェット法を用いて成膜する場合、金属塩溶液を滴下して、80〜150℃程度で溶媒(水)を揮発させることにより金属塩を含有する半導体前駆体層薄膜が形成される。なお、溶液を滴下する際、基板自体を80℃〜150℃程度に加熱しておくと塗布、乾燥の2プロセスを同時に行え、前駆体膜の造膜性も良好なため好ましい。
また、前駆体となる金属を含む薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
(金属の組成比)
好ましい金属の組成比としては、金属Aを1としたとき、金属Bの組成比は0.2〜5、好ましくは0.5〜2であり、金属Cは0〜5、好ましくは0〜2である。金属A;InまたはSn、金属B;GaまたはAl金属C;Zn。
これらの内、In(インジウム)、Zn(亜鉛)のいずれかを含むことが好ましく、その他の金属としてはGa(ガリウム)を含むことが好ましい。具体的には、In−Ga−Zn−O組成(In:Zn:Ga=1:1:1)やIn−Ga−O組成(In:Ga=1:0.5)の酸化物半導体が好ましく用いられる。
(アモルファス酸化物)
熱酸化によって形成される酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、アモルファスのいずれの状態も使用可能だが、好ましくはアモルファスの薄膜である。
酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば、25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択される温度である。なお、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度を更に下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフの薄膜トランジスタが歩留まりよく得られる。
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
金属酸化物である半導体の膜厚としては特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
本発明においては、前駆体材料、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、更には1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましい。
(前駆体から酸化物半導体への転化)
前述した半導体変換処理、即ち前駆体材料から形成された前駆体薄膜を金属酸化物半導体に変換する方法としては、酸素プラズマ法、熱酸化法、UVオゾン法等の酸化処理が挙げられる。また後述するマイクロ波照射を用いることができる。
本発明において、前駆体材料を加熱する温度は前駆体を含有する薄膜表面の温度が50℃〜1000℃の範囲で任意に設定することができるが、電子デバイスの、デバイスの特性や生産効率の観点から、100〜400℃にすることが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、放射温度の測定が可能な放射温度計、ファイバー温度計などにより測定できる。により測定できる。加熱温度は電磁波の出力、照射時間、更には照射回数により制御することが可能である。また、前駆体材料を加熱する時間は任意に設定できるが、電子デバイスの特性や生産効率の観点から、1秒以上60分以下の範囲が好ましい。より好ましくは5〜30分である。
また、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることで比較的低い温度において半導体変換処理を行うことができる。
また、金属酸化物の形成はESCA等により検知でき、半導体への変換が充分行われる条件を予め選択することができる。
また、酸素プラズマ法としては大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。また酸素プラズマ法、UVオゾン法においては、基板を50℃〜300℃の範囲で加熱させることが好ましい。
大気圧プラズマ法では、大気圧下で、アルゴンガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素を含むプラズマを発生させ、基体表面をこれに晒すことで酸素プラズマ処理を行う。大気圧下とは、20〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93〜104kPaである。
大気圧プラズマ法を用いて、酸素含むガスを反応性ガスとして、酸素プラズマを発生させ、金属塩を含有する前駆体薄膜を、プラズマ空間に晒すことでプラズマ酸化により前駆体薄膜は酸化分解して、金属酸化物からなる層が形成する。
高周波電源として0.5kHz以上、2.45GHz以下、また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm以上、50W/cm以下である。
使用するガスは、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、反応ガス(酸化性ガス)の混合ガスである。反応ガスは好ましくは酸素ガスであり混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
また、反応ガスを放電空間である電極間に導入するには、常温常圧で構わない。
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号の各公報等に記載されている。
また、UVオゾン法は、酸素の存在下で、紫外光を照射し、酸化反応を進行させる方法である。紫外光の波長は、100〜450nm、特に好ましくは150〜300nm程度の所謂、真空紫外光を照射することが好ましい。光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。
ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。
紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。
また、本発明においては、酸化処理に加えて前記酸化処理の後、あるいは前記酸化処理と同時に加熱処理を施すことが好ましい。これにより酸化分解を促進できる。
また、前駆体材料を含有する薄膜を酸化処理した後、基材を50〜200℃、好ましくは80〜150℃の範囲で、加熱時間としては1分〜10時間の範囲で加熱することが好ましい。
加熱処理は酸化処理と同時に行ってもよく、酸化による金属酸化物半導体への変換を迅速に行うことができる。
金属酸化物半導体への変換後、形成される半導体薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmが好ましい。
本発明においては、前記半導体変換処理としてマイクロ波(0.3〜50GHz)照射の工程を含むことが好ましい。また、酸素の存在下でマイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
(マイクロ波の照射)
本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属無機塩材料から形成された薄膜を半導体に変換する方法として、マイクロ波照射を用いることが好ましい。
即ち、これらの金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜を形成した後、該薄膜に対し電磁波、特にマイクロ波(周波数0.3〜50GHz)を照射する。
金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜にマイクロ波を照射することで、金属酸化物前駆体中の電子が振動し、熱が発生して薄膜が内部から均一に加熱される。ガラスや樹脂等の基板にはマイクロ波領域に吸収が殆どないため、基板自体は殆ど発熱せずに薄膜部のみを選択的に加熱し、熱酸化、金属酸化物半導体へ変換することが可能となる。
マイクロ波加熱においては、一般的なようにマイクロ波吸収は吸収が強い物質に集中し、なお且つ非常に短時間で昇温することが可能なため、本発明にこの方法を用いた場合に、基材自身には殆ど電磁波による加熱の影響を与えず、短時間で前駆体薄膜のみを酸化反応が起きる温度まで昇温でき、金属酸化物前駆体を金属酸化物に変換することが可能となる。また、加熱温度、加熱時間は照射するマイクロ波の出力、照射時間で制御することが可能であり、前駆体材料、基板材料に合わせて調整することが可能である。
一般的に、マイクロ波とは0.3〜50GHzの周波数を持つ電磁波のことを指し、携帯通信で用いられる0.8GHz及び1.5GHz帯、2GHz帯、アマチュア無線、航空機レーダー等で用いられる1.2GHz帯、電子レンジ、構内無線、VICS等で用いられる2.4GHz帯、船舶レーダー等に用いられる3GHz帯、その他ETCの通信に用いられる5.6GHzなどは全てマイクロ波の範疇に入る電磁波である。また、28GHz、50GHz等の発振機を市場で入手できる。
オーブンなどを用いた通常の加熱方法に比較し、本発明に係る電磁波(マイクロ波)照射による加熱方法を用いることで、より良好な金属酸化物半導体層を得ることができる。金属酸化物半導体前駆体材料から金属酸化物半導体が生成するに際し、伝導熱以外の作用、例えば、金属酸化物半導体前駆体材料への電磁波の直接的な作用を示唆する効果が得られている。機構は十分に明らかになっていないが、金属酸化物半導体前駆体材料の加水分解や、脱水、分解、酸化等による金属酸化物半導体への転化が電磁波により促進された結果と推定される。
前記金属塩を含有する半導体前駆体層にマイクロ波照射を行って、半導体変換処理を行う方法は、短時間で選択的に酸化反応を進行させる方法である。なお、酸素の存在下でマイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
但し、熱伝導により少なからず基材にも熱が伝わるため、特に樹脂基板のような耐熱性の低い基材の場合は、マイクロ波の出力、照射時間、更には照射回数を制御することで前駆体を含有する薄膜の表面温度が100℃以上〜400℃未満になるように処理することが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は、熱電対を用いた表面温度計、また非接触の表面温度計により測定が可能である。
また、ITOのような強い電磁波吸収体が近傍(例えば、ゲート電極等)に存在する場合、これもマイクロ波を吸収し発熱するため、これに隣接する領域を更に短時間に加熱することができる。
〔ゲート絶縁層〕
本発明において、ゲート絶縁層は半導体層と接触する側の表面層と該表面層とは組成または密度が異なる無機絶縁材料層とからなり、該表面層が酸素存在下で光照射処理またはプラズマ照射処理を施された無機膜である。
ゲート絶縁層を形成する無機絶縁材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどの無機酸化物が挙げられる。これらの内好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンであり、酸化ケイ素が最も好ましい。
本発明におけるゲート絶縁層は、溶液から形成されることが好ましい。
無機酸化物皮膜を溶液から形成する方法としては、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えば、アルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、所謂ゾルゲル法等を用いることができるが、本発明においては、これらのゲート絶縁層として、M−O−Si(Mは金属)結合を含むポリメタロキサン、またはSi−N結合を含むポリシラザン等の無機高分子材料の薄膜を塗布法(広い意味の)により形成して、これを加熱処理によって、酸化ケイ素及び/または酸化チタンを主成分として含有する無機膜に変換したものが好ましい。
無機高分子材料であるポリメタロキサンの一例としては、前記MがSiであるSi−O−Si結合を含むポリシロキサン、またTi等を含むポリチタノメタロキサン等が挙げられる。これらの無機高分子材料、例えば、ポリシラザン(パーハイドロポリシラザン)は、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNP110、NN110等として市場から入手可能である。
これらの皮膜形成方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などの塗布プロセスが挙げられる。
これら絶縁膜の膜厚としては一般に50nm〜3μm、好ましくは100nm〜1μmである。
(表面層)
本発明において、ゲート絶縁層の表面を構成する表面層は、酸素存在下で光照射処理またはプラズマ照射処理を施された無機膜からなる。特に、前述したような塗布形成可能な塗布材料を用いて前駆体膜を形成した後、酸素存在下で光照射処理またはプラズマ照射処理を施すことで無機膜へと転化することが好ましい。
本発明において、表面層は高い密度を有する無機膜(高密度表面層)であることが好ましい。その膜密度は2.2g/cm以上であることが好ましく、2.3g/cm以上であることがより好ましい。
酸素存在下での光照射処理またはプラズマ照射処理を加熱処理と組み合わせ行うことがより好ましく、具体的には基板を50〜300℃の範囲で加熱させながら、酸化処理を施すことが好ましい。
本発明における酸素存在下でのプラズマ照射処理は、前述した大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。
本発明において、前駆体膜から無機膜への転化反応は酸素存在下で光照射処理を施すことが好ましい。また、酸素存在下での光照射処理における光が紫外光であることがより好ましい。紫外光を照射することでオゾンが発生し、酸化反応がより進行する。紫外光の波長は100〜450nm、特に好ましくは150〜300nm程度の、所謂真空紫外光を照射することが好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。
(無機絶縁材料層)
本発明において、前記表面層以外のゲート絶縁層を構成する無機絶縁材料層は、無機膜からなる絶縁層であれば特に限定はされないが、前述したような無機酸化物膜からなることが好ましい。また、無機絶縁材料層を形成する方法はスパッタ、CVD、蒸着などの気相法でもよいが、前述したような溶液プロセスがより好ましい。
(膜密度の測定)
本発明において、ゲート絶縁層(表面層、無機絶縁材料層)の密度は、膜密度としてX線反射率測定法により求めることができる。
具体的には、X線発生源は銅をターゲットとし、50kV−300mAで作動させる。多層膜ミラーとGe(111)チャンネルカットモノクロメーターにて単色化したX線を使用する。測定は、ソフトウェアーATX−Crystal Guide Ver.6.5.3.4を用い、半割、アライメント調整後、2θ/ω=0度から1度を0.002度/stepで0.05度/min.で走査する。上記の測定条件で反射率曲線を測定した後、株式会社リガク製GXRR Ver.2.1.0.0解析ソフトウェアーを用いて求めることができる。
また、本発明における表面層の膜密度は、2.2g/cm以上であることが好ましい。一般的にシリコンウェハーを熱酸化して得られる酸化ケイ素膜の膜密度は2.2g/cm程度であり、本発明のゲート絶縁層の表面は熱酸化膜並みの密度を有すると言える。
(元素組成百分率の測定)
本発明において、ゲート絶縁層(表面層、無機絶縁材料層)の元素組成は、X線電子分光法(XPS)により求めることができる。
また、本発明において、表面層から検出される窒素原子は元素組成百分率で10at%以下であることが好ましく、5at%以下であることがより好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
(素子構成)
図1は、本発明に係わる金属酸化物半導体を用いた、薄膜トランジスタ素子の代表的な素子構成を示す図である。
薄膜トランジスタの構成例を幾つか断面図にて図1(a)〜(f)に示す。図1において、ソース電極102、ドレイン電極103を、金属酸化物半導体からなる半導体層101がチャネルとして連結するよう構成される。
同図(a)は、支持体106上に本発明の方法によりソース電極102、ドレイン電極103を形成して、これを基材(基板)として、両電極間に半導体層101を形成し、その上にゲート絶縁層105を形成し、更にその上にゲート電極104を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、半導体層101を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極及び支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体106上に、まず、半導体層101を形成し、その後ソース電極102、ドレイン電極103、そして絶縁層105を形成した後、ゲート電極104を形成したものを表す。本発明においては、ゲート絶縁層が本発明の構成及び方法で形成されていればよい。
同図(d)は、支持体106上にゲート電極104を形成した後、ゲート絶縁層105を形成し、その上にソース電極102及びドレイン電極103を形成し、該電極間に半導体層101を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
図2は、薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの一例を示す概略の等価回路図である。
薄膜トランジスタシート120は、マトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子124を有する。121は各薄膜トランジスタ素子124のゲート電極のゲートバスラインであり、122は各薄膜トランジスタ素子124のソース電極のソースバスラインである。
各薄膜トランジスタ素子124のドレイン電極には、出力素子126が接続され、この出力素子126は、例えば、液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子126として液晶が抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。125は蓄積コンデンサ、127は垂直駆動回路、128は水平駆動回路である。これら薄膜トランジスタシート120における各トランジスタ素子のソース、ドレイン電極またゲート電極等、更にゲートバスライン、ソースバスライン、また回路配線の製造に本発明を用いることができる。
次いで、以下、薄膜トランジスタを構成する他の各要素について説明する。
〔電極〕
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、また、例えば、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛等の電磁波吸収能をもつ電極材料、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
また、導電性材料として、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。
金属微粒子を含有する分散物としては、例えば、公知の導電性ペーストなどを用いてもよいが、好ましくは、粒子径が1〜50nm、好ましくは1〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料としてマスクを介して蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成する方法、また蒸着やスパッタリング等の方法により形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。
また、導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。更に導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、ソース、ドレイン、またゲート電極等、またゲートバスライン、ソースバスライン等を、エッチングまたはリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号公報にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば、印刷法(インクジェット印刷含む。)によってパターニングした後に、メッキ剤を電極を設ける部分に接触させる。そうすると前記触媒とメッキ剤との接触により無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
無電解メッキの触媒とメッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版またインクジェット法による印刷などが用いられる。
本発明に係るソース、あるいはドレイン電極の電極材料、また形成方法としては、塗布あるいは印刷法等のウェットプロセスにより、容易に成膜が可能な流動性電極材料を用いて形成されることが好ましい。
流動性電極材料としては、公知の導電性ペーストなどを用いてもよいが、平均粒子径は1〜300nmの金属微粒子分散物が好ましく、更に中でも粒子径が1〜50nm、好ましくは1〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である金属ナノ微粒子分散液等が挙げられる。また、導電性ポリマー溶液、分散液等を好適に用いることができる。
このような金属微粒子の分散物の作製方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号公報、同11−80647号公報、同11−319538号公報、特開2000−239853号公報等に示されたコロイド法、特開2001−254185号公報、同2001−53028号公報、同2001−35255号公報、同2000−124157号公報、同2000−123634号公報、特許第2561537号公報などに記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子の分散物である。
導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法により適用する方法を用いることができる。
印刷等により基板上に適用後、150〜450℃の温度で焼成処理を行うことで融着が進み低抵抗の電極となる。
〔基板〕
基板を構成する材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において基板(支持体)は樹脂からなることが好ましく、例えば、樹脂(プラスチック)フィルムシートを用いることができる。
樹脂(プラスチック)フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。樹脂(プラスチックフィルム)を用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができると共に衝撃に対する耐性を向上できる。
また、本発明の薄膜トランジスタ素子上には、素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物または無機窒化物等が挙げられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。
以下、本発明の薄膜トランジスタの製造方法について、その実施形態を具体的に説明する。
実施例1
《薄膜トランジスタ素子1の作製》
本発明の好ましい実施形態における薄膜トランジスタ製造の各工程を図3の断面模式図を用いて説明する。
支持体301としてポリイミドフィルム(200μm)を用い、この上に、まず50W/m/minの条件でコロナ放電処理を施した。その後、以下のように接着性向上のため下引き層を形成した。
〔下引き層の形成〕
下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
更にその層の上に、下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化ケイ素膜を設け、これらの層を下引き層(バリア層)310とした(図3(1))。なお、大気圧プラズマ処理装置は、特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
〔ゲート電極の形成〕
次いで、ゲート電極を形成する。スパッタ法により、厚さ300nmのITO膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてゲート電極302を形成した。(図3(1))
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した支持体上に、アクアミカNN110−20(パーヒドロポリシラザン・10質量%キシレン溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をスピンコート(2000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。次いで、200℃にて30分、UVオゾン酸化処理を行うことで、表面から20nmがポリシラザンから転化した酸化ケイ素膜(表面層)からなり、その下層180nmが未転化物を含む無機絶縁材料層からなるゲート絶縁層(合わせて200nm)を形成した(図3(2))。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、表層から深さ方向20nmの位置において検出された元素組成百分率は、Si=33.2at%、O=64.5at%、N=2.3at%であった。一方、表層から深さ方向150nmの位置において検出された元素組成百分率は、Si=45.7at%、O=26.3at%、N=27.9at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた表層部分の膜密度は2.3g/cm、表層部分をエッチングし求めた膜内部(基板界面付近)の膜密度は1.5g/cmであった。
〔半導体層の形成〕
続いて、半導体層をスパッタ法により形成した。スパッタのターゲットにはIn:Ga:Znの組成比を1:1:1とした複合酸化物(IGZO)を用い、DCマグネトロン方式のスパッタ装置で製膜した。パターン化は通常のフォトリソエッチング法を用い、エッチャントはITO用の市販品を使用した。形成した酸化物半導体層306(図3(4))の平均膜厚は30nmであった。
〔ソース電極、ドレイン電極の形成〕
次に、銀微粒子分散液(Cabot製 CCI−300(銀含有率20質量%))を、ピエゾ方式のインクジェットヘッドから射出し、半導体層の露出領域を含むソース電極、ドレイン電極部分に印刷を施した。次いで200℃で30分間熱処理して、ソース電極304及びドレイン電極305(図3(5))を形成した。それぞれのサイズは、幅40μm、長さ100μm(チャネル幅)厚さ100nmであり、ソース電極304、ドレイン電極305の距離(チャネル長)は20μmとした。
《薄膜トランジスタ素子2の作製》
薄膜トランジスタ素子1の作製において、半導体の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子2を作製した。
〔半導体層の形成〕
硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水/エタノール(9/1)溶液としたものをインクとして、支持体を100℃に加熱した状態でインクジェット装置にてインクを吐出することで、半導体の前駆体材料薄膜306’を形成した(図3(3))。
次に、支持体側からマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気、大気圧条件下で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し200℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された(図3(4))。
《薄膜トランジスタ素子3の作製》
薄膜トランジスタ素子1の作製において、半導体の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子2を作製した。
〔半導体層の形成〕
硝酸インジウム、硝酸ガリウムを金属比率で1:0.5(モル比)で混合した(IGO)10質量%水/エタノール(9/1)溶液としたものをインクとして、支持体を100℃に加熱した状態でインクジェット装置にてインクを吐出することで、半導体の前駆体材料薄膜306’を形成した(図3(3))。
次に、支持体側からマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気、大気圧条件下で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し200℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された(図3(4))。
《薄膜トランジスタ素子4の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子4を作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した支持体上に、アクアミカNP110−10(パーヒドロポリシラザン/アミン系触媒・10質量%キシレン溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をスピンコート(2000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。次いで、大気中で1時間、ホットプレート上(200℃)で加熱処理を行い、ポリシラザンから転化した酸化ケイ素膜(膜厚200nm)を形成した。
更に、その上にアクアミカNN110−10(パーヒドロポリシラザン・10質量%キシレン溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を2質量%に希釈した溶液をスピンコート(4000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。次いで、200℃にて30分、UVオゾン酸化処理を行うことで、表面がポリシラザンから転化した酸化ケイ素膜(膜厚20nm)を形成した。
このようにして、表層が酸化ケイ素膜からなる表面層(膜厚20nm)、下層が材料由来のアミンを含有する酸化ケイ素膜からなる無機絶縁材料層(膜厚200nm)からなるゲート絶縁層(合わせて220nm)を形成した(図3(2))。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、表面層から検出された元素組成百分率は、Si=32.3at%、O=67.3at%、N=0.4at%であった。一方、無機絶縁材料層から検出された元素組成百分率は、Si=35.3at%、O=60.4at%、N=4.3at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた表面層の膜密度は2.3g/cm、無機絶縁材料層の膜密度は1.8g/cmであった。
《薄膜トランジスタ素子5の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子5を作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した支持体をホットプレート上(150℃)で加熱してすぐにAl(NOの20質量%水溶液を配して、スピンコート(1000rpm)することで、硝酸アルミニウム塗布膜を形成した。続いて、硝酸アルミニウム塗布膜が形成されたものをホットプレート上(150℃)で10分間加熱後、更に電気炉(300℃)にて1時間加熱することで、酸化アルミニウムからなる絶縁膜(膜厚180nm)を形成した。
更に、その上にアクアミカNN110−10(パーヒドロポリシラザン・10質量%キシレン溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を2質量%に希釈した溶液をスピンコート(4000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。次いで、200℃にて30分、UVオゾン酸化処理を行うことで、表面がポリシラザンから転化した酸化ケイ素膜(膜厚20nm)を形成した。
このようにして、表層が酸化ケイ素膜からなる表面層(膜厚20nm)、下層が酸化アルミニウム膜からなる無機絶縁材料層(膜厚180nm)からなるゲート絶縁層(合わせて200nm)を形成した(図3(2))。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、表面層から検出された元素組成百分率は、Si=32.5at%、O=67.3at%、N=0.2at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた表面層の膜密度は2.3g/cm、無機絶縁材料層の膜密度は1.6g/cmであった。
《薄膜トランジスタ素子6の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子6を作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した支持体上に、真空チャンバー中、スパッタ法により酸化ケイ素膜(膜厚180nm)を形成した。
更に、その上にアクアミカNN110−10(パーヒドロポリシラザン・10質量%キシレン溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を2質量%に希釈した溶液をスピンコート(4000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。次いで、200℃にて30分、UVオゾン酸化処理を行うことで、表面がポリシラザンから転化した酸化ケイ素膜(膜厚20nm)を形成した。
このようにして、表層が酸化ケイ素膜からなる表面層(膜厚20nm)、下層がスパッタで形成した酸化ケイ素膜からなる無機絶縁材料層(膜厚180nm)からなるゲート絶縁層(合わせて200nm)を形成した(図3(2))。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、表面層から検出された元素組成百分率は、Si=32.9at%、O=66.9at%、N=0.2at%であった。一方、無機絶縁材料層から検出された元素組成百分率は、Si=33.0at%、O=67.0at%、N=0.0at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた表面層の膜密度は2.3g/cm、無機絶縁材料層の膜密度は2.1g/cmであった。
《薄膜トランジスタ素子7(比較)の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子7を作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した支持体上に、アクアミカNN110−20(パーヒドロポリシラザン・10質量%キシレン溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をスピンコート(2000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。次いで、200℃にて1時間、電気炉加熱を行うことで、一部のポリシラザンが反応した膜からなるゲート絶縁層(230nm)を形成した(図3(2))。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、元素組成百分率は、Si=41.8at%、O=43.1at%、N=15.1at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた膜密度は1.4g/cmであった。
《薄膜トランジスタ素子8(比較)の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子8を作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した支持体上に、アクアミカNN110−10(パーヒドロポリシラザン・10質量%キシレン溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を2質量%に希釈した溶液をスピンコート(4000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。
次いで、200℃にて30分、UVオゾン酸化処理を行うことで、表面がポリシラザンから転化した酸化ケイ素膜(膜厚20nm)を形成した。更に形成した酸化ケイ素膜(膜厚20nm)上に、先程と同様にパーヒドロポリシラザン溶液を塗布後、UVオゾン酸化処理することで、酸化ケイ素膜(膜厚20nm)を積層していき、このようにパーヒドロポリシラザン溶液の塗布からUVオゾン酸化処理までの一連の工程を10回繰り返すことで、最終的に酸化ケイ素膜からなるゲート絶縁層(合わせて200nm)を形成した(図3(2))。
このときUVオゾン酸化処理に要した時間は、トータルで5時間となった。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、元素組成百分率は、Si=32.3at%、O=67.4at%、N=0.3at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた膜密度は2.3g/cmであった。
《薄膜トランジスタ素子9(比較)の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子9を作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極上に、アクアミカNP110−10(パーヒドロポリシラザン/アミン系触媒/キシレン10質量%溶液:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をスピンコート(2000rpm×30sec)にて塗布、乾燥し、絶縁膜前駆体層を形成した。次いで、大気中で1時間、ホットプレート上(200℃)で加熱処理を行い、ポリシラザンから転化した酸化ケイ素膜(膜厚200nm)を形成した(図3(2))。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、元素組成百分率は、Si=35.3at%、O=60.4at%、N=4.3at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた膜密度は1.8g/cmであった。
《薄膜トランジスタ素子10(比較)の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子10作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した基板をホットプレート上(150℃)で加熱し、すぐにAl(NOの20質量%水溶液を基板上に配して、スピンコート(1000rpm)することで、硝酸アルミニウム塗布膜を形成した。続いて、硝酸アルミニウム塗布膜が形成されたものをホットプレート(150℃)上で10分間加熱後、更に電気炉(300℃)にて1時間加熱することで、酸化アルミニウムからなる絶縁膜(膜厚180nm)を形成した。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、X線反射率測定法により求めた膜密度は1.6g/cmであった。
《薄膜トランジスタ素子11(比較)の作製》
薄膜トランジスタ素子2の作製において、ゲート絶縁層の形成を以下のように行った以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子11を作製した。
〔ゲート絶縁層の形成〕
ゲート電極を形成した支持体上に、真空チャンバー中、スパッタ法により酸化ケイ素膜からなるゲート絶縁層(膜厚180nm)を形成した。
ここで作製したゲート絶縁膜に対して、XPSにより膜厚方向における元素組成分析を行ったところ、元素組成百分率は、Si=33.0at%、O=67.0at%、N=0.0at%であった。
また、X線反射率測定法により求めた膜密度は2.1g/cmであった。
〔薄膜トランジスタ素子の評価〕
上記で作製した薄膜トランジスタ素子について、トランジスタ性能として、ドレインバイアスを+10Vとし、ゲートバイアスを−10Vから+40Vまで掃引した時のドレイン電流の増加(伝達特性)における飽和領域から、移動度(cm/Vs)を見積もり、またon/off比について評価を行った。また、閾値電圧Vth(V)を求めた。これらはいずれも各素子10個についての平均である。
更に、20回連続駆動後の各トランジスタ特性についても評価した。結果を表1に示す。
Figure 2010263103
表1より、本発明に係る表面層をゲート絶縁層の表層に有する薄膜トランジスタ素子(水準1〜6)は、比較(水準7〜11)に比べて、トランジスタ特性、繰り返し安定性に優れていることが分かる。
特に単独ではゲート絶縁層として十分に機能しない無機絶縁材料層(水準7、水準9〜11)でも、表層に本発明に係る表面層を有する構成とすれば、トランジスタ特性の即性能のみならず、繰り返し駆動後も安定であることが分かる(水準4と9、水準5と10、水準6と11の比較)。
また、同じポリシラザン(無触媒タイプ)転化シリカ膜でも、電気炉(200℃)で焼成しただけではオフ電流が高く、トランジスタ駆動を確認できないが(水準7)、同様にポリシラザン前駆体膜を形成後、本発明に係る表面層を表層に形成した構成とすれば、優れたトランジスタ特性が得られることが分かる(水準2)。
水準1〜3では、無機絶縁材料層に含有するN原子は水準7に含有するN原子よりむしろ多いにも関わらず、優れたトランジスタ特性を示している。恐らくこれは、酸化物半導体膜形成時に悪影響を及ぼすと考えられる、ゲート絶縁層に含有するN原子の半導体膜への拡散等が表面層を表層に形成することで、抑制されるためと予想できる。
一方、水準8では、ゲート絶縁膜中にN原子が残存しないように表面層を積層した構成としているが、耐久性等を考慮すると薄膜トランジスタのゲート絶縁層として最低でも200nmは必要であり、この膜厚を得るために10回プロセスを繰り返すことで、ゲート絶縁膜形成に5時間を要している。このように長時間のプロセスは実用的でない上に、繰り返し駆動で極端なオフ電流上昇が見られ、安定な薄膜トランジスタが得られない。
本発明(水準1〜6)のように、表層に表面層を有する構成とすれば、下層の無機絶縁材料層の材料、組成、密度によらず、優れたトランジスタ特性を得ることができる。
また、水準2と3の比較より、半導体膜はIGZO組成よりIGO組成の方が、より低温(300℃→200℃)プロセスで形成可能で、トランジスタ特性にも優れていることが分かる。
101 半導体層
102 ソート電極
103 ドレイン電極
104 ゲート電極
105 ゲート絶縁層
301 支持体
302 ゲート電極
303 ゲート絶縁膜
304 ソース電極
305 ドレイン電極
306 酸化物半導体層
306’ 前駆体材料薄膜

Claims (13)

  1. 基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層を有する薄膜トランジスタにおいて、該ゲート絶縁層が該半導体層と接触する側の表面層と、該表面層とは組成または密度が異なる無機絶縁材料層とからなり、該表面層が酸素存在下で光照射処理またはプラズマ照射処理が施された無機膜であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  2. 前記光照射処理における光が紫外光であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
  3. 前記表面層が前駆体材料から形成した膜を転化することで形成された無機膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ。
  4. 前記前駆体材料が無機高分子材料を含む溶液または分散液であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜トランジスタ。
  5. 前記無機高分子材料がポリシラザンであることを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタ。
  6. X線電子分光法により前記表面層から検出される窒素原子が元素組成百分率で10at%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
  7. X線電子分光法により前記表面層から検出される窒素原子が元素組成百分率で5at%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
  8. 前記半導体層が酸化物半導体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
  9. 前記酸化物半導体が少なくともIn、Zn、Snのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする請求項8に記載の薄膜トランジスタ。
  10. 前記酸化物半導体が少なくともGa、Alのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする請求項8または9に記載の薄膜トランジスタ。
  11. 前記半導体層が酸化物半導体の前駆体を含む溶液または分散液を用いて形成された膜を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
  12. 前記半導体層が酸化物半導体の前駆体を塗布して得られた膜にマイクロ波を照射して形成された膜を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを製造することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
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