本発明を更に詳しく説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、光安定剤を含有するポリマー層を設けた基材のポリマー層上に、金属酸化物を主成分とする誘電体を用いた光学設計による紫外線反射層を設けた表面保護基材を用いることにより、屋外に使用しても長期に渡って紫外線を遮断し、且つ熱、光及び水分による影響を受けても十分な耐候性を有する太陽電池ユニットが得られることを見出し、本発明に至った。
特に、紫外線による劣化が激しい高分子樹脂から構成されるフレキシブル基板を用いた有機太陽電池においては、その効果が大きい。
本発明では、金属酸化物を主成分とする誘電体を用いた光学設計により、紫外線を反射する紫外線反射層で大部分の紫外線を遮蔽し、さらに金属酸化物を主成分とする誘電体を用いた光学設計による紫外線反射層で、遮蔽しきれない紫外線を、光安定剤を含有するポリマー層で遮蔽することにより、樹脂基板、有機材料からなる発電層部に紫外線を到達させないことで、紫外線劣化が極めて小さく、安定した耐久性を有す太陽電池ユニットが得られると考えられる。さらには、ポリマー層の上に紫外線反射層があることにより、ポリマー層のポリマー層自体の紫外線劣化、及び紫外線に晒される事による光安定剤の消失をも抑制し、それにより、ポリマー層内の光安定剤が長期にわたり、安定に存在できることにより、長期にわたり、屋外で使用しても、紫外線劣化の少ない、樹脂基板、有機材料からなる発電層部からなる太陽電池ユニットが得られると考えられる。
すなわち、紫外線反射層がポリマー層内の光安定材のブリードアウトを抑制し、長期にわたり、ポリマー膜も紫外線遮蔽効果が継続することにより、長期にわたる屋外で使用しても、優れた耐久性を有すると考えられる。
さらに、上記の紫外線反射層、光安定剤を含有するポリマー層に加えて、本発明の熱線遮断層を設けることにより、太陽電池ユニットが屋外で太陽光に曝された場合にも、太陽電池の発電層部分の温度上昇を抑制することができ、高い効率安定性を付与することができると考えられる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の太陽電池ユニットは、基板上に設けられた透明電極と対極の間にp型有機半導体材料とn型有機半導体材料とを含有する光電変換層を有する有機光電変換素子からなる太陽電池ユニットであって、光入射側の基材の透明電極とは反対側の面に少なくとも複数の異なる屈折率を有する材料から構成される紫外線反射層と、光入射側の基板のいずれか一方の面に水蒸気バリア層を有すことを特徴とする。
《基材》
本発明においては、ガラス、樹脂基材など上記ポリマー層や紫外線反射層を保持することができるものであればなんでも良いが、樹脂基材からなるフレキシブルな太陽電池ユニットの場合には特に本発明の効果を十分に得ることができる。本発明の太陽電池ユニットとは、基材の少なくとも片面に後述する光安定剤を含有するポリマー層と紫外線反射膜層を設けたものであることが必要である。
《樹脂基材》
本発明において樹脂基材とは、樹脂フィルム単体、または樹脂フィルムの片面または両面に光安定剤を含有するポリマー層等の有機層を積層した樹脂フィルムをいう。
本発明に用いられる樹脂基材は、上記ポリマー層や紫外線反射層を保持することができる樹脂フィルムであれば特に限定されるものではない。
樹脂基材を構成する樹脂としては、具体的には、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレンーパーフロロプロピレンーパーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂等を用いることができる。
また、上記樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物よりなる樹脂組成物や、上記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解した樹脂組成物等の光硬化性樹脂及びこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層したものを樹脂フィルムとして用いることも可能である。
これらの素材は単独で、あるいは適宜混合して使用することもできる。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。
また、樹脂フィルムは透明、高耐光性、高耐候性であることがより好ましい。
また、上記に挙げた樹脂フィルムは、未延伸フィルムでも、延伸フィルムでもよい。
本発明に係る樹脂フィルムは、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することができるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
基材フィルムを構成する樹脂のうち、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表される芳香族ポリエステル、ナイロン6やナイロン66に代表される脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリカーボネート等が好ましい。これらの中、芳香族ポリエステル、さらにはポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートが好ましい。
前記芳香族ポリエステルには、必要により、適当なフィラーを含有させることができる。このフィラーとしては、従来からポリエステルフィルムの滑り性付与剤として知られているものが挙げられるが、その例を挙げると、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、カーボンブラック、炭化珪素、酸化錫、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコン樹脂粒子等が挙げられる。滑り性付与剤の平均粒径は、0.01〜10μm、含有量はフィルムが透明性を保持する量範囲であって、0.0001〜5質量%であることが好ましい。さらに芳香族ポリエステルには、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒残渣微粒子等も適宜含有させることができる。
また、本発明に係る樹脂基材においては、ポリマー層、紫外線反射層、水蒸気バリア層等を形成する前に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の表面処理を行ってもよい。
樹脂基材は、ロール状に巻き上げられた長尺品が便利である。樹脂基材の厚さは、特に制限はされないが、耐候性樹脂基材としての適性から、10〜400μm、中でも30〜200μmの範囲内とすることが好ましい。
《ポリマー層》
本発明においては、基材と前記紫外線反射層の間に、光安定剤を含有するポリマー層を設けることを特徴とする。
本発明において、これらポリマー層は、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とすることが好ましい。
(多官能アクリレート)
光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とするポリマー膜(層)は一般に紫外線のような活性光線硬化性樹脂より構成され、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、およびジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等が好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
活性光線硬化性樹脂の添加量は、ポリマー層形成組成物中では、固形分中の15質量%以上70質量%未満であることが好ましい。
また、ポリマー層には光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤;活性光線硬化性樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等およびこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
ポリマー層には、中間層に用いる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはゼラチン等の親水性樹脂等のバインダーを上記活性光線硬化性樹脂に混合して使用することもできる。また、ポリマー層には耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために酸化珪素等無機化合物または有機化合物の微粒子を含んでもよい。
本発明においては、ポリマー層中に、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。例えば、ヒンダードフェノール誘導体、チオプロピオン酸誘導体、ホスファイト誘導体等を挙げることができる。具体的には、例えば、4,4′−チオビス(6−tert−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスフェート等を挙げることができる。
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理を行う。
ポリマー層形成組成物には、溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
ポリマー層は塗布乾燥後に、紫外線を照射するのがよく、必要な活性光線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性光線照射部の照度は0.05〜0.2W/m2であることが好ましい。
光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする本発明に係るポリマー層には、光安定剤を含んでいる。
《光安定剤》
ここで光安定剤とは基材等を紫外線反射膜では遮蔽しきれなかった紫外線照射での劣化から防ぐ効果を有するものであり、例えば紫外線(UV)吸収剤、ラジカル補足剤、酸化防止剤などが例示され、このような光安定剤としては、ヒンダードアミン系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系などの有機系の光安定剤、あるいはゾルゲルなどの無機系の光安定剤を用いることができる。好適に用いられる光安定剤の具体例を以下に示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
好ましくは、樹脂基材にもポリマー層にも光安定剤を含有することが好ましい。光安定剤は好ましくは紫外線吸収剤を用いる。
ヒンダードアミン系:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル/1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物 サリチル酸系:p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートベンゾフェノン系:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2′−4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン ベンゾトリアゾール系:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ・t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェノール)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ・t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2(2′ヒドロキシ−5′−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−アクリロイルエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールシアノアクリレート系:エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート上記以外:ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2′−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ・t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル・リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチルジチオカーバメート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3′,5′−ジ・t−ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3′,5′−ジ・t−ブチル−4′−ハイドロキシベンゾエート、2−エトキシ−2′−エチルオキザックアシッドビスアニリド、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール。
本発明においては、紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましく、さらには、これらを併用して用いることがより好ましい。
本発明においては、樹脂基材やポリマー層等の塗布層の形成をより容易にするために、塗布層中の光安定剤に対し、適宜他の樹脂成分を混合することが好ましい。すなわち、樹脂成分及び光安定剤をそれぞれ溶解し得る有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に樹脂成分と光安定剤を溶解もしくは分散して塗液状態にして用いることが好ましい。樹脂成分と光安定剤を予め別々に有機溶媒、水、有機溶媒混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に溶解または分散したものを任意に混合して使用してもよい。また、予め光安定剤成分と樹脂成分との共重合体を、そのまま塗布材料として用いることも好ましい。該共重合体を有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に溶解したものを用いてもよい。混合または共重合する樹脂成分は特に限定されないが、その一例を挙げれば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂等である。これらの樹脂は単独で用いても、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。
上記の樹脂製分のうち、アクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂を選択して用いることが好ましく、さらにアクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂に光安定剤成分を共重合したものを塗布層に使用することが、より好ましい。共重合する場合には、光安定剤モノマー成分に対して、アクリルモノマー成分あるいはメタクリルモノマー成分を共重合することが好ましい。
光安定剤モノマー成分としては、例えばベンゾトリアゾール系反応性モノマー、ヒンダードアミン系反応性モノマー、ベンゾフェノン系反応性モノマー等が好ましく使用できる。ベンゾトリアゾール系モノマーとしては、基体骨格にベンゾトリアゾールを有し、かつ不飽和結合を有するモノマーであればよく、特に限定されないが、例えば2−(2′−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−アクリロイルエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
同様に、ヒンダードアミン系反応性モノマー、ベンゾフェノン系反応性モノマーとしては、基体骨格に各々ヒンダードアミン、ベンゾフェノンを有し、かつ不飽和結合を有するモノマーであればよい。ヒンダードアミン系反応性モノマーとしては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−5−アクリロイルオキシエチルフェニルピペリジン重縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−5−メタクリロキシエチルフェニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−5−メタクリロキシエチルフェニルピペリジン重縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−5−アクリロイルエチルフェニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−5−アクリロイルエチルフェニルピペリジン重縮合物等を挙げることができる。
また、ベンゾフェノン系反応性モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2′−4,4′−テトラヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−メタクリロキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2′−4,4′−テトラヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−5−アクリロイルエチルフェニルベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5−アクリロイルエチルフェニルベンゾフェノン等を挙げることができる。
これらの光安定剤モノマー成分と共重合されるアクリルモノマー成分あるいはメタクリルモノマー成分、またはそのオリゴマー成分としては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基等)、及び架橋性官能基を有するモノマー、例えばカルボキシル基、メチロール基、酸無水物基、スルホン酸基、アミド基、メチロール化されたアミド基、アミノ基、アルキロール化されたアミノ基、水酸基、エポキシ基等を有するモノマーを例示することができる。さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ブチルビニルエーテル、マレイン酸、イタコン酸及びそのジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル基を有するアルコキシシラン、不飽和ポリエステル等との共重合体としてもよい。
これらの光安定剤モノマー成分と共重合するモノマー類との共重合比率は特に限定するものではなく、それぞれの1種または2種以上を任意の割合で共重合することができるが、好ましくは光安定剤モノマー成分の比率が10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらには35質量%以上であることが最も好ましく、また塗布性や耐熱性の点から70質量%以下であることが好ましい。光安定剤モノマー成分の単独重合体であってもよい。これらの重合体の分子量は特に限定されないが、通常5,000以上、好ましくは10,000以上、さらには20,000以上であることが塗布層の強靱性の点で最も好ましい。これらの重合体は有機溶媒、水あるいは有機溶媒/水混合液に溶解もしくは分散した状態で使用される。これら以外にも市販のハイブリッド系光安定ポリマー、例えば、“ユーダブル”(日本触媒(株)製)等も使用することができる。
樹脂フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合には、ポリエステルフィルム中に光安定剤として紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、及びトリアジン系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物等を挙げることができるが、380nmでの紫外線カット性、色調及びポリエステル中への分散性の点からトリアジン系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物が特に好ましい。
また、これらの化合物は1種単独であるいは2種以上一緒に併用することができる。またHALSや酸化防止剤等の安定剤を併用することもでき、また酸化防止剤を併用することが好ましい。
ここでベンゾトリアゾール系の化合物としては、例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−アミルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等が挙げられる。
ベンゾオキサジノン系化合物としては、例えば2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベンゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
<紫外線反射層>
本発明の紫外線反射層は、基材の光入射側に複数の異なる屈折率を有する材料から構成される。該紫外線反射層は屈折率の異なる材料から成る層を交互に積層して、紫外線を反射できるように光学設計された積層体が代表的な構成であるが、積層体に限られるものではない。屈折率の異なる材料が均一又は主成分の割合を膜厚方向に傾斜させた場合でも、紫外線反射効果が発揮できる。屈折率の異なる複数の材料の混合割合を膜厚方向で傾斜させて紫外線を反射できるようにしてもよい。また、紫外線反射層は、本発明の水蒸気バリア層と別に設けてもよいが、両者を兼ねることも可能である。
本発明の紫外線反射層は、透明な誘電体材料(屈折率:n)を、地球上に到達する紫外線の波長:290nm〜400nm範囲内の特定の波長λに対して、例えばλ/2n(nm)の厚さでコーティングすることにより、波長λの近傍の紫外光に対して、コーティング層の上下の界面からの反射光の位相を揃えることで、反射率を高めたものなどをいう。例えば、高屈折率膜と低屈折率膜の屈折率の異なる誘電体材料の膜を交互に多層コーティングすることで、反射率を上げたり、反射波長域を広げたりすることができる。例えば、一例として、透明フィルム上に高屈折率膜(酸化チタン(TiO2):n=2.3、厚み35nm)、低屈折率膜(酸化珪素(SiO2)、n=1.46、厚み55nm)を順次設けた15層(合計膜厚:685nm)の紫外線反射膜は、特に樹脂基材に悪影響を及ぼす300〜360nmの紫外線の95%程度を反射する。(図1にこの紫外線反射膜の反射率、透過率特性を示した。)そのような紫外線反射層を設けることで、基材を透過する紫外線をカットすることができる。
前記紫外線反射層の誘電体材料としては、金属酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とする材料を好適に使用できる。屈折率1.8〜2.4の高屈折率膜としては、少なくとも亜鉛、チタン、錫、インジウム、ニオブ、珪素またはアルミニウムを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とする少なくとも1層以上からなることが好ましい。また、屈折率1.4〜1.8の低屈折率膜は、少なくともSiまたはAlを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とし、特に、酸化珪素から構成されることが好ましい。その誘電体材料の形成方法としては気相成長法が好ましく、さらに真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、触媒化学気相成長(Cat−CVD)法、またはプラズマCVD法が好ましい。特に、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、樹脂基材を励起したガスに晒すことにより、該樹脂基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法により形成される、所謂大気圧プラズマCVD法により形成される膜が低残留応力であり好ましい。低屈折率膜には、カルシウム、バリウム、リチウム、マグネシウムのフッ化物を主成分とする材料も用いる事ができる。また、本発明において、屈折率の異なる層のうち、少なくとも1層は主成分の割合を膜厚方向に傾斜させた構成とすることができる。
前記紫外線反射層は、基材の十分な紫外線遮蔽性を得るために、屈折率1.4〜1.8の厚み5〜1000nmの低屈折率層、及び屈折率1.8〜2.4の厚み5〜400nmの高屈折率膜層を交互に、少なくとも3層以上積層されていることが好ましく、更に好ましくは、5層以上、特に好ましくは7層以上である。
《水蒸気バリア層》
本発明の水蒸気バリア層は、水蒸気バリア層を少なくとも1層設けても良い。水蒸気バリア層とは、水分、またガス透過率が低い層のことである。水蒸気バリア層は水蒸気透過率(JIS K7129−1992 B法、40℃、90%RH条件下)が、0.1g/(m2・24h)以下であることが好ましい。さらに水蒸気透過率(JIS K7129−1992 B法、40℃、90%RH条件下)が、0.01g/(m2・24h)以下であることがより好ましい。
本発明に用いられる水蒸気バリア層は、SiまたはAlを含む酸化物、窒酸化物または窒化物を主成分とする金属酸化物層を少なくとも1層有することが好ましい。水蒸気バリア層が設けられた場合は、より水分、熱の影響を排除できるため、好ましい。
水蒸気バリア層の形成方法としては気相成長法が好ましく、さらに真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、触媒化学気相成長(Cat−CVD)法、またはプラズマCVD法が好ましい。特に、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、樹脂基材を励起したガスに晒すことにより、該樹脂基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法により形成される、所謂大気圧プラズマCVD法により形成される膜は、低残留応力であり好ましい。
大気圧プラズマ法及び大気圧プラズマ法による、少なくともSiまたはAlを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とする水蒸気バリア層の形成については後述する。
本発明で用いる水蒸気バリア層は、屈折率1.4〜1.8の低屈折率であることが好ましい。屈折率を1.8未満にすることで、可視光透過率及び紫外線反射率にほとんど影響を及ぼさずに、耐久性やハンドリング性を向上させるために、低屈折率層の層設計を比較的自由に行うことができる。また、屈折率が1.3未満になると膜が緻密でなくなり、耐久性の向上が望めない。また、低屈折率であると、紫外線反射層の低屈折率層としても、水蒸気バリア層を設けることができる。また、水蒸気バリア層に紫外線を遮断するための光安定剤を含有させてもよい。
本発明において、前記水蒸気バリア層は、好ましくは、酸化珪素膜からなり、炭素含有量が異なる酸化ケイ素膜を少なくともそれぞれ1層以上ずつ含むものが好ましい。
これらの酸化珪素膜は略同一組成物といっても、気相成長法を用いて薄膜を形成する場合、例えば、大気圧プラズマCVD法の場合において、製造条件、また用いる薄膜形成ガス(原料ガス、添加ガス等の種類、比率等)によって、酸化珪素粒子の充填の程度、また混入する微量の不純物粒子等に差が生じることで、物性、例えば密度等が異なってくる。
水蒸気バリア層の屈折率は1.3以上、1.8未満が好ましいが、具体的には、例えば酸化珪素膜の屈折率は、X線反射率法により求めた値を用いる。
<熱線遮断層>
本発明の熱線遮断層は、銀の単体もしくはこれらの合金からなる0.1nm以上、30nm未満の金属層を少なくとも1層以上含む熱線遮断層である。可視光線の吸収がほとんど無い金属銀が特に好ましい。
本発明の金属層の厚みは、本発明の遮熱性物品の第1の基体において、積層の波長400〜750nmにおける積分可視光透過率(この波長領域での可視光線透過率の平均値)が55%以上、及び波長5〜30μmの積分赤外線反射率(この波長領域での赤外線反射率の平均値)が80%以上を満足するように定めるのが好ましい。更に具体的には、金属層の1層での厚みは5〜1000nmの範囲内にあることが好ましい。この厚みが5nm未満であると、十分な熱線反射効果が発揮されず、赤外線透過率が高くなり、他方1000nmを超えると、可視光反射率が増加し、防眩性が悪くなるので好ましくない。
本発明の金属層の形成方法としては気相成長法が好ましく、更に真空蒸着法、スパッタ法またはプラズマCVD法が好ましい。
本発明の熱線遮断層は、少なくとも1層以上の金属層及び少なくとも1層以上の高屈折率セラミック層からなる構成層であってもよい。高屈折率セラミック層は少なくとも亜鉛、チタン、錫、インジウム、ニオブ、珪素またはアルミニウムを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とする少なくとも1層以上からなる構成層である。設計計算による本発明の熱線遮断層に用いる金属層及び高屈折率セラミック層を不規則に配置したサンドイッチ状に挟む積層構造をとることにより、可視光が低反射で透明性の改良効果が増すためより好ましい。好ましい層の配置は金属層の両側に高屈折率セラミック層を設けたサンドイッチ構造である。また金属層と高屈折率セラミック層を設けた2層構造の如く複数の金属層と複数の高屈折率セラミック層を交互に積層した3〜10の積層構造をとることが好ましく、好ましい層数は3〜7である。
また、前記熱線遮断層は、第1の酸化物層、第1の金属層、第2の酸化物層、第2の金属層、第3の酸化物層からなるファブリーペロ干渉フィルターであってもよい。ファブリーペロ干渉フィルター中の金属層は主として銀であって、50%未満の金または銅合金であるかまたはクラッド層であって、化学的及び光耐久性を付与している。酸化物層にはインジウム酸化物が好ましいが、酸化物の屈折率が1.8以上で可視光線吸収レベルが10%未満の透明誘電層の場合には、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブなどの他の酸化物であってもよい。適当に透明でかつ屈折率が1.8より大きいならば、窒化物や弗化物なども使用できる。ファブリーペロフィルター製造のより詳細な設計、挙動及び手法などは米国特許第4799745号明細書に記載されている。
本発明の熱線遮断層のうち、高屈折率セラミック層は、少なくとも亜鉛、チタン、錫、インジウム、ニオブ、珪素またはアルミニウムを含む酸化物、窒化酸化物、窒化物を主成分とする少なくとも1層以上からなり、例えば、アルキルチタネート等の加水分解により得られる、有機化合物由来の酸化チタンが加工性に優れるため好ましい。加えて、酸化亜鉛、酸化インジウムや酸化錫も単一層または多層にて適用できる。
高屈折率セラミック層の屈折率が、1.8以上2.4未満の層である。高屈折率セラミック層の厚みは、熱線遮断層の光学特性を満足するように積層される前述の金属層と併せて設定することが好ましい。高屈折率セラミック層の一層での厚みは2〜1000nmの範囲が好ましい。
高屈折率セラミック層の形成方法としては気相成長法が好ましく、更に真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、Cat−CVD法、またはプラズマCVD法が特に好ましい。また、後述する大気圧プラズマCVD法を用いて形成してもよい。
本発明の熱線遮断層は、基材の少なくとも一方の面に熱線遮断層を積層してなる構成層を持ち、例えば透明な樹脂フィルムに積層した場合、可視光線反射率が5%以下、赤外線反射率が75%以上であることが達成される。
本発明における熱線遮断層は、高耐久性を得るために高屈折率層に加えて低屈折率層を有することが好ましい。屈折率を1.8未満にすることで、可視光透過率及び赤外線反射率に殆ど影響を及ぼさずに、耐久性やハンドリング性を向上させるために、低屈折率層の層設計を比較的自由に行うことができる。また、屈折率が1.3未満になると膜が緻密でなくなり、耐久性の向上が望めない。
本発明の太陽電池ユニットにおける表面保護部材の製造方法については、特に限定はされないが、好ましくは、樹脂基材を使用する場合は、樹脂基材上に、水蒸気バリア層を形成した後に、熱線遮断層を形成し製造することが好ましい。熱線遮断層の形成・積層を後に行うことで、巻き取り、巻き戻し等、水蒸気バリア層の形成時、また形成までのハンドリングにおいて、熱線遮断層表面の傷の発生や、割れ等の損傷を避けることができる。
<大気圧プラズマCVD法>
本発明に係る低屈折率セラミック層、例えば酸化珪素膜、またこれらの積層体の形成には、物理、あるいは化学気相成長法が用いられる。中でも、これらのうち最も好ましい方法である、大気圧プラズマCVD法について、以下説明する。
大気圧プラズマCVD法は、例えば、特開平10−154598号公報や特開2003−49272号公報、WO02/048428号パンフレット等に記載されているが、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、励起したガスに晒すことにより、薄膜を形成する。
特に、特開2004−68143号公報に記載されている薄膜形成方法が、緻密なセラミック層を形成するには好ましい。また、ロール状の元巻きからウエブ状の樹脂基材を繰り出して、組成の異なる層を連続的に形成することができる。
高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものをいう。
本発明に係るセラミック層の形成に用いられる上記の大気圧プラズマCVD法は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるプラズマCVD法であり、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。
本発明における放電条件としては、高周波電界の周波数が1kHz〜2500MHzで、かつ供給電力が1〜50W/cm2であることが好ましく、周波数が50kHz以上で、かつ供給電力が5W/cm2以上であることがより好ましい。更に、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上印加し、重畳したものがより好ましい。
上記でサイン波等の連続波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方が連続波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、更に周波数の異なる第3の電界を有していてもよい。
本発明の高周波電界を、同一放電空間に印加する具体的な方法としては、例えば、対向電極を構成する第1の電極に周波数ω1の高周波電界を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2の高周波電界を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置を用いる。
ここで、第1電源の周波数としては、1kHz〜1MHzであり、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。
一方、第2電源の周波数としては、1MHz〜2500MHzが好ましく800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。
また、第1電極、第1電源またはそれらの間のいずれかには第2電源からの高周波電界の電流を通過しにくくする第1フルタを、また第2電極、第2電源またはそれらの間のいずれかには第2フィルターを接続することが好ましい。
大気圧プラズマ放電処理装置には、対向電極間に、放電ガスと薄膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、前記対向電極間に導入したガスをプラズマ状態とし、前記対向電極間に静置あるいは電極間を移送される基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基材の上に薄膜を形成させるものである。また他の方式として、大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある基材(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該基材の上に薄膜を形成させるジェット方式の装置がある。
図1は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図2に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの周波数ω1の高周波電界が印加され、また第2電極12からは第2電源22からの周波数ω2の高周波電界が印加されるようになっている。
第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、かつ第1の高周波電界の強さV1と、第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係がV1≧IV>V2、または V1>IV≧V2 を満たし、第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上であることが好ましい。高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを指す。
本発明において、放電開始電界の強さとは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成等)及び反応条件(ガス条件等)において放電を起こすことのできる最低電界強度のことを指す。放電開始電界強度は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種または電極間距離等によって多少変動するが、同じ放電空間においては、放電ガスの放電開始電界強度に支配される。
ここで、本発明でいう印加電界強度と放電開始電界強度は、下記の方法で測定されたものをいう。
印加電界強度V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部に高周波電圧プローブ(P6015A)を設置し、該高周波電圧プローブの出力信号をオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、所定の時点の電界強度を測定する。
放電開始電界強度IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義する。測定器は上記印加電界強度測定と同じである。
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、後述の図2に図示してあるようなガス供給手段から前述した薄膜形成ガスGを導入し、第1電源21と第2電源22により第1電極11と第2電極12間に、前述した高周波電界を印加して放電を発生させ、前述した薄膜形成ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。薄膜形成中、後述の図3に図示してあるような電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、基材の幅手方向あるいは長手方向での温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置を、樹脂基材Fの搬送方向と平行に複数台並べ、同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることにより、同一位置に複数層の薄膜を形成可能となり、短時間で所望の膜厚を形成可能となる。また樹脂基材Fの搬送方向と平行に複数台並べ、各装置に異なる薄膜形成ガスを供給して異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することもできる。
図2は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
ロール回転電極(第1電極)35と固定電極群(第2電極)36との対向電極間32(以下対向電極間を放電空間32とも記す)で、樹脂基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
ロール回転電極35と固定電極群36との間に形成された放電空間32に、ロール回転電極35には第1電源41から周波数ω1の高周波電界を、また固定電極群36には第2電源42から周波数ω2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また固定電極群36を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。
ガス供給手段50のガス発生装置51で発生させた薄膜形成ガスGは、不図示のガス流量調整手段により流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。
樹脂基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から矢印方向に搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら固定電極群36との間に移送する。
移送中にロール回転電極35と固定電極群36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。樹脂基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。
なお、固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全ての固定電極のロール回転電極35と対向する面の面積の和で表される。
樹脂基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極35及び固定電極群36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。図4において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御し、また、樹脂基材Fの表面温度を所定値に保つため、温度調節用の媒体(水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造となっている。
図4は、電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。該電極の構造は図示しないが、ジャケット構造となっており、放電中の温度調節が行えるようになっている。図4において、固定電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図4同様の誘電体36Bの被覆を有している。図5に示した固定電極36aの形状は、特に限定されず、円筒型電極でも角筒型電極でも良い。
図3及び図4において、ロール電極35a及び電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができる。
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことをいう。双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことをいう。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜5mmである。
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性をとってもよい。図3において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質のもので覆うことが好ましい。
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、神鋼電機社製SPG5−4500(5kHz)、春日電機製AGI−023(15kHz)、ハイデン研究所製PHF−6k(100kHz*)、パール工業製CF−2000−200k(200kHz)等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
また、第2電源(高周波電源)としては、パール工業製CF−2000−800k(800kHz)、同CF−5000−13M(13.56MHz)、同CF−2000−150M(150MHz)等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え、薄膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.0W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極間において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、更なる膜質を向上させることができる。好ましくは5W/cm2以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cm2である。
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
〈X線反射率法〉
本発明に記載の屈折率は、具体的にはX線反射率法により求めた値である。
X線反射率法の概要は、X線回折ハンドブック 151ページ(理学電機株式会社編 2000年 国際文献印刷社)や化学工業1999年1月No.22を参照して行うことができる。
本発明に有用な測定方法の具体例を以下に示す。
これは、表面が平坦な物質に非常に浅い角度でX線を入射させ測定を行う方法で、測定装置としてはマックサイエンス社製MXP21を用いて行う。X線源のターゲットには銅を用い、42kV、500mAで作動させる。インシデントモノクロメータには多層膜パラボラミラーを用いる。入射スリットは0.05mm×5mm、受光スリットは0.03mm×20mmを用いる。2θ/θスキャン方式で0から5°をステップ幅0.005°、1ステップ10秒のFT法にて測定を行う。得られた反射率曲線に対し、マックサイエンス社製Reflectivity Analysis Program Ver.1を用いてカーブフィッティングを行い、実測値とフィッティングカーブの残差平方和が最小になるように各パラメータを求める。各パラメータから積層膜の屈折率、厚さ及び密度を求めることができる。本発明における積層膜の膜厚評価も、上記X線反射率測定より求めることができる。
<炭素含有量の分析>
水蒸気バリア層において、酸化珪素膜の密度は、微量成分である炭素含有量と密接に相関があり、例えば、炭素原子濃度が低い(0.1at%未満)膜は密度が高くガスバリア性が高い膜であるが、炭素原子濃度がこれよりも高い(1〜40at%)膜は、膜密度もより低くより柔らかい組成物である。
本発明において低屈折率セラミック層の炭素含有量(at%)は、原子数濃度%(atomic concentration)を表す。炭素含有量を示す原子数濃度%(at%)は公知の分析手段を用いて求めることができるが、本発明においては下記のXPS法によって算出されるもので、以下に定義される。
原子数濃度%(atomic concentration)=炭素原子の個数/全原子の個数×100
XPS表面分析装置は、本発明ではVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。具体的には、X線アノードにはマグネシウムを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5eV〜1.7eVとなるように設定した。
測定としては、先ず結合エネルギー0eV〜1100eVの範囲をデータ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
次に、検出されたエッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。
得られたスペクトルは、測定装置、あるいはコンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、各分析ターゲットの元素(炭素、酸素、珪素、チタン等)の含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。
定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。また、Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
<接着剤>
本発明の遮熱性物品を建物の窓ガラス、自動車、電車などの窓ガラス、冷蔵庫の扉ガラスなどに貼り合わせるため接着剤層を塗設することが好ましい。接着剤層は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、熱線遮断層が日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また熱線遮断層を窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の遮熱性物品を屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
本発明の接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
本発明の接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、またはシリコン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
例えば、骨格としての主モノマーとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクリルアクリレート等のアクリル酸エステルを好ましく例示できる。凝集力を向上させるためのコモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等を好ましく例示できる。更に架橋を促進して安定した粘着力を付与させ、また水の存在下でもある程度の粘着力を保持するための官能基含有モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等を好ましく例示できる。
粘着剤の製造は、公知の方法で行うことができる。例えば、酢酸エチルやトルエン等の有機溶剤の存在下で、反応釜内に所定の出発物質を投入し、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド系やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾビス系を触媒として、加熱下で重合させることで製造できる。分子量を上げるためには、例えば反応初期にモノマーを一括投入する方法や、また使用する有機溶剤種では、連鎖移動係数が大きくポリマー成長を抑制するトルエンより酢酸エチルを使用すると良い。ポリマーの重量平均分子量(Mw)は40万以上が好ましく、50万以上が更に好ましい。分子量が40万未満では、イソシアネート硬化剤で架橋されても、凝集力が十分なものが得られず、荷重をかけての保持力評価でもすぐに落下し、またはガラス板に貼り合せた後経時後に剥がしたとき、粘着剤がガラス板に残ることがある。
粘着剤の硬化剤としては、特にアクリル溶剤系では一般的なイソシアネート系硬化剤やエポキシ系硬化剤が使用できるが、均一な皮膜を得るためには経時による粘着剤の流動性と架橋が必要なため、イソシアネート系硬化剤が好ましい。
粘着剤層には、添加剤として、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤等を含有させることもできる。粘着剤層の厚みは5〜50μmが好ましい。
粘着剤層の塗布形成方法としては、任意の公知の方法が使用でき、例えば、ダイコーター法、グラビアコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法などが挙げられる。更に粘着層の積層前に、必要に応じて密着性、塗工性向上の目的で、フィルム表面に火炎処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理、易接着性の有機または無機樹脂塗布などの化学的表面処理を行うことが好ましい。
〔n型有機半導体材料〕
本発明の有機光電変換素子は、n型有機半導体材料(n型半導体材料ともいう)及びp型有機半導体材料(p型半導体材料ともいう)を混合したバルクヘテロジャンクション層を有する。
なお、本発明において低分子化合物とは、化合物の分子量に分布のない、単一分子であることを意味する。他方、高分子化合物とは、所定のモノマーを反応させることによって一定の分子量分布を有する化合物の集合体であることを意味する。しかし、実用上分子量によって定義をする際には、好ましくは分子量が2000以下の化合物を低分子化合物と区分する。より好ましくは1500以下、さらに好ましくは1000以下である。他方、分子量が1000以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは5000以上の化合物を高分子化合物と区分する。なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができるが、後述するような三次元ネットワーク構造を有するような高分子の場合は、正確に分子量を特定することは困難である。
また一般に、p型、n型とは、半導体材料で電気伝導に寄与するのが、正孔であるか、電子であるかを示している。
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
本発明では、フラーレン含有高分子化合物を好適に用いることもできる。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。これは、フラーレンがペンダントされたようなポリマーは、いわばポリマーが分岐構造を有していることになり、固体化した際に高密度なパッキングができず、結果として高い移動度を得ることができなくなるためではないかと推定される。
具体的には、前記一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
一般式(1)において、R1、R2は置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基から選ばれる置換基を表し、L1、L2は置換または無置換のアルキレン基、アルケンジイル基、アルキンジイル基、シクロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、シリレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、またはこれらが複数連結した構造を表す。nは2以上の整数を表す。
R1、R2で表される置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基としては、具体的には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等)が挙げられ、これらの置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基について、具体的には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロプロピル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリール基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、ハロゲン化アリール基(ペンタフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、アルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピル(iまたはn)シリル基、トリブチル(i、tまたはn)シリル基等)が挙げられ、これらの置換基は上記の置換基によってさらに置換されていても、複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
L1、L2で表される置換または無置換のアルキレン基、アルケンジイル基、アルキンジイル基、シクロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、シリレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基としては、炭素数1〜22のアルキレン基、アルケン−1,2−ジイル基、アルキン−1,2−ジイル基、シクロアルキレン基が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、フェニレン基が好ましい。ヘテロアリーレン基としては、フリレン基、チエニレン基、ピリジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基、ピラジニレン基、トリアジニレン基、イミダゾリニレン基、ピラゾリニレン基、チアゾリニレン基、キナゾリニレン基、フタラジニレン基が挙げられる。シリレン基としては、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基等が挙げられる。
さらに好ましくは、n型半導体が三次元的に架橋したネットワーク構造を形成していることである。このような三次元ネットワーク構造を形成することで、剛性の高いn型キャリアパス構造を形成することができ、p型層とn型層の相分離構造が経時で変化することを防ぎ、結果として高い耐久性を有する有機光電変換素子を得ることができる。さらなる副次的な効果としては、バルクへテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクへテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクへテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができる。
そのような三次元ネットワーク構造を形成することが可能なフラーレン含有モノマーの例としては、以下のような化合物を挙げることができる。
これらの化合物は、J.Mater.Chem.,vol.15(2005),p5158,Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116、Angewadte Chemie,International Edition,vol.41(2002),p838等を参考として、モノマーを合成することができる。
これらの化合物の中でも、重合架橋反応後にキャリアトラップとなる官能基が発生しない重合基として、ビニル基である化合物が好ましい。
なお、これらの三次元ネットワークを形成する高分子化合物は溶剤に不溶であるため、モノマーの状態でバルクへテロジャンクション層を形成後に熱、光、放射線、及び重合開始反応を引き起こす化合物蒸気に晒す等の方法によって重合架橋反応を引き起こし、三次元ネットワーク構造を形成させることができる。また、熱、光、放射線等によって重合開始反応を引き起こす重合開始剤を予め混合しておいてもよい。これらの方法の中でも、熱または光によって重合架橋反応を起こすことが好ましく、中でも重合開始剤を用いずに重合架橋可能な化合物が好ましい。
〔p型半導体材料〕
本発明のバルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマーが挙げられる。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。本発明においてはポルフィリン誘導体が好ましい。
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、本発明のn型有機半導体材料と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
他方で、より厚い膜や複数の層からなる多層積層構成を得るためには、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易狙いとする膜を得ることができる。通常溶解性の良い材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題もあることから、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
これらの中でも、テトラベンゾポルフィリン誘導体はその前区体を塗布後、熱処理により不溶化する半導体に構造変換することから、好ましく用いることができる。
テトラベンゾポルフィリン誘導体の例としては下記の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
テトラベンゾポルフィリン誘導体前駆体の例としては、下記一般式(1)、(2)で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
(一般式(1)、(2)において、Zia及びZib(iは1〜4の整数を表す)は、各々独立に1価の原子または原子団を表す。ただし、ZiaとZibとが結合して環を形成していてもよい。R1〜R4は、各々独立に1価の原子または原子団を表す。Y1〜Y4は、各々独立に1価の原子または原子団を表す。Mは、2価の金属原子または3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表す。)
一般式(1)、(2)において、Zia及びZib(iは1〜4の整数を表す)は、各々独立に、1価の原子または原子団を表す。Zia及びZibの例を挙げると、原子としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
一方、原子団としては、水酸基;アミノ基;アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基、ハロアルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基等の有機基;等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルキル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アラルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アラルキル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアラルキル基の例としては、ベンジル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アルケニル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルケニル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルケニル基の例としては、ビニル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アシル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アシル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルコキシ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アルコキシカルボニル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルコキシカルボニル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アリールオキシ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アリールオキシ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、ジアルキルアミノ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。ジアルキルアミノ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このジアルキルアミノ基の例としては、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、ジアラルキルアミノ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。ジアラルキルアミノ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このジアラルキルアミノ基の例としては、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、ハロアルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。ハロアルキル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このハロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基等のα−ハロアルキル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、芳香族炭化水素環基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常6以上、好ましくは10以上、また、通常30以下、好ましくは20以下である。芳香族炭化水素環基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。この芳香族炭化水素環基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、芳香族複素環基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常2以上、好ましくは5以上、また、通常30以下、好ましくは20以下である。芳香族複素環基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。この芳香族複素環基の例としては、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
さらに、上記の原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の置換基を有していてもよい。前記置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独または複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、ZiaとZibとは、結合して環を形成していてもよい。ZiaとZibとが結合して環を形成する場合、当該Zia及びZibを含む環(即ち、Zia−CH=CH−Zibで表わされる構造の環)の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環;ピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環等の、置換基を有していてもよい芳香族複素環;シクロヘキサン環等の非芳香族環状炭化水素;等が挙げられる。
ZiaとZibとが結合して形成する環が有する前記の置換基は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例としては、Zia及びZibを構成する原子団の置換基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独または複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
上述したZia及びZibの中でも、特に水素原子が好ましい。結晶のパッキングが良好で、高い半導体特性が期待できるためである。
一般式(1)、(2)において、R1〜R4は、各々独立に、1価の原子または原子団を表す。
R1〜R4の例を挙げると、上述したZia及びZibと同様のものが挙げられる。また、R1〜R4が原子団である場合、当該原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の置換基を有していてもよい。この置換基の例としては、前記Zia及びZibの置換基と同様のものが挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独または複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。ただし、R1〜R4は、分子の平面性を高めるためには、水素原子、ハロゲン原子等の原子から選ばれることが好ましい。
一般式(2)において、Mは2価の金属原子、または、3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表す。Mが2価の金属原子である場合、その例としては、Zn、Cu、Fe、Ni、Co等が挙げられる。一方、Mが3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団である場合、その例としては、Fe−B1、Al−B2、Ti=O、Si−B3B4等が挙げられる。ここで、B1、B2、B3及びB4は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等の1価の基を表す。
前記一般式(1)、(2)において、Y1〜Y4は、各々独立に1価の原子または原子団を表す。また、前記一般式(1)において、Y1〜Y4はそれぞれ4個ずつ存在するが、Y1同士、Y2同士、Y3同士、及びY4同士は、それぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。
Y1〜Y4の例を挙げると、原子としては水素原子等が挙げられる。
一方、原子団としては、水酸基、アルキル基等が挙げられる。ここで、アルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下、より好ましくは3以下である。アルキル基の炭素数が大きすぎると、脱離基が大きくなるため、脱離基が揮発しにくくなり、膜内に残留する可能性がある。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
また、Y1〜Y4が原子団である場合、当該原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の置換基を有していてもよい。この置換基の例としては、前記Zia及びZibの置換基と同様のものが挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独または複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
上述したY1〜Y4の中でも、水素原子、または、炭素数10以下のアルキル基が好ましい。さらにその中でも、Y1〜Y4の全てが水素原子であるか、または、(Y1、Y2)及び(Y3、Y4)のうち少なくとも一方の組がどちらも炭素数10以下のアルキル基であることが特に好ましい。溶解度が高くなり、成膜性が良好となるためである。
本発明に係る前駆体は、加熱処理により本発明に係るベンゾポルフィリン誘導体に変換される。加熱処理に際してどのような反応が生じるかについて制限はないが、例えば前記一般式(1)、(2)で表わされる前駆体の場合、熱が加えられることによって下記一般式(5)の化合物が脱離する。この脱離反応は定量的に進行する。そして、この脱離反応によって、本発明に係る前駆体は本発明に係るベンゾポルフィリン誘導体に変換される。
加熱処理について、上記にて例示したベンゾポルフィリン誘導体BP−1を例に挙げて、具体的に説明する。ベンゾポルフィリン誘導体BP−1の前駆体としては、例えば、一般式(1)、(2)において、Zia、Zib、R1〜R4及びY1〜Y4が全て水素原子である化合物(以下、「BP−1前駆体」という)を用いることができる。ただし、ベンゾポルフィリン誘導体BP−1の前駆体は、このBP−1前駆体に限定されるものではない。
BP−1前駆体は加熱されると、ポルフィリン環に結合した4個の環それぞれからエチレン基が脱離する。この脱エチレン反応により、ベンゾポルフィリン誘導体BP−1が得られる。この変換を反応式で表すと、以下のようになる。
本発明に係る前駆体を加熱処理により本発明に係るベンゾポルフィリン誘導体に変換する際、温度条件は前記の反応が進行する限り制限はないが、通常100℃以上、好ましくは150℃以上である。温度が低すぎると、変換に時間がかかり、実用上好ましくなくなる可能性がある。上限は任意であるが、通常400℃以下、好ましくは300℃以下である。温度が高すぎると分解の可能性があるためである。
本発明に係る前駆体を加熱処理により本発明に係るベンゾポルフィリン誘導体に変換する際、加熱時間は前記の反応が進行する限り制限はないが、通常10秒以上、好ましくは30秒以上、また、通常10時間以下、好ましくは1時間以下である。加熱時間が短すぎると変換が不十分となる可能性があり、長すぎると分解の可能性があるためである。
本発明に係る前駆体を加熱処理により本発明に係るベンゾポルフィリン誘導体に変換する際、その雰囲気は前記の反応が進行する限り制限はないが、不活性雰囲気であることが好ましい。この際に用いることができる不活性ガスの種類としては、例えば、窒素、希ガス等が挙げられる。なお、不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る前駆体は、有機溶媒等の溶媒に対する溶解性が高い。具体的な溶解性の程度は溶媒の種類等によるが、25℃におけるクロロホルムに対する溶解性は、通常0.1g/l以上、好ましくは0.5g/l以上、より好ましくは1g/l以上である。なお、上限に制限はないが、通常1000g/l以下である。
本発明に係る前駆体が溶媒に対して溶解性が高いのに対し、それから誘導される本発明に係るベンゾポルフィリン誘導体は有機溶媒等の溶媒に対する溶解性が非常に低い。これは、本発明に係る前駆体の構造が平面構造でないために溶解性が高く、かつ結晶化しにくいのに対し、本発明に係るベンゾポルフィリン誘導体は構造が平面的であることに起因するものと推察される。したがって、このような溶媒に対する溶解性の違いを利用すれば、当該ベンゾポルフィリン誘導体を含む層を塗布法により容易に形成できる。例えば、以下の方法により製造できる。即ち、本発明に係る前駆体を溶媒に溶解させて溶液を用意し、当該溶液を塗布してアモルファスまたはアモルファスに近い良好な層を形成する。そして、この層を加熱処理して熱変換により本発明に係る前駆体を変換することで、平面性の高いベンゾポルフィリン誘導体の層を得ることができる。この際、上述した例のように、一般式(1)、(2)で表わされる化合物のうちY1〜Y4が全て水素原子であるものを前駆体として用いると、脱離するものがエチレン分子であるため、系内に残りにくく、毒性、安全性の面で好適である。
本発明に係る前駆体の製造方法に制限はなく、公知の方法を任意に採用することができる。例えば、前記のBP−1前駆体を例に挙げると、以下の合成経路を経て製造できる。なお、ここで、Etはエチル基を表わし、t−Buはt−ブチル基を表す。
さらに、本発明に係るテトラベンゾポルフィリン誘導体は、例えば、1個の原子を2つポルフィリン環が共有して配位しているもの、2個のポルフィリン環が1個以上の原子あるいは原子団を共有して結合したもの、または、それらが3個以上結合して長鎖上に繋がったものであってもよい。
なお、前述の三次元ネットワーク構造を形成するn型半導体を用いると、バルクヘテロジャンクション層を形成するp型半導体材料、n型半導体材料の双方が溶剤に対して非常に耐溶剤性が高くなり、バルクへテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクへテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなる。さらに、前記n型半導体層の重合架橋反応が熱によって起きる場合は、p型半導体材料及びn型半導体材料の変換を同時に達成することができるため、好ましい。
〔バルクヘテロジャンクション層の形成方法〕
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、真空蒸着法、溶液塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができるが、生産性の観点から塗布法が好ましい。
塗膜形成後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱によるアニール処理を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とさせることもできる。その結果、バルクへテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。本発明においては、バルクへテロジャンクション層からなるi層を構成するp型有機半導体材料のキャリアの移動度がn層を構成するn型有機半導体材料のキャリアの移動度よりも大きくすることも好ましい形態である。
〔正孔輸送層・電子ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、バルクへテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。なお、バルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能を付与することができる。電子ブロック機能をより発現するためには、p型半導体のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有すことがより好ましい。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうがより好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
〔電子輸送層・正孔ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を形成することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)などを用いることができるが、同様に、バルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。正孔ブロック機能をより発現させるためには、n型半導体のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有すことがより好ましい。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
〔その他の層〕
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
〔透明電極(陽極)〕
本発明の透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができる。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
〔対電極(陰極)〕
対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
また、対電極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
〔中間電極〕
また、前記図3のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
〔基板〕
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
〔光学機能層〕
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
〔バルクヘテロジャンクション層の形成方法〕
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、前述の如く蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
この際に使用する塗布方法に制限は無いが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
〔パターニング〕
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
バルクへテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
〔封止〕
また、作製した有機光電変換素子10が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子などで公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
<太陽電池ユニット1の作成>
〔基材1〕
帝人デュポン社製厚さ75μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムHSを基材として、以下のように積層体の作製を行った。
<ポリマー層の作製>
〈ポリマー層1の形成〉
下記組成の活性線硬化樹脂層用塗布液は、A、B、C成分の合計100質量部に対して、E、F、Gの必要な質量部を加えて調製した。この塗布液を該当する層の上に、硬化後の膜厚が2μmとなるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布した。溶剤を蒸発乾燥後、高圧水銀灯を用いて0.2J/cm2の紫外線照射により硬化させアクリル系硬化層からなるポリマー層1を形成した。
(活性線硬化樹脂層用塗布液)
A:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
B:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
C:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
E:ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4質量部
F:メチルエチルケトン 75質量部
G:プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
〈光安定剤を含有するポリマー層2の形成〉
メチルメタクリレート65質量%、2−ヒドロキシエチルメタクリレート35質量%を共重合させ、平均分子量50000の水酸基導入メタクリル酸エステル樹脂を得た。この樹脂に対して、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール(TINUVIN328;チバ・ジャパン(株)製)を5質量%、光安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤であるデカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル]エステル(TINUVIN123;チバ・ジャパン(株)製)を5質量%配合し、粘度調整のためメチルエチルケトンにて希釈し、固形分が20質量%となるよう調整した主剤(a)を得た。一方、架橋剤(硬化剤)となるポリイソシアネート化合物として、アダクト型のヘキサメチレンジイソシアネートをメチルエチルケトンで固形分が75質量%となるように調整した硬化剤(b)を得た。主剤(a)に対して、硬化剤(b)を15質量%添加して塗布液を調製した。この塗布液をマイクログラビアコーターにて基材の片面に、塗布量が固形分で5g/m2となるように連続塗工し、乾燥ゾーンの温度は80℃/110℃/125℃(各ゾーンは30秒)と段階的に熱風乾燥し、光安定剤を含有するポリマー層2とした。
<紫外線反射層の作製>
上記樹脂基材のポリマー層上に、下記条件で高屈折率層(厚み:15nm、屈折率:2.3)、低屈折率層(厚み:60nm、屈折率1.46)、を交互に9層設け、9層からなる紫外線反射層を形成し、試料1を作製した。この試料の紫外線反射層から光を入射して測定した波長350nmの紫外線反射率は82%であった。
(高屈折率層の作製)
〈高屈折率層形成混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素 97.9体積%
薄膜形成ガス:テトライソプロポキシチタン 0.1体積%
添加ガス:水素 2.0体積%
〈高屈折率層成膜条件〉
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 5W/cm2(この時の電圧Vpは1kVであった)
電極温度 90℃
(低屈折率層の作製)
〈低屈折率層混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素 98.9体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン 0.1体積%
添加ガス:酸素 1.0体積%
〈低屈折率層成膜条件〉
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは2kVであった)
電極温度 90℃
<水蒸気バリア層の作製>
〈第1低屈折率セラミック構成層の形成〉
形成したアクリル系硬化層からなるポリマー層を有する樹脂基材上に、以下の作製条件で第1低屈折率セラミック構成層1(50nm)、第1低屈折率セラミック構成層2(50nm)、第1低屈折率セラミック構成層3(500nm)と以下に記載した条件で順次低屈折率セラミック構成層の形成を行った。屈折率は1.46であった。
(第1低屈折率セラミック構成層1の作製)
〈第1低屈折率セラミック構成層1混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素ガス 94.85体積%
薄膜形成ガス:ヘキサメチルジシロキサン 0.15体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
(第1低屈折率セラミック構成層1成膜条件)
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 5W/cm2(この時の電圧Vpは1kVであった)
電極温度 90℃
<第1低屈折率セラミック構成層2の作製>
(低屈折率セラミック構成層2混合ガス組成物)
放電ガス:窒素ガス 94.99体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン 0.01体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
(第1低屈折率セラミック構成層2成膜条件)
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは2kVであった)
電極温度 90℃
<第1低屈折率セラミック構成層3の作製>
(第1低屈折率セラミック構成層3混合ガス組成物)
放電ガス:窒素ガス 94.5体積%
薄膜形成ガス:ヘキサメチルジシロキサン 0.5体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
(第1低屈折率セラミック構成層3成膜条件)
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 5W/cm2(この時の電圧Vpは1kVであった)
電極温度 90℃
〔太陽電池ユニット1の作成〕
上記の基材1において、UV反射層が設けられた面とは反対側の面の上にITOを平均膜厚150nmで蒸着し、第1電極TC−1を作製した。
第1電極TC−1上に、導電性高分子であるPEDOT/PSS(poly(3,4−ethylenedioxythiophene)−poly(styrenesulfonate))(Baytron P4083、H.C.Starck製)を30nmの乾燥膜厚となるようにスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。
次に、光電変換層用塗布液として、P3HT(プレクストロニクス製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000、高分子p型半導体材料)とPCBM(Mw=911、低分子n型半導体材料)(フロンティアカーボン:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:1で混合した液を調製し、フィルターでろ過しながら膜厚150nmになるようにスピンコーターを用いて塗布を行い、室温で放置して光電変換層を成膜した。
上記光電変換層の上に、エタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/Lになるように溶解した液を調製し、マスキングした後、膜厚20nmになるように塗布を行い、水蒸気量を調節した窒素中放置して電子輸送層を製膜した。
次に、上記一連の光電変換層、電子輸送層を製膜した第1電極を真空蒸着装置内に設置した。10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、Alを80nm蒸着し、2mm角のサイズの有機光電変換素子STC−1を得た。
得られた有機光電変換素子STC−1は、陽極及び陰極の外部取り出し端子が形成できるように端部を除き、陰極の周囲に接着剤を塗り、PETを基材とした可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ、太陽電池ユニットSTU−1を得た。
<太陽電池ユニットSTU−2の作成>
本発明の実施例1と同じ作り方で、層の順番を変更して、図5に示す構成で基材2を作成した後、それを用いて本発明の太陽電池ユニットSTU−2を作製した。
<太陽電池ユニットSTU−3>
水蒸気バリア層を用いない以外はSTU−1と同様の構成で、基材3を作製した後、それを用いて太陽電池ユニットSTU−3を作成した。
<太陽電池ユニットSTU−4>
紫外線反射層を用いない以外はSTU−3と同様の構成で、基材4を作製した後、それを用いて太陽電池ユニットSTU−3を作成した。
いずれも図5にそれらの層構成を示す。
〔太陽電池ユニットの評価〕
《耐久性評価A》
太陽電池ユニットに、JIS C8938の温湿度サイクル試験A−2に対応する温湿度変化(−20℃〜85℃、相対湿度85%)を10サイクル実施し、その前後で上述の測定方法によりエネルギー変換効率η(%)を求めた。温湿度サイクル実施前のエネルギー変換効率に対する温湿度サイクル実施後のエネルギー変換効率を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、それぞれ算出した値の平均値を求め、本耐久性テスト開始前の効率に対する耐久性テスト後の相対効率を算出した。
◎:全く変化がみられない(相対効率が95%以上)
○:ほとんど変化がみられない(相対効率が80%以上、94%未満)
△:やや劣化がみられる(相対効率が60%以上、80%未満)
×:大きく劣化がみられる(相対効率が60%未満)。
《耐久性評価B》
屋外に90日間放置した後、本耐久性テスト開始前の効率に対する耐久性テスト後の相対効率を算出した。
◎:全く変化がみられない(相対効率が95%以上)
○:ほとんど変化がみられない(相対効率が80%以上、94%未満)
△:やや劣化がみられる(相対効率が60%以上、80%未満)
×:大きく劣化がみられる(相対効率が60%未満)。
評価結果を表1に示す。
表1から、本発明に係る実施例である太陽電池ユニットSTU−1、2の試料は、比較例である太陽電池ユニットSTU−3、4に対し、優れた耐久性を有していることが分かる。
実施例2
<太陽電池ユニットSTU−21>
〔基材21の作成〕
実施例1と同様に基材表面の各種機能層に加えて、下記の熱線遮断層を図6に示すように変更して、太陽電池ユニット21を作成した。
<熱線遮断層の作製>
〈第1熱線遮断層、第1高屈折率セラミック構成層の形成〉
実施例1の高屈折率層と同様な条件で、酸化チタン膜を30nm形成した。
〈第2熱線遮断層の形成〉
形成した高屈折率セラミック構成層の上に、真空チャンバー中のガスをArガスに切り替え圧力を0.45Paとなるようにし、銅を4質量%添加した銀ターゲットをセットしたカソードに直流を印加してスパッタリングを引き起こし、銀膜を10nm形成した。
〈第3熱線遮断層、第2高屈折率セラミック構成層の形成〉
形成した第2熱線遮断層上に、第1熱線遮断層と同様にして、酸化チタン膜を70nm形成した。
〈第4熱線遮断層の形成〉
更にその上に、同様な条件で銀膜を12nm形成した。
〈第5熱線遮断層、第3高屈折率セラミック構成層の形成〉
更にその上に、高屈折率層と同様な条件で酸化チタン膜を30nm形成した。
〔太陽電池ユニットSTU−21の作成〕
実施例1の太陽電池ユニットSTU−1と同様に、紫外線反射層が設けられた面と反対外の面にITO電極を作成し、基材1を基材21に変更した以外は太陽電池ユニットSTU−1の作成と同様にして、太陽電池ユニットSTU−21を作成した。
<太陽電池ユニットSTU−22〜27の作成>
実施例1と同様に基材表面の各種機能層に加えて、図6に示すように熱線遮断層を付与した基材を作成し、使用した以外は同様にして、太陽電池ユニット22〜27を作成した。
〔太陽電池ユニットの評価〕
実施例1の評価に加えて、下記の耐久性評価を行った。
《耐久性評価C》
メタルハライド(JIS C8912 B級)の光を100mW/cm2の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま100mW/cm2の照射強度で300h照射し続けた後の変換効率を評価し、本耐久性テスト開始前の効率に対する耐久性テスト後の相対効率を算出した。
耐久性評価の実施後の変化は、
◎:全く変化がみられない(相対効率が95%以上)
○:ほとんど変化がみられない(相対効率が80%以上、94%未満)
△:やや劣化がみられる(相対効率が60%以上、80%未満)
×:大きく劣化がみられる(相対効率が60%未満)。
結果を表2に示す。
その結果、本発明に係る実施例である太陽電池ユニットの試料STU−21〜STU−25は、比較例である太陽電池ユニットSTU−26、およびSTU−27に対し、優れた耐久性を有していることが分かる。