JP2010254602A - 含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物及びその分離精製法 - Google Patents

含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物及びその分離精製法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ノルボルナン環を有するテトラカルボン酸二無水物において、エポキシ樹脂硬化剤及びポリイミド用素材として純度管理が可能で工業的に使用することができる、精製されたテトラカルボン酸二無水物のメソ体、ラセミ体を提供するとともに、その分離精製法を提供する。
【解決手段】
5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物のヒドロシリル化反応で得られる,メソ体とラセミ体が混合した5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-エンド-ジカルボン酸無水物に対して、初めに良溶媒を用いてメソ体を結晶化させて取り出し、次いで良溶媒と貧溶媒の混合溶媒を用いてラセミ体を結晶として取り出す。このように、それぞれを分離して取り出すことによって、ポリイミド用素材として使用可能な融点幅を有するテトラカルボン酸二無水物を得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂硬化剤及び特にポリイミド用素材として用いるノルボルナン環を分子内に有した含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物に関する。
透明材料は、光デバイス、表示、光情報伝送などに代表されるオプトエレクトロニクス分野で活発に研究開発と適用が進められている。この分野では、エネルギー密度や効率の観点から、300〜500nmの波長を積極的に活用する方向にある。電子機器に用いられている耐熱有機材料は芳香族樹脂が多いが、この波長領域に吸収を有することから透明材料としては使用が制限される。このため、非芳香族の透明耐熱材料が求められている。
また、透明性、耐熱性の他に求められる特性として、シリコン基板やガラス基板などとの接着性、汎用溶媒への溶解性及び他の材料との相互溶解性に優れることが望まれる。
そこで、このような特性を備えるエポキシ樹脂やポリイミド樹脂を得るため、エポキシ樹脂用硬化剤として又はポリイミド樹脂を構成する成分として、脂環式のテトラカルボン酸二無水物を用いることが検討されている。
例えば、特許文献1〜3及び非特許文献1では、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物とヘキサメチルトリシロキサンから合成される下記化学式(6)で表されるノルボルナン環を有するテトラカルボン酸二無水物が記され、その応用例が開示されている。
Figure 2010254602
特表2007−516331号公報 特表2007−515524号公報 米国特許第7022410号明細書 米国特許出願公開第2006/0147719号明細書
High Performance Polymers, 20, 281-295 (2008)
テトラカルボン酸二無水物をポリイミド用素材として用いる場合、その純度が重要である。純度の低いテトラカルボン酸二無水物では、分子量の小さなポリイミドしか得られず、機械強度に劣るフィルムしか得られないし、甚だしくは、フィルムすらも得られない。通常、テトラカルボン酸二無水物では、融点及び融点幅が純度管理の指標となっている。
しかしながら、本発明に係るノルボルナン環を有するテトラカルボン酸二無水物は、合成後に通常の再結晶操作で得られる結晶の融点が110〜140℃の範囲で変動していた。このため、ポリイミド合成に用いようとしても純度管理が困難であった。
本発明は、ノルボルナン環を有するテトラカルボン酸二無水物において、エポキシ樹脂硬化剤及びポリイミド用素材として純度管理が可能で工業的に使用することができる、精製されたテトラカルボン酸二無水物を提供するとともに、その分離精製法を提供することを目的とする。
そこで、上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、ノルボルナン環を有するテトラカルボン酸二無水物は、ヒドロシリル化反応の性質上メソ体とラセミ体の混合物からなることを見出し、これらを分離した後再結晶精製することによって、一定の融点を示し融点幅が狭いテトラカルボン酸二無水物になることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表されるメソ体である(5S,5’R)-5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物、並びに、下記式(2)で表される(5R,5’R)-5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物と、下記式(3)で表される(5S,5’S)-5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物からなるラセミ体をそれぞれ有する含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物を提供する。
Figure 2010254602

(式(1)中、両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
Figure 2010254602
(式(2)中、両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
Figure 2010254602
(式(3)中、両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
本発明は、また、下記式(4)で表される5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物をヒドロシリル化反応させて得られるメソ体とラセミ体の混合物である下記一般式(5)で表される5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物から、メソ体とラセミ体とを分離して取り出すに当たり、良溶媒を用いて初めにメソ体を再結晶で分離し、次いで良溶媒と貧溶媒の混合溶液を用いてラセミ体を取り出すことを特徴とする含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物からのメソ体とラセミ体の分離精製法を提供する。
Figure 2010254602
Figure 2010254602

(式(5)中、両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
さらに、本発明は、良溶媒としてトルエンを用い、貧溶媒としてヘキサンを用いることを特徴とする、上記に記載の含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物からのメソ体とラセミ体の分離精製法を提供する。
本発明によって、5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物において、ポリイミド用素材として純度管理が可能で工業的に使用することができるメソ体とラセミ体を提供することが可能となり、透明性、耐熱性、シリコン基板やガラス基板などとの接着性、汎用溶媒への溶解性及び他の材料との相互溶解性に優れるポリイミド樹脂を合成するための酸無水物成分として、又はエポキシ樹脂硬化剤として好適に用いることができる。
実施例1のメソ体の幅拡大13C NMRスペクトルである。 実施例1のラセミ体の幅拡大13C NMRスペクトルである。 実施例1のラセミ体の分子構造の投影図である。
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。
本発明に係る一般式(5)で表される5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-エンド-ジカルボン酸無水物は、次の反応式(8)で示される方法で合成できる。
Figure 2010254602

原料として用いる式(4)の5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物は、シクロペンタジエンと無水マレイン酸のディールス・アルダー反応によって合成できるが、試薬会社各社から販売されているので、これを用いるのが便利である。
合成のもう一方の原料である1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサンも、通常に市販されているのでこれを用いる。用いる1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサンの量は、上記式(8)の反応式で理解されるように、5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物2モルに対して1モル用いることが好ましい。実際の合成では、秤量誤差等があるので、0.99〜1.01モルの範囲内に納まるよう管理する。1.01モルを超えると、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサンに5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物が1個だけ付加した化合物が残存し、これを除去するために精製工程に負荷が掛かってしまう。また、逆に0.99モル未満になると、5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物が残存してしまい、これを除去するために精製工程に負荷が掛かってしまう。
合成時のヒドロシリル化反応の触媒は、ヒドロシリル化活性があるものならば特別限定されないが、トリス(ジメチルビニルジシロキサン)二白金(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)あるいはヘキサクロロ白金酸(IV)などの錯体触媒が活性が高いことから好ましい。この中でも、トリス(ジメチルビニルジシロキサン)二白金(0)あるいはジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)が特に好ましい。ヘキサクロロ白金酸(IV)は、高活性ではあるが、通常は六水和物であることから、結果として反応系に水を添加することになり、目的の酸二無水物が水によって開環してしまう。
トリス(ジメチルビニルジシロキサン)二白金(0)については、第5版実験化学講座第21巻p346にその合成方法が記載されている。また、このものはアルドリッチ社からPlatinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane complexの名前で白金濃度2%のキシレン溶液として市販されているので,これを用いることも可能である。
添加する触媒の量は、5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物1モルに対して白金金属量として2×10−5から2×10−3グラム原子、好ましくは5×10−5から5×10−4グラム原子とする。少ない場合、反応が遅くなるだけでなく、原料中の不純物によって失活してしまう恐れがある。逆に多すぎると、反応が発熱反応のため暴走してしまう危険性があるとともに、反応液が濃黒褐色になり脱色のために用いる活性炭の量が増えてしまう。
反応溶媒としては、原料及び触媒を溶解させ、ヒドロシリル化反応に不活性なものであれば良く、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどが使用できるが、目的のテトラカルボン酸二無水物の溶解性及び再結晶操作工程を考慮すると、トルエンが好ましい。溶媒量は,原料に用いる5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物を溶解し得る量であればよい。反応温度によって変化するが、トルエンの場合、5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物の質量の3から6倍あればよい。
反応は、所定の温度に達した5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物のトルエン溶液に1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサンを滴下する。発熱反応であることから、所定の温度を維持できるよう滴下の速度と浴温を調節する。このときの反応温度は、通常50〜120℃、好ましくは70〜100℃である。反応が完結するに要する時間は、触媒量と反応温度によって変化するので、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)でサンプリング分析して決定することが好ましい。通常、5〜12時間程度である。反応は、定量的に進行する。
ヒドロシリル化反応終了液は、淡赤褐色を呈しているので、冷却した後活性炭を加えて脱色する。濾過操作で活性炭を除去することによって、無色透明の反応液が得られる。この反応液をエバポレーターを用いて溶媒を除去して濃縮する。濃縮の程度は、目的のテトラカルボン酸二無水物の質量すなわち仕込んだ5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物と1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサンの質量の合計が35〜45質量%になるよう溶媒を除去する。35質量%未満であると、得られるメソ体の収量が減少するだけでなく、次に得るラセミ体にメソ体が混入するため好ましくない。逆に、45質量%を超えるとメソ体にラセミ体が混入した結晶となるので好ましくない。
このように濃縮した溶液を室温下(25℃)に静置すると、微細な針状の結晶が析出するので、これを濾過操作によって取り出す。通常このときの結晶の融点は138〜142℃なので、トルエンで再結晶することによって融点が143.5〜144.5℃の結晶となる。
メソ体を取り出した濾液に、貧溶媒であるヘキサンを加えてトルエンとヘキサンの混合溶媒とすることによって、ラセミ体を結晶として析出させる。加えるヘキサンの量は、混合溶媒中のヘキサン量が、20〜40質量%になるようにする。ヘキサン量が20質量%未満であると、得られるラセミ体の収量が減少する。40質量%を超えると不純物成分が混入しやすくなる。
このような混合溶媒状態で室温下に静置すると、大きな無色透明の結晶が析出するので、これを濾過操作によって取り出す。通常このときの結晶の融点は、118〜120℃なので,トルエンとヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶することによって融点が119.5〜121.5℃の結晶となる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
<GPC測定条件>
本実施例におけるGPCの測定条件を、以下に示す。
装置:ポンプ(株式会社日立製作所製L−6000型)、検出器(株式会社日立製作所製L−3300RI型)
カラム:日立化成工業株式会社製Gelpack GL−A110 500mm2本直列
溶離液:テトラヒドロフラン
温度25℃、流量1.0mL/分
<NMR測定条件>
本実施例におけるNMRの測定条件を、以下に示す。
装置:Bruker社AV400M
溶媒:重クロロホルム
試料濃度:80mg/0.75mL
測定温度:24℃
共鳴周波数: 13C NMR:100.64MHz
積算回数: 13C NMR:128回
<単結晶X線構造解析>
[結晶データ]
晶系:三斜晶系
空間群:P−1(#2)
格子定数
a=14.033(4)Å,b=15.602(5)Å,c=7.603(4)Å
α=101.72(3)°,β=105.19(3)°,γ=64.82(2)°
単位胞の体積:1445.7(9)Å
使用したX線とその波長:CuKα線(λ=1.54178Å)
単位胞内の分子数Z:2
密度の計算値:1.233g/cm
線吸収係数(CuKα):18.73cm−1
試料結晶の形と寸法:角柱状, 0.2×0.35×0.60mm
F(000):572.00
測定温度:26℃
[測定データ]
使用した回折装置:理学電機株式会社製 RASA−7R型
走査方法:ω−2θ
走査幅:1.79°+0.30°tanθ
走査速度(ω):16.0°/min
データ収集範囲(2θmax):136.2°
測定反射数:11,348
独立な反射数:5,241
観測値として採用した基準:I>3σ(I)
観測値として採用した反射数:3,460
補正:ローレンツ因子及び偏光因子
消衰効果補正係数:1.07310e+001
[解析データ]
近似構造の決定法:直接法(SIR92)
使用した最小二乗法:完全行列法
温度因子の種類:異方性温度因子
水素原子の取扱い:等方性温度因子
最終のR値,wR値:0.053,0.030(重率:1/σ2(F))
最終D合成電子密度の最大値:0.23e/Å
最終D合成電子密度の最小値:−0.21e/Å
使用したプログラムシステム名:CrystalStructure
(実施例1)
撹拌子、滴下ロート、冷却管、温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、トルエン258gと5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物65.66g(0.4000モル)を仕込み、加熱撹拌を開始した。フラスコ内が85℃になった時点で、アルドリッチ社製Platinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyl-disiloxane complex(白金濃度2%のキシレン溶液)1.603g(白金として1.643×10−4g−atom)を仕込み、滴下ロートに仕込んだ1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン(41.70g,0.2000モル)を徐々に滴下した。ヘキサメチルトリシロキサンの滴下に伴って反応温度が上昇するので、フラスコ内の温度が90℃を維持するよう注意しながら2時間かけて滴下した。その後も、フラスコ内温度を90℃に保ちながら7時間反応を続けた。2つの原料の合計は107.36g、反応液の質量は366.96g、5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物に対するトルエン量は3.93倍である。
反応液を示差屈折計検出器を備えたGPCで分析したところ、反応は定量的に進行しており、目的物である5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-エンド-ジカルボン酸無水物が98.9面積%、原料の5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物が0.3面積%及び目的物が開環したと推定されるピークが0.8面積%であった。
反応液は淡赤褐色に着色していたので、冷却したのち活性炭12gを加え室温で2時間撹拌し、濾過操作で活性炭を除いた。エバポレーターを使って真空(10KPa)加熱(水浴温度70℃)下に、無色透明の濾液を270gになるまで濃縮した後、室温に静置した。微細な針状の結晶が析出したので、これを濾過操作によって取り出し、真空乾燥した。得られた針状結晶の重量は49.2gであり、融点は138〜142℃であった。この結晶3.00gを10.0gのトルエンに加熱溶解させ、再結晶したところ融点が143.5〜144.5℃の結晶を2.82g得た。この結晶の13C NMRスペクトルにおける−1.5〜1.5ppmの部分を幅拡大したものを図1に示した。中央のケイ素原子に結合する2つのメチル基炭素が、1.21ppmと1.23ppmの2本に分離して観測される。このことは、本結晶がメソ体であることを示すものである。
一方、微細な針状の結晶を取り出した後の濾液は210gであった。この濾液にヘキサン50gを加え、2日間室温に静置したところ、大きな無色透明の結晶が析出したので、これを濾過操作によって取り出し、真空乾燥した。得られた結晶の重量は43.4gであり、融点は118〜120℃であった。この結晶3.00gを7.50gのトルエンと2.50gのヘキサンの混合溶媒に加熱溶解させ、再結晶したところ融点が119.5〜121.5℃の結晶を2.55g得た。この結晶の13C NMRスペクトルにおける−3〜3ppmの部分を幅拡大したものを図2に示した。中央のケイ素原子に結合する2つのメチル基炭素は、1.22ppmの1本のピークとして観測される。このことは、本結晶がラセミ体であることを示すものである。
ラセミ体であることを更に確証するために、単結晶X線構造解析を行った。その結果、この結晶は三斜晶系であり、単位胞内の分子数が2であるS−S体とR−R体が対になった結晶、すなわちラセミ体の結晶であることが明らかになった。図3は、電子の存在確率50%で描いた熱振動球体による分子構造の投影図である。
(比較例1)
ラセミ体を取り出すに当たり、トルエンとヘキサンの混合溶液を用いることの特徴を明らかにするため、次の操作を行った。実施例1で得た融点が118〜120℃のラセミ体結晶7.06gを10.08gのトルエンに加熱溶解させ均一溶液にした後、室温下に静置して結晶の析出を待ったが、1週間の静置後においても結晶は析出しなかった。
(比較例2)
メソ体とラセミ体との混合物の性状及び融点を明らかにするために、次の操作を行った。実施例1で得た融点が143.5〜144.5℃のメソ体の結晶32.7mgと119.5〜121.5℃のラセミ体の結晶32.8mgとをサンプル管に入れ、150℃の油浴中で加熱溶融させた。室温に戻したが粘性液体となってしまい、結晶化しなかった。スパチュラーで触ってみたところ、水飴状であった。この状態は48時間後も変わりなかった。
この粘性液体に0.2mLのジエチルエーテルを加えてスパチュラーで撹拌したところ、結晶化した。減圧下にジエチルエーテルを蒸発・除去し、白色の粉末状結晶を得た。この結晶の融点は、113〜125℃であった。
比較例から、メソ体とラセミ体の混合物の結晶は幅広い融点を有することが分かる。また、ラセミ体は、トルエンに対して非常に良く溶解することが分かる。このため、ラセミ体を結晶として取り出すには、貧溶媒であるヘキサンを加えた混合溶媒から結晶化させることが必要となる。

Claims (3)

  1. 式(1)で表されるメソ体である(5S,5’R)-5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物、並びに、式(2)で表される(5R,5’R)-5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物と、式(3)で表される(5S,5’S)-5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物からなるラセミ体を、それぞれ有する含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物。
    Figure 2010254602
    (式(1)中、両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
    Figure 2010254602

    (式(2)中、両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
    Figure 2010254602

    (式(3)中,両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
  2. 式(4)で表される5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物をヒドロシリル化反応させて得られるメソ体とラセミ体の混合物である一般式(5)で表される5,5’-エキソ-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物から、メソ体とラセミ体とを分離して取り出すに当たり、良溶媒を用いて初めにメソ体を結晶化させて取り出し、次いで良溶媒と貧溶媒の混合溶媒を用いてラセミ体を結晶として取り出すことを特徴とする含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物からのメソ体とラセミ体の分離精製法。
    Figure 2010254602
    Figure 2010254602

    (一般式(5)中、両末端の2つのケイ素はノルボルナン環に対してエキソ配置している。さらに、2つの酸無水物基はノルボルナン環に対してエンド配置している。)
  3. 良溶媒としてトルエンを用い、貧溶媒としてヘキサンを用いることを特徴とする請求項2に記載の含ケイ素脂環式テトラカルボン酸二無水物からのメソ体とラセミ体の分離精製法。
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