JP2010251424A - 光電変換装置 - Google Patents

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Takuya Matsui
卓矢 松井
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Abstract

【課題】i層が結晶質シリコンゲルマニウムからなる光電変換層を備え、長波長領域における高い発電特性を示す光電変換装置を提供する。
【解決手段】基板1上に、光入射側から順に、p層41と結晶質シリコンゲルマニウムi層42とn層43とが積層された光電変換層3を備える光電変換装置100であって、前記結晶質シリコンゲルマニウムi層42中のゲルマニウム濃度が、前記p層41側から前記n層43側に向かって段階状に減少するように変化していることを特徴とする光電変換装置100。
【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換装置に関し、特に発電層を製膜で作製する光電変換装置に関する。
太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池に用いられる光電変換装置としては、p型シリコン系半導体(p層)、i型シリコン系半導体(i層)及びn型シリコン系半導体(n層)の薄膜をプラズマCVD法等で製膜して形成した光電変換層を備えた薄膜シリコン系光電変換装置が知られている。
薄膜シリコン系太陽電池に用いる光電変換層の膜のひとつとして、結晶質シリコンゲルマニウム膜の開発が行われている。結晶質シリコンゲルマニウム膜は、結晶質シリコンと比べてナローギャップであり、赤外域での吸収特性が優れることが知られている。結晶質シリコンゲルマニウムは、アモルファスシリコンや結晶質シリコンなどの他の光電変換材料との積層構造として用いることにより、長波長の太陽光を吸収して高効率化を図ることができる光電変換材料として期待されている。
特許文献1に、結晶質シリコンゲルマニウムi層を備え、i層中のゲルマニウム濃度が5原子%以上50原子%以下である光電変換装置が開示されている。
特開2007−180364号公報(請求項3、及び段落[0010])
結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度を増加させることにより、波長800nm以上の長波長領域での光吸収量を増加させることができる。結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が20原子%以下の領域では、ゲルマニウム濃度の増加に伴い発電電流量は向上するが、i層中のゲルマニウム濃度が20原子%を超えると、ゲルマニウム濃度の増加に伴い波長800nm以下の短波長領域での感度が低下するために、発電電流量が減少する傾向がある。
太陽電池の高効率化を図るために、更なる短絡電流の増加が求められている。しかし、上述のように光吸収量が大きい高ゲルマニウム濃度条件では、吸収した光を有効に取り出すことが出来ず、発電電流量が減少することが問題となっていた。
本発明は、i層が結晶質シリコンゲルマニウムからなる光電変換層を備え、長波長領域における高い発電特性を示す光電変換装置を提供する。
上記課題を解決するために、本発明の光電変換装置は、基板上に、光入射側から順に、p層と結晶質シリコンゲルマニウムi層とn層とが積層された光電変換層を備える光電変換装置であって、前記結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が、前記p層側から前記n層側に向かって段階状に減少するように変化していることを特徴とする。
上述のように、本発明者らは、結晶質シリコンゲルマニウムi層のゲルマニウム濃度が高く均一である場合に短波長領域での分光感度が低下する原因を、ゲルマニウム濃度の増加により、シリコンゲルマニウムi層がp型化したためと考えた。i層がp型化すると、i層のバンドがp層側に偏るバンドプロファイルとなる。すなわち、p層/i層界面付近の電界が弱まり、i層/n層界面付近の電界が強くなる結果、i層内部の電界が弱まった領域で発生したキャリアを取り出すことができない。
本発明では、ゲルマニウム濃度が、p層側からn層側に向かって段階状に減少する結晶質シリコンゲルマニウムi層とする。これにより、i層のバンドが相対的にn層側に移動するようにpin構造のバンドプロファイルが改善されて、p層/i層界面付近の電界が向上する。その結果、短波長側での分光感度低下を抑制するとともに、ゲルマニウム濃度が高く均一な結晶質シリコンゲルマニウムi層を備える光電変換装置よりも長波長領域での分光感度を向上させることができる。これにより、i層内部で発生したキャリアを取り出すことができるために短絡電流が向上して、高い変換効率を示す光電変換装置とすることができる。
上記発明において、一つの段階において変化する前記ゲルマニウム濃度の変化量が、10原子%以上であることが好ましい。
このように、結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が、p層側からn層側に向かって、10原子%以上の変化量で段階的に減少することにより、結晶質シリコンゲルマニウムi層のバンドプロファイルを改善し、650nm〜900nmの分光感度をより向上させることができる。また、ゲルマニウム濃度を段階的に減少させることにより、ゲルマニウム濃度及びi層の結晶性の制御を容易とすることができる。
上記発明において、前記p層との界面部分における前記結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が30原子%以上50原子%以下であり、前記n層との界面部分における前記結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
このように、p層との界面部分における結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が30原子%以上50原子%以下であれば、長波長領域の分光感度向上効果が得られ、かつ、i層のp型化によるp層/i層界面付近の電界低下を抑えることができる。短波長感度の低下が生じる条件においてバンドプロファイリングを改善するためには、結晶質シリコンゲルマニウムi層全体でのゲルマニウム濃度の平均値を20原子%以上とすることが望ましい。p層との界面部分における結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度を30原子%未満とすると、i層全体のゲルマニウム濃度の平均値が20原子%未満となり、バンドプロファイリングの改善が望めない。また、50原子%を超える濃度とすると、短波長側での分光感度の低下を抑制することができないため、バンドプロファイリングの改善が望めない。
また、n層との界面部分に、ゲルマニウム濃度が1原子%以上20原子%以下の結晶質シリコンゲルマニウムi層を設けることにより、i層/n層界面付近の電界を相対的に低下させることができる。n層との界面部分において、結晶質シリコンゲルマニウムi層のゲルマニウム濃度が20原子%を超えると、結晶質シリコンゲルマニウムi層がp型化する。このため、i層/n層界面付近に強い電界がかかる一方、p層/i層界面付近の電界が弱まるために、i層バンドプロファイリングの改善が望めない。
本発明によれば、結晶質シリコンゲルマニウムi層の短波長側での分光感度低下を抑制できるとともに、ゲルマニウム濃度が高く均一な結晶質シリコンゲルマニウムi層を備える光電変換装置よりも長波長領域での分光感度を向上させることができる。これにより、高変換効率の光電変換装置とすることができる。
第1実施形態の光電変換装置の製造方法により製造される光電変換装置の構成を表す概略図である。 第1実施形態の光電変換装置の製造方法を用いて太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。 第1実施形態の光電変換装置の製造方法を用いて太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。 第1実施形態の光電変換装置の製造方法を用いて太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。 第1実施形態の光電変換装置の製造方法を用いて太陽電池パネルを製造する一実施形態を説明する概略図である。 第2実施形態の光電変換装置の製造方法により製造される光電変換装置の構成を表す概略図である。 実施例1及び比較例1乃至比較例4のシングル型太陽電池セルにおける結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度プロファイルを示す図である。 実施例1及び比較例1乃至比較例4の結晶質シリコンゲルマニウムi層の分光スペクトルである。 波長300nmから1200nmの光についてのQE計測結果から求めた第2セル層の短絡電流値のバイアス依存性を表すグラフである。 波長700nmから1200nmの光についてのQE計測結果から求めた第2セル層の短絡電流値のバイアス依存性を表すグラフである。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の光電変換装置の構成を示す概略図である。光電変換装置100は、シングル型シリコン系太陽電池であり、基板1、透明電極層2、光電変換層3、及び裏面電極層4を備える。なお、本実施形態において、シリコン系とはシリコン(Si)やシリコンカーバイト(SiC)やシリコンゲルマニウム(SiGe)を含む総称である。また、結晶質シリコン系とは、非晶質シリコン系以外のシリコン系を意味するものであり、微結晶シリコンや多結晶シリコンも含まれる。
第1実施形態に係る光電変換装置の製造方法を、太陽電池パネルを製造する工程を例に挙げて説明する。図2から図5は、本実施形態の太陽電池パネルの製造方法を示す概略図である。
(1)図2(a)
基板1として面積が1m以上、或いは1辺が1m以上の大型のソーダフロートガラス基板(例えば1.4m×1.1m×板厚:3.5mm〜4.5mm)を使用する。基板端面は熱応力や衝撃などによる破損防止にコーナー面取りやR面取り加工されていることが望ましい。
(2)図2(b)
透明電極層2として、酸化錫(SnO)を主成分とする膜厚約500nm以上800nm以下の透明導電膜を、熱CVD装置にて約500℃で製膜する。この際、透明電極膜の表面には、適当な凹凸のあるテクスチャーが形成される。透明電極層2として、透明電極膜に加えて、基板1と透明電極膜との間にアルカリバリア膜(図示されず)を形成しても良い。アルカリバリア膜は、酸化シリコン膜(SiO)を50nm〜150nm、熱CVD装置にて約500℃で製膜処理する。
(3)図2(c)
その後、基板1をX−Yテーブルに設置して、YAGレーザーの第1高調波(1064nm)を、図の矢印に示すように、透明電極膜の膜面側から照射する。加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、透明電極膜を発電セルの直列接続方向に対して垂直な方向へ、基板1とレーザー光を相対移動して、溝10を形成するように幅約6mmから15mmの所定幅の短冊状にレーザーエッチングする。
(4)図2(d)
透明電極層2上に、プラズマCVD装置により、光電変換層3としての結晶質シリコンp層41、結晶質シリコンゲルマニウムi層42、及び、結晶質シリコンn層43を順次製膜する。結晶質シリコンp層41はBドープした微結晶シリコンを主とし、膜厚10nm以上50nm以下である。結晶質シリコンゲルマニウムi層42は微結晶シリコンゲルマニウムを主とし、膜厚は0.5μm以上2.0μm以下である。n層は非晶質シリコン、結晶質シリコン、もしくはその2種を組み合わせた積層構造とし、n層全体の膜厚は20nm以上100nm以下である。
第1実施形態において、結晶質シリコンゲルマニウムi層42中のゲルマニウム濃度は、p層41側からn層43側に向かって段階状に減少している。すなわち、本実施形態における結晶質シリコンゲルマニウムi層42は、互いにゲルマニウム濃度が異なる2以上の層を、p層41側が最もゲルマニウム濃度が高くn層43側に向かって減少するように積層される構成となっている。
結晶質シリコンゲルマニウムi層42の分光感度、特に波長800nm以下の分光感度を考慮すると、一つの段階でのゲルマニウム濃度の変化量、すなわち、結晶質シリコンゲルマニウムi層を構成する複数の層における隣接する層のゲルマニウム濃度差は、10原子%以上であることが好ましい。
結晶質シリコンゲルマニウム膜中のゲルマニウム濃度が増加すると、波長800nm以上での光吸収量が増加するが、i層のp型化が進行して波長800nm以下での分光感度特性が低下する。光電変換効率を増大させるためには、長波長領域の分光感度を向上させつつ、低波長領域の分光感度低下を抑制する必要がある。同じ結晶化率のゲルマニウム濃度であれば、ゲルマニウム濃度の高い結晶質シリコンゲルマニウム層(膜)の方が高い吸収係数を有する。そのため、p層との界面部分における結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が30原子%以上50原子%以下、かつ、n層との界面部分における結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
結晶質シリコンp層41及び結晶質シリコンn層43は、原料ガスとしてSiH、H、BまたはPHを用い、減圧雰囲気:3000Pa以下、基板温度:約180〜230℃、プラズマ発生周波数:40MHz以上100MHz以下の条件で製膜する。
結晶質シリコンゲルマニウムi層42は、原料ガスとしてSiH、GeH、Hを用い、減圧雰囲気:3000Pa以下、基板温度:約150〜250℃、プラズマ発生周波数:40MHz以上100MHz以下の条件で製膜する。結晶質シリコンゲルマニウム中のゲルマニウム濃度を段階的に変化させる方法として、製膜中の原料ガスの供給量を段階的に変化させる。例えば、p層からn層に向かってゲルマニウム濃度が減少するように、所定時間毎にGeH流量を減少させて製膜する。このとき、GeH流量低下に併せてH流量も調整すると、結晶質シリコンゲルマニウムの結晶性を制御することができる。結晶質シリコンゲルマニウム中のゲルマニウム濃度を連続的に変化させる場合、ゲルマニウム濃度の変化にあわせて結晶性も変化してしまう。そのため、良好な特性(分光感度や変換効率などの形状因子)を得るには、GeH流量と原料ガス(特にH)流量を精密に制御する必要があり、製膜条件制御が困難となる。しかしながら、段階的にGeH流量を変化させることにより、ゲルマニウム濃度が異なる2以上の層が、p層側が最もゲルマニウム濃度が高く、n層43側に向かって減少するように積層される構成とすることができる。すなわち、原料ガスの流量を精密に制御しなくても、膜特性および結晶性が良好な結晶質シリコンゲルマニウムi層を容易に製膜することができる。
結晶質シリコンゲルマニウムを主とするi層膜をプラズマCVD法で形成するにあたり、プラズマ放電電極と基板1の表面との距離dは、3mm以上10mm以下にすることが好ましい。3mmより小さい場合、大型基板に対応する製膜室内の各構成機器精度から距離dを一定に保つことが難しくなるとともに、近過ぎて放電が不安定になる恐れがある。10mmより大きい場合、十分な製膜速度(1nm/s以上)を得難くなるとともに、プラズマの均一性が低下しイオン衝撃により膜質が低下する。
(5)図2(e)
基板1をX−Yテーブルに設置して、レーザーダイオード励起YAGレーザーの第2高調波(532nm)を、図の矢印に示すように、光電変換層3の膜面側から照射する。パルス発振:10kHzから20kHzとして、加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、透明電極層2のレーザーエッチングラインの約100μmから150μmの横側を、溝11を形成するようにレーザーエッチングする。またこのレーザーは基板1側から照射しても良く、この場合は光電変換層3の非晶質シリコン系の第1セル層で吸収されたエネルギーで発生する高い蒸気圧を利用して光電変換層3をエッチングできるので、更に安定したレーザーエッチング加工を行うことが可能となる。レーザーエッチングラインの位置は前工程でのエッチングラインと交差しないように位置決め公差を考慮して選定する。
(6)図3(a)
裏面電極層4としてAg膜/Ti膜を、スパッタリング装置により、減圧雰囲気、製膜温度:150℃から200℃にて製膜する。本実施形態では、Ag膜:150nm以上500nm以下、これを保護するものとして防食効果の高いTi膜:10nm以上20nm以下を、この順に積層する。あるいは、裏面電極層4を、25nmから100nmの膜厚を有するAg膜と、15nmから500nmの膜厚を有するAl膜との積層構造としても良い。結晶質シリコンn層43と裏面電極層4との接触抵抗低減と光反射向上を目的に、光電変換層3と裏面電極層4との間に、スパッタリング装置により、膜厚:50nm以上100nm以下のGZO(GaドープZnO)膜を製膜して設けても良い。
(7)図3(b)
基板1をX−Yテーブルに設置して、レーザーダイオード励起YAGレーザーの第2高調波(532nm)を、図の矢印に示すように、基板1側から照射する。レーザー光が光電変換層3で吸収され、このとき発生する高いガス蒸気圧を利用して裏面電極層4が爆裂して除去される。パルス発振:1kHz以上10kHz以下として加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、透明電極層2のレーザーエッチングラインの250μmから400μmの横側を、溝12を形成するようにレーザーエッチングする。
(8)図3(c)と図4(a)
基板端部におけるレーザーエッチング加工部の短絡を防止するため、周囲膜除去処理を行う。基板1をX−Yテーブルに設置して、レーザーダイオード励起YAGレーザーの第2高調波(532nm)を、基板1側から照射する。レーザー光が透明電極層2と光電変換層3で吸収され、このとき発生する高いガス蒸気圧を利用して裏面電極層4が爆裂して、裏面電極層4/光電変換層3/透明電極層2が除去される。パルス発振:1kHz以上10kHz以下として加工速度に適切となるようにレーザーパワーを調整して、基板1の端部から5mmから20mmの位置を、図3(c)に示すように、X方向絶縁溝15を形成するようにレーザーエッチングする。なお、図3(c)では、光電変換層3が直列に接続された方向に切断したX方向断面図となっているため、本来であれば絶縁溝15位置には裏面電極層4/光電変換層3/透明電極層2の膜研磨除去をした周囲膜除去領域14がある状態(図4(a)参照)が表れるべきであるが、基板1の端部への加工の説明の便宜上、この位置にY方向断面を表して形成された絶縁溝をX方向絶縁溝15として説明する。このとき、Y方向絶縁溝は後工程で基板1周囲膜除去領域の膜面研磨除去処理を行うので、設ける必要がない。
絶縁溝15は基板1の端より5mmから15mmの位置にてエッチングを終了させることにより、太陽電池パネル端部からの太陽電池モジュール6内部への外部湿分浸入の抑制に、有効な効果を呈するので好ましい。
尚、以上までの工程におけるレーザー光はYAGレーザーとしているが、YVO4レーザーやファイバーレーザーなどが同様に使用できるものがある。
(9)図4(a:太陽電池膜面側から見た図、b:受光面の基板側から見た図)
後工程のEVA等を介したバックシート24との健全な接着・シール面を確保するために、基板1周辺(周囲膜除去領域14)の積層膜は、段差があるとともに剥離し易いため、この膜を除去して周囲膜除去領域14を形成する。基板1の端から5〜20mmで基板1の全周囲にわたり膜を除去するにあたり、X方向は前述の図3(c)工程で設けた絶縁溝15よりも基板端側において、Y方向は基板端側部付近の溝10よりも基板端側において、裏面電極層4/光電変換層3/透明電極層2を、砥石研磨やブラスト研磨などを用いて除去を行う。
研磨屑や砥粒は基板1を洗浄処理して除去した。
(10)図5(a)(b)
端子箱23の取付け部分はバックシート24に開口貫通窓を設けて集電板を取出す。この開口貫通窓部分には絶縁材を複数層で設置して外部からの湿分などの浸入を抑制する。
直列に並んだ一方端の太陽電池発電セルと、他方端部の太陽電池発電セルとから銅箔を用いて集電して太陽電池パネル裏側の端子箱23の部分から電力が取出せるように処理する。銅箔は各部との短絡を防止するために銅箔幅より広い絶縁シートを配置する。
集電用銅箔などが所定位置に配置された後に、太陽電池モジュール6の全体を覆い、基板1からはみ出さないようにEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)等による接着充填材シートを配置する。
EVAの上に、防水効果の高いバックシート24を設置する。バックシート24は本実施形態では防水防湿効果が高いようにPETシート/Al箔/PETシートの3層構造よりなる。
バックシート24までを所定位置に配置したものを、ラミネータにより減圧雰囲気で内部の脱気を行い約150〜160℃でプレスしながら、EVAを架橋させて密着させる。
(11)図5(a)
太陽電池モジュール6の裏側に端子箱23を接着剤で取付ける。
(12)図5(b)
銅箔と端子箱23の出力ケーブルとをハンダ等で接続し、端子箱23の内部を封止剤(ポッティング剤)で充填して密閉する。これで太陽電池パネル50が完成する。
(13)図5(c)
図5(b)までの工程で形成された太陽電池パネル50について発電検査ならびに、所定の性能試験を行う。発電検査は、AM1.5、全天日射基準太陽光(1000W/m)のソーラシミュレータを用いて行う。
(14)図5(d)
発電検査(図5(c))に前後して、外観検査をはじめ所定の性能検査を行う。
<第2実施形態>
図6は、本発明の光電変換装置の構成を示す概略図である。光電変換装置100は、タンデム型シリコン系太陽電池であり、基板1、透明電極層2、光電変換層3としての第1セル層91(非晶質シリコン系)及び第2セル層92(結晶質シリコン系)、中間コンタクト層5、及び裏面電極層4を備える。
第2実施形態に係る光電変換装置は、以下の工程により製造される。
第1実施形態と同様にして製膜されレーザーエッチングされた透明電極層2上に、光電変換層3の第1セル層91として、非晶質シリコン薄膜からなるp層、i層及びn層を、プラズマCVD装置により製膜する。SiHガス及びHガスを主原料にして、減圧雰囲気:30Pa以上1000Pa以下、基板温度:約200℃にて、透明電極層2上に太陽光の入射する側から非晶質シリコンp層31、非晶質シリコンi層32、非晶質シリコンn層33の順で製膜する。非晶質シリコンp層31は非晶質のBドープシリコンを主とし、膜厚10nm以上30nm以下である。非晶質シリコンi層32は、膜厚150nm以上500nm以下である。非晶質シリコンn層33は、非晶質シリコンに微結晶シリコンを含有するPドープシリコンを主とし、膜厚30nm以上100nm以下である。非晶質シリコンp層31と非晶質シリコンi層32の間には、界面特性の向上のためにバッファー層を設けても良い。
次に、第1セル層91の上に、第2セル層92として第1実施形態と同様の結晶質シリコンp層41、結晶質シリコンゲルマニウムi層42、及び、結晶質シリコンn層43を順次製膜する。
その後、第1実施形態と同様にして、光電変換層3上に裏面電極4を製膜する。
第2実施形態では、第1セル層91と第2セル層92の間に、接触性を改善するとともに電流整合性を取るために半反射膜となる中間コンタクト層5を設けても良い。中間コンタクト層5として、膜厚:20nm以上100nm以下のGZO(GaドープZnO)膜を、ターゲット:GaドープZnO焼結体を用いてスパッタリング装置により製膜する。
<第3実施形態>
第3実施形態に係る光電変換装置は、光電変換層として、基板側から順に第1セル層(非晶質シリコン系)、第2セル層(結晶質シリコン系)、第3セル層(結晶質シリコン系)を積層させて構成される。
第3実施形態に係る光電変換装置は、以下の工程により製造される。
まず、第2実施形態と同様にして、第1セル層として、非晶質シリコン薄膜からなるp層、i層及びn層を透明電極層上に製膜する。
第1セル層の上に、プラズマCVD装置により、減圧雰囲気:3000Pa以下、基板温度:180〜230℃、プラズマ発生周波数:40MHz以上100MHz以下にて、第2セル層としての結晶質シリコンp層、結晶質シリコンi層、及び、結晶質シリコンn層を順次製膜する。結晶質シリコンp層はBドープした微結晶シリコンを主とし、膜厚10nm以上50nm以下である。結晶質シリコンi層は微結晶シリコンを主とし、膜厚は1.2μm以上3.0μm以下である。結晶質シリコンn層はPドープした微結晶シリコンを主とし、膜厚20nm以上100nm以下である。
第2セル層の上に、第3セル層として、第1実施形態と同様の結晶質シリコンp層、結晶質シリコンゲルマニウムi層、及び結晶質シリコンn層を順次製膜する。
その後、第1実施形態と同様にして、光電変換層上に裏面電極を形成する。
なお、第3実施形態では、第1セル層と第2セル層との間、及び、第2セル層と第3セル層との間に、中間コンタクト層を設けることができる。
(実施例1)
実施例1及び比較例1乃至比較例4のシングル型太陽電池セルについて、結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度プロファイルを、図7示す。同図における縦軸はゲルマニウム濃度を示す。横軸は層構成を表す。
実施例1の結晶質シリコンゲルマニウムi層は、ゲルマニウム濃度がp層側30原子%、n層側20原子%の2層構造とした。比較例1の結晶質シリコンゲルマニウムi層は、ゲルマニウム濃度が20原子%の単層構造とした。比較例2の結晶質シリコンゲルマニウムi層は、ゲルマニウム濃度がp層側20原子%、n層側30原子%の2層構造とした。比較例3の結晶質シリコンゲルマニウムi層は、ゲルマニウム濃度がp層側から順に20原子%、30原子%、20原子%の3層構造とした。比較例4の結晶質シリコンゲルマニウムi層は、ゲルマニウム濃度がp層側から順に30原子%、20原子%、30原子%の3層構造とした。
実施例及び比較例のシングル型太陽電池セルでは、結晶質シリコンゲルマニウムi層の合計膜厚を1μmとした。結晶質シリコンp層の膜厚を40nmとした。n層は、膜厚30nmの非晶質シリコンn層と膜厚30nmの結晶質シリコンn層との2層構造とした。p層/i層界面及びi層/n層界面に、バッファー層として膜厚50nmの結晶質シリコン膜を形成した。
結晶質シリコンでは、結晶シリコンの信号が519cm-1〜520cm-1付近に現れる。結晶質シリコンゲルマニウムでは、ゲルマニウムが含まれることによって、結晶シリコンの信号の現れる波数が結晶質シリコンの場合よりも低波数側にシフトする。結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度は、ラマンスペクトルにおける結晶シリコンの信号が表れる波数から、以下の式1を用いて算出した。
Ge濃度(原子%)=[519−ピーク波数(cm-1)]/60 …[式1]
図8に、実施例1及び比較例1乃至比較例4の結晶質シリコンゲルマニウムi層の分光スペクトルを示す。同図において、横軸は波長、縦軸は分光感度である。実施例1は、比較例1と比較すると、波長450nmから650nmでの分光感度が低下したが、波長650nm以上での分光感度が向上した。比較例2、比較例3、及び比較例4は、比較例1と比較すると、波長800nm以下での分光感度が大幅に低下した。また、波長800nm以上の分光感度上昇効果も得られなかった。
実施例1及び比較例1乃至比較例4の太陽電池セルの性能を、表1に示す。
Figure 2010251424
実施例1と比較例2乃至比較例4とを比較すると、実施例1は、短波長感度が向上したために短絡電流が増加した。短絡電流増大と形状因子増大とにより、実施例1の太陽電池セルは、比較例2乃至比較例4の太陽電池セルよりも、変換効率が向上した。
実施例1では、比較例1よりも長波長感度が向上した。しかし、実施例1はi層の一部にGe濃度30%の製膜条件を用いているために比較例1に比べてi層中にGeが多く含まれており、それに起因すると思われる短波長感度の低下が見られたため、全体としての短絡電流は比較例1より低下したものと考えられる。同様の理由から形状因子の低下も見られ、短波長感度低下と形状因子低下とにより、実施例1の変換効率は比較例1よりも低下した。しかしながら、Ge濃度が高くなると短波長感度の低下がおこるため、Ge濃度25原子%の単層構造では比較例1に比べて短絡電流(Jsc)が相対的に低下し、形状因子も低下した。また、Ge濃度25原子%の単層構造の変換効率は比較例1に比べ低下するものと考えられる。よって、同量(同原子%)のGeを含む組成が均一なi層を用いた場合と比較すれば、本発明の実施例のようにGe濃度プロファイルを用いることによって、太陽電池セルの特性(変換効率、短絡電流、形状因子)を改善することができる。
(実施例2)
実施例2及び比較例5として、第2セル層の結晶質シリコンゲルマニウムi層が、それぞれ実施例1及び比較例1と同じタンデム型太陽電池を作製した。なお、実施例2及び比較例5では、第1セル層として、非晶質シリコンp層:膜厚15nm、非晶質シリコンi層:膜厚500nm、結晶質シリコンn層:膜厚60nmを形成した。第2セル層の結晶質シリコンp層の膜厚を40nmとした。n層は、膜厚30nmの非晶質シリコンn層と膜厚30nmの結晶質シリコンn層との2層構造とした。p層/i層界面及びi層/n層界面に、バッファー層として膜厚50nmの結晶質シリコン膜を形成した。
実施例2及び比較例5のタンデム型太陽電池セルについて、量子効率(Quantum Efficiency)計測結果から第2セル層の短絡電流を求めた。図9に、波長300nmから1200nmの光についての量子効率計測結果から求めた第2セル層の電流のバイアス依存性を示す。図10に、波長700nmから1200nmの光についてのQE計測結果から求めた第2セル層の電流のバイアス依存性を示す。図9及び図10において、横軸は印加電圧、縦軸は電流である。なお、試験では1cm角のセルを評価した。
図9及び図10に示すように、負バイアスを印加した場合、実施例2は比較例5よりも電流値が増大した。この結果は、p層側のゲルマニウム濃度がn層側のゲルマニウム濃度よりも高い結晶質シリコンゲルマニウムi層を設けることによって、発電電流量が向上したことを示している。実施例2は、波長700nmから1200nmの領域で、電流が約0.4mA/cm増加した。また、正バイアスを印加した場合、図9では実施例2の方が比較例5より電流量が低くなる。しかしながら、長波長光による発電電流量を示している図10では正バイアスを印加した場合でも実施例2の電流量の方が高く、実施例2の太陽電池セルで結晶質シリコンゲルマニウムi層の長波長感度が向上した効果を確認できた。
1 基板
2 透明電極層
3 光電変換層
4 裏面電極層
5 中間コンタクト層
6 太陽電池モジュール
31 非晶質シリコンp層
32 非晶質シリコンi層
33 非晶質シリコンn層
41 結晶質シリコンp層
42 結晶質シリコンゲルマニウムi層
43 結晶質シリコンn層
91 第1セル層
92 第2セル層
100 光電変換装置

Claims (3)

  1. 基板上に、光入射側から順に、p層と結晶質シリコンゲルマニウムi層とn層とが積層された光電変換層を備える光電変換装置であって、
    前記結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が、前記p層側から前記n層側に向かって段階状に減少するように変化していることを特徴とする光電変換装置。
  2. 一つの段階において変化する前記ゲルマニウム濃度の変化量が、10原子%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
  3. 前記p層との界面部分における前記結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が30原子%以上50原子%以下であり、
    前記n層との界面部分における前記結晶質シリコンゲルマニウムi層中のゲルマニウム濃度が1原子%以上20原子%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換装置。
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