JP2010245394A - 表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法 - Google Patents

表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法は、Mgを含むAl被膜の表面を結露させることにより、被膜中のMgを被膜表面に染み出させることを特徴とする。Mgを含むAl被膜の表面を結露させる方法としては、例えば、少なくとも被膜表面の温度が10℃〜80℃である、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石を、露点温度が15℃〜85℃の環境(但し露点温度は被膜表面の温度よりも高いことを条件とする)に曝露することにより、被膜表面を結露させる方法が挙げられる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性を向上させる方法に関する。
Nd−Fe−B系永久磁石に代表されるR−Fe−B系永久磁石やSm−Fe−N系永久磁石に代表されるR−Fe−N系永久磁石などの希土類系永久磁石は、資源的に豊富で安価な材料が用いられ、かつ、高い磁気特性を有していることから、特にR−Fe−B系永久磁石は今日様々な分野で使用されている。しかしながら、希土類系永久磁石は反応性の高い希土類金属:Rを含むため、大気中で酸化腐食されやすく、何の表面処理をも行わずに使用した場合には、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁気特性の劣化やばらつきを招く。さらに、錆が発生した磁石を磁気回路などの装置に組み込んだ場合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。
上記の点に鑑み、希土類系永久磁石に優れた耐食性を付与することを目的として、その表面にAl被膜を蒸着法などの気相めっき法によって成膜することが行われている。Al被膜は耐食性に優れていることに加え、部品組み込み時に必要とされる接着剤との接着信頼性に優れている(接着剤が本質的に有する破壊強度に達するまでに被膜と接着剤との間で剥離が生じにくい)ので、強い接着強度が要求される希土類系永久磁石に対して広く適用されおり、表面にAl被膜を有する希土類系永久磁石は、各種モータなどに組み込まれて使用されている。
各種モータの中でも、自動車用モータに組み込まれる希土類系永久磁石は、使用環境の温度変化が激しく、かつ、寒冷地域においては道路に散布される凍結防止剤に含まれる塩素イオンに晒されたり、海岸近辺では塩水に晒されたりすることから、最も過酷な使用環境にある磁石と言える。従って、自動車用モータに組み込まれる希土類系永久磁石には、最も過酷な耐食性試験である塩水噴霧試験を行っても優れた耐食性を発揮することが要求されるが、残念ながらAl被膜の耐塩水性は必ずしも十分なものではない。表面にAl被膜を有する希土類系永久磁石の耐塩水性を向上させる方法としては、Al被膜の表面に、化成処理被膜を積層形成したり(特許文献1)、金属酸化物被膜を積層形成したり(特許文献2)する方法が考えられるが、それでもなお耐塩水性が十分でないといった問題がある。このような問題に対処するため、本発明者は、特許文献3において、希土類系永久磁石に耐塩水性を付与する方法として、磁石の表面にMgを3質量%〜10質量%含むAl被膜を蒸着形成する方法を提案した。この方法は、希土類系永久磁石に耐塩水性を付与する方法として優れたものであることは自他共に認めるところであるが、昨今、希土類系永久磁石にはさらなる耐塩水性の向上が求められている。
特開2000−150216号公報 特開2000−232011号公報 特開2005−191276号公報
そこで本発明は、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、希土類系永久磁石の表面に蒸着形成したMgを含むAl被膜の表面を結露させることにより、被膜中のMgを被膜表面に染み出させることで、その耐塩水性が向上することを見出した。
上記の知見に基づいて完成された本発明の表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法は、請求項1記載の通り、Mgを含むAl被膜の表面を結露させることにより、被膜中のMgを被膜表面に染み出させることを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、結露粒径が10μm以上となるように被膜表面を結露させることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1または2記載の方法において、少なくとも被膜表面の温度が10℃〜80℃である、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石を、露点温度が15℃〜85℃の環境(但し露点温度は被膜表面の温度よりも高いことを条件とする)に曝露することにより、被膜表面を結露させることを特徴とする。
本発明によれば、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法を提供することができる。
希土類系永久磁石の表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成するために用いることができる蒸着装置の一例の模式的正面図である。 実施例1におけるMgを含むAl被膜の表面を結露させる前の被膜表面の元素マッピングを電界放出形走査電子線顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置を使用して行った結果である。 同、結露させた後の被膜表面の元素マッピングの結果である。
本発明の表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法は、Mgを含むAl被膜の表面を結露させることにより、被膜中のMgを被膜表面に染み出させることを特徴とするものである。本発明によれば、Mgを含むAl被膜の表面を結露させることで、被膜中のMgがそのイオン化傾向の高さやAlとの電位差腐食などに基づいて被膜から溶出して表面に染み出す現象を利用し、塩素イオンや塩水の磁石内部への浸入経路となりうる、蒸着被膜特有の柱状晶組織に由来する微細な結晶間空隙や被膜欠陥が存在する場合における当該欠陥に、被膜表面に染み出したMgを入り込ませたり、このような部分を被膜表面に染み出したMgで被覆したりすることにより、塩素イオンや塩水の磁石内部への浸入を効果的に阻止することができる。
本発明における希土類系永久磁石の表面へのMgを含むAl被膜の蒸着形成は、自体公知の方法で行うことができるが、望ましい方法としては、Mgを含むAlワイヤーを蒸着材料として加熱した溶融蒸発部に連続供給しながら蒸発させることで蒸着形成する方法が挙げられる。この方法は、Al被膜に含ませるMg量(例えば3質量%〜10質量%が望ましい。Mg量が少なすぎると耐塩水性が発揮されない恐れがあり、Mg量が多すぎると被膜中に高い応力分布が発生することで磁石と被膜との密着性が阻害される恐れがある)の制御が容易であり、例えば、特開2001−32062号公報に記載されているような表面処理装置を用いて行うことができる。図1はその模式的正面図であり、図略の真空排気系に連なる処理室(真空槽)1内の下部には、Mgを含むAl10を蒸発させる溶融蒸発部であるハース(蒸着材料を溶融させるための容器)2が、支持テーブル3上に立設されたハース支持台4上に複数個配設されている。また、処理室1内の上方には網状部材で形成された籠状の被処理物保持部5が回転軸6を中心に回転自在に2個並設されている。支持テーブル3の下方内部には、Mgを含むAlワイヤー11が繰り出しリール20に巻回保持されている。繰り出しリール20へのMgを含むAlワイヤー11の巻回方向を水平方向としているのは、ワイヤーの送り方向、即ち、鉛直方向と直交させることによって、送り出されるワイヤーがねじれたりぶれたりすることを防止するためである。Mgを含むAlワイヤー11の先端は、ハース2の内面に向かって臨ませた耐熱性の保護チューブ21によってハース2の上方に案内されている。保護チューブ21の一部には切り欠き窓22が設けられており、この切り欠き窓22に対応して設けられた一対の繰り出しギヤー23によって、Mgを含むAlワイヤー11をハース2内に所定の繰り出し速度で送り出し自在としている。この表面処理装置によれば、被処理物保持部5内に希土類系永久磁石30を収容し、矢示したように被処理物保持部5を回転させるとともに、Mgを含むAlワイヤー11を図略の加熱手段によって所定温度に加熱したハース2に連続供給しながらMgを含むAl10を蒸発させることで、被処理物保持部5内の希土類系永久磁石30の表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成することができる。
Alワイヤーに含ませるMg濃度は、3質量%〜10質量%が望ましい。3質量%未満であると希土類系永久磁石の表面に蒸着形成されるAl被膜に含まれるMg量が少なくなり、Al被膜の耐塩水性の向上に寄与するMg濃化相が形成されにくくなることで、Al被膜に優れた耐塩水性を付与できなくなる恐れがある一方、10質量%を超えるとワイヤーの硬度が高まることにより、ワイヤーを溶融蒸発部内に繰り出す作業性が悪くなったり、溶融蒸発部内で溶融されていない蒸着材料がスプラッシュを引き起こしたりする恐れがあるからである。なお、処理室内に酸素が存在すると、蒸着材料を溶融させた段階や蒸発させた段階で、蒸着材料や希土類系永久磁石の表面が酸化し、磁石の表面に密着性に優れたMgを含むAl被膜を形成することができない場合や、Mgが酸化することで、Al被膜に含まれるMg量が蒸着材料に含まれるMg量よりも減少する場合があるので、この点には留意すべきである。
以上の点に鑑みれば、Mgを含むAlワイヤーは水素を含むものが望ましい。蒸着材料を蒸発させた際、処理室内に水素を供給することができるので、別途の手段で処理室外部から水素を供給しなくても、処理室内を還元性雰囲気にして、例えば10−3Pa以上といったような酸素分圧下であっても、溶融させた段階や蒸発させた段階の蒸着材料の酸化を防止することができるからである。Mgを含むAlワイヤーの水素含有量は、1ppm〜20ppmが望ましく、2ppm〜10ppmがより望ましい。1ppm未満であると処理室内に水素を十分に供給することができない恐れがある一方、20ppmを超えると溶融蒸発部において水素がボイリングしてスプラッシュを引き起こす恐れがあるからである。
溶融蒸発部の加熱温度は、1300℃〜1500℃が望ましい。1300℃未満であると蒸着材料を効率よく溶融させることができない恐れがあるからである。蒸着材料を効率よく溶融させることができないと、Alの蒸気圧とMgの蒸気圧の違い(Mgの方が蒸気圧が高い)が、蒸着形成されるAl被膜の金属組成に多大な影響を与え、Al被膜に含まれるMg量が、Alワイヤーに含まれるMg量と大きく異なるといった現象が起こり、意図した金属組成のAl被膜を蒸着形成することができない場合がある。一方、1500℃を超えると周辺温度が高くなり過ぎることでワイヤーが軟化して図1における保護チューブ21の内部で詰まるなどするので、これを溶融蒸発部に円滑に連続供給することができなくなる恐れがあるからである。
Mgを含むAlワイヤーの溶融蒸発部への送り出し速度は、1g/分〜10g/分が望ましく、2g/分〜5g/分がより望ましい。1g/分未満であると蒸着材料を効率よく溶融させることができない恐れがある一方、10g/分を超えると溶融蒸発部内で溶融された蒸着材料が多くなり過ぎることでスプラッシュを引き起こす恐れがあるからである。
なお、Mgを含むAl被膜を希土類系永久磁石の表面に蒸着形成する方法は、真空蒸着法のように蒸着材料を単に加熱によって蒸発させて被膜を蒸着形成する方法であってもよいし、イオンプレーティング法のように蒸発したものをイオン化させて被膜を蒸着形成する方法であってもよい。
以上説明したように、希土類系永久磁石の表面へのMgを含むAl被膜の蒸着形成は、Mgを含む水素含有Alワイヤーを、加熱した溶融蒸発部に連続供給しながら蒸発させることで、容易に行うことができる。しかしながら、希土類系永久磁石の表面へのこのようなAl被膜の蒸着形成は、Mgを含むAlインゴットを用いた電子ビーム加熱による蒸着法(EB蒸着法)によっても行うことができる。但し、EB蒸着法による場合、スプラッシュを引き起こす恐れが強く、また、処理室外部から水素を供給するといった手段を講じなければ、Al被膜に含まれるMg量が、蒸着材料に含まれるMg量よりも減少しやすいこと、高い蒸気圧を有するMgは、溶融した蒸着材料から蒸発しやすいので、溶融した蒸着材料の金属組成が経時的に変化しやすいことなどの点には留意すべきである。
Mgを含むAl被膜の膜厚は、0.1μm〜50μmが望ましい。0.1μm未満であると十分な耐塩水性を付与することができない恐れがある一方、50μmを超えると磁石の小型化や有効体積の確保が困難になり、また、コストの面からも望ましくないからである。Al被膜の膜厚は、より望ましくは3μm〜25μmである。
なお、蒸着形成したAl被膜に対してピーニング処理することで耐塩水性の向上を図ることができる。この作用は、投射材をAl被膜の表面に衝突させることにより、Al被膜の緻密性が高まることによるものと考えられる。ピーニング処理は、例えば、投射材としてガラスビーズやスチールボールなどのAl被膜と同等以上の硬度を有する球状硬質粉末を使用し(中でもガラスビーズが好適である)、投射材を0.1MPa〜0.5MPaの投射圧でAl被膜に対して1分〜60分程度投射するようにして行えばよい。投射圧が0.1MPa未満であるとピーニング処理することの効果が十分に得られない恐れがある一方、投射圧が0.5MPaを超えるとAl被膜の面粗度の悪化を招く恐れがある。
本発明では、以上のようにして希土類系永久磁石の表面に蒸着形成したMgを含むAl被膜の表面を結露させることにより、被膜中のMgを被膜表面に染み出させる。Mgを含むAl被膜の表面を結露させる方法は特段限定されるものではなく、例えば、少なくとも被膜表面の温度が10℃〜80℃である、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石を、露点温度が15℃〜85℃の環境(但し露点温度は被膜表面の温度よりも高いことを条件とする)に曝露することにより、被膜表面を結露させる方法が挙げられる。この方法は、磁石の少なくとも被膜表面の温度と被膜表面を結露させる環境の露点温度の差を利用するものであるが、少なくとも被膜表面の温度が10℃〜80℃の磁石を別の環境から予め設定された被膜表面を結露させる環境に移すことで実施してもよいし、少なくとも被膜表面の温度が10℃〜80℃の磁石が置かれた環境の温度を、磁石の温度が追従できないような速度で上昇させることによって被膜表面を結露させる環境に変化させることで実施してもよい。被膜中のMgを効果的に溶出させて磁石表面に染み出させるためには、結露粒径が10μm以上となるように被膜表面を結露させることが望ましい。磁石の少なくとも被膜表面の温度と被膜表面を結露させる環境の露点温度の差が大きいほど結露粒径は大きくなる傾向にある。従って、両者の差は5℃以上であることが望ましい。また、被膜表面を結露させておく時間は、1分間〜48時間が望ましい。結露させておく時間を長くすることによって被膜中のMgを十分に磁石表面に染み出させることができる。一方、結露させておく時間を必要以上に長くすると、凝集した水蒸気が蒸着被膜特有の柱状晶組織に由来する微細な結晶間空隙や被膜欠陥が存在する場合における当該欠陥を通じて磁石表面に達し、磁石が腐食する原因となる恐れがあるので注意を要する。かかる観点からは、被膜表面の結露は、結露前後の磁石の残留磁束密度を比較すると、結露による残留磁束密度の低下が1.0%以下であることを条件に行うことが望ましい。なお、磁石の温度は、被膜表面のみならずその内部に至るまで全体が必ずしも10℃〜80℃である必要はないが、全体を一定の温度とすることにより、磁石が被膜表面を結露させる環境に曝露された後の磁石の急速な温度上昇を抑制し、磁石の温度が露点温度を超えることによる被膜表面の結露の蒸発を遅延させることができる。また、磁石の少なくとも被膜表面の温度と被膜表面を結露させる環境を制御し、被膜表面の結露とその蒸発が繰り返し行われるようにしてもよい。
なお、希土類系永久磁石の表面に蒸着形成したMgを含むAl被膜の表面を結露させる操作は、人為的に設定した環境を使用して行ってもよいが、被膜表面の結露は、自然発生的に起こるものであってもよい。例えば、露点温度が10℃〜80℃の環境は、梅雨時期の工場や倉庫の内部などにおいて形成される場合があるので、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石がこのような環境に置かれ、その後の気象の変化などによる温度変化によって被膜表面が結露するような態様であってもよい。また、例えば日本とタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアなどの東南アジア諸国との間での磁石の輸送においては、通常、その途中で磁石は0℃〜40℃の環境から当該環境の温度よりも高い露点温度の環境に移されることから、このような環境の変化によって被膜表面が結露するような態様であってもよい。
なお、本発明が適用される希土類系永久磁石としては、例えば、R−Fe−B系焼結磁石が挙げられるが、これに限定されるものではない。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例は、例えば、米国特許4770723号公報や米国特許4792368号公報に記載されているようにして、公知の鋳造インゴットを粉砕し、微粉砕後に成形、焼結、熱処理、表面加工を行うことによって得られた17Nd−1Pr−75Fe−7B組成(at%)の42mm×20mm×2mm寸法の焼結磁石(以下、磁石体試験片と称する)を用いて行った。また、蒸着装置は、図1に示したような、直径355mm×長さ1200mmのステンレス製メッシュ金網で作製された円筒形バレルを真空槽内に左右平行に2個有し、円筒形バレルを回転させるとともに、ワイヤー状蒸着材料を溶融蒸発部に連続供給しながら蒸着処理が行えるものを使用した。
(実施例1)
磁石体試験片に対し、サンドブラスト加工を行い、前工程の表面加工で生じた試験片の表面の酸化層を除去した。この酸化層が除去された磁石体試験片を各円筒形バレル内に1.5kgずつ収容し、真空槽内を1×10−1Paになるまで真空排気した後、Arガスを真空槽内の全圧が1.0Paになるように供給した。その後、バレルの回転軸を6.0rpmで回転させながら、バイアス電圧0.5kVの条件下、15分間グロー放電を行って磁石体試験片の表面を清浄化した。
続いて、Arガス圧1.0Pa、バイアス電圧1.0kVの条件下、蒸着材料として水素含有量が5ppmのMgを5質量%含むAlワイヤー(JIS A5356に準拠するもの)をワイヤー送り速度3.9g/分で連続供給しながら、これを加熱して蒸発させ(ハース温度:1400℃)、30分間蒸着を行い、磁石体試験片の表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した。
以上のようにして得られた、Mgを含むAl被膜を表面に有する磁石体試験片をブラスト加工装置に投入し、窒素ガスからなる加圧気体とともに、投射材として平均粒径が120μmでモース硬度が6の球状ガラスビーズ粉末を、投射圧0.15MPaにて5分間投射して、Mgを含むAl被膜に対してショットピーニングを行った。蛍光X線膜厚計(SFT−7000:セイコー電子社製)を使用して測定したショットピーニングを行ったMgを含むAl被膜の膜厚は7.3μmであった。なお、磁石体試験片とともに円筒形バレル内に収容したガラス板(35mm×10mm×1mm)の表面に蒸着形成されたAl被膜の組成を原子発光分析装置(ICPS−7500:島津製作所社製)を用いて測定したところ、Al被膜に含まれるMg量は6.2質量%であった。こうして得られたMgを含むAl被膜を表面に有する磁石体試験片に対し、35℃−5%NaCl−pH7.0条件(JIS Z 2371に準拠)の塩水噴霧試験(以下同じ)を行い、発錆の有無を観察した。その結果、試験開始から240時間経過後も発錆は観察されず、優れた耐塩水性を発揮した。この磁石体試験片のMgを含むAl被膜の表面の元素マッピングを電界放出形走査電子線顕微鏡(S−4300:日立ハイテクノロジーズ社製)とエネルギー分散型X線分析装置(Genesis2000:EDAX社製)を使用して行った結果を図2に示す(左は二次電子線像であり、中央はAlの分布であり、右はMgの分布である。以下同じ)。
次に、室温環境にあるMgを含むAl被膜を表面に有する磁石体試験片を、恒温恒湿試験機(LH−112:タバイエスペック社製)によって形成した露点温度が76℃の環境(温度が80℃で相対湿度が90%の湿潤雰囲気)に曝露し、被膜表面を24時間結露させた。その結果、曝露開始から5分後には被膜の全面が結露し、結露粒径は測定すると10μm以上であった。被膜表面を24時間結露させた磁石体試験片を装置から取り出し、大気中で自然乾燥させた後、塩水噴霧試験を行い、発錆の有無を観察した。その結果、試験開始から300時間経過後も発錆は観察されず、耐塩水性の向上が認められた。この磁石体試験片のMgを含むAl被膜の表面の元素マッピングの結果を図3に示す。図3から明らかなように、被膜表面を結露させたことで被膜中のMgが溶出して被膜表面に染み出し、Mgの表面分布量が多くなることがわかった。このことから、被膜表面を結露させたことによって耐塩水性が向上したのは、被膜表面に染み出したMgが、蒸着被膜特有の柱状晶組織に由来する微細な結晶間空隙や被膜欠陥が存在する場合における当該欠陥に作用し、これらに入り込んだりこれらを被覆したりすることで、被膜全体の耐塩水性を補強したことによるものと推察された。なお、被膜表面を結露させたことによる磁石の磁気特性の劣化は実用上、問題にならない程度であった(結露による残留磁束密度の低下:0.5%未満)。
本発明は、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
1 処理室
2 ハース(溶融蒸発部)
3 支持テーブル
4 ハース支持台
5 被処理物保持部
6 回転軸
10 Mgを含むAl(溶融した蒸着材料)
11 Mgを含むAlワイヤー
20 繰り出しリール
21 保護チューブ
22 切り欠き窓
23 繰り出しギヤー
30 希土類系永久磁石

Claims (3)

  1. 表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石の耐塩水性向上方法であって、Mgを含むAl被膜の表面を結露させることにより、被膜中のMgを被膜表面に染み出させることを特徴とする方法。
  2. 結露粒径が10μm以上となるように被膜表面を結露させることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 少なくとも被膜表面の温度が10℃〜80℃である、表面にMgを含むAl被膜を蒸着形成した希土類系永久磁石を、露点温度が15℃〜85℃の環境(但し露点温度は被膜表面の温度よりも高いことを条件とする)に曝露することにより、被膜表面を結露させることを特徴とする請求項1または2記載の方法。


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