JP2010241861A - 共重合ポリエステル樹脂およびその製造方法、ならびに接着剤 - Google Patents

共重合ポリエステル樹脂およびその製造方法、ならびに接着剤 Download PDF

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Abstract

【課題】難燃性とポリエステルフィルムへの接着性を保持しつつ、耐熱性を有し、汎用溶剤への溶解性を備えた共重合ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】多塩基酸成分として、(I)で示される有機リン化合物10〜45mol%、イタコン酸10〜45mol%、テレフタル酸10〜80mol%、アルコール成分として1,4−ブタンジオール50〜100mol%含み、樹脂中のリン原子含有量が1〜5質量%であり、数平均分子量10000〜60000、ガラス転移点が−30〜40℃、融点が50〜180℃であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。

【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性を有する共重合ポリエステル樹脂、並びにこれを用いた接着剤に関する。さらに詳しくは、特定構造の含リン化合物とジカルボン酸化合物が共重合されたポリエステル樹脂、ならびにその接着剤に関するものである。
従来、共重合ポリエステル樹脂に難燃性を付与する方法として、ハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモン等の難燃助剤を樹脂に混合したり、ハロゲン原子を含有するモノマー原料を樹脂中に共重合する方法が用いられている。しかし、ハロゲン系難燃剤および難燃化された樹脂自体の毒性や焼却時の環境負荷が大きいということが指摘されており、このような方法によって難燃化されたポリエステル樹脂は使用されなくなっている。
一方、リン系化合物をポリエステル樹脂に混練によって分散させることで、難燃性を付与する方法も提案されている。難燃性を発現させるには、通常、樹脂に対して20重量%程度添加する必要がある。このため、これらの難燃化された樹脂を、溶剤に溶かして接着剤として使用する場合には、リン系化合物の一部が沈降して溶液安定性が低下する、接着強度が低下するといった問題があった。
特許文献1には、ポリエステル中のリン原子含有率が500〜5000ppmであるリン化合物を用いて、優れた耐火性を有する繊維、フィルム、ボードなどを成形することのできるポリエステルの開示がある。特許文献2には、リン原子を含有したジカルボン酸成分を共重合し、リン原子を0.05〜5重量%含む共重合ポリエステル樹脂が、難燃性が優れる接着剤として好適に用いることができるとの開示がある。また、特許文献3には、結晶性を有すことを特徴とし、溶剤を用いないことから環境に対する負荷が少ない接着剤として好適に用いることができるとの開示がある。
しかしながら、特許文献1、特許文献2に挙げるポリエステル樹脂は、結晶性がないないために耐熱性に劣る。また、特許文献3に挙げるポリエステル樹脂は環境への負荷は少ないものの、汎用溶剤に対する溶解性がないため接着剤として使用する際に、特定の設備投資をする必要があり、溶剤可溶型接着剤に比べると作業性に劣る。環境に対する負荷の軽減のために溶剤不溶型のホットメルトタイプの接着剤が求められているが、まだまだ作業性と設備投資の必要があるため従来の溶剤可溶タイプの接着剤が求められている。また、耐熱用途には高い融点を有する樹脂が求められている。
特公昭55-41610号公報 特許第3191154号公報 特開2001-288446号公報
本発明は、難燃性とポリエステルフィルムへの良好な接着性を保持しつつ、耐熱性を有し、汎用溶剤への溶解性を備えた共重合ポリエステル樹脂及びそれを用いた接着剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、多塩基酸成分として、特定の有機リン化合物、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を用い、多価アルコール成分として1,4−ブタンジオール、グリコールを用いた共重合ポリエステル樹脂は、耐熱性を有し、かつ溶剤に対する溶解性を得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1)多塩基酸成分と多価アルコール成分から構成される共重合ポリエス テル樹脂であって、多塩基酸成分として、下記一般式(I)で示される有機リン化合物10〜45mol%、イタコン酸10〜45mol%、テレフタル酸10〜80mol%、イソフタル酸0〜30mol%、セバシン酸、もしくはアジピン酸0〜40mol%を含み、多価アルコール成分として、1,4−ブタンジオール50〜100mol%含み、共重合ポリエステル樹脂中のリン原子含有量が1〜5質量%であり、数平均分子量10000〜60000、ガラス転移点が−30〜40℃、融点が50〜180℃であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(2)1,4−ブタンジオール以外の多価アルコール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールから選ばれる1種以上のグリコールを含むことを特徴とする(1)の共重合ポリエステル樹脂。
(3)予め一般式(I)で示される有機リン化合物とイタコン酸を反応させ反応生成物を得た後、他の多塩基酸成分、多価アルコール成分を追加配合し、重合することを特徴とする(1)または(2)の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
(4)(1)または(2)の共重合ポリエステル樹脂を、汎用の有機溶剤に溶解してなる共重合ポリエステル樹脂系接着剤。
(5)(4)の共重合ポリエステル樹脂系接着剤を塗布してなる積層体であって、(A)ポリエチレンテレフタレートフィルム、またはポリエチレンシート、(B)共重合ポリエステル樹脂系接着剤、(C)金属板の順に積層されていることを特徴とする積層体。
(6)(5)の積層体からなるフレキシブルフラットケーブル。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂材料同士あるいはポリエステル樹脂材料と銅またはアルミ、ブリキ等の金属とを接着する接着剤用として有用であり、得られた積層体は優れた難燃性を有する。また、融点が50〜180℃であるため高い耐熱性を有する共重合ポリエステル樹脂とすることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における共重合ポリエステル樹脂とは、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成され、各1種類の多塩基酸成分と多価アルコール成分とに加えて、さらに1種類以上の多塩基酸成分もしくは多価アルコール成分もしくはオキシ酸成分を含むポリエステル系樹脂の総称である。
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分としては、多塩基酸成分100mol%に対して、下記一般式(I)で示される有機リン化合物10〜45mol%、イタコン酸10〜45mol%、テレフタル酸10〜80mol%、イソフタル酸0〜50mol%、セバシン酸、もしくはアジピン酸0〜40mol%を含むことが必要である。
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分として用いる有機リン化合物としては、下記一般式(1)で示される構造を有するものを用いる必要があり、側鎖に9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン(三光株式会社製
HCA)を有することが必要である。側鎖に9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンを有さない有機リン化合物の場合、難燃性に必要なリン含有量を得るために、多量の有機リン化合物を配合しなければならず、共重合ポリエステル樹脂の重合において多量の有機リン化合物の配合は重合反応の阻害となり、十分な重合度まで高めることが出来ず、接着剤として十分な接着性能を有する共重合ポリエステル樹脂を得ることが出来ない。
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分としては、多塩基酸成分100mol%に対して、 一般式(I)で示す有機リン化合物の配合が10〜45mol%である必要がある。一般式(I)で示す有機リン化合物の配合が、20mol%未満であると、十分な難燃性を付与することができないこととなり、また、有機リン化合物の配合が、45mol%を越えると重合性が低下していまい、十分な分子量を得ることができなくなり、本発明の難燃性に優れる、共重合ポリエステル樹脂が得られない。
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成するその他の多塩基酸成分としては、多塩基酸成分100mol%に対して、イタコン酸10〜45mol%、テレフタル酸10〜80mol%、イソフタル酸0〜30mol%、セバシン酸、もしくはアジピン酸0〜40mol%を含む必要がある。
ここで、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分として、一般式(1)で示す有機リン化合物とイタコン酸は、当量で用いる必要がある。また、本発明の共重合ポリエステル樹脂の重合過程において、一般式(1)で示す有機リン化合物とイタコン酸は、他の多塩基酸成分、多価アルコール成分との配合を行う前に、予め、一般式
(1)で示す有機リン化合物とイタコン酸は反応し、反応生成物が作られていなければならない。前記反応生成物と、他の多塩基酸成分、多価アルコール成分との配合を行うことで、本発明の共重合ポリエステル樹脂を製造することができる。もし、一般式(1)で示す有機リン化合物とイタコン酸からなる反応生成物が得られない状態で、本発明の共重合ポリエステル樹脂の重合に必要なモノマー成分を一括仕込み、共重合ポリエステル樹脂を得たとしても、一般式(1)で示す有機リン化合物が、本発明の共重合ポリエステル樹脂の、ポリマー構造中に導入されず、また、共重合ポリエステル樹脂の重合度が十分に上がらないため、必要とする数平均分子量の共重合ポリエステルは得られず、接着性が低下する。さらに、有機リン化合物のブリードや脱離が生じるためか、共重合ポリエステル樹脂に濁りが生じ、透明性に優れる接着剤は得られない。
また、一般式(1)で示す有機リン化合物とイタコン酸からなる反応生成物の市販品としては、前記反応生成物をエチレングリコールに溶解させた溶解反応性生物があるが、これらを用いて、本発明の共重合ポリエステル樹脂の重合を行ったとしても、エチレングリコールが、本発明の共重合ポリエステル樹脂の結晶性を阻害するため、耐熱性に優れる共重合ポリエステル樹脂が得られない。したがって、一般式(1)で示す有機リン化合物とイタコン酸のみを反応させた反応生成物を用いることが、本発明の共重合ポリエステル樹脂を得るためには最も重要である。
多塩基酸成分として、イタコン酸の配合が10mol%未満であると、有機リン化合物の配合量も10mol%以下となることとなり、45mol%を越えると重合時にゲル化を引き起こすこととなり問題である。テレフタル酸の配合が10mol%未満であると、共重合ポリエステル樹脂の接着性能が低下し、テレフタル酸の配合が80mol%を越えると溶剤に対する溶解性が低下する。また、イソフタル酸の配合が50mol%を越えると靭性が失われて加工性が低下し、セバシン酸、もしくはアジピン酸の配合が40mol%を越えると重合性が低下し生産性が落ちることとなり問題である。
また、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、もしくはアジピン酸以外のジカルボン酸成分も本発明の目的を阻害しない範囲で用いる事ができる。そのようなジカルボン酸成分を具体的に例示すれば、芳香族ジカルボン酸としては、ジフェン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、多塩基酸成分100mol%に対して、1,4−ブタンジオール50〜100mol%を含むことが必要である。
多価アルコール成分として、1,4−ブタンジオールの配合が50mol%未満であると、融点がない。また、1,4−ブタンジオールが80mol%以上の場合に酸成分が芳香族のみだと、溶剤に対する溶解性が低下することとなり問題である。また、1,4−ブタンジオール以外の多価アルコール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールから選ばれる1種以上のグリコールを用いることができ、それらを用いる場合は、0〜50mol%の範囲で用いることができる。
1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサメチレングリコール、トリエチレングリコール以外の多価アルコール成分としては、本発明の目的を阻害しない範囲で次のグリコールを用いることができる。そのようなグリコール成分を具体的に例示すれば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリノナンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタン)ジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,10−デカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール、ビスフェノール−Aのポリエチレングリコール付加物、ビスフェノール−Aのポリプロピレングリコール付加物、ビスフェノール−Aのポリテトラメチレングリコール付加物、ビスフェノール−Aのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノール−Aのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノール−Sのエチレンオキサイド付加物、ダイマージオール等が挙げられる。なお、ポリエチレングリコール等の結晶性を阻害させるグリコール類は、多量に用いると本発明の耐熱性に優れる共重合ポリエステル樹脂を得ることができないために、もし、用いる場合は、多価アルコール成分中、20mol%未満で用いることが好ましい。
本発明において得られる共重合ポリエステル樹脂が十分な難燃性を示すには、
多塩基酸成分100mol%に対して、 一般式(I)で示す有機リン化合物を10〜45mol%で配合することが必要である一方で、共重合ポリエステル樹脂中にリン原子を1〜5質量%含有させる必要がある。
このような共重合ポリエステル樹脂を得るためには、本発明の共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は、10000〜60000である必要があり、好ましくは15000〜40000である。数平均分子量が10000未満では、接着剤を塗布して貼り合わせを行った際の十分な接着性が得られず、60000を越えると、溶剤に溶解させた場合に溶液が粘調になり基材へ塗布した場合に作業性が落ちるため好ましくない。
共重合ポリエステル樹脂中に含まれるリン原子の含有量は、得られた共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量、リンの原子量(=30.97)、有機リン化合物のモル分率の関係より、次式によって求められる。
従って、本発明において、多塩基酸成分として、有機リン化合物を10〜45mol%配合し共重合を行った共重合ポリエステル樹脂は、共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量を10000〜60000とすることで、共重合ポリエステル樹脂の重合反応を阻害することなく、フレキシブルフラットケーブル等に接着剤として用いた際の接着性を低下させることなく、共重合ポリエステル樹脂中に含まれるリン原子の含有量を1〜5質量%以上とすることができるために難燃性に優れた共重合ポリエステル樹脂とすることができる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂中のリン原子の含有量が、1質量%未満であると、本発明の共重合ポリエステル樹脂を熱プレスし、得られた500μmの試験片について、UL規格 UL−94に記載の薄手材料垂直燃焼性試験に準拠し評価した場合、難燃性がVTM−0を満たさないために、本発明の共重合ポリエステル樹脂系接着剤を、フレキシブルフラットケーブル等に用いた際に、難燃性が不足し不適である。
本発明の共重合ポリエステル樹脂としては、ガラス転移点が−30〜40℃、融点が50〜180℃である必要がある。ガラス転移点が−30℃未満であると、 樹脂の払出し時に取り扱いが困難となり生産性に問題が生じることとなり、ガラス転移点が40℃を越えると、接着性が低下することとなり問題である。融点が50未満であると、耐熱性が低下することとなり、融点が180℃であると、接着性が低下することとなり問題である。なお、融点を有さない共重合ポリエステル樹脂は、非晶性であると判断され、本発明では、耐熱性が低いこととなり不適である。共重合ポリエステルが結晶性を有さず非晶性であると判断するには、昇温速度10℃/minで示差走査熱量測定装置を用いて測定した融点に相当する結晶融解熱量が 0.25cal/g未満である場合を非晶性である
と定義するものとする。
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、上記のジカルボン酸成分や二価アルコール成分以外に、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上の多価アルコール成分、あるいはトリメリット酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸成分、さらにはε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、p−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシイソフタル酸等のオキシ酸成分が含まれていてもよい。これらは本発明の目的を逸脱しない範囲で、樹脂の要求性能に応じて1種類もしくは2種類以上含まれていてもよい。
上記の共重合比率の範囲内で1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサメチレングリコール、トリエチレングリコール、一般式(I)の有機リン化合物を用いて重合すれば、難燃性を有し、さらに接着剤用樹脂に求められる汎用の溶剤に対する溶解性を有しつつ耐熱性を有する共重合ポリエステル樹脂が得られる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を得るための製造方法としては、特に限定されないが、直接エステル化法、エステル交換法等の溶融重合法による公知の共重合ポリエステル樹脂の製造方法によって製造することができる。
なお、共重合ポリエステル樹脂を製造する際のジカルボン酸成分の原料としては、ジカルボン酸をそのまま用いることもできるが、ジカルボン酸のエステル誘導体やカルボン酸無水物を用いてもよい。
また、共重合ポリエステル樹脂を製造する際の触媒としては、公知の金属化合物を用いることができる。そのような金属化合物としては、テトラブチルチタネ−トなどの有機チタン酸化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどが挙げられる。その際の触媒使用量は、生成する共重合ポリエステル樹脂100質量%に対し、1.0質量% 以下で用いるのが好ましい。なお、上記の触媒は1種類で用いることもできるが、2種類以上混合して用いてもよい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、接着剤の主成分として用いられるものであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂に対して良好な接着性を有する。また、ポリエステル系樹脂以外の樹脂、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド樹脂等に対しても良好な接着性を有し、さらには銅、鉄、アルミニウム、ブリキ等の金属に対しても良好な接着性を有する。
本発明の接着剤としては、本発明の共重合ポリエステル樹脂が有機溶剤に溶解されてなるものである。本発明の接着剤に用いられる有機溶剤としては、本発明の共重合ポリエステル樹脂を溶解する有機溶剤であればよく、特に限定されるものではないが、具体的に例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤、酢酸エチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、ブチルセルソルブ、エチルセルソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素が挙げられる。なお、有機溶剤としては、1種類のみを使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
また、本発明の接着剤には、その用途に応じて、共重合ポリエステル樹脂以外の樹脂や硬化剤が含まれていてもよい。そのような共重合ポリエステル樹脂以外の樹脂としては、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
また、本発明の接着剤には、必要に応じて、ハジキ防止剤、レベリング剤、消泡剤、顔料分散剤、滑剤等の各種の添加剤や、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ等の顔料が配合されていてもよい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、融点が50〜180℃であり、かつ難燃性に優れる共重合ポリエステル樹脂であるため、それらを有機溶剤に溶解し得られる接着剤は、難燃性が必要とされる電気分野、電子分野、機械分野、建築分野、自動車分野で使用する共重合ポリエステル樹脂接着剤として好適に用いることができる。また、耐熱性があるため、特に、耐熱性が必要とされる自動車等の部品に用いる共重合ポリエステル樹脂接着剤として利用することができ、各種の樹脂からなる材料同士の接着や、樹脂材料と金属材料との接着に用いることができ、液状であるために被着体の形状を限定することなく、例えばフィルム状、板状、円筒状、繊維状等の色々な形状の材料に塗布して使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形および応用が可能である。なお、共重合ポリエステル樹脂の特性については、下記の方法で測定あるいは評価した。
1.測定方法
(a)共重合ポリエステル樹脂の構成
プロトンNMR分析装置(日本電子社製、JEOL LAMDBA300WB型)を用いて、樹脂の構成を分析した。酸成分およびグリコール成分それぞれを100mol%とした。
(b)共重合ポリエステル樹脂のガラス転移点と融点
示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、Diamond DSC型)を用い、昇温速度10℃/minで測定して求めた。
(c)共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量
高速液体クロマトグラフ(島津製作所社製)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラムにより、検出器に示差屈折計検出器RID−6Aを用いて測定した。溶媒はテトラヒドロフランを使用した。ポリスチレン換算分子量を求め、共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量とした。
(d)溶解性
得られた樹脂を、トルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(重量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30重量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。総重量が50gになるようサンプルを調整し、50℃に30分加温した後、ペイントシェーカーで30分攪拌することを五回繰り返した後、1日静置し、内容物が溶解しているか否かの判断を行なった。溶剤に対する溶解性は、各種溶剤のうち一つ以上に溶解したものを合格とした。
(e)難燃性
UL規格 UL−94に記載の薄手材料垂直燃焼性試験に準拠して評価した。評価サンプルは共重合ポリエステル樹脂を、温度120℃ 、圧力1kgf/cm、時間30秒の条件で熱プレスを行い、十分に冷却することで、厚さ500μmの試験片を作成した。なお、熱プレス時に、試験片がプレス板に圧着しないように、試験片とプレス板間にポリテトラフルオロエチレン製シートを挟み込み熱プレスを行った。難燃性の評価基準としては、VTM−0を合格とした。
(d)接着強度
共重合ポリエステル樹脂を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(重量比8/2)に30重量%の濃度となるように溶解し、38μmのPETフィルム上に溶液を塗布後、溶媒を除去して、10μm厚の接着剤層を形成した。次いで、接着剤層を形成したPETフィルム同士を温度120℃、圧力1kgf/cm2、時間30秒の条件で熱プレスすることにより、(PETフィルム)/(共重合ポリエステル樹脂の接着剤層)/(PETフィルム)からなる積層体Aを得た。また、上記の方法で得た接着剤層を形成したPETフィルムを金属板上に重ね、温度120℃、圧力1kgf/cm2、時間30秒の条件で熱プレスすることにより、(PETフィルム)/(共重合ポリエステル樹脂の接着剤層)/(金属板)からなる積層体Bを得た。なお、金属板としては、銅、ブリキ、アルミのいずれかの材質の板を用い、いずれかの材質の厚み2mmの金属板を用いて評価を行った。
得られた積層体を精密万能材料試験機(インテスコ社製2020型)にて温度20℃×相対湿度60%RHの雰囲気下、引張速度50mm/分でT字剥離試験を行なった。積層体Aについては5N/cm以上、積層体Bについては3N/cm以上を合格とした。
2.共重合ポリエステル樹脂の製造
実施例1
予め式(I)の有機リン化合物43g、イタコン酸41g、ナトリウムメトキシド0.5gを反応器に仕込み、 系内を窒素に置換した後、撹拌しながら190℃に加熱し2時間撹拌を継続した。その後、テレフタル酸74g、セバシン酸71g、1,4−ブタンジオール122g、反応器に仕込み、系内を窒素に置換した後、撹拌しながら反応器を250℃に加熱してエステル化反応を行った。続いて、触媒としてテトラブチルチタネートを反応器に仕込み、100Paに減圧し、250℃で3時間重縮合反応を行ない共重合ポリエステル樹脂P−1を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が−8℃、融点114℃数平均分子量21000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
実施例2
テレフタル酸50g、イソフタル酸10g、式(I)の有機リン化合物65g、イタコン酸62g、1,4−ブタンジオール104g、トリエチレングリコール30g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−2を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が−10℃、融点93℃、数平均分子量23000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
実施例3
原料の仕込みを、テレフタル酸50g、イソフタル酸15g、アジピン酸37g、式(I)の有機リン化合物76g、イタコン酸72g、1,4−ブタンジオール90g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、トリエチレングリコール30g、ナトリウムメトキシド0.5g、に変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−3を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が5℃、融点85℃、数平均分子量22000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
実施例4
原料の仕込みを、テレフタル酸50g、イソフタル酸22g、アジピン酸37g、式(I)の有機リン化合物80g、イタコン酸76g、1,4−ブタンジオール86g、1,4−シクロヘキサンジメタノール29g、トリエチレングリコール22g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−4を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が10℃、融点121℃、数平均分子量25000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
実施例5
原料の仕込みを、テレフタル酸33g、イソフタル酸8g、アジピン酸51g、式(I)の有機リン化合物86g、イタコン酸83g、1,4−ブタンジオール63g、1,4−シクロヘキサンジメタノール22g、トリエチレングリコール30g、1,6−ヘキサメチレングリコール12g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−5を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が14℃、融点134℃、数平均分子量20000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
実施例6
テレフタル酸66g、イソフタル酸42g、式(I)の有機リン化合物22g、イタコン酸21g、1,4−ブタンジオール72g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−6を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が21℃、融点145℃、数平均分子量23000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
実施例7
テレフタル酸33g、アジピン酸81g、式(I)の有機リン化合物97g、イタコン酸93g、1,4−ブタンジオール90g、1,4−シクロヘキサンジメタノール72g、トリエチレングリコール30g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−7を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が4℃、融点112℃、数平均分子量24000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
実施例8
テレフタル酸58g、アジピン酸35g、式(I)の有機リン化合物32g、イタコン酸31g、1,4−ブタンジオール63g、1,4−シクロヘキサンジメタノール43g、トリエチレングリコール30g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−8を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が2℃、融点127℃、数平均分子量28000だった。それらをまとめた結果を表1に示す。
比較例1
原料の仕込みを、テレフタル酸100g、式(I)の有機リン化合物86g、イタコン酸83g、1,4−ブタンジオール144g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−9を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が66℃、数平均分子量24000だった。それらをまとめた結果を表2に示す。
比較例2
原料の仕込みを、テレフタル酸50g、イソフタル酸33g、セバシン酸40g、式(I)の有機リン化合物65g、イタコン酸62g、エチレングリコール81gナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル
樹脂P−10を得た。得られた樹脂は、表2に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が4℃、数平均分子量19000だった。それらをまとめた結果を表2に示す。得られた樹脂は融点が観測されなかった。
比較例3
原料の仕込みを、テレフタル酸75g、イソフタル酸33g、式(I)の有機リン化合物32g、イタコン酸30g、エチレングリコール31g、1,4−シクロヘキサンジメタノール72g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−11を得た。得られた樹脂は、表2に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が−5℃、数平均分子量25000だった。それらをまとめた結果を表2に示す。得られた樹脂は融点が観測されなかった。
比較例4
原料の仕込みを、テレフタル酸75g、イソフタル酸33g、式(I)の有機リン化合物32g、イタコン酸30g、1,4−ブタンジオール72g、1,4−シクロヘキサンジメタノール58g、トリエチレングリコール30g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−12を得た。得られた樹脂は、表2に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が9℃、融点96℃、数平均分子量20000だった。それらをまとめた結果を表2に示す。
比較例5
原料の仕込みを、テレフタル酸135g、イソフタル酸21g、式(I)の有機リン化合物21g、イタコン酸21g、1,4−ブタンジオール72g、トリエチレングリコール30g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−13を得た。得られた樹脂は、表2に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が9℃、数平均分子量26000だった。それらをまとめた結果を表2に示す。得られた樹脂は融点が観測されなかった。
比較例6
原料の仕込みを、テレフタル酸17g、イソフタル酸50g、セバシン酸40g、式(I)の有機リン化合物128g、イタコン酸122g、1,4−ブタンジオール72g、トリエチレングリコール16g、1,6−ヘキサメチレングリコール24g、ナトリウムメトキシド0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル樹脂P−14を得た。得られた樹脂は、表2に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が56℃、融点119℃,数平均分子量9000だった。それらをまとめた結果を表2に示す。
比較例7
テレフタル酸74g、セバシン酸71g、式(I)の有機リン化合物43g、イタコン酸41g、1,4−ブタンジオール122g、ナトリウムメトキシド0.5gを一括仕込して、共重合ポリエステル樹脂の重合を行った以外は、実施例1と同様の操作を行って共重合ポリエステル樹脂P−15を得た。得られた樹脂は、表1に示す樹脂構成であり、ガラス転移点が−5℃、融点118℃数平均分子量9000だった。また、得られた樹脂は濁っていた。それらをまとめた結果を表2に示す。
3.共重合ポリエステル樹脂接着剤の作成
実施例9
実施例1で得られた共重合ポリエステル樹脂P−1をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/金属板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。
実施例10〜24
実施例2〜8で得られた共重合ポリエステル樹脂P−2〜P−8をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/銅板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。
比較例8
比較例1で得られた共重合ポリエステル樹脂P−9をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。しかし、余裕材に対する溶解性がなく、接着剤を作成することができなかった。そのため、接着性および難燃性の試験は行なっていない。
比較例9
比較例2で得られた共重合ポリエステル樹脂P−10をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/金属板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。
比較例10
比較例3で得られた共重合ポリエステル樹脂P−11をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/金属板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。難燃性試験ではVTM−2となり、十分な難燃性は得られなかった。
比較例11
比較例4で得られた共重合ポリエステル樹脂P−12をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/金属板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。難燃性試験ではVTM−1となり、十分な難燃性は得られなかった。
比較例12
比較例5で得られた共重合ポリエステル樹脂P−13をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/金属板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。
比較例13
比較例6で得られた共重合ポリエステル樹脂P−14をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/金属板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。十分な接着性は得られなかった。
比較例14
比較例7で得られた共重合ポリエステル樹脂P−15をトルエン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比8:2)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解させて溶解性の試験を行った。得られた溶解品は、透明性がなく濁っていた。また、得られた共重合ポリエステル樹脂接着剤を用いて、PET/樹脂/PET、およびPET/樹脂/金属板の剥離強度の測定を行ない、接着性の評価を行なった。また、難燃性の試験も行なった。溶解性試験の結果を表3に、接着性試験と難燃性試験の結果を表4に示す。
P−1〜P−8は、本願で規定する所定の配合で共重合ポリエステル樹脂の重合を行ったために、難燃性と融点、有機溶剤に対する溶解性を有する樹脂であり、また、実施例17〜21に示すように、それら共重合ポリエステル樹脂から得られた接着剤は、PETフィルム同士の接着、またはPET/金属板の接着においても十分な接着性能を示し、さらに、難燃性能も良好であった。
比較例1は、本願で規定する配合ではなかったために、得られた共重合ポリエステル樹脂P−9は有機溶剤に完全に溶解しなかった。そのため、接着性の評価は行わなかった。
比較例2は1,4−ブタンジオールを含まないために、得られた共重合ポリエステル樹脂P−10は、融点が観測されなかった。
比較例3は1,4−ブタンジオールを含まないために、得られた共重合ポリエステル樹脂P−11は、融点が観測されなかった。
比較例4は共重合ポリエステル樹脂P−12中のリン量が1質量%以下であったため、十分な難燃性が得られなかった。
比較例5は1,4−ブタンジオールが80mоl%で酸成分が芳香族のみであるため、得られた共重合ポリエステル樹脂P−13は、融点が観測されなかった。
比較例6は共重合ポリエステル樹脂P−14中の有機リン化物(1)の含有量が45mоl%以上であったため、十分な接着強度が得られなかった。
比較例7はイタコン酸と有機リン化合物を予め反応させないで、原料の配合を行ったために、得られた共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は低く、したがって、接着剤として用いた際の剥離強度が低かった。

Claims (6)

  1. 多塩基酸成分と多価アルコール成分から構成される共重合ポリエステル樹脂であって、多塩基酸成分として、下記一般式(I)で示される有機リン化合物10〜45mol%、イタコン酸10〜45mol%、テレフタル酸10〜80mol%、イソフタル酸0〜30mol%、セバシン酸、もしくはアジピン酸0〜40mol%を含み、多価アルコール成分として、1,4−ブタンジオール50〜100mol%含み、共重合ポリエステル樹脂中のリン原子含有量が1〜5質量%であり、数平均分子量10000〜60000、ガラス転移点が−30〜40℃、融点が50〜180℃であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
  2. 1,4−ブタンジオール以外の多価アルコール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールから選ばれる1種以上のグリコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂。
  3. 予め一般式(I)で示される有機リン化合物とイタコン酸を反応させ反応生成物を得た後、他の多塩基酸成分、多価アルコール成分を追加配合し、重合することを特徴とする請求項1、または2に記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の共重合ポリエステル樹脂を、汎用の有機溶剤に溶解してなる共重合ポリエステル樹脂系接着剤。
  5. 請求項4に記載の共重合ポリエステル樹脂系接着剤を塗布してなる積層体であって、(A)ポリエチレンテレフタレートフィルム、またはポリエチレンシート、(B)共重合ポリエステル樹脂系接着剤、(C)金属板の順に積層されていることを特徴とする積層体。
  6. 請求項5に記載の積層体からなるフレキシブルフラットケーブル。
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