JP2010222462A - 耐薬品性に優れるスチレン系樹脂組成物及びこれを用いて形成された成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性、剛性、耐熱性、耐衝撃性及び寸法安定性に加え、優れた耐薬品性及び耐油性が付与されたポリスチレン系樹脂組成物、及びこれを用いて形成された成形体を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂(A)、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)、及びスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)の合計を100質量部とした場合に、ポリスチレン系樹脂(A)が50〜97質量部、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)が49〜2質量部、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)が30〜1質量部、そして任意にスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)が0〜40質量部含まれることを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ポリスチレン系樹脂(A)、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)、及びスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)の合計を100質量部とした場合に、ポリスチレン系樹脂(A)が50〜97質量部、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)が49〜2質量部、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)が30〜1質量部、そして任意にスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)が0〜40質量部含まれることを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐薬品性及び耐油性に優れる、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体及び任意にスチレン系ブロック共重合体ゴムを含む樹脂組成物、並びにこれを用いて形成された成形体に関する。
ポリスチレン系樹脂は成形加工が容易であること、軽量であること、剛性が高い等、良好な物性バランスを有する安価な汎用樹脂として、食品包装材料や家電製品、工業部品、家庭用品等に広く使用されている。特に食品包装用途において、熱成形、真空成形等により、押出しシートや押出し発泡シートから各種の食品容器が製造されている。このようにして製造された容器は、多種の食品と接触するため、該食品容器を構成するポリスチレン系樹脂に亀裂が生じたり、破断したりすることがある。また、食品用途以外として、例えば洗面化粧台に使用するポリスチレン系樹脂には、クレンジングオイル等の化粧品に対する耐薬品性が要求されている。
そこで、これまで、ポリスチレン系樹脂の耐薬品性や耐油性を改善するために種々の検討がなされてきた。例えば、耐薬品性に優れる他の樹脂をポリスチレン系樹脂に配合する方法がある。他の樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂(以下、特許文献1〜3参照)やシンジオタクチックポリスチレン(以下、特許文献4参照)が挙げられる。
しかしながら、ポリスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物では、両樹脂の相溶性が悪く、単純ブレンド品では、機械的強度が低下し、層状剥離も発生して、実用に耐えるものではない。そこで、相溶性を向上させるため、スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴムやその水素添加重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体やその水素添加重合体、又はエチレン−オクテン共重合体等を更に添加しているが、十分に満足できるものではない。すなわち、ポリスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物においては、耐薬品性や耐油性を向上させるために、相当量のオレフィン系樹脂を混練する必要があるため、ポリスチレン系樹脂の特徴である剛性、耐熱性及び寸法安定性がかえって損なわれてしまうという問題がある。
一方、ポリスチレン系樹脂にシンジオタクチックポリスチレンを配合する場合には、相溶性は比較的良好であるが、成形性や寸法安定性に劣る。また、成形時には結晶性であるシンジオタクチックポリスチレンを溶融及び結晶化させる必要があるため、該樹脂組成物を、融点(約250℃)以上である約270℃以上に溶融し、そして金型温度を100℃程度に設定しなければならない。通常のポリスチレン(アタクチック)系樹脂は、220℃程度で溶融され、金型温度50℃以下でも十分に成形できることを考えると、ポリスチレン系樹脂にシンジオタクチックポリスチレンを配合した樹脂組成物は熱劣化する可能性がある。また、ポリスチレン系樹脂を成形する場合の金型は、通常水加熱型であり、100℃の金型温度の設定は困難である場合が多い。加えて、ポリスチレン系樹脂にシンジオタクチックポリスチレンを配合した樹脂組成物の剛性は高いものの、耐衝撃性や靭性は劣るという問題もある。
本発明は、ポリスチレン系樹脂の本来の特性である成形性、剛性、耐熱性、耐衝撃性及び寸法安定性に加え、優れた耐薬品性及び耐油性が付与されたポリスチレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記の問題点を解決するため鋭意検討した結果、ポリスチレン系樹脂に、特定のスチレン−アクリロニトリル系共重合体、及び必要に応じてスチレン系ブロック共重合体ゴムを添加することにより前記の課題を解決し、耐薬品性、耐油性、成形性、剛性、耐熱性、耐衝撃性及び寸法安定性に優れるポリスチレン系樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記のとおりである。
(1)ポリスチレン系樹脂(A)、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)を含み、更に任意にスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)を含む樹脂組成物であって、該ポリスチレン系樹脂(A)、該スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)、該スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)及び該スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)の合計を100質量部とした場合に、ポリスチレン系樹脂(A)が50〜97質量部で含まれ、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)が49〜2質量部で含まれ、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)が30〜1質量部で含まれ、そしてスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)が0〜40質量部で任意に含まれることを特徴とする樹脂組成物。
(2)上記スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)がスチレン−ブタジエンブロック共重合体である、上記(1)に記載の樹脂組成物。
(3)上記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物から形成された成形体。
本発明により、ポリスチレン系樹脂の本来の特性である成形性、剛性、耐熱性、耐衝撃性及び寸法安定性に加え、良好な耐薬品性及び耐油性を有するポリスチレン系樹脂組成物を提供することができる。
以下本発明について詳細に説明する。本発明の樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂(A)、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)(以下、単にスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)ということもある)、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)(以下、単にスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)ということもある)を所定の質量比で含み、更に任意にスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)を所定量含む。本発明によれば、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)を併用することにより、ポリスチレン系樹脂(A)が本来有する成形性、剛性、耐熱性、耐衝撃性及び寸法安定性に加えて耐薬品性及び耐油性が付与される。また、スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)が更に配合される場合にはより良好な耐衝撃性及び耐薬品性が得られる。
本発明で用いるポリスチレン系樹脂(A)とは、スチレンを主成分とした(すなわちポリマーを構成するモノマー繰り返し単位のうちスチレン繰り返し単位の質量割合が最も大きくなるように重合された)重合体を意味する。ポリスチレン系樹脂(A)としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレンと他のビニル系単量体を共重合したスチレン系樹脂等が挙げられる。
ポリスチレンとは、スチレンの単独重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。一般的に入手できるポリスチレンは、スチレンの重合度、分子量分布、可塑剤や滑剤の量が調整され、流動性の異なるものが提供されている。本発明で使用するポリスチレンの流動性は、ISO1133に従って200℃及び5kg荷重で測定したメルトフローレイトが1〜30g/10minの範囲にあることが好ましい。ポリスチレンのメルトフローレイトが1g/10min未満であると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に射出成形での金型充填性が低下する傾向がある。一方、ポリスチレンのメルトフローレイトが30g/10minを超えると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に押出成形、真空成形、ブロー成形での厚み均一性が低下する傾向がある。
ゴム変性ポリスチレンとは、スチレン単独重合体からなる連続相にゴム状重合体がグラフト重合して粒子分散してなる成形材料であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。ゴム変性ポリスチレンに用いるゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。特に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。ゴム変性ポリスチレンの市販品の例としては、例えばPSジャパン株式会社製の「H8672」(ポリブタジエンゴムで変性されたポリスチレン)等が挙げられる。
ゴム変性ポリスチレンの流動性は、ISO1133に従って200℃及び5kg荷重で測定したメルトフローレイトが1〜30g/10minの範囲にあることが好ましい。ゴム変性ポリスチレンのメルトフローレイトが1g/10min未満であると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に射出成形での金型充填性が低下する傾向がある。一方、ゴム変性ポリスチレンのメルトフローレイトが30g/10minを超えると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に押出成形、真空成形、ブロー成形での厚み均一性が低下したり、耐衝撃性が低下する傾向がある。
スチレンと他のビニル系単量体を共重合したスチレン系樹脂としては、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体、スチレンと無水マレイン酸の共重合体、等が挙げられる。スチレンと他のビニル系単量体を共重合したスチレン系樹脂の流動性は、ISO1133に従って、200℃及び5kg荷重で測定したメルトフローレイトが1〜30g/10minの範囲にあることが好ましい。ゴム変性ポリスチレンのメルトフローレイトが1g/10min未満であると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に射出成形での金型充填性が低下する傾向がある。一方、ゴム変性ポリスチレンのメルトフローレイトが30g/10minを超えると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に押出成形、真空成形、ブロー成形での厚み均一性が低下したり、耐衝撃性が低下する傾向がある。
ポリスチレン系樹脂(A)の重量平均分子量は、3万〜50万が好ましく、5万〜40万がより好ましい。該重量平均分子量が3万未満である場合、剛性、耐熱性及び耐衝撃性が低下する傾向があり、50万を超える場合、成形性が低下する傾向がある。なお本明細書に記載する重量平均分子量はゲルパーミエーション法で標準ポリスチレン換算として測定される値である。
本発明で用いるスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)とは、モノビニル芳香族単量体および不飽和ニトリル単量体を重合させてなる樹脂組成物を意味する。モノビニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、スチレンが最も好ましい。不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、アクリロニトリルが好適に用いられる。スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)は、最も一般的にはスチレンとアクリロニトリルとの共重合体(以下、AS樹脂ともいう)である。AS樹脂は水性懸濁重合、乳化重合、溶液重合又は塊状重合のいずれの方法によっても製造することができ、工業的に生産され、広く利用されている。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)中のアクリロニトリル系単位(本明細書において、「アクリロニトリル系単位」とは不飽和ニトリル単量体の繰り返し単位を意味する。)の共重合割合は15質量%以上50質量%以下であり、好ましくは17質量%以上40質量%以下である。アクリロニトリル系単位の共重合割合が15質量%未満では本発明の樹脂組成物の耐薬品性や耐油性の向上効果が得られず、50質量%を超えるとポリスチレン系樹脂(A)との相溶性が大幅に低下することにより本発明の樹脂組成物の耐衝撃性や機械的強度が低下し、好ましくない。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)の重量平均分子量は1万〜50万であることが好ましく、より好ましくは3万〜30万である。上記重量平均分子量が1万未満では本発明の樹脂組成物の耐衝撃性や機械的強度が低くなる傾向があり、50万を越えると本発明の樹脂組成物の流動性が低下し成形加工性が低下する傾向がある。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)の流動性は、ISO1133に従って、220℃及び10kg荷重で測定したメルトフローレイトが5〜80g/10minの範囲にあることが好ましい。該メルトフローレイトが5g/10min未満であると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に射出成形での金型充填性が低下する傾向がある。一方、該メルトフローレイトが80g/10minを超えると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に押出成形、真空成形、ブロー成形での厚み均一性が低下したり、耐衝撃性が低下する傾向がある。
本発明で用いられるアクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)は、前記のスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)と構成成分は同様であるが、アクリロニトリル系単位の共重合割合が3質量%以上15質量%未満であり、好ましくは5質量%以上12質量%以下である。スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)はポリスチレン系樹脂(A)とスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)との相溶化剤の役割を目的としており、アクリロニトリル系単位の共重合割合が3質量%以上15質量%未満以外では、相溶化の効果を所望の程度発現できず、したがって本発明の樹脂組成物の耐衝撃性や耐薬品性が低くなり好ましくない。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)の重量平均分子量は、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)と同様、1万〜50万であることが好ましく、より好ましくは3万〜30万である。上記重量平均分子量が1万未満では本発明の樹脂組成物の耐衝撃性や機械的強度が低くなる傾向があり、50万を越えると本発明の樹脂組成物の流動性が低下し成形加工性が低下する傾向がある。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)の流動性は、ISO1133に従って、220℃及び10kg荷重で測定したメルトフローレイトが5〜80g/10minの範囲にあることが好ましい。該メルトフローレイトが5g/10min未満であると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に射出成形での金型充填性が低下する傾向がある。一方、該メルトフローレイトが80g/10minを超えると、本発明の樹脂組成物の成形性、特に押出成形、真空成形、ブロー成形での厚み均一性が低下したり、耐衝撃性が低下する傾向がある。
スチレン−アクリロニトリル共重合体(B)及び(C)中のアクリロニトリル系単位の含有量は、それぞれ、通常行われる方法、例えば赤外分光光度計を用いて測定できる。具体的には、本発明の樹脂組成物を適当な溶媒に溶解した後、液体クロマトグラフィー等によりアクリロニトリル系単位の含有量が異なるスチレン−アクリロニトリル系共重合体を分離することができる。各々を分取して赤外分光光度計にてアクリロニトリル系単量体の含有量を求めてもよいし、あるいはアクリロニトリル系単位の含有量が既知のスチレン−アクリロニトリル系共重合体をいくつか準備しておき、液体クロマトグラフィーのリテンションタイムよりアクリロニトリル系単量体含有量を求めることもできる。
本発明で用いられるスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)は、スチレン系単量体から構成される重合体ブロック1個以上と、共役ジエン系単量体から構成される重合体ブロック1個以上からなるブロック共重合体である。このブロック共重合体は一部または全部が水素添加されていてもよい。
スチレン系単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。共役ジエン単量体とは1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例として1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)等が挙げられる。最も一般的なスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)は1,3−ブタジエンとスチレンからなるブロック共重合体であり、SBSと呼ばれる。
モノビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とのブロック共重合及び得られたブロック共重合体の水添には公知の方法を用いることができる。
本発明に用いるスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)におけるスチレン系単量体由来構造の含有量は好ましくは10質量%以上、70質量%未満、更に好ましくは20質量%以上、60質量%未満である。スチレン系単量体由来構造の上記含有量が10質量%未満の場合、本発明の樹脂組成物の剛性が低下する傾向があり、一方スチレン系単量体由来構造の上記含有量が70質量%以上の場合、耐衝撃性が低下する傾向がある。
本発明に用いるスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)の重量平均分子量は3〜100万が好ましい。更に好ましくは5〜80万である。重量平均分子量が3万未満では本発明の樹脂組成物の耐衝撃性が低い傾向があり、重量平均分子量が100万を超えると本発明の樹脂組成物の成形加工性が低い傾向がある。
本発明に用いるスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)は末端変性されていてもよい。末端変性とは末端に官能基を含有していることであり、たとえば、有機リチウム化合物を重合触媒として得たベース共重合体のリビング末端に、官能基含有化合物を反応させることにより、スチレン系単量体と共役ジエン系単量体から構成されるブロック共重合体の末端変性物が得られる。官能基含有化合物の例としては、水酸基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するもの等が挙げられる。
スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)としては市販品を用いることができる。例として旭化成ケミカルズ(株)製のタフプレン(スチレン−ブタジエンブロック共重合体)やタフテック(スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加品)等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、ポリスチレン系樹脂(A)、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)及びスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)の合計を100質量部として、ポリスチレン系樹脂(A)が50〜95質量部、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)が49〜2質量部、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)が30〜1質量部含まれ、更に任意成分としてスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)が0〜40質量部含まれる。好ましくは、上記合計を100質量部として、ポリスチレン系樹脂(A)55〜90質量部、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)44〜5質量部、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)20〜3質量部及びスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)2〜30質量部である。
ポリスチレン系樹脂(A)が97質量部を超えると、必然的にスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)の配合量が少なくなり、耐薬品性や耐油性の向上効果が認められない。一方、ポリスチレン系樹脂(A)が50質量部未満ではポリスチレン系樹脂の特性である成形性(すなわち流動性)、剛性、耐熱性、耐衝撃性及び寸法安定性が発現せず好ましくない。スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)が49質量部を超えると、本発明の樹脂組成物の流動性や耐衝撃性が低下し、5質量部未満では耐薬品性や耐油性の向上効果が認められず、好ましくない。またスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)が30〜1質量部以外では、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性の向上が認められず、好ましくない。スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)を配合する場合は、配合量が40質量部を超えると、本発明の樹脂組成物の剛性が低下して好ましくない。
ポリスチレン系樹脂(A)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B)及び(C)、並びにスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)を配合、溶融、混練、造粒する方法は、特に限定されず、樹脂組成物の製造で常用されている方法を用いることができる。例えば、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー等で配合した上記成分をバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等を用いて溶融、混練し、ロータリーカッター、ファンカッター等で造粒することによって樹脂組成物を得ることができる。
本発明の樹脂組成物には、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を更に添加することができる。また本発明の効果を損なわない範囲で他の重合体成分を含有してもよい。
本発明は、上述した本発明の樹脂組成物から形成された成形体をも提供する。本発明の樹脂組成物を、射出成形、シート押出成形、真空成形、異型押出成形、ブロー成形等の従来公知の方法で成形して、成形体である樹脂製品を形成することができる。本発明の成形体としては、発泡体、シート、射出成形品等が挙げられる。
以下の実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ポリスチレン系樹脂(A)−1>
(A)−1;PSジャパン株式会社製 ポリブタジエンゴム変性ポリスチレン「H8672」
基礎物性を表1に示す。
(A)−1;PSジャパン株式会社製 ポリブタジエンゴム変性ポリスチレン「H8672」
基礎物性を表1に示す。
<アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)−1>
スチレン、アクリロニトリル、エチルベンゼンおよび過酸化物である重合開始剤を各々適正量用いて、スチレン単位80質量%、アクリロニトリル単位20質量%の組成であり、メルトフローレイトが30g/10min(ISO1133準拠 220℃、10kg荷重)であり、そして重量平均分子量が30万であるスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)−1を得た。
スチレン、アクリロニトリル、エチルベンゼンおよび過酸化物である重合開始剤を各々適正量用いて、スチレン単位80質量%、アクリロニトリル単位20質量%の組成であり、メルトフローレイトが30g/10min(ISO1133準拠 220℃、10kg荷重)であり、そして重量平均分子量が30万であるスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)−1を得た。
<アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)−1>
(B)−1と同様にして製造し、スチレン単位92質量%、アクリロニトリル単位8質量%の組成であり、メルトフローレイトが60g/10min(ISO1133準拠 220℃、10kg荷重)であり、そして重量平均分子量が20万であるスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)−1を得た。
(B)−1と同様にして製造し、スチレン単位92質量%、アクリロニトリル単位8質量%の組成であり、メルトフローレイトが60g/10min(ISO1133準拠 220℃、10kg荷重)であり、そして重量平均分子量が20万であるスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)−1を得た。
<スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)−1>
タフプレン125<旭化成ケミカルズ(株)製>
スチレン−ブタジエンブロック共重合体
スチレン/ブタジエン=40/60(質量比)
なお上記各重量平均分子量は、ゲルパーミエーション法で標準ポリスチレン換算として測定された値である。
タフプレン125<旭化成ケミカルズ(株)製>
スチレン−ブタジエンブロック共重合体
スチレン/ブタジエン=40/60(質量比)
なお上記各重量平均分子量は、ゲルパーミエーション法で標準ポリスチレン換算として測定された値である。
<樹脂組成物の製造>
ポリスチレン系樹脂(A)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B)及び(C)並びにスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)を表2〜4の上段に示す通り計量した。
ポリスチレン系樹脂(A)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B)及び(C)並びにスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)を表2〜4の上段に示す通り計量した。
計量した原料をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(ナカタニ機械(株)製 型式AS30)でシリンダー設定温度200℃、スクリュー回転数80rpmにて溶融混練し溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングしてペレット状の樹脂組成物を得た。
メルトフローレイト及び機械物性の測定;
上記で製造した樹脂組成物のメルトフローレイトをISO1133に従って測定した。また、上記で製造した樹脂組成物をISOタイプA試験片に射出成形し、ISO527−1に従って引張強さ及び引張破壊歪みを、そしてISO178に従って曲げ弾性率を、そしてISO179に従ってシャルピー衝撃強さを測定した。
上記で製造した樹脂組成物のメルトフローレイトをISO1133に従って測定した。また、上記で製造した樹脂組成物をISOタイプA試験片に射出成形し、ISO527−1に従って引張強さ及び引張破壊歪みを、そしてISO178に従って曲げ弾性率を、そしてISO179に従ってシャルピー衝撃強さを測定した。
デュポン衝撃試験;
JIS K 5400に従い、デュポン衝撃試験を行った。デュポン衝撃試験機を用いて、撃芯の先端Rが3mm、受け台のへこみRが6mmの条件で、厚さ2mmの射出成形板に撃芯を落下させ、成形板に亀裂を発生させるエネルギーを求めた。ただし、1kg荷重を高さ50cmから落下させても亀裂を生じさせない場合は、亀裂を発生させるエネルギーを50kg・cm以上(>50)とした。
JIS K 5400に従い、デュポン衝撃試験を行った。デュポン衝撃試験機を用いて、撃芯の先端Rが3mm、受け台のへこみRが6mmの条件で、厚さ2mmの射出成形板に撃芯を落下させ、成形板に亀裂を発生させるエネルギーを求めた。ただし、1kg荷重を高さ50cmから落下させても亀裂を生じさせない場合は、亀裂を発生させるエネルギーを50kg・cm以上(>50)とした。
耐薬品性試験(カンチレバー方式);
薬品:DHC薬用ディープクレンジングオイル<(株)ディーエイチシー製>
カンチレバー方式にて耐薬品性試験を行った。
薬品:DHC薬用ディープクレンジングオイル<(株)ディーエイチシー製>
カンチレバー方式にて耐薬品性試験を行った。
試験は次のようにして行った。図1は、耐薬品性試験(カンチレバー方式)に使用した試験片を示す図である。図1に示す試験片(長さ80mm×幅15mm×厚さ2mm)を射出成形にて作製する。長手方向が樹脂の流れ方向になるようにする。なお下記試験片よりも大きな平板を射出成形し、そこから下記試験片を切り出してもよい。
片方(A端)の15mm長さの部分を厚さ方向から挟み水平とする。挟んだ端から5mmの位置にガーゼ小片を置きそこにDHCディープクレンジングオイルを一滴染み込ませる。もう一方(B端)に200gの荷重を吊り下げる。24時間毎に観察し、薬品を塗布した部分から折れた状態、あるいは切断した状態になった時点を日数(day)で表す。以上の測定結果を表2〜4の下段に示す。
表2〜4の説明;
実施例1、2に示すように、ポリスチレン系樹脂(A)にスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)を配合することにより、ポリスチレン系樹脂(A)の単独系(比較例1)に比べて、耐薬品性は大幅に向上する。更に、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)のうちいずれか一方のみを配合した系(比較例2〜5)と比べても、各実施例は耐薬品性及び耐衝撃性に優れている。
実施例1、2に示すように、ポリスチレン系樹脂(A)にスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)を配合することにより、ポリスチレン系樹脂(A)の単独系(比較例1)に比べて、耐薬品性は大幅に向上する。更に、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)のうちいずれか一方のみを配合した系(比較例2〜5)と比べても、各実施例は耐薬品性及び耐衝撃性に優れている。
ポリスチレン系樹脂(A)にスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)及び(C)、更にスチレン系ブロック共重合体(D)を配合することにより(実施例3、4)、耐衝撃性、とりわけデュポン衝撃強さが特に良好であり、耐薬品性も特に良好である。スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)のみを配合した場合(比較例6、7)と比べても、実施例3、4は耐衝撃性及び耐薬品性に優れている。
本発明の樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂の用途である発泡体、シート、射出成形品等、耐薬品性、耐油性、剛性、耐熱性、耐衝撃性及び寸法安定性が要求される数多くの産業分野に好適に用いられる。
Claims (3)
- ポリスチレン系樹脂(A)、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)を含み、更に任意にスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)を含む樹脂組成物であって、該ポリスチレン系樹脂(A)、該スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)、該スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)及び該スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)の合計を100質量部とした場合に、ポリスチレン系樹脂(A)が50〜97質量部で含まれ、アクリロニトリル系単位が15質量%以上50質量%以下共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)が49〜2質量部で含まれ、アクリロニトリル系単位が3質量%以上15質量%未満共重合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)が30〜1質量部で含まれ、そしてスチレン系ブロック共重合体ゴム(D)が0〜40質量部で任意に含まれることを特徴とする樹脂組成物。
- 前記スチレン系ブロック共重合体ゴム(D)がスチレン−ブタジエンブロック共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物から形成された成形体。
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