図1は、本発明の第1の実施の形態として、本発明にかかる操舵制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略を示す図である。
図1に示す電動パワーステアリング装置は、三相交流の電力をもって駆動される電動モータ1の発生したアシストトルクを、減速機2を介してステアリングシャフト3に伝えるいわゆるコラムアシスト型のものであって、ステアリングシャフト3の一端に、当該ステアリングシャフト3と一体に回転するステアリングホイール4が設けられている一方で、ステアリングシャフト3の他端にはピニオンシャフト5がユニバーサルジョイント6を介して連結されている。
ピニオンシャフト5は、ラックバー7とともにいわゆるラックアンドピニオン式のステアリングギヤ8を構成している。つまり、ステアリングホイール4をピニオンシャフト5とともに回転させると、ピニオンシャフト5の回転運動がラックバー7の直線運動に変換され、当該ラックバー7と、そのラックバー7の左右両端にそれぞれ接続されたタイロッド9,9とからなる操舵機構としてのリンク機構10を介して車両の前輪である左右の転舵輪11,11がそれぞれ転舵するようになっている。なお、図1における7a,7aはダストブーツであって、このダストブーツ7a内に設けられた図示外のユニバーサルジョイントによってラックバー7の左右両端部と左右のタイロッド9,9とがそれぞれ連結されている。
また、運転者がステアリングホイール4を回転操作する手動操舵トルクTは、ステアリングシャフト3に設けられたトルクセンサ12によって検出され、そのトルクセンサ12の出力のほか、電動モータ1に付設されたレゾルバ1aの出力に基づいてコントロールユニット13が電動モータ1を駆動することになる。これにより、電動モータ1が手動操舵トルクを補助するアシストトルクを発生し、そのアシストトルクがステアリングシャフト3およびステアリングギア8を介してリンク機構10に操舵力として伝達・付与される。
図2はコントロールユニット13の詳細を示す図である。この図2に示すように、コントロールユニット13は、電動モータ1を駆動するためのPWM制御信号PWMu,PWMv,PWMwをトルクセンサ12およびレゾルバ1aの出力に基づいて生成する主制御部13aと、PWM制御信号PWMu,PWMv,PWMwに基づくスイッチング動作により、バッテリ14から電動モータ1に電力を供給するインバータ13bと、を備えている。なお、バッテリ14は、ケーブル14aを介してインバータ13bに接続されている。
インバータ13bは、図3に示すように、U相アーム15uとV相アーム15vおよびW相アーム15wをそれぞれ有している。各アーム15u,15v,15wは、スイッチング素子たるハイサイドFET16u,16v,16wとローサイドFET17u,17v,17wを直列に接続したものであって、それら各アーム15u,15v,15wのうちハイサイドFET16u,16v,16w側の端部がバッテリ14に接続されている一方、各アーム15u,15v,15wのうちローサイドFET17u,17v,17w側の端部が接地されている。さらに、各アーム15u,15v,15wのうちハイサイドFET16u,16v,16wとローサイドFET17u,17v,17wとの間の中間点が、電動モータ1の各相のコイルにそれぞれ接続されている。そして、周知のように、インバータ13bは、各FETのスイッチング動作により、電動モータ1に三相交流の電力を供給することになる。
次に、主制御部13aの具体的構成を図2に基づいて説明する。図2に示すように、主制御部13aは、電動モータ1の回転方向であるq軸と、そのq軸に直交するd軸とからなる回転座標系を用いたベクトル制御によって電動モータ1を制御するようになっている。
具体的には、主制御部13aのアシストトルク算出部18は、トルクセンサ12の検出した手動操舵トルクTに基づいて目標アシストトルクTAを算出し、その目標アシストトルクTAを目標電流算出部19に出力する。
目標電流算出部19は、目標アシストトルクTAのほか、電動モータ1の回転速度ω、すなわち電動モータ1における図示外のロータの回転速度ωに基づいてd軸およびq軸の目標電流Id*,Iq*を算出し、その目標電流Id*,Iq*を電流偏差算出部たるd軸およびq軸の第1演算部23d,23qに出力する。なお、回転速度ωはレゾルバ1aの出力に基づいて算出されるものであって、回転位置算出部21がレゾルバ1aの出力に基づいて電動モータ1における図示外のロータの回転位置θを算出する一方、回転速度算出部22が回転位置θを微分演算して回転速度ωを算出するようになっている。
ここで、周知のように、q軸目標電流Iq*は、回転座標系を用いたベクトル制御におけるq軸成分の電流であって、電動モータ15の発生トルクの大きさを制御するものである。また、d軸目標電流電流Id*は、回転座標系を用いたベクトル制御におけるd軸成分の電流であって、電動モータ15の界磁を弱めるためのものである。
そして、d軸の第1演算部23dは、d軸の目標電流Id*から電動モータ1に流れるd軸の実電流Idを減算することによってd軸の電流偏差ΔIdを算出し、そのd軸の電流偏差ΔIdを操作量算出部たるd軸のPI制御部20dに出力する。一方で、q軸の第1演算部23qは、q軸の目標電流Iq*からq軸の実電流Iqを減算することによってq軸の電流偏差ΔIqを算出し、そのq軸の電流偏差ΔIqを操作量算出部たるq軸のPI制御部20qに出力する。
ここで、d軸およびq軸の実電流Id,Iqは、電動モータ1に供給されている3相の励磁電流Iu,Iv,Iwを、3相−2相変換部25によって回転座標系に変換したものである。詳しくは、3相の励磁電流Iu,Iv,IwのうちU相およびV相の励磁電流Iu,Ivが実電流センサ25u,25vによって検出される一方、W相の励磁電流IwはU相およびV相の励磁電流Iu,Ivに基づいて3相−2相変換部25で算出される。
両PI制御部20d,20qは、いわゆるPI制御(比例積分制御)によってd軸およびq軸の目標供給電圧Vd*,Vq*を算出するようになっている。詳しくは、d軸のPI制御部20dは、d軸の電流偏差ΔIdに比例ゲインKpを乗じた比例項と、d軸の電流偏差ΔIdの積分値に積分ゲインKiを乗じた積分項と、をd軸の第2演算部24dにて加算する比例積分演算により、d軸の目標供給電圧Vd*を算出する。一方、q軸のPI制御部20qは、q軸の電流偏差ΔIqに比例ゲインKpを乗じた比例項と、q軸の電流偏差ΔIqの積分値に積分ゲインKiを乗じた積分項と、をq軸の第2演算部24qにて加算する比例積分演算により、q軸の目標供給電圧Vq*を算出する。
そして、d軸およびq軸の目標供給電圧Vd*,Vq*は、d軸電流とq軸電流との相互干渉を防止すべく、相互干渉電圧補償部26によって補正目標供給電圧Vd**,Vq**に補正されてPWM制御部27に出力される。具体的には、相互干渉電圧補償部26は、d軸およびq軸の実電流Id,Iqおよび電動モータ1の回転速度ωに基づいてd軸およびq軸の補償電圧を算出するとともに、その補償電圧をd軸およびq軸の目標供給電圧Vd*,Vq*にそれぞれ加算することでd軸およびq軸の補正目標供給電圧Vd**,Vq**をそれぞれ得るようになっている。
PWM制御部27は、d軸およびq軸の補正目標供給電圧Vd**,Vq**を3相の目標供給電圧に変換し、その3相の目標供給電圧と後述する搬送波生成部28で生成した搬送波である三角波状のキャリア信号Cとの比較により、パルス状を呈する3相のPWM制御信号PWMu,PWMv,PWMwを生成してインバータ13bに出力する。そして、インバータ13bの各FETがPWM制御信号PWMu,PWMv,PWMwによってそれぞれスイッチング動作することで電動モータ1に電力が供給され、その電動モータ1が目標アシストトルクTAに応じたアシストトルクを発生することになる。
ここで、インバータ13bから電動モータ1に電力を供給すると、そのインバータ13bは当該インバータ13bを流れる電流によって発熱することになるため、このインバータ13bを過熱から保護すべく、出力抑制制御部としての過熱保護制御部29が主制御部13aに設けられている。この過熱保護制御部29は、インバータ13bの近傍に配置した温度検出部たる温度センサ30に接続されていて、その温度センサ30の出力であるインバータ温度Tiが所定の出力抑制設定温度Ti1を超えた場合に、アシストトルク制限指令信号Tlimをアシストトルク算出部18へ出力するようになっている。なお、本実施の形態では温度センサ30をインバータ13bの近傍に設置するものとしているが、インバータ13bの内部、より具体的にはインバータ13bの主たる発熱源となる各FETに近接して温度センサ30を設置してもよい。
そして、アシストトルク算出部18は、アシストトルク制限指令信号Tlimを入力すると、目標アシストトルクTAを所定の上限値によって制限するか、あるいは目標アシストトルクTAに1より小さい制限ゲインを乗じて補正することにより、インバータ13bの出力を制限して当該インバータ13bの発熱を抑制することになる。
一方、搬送波生成部28は、キャリア信号Cのキャリア周波数を、温度センサ29から入力したインバータ温度Tiに基づいて図4に示すキャリア周波数マップから設定するようになっている。換言すれば、搬送波生成部28は、インバータ温度Tiに応じて各PWM制御信号PWMu,PWMv,PWMwのキャリア周波数を設定するようになっている。
つまり、周知のように、インバータ13bを所定のキャリア周波数のPWM制御信号PWMu,PWMv,PWMwによって駆動すると、インバータ13bがそのキャリア周波数に応じた頻度でスイッチング動作し、そのスイッチング動作によっていわゆるスイッチング損失が発生することになる。また、このスイッチング損失を低減するためには、キャリア周波数を低く設定してインバータ13bにおけるスイッチング動作の頻度を低減することが有効であるが、キャリア周波数を低減して可聴周波数に設定すると、インバータ13bのスイッチング動作に基づくスイッチング音が騒音として乗員に感知されやすくなる。このように、インバータ13bにおける静粛性と低損失とはトレードオフの関係にあるため、本実施の形態では、静粛性を重視するか低損失を重視するかをインバータ温度Tiに基づいて判断し、それに応じてキャリア周波数を変化させるようになっている。
図4に示すキャリア周波数マップについてより具体的に説明すると、インバータ温度Tiが、出力抑制設定温度Ti1よりも低温に設定した所定のキャリア周波数低減設定温度Ti2以下であって、且つそのキャリア周波数低減設定温度Ti2よりもさらに低温に設定した所定のキャリア周波数上昇設定温度Ti3を超えている場合には、可聴周波数よりも周波数の高い非可聴周波数である中設定周波数fcmにキャリア周波数が設定されることになる。なお、この中設定周波数fcmに対応する温度範囲は車両の定常走行時に相当する温度範囲であって、この中温領域A1に対応する中設定周波数fcmがキャリア周波数としてはもっとも高頻度に設定されることになる。
また、中設定周波数fcmに対応する温度からインバータ温度Tiが上昇し、キャリア周波数低減設定温度Ti2を超えた場合には、そのキャリア周波数低減設定温度Ti2から出力抑制設定温度Ti1までの温度範囲において、インバータ温度Tiの上昇にともなってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。そして、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1に達すると、キャリア周波数として可聴周波数である低設定周波数fclが設定され、出力抑制設定温度Ti1以上の温度範囲では、キャリア周波数が低設定周波数に維持されることになる。なお、当然のことながら、一旦上昇したインバータ温度Tiが低下してキャリア周波数低減設定温度Ti2以下となった場合には、キャリア周波数を再び中設定周波数fcmに設定することになる。
一方、例えば車両の冷間始動時など、インバータ温度Tiが、キャリア周波数上昇設定温度Ti3よりもさらに低温に設定した所定の最大キャリア周波数設定温度Ti4以下に低下している場合には、キャリア周波数は高設定周波数fchに設定されることになる。また、その状態からインバータ温度Tiが上昇し、最大キャリア周波数設定温度Ti4に達すると、その最大キャリア周波数設定温度Ti4からキャリア周波数上昇設定温度Ti3までの温度範囲において、インバータ温度Tiの上昇にともなってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。そして、インバータ温度Tiがキャリア周波数上昇設定温度Ti3に達すると、キャリア周波数として中設定周波数fcmが設定されることになる。
なお、各設定周波数としてより具体的には、インバータ13bにおける騒音とスイッチング損失とのバランスを考慮すると、高設定周波数fchを25kHz、中設定周波数fcmを20kHz、低設定周波数fclを10kHzにそれぞれ設定することが好ましい。
図5,6は、キャリア周波数をインバータ温度Tiにかかわらず中設定周波数fcmに設定するようにした比較例と本実施の形態とを比較した図であって、そのうち図5の(a)はインバータ13bの通電時間とインバータ温度Tiとの関係を示す図、図5の(b)はインバータ13bの通電時間とインバータ13bが出力可能な電流量との関係を示す図である。なお、図5の(a),(b)では、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1付近となる時間範囲についてのみ図示してある。また、図6は、インバータ13bの通電時間とインバータ温度Tiとの関係を示す図であって、インバータ温度Tiが最大キャリア周波数設定温度Ti4付近となる時間範囲についてのみ図示してある。
ここで、本実施の形態におけるインバータ13bへの通電に伴うインバータ温度Tiの変化を、図5,6を参照しつつ比較例と比較しながら説明する。まず、図5の(a)に示すように、本実施の形態では、インバータ温度Tiがキャリア周波数低減設定温度Ti2を超えると、搬送波生成部28がキャリア周波数を中設定周波数fcmよりも低く設定することにより、比較例と比べてインバータ温度Tiの上昇が鈍くなる、すなわち単位時間当たりのインバータ温度Tiの上昇量が少なくなる。これは、キャリア周波数を低減すると、インバータ13bのスイッチング損失が減少して当該インバータ13bの発熱量が低下するためである。つまり、図5の(a)のほか同図の(b)に示すように、比較例では、本実施の形態と比べてインバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1に早く達することから、インバータ13bの出力可能な電流が比較的早期に制限されることになる。換言すれば、本実施の形態では、インバータ温度Tiがキャリア周波数低減設定温度Ti2を超えると、上述したようにインバータ13bの発熱が抑制されることから、インバータ温度Tiが出力抑制開始温度Ti1に達するまでの時間が比較例と比べて長くなり、インバータ13bから大電流を出力できる時間が比較例よりも長くなる。
一方、図6に示すように、例えば冷間始動時などインバータ温度Tiがキャリア周波数上昇設定温度Ti3以下である場合、本実施の形態では、キャリア周波数を中設定周波数fcmよりも高く設定することにより、比較例と比べてインバータ13bの温度上昇が速くなっている。これは、キャリア周波数を高く設定することでインバータ13bにおけるスイッチング損失が上昇し、インバータ13bの発熱量が増加するためである。つまり、本実施の形態では、例えば冷間始動時のようなインバータ13bの低温時にキャリア周波数を高く設定することにより、インバータ13bのみならず、そのインバータ13bを含むコントロールユニット13全体、およびそのコントロールユニットに近接する電動モータ1をも早期に昇温させて応答性を向上させるようにしている。
したがって、本実施の形態によれば、インバータ13bにおける発熱の抑制が不要な定常走行時にはキャリア周波数を非可聴周波数に設定することにより、インバータ13bの騒音を低減できる一方で、インバータ13bの温度上昇時にはキャリア周波数を低減してインバータ13bにおけるスイッチング損失を減少させることにより、インバータ13bの出力の低下を招くことなくインバータ13bのさらなる発熱を抑制できるようになる。
さらに、インバータ13bの発熱を抑制することにより、コントロールユニット13に設定すべきヒートシンクの体積を小さくすることが可能になるため、コントロールユニット13のコンパクト化および軽量化の上で有利となるばかりでなく、コスト的にも有利となるメリットがある。
その上、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1を超えた場合にインバータ13bの出力を抑制することで十分な安全性を確保しつつも、その出力抑制設定温度Ti1よりも低い温度にキャリア周波数低減設定温度Ti2を設定し、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1に達するのに先立ってキャリア周波数を低減させるようになっているから、インバータ13bが大電流を長時間出力できるようになる。これにより、過熱保護制御部29によってインバータ13bが出力制限される頻度を少なくできるメリットがある。
加えて、過熱保護制御部29によってインバータ13bが出力制限されるときには、キャリア周波数の低減によってインバータ13bの発熱が抑制された状態にあるため、過熱保護制御部29によるインバータ13bの出力制限を緩和することが可能になるメリットがある。
また、インバータ温度Tiの変化に応じてキャリア周波数を連続的に変化させるようになっているから、キャリア周波数の急変による操舵フィーリングの悪化を防止することができるメリットがある。
なお、この第1の実施の形態では、本発明を電動パワーステアリング装置に適用した例を示したが、本発明は、電動モータによって油圧ポンプを駆動する油圧パワーステアリング装置にも適用可能であることは言うまでもない。
ここで、上述した第1の実施の形態では、インバータ温度Tiの変化に応じてキャリア周波数を連続的に変化させるようになっているが、特に、中設定周波数fcmと低設定周波数fclとの間の周波数領域に、例えばラジオに代表されるような他の電子機器における搬送波の中心周波数、またはその中心周波数の次数倍を含む場合には、第1の実施の形態の第1変形例として図7に示すように、PWM制御のキャリア信号Cと上記電子機器における搬送波との干渉を避けるべくキャリア周波数を段階的に変化させるようにしてもよい。つまり、この変形例では、インバータ温度Tiがキャリア周波数低減設定温度Ti2を超え、且つ出力抑制設定温度Ti1以下である温度範囲において、他の電子機器における搬送波の中心周波数およびその中心周波数の次数倍を避けるように、キャリア周波数を段階的に変化させるようになっている。なお、この図7ではキャリア周波数マップのうち出力抑制設定温度Ti1付近の温度範囲のみを図示しており、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。また、図7に示す周波数f1,f2は、上述したような他の電子機器における搬送波の中心周波数、またはその中心周波数の次数倍を示している。
すなわち、この第1変形例では、図7のほか図8に示すように、インバータ温度Tiがキャリア周波数低減設定温度Ti2を超えると、他の電子機器における搬送波の中心周波数f1を避けるべく、その中心周波数f1よりも低い周波数fc1にキャリア周波数を設定することになる。したがって、この第1変形例によれば、上述した第1の実施の形態と略同様の効果に加え、他の電子機器における搬送波へのノイズの混入を防ぐことができるメリットがある。
また、インバータ13bにおける発熱の抑制を特に重視する場合には、第1の実施の形態の第2変形例として図9に示すように、インバータ温度Tiがキャリア周波数低減設定温度Ti2を超えたときに、中設定周波数fcmから低設定周波数fclへキャリア周波数を急変させるようにしてもよい。なお、この図9では、キャリア周波数マップのうち出力抑制設定温度Ti1付近の温度範囲のみを図示しており、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
つまり、この第2変形例では、インバータ温度Ti1が上昇したとき、上述した第1の実施の形態よりも早期にキャリア周波数を低設定周波数fclに設定することになるから、上述した第1の実施の形態と略同様の効果に加え、インバータ13bにおける発熱をより有効に抑制できるメリットがある。
一方、静粛性を特に重視する場合には、第1の実施の形態の第3変形例として図10に示すように、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1を超えたときに、中設定周波数fcmから低設定周波数fclへキャリア周波数を急変させるようにしてもよい。なお、この図10ではキャリア周波数マップのうち出力抑制設定温度Ti1付近の温度範囲のみを図示しており、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
つまり、この第3変形例では、インバータ温度Ti1が上昇したときに、そのインバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1に達するまでキャリア周波数が非可聴周波数に維持され、インバータ13bのスイッチング音である騒音を乗員が聞き取れなくなるから、上述した第1の実施の形態と略同様の効果に加え、静粛性をより向上させることができるメリットがある。
また、第1の実施の形態の第4変形例として図11に示すように、車両の走行速度vを検出する車速センサ32を設け、キャリア周波数制御部たる搬送波生成部31が、インバータ温度Tiに加えて車両の走行速度vを加味してキャリア周波数を設定するようにしてもよい。なお、この第4変形例における他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
詳しくは図12に示すように、搬送波生成部31は、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1を超え、且つ車両の走行速度vが所定の設定走行速度v1を超える場合にキャリア周波数を低設定周波数fclに設定するようになっている一方で、車両の走行速度vが設定走行速度v1以下である場合には、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1を超えていてもキャリア周波数を中設定周波数fcmに維持するようになっている。なお、図12ではキャリア周波数マップのうち出力抑制設定温度Ti1付近の温度範囲のみを図示しており、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
つまり、この第4変形例では、走行速度vが低い場合にはロードノイズが小さいためにインバータ13bの騒音が乗員の耳に届きやすくなるから、このような場合にはキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定して静粛性を向上させる一方、走行速度vが高くロードノイズが大きいときにキャリア周波数を低設定周波数fclに設定することで、インバータ13bの騒音をロードノイズに紛れさせるようにしている。したがって、この第4変形例によれば、上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られる上に、インバータ13bの騒音が乗員に感知されにくくなるため、そのインバータ13bの騒音によって乗員に不快感を与えることを防止できるメリットがある。
さらに、第1の実施の形態の第5変形例として図13に示すように、エンジンの回転速度ωeを検出する回転速度センサ34を設け、キャリア周波数制御部たる搬送波生成部33が、インバータ温度Tiおよび走行速度vに加えて回転速度ωeを加味してキャリア周波数を設定するようにしてもよい。なお、他の部分は上述した第1の実施の形態の第4変形例と同様である。
詳しくは図14に示すように、搬送波生成部33は、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1を超え、且つ車両の走行速度vが設定走行速度v1を超えていて、さらにエンジンの回転速度ωeが所定の設定回転速度ωe1を超えている場合にキャリア周波数を低設定周波数fclに設定する一方で、車両の走行速度vが設定走行速度v1以下である場合、またはエンジンの回転速度ωeが設定回転速度ωe1以下である場合には、インバータ温度Tiが出力抑制設定温度Ti1を超えていてもキャリア周波数を中設定周波数fcmに維持するようになっている。
つまり、この第5変形例では、走行速度vおよびエンジンの回転速度ωeの両者が高い場合には車両のロードノイズおよびエンジンの作動音がそれぞれ大きくなるから、この場合にのみキャリア周波数を低設定周波数fclに設定することでインバータ13bの騒音をロードノイズおよびエンジンの作動音に紛れさせるようにしている。したがって、この第5変形例では、インバータ13bの騒音が乗員により感知されにくくなり、そのインバータ13bの騒音によって乗員に不快感を与えることをより有効に防止できるメリットがある。
図15に示す第2の実施の形態は、ステアリングホイール4の回転位置である操舵角θsを検出する操舵角センサ36と、ステアリングホイール4の回転速度である操舵速度ωsを操舵角θsに基づいて算出する操舵速度検出部としての操舵速度算出部37と、をそれぞれ設け、キャリア周波数制御部たる搬送波生成部35が、インバータ13bの発熱量に関連する状態量である操舵速度ωsに基づいてキャリア周波数を設定するようにしたものである。
さらに、搬送波生成部35はトルクセンサ12にも接続されており、当該搬送波生成部35は操舵速度ωsに加えて手動操舵トルクTを加味してキャリア周波数を設定することになる。つまり、操舵速度ωsが高い場合および手動操舵トルクTが大きい場合には、電動モータ1に高出力を発生させるためにインバータ13bの発熱量が大きくなることから、本実施の形態ではこのような場合にキャリア周波数を低減してインバータ13bの発熱を抑制するようにしている。なお、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
詳しくは図16に示すように、搬送波生成部35は、操舵速度ωsが所定の第1設定操舵速度ωs1を超えている場合、手動操舵トルクTが所定の第1設定トルクT1を超えているときにキャリア周波数を低設定周波数fclに設定する一方、手動操舵トルクTが第1設定トルクT1よりも低く設定した第2設定トルクT2以下であるときにキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定し、さらに、手動操舵トルクTが第2設定トルクT2を超え、且つ第1設定トルクT1以下であるときには、手動操舵トルクTの増加に伴ってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。
他方、搬送波生成部35は、操舵速度ωsが第1設定操舵速度ωs1以下である場合、手動操舵トルクωsにかかわらずキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定することになる。なお、第1設定操舵速度ωs1および両設定トルクT1,T2は、操舵速度ωsおよび手動操舵トルクTとインバータ13bの発熱量との関係を考慮して適宜設定すればよい。
したがって、この第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と略同様な効果が得られる上に、インバータ13bに高出力が要求される走行状態であるときにキャリア周波数を低減し、そのインバータ13bのスイッチング損失を減少させるようにしているから、インバータ13bの昇温をより効果的に抑制することができる。
なお、この第2の実施の形態では操舵速度ωsと操舵トルクTとに応じてキャリア周波数を設定するようにしているが、この第2の実施の形態の第1変形例として図17に示すように、操舵トルクの絶対値|T|を所定のサンプリング時間Tsの間測定するとともに、そのサンプリング時間Tsにおける操舵トルクの絶対値|T|の平均を平均操舵トルクTaとして算出し、その平均操舵トルクTaに基づいてキャリア周波数を設定するようにしてもよい。なお、この変形例においては、図16に示すキャリア周波数マップの横軸を平均操舵トルクTaとして読み替えて用いるとよい。したがって、この第1変形例においても上述した第2の実施の形態と略同様な効果が得られる。
また、図18に示す第2の実施の形態の第2変形例のように、運転者による操舵操作の頻度である操舵頻度Sを操舵トルクTに基づいて演算する操舵頻度算出部39を設け、キャリア周波数制御部たる搬送波生成部38が、上述した第2の実施の形態における操舵トルクTに代え、操舵頻度Sに応じてキャリア周波数を設定するようにしてもよい。なお、この第2変形例における他の部分は上述した第2の実施の形態と同様である。
具体的には図19に示すように、操舵頻度算出部39は、手動操舵トルクの絶対値|T|が所定のサンプリング時間Ts中にトルク閾値Tlを超えた回数を計数し、その回数を操舵頻度Sとすることになる。例えば図19に示す例では操舵頻度Sが5となる。
また、搬送波生成部38は、図20に示すキャリア周波数マップによってキャリア周波数を設定する。具体的には、操舵速度ωsが第1設定操舵速度ωs1を超えている場合、操舵頻度Sが所定の第1設定操舵頻度S1を超えているときにキャリア周波数を低設定周波数fclに設定する一方、操舵頻度Sが第1設定操舵頻度S1よりも低く設定した第2設定操舵頻度S2以下である場合にはキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定し、さらに、手動操舵トルクTが第2設定トルクT2を超え、且つ第1設定トルクT1以下である場合には、手動操舵トルクTの増加に伴ってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。
他方、操舵速度ωsが第1設定操舵速度ωs1以下である場合、搬送波生成部38は、操舵頻度Sにかかわらずキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定することになる。なお、両設定操舵頻度S1,S2は、操舵頻度Sとインバータ13bにおける発熱量との関係を考慮して適宜設定すればよい。
すなわち、操舵頻度Sが高い場合には、電動モータ1の高出力が高頻度に要求されることになるからインバータ13bの発熱量が大きくなる。そこで、この第2変形例ではこのような場合にキャリア周波数を低減してそのスイッチング損失を減少させることで、インバータ13bの昇温を抑制することになる。したがって、この第2変形例によれば、上述した第2の実施の形態と略同様な効果が得られる上、インバータ13bの発熱量が大きくなる走行状態のときに、キャリア周波数を低減してインバータ13bにおけるスイッチング損失を減少させるようにしているから、インバータ13bの昇温をさらに効果的に抑制することができる。
さらに、図21に示す第2の実施の形態の第3変形例のように、キャリア周波数数制御部たる搬送波生成部40に車両の走行速度vを検出する車速センサ32を接続し、その搬送波生成部40が、上述した第2の実施の形態における操舵トルクTに代え、走行速度vに応じてキャリア周波数を設定するようにしてもよい。なお、この第3変形例における他の部分は上述した第2の実施の形態と同様である。
詳しくは図22に示すように、走行速度vが所定の第1設定走行速度v2を超えている場合、搬送波生成部35は、操舵速度ωsが所定の第1設定操舵速度ωs1を超えているときにキャリア周波数を低設定周波数fclに設定する一方で、操舵速度ωsが第1設定操舵速度ωs1よりも低く設定した所定の第2設定操舵速度ωs2以下であるときにはキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定し、さらに。操舵速度ωsが第2設定操舵速度ωs2を超え、且つ第1設定操舵速度ωs1以下であるときには、操舵速度ωsの増加に伴ってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。
また、走行速度vが第1設定走行速度v2よりも低く設定した第2設定走行速度v3以下である場合、搬送波生成部35は、操舵速度ωsにかかわらずキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定することになる。
さらに、走行速度vが第2設定走行速度v3を超え、且つ走行速度vが第1設定走行速度v2以下であって、さらに操舵速度ωsが第2設定操舵速度ωs2を超える場合、搬送波生成部35は、車両の走行速度vが高くなるのに伴ってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。
つまり、この第3変形例では、上述した第1の実施の形態の第4変形例と同様に、走行速度vが高くロードノイズが大きいときにキャリア周波数を低減することで、キャリア周波数の低減によって増大するインバータ13bの騒音をロードノイズに紛れさせるようにしている。したがって、この第3変形例によれば、上述した第2の実施の形態と略同様の効果に加え、インバータ13bの騒音によって乗員に不快感を与えることを防止できるメリットがある。
図23に示す第2の実施の形態の第4変形例は、キャリア周波数制御部たる搬送波生成部41が、上述した第2の実施の形態における操舵トルクTに代え、ブレーキ制御部たるABSコントローラ42の作動状態に応じてキャリア周波数を設定するようになっているものであって、ABSコントローラ42の作動状態を示す情報が例えばCAN通信システムに代表されるような車両の通信システムによって搬送波生成部41に提供されるようになっている。なお、周知のように、ABSコントローラ42は、車両の各車輪が制動時にロックすることを防ぐべく、車両の走行状態に応じて当該車両の制動力を制御するものである。また、他の部分は上述した第2の実施の形態と同様である。
具体的には図24に示すように、搬送波生成部41は、ABSコントローラ42がブレーキ制御動作中である場合、操舵速度ωsが第1設定操舵速度ωs1を超えているときにキャリア周波数を低設定周波数fclに設定する一方、操舵速度ωsが第2設定操舵速度ωs2以下であるときにキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定し、さらに、操舵速度ωsが第2設定操舵速度ωs2を超え、且つ第1設定操舵速度ωs1以下であるときに、操舵速度ωsの増加に伴ってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。
他方、搬送波生成部41は、ABSコントローラ42がブレーキ制御を行っていない非ブレーキ制御動作時に、操舵速度ωsにかかわらずキャリア周波数を中設定周波数fcmに設定することになる。
つまり、この第4変形例では、インバータ13bに高出力が要求されるか否かをABSコントローラ42の作動状態によって判断し、これに応じてキャリア周波数を設定するようになっているから、上述した第2の実施の形態と略同様の効果が得られるメリットがある。
また、ABSコントローラ42のブレーキ制御動作時には車両の走行状態が不安定になっていることから、この場合にキャリア周波数を低減してインバータ13bのスイッチング損失を低減することにより、電動モータ1の出力を十分に確保して車両の操縦性を向上させることができるメリットがある。
なお、この第4変形例では、ABSコントローラ42の作動状態に応じてキャリア周波数を設定するようになっているが、このABSコントローラ42の作動状態に代え、VDCコントローラの作動状態に応じてキャリア周波数を設定するようにしてもよい。なお、VDC(Vehicle Dynamics Control)とは、VSC(Vehicle Stability Contorol)とも称されるものであって、車両の横滑り等を抑えて安定した走行姿勢を維持すべく、車両の各車輪のブレーキ力を調整するブレーキ制御を行うことで車両の挙動をコントロールするものである。また、この場合には、図24に示すキャリア周波数マップを用いてキャリア周波数を設定するとよい。
図25に示す第2の実施の形態の第5変形例は、キャリア周波数制御部たる搬送波生成部43が、上述した第2の実施の形態の第4変形例におけるABSコントローラ42の作動状態に代え、自動操舵制御部たる自動操舵コントローラ44の作動状態に基づいてキャリア周波数を設定するようになっているものであって、他の部分は上述した第2の実施の形態の第4変形例と同様である。
詳しくは、自動操舵コントローラ44は、車両およびその車両の周囲環境の情報に基づいてアシストトルク算出部18に自動操舵指令信号を出力し、もって転舵輪11の舵角を積極的に変化させる自動操舵制御を行うようになっている。この自動操舵制御として代表的には、車両が走行車線から逸脱することを防止するいわゆるレーンキープ制御や、車両の駐車を支援するいわゆる駐車アシスト制御、および車両の走行姿勢を制御するいわゆる車両挙動制御が挙げられる。
また、自動操舵コントローラ44からの自動操舵指令信号は、例えばCAN通信システムに代表されるような車両の通信システムにより、アシストトルク算出部18および搬送波生成部43にそれぞれ提供されるようになっている。なお、搬送波生成部43におけるキャリア周波数の設定にあたっては、図24に示すキャリア周波数マップのうち「ブレーキ制御」とあるところを「自動操舵制御」と読み替えて用いるとよい。
したがって、この第5変形例では、電動モータ1に高出力が要求されることになる自動操舵コントローラ44の自動操舵制御動作時にキャリア周波数を低減させることになるから、上述した第2の実施の形態と略同様の効果が得られる上、インバータ13bの昇温をより有効に抑制することができるメリットがある。
図26に示す第3の実施の形態は、キャリア周波数制御部たる搬送波生成部45が、インバータ13bの発熱量に関連する状態量であるq軸の目標電流Iq*に基づいてキャリア周波数を設定するようになっているものであって、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
具体的には図27に示すように、搬送波生成部45は、中設定周波数fcmに対応する値からq軸の目標電流Iq*が増加し、所定の第2設定目標電流Iq2を超えた場合には、その第2設定目標電流Iq2よりも高く設定した所定の第1設定目標電流Iq1までの範囲で、q軸の目標電流Iq*の増加にともなってキャリア周波数を連続的に漸減させることになる。そして、q軸の目標電流Iq*が第1設定目標電流Iq1に達すると、搬送波生成部45はキャリア周波数を低設定周波数fclに設定することになる。なお、当然のことながら、一旦増加したq軸の目標電流Iq*が低下して第2設定目標電流Iq2以下となった場合には、キャリア周波数を再び中設定周波数fcmに設定することになる。
ここで、キャリア周波数の低減を開始する第2設定目標電流Iq2としては、q軸の目標電流Iq*とインバータ13bの温度上昇量との関係を考慮して適宜設定すればよい。具体的には図28に示すように、インバータ13bの温度上昇量が急激に増大し始めるq軸の目標電流Iq*を第2設定目標電流Iq2として設定するとよい。
つまり、本実施の形態では、q軸の目標電流Iq*が増加するとインバータ13bの出力が増加して当該インバータ13bの発熱量が増大することから、このような場合にキャリア周波数を低減することでインバータ13bの昇温を抑制するようにしている。したがって、本実施の形態においても上述した第1の実施の形態と略同様な効果が得られる。
ここで、上記各実施の形態から把握される技術的思想であって、特許請求の範囲に記載していないものを、その効果とともに以下に記載する。
(1)上記キャリア周波数制御部は、上記インバータ温度が低下して上記キャリア周波数低減設定温度以下になった場合に、上記インバータ温度がキャリア周波数低減設定温度を超えていたときよりもキャリア周波数を高く設定するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記インバータにおける発熱の抑制が不要な場合に、キャリア周波数を高く設定することでインバータの騒音を抑制できるメリットがある。
(2)上記キャリア周波数制御部は、上記インバータ温度が上記キャリア周波数低減設定温度を超えているときに、キャリア周波数を上記インバータ温度に応じて連続的に変化させるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
この構成では、キャリア周波数を連続的に変化させることにより、キャリア周波数の急変によって運転者に違和感を与えることが防止できるから、操舵フィーリングが向上するメリットがある。
(3)車両の走行速度を検出する車速センサをさらに備えていて、上記キャリア周波数制御部は、上記インバータ温度が上記キャリア周波数低減設定温度を超え、且つ上記走行速度が所定の設定走行速度を超えているときに、上記インバータ温度が上記キャリア周波数低減設定温度以下であるときよりもキャリア周波数を低く設定するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記走行速度が高い場合にはロードノイズが大きくなるから、この場合にキャリア周波数を低減させることにより、キャリア周波数の低減によって増大するインバータの騒音を上記ロードノイズに紛れさせ、インバータの騒音を目立ちにくくすることができる。
(4)車両の駆動輪を回転駆動する原動機の回転速度を検出する回転速度センサをさらに備えていて、上記キャリア周波数制御部は、上記インバータ温度が上記キャリア周波数低減設定温度を超え、且つ上記走行速度が上記設定走行速度を超えていて、さらに上記回転速度が所定の設定回転速度を超えているときに、上記インバータ温度が上記キャリア周波数低減設定温度以下であるときよりもキャリア周波数を低く設定するようになっていることを特徴とする(3)に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記回転速度が高い場合には上記原動機で発生する騒音が大きくなるから、この場合にキャリア周波数を低減させることにより、キャリア周波数の低減によって増大するインバータの騒音を、上記ロードノイズに加えて上記原動機で発生する騒音に紛れさせ、インバータの騒音をより目立ちにくくすることができる。
(5)上記キャリア周波数制御部は、車両に搭載された他の電子機器における搬送波の中心周波数およびその中心周波数の次数倍と一致しないようにキャリア周波数を設定するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記他の電子機器の搬送波に混入するノイズを少なくとも低減することができる。
(6)上記キャリア周波数制御部は、上記インバータ温度が上記キャリア周波数低減設定温度よりも低く設定したキャリア周波数上昇設定温度以下である場合に、上記インバータ温度が上記キャリア周波数上昇設定温度を超えているときよりもキャリア周波数を高く設定するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記インバータの低温時にキャリア周波数を高く設定し、そのインバータの温度を積極的に上昇させるようになっているため、例えば冷間始動時において、上記インバータを安定して動作可能な温度まで速やかに昇温させることができるようになる。
(7)車両の走行状態に応じて当該車両の制動力を制御するブレーキ制御部をさらに備えていて、上記キャリア周波数制御部は、上記操舵速度が上記設定操舵速度を超えているときに、上記ブレーキ制御部の動作状態に応じてキャリア周波数を設定するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記インバータに高出力が要求されるか否かを上記操舵トルクに加えて上記ブレーキ制御部の動作状態に応じて判断し、これに応じてキャリア周波数を設定することにより、上記インバータの昇温を効果的に抑制することができる。
(8)上記ステアリングホイールを回転操作する手動操舵トルクを検出するトルクセンサをさらに備えていて、上記キャリア周波数制御部は、上記操舵速度が上記設定操舵速度を超えているときに、上記手動操舵トルクに応じてキャリア周波数を設定するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記インバータに高出力が要求されるか否かを上記操舵トルクに加えて上記手動操舵トルクに応じて判断し、これに応じてキャリア周波数を設定することにより、上記インバータの昇温を効果的に抑制することができる。
(9)運転者による操舵操作の頻度である操舵頻度を上記手動操舵トルクに基づいて算出する操舵頻度算出部をさらに備えていて、上記キャリア周波数制御部は、上記操舵速度が上記設定操舵速度を超え、且つ上記操舵頻度が所定の設定操舵頻度を超えているときに、上記操舵速度が上記設定操舵速度以下であるときよりもキャリア周波数を低く設定するようになっていることを特徴とする(8)に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記操舵頻度が高いときには上記インバータの発熱量が増大するから、このような場合にキャリア周波数を低減してインバータの発熱を抑制することにより、上記インバータの昇温をより効果的に抑制することができる。
(10)上記キャリア周波数制御部は、上記操舵速度が上記設定操舵速度以下である場合、または上記操舵頻度が上記設定操舵頻度以下である場合に、上記操舵速度が上記設定操舵速度を超え、且つ上記操舵頻度が所定の設定操舵頻度を超えているときよりもキャリア周波数を高く設定することを特徴とする(9)に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記インバータにおける発熱の抑制が不要なときにキャリア周波数を高く設定することにより、上記インバータの騒音を抑制することができる。
(11)車両の走行速度を検出する車速センサをさらに備えていて、上記キャリア周波数制御部は、上記操舵速度が所定の設定操舵速度を超え、且つ上記走行速度が所定の設定走行速度を超えているときに、上記操舵速度が上記設定操舵速度以下であるときよりもキャリア周波数を低く設定するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記走行速度が高い場合にはロードノイズが大きくなるから、この場合にキャリア周波数を低減させることにより、キャリア周波数の低減によって増大するインバータの騒音を上記ロードノイズに紛れさせ、インバータの騒音を目立ちにくくすることができる。
(12)上記キャリア周波数制御部は、上記操舵速度が上記設定操舵速度を超え、且つ上記走行速度が上記設定走行速度を超えているときに、上記走行速度の変化に応じて上記キャリア周波数を連続的に変化させるようになっていることを特徴とする(11)に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記キャリア周波数を連続的に変化させることにより、キャリア周波数の急変によって運転者に違和感を与えることが防止できるから、操舵フィーリングが向上するメリットがある。
(13)上記ステアリングホイールを回転操作する手動操舵トルクを検出するトルクセンサと、運転者による操舵操作の頻度である操舵頻度を上記手動操舵トルクに基づいて算出する操舵頻度算出部と、をさらに備えていて、上記キャリア周波数制御部は、上記操舵速度が上記設定操舵速度を超え、且つ上記操舵頻度が所定の設定操舵頻度を超えているときに、上記操舵速度が上記設定操舵速度以下であるときよりもキャリア周波数を低く設定するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記操舵頻度が高いときには上記インバータの発熱量が増大するから、このような場合にキャリア周波数を低減してインバータの発熱を抑制することにより、上記インバータの昇温をより効果的に抑制することができる。
(14)上記キャリア周波数制御部は、上記目標電流が上記設定目標電流を超えているときに、上記目標電流の変化に応じてキャリア周波数を連続的に変化させるようになっていることを特徴とする請求項5に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記キャリア周波数を連続的に変化させることにより、キャリア周波数の急変によって運転者に違和感を与えることが防止できるから、操舵フィーリングが向上するメリットがある。
(15)上記キャリア周波数制御部は、上記目標電流が低下して上記設定目標電流以下となった場合に、上記目標電流が上記設定目標電流を超えていたときよりもキャリア周波数を高く設定することを特徴とする請求項5に記載の操舵制御装置。
この構成では、上記インバータにおける発熱の抑制が不要なときにキャリア周波数を高く設定することにより、上記インバータの騒音を抑制できるメリットがある。