JP2010221091A - 排ガス浄化触媒用複合酸化物および排ガス浄化触媒用塗料とディーゼル排ガス浄化用フィルタ - Google Patents

排ガス浄化触媒用複合酸化物および排ガス浄化触媒用塗料とディーゼル排ガス浄化用フィルタ Download PDF

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Abstract

【課題】触媒が備えておくべき耐熱性を確保しつつ、安定して硫黄による失活を抑制し、かつ容易に活性を回復しうる触媒を提供し、かような性質を有する触媒が分散された塗料ならびにかような触媒が塗布されて形成されたディーゼルパティキュレートフィルターを提供すること。
【解決手段】セリウムとA、B(AおよびBは、Pr、Zr、Ti、Feから選ばれた1種以上の元素)を含み、セリウム、AおよびBの元素がモル比でCe:A:B=(1−x−y):x:y(ただし、0<x+y≦0.3)であり、CeOの(311)面で測定した結晶子径が16nm以上である複合酸化物である。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車等のディーゼルエンジンから排出されるPM(粒子状物質)を燃焼させるのに適した複合酸化物からなる排ガス浄化触媒、およびそれを用いた触媒用塗料とその塗料を基材上に塗布したディーゼル排ガス浄化用フィルタに関する。
ディーゼルエンジンのもつ問題として、窒素酸化物(NOx)とカーボンを主体とする微粒子(以後「PM」とも言う。)が排ガス中に含まれ、環境汚染の原因となる点が挙げられる。こうした問題の一つであるPMを除去する一般的な方法として、排気ガス流路に多孔質体セラミックスからなるディーゼル・パーティキュレート・フィルタ(DPF)を設置してPMを捕集(トラップ)する方法がある。この方法では、DPFにはPMが蓄積されてゆき、排気が行われにくくなる。そのため、捕集されたPMを間欠的または連続的に燃焼処理することによりPMを除去し、DPFをPM捕集前の状態に再生させることが通常行われている。
元来、このDPF再生処理には、電気ヒーターやバーナー等、外部からの強制加熱によりPMを燃焼させる方法、DPFよりもエンジン側に酸化触媒を設置し、排ガス中に含まれるNOを酸化触媒によりNO2へと酸化した上で、DPFへと供給した後、NO2の酸化力を利用してPMを燃焼させる方法が一般的に用いられている。
しかし、上述の方法では、外部に加熱するための機構(電気ヒーターやバーナーなど)が別途必要になるため排ガス浄化システムそのものが複雑化する。また、酸化触媒についてはもともと運転時に発生する排ガスの温度が低いため、触媒活性が十分に発揮されないことがあるとともに、ある一定の運転状況下でなければNOが不足して、PMの燃焼が不十分となることもあることが問題点としてあげられていた。
そこで、DPFそのものに触媒を担持させることで、その担持された触媒の作用によりPMの燃焼開始温度を低下させ、外部ヒーター等の加熱装置を必要とせずともPMを燃焼させることのできる方法が検討されている。そして究極的には排ガス温度にて連続的にPMを燃焼させる方法が最も望まれている。
現在ではDPFにトラップされたPMを燃焼除去させるための酸化触媒(PM燃焼触媒)として、高比表面積のアルミナ等に触媒金属のPtを担持させたものが使用されている。しかし、排ガス温度レベルではPtといえども、PMを燃焼させるのに十分な触媒作用を発揮できない。すなわち、排ガスの熱を利用するだけでは、PMを連続的に燃焼させることは困難であるので、外部からの強制加熱手段と併用することが必要不可欠となる。また、Ptは希少金属であり高価であるため、わずかな使用であってもコスト増を招くという問題がある。
さらに、PMを燃焼させる場合には、熱が発生することは避けられず、熱源に近接した触媒物質が曝される温度は大変高くなることが想定される。このため、PM燃焼触媒においては高温での熱履歴を受けた場合においても触媒性能の低下(熱劣化)ができるだけ少ない触媒物質であることも必要である。
ところで、酸化セリウムは酸素の保持・脱離能力に優れるため、助触媒として広く用いられてきた。ところが、セリウムは硫酸塩を形成しやすく、一度こうした化合物を形成してしまうと、容易に触媒作用を失活してしまう。このような状態を回避するため、特許文献1から4に記載されるように、触媒作用を有するセリウムに加えてジルコニウムを添加して、セリア・ジルコニア固溶体として使用することが行われてきた。ジルコニアを添加することは、上記のような効果とともに、耐熱性を高める効果もあることが知られている。
また、上記に加えて特許文献5には、セリア・ジルコニアの固溶体に対して、ランタン、ネオジウム、プラセオジウムから選択される少なくとも一種を添加して、BET比表面積が高く、また酸素吸蔵力の高い触媒も提案されている。また、特許文献6では、セリア・ジルコニア・希土類の複合酸化物を触媒として、カーボン燃焼速度を早める試みも提案されている。
特許第4053623号公報 特許第3985054号公報 特許第3556839号公報 特許第3861385号公報 特許第4041106号公報 特開2006−326573号公報
酸化セリウムを成分として含み、触媒として使用する場合には、その含有量の多寡によらず硫黄による被毒による触媒活性の失活の問題が必ず生じる。そのため、先行文献では、ジルコニウムの配合割合を高め、失活の影響をできるだけ小さくすることが行われている。
一方、本願発明者らの検討によれば、特許文献5に記載されているような、セリア・ジルコニアの固溶体に対し、希土類成分、とりわけプラセオジウムを反応の初期段階で添加し、セリア・ジルコニア・希土類の固溶体とすることで、従来技術では見いだされていなかった、硫黄に対する耐性があることがわかってきた。しかしながら、特許文献5に記載されているような範囲であったとしても、必ずしも同様の効果が安定的に現れるわけではないこともわかってきた。
さらに、この組成系であれば、一旦硫黄が触媒に作用して被毒したとしても、簡単な操作を経るだけで容易に触媒作用が回復することがあることもわかってきたが、それも上記先行技術のような単純にセリウムの割合を高めるだけでは生じないこともわかってきた。
すなわち、上記特許文献5に記載の技術では、酸素吸蔵能に優れた燃焼を補助することに適した触媒を提供できているが、硫黄への耐性については検討されておらず、ディーゼルエンジンの排ガス用途に用いるには、まだ不十分であった。同様のことは特許文献6に記載の粒子にもいうことができ、硫黄酸性ガスに対する耐性がある場合と極端に悪くなる場合があり、硫黄酸性ガスに対する安定性に関しては検討すべき点が多い。
そこで、本発明の解決すべき技術的課題は、触媒が備えておくべき耐熱性を確保しつつ、安定して硫黄による失活を抑制し、かつ容易に活性を回復しうる触媒を提供し、このような性質を有する触媒が分散された塗料ならびに、このような触媒が塗布されて形成されたディーゼルパティキュレートフィルターを提供することにある。
本発明者らは、かかる目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、セリウムに所定元素を僅かに加えた複合酸化物であって、特定の結晶子径を有するものであれば、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明とは、セリウムとA、B(AおよびBは、Pr、Zr、Ti、Feから選ばれた1種以上の元素)を含み、セリウム、AおよびBの元素がモル比でCe:A:B=(1−x−y):x:yで表わされ(ただし、xとyは0<x+y≦0.3である)、CeO2の(311)面の測定から得られる結晶子径が16nm以上である複合酸化物である。
さらにより具体的には、AにPr、BにZrを選択し、セリウム、PrおよびZrの元素がモル比でCe:Pr:Zr=(1−x−y):x:yで表わされ(ただし、xとyは0<x≦0.3、0<y≦0.3、0<x+y≦0.3である)、CeO2の(311)面の測定から得られる結晶子径が16nm以上である複合酸化物である
さらに詳しくは、800℃で大気中2時間仮焼した後の酸化物のBET法により算出される比表面積が50m2/g以上であり、800℃で大気中100時間仮焼した(耐熱安定性評価)後の酸化物のBET法により算出される比表面積が29m2/g以上を保つ性質を有する酸化物である。
また、熱処理前後の疑似PMであるカーボンブラック(CB)燃焼活性評価において、次式(1)で示される、(燃焼活性)悪化率が10%未満である酸化物である。
(燃焼活性)悪化率(%)=100×(熱処理後CB燃焼開始温度−合成直後CB燃焼開始温度)/合成直後CB燃焼開始温度・・・(1)
また、この複合酸化物が分散された塗料と、その塗料を多孔質フィルタに塗布することによって構成されたDPFである。
さらには、上記の構成に加え、Pd、Pt、Rhといった白金族を複合酸化物そのもの、あるいはフィルタに担持した、DPFである。
本発明により提供される複合酸化物は、硫黄による被毒割合が小さいとともに、触媒性能の回復が容易であって、さらに耐熱性に富んだ触媒を提供することができる。さらには、この触媒が分散した塗料を塗布することによって、低温でも優れたPM浄化性能を呈する触媒を提供することができるようになる。
さらに、本発明に従う複合酸化物をDPFに担持して使用することで、排ガス環境によらず低温でPMを除去できるようになるため、DPFそのものでPMを燃焼させることができるようになる。ひいては、上記従来行われていたDPFのPM捕集性能を回復するための大規模な外部加熱装置を設置することを必要としない、排ガス浄化システムも提供することも可能になる。
本発明に従う触媒の熱安定性と触媒性能回復性の相関を示した図である。 本発明の排ガス浄化触媒用複合酸化物を用いたDPFの構造を示す図である。 TG曲線を説明する図である。 実施例と比較例について触媒温度とCO転化率を表わすグラフである。
<粒子の組成構成>
本発明の排ガス浄化触媒用複合酸化物は、CeにPr、Zr、Ti、若しくはFeのうちの少なくとも2つの元素を含む複合酸化物である。このような構成とすることで、比較的低温で排ガス雰囲気が吸着した硫黄分を脱離させ、もとの触媒活性を回復することができる。
本発明にかかる複合酸化物は、Ceを基材とする複合酸化物であるので、PMを低温から燃焼させることができる触媒活性の機構は、従来のセリウム系複合酸化物において考えられている機構と同様であると考えられる。
すなわち、本発明の複合酸化物は、酸化第二セリウム(CeO2)の蛍石型構造を保ったまま、セリウムの位置の一部をジルコニウム等の添加元素が置換して固溶体となる。添加元素はセリウムより小さいことから、セリウムが酸素を排出して、4価から3価に変化し体積膨張が起こっても、ジルコニウムイオンの存在により、結晶格子の歪が緩和される性質を有する。
従来このような組成で触媒を作成するには、セリウムの被毒を抑制し、触媒活性を維持する目的で、ジルコニウムをセリウムよりも多く混入することが広くなされてきた。しかし、本発明においては、ジルコニウムの含有量をより少なく設定し、セリウムの構成割合をより多くし、かつ触媒粒子における特定の物性値を特定の範囲とすることで、より触媒性能に優れた触媒粉末を得られることを見いだし、本発明を完成させた。ここで、ジルコニウムの添加量は、モル比で0<Zr≦0.25とするのが好ましい。さらに好ましくは0<Zr≦0.1である。
本発明では添加元素としてPr、Zr、Ti、Feから選ばれた1種以上の元素)を添加した新規な複合酸化物を提供する。とりわけ、本発明の複合酸化物を構成する元素の割合は、CeとA、B(AまたはBは、Pr、Zr、Ti、Feから選ばれた1種以上の元素)のモル比をCe:A:B=(1−x−y):x:yとするとき、0<x+y≦0.3であることが好ましい。
特にAをPr、BをZrで構成する場合は、Prの酸化物は酸化第二セリウム(CeO2)と同様の蛍石型構造をとるため、PrでCe原子の一部を置換することにより蛍石型構造が維持され易く、一層耐熱性の向上した排ガス浄化触媒を得ることができる。そのときの元素割合のモル比は、Ce:Pr:Zr=(1−x−y):x:yとするとき、0<x≦0.3、0<y≦0.3、0<x+y≦0.3を満たすものであるのがよい。
なお、本願発明のセリウム構造体においては、セリウムと複合酸化物を構成するために添加していた元素(Pr、Zr、Ti、若しくはFe)が十分に酸化セリウムと複合酸化物を形成せずに、不純物相として存在する場合がある。これらの取り込まれなかった元素については、本発明の効果が阻害されない限りその不純物相の存在は許容される。許容される量の不純物相が存在する場合は、不純物相中のCeと添加元素を含めた複合酸化物全体としてのモル比が上記を満たしていればよい。
このような複合酸化物とともに白金族元素を共存させることも有効である。白金族元素は排気ガス中に含まれる未燃燃料、および、NO、CO等の未燃焼成分の酸化を促進させる作用を有する。また、PM燃焼開始温度をさらに低下させる効果も期待できる。白金族元素(Pt、Rh、Pd、Ir、Ru、Os)のうち1種以上を使用することができ、特にPt、Rh、Pdが触媒効率を高める上で効果が大きい。白金族元素は例えば本発明の複合酸化物に含有させる形で共存させても、含浸して触媒表面に担持させてもよい。
他方の構成として、Al23、TiO2、SiO2など一般に触媒担体として使用される物質に白金族元素を含有させ、その物質を本発明の複合酸化物とともに混合することによって、本発明の複合酸化物と白金族元素を共存させることも一つの構成である。白金族元素の量は、本発明の複合酸化物中、あるいはさらに上記触媒担体物質が混合される場合は本発明の複合酸化物と上記触媒担体物質の混合物中における白金族元素の含有量が例えば0.05〜5質量%となるようにすればよい。
<粒子の物理的特性>
粒子の性質として粒子の組成比が上述の範囲内であり、かつ800℃2時間の仮焼後に得られる粉体において、CeO2(311)の回折線により算出される結晶子径が16nm以上である複合酸化物であれば、合成直後に対して、長時間高熱に曝した後でもPM燃焼活性が悪化しがたいことがわかった。この範囲を外れると硫黄の脱離性が低下し、触媒活性が回復しない、若しくは回復するとしても比較的高温の温度をかけなければ触媒活性が回復しない。
この理由については不明確なところも多いが、本発明に従う粒子Ceを含む三元系粒子)の構成を取る場合には、結晶子径が小さい場合、粒子としての反応活性が高く、硫黄酸性ガスと反応して難脱離性の硫黄化合物を形成しやすいため、再生処理を施しても触媒活性を容易な方法で回復させることが困難であることが判明した。発明者らの知見によれば、酸化第二セリウムの結晶方位(311)における結晶子径で16nm未満の場合にこのような影響が顕著に現れる。この場合には、再生処理後の硫黄含有量の減少量は比較的小さい値を示す。
本発明の粉体特性としては、800℃2時間の仮焼後に得られる粉体において、BET法による比表面積が50m2/g以上であることが好ましい。比表面積が50m2/g未満であるとPMとの接触面積が少なくなるため、触媒作用が不十分になることがある。また、触媒表面に貴金属を担持する場合には、粒子表面における凹凸が少なくなっている状態であるため、担持できるサイトが少なくなることに起因し、貴金属を担持することそのものが難しくなる。
また100m2/gを超えると本発明の効果以上に再生時の温度上昇による熱劣化が進行し触媒活性が低下しやすい。また、BET値が高い場合には、硫黄による被毒が生じた場合にも表面の凹凸に取り込まれて脱離し難くなるとも推測され、必ずしも好ましい形態ではない。
800℃で大気中100時間仮焼した(耐熱安定性評価)後の酸化物の比表面積は29m2/g以上であることが好ましい。耐熱安定化処理後の比表面積が29m2/g未満となる場合では、PMの燃焼性能が低下しやすくなる。さらに、表面に貴金属を担持している場合には、貴金属原子の移動が生じやすくなり、結果として貴金属が触媒層表面で塊状化することがある。かような場合には、貴金属の有する触媒性能を得ることができにくくなるので好ましくはない。
また、粒度分布は、レーザー回折法による粒度分布測定によるD50径が0.01〜10μmであることが好ましい。この算出法により得られる粒子径は、いわゆる粒子の凝集径を示すものであり、塗布時においては一つの粒子として振る舞う粒子の大きさを示す。D50径が0.01μm未満であれば、DPFの内部まで浸透し、細孔の最深部まで浸透しやすいという意味では好ましい大きさではあるが、結果としてPMが入り込まない細孔にまで浸透してしまう。これは言い換えると、DPFに触媒粒子が埋没することになるので、触媒性能を発現させるために必要な量が多くなってしまうため好ましくない。10μmを超えるとDPFの細孔を塞いでしまい、圧損が大きくなるため好ましくない。
<粒子>
ここで本願発明にかかる粒子についてさらに述べる。本願発明にかかる粒子はCeとA,Bからなる複合酸化物について、湿式法による沈殿粒子を800℃にて2時間大気中で焼成する手法で合成し、粒子の物性と硫黄被毒後の再生性および耐熱処理後のPM燃焼性能について調べたところ、A、Bの添加によって、結晶子径の調整ができ、この三元系の下で、結晶子径を大きくすることが触媒の再生性やPM燃焼性能に大きく関係することがわかった。
上記のような構成を取ることで、次のような性質が発現する。すなわち(イ)酸素の脱離が容易であり、PMの燃焼を促進することができる(ロ)硫黄にさらされることより従来は劣化するとされていた触媒活性が維持される(ハ)触媒が硫黄にさらされて劣化したとしても、簡便な方法で吸着した硫黄分を放出し、触媒性能を回復させることができる、という性質である。
続いて、本願にかかる粒子の製造方法について説明する。本発明の対象となる複合酸化物は、湿式法で得られた沈殿生成物質を焼成する方法により好適に合成することができる。Ceの水溶性塩とA、B(例えばPr、Zr)の水溶性塩を沈殿剤により沈殿させ、空気を吹き込んで酸化させる。その沈殿物を乾燥させることにより「前駆体」とし、その前駆体を熱処理することにより複合酸化物を合成する。
具体的には、Ceの水溶性塩(例えば硝酸塩)、とAおよびBの水溶性塩を溶解させた水溶液に、沈殿剤としてアルカリを加えて反応させ、空気を吹き込み酸化させ酸化物の混合物を生成させる。得られた沈殿生成物を濾過、洗浄・乾燥することによって前駆体を得る。沈殿を生成させる液中のCe、A、Bのイオン濃度は、溶解度によって上限が決まる。しかし、あまり液中濃度が濃すぎると、撹拌時に均一に反応が生じず不均一になる可能性があり、また撹拌時に装置の負荷が過大になる場合があるので、好ましくない。
上記のような沈殿物を得るためには水酸化アルカリによる直接沈降、あるいは炭酸塩を経由した後アルカリを添加して沈降させる方法を用いることができる。具体的に例示すると、水酸化アルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水などが好適に用いられる。また、炭酸塩を経由する場合には炭酸水、炭酸ガス、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどといった、その構造中に炭酸基をもつものを使用した後、上記のアルカリを添加する方法や、あるいはその双方の機能を併せ持つ炭酸アンモニウム化合物、具体的には炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどを使用することができる。
得られた沈殿物は必要に応じて濾過、水洗され、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させ、前駆体とする。この際、乾燥による脱水効果を高めるため、濾過した直後の形態のまま乾燥処理するか、所定の形状に造粒した後に乾燥処理させることができる。その後、前駆体を、粉末形状あるいは造粒した状態のまま、例えば400〜1000℃、好ましくは500〜1000℃、さらに好ましくは800〜900℃で1時間以上、好ましくは2時間以上熱処理(焼成)することにより、目的とする複合酸化物を合成することができる。焼成時の雰囲気は複合酸化物が生成できるような条件であれば特に制限されず、例えば、空気中、窒素中、アルゴン中およびそれらに水蒸気を組み合わせた雰囲気を使用することができる。
白金族元素を本発明の複合酸化物に含有させる場合は、例えば、焼成後の複合酸化物に、目的量の白金族元素を含む塩あるいは錯体を含浸させた後、乾燥、焼成させる手法や、ロータリーエバポレーター等を使用し溶液中に浸漬させた後、蒸発乾固して得られた粉末を焼成する手法が採用できる。
本発明の複合酸化物を排ガス浄化触媒として排ガス浄化触媒用塗料やそれを用いたDPFを構築することができる。排ガス浄化触媒用塗料は、本発明の排ガス浄化触媒と、溶剤と無機バインダを含む塗料である。場合によって分散剤や粘度調整剤やpH調整剤を含んでいても良い。
溶剤としては、極性溶剤や非極性溶剤のどちらを用いても良い。フィルタ上に塗布した後、すばやく乾燥させるためには、沸点の低い溶剤がよいが、取り扱いを考えると水系の溶剤でもよい。具体的には水、イソプロピルアルコール、テルピネオール、2−オクタノール、ブチルカルビトールアセテート等が好適に利用できる。
無機バインダとしては、Al23、TiO2、SiO2などの粉体が好適に用いられる。PM触媒は高温に曝されるため、高温でも安定した特性を示す材料が好ましい。
本発明の複合酸化物を用いたDPFは、構造は特に限定されない。例えば図2にDPFの一例を示す。DPF1は入り口側10から見た断面がハニカム構造をした筒状の形態をしており、材質は多孔質なセラミックで構成されている。入り口側(「エンジン側」とも言う。)10と出口側(「大気開放側」ともいう。)11は直接的な貫通孔を有しておらず、多孔質セラミックがフィルタとなっている。多孔質セラミックには、具体的にはセラックス、コージェライト、炭化珪素、チタン酸アルミなどが好適に用いられる。また、形状は図2に示した構造のほか、発泡体、メッシュ、板状といった形状でもよい。
本発明の複合酸化物はDPFのエンジン側10に配置されるのがよい。また、白金系の触媒は本発明の触媒に担持させるだけでなく、別々に使用する方法も採用することができる。そういった構成にするために、本発明のPM触媒から大気開放側に配置してもよい。例えば、DPFのエンジン側の壁面12に白金系の触媒の層と本発明のPM触媒の層をそれぞれ別々に塗布した多重層構造とすることなどが挙げられる。
また本発明の排ガス浄化触媒用塗料をエンジン側の壁面12に塗布し、大気開放側の壁面14には白金系触媒の塗料を塗ってもよい。この場合は、エンジン側にPM触媒30があり、大気開放側に白金系の触媒40が配置されることとなる。また、白金系の触媒粉を本発明の排ガス浄化触媒用塗料に混ぜて塗布してもよい。なお、白金系の触媒とは、白金族元素を用いた触媒をいう。
次に本発明において、物性や触媒性能等を確認するため行う評価について詳述する。
《BET比表面積の測定》
後述の方法で得られた耐熱処理前の試料、および上記耐熱処理後の試料(耐熱後と表示)について、メノウ乳鉢で解粒し、粉末とした後、BET法により比表面積を求めた。測定はユアサアイオニクス製の4ソーブUSを用いて行った。
《結晶子径の測定》
得られた耐熱処理前の試料、および上記耐熱処理後の試料(耐熱後と表示)について、メノウ乳鉢で解粒し、粉末とした後、粉末X線回折法による半価幅からSherrerの式を用いて算出した。使用するピークはCeO2(JCPDSカード:34−0394)の(311)面に現れる回折線を使用した。
測定は、2θ=65〜69度の範囲で行う。測定条件は、管球としてCo管球を使用し、管電圧40kV・管電流30mAとした。X線回折装置は、株式会社リガク製・自動X線回折装置RINT−2100、若しくはこの装置の同等品を使用できる。
《PM燃焼温度の評価》
後述の方法で得られた試料、および上記耐熱処理後の試料について、カーボンブラックとの混合粉を作り、その中の一部を規定量分取した上、TG/DTA装置を用いてカーボンブラック燃焼温度を求めることによってPM燃焼開始温度を測定した。具体的には以下のようにした。
模擬PMとして市販のカーボンブラック(三菱化学株式会社製、平均粒径2.09μm)を用い、複合酸化物試料の粉体とカーボンブラックの質量比が6:1になるように秤量し、自動乳鉢機(石川工場製AGA型)で20分間混合し、カーボンブラックと各試料粉体の混合粉体を得た。この混合粉体20mgをTG/DTA装置(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製、ExstarTG/DTA6300型)にセットし、昇温速度10℃/minにて常温から700℃まで大気中で昇温し、重量減少量の測定を行った。カーボンブラックは燃焼により二酸化炭素として系外に排出されるので、初期重量からは減少傾向になるからである。
図3に、重量変化曲線(TG曲線)と示差熱曲線(DTA曲線)を模式的に示す。DTA曲線において、発熱量が最大となる点をPM燃焼温度とした。図3では符号50の温度である。
《耐熱性の評価》
PM燃焼触媒が高温・長時間の熱履歴を受けたときの耐熱性を評価する手法として、例えば焼成により合成された複合酸化物を大気中で高温・長時間加熱する処理(以下これを「耐熱処理」という)に供し、焼成された直後と、耐熱処理を受けた後とで、PM燃焼に対する触媒活性がどの程度変化するかを見る方法が有効である。本明細書での耐熱性を評価する試料は、電気炉により空気中800℃で100時間にわたって熱処理(耐熱処理)することによって得た。こうして得られた触媒粒子を、合成直後のPM燃焼温度の評価と同じ手法を用いて評価した。
触媒の耐熱性は、絶対値自体を評価するほか、熱処理前後における燃焼温度の悪化度合を用いて評価することができる。具体的には、以下の(1)式によった。
(燃焼活性)悪化率(%)=100×(熱処理後CB燃焼開始温度−合成直後CB燃焼開始温度)/合成直後CB燃焼開始温度・・・(1)
《硫黄被毒の評価》
PM燃焼触媒が硫黄酸化物に曝された場合の耐被毒性を評価する方法としては、合成したPM燃焼触媒を微量の硫黄含有ガスに所定時間曝して、触媒活性の変化を見るのが有効である。試料については下記のようにして調製したものを用いた。
金型プレスを用いて、複合酸化物を100kg/cm2で圧縮成形後、粉砕して、粒子径1.0〜2.0mmの粒状試料を作製する。当該粒状試料3gを縦型管状炉に配置し、300℃×10時間の処理条件下で、200ppmのSO2、10%のO2、10%のH2O、残部N2のガスを500cc/minの流量で流し、硫黄被毒処理を実施し硫黄被毒処理材を得た。硫黄被毒処理材は、乳鉢にて解粒する。その後それぞれの試料とカーボンブラックとの混合粉を作り、その中の一部を規定量分取した上、TG/DTA装置を用いてカーボンブラック燃焼温度を求めることによってPM燃焼温度を測定した。条件としては、上述の昇温速度10℃/minにて常温から700℃まで大気中で昇温し、重量減少量の測定を行うことにより求めた。
評価は、絶対値自体を評価するほか、硫黄被毒処理前後における燃焼温度の悪化度合を用いて評価することができる。具体的には、以下の(2)式によった。
(燃焼活性)悪化率(%)=100×(硫黄被毒処理後CB燃焼開始温度−合成直後CB燃焼開始温度)/合成直後CB燃焼開始温度・・・(2)
《触媒再生処理(硫黄パージ性)の評価》
PM燃焼触媒の硫黄脱離性を評価する手法としては、最初にPM燃焼温度を測定しておき、Sの含有ガスに触媒を所定時間接触させる。次に短時間の間所定温度に曝すS脱離処理を行い、その後再度PM燃焼温度を測定し、最初のPM燃焼温度と比較する方法が有効である。以下この方法を触媒再生処理という。
得られた試料について、上述の通り硫黄被毒処理を実施した後、580ppmのNOと20000ppmのCOと16%のCO2と6200ppmのプロピレンと1.95%のO2と10%のH2Oで残部N2のガスを流量3L/minの環境で600℃の温度にて3分間処理し、触媒再生処理を行った。その後上述の方法でPM燃焼温度を測定した。
評価は、絶対値自体を評価するほか、硫黄被毒処理によって悪化した悪化率が、触媒再生処理によってどの程度回復するかを用いて行うこともできる。触媒再生処理後の合成直後の触媒に対する活性悪化率をまず(3)式で算出する。
(燃焼活性)悪化率(%)=100×(触媒再生処理後CB燃焼開始温度−合成直後CB燃焼開始温度)/合成直後CB燃焼開始温度・・・(3)
そうしたのち、硫黄被毒により悪化した悪化率がどの程度回復したかを示す再生利率を次の(6)式のように定義し算出した。
再生率(%)=100×{(2)−(3)}/(2)・・・(4)
《吸着硫黄量の評価》
各実施例、比較例で得られた試料について、上述硫黄被毒処理、Sパージ処理を実施したものについて吸着硫黄量の定量分析を行った。当該定量分析には炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製EMIA−220V)を用いることができる。
《測定結果について》
実施例1〜4および比較例1〜3について、元素モル比、比表面積、結晶子径、CB燃焼温度および吸着硫黄量の結果を表1に示す。
以下実施例について詳細に説明する。
《複合酸化物の作製》
各実施例、比較例の複合酸化物を以下のようにして作製した。
〔実施例1〕CePrZr(0.90:0.05:0.05)の系
Ce源として硝酸セリウム六水和物(Ce(NO33・6H2O)、Pr源として硝酸プラセオジム六水和物(PrNO33・6H2O)、Zr源としてオキシ硝酸ジルコニウム二水和物(ZrO(NO32・2H2O)を用意した。
これらを、Ce、Pr、Zrのモル比が0.90:0.05:0.05となる配合割合で混合し、Ce、Pr、Zrの合計が0.8mol/Lとなるようにイオン交換水を加えて原料溶液を得た。沈澱剤として原料溶液中硝酸根の1.7当量分のNH4OHを原料溶液の3倍量の水溶液とし、攪拌しながら反応溶液中のCe、Pr、Zrの合計が0.2mol/Lとなるように(すなわち、合計液量は4Lであり、Ce、Pr、Zrは、Ce:0.72mol、Pr:0.04mol、Zr:0.04mol溶解している)上記原料溶液を添加し水酸化物の沈殿を得た。
その後、撹拌しながら50℃で空気を充分に吹き込み、水酸化物を酸化物にして安定化させた。得られた沈殿物をろ過、水洗し、125℃で大気中12時間乾燥して、乾燥粉末を得た。この乾燥粉末が「前駆体」である。次に、この前駆体を大気雰囲気下800℃で2時間焼成してCeとPrとZrを主成分とする複合酸化物を得た。X線による構造解析によれば、本粉末の回折線は、CeO2のピークに合致するものであった。
〔実施例2〕CePrZr(0.85:0.05:0.10)の系
Ce、Pr、Zrのモル比が0.85:0.05:0.10となる配合割合で混合した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の複合酸化物を得た。
〔実施例3〕CePrZr(0.80:0.10:0.10)の系
Ce、Pr、Zrのモル比が0.80:0.10:0.10となる配合割合で混合した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の複合酸化物を得た。
〔実施例4〕CePrZr(0.70:0.20:0.10)の系
Ce、Pr、Zrのモル比が0.70:0.20:0.10となる配合割合で混合した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の複合酸化物を得た。
〔比較例1〕
Ce源として硝酸セリウム六水和物(Ce(NO33・6H2O)を用い、溶液中のCe量が0.2mol/Lとなるようにイオン交換水を加えて原料溶液を得た。この溶液を撹拌しながら沈殿剤として炭酸アンモニウム水溶液を添加した。その後、30分間撹拌を継続することにより、沈殿反応を十分に進行させた。得られた沈殿物をろ過、水洗し、125℃で大気中12時間乾燥して、乾燥粉末を得た。得られた粉末を前駆体という。次に、この前駆体を大気雰囲気下800℃で2時間焼成してCeO2を得た。
〔比較例2〕
Ce、Zrのモル比が0.71:0.29のCeZr酸化物を使用した。具体的にはCe源として硝酸セリウム六水和物(Ce(NO33・6H2O)、Zr源としてオキシ硝酸ジルコニウム二水和物(ZrO(NO32・2H2O)を用意した。
これらを、Ce、Zrのモル比が0.71:0.29となる配合割合で混合し、Ce、Zrの合計が0.8mol/Lとなるようにイオン交換水を加えて原料溶液を得た。沈澱剤として原料溶液中硝酸根の1.7当量分のNH4OHを原料溶液の3倍量の水溶液とし、攪拌しながら反応溶液中のCe、Zrの合計が0.2mol/Lとなるように上記原料溶液を添加し水酸化物の沈殿を得た。その後の工程は実施例1と同じであった。
〔比較例3〕CePrZr(0.60:0.10:0.30)の系
Ce、Pr、Zrのモル比が0.60:0.10:0.30となる配合割合で混合した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の複合酸化物を得た。
ここで、Ce/Pr+Zrは組成比をそれぞれ組み込んで計算した。例えば、実施例1ではCe:0.90、Pr:0.05、Zr:0.05なので、Ce/Pr+Zr=0.90/(0.05+0.05)=9.0となる。また結晶子の変化率は空気中800℃で100時間にわたって熱処理(耐熱処理)することによって得た粉末における結晶子径と合成直後の結晶子径の比較により算出した。熱処理により結晶子径は大きくなると推定されたので、以下の計算から結晶子変化率(%)を求めた。
結晶子変化率(%)=100×((熱処理後の結晶子径(nm)−合成直後の結晶子径(nm))/熱処理前の結晶子径(nm)
表2から、比較例1では、熱に対する悪化率が7.0%と最も小さく、硫黄酸性ガスによる悪化率が49.0%と最も高い。このことから、比較例1に示したZr等の全く添加されていないCeO2からなる触媒であれば、熱に対する安定性は高いが、硫黄に対する耐性が弱いことがわかる。
次に、比較例2では、触媒の再生率は92.8%と高いものの、合成直後のPM燃焼温度も403.0℃と最も高く、また熱安定性の悪化率も21.8%と最も高い。これより、比較例2で示したPrといった第三成分の添加されていないCe0.7Zr0.32は、触媒の再生率は高い値を示すものの、元々の初期活性が低いとともに、熱に対する安定性が良くないことがわかる。また、本願発明の範囲から外れるPr添加量である比較例3であれば、硫黄被毒処理後の再生が十分でなく、再生率が58.2%と最も小さい値を示し、一度劣化した触媒性能は回復しづらいことを示す。
表1に示した結晶子径の値を見ると、比較例2,3は合成直後の結晶子径が小さく、実施例は比較的大きい値を示している。比較的組成系の近接した実施例4と比較例3を対比すると、熱処理前後の変化率が比較例3の方が大きくなっており、粒子内における結晶成長が進んでいることを示唆する結果になっている。この二者間において、大きく触媒の再生性能に違いが出ており、このわずかな組成間で触媒の性質が劇的に変化していることがわかる。
絶対値の比較において本発明の複合酸化物のPM燃焼温度特性は、合成直後のCB燃焼温度が350℃程度と低く、かつ耐熱処理後のCB燃焼温度の上昇が20℃以下と小さくなっている。すなわち、初期の活性が高く、かつ耐熱処理による劣化が抑えられていると言える。一方、比較例はどれも耐熱処理後のCB燃焼温度は合成直後より20℃以上高く、耐熱性に劣っていることがわかる。
次に、硫黄含有ガスに10時間曝された後のCB燃焼温度(「硫黄劣化処理後」参照)は、合成処理直後と比較して、実施例では、110℃以下の悪化に抑制されているのに対して、比較例は130℃以上悪化している。
次に10時間硫黄含有ガスで被毒された状態からの触媒再生性(「触媒再生処理後」参照)では、上述の600℃3分の触媒再生処理で、実施例は合成処理直後のCB燃焼温度に対してほぼ30℃高くなる程度の水準にまで回復した。一方、比較例1および3は、約60℃高くなる程度の水準までしか回復しなかった。これはより低い触媒再生温度で、しかもより効果的に触媒活性を回復することができることを示している。なお、比較例2は、合成処理直後より10℃高い劣化まで回復したが、合成処理直後のCB燃焼温度がそもそも高く、もともと初期における活性が低いものである。
次に本発明の複合酸化物へ貴金属を担持したときの効果についてCOガスの酸化性能のCO2への転化率で確認を行った。
〔実施例5〕
実施例3で得られた複合酸化物10gを、濃度4.84質量%硝酸パラジウム溶液0.83gと純水89.2gとを混合した硝酸パラジウム水溶液へ、25℃にて60分浸漬し、Pdを含浸させた。その後減圧下80℃にて蒸発乾固した後、125℃で12時間、通風乾燥を行い、更に大気雰囲気下で800℃、2時間熱処理して実施例5に係るPd含有量0.4質量%のPd担持CePrZr複合酸化物(0.4質量%Pd/CePrZr)を得た。
〔比較例4〕
市販のγ−アルミナ(比表面積250m2/g)(SASOL社製PURALOX SCFa140)30gを、濃度8.5質量%ジニトロジアンミン白金水溶液(田中貴金属工業(株)社製)3.6gと純水285gとを混合したジニトロジアンミン白金水溶液へ、25℃にて15時間浸漬し、γアルミナにPtを含浸させた。当該γアルミナを回収した後、90℃で12時間、通風乾燥を行い、更に大気雰囲気下で500℃、1時間熱処理して比較例4に係るPt含有量1.0質量%のPt担持アルミナ(1質量%Pt/Al23)を得た。
《ガス酸化性能の測定》
ガス酸化性能としてのCOの酸化活性は以下のようにして測定した。実施例5、比較例4について固定床流通系反応器に0.5〜1mmのペレット状にしたサンプルをそれぞれ0.4197cc充填した。
次に2000ppmのCOガス、10%のO2ガス、残部N2ガスの組成のディーゼル排ガスの模擬混合ガスを室温において全ガス流量1L/分で流通させた。固定床流通系反応器の出口側では、CO濃度をFT−IR(Thermo ELECTRON CORPORATION 製 Nicolte 4700FT−IR)によってモニタリングした。触媒充填層の温度を室温から500℃まで昇温し、測定温度におけるCO濃度からCO転化率(%)を以下の(5)式により求めた。入口CO濃度は2000ppmを用いた。
CO転化率(%)=(入口CO濃度−出口CO濃度)×100/入口CO濃度・・(5)
CO転化率は、入流したCOガスが全てCO2へ転化されると100%となる。図4の縦軸はCO転化率(%)を示し、横軸は触媒温度を(℃)を示す。図4の結果から本発明の複合酸化物に少量のPdを担持することでPt担持アルミナ以上のCO酸化性能が得られること結果となった。また低温での酸化性能もあることからエンジン始動直後のCO酸化性能の向上効果も期待できる。すなわち酸化触媒としての応用も見込める。さらに少量で効果が得られることよりコスト面での効果も大きい。
以上のように本発明の排ガス浄化触媒用複合酸化物は、耐熱性が高くS被毒によって低下した触媒活性を低温で、しかもより効果的に復活させることができる。
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス浄化用フィルタ(DPF)に好適に利用することができる。
1 DPF
10 エンジン側
11 大気開放側
12 エンジン側壁面
14 大気開放側壁面
30 エンジン側壁面に塗布されたPM触媒
40 大気開放側壁面に塗布された白金系触媒

Claims (9)

  1. セリウムとA、B(AおよびBは、Pr、Zr、Ti、Feから選ばれた1種以上の元素)を含み、セリウム、AおよびBの元素がモル比でCe:A:B=(1−x−y):x:y(ただし、0<x+y≦0.3)であり、CeO2の(311)面で測定した結晶子径が16nm以上である複合酸化物。
  2. 前記AがPrであり、前記BがZrであり、セリウム、PrおよびZrの元素がモル比でCe:Pr:Zr=(1−x−y):x:y(ただし、0<x≦0.3、0<y≦0.3、0<x+y≦0.3)である請求項1に記載の複合酸化物。
  3. 800℃で大気中2時間仮焼した後の酸化物のBET法により算出される比表面積が50m2/g以上であり、800℃で大気中100時間仮焼した(耐熱安定性評価)後の酸化物のBET法により算出される比表面積が29m2/g以上を保つ性質を有する、請求項1または2に記載の複合酸化物。
  4. 熱処理前後の疑似PMであるカーボンブラック(CB)燃焼評価において、次式(1)で示される、(燃焼活性)悪化率が10%未満である請求項1ないし3のいずれか1の請求項に記載された複合酸化物。
    (燃焼活性)悪化率(%)=100×(熱処理後CB燃焼開始温度−合成直後CB燃焼開始温度)/合成直後CB燃焼開始温度・・・(1)
  5. 請求項1ないし4のいずれかに複合酸化物が媒体中に分散された塗料。
  6. 容積割合で50vol%以上が純水からなる請求項5に記載の複合酸化物分散塗料。
  7. 請求項1ないし4に記載の複合酸化物が多孔質フィルタに塗布されているディーゼルパティキュレートフィルター。
  8. 白金族元素を請求項1ないし4のいずれかに記載の複合酸化物、あるいはフィルタに担持して構成された、請求項7に記載のディーゼルパティキュレートフィルター。
  9. 請求項7または8に記載のディーゼルパティキュレートフィルターがその構成内に組み込まれている、ディーゼルエンジン排ガス浄化システム。
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