マイクロプロセッサ(MPU:Micro Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を始めとする各種デジタル回路、および通信系の大規模集積回路(VLSI:Very Large Scale Integration)における遅延ロックループ(DLL:Delay−Locked Loop)や位相ロックループ(PLL:Phase Locked Loop)などのクロック調整回路などには、アクセス制御やクロック調整を行うための半導体素子(以下、遅延素子とする)が設けられている。
図12〜図15は、遅延素子を用いた従来の遅延回路を示す回路図である。従来の遅延回路は、例えば、図12に示すように偶数個のインバータが設けられており、IN端子1011とOUT端子1012との間に、例えば第1のインバータ1001および第2のインバータ1002が直列に接続された構成となっている。各インバータは、例えば高電位側のpチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)と、低電位側のnチャネルMOSFETとが相補うように接続された相補型MOS(CMOS:Complementary MOS)の構成となっている。
また、図13に示す遅延回路は、図12に示す遅延回路に、第1のインバータ1001と第2のインバータ1002の間に接続された抵抗1021と、抵抗1021と第2のインバータ1002間のノード1013と接地との間に接続された第1のキャパシタ1022が設けられた構成となっており、主に、抵抗1021および第1のキャパシタ1022(以下、RC素子とする)の時定数によって遅延時間が決められている(例えば、下記特許文献1参照。)。
また、図14に示す遅延回路は、電流渇求型(Current−Starved)の遅延回路であり、IN端子1011とOUT端子1012との間に直列に接続された第1のインバータ1001および第2のインバータ1002と、第1のインバータ1001と第2のインバータ1002間のノード1013と接地との間に接続された第1のキャパシタ1022と、第1のインバータ1001の低電位側の電源端子と接地との間に並列に接続された可変抵抗1023および第2のキャパシタ1024により構成されている。図14に示す遅延回路の構成は図13に示す遅延回路と機能上ほぼ等価である(例えば、下記非特許文献1参照。)。
図13および図14に示す遅延回路では、第1のインバータ1001のnチャネルMOSFETがオン状態となって第1のキャパシタ1022で放電が起きたときの放電時間で遅延時間τdが決まる。例えば、図13に示す遅延回路では、遅延時間τdは、抵抗1021の抵抗値R、第1のインバータ1001のnチャネルMOSFETのチャネル抵抗Rch、電源電圧VDD、第1のインバータ1001の反転閾値VTiおよび第1のキャパシタ1022の静電容量CLとすると、次の(1)式を満たす値となる。
τd=(R+Rch)・CL・ln(VDD/VTi)=(R+Rch)・CL・ln2 ・・・(1)
なお、図14に示す遅延回路では、抵抗値Rは、可変抵抗1023の抵抗値である。また、静電容量CLは、第1のキャパシタ1022と第2のキャパシタ1024の総静電容量である。
また、従来のCMOSプロセスにおいて、例えば可変抵抗1023に半導体素子のウェル領域や多結晶シリコンゲートなどのシート抵抗を用いた場合、その抵抗値は約数10Ω/squareである。より大きい値の抵抗値を必要とする場合は、半導体素子の活性デバイスのチャネル抵抗が用いられる。pチャンネルMOSFETで形成されたチャネル抵抗の抵抗値Rpは、トランスコンダクタンスを表すパラメータKp、ゲート・ソース間電圧Vgs、閾値電圧Vth、チャネル幅Wおよびチャネル長Lとすると、次の(2)式を満たす値となる。
Rp=1/(Kp・(Vgs−Vth)・(W/L)) ・・・(2)
なお、設計ルール2μmのCMOSプロセステクノロジにおいて、トランスコンダクタンスを表すパラメータKpは、回路設計用のSPICEパラメータにより、約1.7×10-5(A/V2)と算出される(例えば、下記非特許文献2参照。)。
また、図15に示す遅延回路は、電流制限型の遅延回路であり、図14に示す遅延回路の可変抵抗1023および第2のキャパシタ1024に代えて、可変電流源1025を設けた構成となっている(例えば、下記非特許文献1、下記非特許文献3および下記非特許文献4参照。)。このような遅延回路では、遅延回路に流れる電流値Iを調整することにより遅延時間τdが決まり、遅延時間τdは、電源電圧VDD、第1のインバータ1001の反転閾値VTiおよび第1のキャパシタ1022の静電容量CLとすると、ほぼ次の(3)式を満たす値となる。なお、電流値Iの調整は、一般的に入力電流と同じ向きの電流を出力するカレント・ミラー構成で実現される。
τd=(VDD−VTi)CL/I ・・・(3)
上述した非特許文献3の技術では、設計ルール0.8μmのCMOSプロセステクノロジにおいて、2.6ns〜76.3msの間の遅延を実現している。このような遅延素子の使用用途は幅広く、例えば、ハイパワー半導体装置の各種保護回路などにも用いられている(例えば、下記特許文献2参照。)。
例えば、集積回路向けの横型のパワー半導体装置である、SOI(Silicon−on−Insulator)基板上に形成される絶縁ゲートバイポーラートランジスタ(LIGBT:Lateral Insulated Gate Bipolar Transistor)は、放熱性が悪いことや構造的な要素から、バルク基板上に形成される個別半導体装置に比べて短絡耐量が小さい。正常動作で必要な短絡時間(大電流が流れるとともに高電圧が印加される時間)を超えた場合に半導体装置が破壊される恐れがあるため、保護回路を設けることが望ましい。
半導体装置の保護回路には、次に示すような様々な方法が提案されている。半導体装置を過電圧から保護するための方法として、例えば、トランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの個別半導体装置にアバランシェダイオードを接続する方法が提案されている(例えば、下記非特許文献5参照。)。
また、半導体装置を過電流から保護するための方法として、メインIGBTにセンスIGBTを備えて、メインIGBTに流れる電流を監視し、メインIGBTに過電流が流れた場合にゲート電圧を遮断する方法が提案されている(例えば、下記非特許文献6参照。)。
また、半導体装置を過電流から保護するための別の方法として、IGBTのコレクタ・エミッタ間電圧を監視し、コレクタ・エミッタ間に過電圧がかかった場合に、IGBTを流れる電流を制御する方法(以下、電圧センシングとする)が提案されている(例えば、下記非特許文献7〜下記非特許文献9参照。)。
上述した非特許文献6の技術では、センスIGBTとメインIGBTとの適合性の良さが問われる他、消費電力が大きいという問題がある。また、電流検出時のフィードバックループにより、電流波形に振動が生じやすくなるという問題がある。一方、電圧センシングでは、上述した非特許文献6の技術に比べて電流検出精度が低くなってしまうが、検出電流にノイズが少なく、装置全体を簡素化できる。
上述した電圧センシングには、半導体装置にかかる過電圧を監視するためのセンサー(以下、電圧センサーとする)が設けられている。この電圧センサーには、ダイオードを用いるものや、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜の膜厚と同程度の膜厚を有するゲート酸化膜を設けたMOSFET(以下、フィールドMOSFETとする)を用いるものや、半導体装置と一体化して形成され、半導体装置の電源電圧から独立した半導体領域(以下、フローティング領域とする)を用いるものがある。
上述したそれぞれの電圧センサーについて説明する。なお、本明細書および添付図面において、nまたはpを冠記した半導体は、それぞれ電子または正孔がキャリアであることを意味する。また、n+やn-などのように、nやpに付す+または-は、それぞれそれらが付されていない半導体の不純物濃度よりも比較的高不純物濃度または比較的低不純物濃度であることを表す。
図16は、従来の電圧センシングの一例を示す回路図である。図16に示すように、ダイオードを用いた電圧センシングでは、IGBT2001を保護するために、IGBT2001に、ダイオード2002、センシング抵抗2003、コンパレータ2004およびゲート制御回路2005が設けられている。IGBT2001のコレクタ端子は、ダイオード2002のカソード端子と外部出力端子2007に接続されている。IGBT2001のエミッタ端子は接地されている。IGBT2001のゲート端子には、ゲート制御回路2005が接続されている。ダイオード2002のアノード端子には、センシング抵抗2003を介して制御電圧入力端子(センス入力)2008が接続されている。外部出力端子2007における外部出力電圧VOUTが制御電圧入力端子2008における電圧VSよりも高い場合に、ダイオード2002とセンシング抵抗2003との間のノード2006におけるセンス電圧VSENを、コンパレータ2004によって、予め設定された電圧VREFと比較して、ゲート制御回路2005が駆動される。ゲート制御回路2005は、IGBT2001のゲート電圧を遮断または低下させるように機能する(例えば、下記非特許文献7参照。)。
図17は、従来の電圧センシングの別の一例を示す回路図である。図17に示すように、フィールドMOSFETを用いた電圧センシングでは、MOSFET2101を保護するために、MOSFET2101に、フィールドMOSFET2102、センシング抵抗2103およびゲート制御回路2105が接続されている。MOSFET2101のドレイン端子は、外部出力端子2104およびフィールドMOSFET2102のゲート端子に接続されている。MOSFET2101のソース端子は、接地されている。MOSFET2101のゲート端子は、ゲート制御回路2105に接続されている。フィールドMOSFET2102のドレイン端子は、電源電圧端子2106に接続されている。フィールドMOSFET2102のソース端子はセンシング抵抗2103およびゲート制御回路2105に接続されている。センシング抵抗2103およびゲート制御回路2105は接地されている。センシング抵抗2103の両端の電圧は、フィールドMOSFET2102のゲート・ソース間電圧−ドレイン・ソース間電流(Vgs−Ids)特性に制御され、ゲート制御回路2105に入力される。そして、ゲート制御回路2105によってMOSFET2101のゲート電圧が制御される(例えば、下記非特許文献10参照。)。
例えばフィールドMOSFET2102のような厚い酸化膜を、ゲート酸化膜とした半導体装置が提案されており、pチャネルMOSFETにおいて、ゲート酸化膜の厚さを400nmとしている(例えば、下記非特許文献11参照。)。
MOSFETのゲート閾値電圧は、ゲート酸化膜の厚さから算出することができ、例えば、nチャネルMOSFETのゲート閾値電圧Vthは、フラットバンド電圧Vfb、フェルミー準位と真性シリコン(Si)のフェルミー準位の差ΨB、誘電率εs、単位電荷q、アクセプタ濃度Naおよびゲート酸化膜容量Coxとすると、次の(4)式を満たす値として算出される。
Vth=Vfb+2ΨB+(4εsqNaΨB)0.5/Cox ・・・(4)
図18は、従来の電圧センシングの別の一例を示す回路図である。図18に示すように、縦型のメインIGBT3000にフローティング領域を設けた電圧センシングでは、メインIGBT3000のゲート電圧を制御するためのMOSFETからなるスイッチ3017を設けている。メインIGBT3000のおもて面には、n-ドリフト層3003の表面層の一部に、pベース領域3004、p+低抵抗領域3005、n+エミッタ領域3006、エミッタ電極3007、ゲート電極3008およびゲート絶縁膜3009が設けられている。メインIGBT3000の裏面には、n-ドリフト層3003の裏面に、nバッファ層3011、p+コレクタ層3012およびコレクタ電極3010が設けられている。また、ゲート電極3008、エミッタ電極3007およびコレクタ電極3010には、ゲート端子3015、エミッタ端子3016およびコレクタ端子3018が接続されている。
n-ドリフト層3003の表面層の一部には、pベース領域3004と離れてp型のフローティング領域3013が設けられている。フローティング領域3013の表面の一部には、フローティング電極3014が設けられている。フローティング電極3014は、ゲート絶縁膜3009によりゲート電極3008と電気的に絶縁されている。フローティング領域3013は、フローティング電極3014を介してスイッチ3017のゲート端子と接続されている。
スイッチ3017のソース端子は、メインIGBT3000のエミッタ電極3007と接続されている。スイッチ3017のドレイン端子はメインIGBT3000のゲート電極3008と接続されている。スイッチ3017のゲート閾値電圧は、メインIGBT3000のコレクタ・エミッタ間電圧の制限値に応じて設定される。メインIGBT3000のコレクタ・エミッタ間電圧が制限値を超えた場合に、スイッチ3017がターンオンされ、メインIGBT3000のゲート電圧を制御している(例えば、下記非特許文献12参照。)。
上述した非特許文献12に示す技術を適用し、横型の半導体装置にフローティング領域を設けた構成の半導体装置について示す。図19は、従来の電圧センシングの一例を示す断面図である。図19に示すメインIGBT3100は、p+低抵抗率基板3001のおもて面に、絶縁層3002が設けられている。絶縁層3002の表面には、n-ドリフト層3003が設けられている。n-ドリフト層3003の表面層には、pベース領域3004およびnバッファ領域3011が互いに離れて設けられている。pベース領域3004の表面層の一部には、n+エミッタ領域3006が設けられている。n+エミッタ領域3006に隣接して、p+低抵抗領域3005が設けられている。p+低抵抗領域3005の一部は、n+エミッタ領域3006の下の領域の一部を占めている。nバッファ領域3011の表面層の一部には、p+コレクタ領域3012が設けられている。
n+エミッタ領域3006の表面の一部からp+低抵抗領域3005の表面にかけて、エミッタ電極3007が設けられている。つまり、エミッタ電極3007により、n+エミッタ領域3006とp+低抵抗領域3005は短絡している。n+エミッタ領域3006の表面の一部からn-ドリフト層3003の表面の一部にかけて、ゲート絶縁膜3009を介してゲート電極3008が設けられている。p+コレクタ領域3012の表面の一部には、コレクタ電極3010が設けられている。p+低抵抗率基板3001の裏面には、裏面電極3020が設けられている。また、ゲート電極3008、エミッタ電極3007およびコレクタ電極3010には、図示省略したゲート端子、エミッタ端子およびコレクタ端子が接続されている。
n-ドリフト層3003の表面層には、pベース領域3004とnバッファ層3011との間に、フローティング領域3013が設けられている。フローティング領域3013の表面には、フローティング電極3014が設けられている。このフローティング電極3014が電圧センサーとして機能している。n-ドリフト層3003は、フローティング電極3014を介してスイッチ3017のゲート端子と接続されている。スイッチ3017のソース端子は、メインIGBT3100のエミッタ電極3007と接続されている。スイッチ3017のドレイン端子はメインIGBT3100のゲート電極3008と接続されている。メインIGBT3100のゲート電圧の制御方法は、図18に示す例と同様である。
上述した非特許文献7〜非特許文献10の技術(図16および図17参照)では、メインIGBTの他に、電圧センシングのための高耐圧デバイスが必要となってしまう。それに対して、上述した非特許文献12に示す技術(図18および図19参照)では、電圧センシングのための高耐圧デバイスは不要である。
図20は、出力段を有する回路の一例を示す回路図である。図20に示す回路は、出力段を有する例えばコンデンサを駆動する回路であり、その出力段を、いわゆるトーテムポール構成としている。図20に示す回路は、第1のIGBT4001、第2のIGBT4002、コンデンサ4003、抵抗4004、定電流源4005、起動スイッチ4006、高電圧電源端子4007、ゲート制御信号入力端子4008および外部出力端子4009を備えている。第1のIGBT4001および第2のIGBT4002が、例えば図18または図19に示す半導体装置である。
第1のIGBT4001のコレクタ端子は、外部出力端子4009および第2のIGBT4002のエミッタ端子に接続されている。第1のIGBT4001のエミッタ端子は、接地されている。第1のIGBT4001のゲート端子は、ゲート制御信号入力端子4008に接続されている。第2のIGBT4002のコレクタ端子は、高電圧の高電圧電源端子4007に接続されている。第2のIGBT4002のゲート端子と高電圧の外部出力端子4009との間には、抵抗4004が接続されている。高電圧の外部出力端子4009と接地点との間には、コンデンサ4003が接続されている。また、第2のIGBT4002のコレクタ端子とゲート端子の間には、定電流源4005および起動スイッチ4006が接続されている。出力段を保護する場合、第1のIGBT4001および第2のIGBT4002に、それぞれ保護回路が設けられる。
このような回路では、第1のIGBT4001をオフ状態とし、起動スイッチ4006をオン状態にすることで、高電圧電源端子4007に接続される回路電源から電圧が印加され第2のIGBT4002がターンオンされることで、コンデンサ4003が充電される。一方、第2のIGBT4002をオフ状態とし、ゲート制御信号入力端子4008に接続される回路電源から電圧が印加されることにより、第1のIGBT4001がターンオンされ、コンデンサ4003が放電される。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明およびすべての添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる遅延回路を示す回路図である。図1に示す回路は、例えば図20に示すような出力段を有する回路(以下、パワーIC回路とする)の出力段を保護するに際し、出力段として設けられた例えばIGBTなどの半導体装置の過電圧を検出する保護回路に設ける遅延回路100であり、第1のpチャネルMOSFET1と第1のnチャネルMOSFET2が相補うように接続されたCMOS構造の第1のインバータ101と、第2のpチャネルMOSFET3と第2のnチャネルMOSFET4が相補うように接続されたCMOS構造の第2のインバータ102と、第3のpチャネルMOSFET5と第3のnチャネルMOSFET6が相補うように接続されたCMOS構造の第3のインバータ103と、第4のpチャネルMOSFET7と、第4のnチャネルMOSFET8と、遅延回路100の遅延時間を決定する抵抗(以下、遅延抵抗とする)121およびキャパシタ122とで構成されている。各pチャネルMOSFETは、それぞれp型MOSトランジスタに相当する。各nチャネルMOSFETは、それぞれn型MOSトランジスタに相当する。遅延抵抗121は、第1の抵抗体に相当する。
第1のインバータ101において、第1のpチャネルMOSFET1のソース端子は、ロジック回路の電源(以下、ロジック回路電源とする)電位に保たれている。第1のnチャネルMOSFET2のソース端子は接地されている。第2のインバータ102および第3のインバータ103も同様に、pチャネルMOSFETのソース端子はロジック回路電源電位に保たれ、nチャネルMOSFETのソース端子は接地されている。ロジック回路電源は、第1の電源に相当する。
第1のインバータ101の出力端子(MOSFETのドレイン端子)と第2のインバータ102の入力端子(MOSFETのゲート端子)の間には、遅延抵抗121が接続されている。第1のインバータ101の入力端子(MOSFETのゲート端子)と第3のインバータ103の入力端子(MOSFETのゲート端子)は、IN端子111に接続されている。第2のインバータ102の出力端子(MOSFETのドレイン端子)は、OUT端子112に接続されている。IN端子111は、外部信号入力端子に相当する。OUT端子112は、外部信号出力端子に相当する。
第3のインバータ103の出力端子(MOSFETのドレイン端子)は、第4のpチャネルMOSFET7のゲート端子と接続されている。第4のpチャネルMOSFET7のドレイン端子は、第4のnチャネルMOSFET8のドレイン端子と接続されている。第4のpチャネルMOSFET7のソース端子は、ロジック回路電源に接続されている。
第4のnチャネルMOSFET8のゲート端子は、遅延抵抗121と第2のインバータ102の入力端子の間のノード113に接続されている。第4のnチャネルMOSFET8のゲート端子とドレイン端子の間には、キャパシタ122が接続されている。第4のnチャネルMOSFET8のソース端子は接地されている。
遅延回路100を構成する少なくとも第1のインバータ101、第2のインバータ102および第3のインバータ103は、IN端子111およびOUT端子112により保護回路と接続され、単一の電源で駆動するCMOS構造の論理集積回路(以下、ロジックCMOSとする)の構成となっている。
また、第1のインバータ101において、第1のnチャネルMOSFET2のゲート幅を、第1のpチャネルMOSFET1のゲート幅よりも大きくするのが良い。その理由は、第1のインバータ101のゲート閾値電圧を低くすることができるからである。第2のインバータ102および第3のインバータ103においても、第1のインバータ101と同様の理由から、第1のインバータ101と同様の設定とするのが良い。ここで、ゲート幅とは、電流の流れる方向と直行する方向のゲート電極の長さをいう。
また、キャパシタ122の容量は、第4のnチャネルMOSFET8のゲート・ドレイン間容量(帰還容量)を用いることにより、キャパシタ122の物理的な静電容量よりも等価的に大きな容量(以下、等価容量とする)とすることができる。
このような遅延回路100では、IN端子111に入力電圧が入力されると、第1のインバータ101の入力端子および第3のインバータ103の入力端子の電位が接地電位に近い間は、次に示すように動作する。第1のインバータ101において、第1のpチャネルMOSFET1がオンになり、第1のインバータ101の出力端子の電位がロジック回路電源電位VDLになる。第1のインバータ101の高電位側の電源端子からの電荷が、遅延抵抗121を介して第4のnチャネルMOSFET8のゲート・ソース間容量に充電される。第4のnチャネルMOSFET8のゲート電圧が第4のnチャネルMOSFET8のゲート閾値電圧より大きくなり、第4のnチャネルMOSFET8がオンになる。第1のインバータ101の出力端子の電位がロジック回路電源電位VDLであるため、第2のインバータ102の入力端子の電位がロジック回路電源電位VDLになり、第2のnチャネルMOSFET4がオンになる。第1のインバータ101の高電位側の電源端子からの電荷が、遅延抵抗121を介して第2のnチャネルMOSFET4のゲート・ドレイン間容量が充電される。また、第3のインバータ103において、第3のpチャネルMOSFET5がオンになり、第3のインバータ103の出力端子の電位がロジック回路電源電位VDLになる。第4のpチャネルMOSFET7のゲート端子の電位がロジック回路電源電位VDLになり、第4のpチャネルMOSFET7がオフになる。
そして、第1のインバータ101の入力端子および第3のインバータ103の入力端子の電位が、それぞれ第1のインバータ101の反転閾値および第3のインバータ103の反転閾値を超えてロジック回路電源電位VDLに近くなると、遅延回路100は、次に示すように動作する。第1のインバータ101において、第1のpチャネルMOSFET1がオフになり、第1のnチャネルMOSFET2がオンになる。第4のnチャネルMOSFET8ゲート・ドレイン間容量、および第2のnチャネルMOSFET4ゲート・ドレイン間容量のゲート電荷が、遅延抵抗121および第1のnチャネルMOSFET2を介してグランドに放電される。また、第3のインバータ103において、第3のpチャネルMOSFET5がオフになり、第3のnチャネルMOSFET6がオンになる。第3のインバータ103の出力端子の電位が接地電位に近くなり、第4のpチャネルMOSFET7のゲート端子が、第3のインバータ103の出力端子および第3のnチャネルMOSFET6を介して接地される。第4のpチャネルMOSFET7のソース・ゲート間の電圧が大きくなることで第4のpチャネルMOSFET7がオンになり、第4のnチャネルMOSFET8のドレイン端子の電位がロジック回路電源電位VDLになる。ノード113における電位が第4のnチャネルMOSFET8の閾値電圧より大きい間は、第4のnチャネルMOSFET8が飽和領域(ドレイン・ソース間電圧Vds>ゲート・ソース間電圧Vgs−閾値電圧Vth)にバイアスされ、第4のnチャネルMOSFET8の帰還容量が増幅される。第4のnチャネルMOSFET8の帰還容量により、キャパシタ122の容量は、キャパシタ122の物理的な容量CMよりも等価的に大きな、次の(5)式を満たす等価容量CLとなる。なお、第4のnチャネルMOSFET8の電圧増幅率AV、キャパシタ122の静電容量CMとする。
CL=AV・CM ・・・(5)
そして、キャパシタ122に、第4のpチャネルMOSFET7を介してロジック回路電源からの電荷が蓄積される。キャパシタ122に蓄積された電荷が遅延抵抗121および第1のnチャネルMOSFET2を介してグランドに放電され、第2のインバータ102の入力端子の電位が接地電位に近い電位となる。第2のインバータ102の出力端子の電位がロジック回路電源電位VDLに近い電位となり、OUT端子112から出力電圧が出力される。
このように、遅延回路100において、IN端子111に入力電圧が入力され、OUT端子112から出力電圧が出力されるまでの時間が遅延時間となる。
次に、上述した遅延回路100を設けた保護回路について説明する。図2は、実施の形態1にかかる遅延回路を用いた保護回路を示す回路図である。図2に示す保護回路は、IGBT200に設けられたフローティング電極からの信号によりIGBT200を保護する回路であり、第1のスイッチ21、分圧抵抗22、遅延回路100および第2のスイッチ23で構成されている。IGBT200は、フローティング領域およびフローティング領域の電位を有するフローティング電極を有し、例えば、パワーIC回路における出力段のローサイド出力である第1のIGBT(図20参照)として用いられている。また、第1のスイッチ21および第2のスイッチ23には、例えばnチャネルMOSFETが用いられている。
このような保護回路において、IGBT200のゲート端子は、第2のスイッチ23のドレイン端子およびゲート制御信号入力端子24に接続されている。IGBT200のコレクタ端子は、高耐圧の外部出力端子(図20参照)に接続されている。IGBT200のフローティング電極は、第1のスイッチ21のゲート端子に接続されている。IGBT200のエミッタ端子は、接地されている。IGBT200は、絶縁ゲート型トランジスタに相当する。なお、IGBT200の構成については、後述する。
第1のスイッチ21および分圧抵抗22は、IGBT200のフローティング電極からの検出信号を、遅延回路100に入力可能な電圧値、すなわちロジック回路に入力可能な電圧値に変換する回路(以下、分圧回路とする)である。分圧回路では、第1のスイッチ21のソース端子と分圧抵抗22の一端が接続されている。分圧抵抗22の他端は、接地されている。第1のスイッチ21のドレイン端子は、ロジック回路電源に接続されている。第1のスイッチ21に用いる半導体基板の電位(ボディ電位)は、接地電位である。第1のスイッチ21は、第1の電界効果トランジスタに相当する。分圧抵抗22は、第2の抵抗体に相当する。
第1のスイッチ21のソース端子と分圧抵抗22の間には、遅延回路100のIN端子が接続されている。遅延回路100のOUT端子は、第2のスイッチ23のゲート端子と接続されている。第2のスイッチ23のソース端子は、接地されている。第2のスイッチ23のボディ電位は、接地電位である。第2のスイッチ23は、第2の電界効果トランジスタに相当する。
保護回路では、IGBT200のコレクタ電極に過電圧がかかったときに、IGBT200のフローティング電極の信号を検出する。この検出信号は、分圧回路においてロジック回路に入力可能な信号に変換され、遅延回路100に入力される。IGBT200のフローティング電極に過電圧がかかった状態が続く(異常動作時)ことで、遅延回路100に予め設定された遅延時間が経過した場合に、遅延回路100のOUT端子からの出力電圧が第2のスイッチ23のゲート端子に印加され、第2のスイッチ23がオン状態になる。第2のスイッチ23の電流能力がゲート制御信号入力端子24における電流能力よりも大きい場合、IGBT200のゲート端子が接地され、IGBT200のゲート電圧がプルダウンされる。外部出力端子114の外部出力電圧VOUTは、フローティング電圧VPの立ち下がりエッジ(Falling Edge)に追随して立ち下がる。従って、例えばIGBT200の異常動作時をIGBT200に過電圧がかかってから200ns以上経過した場合として設定する場合、IGBT200自体の短絡耐量は、例えば300ns程度あれば良い。
第1のスイッチ21には、ロジックCMOSのゲート絶縁膜より厚く、かつIGBT200のフローティング電極の電圧(以下、フローティング電圧とする)よりも大きい耐圧を有するゲート絶縁膜を設けるのが良い。また、第1のスイッチ21のゲート閾値電圧は、ロジック回路電源電圧よりも大きい電圧値を設定するのが良い。その理由は、IGBT200のフローティング電圧は、ロジック回路電源電圧よりも高いからである。第1のスイッチ21に、上述したような設定を行うことで、IGBT200のフローティング電圧を、第2のスイッチ23に入力可能な電圧値、すなわちロジック回路に入力可能な電圧値に変換することができる。なお、分圧回路の代わりに、レベルシフト回路を設けても良い。また、第1のスイッチ21に、LOCOS酸化膜をゲート酸化膜として設けたフィールドMOSFETを用いても良い。
次に、上述したIGBT200の構成について説明する。図3は、実施の形態1にかかる半導体装置の一例を示す断面図である。図3に示す横型のnチャネルIGBT200は、SOI基板を用いて作製されている。SOI基板は、p支持基板201の上に、酸化膜等からなる絶縁層202およびn-ドリフト領域203aを、この順に積層した構成となっている。
nウェル領域203bは、n-ドリフト領域203aの表面層の一部に設けられている。nウェル領域203bは、n-ドリフト領域203aよりも高濃度にドープされており、n-ドリフト領域203aよりも低い抵抗率を有する。pベース領域204は、n-ドリフト領域203aの表面層の一部に、n-ドリフト領域203aとnウェル領域203bに接して設けられている。
ゲート電極208は、pベース領域204の一部およびnウェル領域203bの表面上にゲート絶縁膜209を介して設けられている。n+エミッタ領域206は、pベース領域204の一部に、ゲート電極208のpベース領域側端部(図3では、n+エミッタ領域206上の端部)に整合するように設けられている。
pベース領域204の一部には、n+エミッタ領域206の下側を占めるように形成されたp+低抵抗領域205aと、n+エミッタ領域206に隣接するp+ベースコンタクト領域205bが設けられている。p+低抵抗領域205aは、本実施の形態のようにn+エミッタ領域206の下側を閾値に影響を及ぼさない範囲で占めるように形成されるのが望ましい。
ゲート電極208のpベース領域側端部の外側には、その端部に接して酸化膜や窒化膜からなるゲート側壁スペーサ領域218が設けられている。p+低抵抗領域205aは、閾値に影響を及ぼさないようにするため、ゲート側壁スペーサ領域218を利用して、チャネルが形成される領域に入らないように形成されている。チャネルは、ゲート電圧がゲート閾値電圧を超えたときに、n+エミッタ領域206とnウェル領域203bとの間のpベース領域204と、ゲート絶縁膜209との界面に形成される。
また、nバッファ領域211が、nウェル領域203bおよびpベース領域204から離れて、n-ドリフト領域203aの表面層の一部に設けられている。nバッファ領域211は、n-ドリフト領域203aよりも高濃度にドープされており、n-ドリフト領域203aよりも低い抵抗率を有する。nバッファ領域211は、n-ドリフト領域203aおよびnウェル領域203bとともに、デバイスの耐圧を保持するドリフト領域となる。このように、本デバイスは、nバッファ領域211を有するパンチスルー型のIGBTである。
p+コレクタ領域212は、nバッファ領域211の一部に設けられており、nバッファ領域211によりn-ドリフト領域203aから隔離されている。nウェル領域203bおよびpベース領域204とnバッファ領域211との間には、トレンチ216が、nウェル領域203bおよびnバッファ領域211と離れて、n-ドリフト領域203aを貫通しないように形成されている。トレンチ216は、酸化膜等のトレンチ埋め込み絶縁膜217により埋められている。
p型のフローティング領域213は、pベース領域204とトレンチ216との間の、n-ドリフト領域203aの表面層の一部に、n-ドリフト領域203aとnウェル領域203bに接して設けられている。
エミッタ電極207は、n+エミッタ領域206とp+ベースコンタクト領域205bの両方に接触し、p+ベースコンタクト領域205bとn+エミッタ領域206を短絡している。コレクタ電極210は、p+コレクタ領域212に接触している。フローティング電極214は、フローティング領域213に接触している。図3において、符号219は、製造時に、ゲート絶縁膜209に対するプラズマエッチングダメージを低減するために設けられる酸化膜等の絶縁膜カバー層であり、符号215は、層間絶縁膜である。
なお、上述した横型のnチャネルIGBT200を、SOI基板を用いずに、p支持基板201の上にn-ドリフト領域203aを積層した構成としても良い。また、横型IGBT構造に代えて、横型の半導体装置である例えばLDMOS(Lateral Double Diffused Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ構造や、縦型IGBT構造としても良い。
以上、説明したように、実施の形態1によれば、バイアスされた状態の第4のnチャネルMOSFET8のゲート端子とドレイン端子の間にキャパシタ122を設けることで、第4のnチャネルMOSFET8のゲート・ドレイン間容量(帰還容量)により、キャパシタ122の容量を、キャパシタ122の物理的な静電容量よりも等価的に大きくすることができる。これにより、第1のインバータ101と第2のインバータ102の間に接続されるRC素子の時定数を従来よりも大きくすることができるため、IN端子111に信号が入力されてから、OUT端子112から信号が出力されるまでの時間(遅延時間)を、従来の遅延回路よりも長くすることができる。また、キャパシタ122の小型化を図る、遅延抵抗121の小型化を図るまたは設置をしないなどによりRC素子の物理的な時定数を小さくしたとしても、従来の遅延回路と同様以上の遅延時間を実現することができる。これにより、遅延回路100全体の小型化を図ることができる。また、RC素子を小型化することにより、従来の遅延回路よりも消費電力を低減させることができる。また、各インバータにおいて、nチャネルMOSFETのゲート幅を、pチャネルMOSFETのゲート幅よりも大きくすることで、それぞれのインバータのゲート閾値電圧を低くすることができる。これにより、各インバータにおける消費電力を低減することができる。また、第1のスイッチ21のゲート絶縁膜をロジックCMOSのゲート絶縁膜より厚くすることで、第1のスイッチ21のゲート酸化膜が破壊されることを防止することができる。また、第1のスイッチ21のゲート絶縁膜の耐圧を、IGBT200のフローティング電圧よりも大きい耐圧とすることで、第1のスイッチ21が破壊されるのを防止することができる。また、第1のスイッチ21のゲート閾値電圧を、ロジック回路電源電圧よりも大きい電圧値とすることで、IGBT200に過電圧がかかっていない場合に、保護回路が駆動されるのを防止することができる。また、保護回路において、IGBT200の短絡耐量は通常数μs程度とすることが必要であるが、実施の形態1の保護回路の構成にすることでIGBT200の短絡耐量を従来よりも短くすることができる。これにより、IGBT200において、短絡耐量とトレードオフの関係にある低オン電圧特性を向上させることができる。
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2にかかる遅延回路を示す回路図である。図1に示す遅延回路において、第1のインバータ101の低電位側の電源端子、第2のインバータ102の低電位側の電源端子、第3のインバータ103の低電位側の電源端子および第4のnチャネルMOSFET8のソース端子を、高電圧の外部出力端子114に接続した構成としても良い。図4に示す遅延回路300の構成は、実施の形態1と同様にロジックCMOSの構成となっている。実施の形態2におけるロジックCMOSは、第2の集積型半導体装置に相当する。
このような遅延回路300では、第4のインバータ104の高電位側の電源端子は、外部出力端子114における外部出力電圧VOUTよりも、ロジック回路電源と接地間の電位差だけ大きい電圧(以下、遅延回路電圧とする)VDを有する電源(以下、遅延回路電源とする)に接続されている。第4のインバータ104の低電位側の電源端子は、外部出力端子114に接続されている。第5のインバータ105および第6のインバータ106も同様に、高電位側の電源端子は遅延回路電源に接続され、低電位側の電源端子は、外部出力端子114に接続されている。第4のインバータ104〜第6のインバータ106の構成は、実施の形態1における第1のインバータ101〜第3のインバータ103と同様である。また、遅延回路300の構成および動作は、実施の形態1と同様である。遅延回路電源は、第2の電源に相当する。
次に、上述した遅延回路300を設けた保護回路について説明する。図5は、実施の形態2にかかる遅延回路を用いた保護回路を示す回路図である。図5に示す保護回路は、例えば、パワーIC回路における出力段のハイサイド出力である第2のIGBT(図20参照)として用いるIGBT400を保護するための回路である。なお、IGBT400の構成は、実施の形態1のIGBT200と同様である。
このような保護回路において、IGBT400のコレクタ端子は、高電圧を有するパワーIC回路の高電圧電源端子25に接続されている。IGBT400のエミッタ端子は、外部出力端子114に接続されている。IGBT400の構成は、実施の形態1と同様である。高電圧電源端子25は、第3の電源に相当する。
第1のスイッチ21のドレイン端子は、IGBT400のフローティング電極に接続されている。第1のスイッチ21のボディ電位は、外部出力端子114の電位に保たれている。分圧抵抗22の他端は、外部出力端子114に接続されている。
第1のスイッチ21のソース端子と分圧抵抗22の間には、遅延回路300のIN端子が接続されている。遅延回路300のOUT端子は、第2のスイッチ23のゲート端子と接続されている。第2のスイッチ23のソース端子は、外部出力端子114に接続されている。第2のスイッチ23のボディ電位は、外部出力端子114の電位に保たれている。その他の構成および動作は、実施の形態1の遅延回路200と同様である。
次に、遅延回路電源の電圧値を制御する回路(以下、電圧形成回路とする)について説明する。図6は、図5に示す遅延回路に用いる電源を示す回路図である。図6に示す電圧形成回路は、遅延回路電源端子115における電圧値を遅延回路電圧VDになるように制御する回路であり、第1のツェナーダイオード31、第2のツェナーダイオード32、MOSFET33および制御抵抗34で構成されている。制御抵抗34は、第3の抵抗体に相当する。MOSFET33は、第3の電界効果トランジスタに相当する。
このような電圧形成回路において、遅延回路電源端子115は、制御抵抗34の一端に接続されている。制御抵抗34の他端は、外部出力端子114に接続されている。遅延回路電源端子115と制御抵抗34の間には、MOSFET33のソース端子が接続されている。MOSFET33のゲート端子およびドレイン端子は、第1のツェナーダイオード31のアノード端子と第2のツェナーダイオード32のカソード端子に接続されている。MOSFET33のボディ電位は、遅延回路電源端子115の電位に保たれている。第1のツェナーダイオード31のカソード端子は、IGBT400のフローティング電極端子116に接続されている。第2のツェナーダイオード32のアノード端子は、外部出力端子114に接続されている。第1のツェナーダイオード31の逆方向耐圧は、第2のツェナーダイオード32の逆方向耐圧よりも小さく設定されている。第2のツェナーダイオード32の降伏電圧は、MOSFET33の破壊電圧と制御抵抗34の両端に生じる電圧降下との和よりも低く設定されている。また、MOSFET33の正常動作時のソース・ドレイン間電圧と、制御抵抗34の両端に生じる電圧降下との和よりも大きく設定されている。
第1のツェナーダイオード31は、フローティング電極端子116からの入力電圧を、電圧形成回路において制御可能な電圧に変換している。第1のツェナーダイオード31を設けることにより、MOSFET33にかかるドレイン電圧を、フローティング電圧VPから第1のツェナーダイオード31の降伏電圧VDZ1だけ小さい電圧(VP−VDZ1)とすることができる。また、第2のツェナーダイオード32を設けることにより、MOSFET33を過電圧による破壊から保護することができる。
MOSFET33は、制御抵抗34に流れる電流を制御しており、制御抵抗34に流れる電流値は、MOSFET33の大きさにより決定することができる。制御抵抗34の抵抗値は、制御抵抗34の電圧降下によって制御抵抗34の両端に生じる電位差が、ロジック回路電源と接地間の電位差とほぼ同程度の電位差となるように設定される。これにより、遅延回路電源端子115の電圧を遅延回路電圧VDに保つことができる。制御抵抗34の抵抗値Rは、制御抵抗34に流れる電流値Iとすると、次の(6)式を満たす値となる。
R=(VD−VOUT)/I ・・・(6)
このような電圧形成回路では、IGBT400のフローティング電極端子116に第1のツェナーダイオード31の降伏電圧よりも高いフローティング電圧VPが印加された場合、フローティング電圧VPは、第1のツェナーダイオード31の降伏電圧VDZ1だけ小さい電圧(VP−VDZ1)となり、MOSFET33のドレイン端子に印加される。MOSFET33のドレイン端子にかかる電圧が、MOSFET33のゲート閾値電圧より大きくなると、MOSFET33に第1の電流I1が流れる。そして、制御抵抗34に第2の電流I2が流れる。制御抵抗34の両端では、ロジック回路電源と接地間の電位差と同程度の電圧降下が起こる。第2の電流I2は、MOSFET33の大きさによって制限されている。遅延回路電源端子115から遅延回路に、第1の電流I1と第2の電流I2の差分(I1−I2)の電流が電源電流として供給される。このようにして、遅延回路の遅延回路電源(図4参照)に、外部出力端子114から出力される外部出力電圧VOUTよりもロジック回路電源と接地間の電位差程度大きい電位を有する電圧(遅延回路電圧)VDが供給される。
図7は、図5に示す遅延回路に用いる電源の別の一例を示す回路図である。図7に示す電圧形成回路において、第1のツェナーダイオード31を、1個のダイオードまたは同じ向きに直列に接続された複数個のダイオード(以下、ダイオードチェーンとする)35としても良い。
図7に示す電圧形成回路において、MOSFET33のゲート端子およびドレイン端子は、ダイオードチェーン35のカソード側の一番端のダイオードのカソード端子に接続されている。ダイオードチェーン35のアノード側の一番端のダイオードのアノード端子は、IGBT400のフローティング電極端子116に接続されている。ダイオードチェーン35の順方向電圧の降下は、第2のツェナーダイオード32の逆方向電圧の耐圧よりも小さく設定される。ダイオードチェーン35の効果は、第1のツェナーダイオード31と同様である。その他の構成および動作は、図6に示す電圧形成回路と同様である。
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、IGBT400のフローティング電極、パワーIC回路の外部出力端子114および遅延回路300の遅延回路電源に接続される電圧形成回路を設けることにより、IGBT400のフローティング電圧から、遅延回路電圧を作り出すことができる。
次に、本発明にかかる遅延回路の遅延特性について、実施の形態1を例に説明する(以下、実施例とする)。図8は、実施の形態1かかる遅延回路における遅延特性を示す特性図である。図2に示す保護回路において、IGBT200の電流能力を0.6Aとした。第1のスイッチ21としてnチャネルMOSFETを用い、そのゲート閾値電圧を6Vとした。なお、フィールドMOSFETを用いる場合は、第1のスイッチ21のゲート酸化膜およびアクセプタ濃度を、それぞれ400nmおよび1×1016cm-3とすることで、上述した(4)式より、ゲート閾値電圧を算出することができる。第1のスイッチ21のゲート幅とゲート長の比(=ゲート幅(μm)/ゲート長(μm):以下、ゲート寸法比とする)を40/2とした。第2のスイッチ23としてnチャネルMOSFETを用い、そのゲート閾値電圧を約1Vとした。第2のスイッチ23のゲート寸法比を15/2とした。分圧抵抗22の抵抗値を、50kΩとした。IGBT200のゲート入力容量を24pFとした。ロジック回路電源電圧VDLを5Vとした。
また、図1に示す遅延回路100において、第1のpチャネルMOSFET1、第1のnチャネルMOSFET2、第2のpチャネルMOSFET3、第2のnチャネルMOSFET4、第3のpチャネルMOSFET5、第3のnチャネルMOSFET6、第4のpチャネルMOSFET7および第4のnチャネルMOSFET8のゲート寸法比を、それぞれ5/2、15/2、4/2、8/2、3/2、12/2、20/2および20/2とした。遅延抵抗121の抵抗値をゼロとし、キャパシタ122の静電容量を1.2pFとした。ここで、ゲート幅とは、上述した通りである。また、ゲート長とは、MOSFETの電流の流れる方向のゲート電極の長さをいう。
図8に示す結果より、IGBT200のフローティング電圧VPが検出されてから、パワーIC回路の外部出力端子114から外部出力電圧VOUTが出力されるまでの時間(遅延時間)を、205nsとすることができることがわかった。また、外部出力端子114の外部出力電圧VOUTは、フローティング電圧VPの立ち下がりエッジに追随して立ち下がることがわかった。その理由は、次に示す通りである。IGBT200のゲート電圧VGは、エミッタ電位に付随して約5Vほど高くなり、IGBT200がオン状態となる。IGBT200がオン状態の間、IGBT200のフローティング電圧VPは、エミッタ電位より約10Vほど高くなり、高電圧状態となる。このとき、フローティング電圧VPは保護回路によって検出され、遅延回路100のIN端子には、分圧回路によって遅延回路100に入力可能な信号に変換された入力電圧VINが印加される。IGBT200のフローティング電圧VPの高電圧状態が200nsを超えたとき、遅延回路100のOUT端子における出力電圧により第1のスイッチ21がオン状態となり、IGBT200のゲート電圧VGが低減されるからである。
また、従来の遅延回路の遅延特性について検証した。図9および図10は、従来の遅延回路における遅延特性を示す特性図である。ここでは、図13に示す遅延回路を例に説明する。図9に示す結果は、図13に示す遅延回路において、第1のインバータ、第2のインバータ、遅延抵抗の抵抗値およびキャパシタの静電容量を、実施例と同様とした(以下、第1の従来例とする)ときの遅延特性である。また、図10に示す結果は、第1の従来例の遅延回路において、遅延抵抗の抵抗値を50kΩとした(以下、第2の従来例とする)ときの遅延特性である。図9および図10に示す結果では、遅延時間は、それぞれ77ns程度および135ns程度であることがわかった。
以上の結果より、実施例の遅延回路では、遅延抵抗を用いない場合でも、従来例の遅延回路よりも遅延時間を長くできることがわかった。例えば、遅延抵抗121の抵抗値およびキャパシタ122の静電容量が同様とした実施例および第1の従来例では、遅延時間がそれぞれ205nsおよび77nsとなり、実施例は従来例の約3倍の遅延時間を実現できることがわかった。
なお、IGBT200を、例えば、パワーIC回路(図20参照)における出力段の第1のIGBT4001および第2のIGBT4002に用いる場合、第1のIGBT4001に流すことのできる電流値の上限(以下、電流能力とする)を0.6A、第2のIGBT4002の電流能力を0.2A、コンデンサ4003の容量を200pF、抵抗4004の抵抗値を約5kΩ、定電流源4005の定電流値を0.1Aおよび高電圧電源端子4007に接続される回路電源の電圧を約150Vとした場合、コンデンサ4003が充電されるときの、第2のIGBT4002の正常動作時のターンオン時間は約200nsとなる。また、コンデンサ4003が放電されるとき、第1のIGBT4001のゲート電圧がゼロであるときの電位よりも第1のIGBT4001のフローティング電圧が高くなっている時間は約80nsである。第1のIGBT4001の保護回路としては、遅延時間が80ns以上の回路を作成すれば良いが、第1のIGBT4001および第2のIGBT4002を同一構造同一プロセスで形成する場合は、両者が同じ破壊耐量を持つこととなるため、第1のIGBT4001および第2のIGBT4002の保護回路は、第2のIGBT4002のターンオン時間に合わせて形成しても良い。
以上において、本発明では、出力段を保護するための回路として記載されているが、個別半導体にも適用可能である。また、本発明の耐圧担持に関する構造は、高耐圧を必要とする横型LDMOSトランジスタなどにも応用可能である。また、本発明にかかる半導体装置を用いた回路の構成および保護回路の構成は、上述した回路構成に限らず種々変更可能であり、保護回路として用いるスイッチング素子のターンオン時間、ゲート閾値電圧などは、回路構成に合わせて好適な条件に変更することが望ましい。