(本発明を適用する半導体集積回路のレイアウト)
図1は、本発明に係る静電保護回路、並びに、静電気放電(ESD)に基づくサージ電流から該静電保護回路により保護される内部回路を含む半導体集積回路のレイアウトを示す概略部分平面図である。
図1に示すように、本発明を適用する半導体集積回路は、各ビット毎に設けられた複数の入出力回路2000と、該入出力回路2000に電気的に接続されたロジック回路1000とを含む。各入出力回路2000は、更に、入出力信号の各ビット毎に設けられた複数の入出力パッドPADと、該ロジック回路1000に電気的に接続されると共に前述の入出力信号の各ビット毎に設けられた複数のCMOSインバータ300と、該複数のCMOSインバータ300と前述の入出力パッドPADとに電気的に接続されると共に前述の入出力信号の各ビット毎に設けられる複数の静電保護回路100とを含む。各入出力回路2000において、静電保護回路100は、CMOSインバータ300と入出力パッドPADとの間に配置され、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流からCMOSインバータ300及びロジック回路1000を保護する。
本発明を適用する半導体集積回路は、半導体基板上に形成され、複数の静電保護回路100を含む。各静電保護回路100は、チップキャパシタンスを有する。半導体集積回路は、高電位線から高電位の供給を受け、低電位線から低電位の供給を受ける。この高電位線と低電位線との間には、前述した浮遊容量からなるチップキャパシタンスが存在する。この、チップキャパシタンスは、前述したように、高電位線と半導体基板との間の浮遊容量、低電位線と基板との間の浮遊容量、他の静電保護回路100のNウェル領域と基板との間の浮遊容量からなる。他の静電保護回路100のNウェル領域の数は、入出力信号のビット数に依存する。入出力信号のビット数が減少すれば、他の静電保護回路のNウェル領域の数が減少する。この減少は、他の静電保護回路のNウェル領域と基板との間の浮遊容量の合計値の減少につながり、強いては、チップキャパシタンスの減少につながる。一方、入出力信号のビット数が増加すれば、他の静電保護回路100のNウェル領域の数が増加する。この増加は、他の静電保護回路100のNウェル領域と基板との間の浮遊容量の合計値の増加につながり、強いては、チップキャパシタンスの増加につながる。即ち、入出力端子への静電気放電(ESD)の印加に基づきチップキャパシタンスへ流れる電流は、入出力信号のビット数に依存する。
しかし、本発明に係る静電保護回路100は、前述の従来例のESD−on−SCRと異なる。以下の各実施形態で説明するように、本発明に係る静電保護回路100は、入出力信号のビット数に依存せず且つ許容上限値以下に抑制されたスナップバック電圧を有する。チップキャパシタンスは、入出力信号のビット数に依存する。しかし、本発明に係る静電保護回路100は、入出力信号のビット数が理論上の最小値、即ち1であっても、該静電保護回路100が、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ動作に入るのを保証するサイリスタ動作保証回路を有する。換言すれば、この電流保証回路は、入出力信号のビット数が理論上の最小値であっても、該静電保護回路100のスナップバック電圧を許容上限値以下に抑制するスナップバック電圧抑制回路として働く。従って、入出力信号のビット数に依存せず、同一の回路構成を有する静電保護回路100を常に適用することが可能となる。このことを以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
(1)第1実施形態
本実施形態によれば、入出力信号のビット数に依存せず、入出力パッドに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路がサイリスタ動作に入るのを保証するサイリスタ動作保証回路を含む静電保護回路100が提供される。サージ電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路がサイリスタ動作に入るのを保証するには、サイリスタ動作保証回路は、スナップバック電圧を許容上限値以下に抑制する機能を発揮することを意味する。よって、サイリスタ動作保証回路は、サイリスタ動作保証機能と、スナップバック電圧抑制機能とを有する。
図2は、図1に示した複数の静電保護回路の各々の等価回路図である。各静電保護回路100は、高電位Vddを供給する高電位線Vddと、低電位Vssを供給する低電位線Vssとに接続される。更に、各静電保護回路100は、サージ電流から保護すべき内部回路と、出力信号が出力される出力パッドVoutとに接続される。尚、各静電保護回路100は、サージ電流から保護すべき内部回路と、入力信号が入力される入力パッドVinとに接続されてもよいが、本実施の形態では、静電気放電(ESD)が出力パッドVoutに印加された場合を例にとり、本発明につき添付図面を参照しながら説明する。
出力パッドVoutの電位は、低電位供給線が供給する低電位Vssより高く、且つ、高電位供給線が供給する高電位Vddより低いものとする。即ち、出力パッドVoutの電位は、常に高電位供給線が供給する高電位Vddより低いものとする。
静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、該サイリスタ整流回路110に電気的に接続されると共に機能的に結合されるサイリスタ動作保証回路120とを含む。
サイリスタ整流回路110は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1と、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1と、基板抵抗R1とからなる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はエミッタを有し、該エミッタは出力パッドVoutに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はコレクタを有し、該コレクタは第1の端子G1に接続されると共に、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はベースを有し、該ベースは第2の端子G2を介し高電位線Vddに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はコレクタを有し、該コレクタは第2の端子G2を介し縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続されると共に、高電位線Vddに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はエミッタを有し、該エミッタは低電位線Vssに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はベースを有し、該ベースは第1の端子G1及び基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに接続される。
静電保護回路100は、半導体基板中に形成される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは半導体基板で構成されることを意味する。
サイリスタ動作保証回路120は、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1からなる。第1の容量素子C1は、第1の電極を有し、該第1の電極は、第1のノードN1を介して高電位線Vddに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続され、且つ、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタにも接続される。第1の容量素子C1は、第2の電極を有し、該第2の電極は、低電位線Vssに接続される。この第1の容量素子C1が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。このことは、以下説明するように、前述の問題を解決するために必須であり、且つ非常に意義のあることである。
図1を参照して前述したように、入出力信号の各ビット毎に、入出力回路2000が設けられる。各入出力回路2000は、更に、出力パッドVoutと、該出力パッドVoutに接続された静電保護回路100と、該静電保護回路100に接続されたCMOSインバータ300とからなる。このCMOSインバータ300は、ロジック回路1000の出力段を構成する。高電位線と低電位線との間には、前述した浮遊容量からなるチップキャパシタンスが存在する。この、チップキャパシタンスは、前述したように、高電位線と半導体基板との間の浮遊容量、低電位線と基板との間の浮遊容量、他の静電保護回路100のNウェル領域と基板との間の浮遊容量からなる。他の静電保護回路100のNウェル領域の数は、入出力信号のビット数に依存する。入出力端子への静電気放電(ESD)の印加に基づき浮遊容量であるチップキャパシタンスへ流れる電流は、入出力信号のビット数に依存する。
しかしながら、静電保護回路100は、浮遊容量であるチップキャパシタンスとは別に、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1を含む。この第1の容量素子C1が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最小値、即ち1であっても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1が、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量を保証するので、出力パッドVoutに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流が第1の容量素子C1に注入され、第1の容量素子C1が充電される。よって、サージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからベースへ電流が流れる。更に、該ベースから第2の端子G2を介して第1の容量素子C1へ電流が流れることで、第1の容量素子C1が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量が第1の容量素子C1により提供される。浮遊容量と異なる第1の容量素子C1の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第1の容量素子C1へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースの電位が上昇する。
このベース電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからコレクタに流れ、更に基板抵抗R1を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成される半導体基板に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流が半導体基板に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、半導体基板の電位が上昇する。半導体基板の電位と横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位は同じであるので、コレクタ電流が半導体基板に流れることで、前述の半導体基板の電位が上昇すると共に、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位も上昇する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタは、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタからエミッタへ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1は、サイリスタ整流回路110が、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1が、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、許容範囲の上限値以下に抑制する。このため、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1からなるサイリスタ動作保証回路120は、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、入出力信号のビット数に依存せず、常に、許容範囲の上限値以下に抑制する。
勿論、入出力信号のビット数が非常に大きい場合、前述のサイリスタ動作保証回路120を設ける必要はない。しかし、静電保護回路100が、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路120とで構成されることで、該静電保護回路100を入出力信号のビット数によらず常に使用することができる。
即ち、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1からなるサイリスタ動作保証回路120は、入出力信号のビット数に依存することなく、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入るのを確実に保証する。
前述の等価回路図で示した静電保護回路100は、半導体基板内に形成される。この静電保護回路100のレイアウトを以下説明する。図3は、図2の等価回路で示した静電保護回路であって、半導体基板内に形成された静電保護回路の概略レイアウトを示す概略平面図である。図4は、静電保護回路の概略レイアウトを示す図3のA−A線に沿った概略部分縦断面図である。
図3に示すように、また、前述したように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路120とからなる。サイリスタ動作保証回路120は、出力パッドVoutとサイリスタ整流回路110との間に配置される。P型単結晶半導体基板1内に、静電保護回路100と、該静電保護回路100によりサージ電流から保護される内部回路とが形成される。静電保護回路100は、入出力パッドPADと内部回路と間に形成される。前述したように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、サイリスタ動作保証回路120とからなる。サイリスタ動作保証回路120は、出力パッドVoutと、サイリスタ整流回路110との間に設けられる。サイリスタ整流回路110は、サイリスタ動作保証回路120と、内部回路との間に設けられる。
図3及び図4に示すように、P型単結晶半導体基板1の表面には、素子分離領域を画定するフィールド酸化膜2が設けられる。このフィールド酸化膜2で、P型単結晶半導体基板1の活性領域が画定される。サイリスタ整流回路110は、P型単結晶半導体基板1中に形成されたP+型ガードリング3で囲まれた領域内の活性領域中に設けられる。一方、サイリスタ動作保証回路120は、P型単結晶半導体基板1中に形成されたP+型ガードリング21で囲まれた領域内の活性領域中に設けられる。
P型単結晶半導体基板1中であって、サイリスタ整流回路110を形成する領域には、P+型不純物拡散領域4と、該P+型不純物拡散領域4からフィールド酸化膜2を介して離間したN+型不純物拡散領域5と、該N+型不純物拡散領域5からフィールド酸化膜2を介して離間したNウェル領域6とが設けられる。更に、Nウェル領域6中には、N+型不純物拡散領域9と、該N+型不純物拡散領域9から離間したP−型不純物拡散領域7とが設けられる。更に、P−型不純物拡散領域7中には、P+型不純物拡散領域8が設けられる。
P−型不純物拡散領域7は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタに相当する。該エミッタは、P+型不純物拡散領域8を介して出力パッドVoutに接続される。Nウェル領域6は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに相当する。該ベースは、N+型不純物拡散領域9を介して高電位線Vddに接続される。P型単結晶半導体基板1は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに相当する。該コレクタは、P+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssに接続される。更に、P型単結晶半導体基板1は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースに相当する。該ベースは、P+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssに接続される。Nウェル領域6は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタに相当する。該コレクタは、N+型不純物拡散領域9を介して高電位線Vddに接続される。N+型不純物拡散領域5は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタに相当する。該エミッタは、低電位線Vssに接続される。尚、P型単結晶半導体基板1中を流れる電流が受ける抵抗は、基板抵抗R1に相当する。
一方、P型単結晶半導体基板1中であって、サイリスタ動作保証回路120を形成する領域には、P+型ガードリング21からフィールド酸化膜2を介して離間したP+型不純物拡散領域22と、該P+型不純物拡散領域22上に延在する第1の誘電体膜23と、該第1の誘電体膜23上に延在する第1のポリシリコン層24とが設けられる。P+型不純物拡散領域22と、第1の誘電体膜23と、第1のポリシリコン層24とで、第1の容量素子C1を構成する。即ち、この第1の容量素子C1は、MOSキャパシタからなる。第1のポリシリコン層24は、第1の容量素子C1の第1の電極に相当し、高電位線Vddに接続される。P+型不純物拡散領域22は、第1の容量素子C1の第2の電極に相当し、P型単結晶半導体基板1及びP+型ガードリング21を介して、低電位線Vssに接続される。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタを構成するP−型不純物拡散領域7からベースを構成するNウェル領域6へ、PN接合を介し順方向電流が流れる。更に、該ベースを構成するNウェル領域6から第2の端子G2を構成するN+型不純物拡散領域9介して第1の容量素子C1の第1の電極を構成する第1のポリシリコン層24へ電流が流れることで、P+型不純物拡散領域22と第1の誘電体膜23と第1のポリシリコン層24とで構成される第1の容量素子C1が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量が第1の容量素子C1により提供される。浮遊容量と異なる第1の容量素子C1の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第1の容量素子C1へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースを構成するNウェル領域6の電位が上昇する。
このベースを構成するNウェル領域6の電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差、即ち、Nウェル領域6の電位とP−型不純物拡散領域7の電位との差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタを構成するP−型不純物拡散領域7からNウェル領域6を介してコレクタを構成するP型単結晶半導体基板1に流れ、更に基板抵抗R1及びP+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成されるP型単結晶半導体基板1に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流がP型単結晶半導体基板1に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、P型単結晶半導体基板1の電位が上昇する。P型単結晶半導体基板1は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタと、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースとを構成するので、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタと、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースとの電位は同じである。従って、前述のP型単結晶半導体基板1の電位の上昇は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇を意味する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタを構成するN+型不純物拡散領域5は、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースを構成するP型単結晶半導体基板1の電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差、即ち、P型単結晶半導体基板1の電位とN+型不純物拡散領域5の電位との差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタを構成するNウェル領域6からP型単結晶半導体基板1を介してエミッタを構成するN+型不純物拡散領域5へ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
(効果)
前述の静電保護回路100は、浮遊容量であるチップキャパシタンスとは別に、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1を含む。この第1の容量素子C1が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1は、サイリスタ整流回路110が、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1が、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、許容範囲の上限値以下に抑制する。このため、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1からなるサイリスタ動作保証回路120は、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、入出力信号のビット数に依存せず、常に、許容範囲の上限値以下に抑制する。
勿論、入出力信号のビット数が非常に大きい場合、前述のサイリスタ動作保証回路120を設ける必要はない。しかし、静電保護回路100が、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路120とで構成されることで、該静電保護回路100を入出力信号のビット数によらず常に使用することができる。
即ち、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1からなるサイリスタ動作保証回路120は、入出力信号のビット数に依存することなく、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入るのを確実に保証する。
(応用例)
図1を参照して前述したように、本実施形態に係る静電保護回路100は、入出力パッドPADと、サージ電流から保護すべき内部回路との間に配置される。内部回路の典型例として、ロジック回路1000を挙げることができる。以下、入出力パッドPADが出力パッドVoutであり、ロジック回路1000の出力段がCMOSインバータ300で構成される場合を例にとり、本実施形態に係る静電保護回路100が、CMOSインバータ300をサージ電流から保護するメカニズムにつき説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る図2に示した静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路構成を示した等価回路図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係る図5の等価回路で示した静電保護回路であって、半導体基板内に形成された静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路の概略レイアウトを示す概略平面図である。図7は、本発明の第1の実施形態に係る静電保護回路の概略レイアウトを示す図6のA−A線に沿った概略部分縦断面図である。
図5に示すように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路120とからなり、これらの構成及び動作、並びに、作用効果は前述した通りなので、重複する説明は省略する。以下、該静電保護回路100がCMOSインバータをサージ電流から保護するメカニズムにつき説明する。
CMOSインバータ300は、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続される。CMOSインバータ300は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1とからなる。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、高電位線Vddと高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1との間に接続される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と低電位線Vssとの間に接続される。
高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ゲートを有し、該ゲートには、ロジック回路1000からの出力を反転した信号が入力信号INとして入力される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ソースを有し、該ソースは、高電位線Vddに接続される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ドレインを有し、該ドレインは、CMOSインバータ300の出力端子に接続され、該CMOSインバータ300の出力端子は、出力パッドVoutに接続される。サイリスタ整流回路110の縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタも出力パッドVoutに接続される。よって、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1のドレインは、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタにも接続される。
高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ゲートを有し、該ゲートには、ロジック回路1000から出力された信号が入力信号INとして入力される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ソースを有し、該ソースは、低電位線Vssに接続される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ドレインを有し、該ドレインは、CMOSインバータ300の出力端子に接続され、該CMOSインバータ300の出力端子は、出力パッドVoutに接続される。サイリスタ整流回路110の縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタも出力パッドVoutに接続される。よって、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1のドレインは、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタにも接続される。
前述したように、出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、直ちにサイリスタ動作保証回路120がサイリスタ整流回路110をサイリスタ動作状態にする。結果、サージ電流は、サイリスタ整流回路110を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、入出力信号のビット数に依存せず、サイリスタ動作保証回路120が、出力パッドVoutへのサージ電流の印加をトリガーとして、サイリスタ整流回路110を直ちにサイリスタ動作状態にするので、サージ電流がCMOSインバータ300の出力から高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1を介して低電位線Vssに流れるのを確実に防止できる。即ち、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1の破壊を確実に防止できる。このことは、入出力信号のビット数に依存せず、静電保護回路100が、出力パッドVoutに印加されたサージ電流からCMOSインバータ300を確実に保護することを意味する。
図6及び図7に示すように、静電保護回路100とCMOSインバータ300を含むロジック回路1000とは、P型単結晶半導体基板1中に設けられる。即ち、静電保護回路100とCMOSインバータ300を含むロジック回路1000とは、同一半導体基板上に設けられる。静電保護回路100のレイアウトは、図3及び図4に示したものと同一であるので重複する説明は、省略する。以下、CMOSインバータ300のレイアウトにつき説明する。
CMOSインバータ300は、静電保護回路100と、図1に示すロジック回路1000との間に設けられる。前述したようにCMOSインバータ300は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1とからなる。Nウェル領域91−1及びPウェル領域91−2が、P型単結晶半導体基板1中に設けられたP+型ガードリング3で囲まれると共に、フィールド酸化膜2で画定されたP型単結晶半導体基板1中の活性領域に設けられる。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、Nウェル領域91−1中に設けられる。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、Pウェル領域91−2中に設けられる。
高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ソース領域92−1とドレイン領域93−1とを有し、該ソース領域92−1及び該ドレイン領域93−1は、Nウェル領域91−1中に互いに離間して設けられたP型不純物拡散領域からなる。該ソース領域92−1及び該ドレイン領域93−1の間にはチャネル領域が画定される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ゲート絶縁膜94−1及びゲート電極95−1を有し、該ゲート絶縁膜94−1は、前述のチャネル領域上に設けられ、該ゲート電極95−1は、該ゲート絶縁膜94−1上に設けられる。
高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ソース領域92−2とドレイン領域93−2とを有し、該ソース領域92−2及び該ドレイン領域93−2は、Pウェル領域91−2中に互いに離間して設けられたN型不純物拡散領域からなる。該ソース領域92−2及び該ドレイン領域93−2の間にはチャネル領域が画定される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ゲート絶縁膜94−2及びゲート電極95−2を有し、該ゲート絶縁膜94−2は、前述のチャネル領域上に設けられ、該ゲート電極95−2は、該ゲート絶縁膜94−2上に設けられる。
前述したように、出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、直ちにサイリスタ動作保証回路120がサイリスタ整流回路110をサイリスタ動作状態にする。結果、サージ電流は、サイリスタ整流回路110を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、入出力信号のビット数に依存せず、サイリスタ動作保証回路120が、出力パッドVoutへのサージ電流の印加をトリガーとして、サイリスタ整流回路110を直ちにサイリスタ動作状態にするので、サージ電流がCMOSインバータ300の出力から高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1を介して低電位線Vssに流れるのを確実に防止できる。即ち、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1の破壊を確実に防止できる。このことは、入出力信号のビット数に依存せず、静電保護回路100が、出力パッドVoutに印加されたサージ電流からCMOSインバータ300を確実に保護することを意味する。
(変更例)
前述の説明では、出力パッドVoutに現れるロジック回路1000からの出力信号の電圧レベルが、常に、高電位線Vddが供給する高電位Vdd以下であり、且つ低電位線Vssが供給する低電位Vss以上である場合を想定したものである。しかし、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルは、過渡的に高電位Vddを越える場合もあり得る。このような場合、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する必要が生じる。このため、以下のように静電保護回路100の回路構成を変更することが好ましい。
図8は、本発明の第1の実施形態の変更例に係る静電保護回路を示した等価回路図である。図9は、本発明の第1の実施形態の変更例に係る図8に示した静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路構成を示した等価回路図である。静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、該サイリスタ整流回路110に電気的に接続されると共に機能的に結合されるサイリスタ動作保証回路150とを含む。
サイリスタ整流回路110は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1と、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1と、基板抵抗R1とからなる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はエミッタを有し、該エミッタは出力パッドVoutに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はコレクタを有し、該コレクタは第1の端子G1に接続されると共に、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はベースを有し、該ベースは第2の端子G2を介し第1のノードN1に接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はコレクタを有し、該コレクタは第2の端子G2を介し縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続されると共に、第1のノードN1に接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はエミッタを有し、該エミッタは低電位線Vssに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はベースを有し、該ベースは第1の端子G1及び基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに接続される。
静電保護回路100は、半導体基板中に形成される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは半導体基板で構成されることを意味する。
サイリスタ動作保証回路150は、第1のノードN1と低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1と、該第1のノードN1と高電位線Vddとの間に接続された複数のダイオードD1の多段直列接続からなる。第1の容量素子C1は、第1の電極を有し、該第1の電極は、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続され、且つ、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタにも接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタは、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続される。同様に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースは、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続される。第1の容量素子C1は、第2の電極を有し、該第2の電極は、低電位線Vssに接続される。この第1の容量素子C1が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。このことは、以下説明するように、前述の問題を解決するために必須であり、且つ非常に意義のあることである。
更に、該第1のノードN1と高電位線Vddとの間の複数のダイオードD1の多段直列接続は、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合に、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。ここで、複数のダイオードD1の各々が、順方向電圧降下VFを有するとする。そして、このダイオードD1をn個直列接続すると仮定する。この条件の下、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れると、n個のダイオードD1の多段直列接続により、VF×nの順方向電圧降下が起きる。よって、VF×nの値が、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルから高電位Vddを差し引いた値より大きくなるよう、nの値を決めることで、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合でも、n個のダイオードD1の多段直列接続が、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。このことにより、消費電力が不必要に増大するのを防止することができる。
尚、第1のノードN1と高電位線Vddとの間の複数のダイオードD1の多段直列接続は、前述した静電保護回路100の動作に悪影響を及ぼさない。このことを以下説明する。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからベースへ電流が流れる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1ベースと高電位線Vddとの間には複数のダイオードD1の多段直列接続が存在するので、該電流は、更に、該ベースから第1の容量素子C1へ流れ、第1の容量素子C1が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量が第1の容量素子C1により提供される。浮遊容量と異なる第1の容量素子C1の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第1の容量素子C1へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースの電位が上昇する。
このベース電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからコレクタに流れ、更に基板抵抗R1を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成される半導体基板に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流が半導体基板に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、半導体基板の電位が上昇する。半導体基板の電位と横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位は同じであるので、コレクタ電流が半導体基板に流れることで、前述の半導体基板の電位が上昇すると共に、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位も上昇する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタは、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタからエミッタへ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第1の容量素子C1は、サイリスタ整流回路110が、出力パッドVoutに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。一方、出力パッドVoutに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合でも、n個のダイオードD1の多段直列接続が、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。このことにより、消費電力が不必要に増大するのを防止することができる。
尚、静電保護回路100をCMOSインバータ300の保護に適用した場合の応用例は、前述の応用例で記載した通りなので重複する説明は省略する。
(2)第2実施形態
本実施形態によれば、入出力信号のビット数に依存せず、入出力パッドに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路がサイリスタ動作に入るのを保証するサイリスタ動作保証回路を含む静電保護回路100が提供される。サージ電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路がサイリスタ動作に入るのを保証するには、サイリスタ動作保証回路は、スナップバック電圧を許容上限値以下に抑制する機能を発揮することを意味する。よって、サイリスタ動作保証回路は、サイリスタ動作保証機能と、スナップバック電圧抑制機能とを有する。
図10は、図1に示した複数の静電保護回路の各々の等価回路図である。各静電保護回路100は、高電位Vddを供給する高電位線Vddと、低電位Vssを供給する低電位線Vssとに接続される。更に、各静電保護回路100は、サージ電流から保護すべき内部回路と、出力信号が出力される出力パッドVoutとに接続される。尚、各静電保護回路100は、サージ電流から保護すべき内部回路と、入力信号が入力される入力パッドVinとに接続されてもよいが、本実施の形態では、静電気放電(ESD)が出力パッドVoutに印加された場合を例にとり、本発明につき添付図面を参照しながら説明する。
出力パッドVoutの電位は、低電位供給線が供給する低電位Vssより高く、且つ、高電位供給線が供給する高電位Vddより低いものとする。即ち、出力パッドVoutの電位は、常に高電位供給線が供給する高電位Vddより低いものとする。
静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、該サイリスタ整流回路110に電気的に接続されると共に機能的に結合されるサイリスタ動作保証回路130とを含む。
サイリスタ整流回路110は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1と、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1と、基板抵抗R1とからなる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はエミッタを有し、該エミッタは出力パッドVoutに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はコレクタを有し、該コレクタは第1の端子G1に接続されると共に、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はベースを有し、該ベースは第2の端子G2を介し高電位線Vddに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はコレクタを有し、該コレクタは第2の端子G2を介し縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続されると共に、高電位線Vddに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はエミッタを有し、該エミッタは低電位線Vssに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はベースを有し、該ベースは第1の端子G1及び基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに接続される。
静電保護回路100は、半導体基板中に形成される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは半導体基板で構成されることを意味する。
サイリスタ動作保証回路130は、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第2の容量素子C2からなる。第2の容量素子C2は、P型単結晶半導体基板と、該P型単結晶半導体基板中に設けられたNウェル領域とで構成されるPN接合ダイオードからなる。第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのN領域は、第1の電極を有し、該第1の電極は、第1のノードN1を介して高電位線Vddに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続され、且つ、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタにも接続される。第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのP領域は、第2の電極を有し、該第2の電極は、低電位線Vssに接続される。この第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードが提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。このことは、以下説明するように、前述の問題を解決するために必須であり、且つ非常に意義のあることである。
図1を参照して前述したように、入出力信号の各ビット毎に、入出力回路2000が設けられる。各入出力回路2000は、更に、出力パッドVoutと、該出力パッドVoutに接続された静電保護回路100と、該静電保護回路100に接続されたCMOSインバータ300とからなる。このCMOSインバータ300は、ロジック回路1000の出力段を構成する。高電位線と低電位線との間には、前述した浮遊容量からなるチップキャパシタンスが存在する。この、チップキャパシタンスは、前述したように、高電位線と半導体基板との間の浮遊容量、低電位線と基板との間の浮遊容量、他の静電保護回路100のNウェル領域と基板との間の浮遊容量からなる。他の静電保護回路100のNウェル領域の数は、入出力信号のビット数に依存する。入出力端子への静電気放電(ESD)の印加に基づき浮遊容量であるチップキャパシタンスへ流れる電流は、入出力信号のビット数に依存する。
しかしながら、静電保護回路100は、浮遊容量であるチップキャパシタンスとは別に、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードを含む。この第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードが提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最小値、即ち1であっても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードが、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量を保証するので、出力パッドVoutに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流が第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのN領域に注入される。よって、サージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからベースへ電流が流れる。更に、該ベースから第2の端子G2を介して第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのN領域へ電流が流れることで、第2の容量素子C2が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量が第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードにより提供される。浮遊容量と異なる第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードの存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのN領域へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースの電位が上昇する。
このベース電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからコレクタに流れ、更に基板抵抗R1を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成される半導体基板に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流が半導体基板に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、半導体基板の電位が上昇する。半導体基板の電位と横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位は同じであるので、コレクタ電流が半導体基板に流れることで、前述の半導体基板の電位が上昇すると共に、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位も上昇する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタは、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタからエミッタへ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードは、サイリスタ整流回路110が、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードが、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、許容範囲の上限値以下に抑制する。このため、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードからなるサイリスタ動作保証回路130は、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、入出力信号のビット数に依存せず、常に、許容範囲の上限値以下に抑制する。
勿論、入出力信号のビット数が非常に大きい場合、前述のサイリスタ動作保証回路130を設ける必要はない。しかし、静電保護回路100が、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路130とで構成されることで、該静電保護回路100を入出力信号のビット数によらず常に使用することができる。
即ち、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードからなるサイリスタ動作保証回路130は、入出力信号のビット数に依存することなく、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入るのを確実に保証する。
前述の等価回路図で示した静電保護回路100は、半導体基板内に形成される。この静電保護回路100のレイアウトを以下説明する。図11は、図10の等価回路で示した静電保護回路であって、半導体基板内に形成された静電保護回路の概略レイアウトを示す概略平面図である。図12は、静電保護回路の概略レイアウトを示す図11のA−A線に沿った概略部分縦断面図である。
図11に示すように、また、前述したように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路130とからなる。サイリスタ動作保証回路130は、出力パッドVoutとサイリスタ整流回路110との間に配置される。P型単結晶半導体基板1内に、静電保護回路100と、該静電保護回路100によりサージ電流から保護される内部回路とが形成される。静電保護回路100は、入出力パッドPADと内部回路と間に形成される。前述したように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、サイリスタ動作保証回路130とからなる。サイリスタ動作保証回路130は、出力パッドVoutと、サイリスタ整流回路110との間に設けられる。サイリスタ整流回路110は、サイリスタ動作保証回路130と、内部回路との間に設けられる。
図11及び図12に示すように、P型単結晶半導体基板1の表面には、素子分離領域を画定するフィールド酸化膜2が設けられる。このフィールド酸化膜2で、P型単結晶半導体基板1の活性領域が画定される。サイリスタ整流回路110は、P型単結晶半導体基板1中に形成されたP+型ガードリング3で囲まれた領域内の活性領域中に設けられる。一方、サイリスタ動作保証回路130は、P型単結晶半導体基板1中に形成されたP+型ガードリング31で囲まれた領域内の活性領域中に設けられる。
P型単結晶半導体基板1中であって、サイリスタ整流回路110を形成する領域には、P+型不純物拡散領域4と、該P+型不純物拡散領域4からフィールド酸化膜2を介して離間したN+型不純物拡散領域5と、該N+型不純物拡散領域5からフィールド酸化膜2を介して離間したNウェル領域6とが設けられる。更に、Nウェル領域6中には、N+型不純物拡散領域9と、該N+型不純物拡散領域9から離間したP−型不純物拡散領域7とが設けられる。更に、P−型不純物拡散領域7中には、P+型不純物拡散領域8が設けられる。
P−型不純物拡散領域7は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタに相当する。該エミッタは、P+型不純物拡散領域8を介して出力パッドVoutに接続される。Nウェル領域6は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに相当する。該ベースは、N+型不純物拡散領域9を介して高電位線Vddに接続される。P型単結晶半導体基板1は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに相当する。該コレクタは、P+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssに接続される。更に、P型単結晶半導体基板1は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースに相当する。該ベースは、P+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssに接続される。Nウェル領域6は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタに相当する。該コレクタは、N+型不純物拡散領域9を介して高電位線Vddに接続される。N+型不純物拡散領域5は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタに相当する。該エミッタは、低電位線Vssに接続される。尚、P型単結晶半導体基板1中を流れる電流が受ける抵抗は、基板抵抗R1に相当する。
一方、P型単結晶半導体基板1中であって、サイリスタ動作保証回路130を形成する領域には、P+型ガードリング31からフィールド酸化膜2を介して離間したNウェル領域32と、該P+型ガードリング31及び該Nウェル領域32からフィールド酸化膜2を介して離間したP+型不純物拡散領域34とが設けられる。更に、Nウェル領域32中には、N+型不純物拡散領域33が設けられる。Nウェル領域32は、PN接合ダイオードのN領域に相当する。P型単結晶半導体基板1は、PN接合ダイオードのP領域に相当する。P型単結晶半導体基板1とNウェル領域32とのPN接合で、第2の容量素子C2を構成する。即ち、この第2の容量素子C2は、PN接合ダイオードからなる。Nウェル領域32は、PN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2の第1の電極に相当し、N+型不純物拡散領域33を介して高電位線Vddに接続される。P型単結晶半導体基板1は、PN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2の第2の電極に相当し、P+型不純物拡散領域34を介して、低電位線Vssに接続される。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタを構成するP−型不純物拡散領域7からベースを構成するNウェル領域6へ、PN接合を介し順方向電流が流れる。更に、該ベースを構成するNウェル領域6から第2の端子G2を構成するN+型不純物拡散領域9介して第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードの第1の電極を構成するNウェル領域32へ電流が流れることで、PN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量がPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2により提供される。浮遊容量と異なるPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのN領域へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースを構成するNウェル領域6の電位が上昇する。
このベースを構成するNウェル領域6の電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差、即ち、Nウェル領域6の電位とP−型不純物拡散領域7の電位との差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタを構成するP−型不純物拡散領域7からNウェル領域6を介してコレクタを構成するP型単結晶半導体基板1に流れ、更に基板抵抗R1及びP+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成されるP型単結晶半導体基板1に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流がP型単結晶半導体基板1に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、P型単結晶半導体基板1の電位が上昇する。P型単結晶半導体基板1は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタと、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースとを構成するので、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタと、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースとの電位は同じである。従って、前述のP型単結晶半導体基板1の電位の上昇は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇を意味する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタを構成するN+型不純物拡散領域5は、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースを構成するP型単結晶半導体基板1の電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差、即ち、P型単結晶半導体基板1の電位とN+型不純物拡散領域5の電位との差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタを構成するNウェル領域6からP型単結晶半導体基板1を介してエミッタを構成するN+型不純物拡散領域5へ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
(効果)
前述の静電保護回路100は、浮遊容量であるチップキャパシタンスとは別に、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続されたPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2を含む。このPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続されたPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2は、サイリスタ整流回路110が、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続されたPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2が、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、許容範囲の上限値以下に抑制する。このため、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続されたPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2からなるサイリスタ動作保証回路130は、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、入出力信号のビット数に依存せず、常に、許容範囲の上限値以下に抑制する。
勿論、入出力信号のビット数が非常に大きい場合、前述のサイリスタ動作保証回路130を設ける必要はない。しかし、静電保護回路100が、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路130とで構成されることで、該静電保護回路100を入出力信号のビット数によらず常に使用することができる。
即ち、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続されたPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2からなるサイリスタ動作保証回路130は、入出力信号のビット数に依存することなく、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入るのを確実に保証する。
(応用例)
図1を参照して前述したように、本実施形態に係る静電保護回路100は、入出力パッドPADと、サージ電流から保護すべき内部回路との間に配置される。内部回路の典型例として、ロジック回路1000を挙げることができる。以下、入出力パッドPADが出力パッドVoutであり、ロジック回路1000の出力段がCMOSインバータ300で構成される場合を例にとり、本実施形態に係る静電保護回路100が、CMOSインバータ300をサージ電流から保護するメカニズムにつき説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態に係る図10に示した静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路構成を示した等価回路図である。図14は、本発明の第2の実施形態に係る図13の等価回路で示した静電保護回路であって、半導体基板内に形成された静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路の概略レイアウトを示す概略平面図である。図15は、本発明の第2の実施形態に係る静電保護回路の概略レイアウトを示す図14のA−A線に沿った概略部分縦断面図である。
図13に示すように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路130とからなり、これらの構成及び動作、並びに、作用効果は前述した通りなので、重複する説明は省略する。以下、該静電保護回路100がCMOSインバータをサージ電流から保護するメカニズムにつき説明する。
CMOSインバータ300は、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続される。CMOSインバータ300は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1とからなる。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、高電位線Vddと高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1との間に接続される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と低電位線Vssとの間に接続される。
高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ゲートを有し、該ゲートには、ロジック回路1000からの出力を反転した信号が入力信号INとして入力される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ソースを有し、該ソースは、高電位線Vddに接続される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ドレインを有し、該ドレインは、CMOSインバータ300の出力端子に接続され、該CMOSインバータ300の出力端子は、出力パッドVoutに接続される。サイリスタ整流回路110の縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタも出力パッドVoutに接続される。よって、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1のドレインは、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタにも接続される。
高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ゲートを有し、該ゲートには、ロジック回路1000から出力された信号が入力信号INとして入力される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ソースを有し、該ソースは、低電位線Vssに接続される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ドレインを有し、該ドレインは、CMOSインバータ300の出力端子に接続され、該CMOSインバータ300の出力端子は、出力パッドVoutに接続される。サイリスタ整流回路110の縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタも出力パッドVoutに接続される。よって、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1のドレインは、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタにも接続される。
前述したように、出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、直ちにサイリスタ動作保証回路130がサイリスタ整流回路110をサイリスタ動作状態にする。結果、サージ電流は、サイリスタ整流回路110を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、入出力信号のビット数に依存せず、サイリスタ動作保証回路130が、出力パッドVoutへのサージ電流の印加をトリガーとして、サイリスタ整流回路110を直ちにサイリスタ動作状態にするので、サージ電流がCMOSインバータ300の出力から高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1を介して低電位線Vssに流れるのを確実に防止できる。即ち、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1の破壊を確実に防止できる。このことは、入出力信号のビット数に依存せず、静電保護回路100が、出力パッドVoutに印加されたサージ電流からCMOSインバータ300を確実に保護することを意味する。
図14及び図15に示すように、静電保護回路100とCMOSインバータ300を含むロジック回路1000とは、P型単結晶半導体基板1中に設けられる。即ち、静電保護回路100とCMOSインバータ300を含むロジック回路1000とは、同一半導体基板上に設けられる。静電保護回路100のレイアウトは、図11及び図12に示したものと同一であるので重複する説明は、省略する。以下、CMOSインバータ300のレイアウトにつき説明する。
CMOSインバータ300は、静電保護回路100と、図1に示すロジック回路1000との間に設けられる。前述したようにCMOSインバータ300は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1とからなる。Nウェル領域91−1及びPウェル領域91−2が、P型単結晶半導体基板1中に設けられたP+型ガードリング3で囲まれると共に、フィールド酸化膜2で画定されたP型単結晶半導体基板1中の活性領域に設けられる。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、Nウェル領域91−1中に設けられる。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、Pウェル領域91−2中に設けられる。
高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ソース領域92−1とドレイン領域93−1とを有し、該ソース領域92−1及び該ドレイン領域93−1は、Nウェル領域91−1中に互いに離間して設けられたP型不純物拡散領域からなる。該ソース領域92−1及び該ドレイン領域93−1の間にはチャネル領域が画定される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ゲート絶縁膜94−1及びゲート電極95−1を有し、該ゲート絶縁膜94−1は、前述のチャネル領域上に設けられ、該ゲート電極95−1は、該ゲート絶縁膜94−1上に設けられる。
高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ソース領域92−2とドレイン領域93−2とを有し、該ソース領域92−2及び該ドレイン領域93−2は、Pウェル領域91−2中に互いに離間して設けられたN型不純物拡散領域からなる。該ソース領域92−2及び該ドレイン領域93−2の間にはチャネル領域が画定される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ゲート絶縁膜94−2及びゲート電極95−2を有し、該ゲート絶縁膜94−2は、前述のチャネル領域上に設けられ、該ゲート電極95−2は、該ゲート絶縁膜94−2上に設けられる。
前述したように、出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、直ちにサイリスタ動作保証回路130がサイリスタ整流回路110をサイリスタ動作状態にする。結果、サージ電流は、サイリスタ整流回路110を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、入出力信号のビット数に依存せず、サイリスタ動作保証回路130が、出力パッドVoutへのサージ電流の印加をトリガーとして、サイリスタ整流回路110を直ちにサイリスタ動作状態にするので、サージ電流がCMOSインバータ300の出力から高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1を介して低電位線Vssに流れるのを確実に防止できる。即ち、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1の破壊を確実に防止できる。このことは、入出力信号のビット数に依存せず、静電保護回路100が、出力パッドVoutに印加されたサージ電流からCMOSインバータ300を確実に保護することを意味する。
(変更例)
前述の説明では、出力パッドVoutに現れるロジック回路1000からの出力信号の電圧レベルが、常に、高電位線Vddが供給する高電位Vdd以下であり、且つ低電位線Vssが供給する低電位Vss以上である場合を想定したものである。しかし、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルは、過渡的に高電位Vddを越える場合もあり得る。このような場合、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する必要が生じる。このため、以下のように静電保護回路100の回路構成を変更することが好ましい。
図16は、本発明の第2の実施形態の変更例に係る静電保護回路を示した等価回路図である。図17は、本発明の第2の実施形態の変更例に係る図16に示した静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路構成を示した等価回路図である。静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、該サイリスタ整流回路110に電気的に接続されると共に機能的に結合されるサイリスタ動作保証回路160とを含む。
サイリスタ整流回路110は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1と、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1と、基板抵抗R1とからなる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はエミッタを有し、該エミッタは出力パッドVoutに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はコレクタを有し、該コレクタは第1の端子G1に接続されると共に、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はベースを有し、該ベースは第2の端子G2を介し第1のノードN1に接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はコレクタを有し、該コレクタは第2の端子G2を介し縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続されると共に、第1のノードN1に接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はエミッタを有し、該エミッタは低電位線Vssに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はベースを有し、該ベースは第1の端子G1及び基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに接続される。
静電保護回路100は、半導体基板中に形成される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは半導体基板で構成されることを意味する。
サイリスタ動作保証回路160は、第1のノードN1と低電位線Vssとの間に接続されたPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2と、該第1のノードN1と高電位線Vddとの間に接続された複数のダイオードD1の多段直列接続からなる。PN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2は、第1の電極を有し、該第1の電極は、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続され、且つ、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタにも接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタは、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続される。同様に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースは、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続される。PN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2は、第2の電極を有し、該第2の電極は、低電位線Vssに接続される。このPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。このことは、以下説明するように、前述の問題を解決するために必須であり、且つ非常に意義のあることである。
更に、該第1のノードN1と高電位線Vddとの間の複数のダイオードD1の多段直列接続は、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合に、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。ここで、複数のダイオードD1の各々が、順方向電圧降下VFを有するとする。そして、このダイオードD1をn個直列接続すると仮定する。この条件の下、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れると、n個のダイオードD1の多段直列接続により、VF×nの順方向電圧降下が起きる。よって、VF×nの値が、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルから高電位Vddを差し引いた値より大きくなるよう、nの値を決めることで、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合でも、n個のダイオードD1の多段直列接続が、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。このことにより、消費電力が不必要に増大するのを防止することができる。
尚、第1のノードN1と高電位線Vddとの間の複数のダイオードD1の多段直列接続は、前述した静電保護回路100の動作に悪影響を及ぼさない。このことを以下説明する。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからベースへ電流が流れる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1ベースと高電位線Vddとの間には複数のダイオードD1の多段直列接続が存在するので、該電流は、更に、該ベースから第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのN領域へ流れ、該第2の容量素子C2が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量がPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2により提供される。浮遊容量と異なるPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第2の容量素子C2を構成するPN接合ダイオードのN領域へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースの電位が上昇する。
このベース電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからコレクタに流れ、更に基板抵抗R1を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成される半導体基板に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流が半導体基板に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、半導体基板の電位が上昇する。半導体基板の電位と横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位は同じであるので、コレクタ電流が半導体基板に流れることで、前述の半導体基板の電位が上昇すると共に、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位も上昇する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタは、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタからエミッタへ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続されたPN接合ダイオードからなる第2の容量素子C2は、サイリスタ整流回路110が、出力パッドVoutに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。一方、出力パッドVoutに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合でも、n個のダイオードD1の多段直列接続が、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。このことにより、消費電力が不必要に増大するのを防止することができる。
尚、静電保護回路100をCMOSインバータ300の保護に適用した場合の応用例は、前述の応用例で記載した通りなので重複する説明は省略する。
(3)第3実施形態
本実施形態によれば、入出力信号のビット数に依存せず、入出力パッドに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路がサイリスタ動作に入るのを保証するサイリスタ動作保証回路を含む静電保護回路100が提供される。サージ電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路がサイリスタ動作に入るのを保証するには、サイリスタ動作保証回路は、スナップバック電圧を許容上限値以下に抑制する機能を発揮することを意味する。よって、サイリスタ動作保証回路は、サイリスタ動作保証機能と、スナップバック電圧抑制機能とを有する。
図18は、図1に示した複数の静電保護回路の各々の等価回路図である。各静電保護回路100は、高電位Vddを供給する高電位線Vddと、低電位Vssを供給する低電位線Vssとに接続される。更に、各静電保護回路100は、サージ電流から保護すべき内部回路と、出力信号が出力される出力パッドVoutとに接続される。尚、各静電保護回路100は、サージ電流から保護すべき内部回路と、入力信号が入力される入力パッドVinとに接続されてもよいが、本実施の形態では、静電気放電(ESD)が出力パッドVoutに印加された場合を例にとり、本発明につき添付図面を参照しながら説明する。
出力パッドVoutの電位は、低電位供給線が供給する低電位Vssより高く、且つ、高電位供給線が供給する高電位Vddより低いものとする。即ち、出力パッドVoutの電位は、常に高電位供給線が供給する高電位Vddより低いものとする。
静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、該サイリスタ整流回路110に電気的に接続されると共に機能的に結合されるサイリスタ動作保証回路140とを含む。
サイリスタ整流回路110は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1と、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1と、基板抵抗R1とからなる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はエミッタを有し、該エミッタは出力パッドVoutに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はコレクタを有し、該コレクタは第1の端子G1に接続されると共に、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はベースを有し、該ベースは第2の端子G2を介し高電位線Vddに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はコレクタを有し、該コレクタは第2の端子G2を介し縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続されると共に、高電位線Vddに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はエミッタを有し、該エミッタは低電位線Vssに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はベースを有し、該ベースは第1の端子G1及び基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに接続される。
静電保護回路100は、半導体基板中に形成される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは半導体基板で構成されることを意味する。
サイリスタ動作保証回路140は、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3からなる。第3の容量素子C3は、第1の電極を有し、該第1の電極は、第1のノードN1を介して高電位線Vddに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続され、且つ、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタにも接続される。第3の容量素子C3は、第2の電極を有し、該第2の電極は、低電位線Vssに接続される。この第3の容量素子C3が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。このことは、以下説明するように、前述の問題を解決するために必須であり、且つ非常に意義のあることである。
図1を参照して前述したように、入出力信号の各ビット毎に、入出力回路2000が設けられる。各入出力回路2000は、更に、出力パッドVoutと、該出力パッドVoutに接続された静電保護回路100と、該静電保護回路100に接続されたCMOSインバータ300とからなる。このCMOSインバータ300は、ロジック回路1000の出力段を構成する。高電位線と低電位線との間には、前述した浮遊容量からなるチップキャパシタンスが存在する。この、チップキャパシタンスは、前述したように、高電位線と半導体基板との間の浮遊容量、低電位線と基板との間の浮遊容量、他の静電保護回路100のNウェル領域と基板との間の浮遊容量からなる。他の静電保護回路100のNウェル領域の数は、入出力信号のビット数に依存する。入出力端子への静電気放電(ESD)の印加に基づき浮遊容量であるチップキャパシタンスへ流れる電流は、入出力信号のビット数に依存する。
しかしながら、静電保護回路100は、浮遊容量であるチップキャパシタンスとは別に、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3を含む。この第3の容量素子C3が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最小値、即ち1であっても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3が、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量を保証するので、出力パッドVoutに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流が第3の容量素子C3に注入され、第3の容量素子C3が充電される。よって、サージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからベースへ電流が流れる。更に、該ベースから第2の端子G2を介して第3の容量素子C3へ電流が流れることで、第3の容量素子C3が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量が第3の容量素子C3により提供される。浮遊容量と異なる第3の容量素子C3の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第3の容量素子C3へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースの電位が上昇する。
このベース電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからコレクタに流れ、更に基板抵抗R1を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成される半導体基板に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流が半導体基板に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、半導体基板の電位が上昇する。半導体基板の電位と横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位は同じであるので、コレクタ電流が半導体基板に流れることで、前述の半導体基板の電位が上昇すると共に、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位も上昇する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタは、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタからエミッタへ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3は、サイリスタ整流回路110が、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3が、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、許容範囲の上限値以下に抑制する。このため、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3からなるサイリスタ動作保証回路140は、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、入出力信号のビット数に依存せず、常に、許容範囲の上限値以下に抑制する。
勿論、入出力信号のビット数が非常に大きい場合、前述のサイリスタ動作保証回路140を設ける必要はない。しかし、静電保護回路100が、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路140とで構成されることで、該静電保護回路100を入出力信号のビット数によらず常に使用することができる。
即ち、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3からなるサイリスタ動作保証回路140は、入出力信号のビット数に依存することなく、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入るのを確実に保証する。
前述の等価回路図で示した静電保護回路100は、半導体基板内に形成される。この静電保護回路100のレイアウトを以下説明する。図19は、図18の等価回路で示した静電保護回路であって、半導体基板内に形成された静電保護回路の概略レイアウトを示す概略平面図である。図20は、静電保護回路の概略レイアウトを示す図19のA−A線に沿った概略部分縦断面図である。
図19に示すように、また、前述したように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路140とからなる。サイリスタ動作保証回路140は、出力パッドVoutとサイリスタ整流回路110との間に配置される。P型単結晶半導体基板1内に、静電保護回路100と、該静電保護回路100によりサージ電流から保護される内部回路とが形成される。静電保護回路100は、入出力パッドPADと内部回路と間に形成される。前述したように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、サイリスタ動作保証回路140とからなる。サイリスタ動作保証回路140は、出力パッドVoutと、サイリスタ整流回路110との間に設けられる。サイリスタ整流回路110は、サイリスタ動作保証回路140と、内部回路との間に設けられる。
図19及び図20に示すように、P型単結晶半導体基板1の表面には、素子分離領域を画定するフィールド酸化膜2が設けられる。このフィールド酸化膜2で、P型単結晶半導体基板1の活性領域が画定される。サイリスタ整流回路110は、P型単結晶半導体基板1中に形成されたP+型ガードリング3で囲まれた領域内の活性領域中に設けられる。一方、サイリスタ動作保証回路140は、P型単結晶半導体基板1中に形成されたP+型ガードリング21で囲まれた領域内の活性領域中に設けられる。
P型単結晶半導体基板1中であって、サイリスタ整流回路110を形成する領域には、P+型不純物拡散領域4と、該P+型不純物拡散領域4からフィールド酸化膜2を介して離間したN+型不純物拡散領域5と、該N+型不純物拡散領域5からフィールド酸化膜2を介して離間したNウェル領域6とが設けられる。更に、Nウェル領域6中には、N+型不純物拡散領域9と、該N+型不純物拡散領域9から離間したP−型不純物拡散領域7とが設けられる。更に、P−型不純物拡散領域7中には、P+型不純物拡散領域8が設けられる。
P−型不純物拡散領域7は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタに相当する。該エミッタは、P+型不純物拡散領域8を介して出力パッドVoutに接続される。Nウェル領域6は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに相当する。該ベースは、N+型不純物拡散領域9を介して高電位線Vddに接続される。P型単結晶半導体基板1は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに相当する。該コレクタは、P+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssに接続される。更に、P型単結晶半導体基板1は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースに相当する。該ベースは、P+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssに接続される。Nウェル領域6は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタに相当する。該コレクタは、N+型不純物拡散領域9を介して高電位線Vddに接続される。N+型不純物拡散領域5は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタに相当する。該エミッタは、低電位線Vssに接続される。尚、P型単結晶半導体基板1中を流れる電流が受ける抵抗は、基板抵抗R1に相当する。
一方、サイリスタ動作保証回路140を形成する領域には、フィールド酸化膜2上に延在する第1のポリシリコン電極41、該第1のポリシリコン電極41上及びその一側面に延在する第1の誘電体膜42と、該第1の誘電体膜42上及びフィールド酸化膜2上に延在する第2のポリシリコン電極43とが設けられる。第1のポリシリコン電極41と、第1の誘電体膜42と、第2のポリシリコン電極43とで、第3の容量素子C3を構成する。即ち、この第3の容量素子C3は、ポリシリコン電極キャパシタからなる。第2のポリシリコン電極43は、第3の容量素子C3の第1の電極に相当し、高電位線Vddに接続される。第1のポリシリコン電極41は、第3の容量素子C3の第2の電極に相当し、低電位線Vssに接続される。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタを構成するP−型不純物拡散領域7からベースを構成するNウェル領域6へ、PN接合を介し順方向電流が流れる。更に、該ベースを構成するNウェル領域6から第2の端子G2を構成するN+型不純物拡散領域9介して第3の容量素子C3の第1の電極を構成する第2のポリシリコン電極43へ電流が流れることで、第1のポリシリコン電極41と、第1の誘電体膜42と、第2のポリシリコン電極43とで構成される第3の容量素子C3が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量が第3の容量素子C3により提供される。浮遊容量と異なる第3の容量素子C3の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第3の容量素子C3へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースを構成するNウェル領域6の電位が上昇する。
このベースを構成するNウェル領域6の電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差、即ち、Nウェル領域6の電位とP−型不純物拡散領域7の電位との差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタを構成するP−型不純物拡散領域7からNウェル領域6を介してコレクタを構成するP型単結晶半導体基板1に流れ、更に基板抵抗R1及びP+型不純物拡散領域4を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成されるP型単結晶半導体基板1に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流がP型単結晶半導体基板1に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、P型単結晶半導体基板1の電位が上昇する。P型単結晶半導体基板1は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタと、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースとを構成するので、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタと、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースとの電位は同じである。従って、前述のP型単結晶半導体基板1の電位の上昇は、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇を意味する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタを構成するN+型不純物拡散領域5は、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースを構成するP型単結晶半導体基板1の電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差、即ち、P型単結晶半導体基板1の電位とN+型不純物拡散領域5の電位との差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタを構成するNウェル領域6からP型単結晶半導体基板1を介してエミッタを構成するN+型不純物拡散領域5へ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
(効果)
前述の静電保護回路100は、浮遊容量であるチップキャパシタンスとは別に、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3を含む。この第3の容量素子C3が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3は、サイリスタ整流回路110が、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。即ち、入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3が、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、許容範囲の上限値以下に抑制する。このため、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3からなるサイリスタ動作保証回路140は、サイリスタ整流回路110のスナップバック電圧を、入出力信号のビット数に依存せず、常に、許容範囲の上限値以下に抑制する。
勿論、入出力信号のビット数が非常に大きい場合、前述のサイリスタ動作保証回路140を設ける必要はない。しかし、静電保護回路100が、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路140とで構成されることで、該静電保護回路100を入出力信号のビット数によらず常に使用することができる。
即ち、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3からなるサイリスタ動作保証回路140は、入出力信号のビット数に依存することなく、入出力パッドPADに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流に基づく電流をトリガーとして、サイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入るのを確実に保証する。
(応用例)
図1を参照して前述したように、本実施形態に係る静電保護回路100は、入出力パッドPADと、サージ電流から保護すべき内部回路との間に配置される。内部回路の典型例として、ロジック回路1000を挙げることができる。以下、入出力パッドPADが出力パッドVoutであり、ロジック回路1000の出力段がCMOSインバータ300で構成される場合を例にとり、本実施形態に係る静電保護回路100が、CMOSインバータ300をサージ電流から保護するメカニズムにつき説明する。
図21は、本発明の第3の実施形態に係る図18に示した静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路構成を示した等価回路図である。図22は、本発明の第3の実施形態に係る図21の等価回路で示した静電保護回路であって、半導体基板内に形成された静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路の概略レイアウトを示す概略平面図である。図23は、本発明の第3の実施形態に係る静電保護回路の概略レイアウトを示す図22のA−A線に沿った概略部分縦断面図である。
図21に示すように、静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110とサイリスタ動作保証回路140とからなり、これらの構成及び動作、並びに、作用効果は前述した通りなので、重複する説明は省略する。以下、該静電保護回路100がCMOSインバータをサージ電流から保護するメカニズムにつき説明する。
CMOSインバータ300は、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続される。CMOSインバータ300は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1とからなる。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、高電位線Vddと高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1との間に接続される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と低電位線Vssとの間に接続される。
高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ゲートを有し、該ゲートには、ロジック回路1000からの出力を反転した信号が入力信号INとして入力される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ソースを有し、該ソースは、高電位線Vddに接続される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ドレインを有し、該ドレインは、CMOSインバータ300の出力端子に接続され、該CMOSインバータ300の出力端子は、出力パッドVoutに接続される。サイリスタ整流回路110の縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタも出力パッドVoutに接続される。よって、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1のドレインは、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタにも接続される。
高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ゲートを有し、該ゲートには、ロジック回路1000から出力された信号が入力信号INとして入力される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ソースを有し、該ソースは、低電位線Vssに接続される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ドレインを有し、該ドレインは、CMOSインバータ300の出力端子に接続され、該CMOSインバータ300の出力端子は、出力パッドVoutに接続される。サイリスタ整流回路110の縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタも出力パッドVoutに接続される。よって、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1のドレインは、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタにも接続される。
前述したように、出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、直ちにサイリスタ動作保証回路140がサイリスタ整流回路110をサイリスタ動作状態にする。結果、サージ電流は、サイリスタ整流回路110を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、入出力信号のビット数に依存せず、サイリスタ動作保証回路140が、出力パッドVoutへのサージ電流の印加をトリガーとして、サイリスタ整流回路110を直ちにサイリスタ動作状態にするので、サージ電流がCMOSインバータ300の出力から高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1を介して低電位線Vssに流れるのを確実に防止できる。即ち、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1の破壊を確実に防止できる。このことは、入出力信号のビット数に依存せず、静電保護回路100が、出力パッドVoutに印加されたサージ電流からCMOSインバータ300を確実に保護することを意味する。
図22及び図23に示すように、静電保護回路100とCMOSインバータ300を含むロジック回路1000とは、P型単結晶半導体基板1中に設けられる。即ち、静電保護回路100とCMOSインバータ300を含むロジック回路1000とは、同一半導体基板上に設けられる。静電保護回路100のレイアウトは、図19及び図20に示したものと同一であるので重複する説明は、省略する。以下、CMOSインバータ300のレイアウトにつき説明する。
CMOSインバータ300は、静電保護回路100と、図1に示すロジック回路1000との間に設けられる。前述したようにCMOSインバータ300は、高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1と高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1とからなる。Nウェル領域91−1及びPウェル領域91−2が、P型単結晶半導体基板1中に設けられたP+型ガードリング3で囲まれると共に、フィールド酸化膜2で画定されたP型単結晶半導体基板1中の活性領域に設けられる。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、Nウェル領域91−1中に設けられる。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、Pウェル領域91−2中に設けられる。
高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ソース領域92−1とドレイン領域93−1とを有し、該ソース領域92−1及び該ドレイン領域93−1は、Nウェル領域91−1中に互いに離間して設けられたP型不純物拡散領域からなる。該ソース領域92−1及び該ドレイン領域93−1の間にはチャネル領域が画定される。高耐圧PチャネルMOSトランジスタHVPMOS1は、ゲート絶縁膜94−1及びゲート電極95−1を有し、該ゲート絶縁膜94−1は、前述のチャネル領域上に設けられ、該ゲート電極95−1は、該ゲート絶縁膜94−1上に設けられる。
高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ソース領域92−2とドレイン領域93−2とを有し、該ソース領域92−2及び該ドレイン領域93−2は、Pウェル領域91−2中に互いに離間して設けられたN型不純物拡散領域からなる。該ソース領域92−2及び該ドレイン領域93−2の間にはチャネル領域が画定される。高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1は、ゲート絶縁膜94−2及びゲート電極95−2を有し、該ゲート絶縁膜94−2は、前述のチャネル領域上に設けられ、該ゲート電極95−2は、該ゲート絶縁膜94−2上に設けられる。
前述したように、出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、直ちにサイリスタ動作保証回路140がサイリスタ整流回路110をサイリスタ動作状態にする。結果、サージ電流は、サイリスタ整流回路110を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、入出力信号のビット数に依存せず、サイリスタ動作保証回路140が、出力パッドVoutへのサージ電流の印加をトリガーとして、サイリスタ整流回路110を直ちにサイリスタ動作状態にするので、サージ電流がCMOSインバータ300の出力から高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1を介して低電位線Vssに流れるのを確実に防止できる。即ち、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHVNMOS1の破壊を確実に防止できる。このことは、入出力信号のビット数に依存せず、静電保護回路100が、出力パッドVoutに印加されたサージ電流からCMOSインバータ300を確実に保護することを意味する。
(変更例)
前述の説明では、出力パッドVoutに現れるロジック回路1000からの出力信号の電圧レベルが、常に、高電位線Vddが供給する高電位Vdd以下であり、且つ低電位線Vssが供給する低電位Vss以上である場合を想定したものである。しかし、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルは、過渡的に高電位Vddを越える場合もあり得る。このような場合、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する必要が生じる。このため、以下のように静電保護回路100の回路構成を変更することが好ましい。
図24は、本発明の第3の実施形態の変更例に係る静電保護回路を示した等価回路図である。図25は、本発明の第3の実施形態の変更例に係る図24に示した静電保護回路と、該静電保護回路によりサージ電流から保護されるCMOSインバータとを含む回路構成を示した等価回路図である。静電保護回路100は、サイリスタ整流回路110と、該サイリスタ整流回路110に電気的に接続されると共に機能的に結合されるサイリスタ動作保証回路170とを含む。
サイリスタ整流回路110は、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1と、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1と、基板抵抗R1とからなる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はエミッタを有し、該エミッタは出力パッドVoutに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はコレクタを有し、該コレクタは第1の端子G1に接続されると共に、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1はベースを有し、該ベースは第2の端子G2を介し第1のノードN1に接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はコレクタを有し、該コレクタは第2の端子G2を介し縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続されると共に、第1のノードN1に接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はエミッタを有し、該エミッタは低電位線Vssに接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1はベースを有し、該ベースは第1の端子G1及び基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタに接続される。
静電保護回路100は、半導体基板中に形成される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは、基板抵抗R1を介し低電位線Vssに接続される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース、並びに、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタは半導体基板で構成されることを意味する。
サイリスタ動作保証回路170は、第1のノードN1と低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3と、該第1のノードN1と高電位線Vddとの間に接続された複数のダイオードD1の多段直列接続からなる。第3の容量素子C3は、第1の電極を有し、該第1の電極は、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続されると共に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースに接続され、且つ、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタにも接続される。横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタは、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続される。同様に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースは、第1のノードN1及び複数のダイオードD1の多段直列接続を介して高電位線Vddに接続される。第3の容量素子C3は、第2の電極を有し、該第2の電極は、低電位線Vssに接続される。この第3の容量素子C3が提供する容量は、前述の浮遊容量であるチップキャパシタンスと全く異なり、入出力信号のビット数に依存せず一定である。このことは、以下説明するように、前述の問題を解決するために必須であり、且つ非常に意義のあることである。
更に、該第1のノードN1と高電位線Vddとの間の複数のダイオードD1の多段直列接続は、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合に、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。ここで、複数のダイオードD1の各々が、順方向電圧降下VFを有するとする。そして、このダイオードD1をn個直列接続すると仮定する。この条件の下、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れると、n個のダイオードD1の多段直列接続により、VF×nの順方向電圧降下が起きる。よって、VF×nの値が、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルから高電位Vddを差し引いた値より大きくなるよう、nの値を決めることで、入出力パッドVin/outに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合でも、n個のダイオードD1の多段直列接続が、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。このことにより、消費電力が不必要に増大するのを防止することができる。
尚、第1のノードN1と高電位線Vddとの間の複数のダイオードD1の多段直列接続は、前述した静電保護回路100の動作に悪影響を及ぼさない。このことを以下説明する。
出力パッドVoutにサージ電流が印加されると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからベースへ電流が流れる。縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1ベースと高電位線Vddとの間には複数のダイオードD1の多段直列接続が存在するので、該電流は、更に、該ベースから第3の容量素子C3へ流れ、第3の容量素子C3が充電される。即ち、入出力信号のビット数に依存せず常に一定の十分な容量が第3の容量素子C3により提供される。浮遊容量と異なる第3の容量素子C3の存在は、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタ及びベースを介し第3の容量素子C3へ流れることを、入出力信号のビット数に依存せず、常に保証する。結果、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースの電位が上昇する。
このベース電位の上昇により、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1がオンする。これにより、出力パッドVoutに印加されたサージ電流が縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のエミッタからコレクタに流れ、更に基板抵抗R1を介して低電位線Vssへ流れる。即ち、該静電保護回路100が形成される半導体基板に、縦型PNPバイポーラトランジスタPNP1のコレクタ電流が流れ込む。このコレクタ電流が半導体基板に流れることで、基板抵抗R1による電圧降下が起き、半導体基板の電位が上昇する。半導体基板の電位と横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位は同じであるので、コレクタ電流が半導体基板に流れることで、前述の半導体基板の電位が上昇すると共に、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースの電位も上昇する。
一方、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のエミッタは、低電位線Vssが供給する低電位に固定される。よって、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベース電位の上昇により、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のベースエミッタ間の電位差が閾値電圧Vbeに達すると、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1がオンする。これにより、横型NPNバイポーラトランジスタNPN1のコレクタからエミッタへ電流が流れる。即ち、サージ電流がトリガーとなりサイリスタ整流回路110がサイリスタ動作に入る。
従って、たとえ入出力信号のビット数が理論上の最低値である1であったとしても、高電位線Vddと低電位線Vssとの間に接続された第3の容量素子C3は、サイリスタ整流回路110が、出力パッドVoutに印加された静電気放電(ESD)に起因するサージ電流をトリガーとして、動作状態に入ることを保証する。一方、出力パッドVoutに現れる入出力信号の電圧レベルが、過渡的に高電位Vddを越えた場合でも、n個のダイオードD1の多段直列接続が、出力パッドVoutから高電位線Vddへ電流が流れるのを抑制する。このことにより、消費電力が不必要に増大するのを防止することができる。
尚、静電保護回路100をCMOSインバータ300の保護に適用した場合の応用例は、前述の応用例で記載した通りなので重複する説明は省略する。