JP2010218730A - 超電導線材および超電導線材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度を向上する超電導線材および超電導線材の製造方法を提供する。
【解決手段】超電導線材1は、基材と、基材上に形成された超電導層13とを含むテープ状の本体部10と、本体部10の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層とを備えている。超電導線材1の製造方法は、基材と、基材上に形成された超電導層13とを含むテープ状の本体部10を準備する工程と、本体部10の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層を形成する工程とを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】超電導線材1は、基材と、基材上に形成された超電導層13とを含むテープ状の本体部10と、本体部10の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層とを備えている。超電導線材1の製造方法は、基材と、基材上に形成された超電導層13とを含むテープ状の本体部10を準備する工程と、本体部10の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層を形成する工程とを備えている。
【選択図】図1
Description
本発明は超電導線材および超電導線材の製造方法に関し、たとえばRE123系の超電導層を有する超電導線材および超電導線材の製造方法に関する。
現在、パウダーインチューブ法で作製されたBi2223相などを主成分とするビスマス系の超電導体を用いた超電導線材(以下、「ビスマス系の超電導線材」ということもある。)と、基材上に気相法あるいは液相法で形成されたRE123系の超電導体を用いた超電導線材(以下、「RE123系の超電導線材」ということもある。)との2種類の超電導線材の開発が進められている。
このうちRE123系の超電導線材は、液体窒素温度(77.3K)での臨界電流密度がビスマス系の超電導線材よりも高いという利点を有している。また、RE123系の超電導線材は、低温下および一定磁場下における臨界電流値が高いという利点も有している。そのため、RE123系の超電導線材は次世代の高温超電導線材として期待されている。
このような超電導線材が、たとえば特開平7−73759号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1に開示の超電導線材は、基材と、この基材上に形成された中間層と、この中間層上に形成された超電導層と、この超電導層上に形成された下地安定化薄膜と、この下地安定化薄膜上に形成された安定化層とを備えている。下地安定化薄膜は、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)などの貴金属またはそれらの合金からなることが記載されている。また、安定化薄膜は、めっき法により銅(Cu)あるいはアルミニウム(Al)などの良導電性金属材料からなることが記載されている。
上記特許文献1の超電導線材では、超電導層上に金属単体または合金よりなる下地安定化薄膜および安定化薄膜が形成されている。しかしながら、金属が積層された上記下地安定化薄膜および安定化薄膜では、機械的強度が十分でないという問題があることを本発明者は初めて明らかにした。
そこで、本発明の目的は、機械的強度を向上する超電導線材および超電導線材の製造方法を提供することである。
本発明の超電導線材は、基材と、基材上に形成された超電導層とを含むテープ状の本体部と、本体部の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層とを備えている。
本発明の超電導線材の製造方法は、基材と、基材上に形成された超電導層とを含むテープ状の本体部を準備する工程と、本体部の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層を形成する工程とを備えている。
本発明の超電導線材およびその製造方法によれば、金属めっき層は、異物としての化合物を含んでいる。この化合物により、金属めっき層は硬くなる。この化合物を含む金属めっき層が超電導層を含む本体部の少なくとも一部を覆っている。このため、超電導層が伸びることを抑制できる。したがって、超電導線材の機械的強度を向上することができる。
上記超電導線材において好ましくは、化合物は、セラミックス粒子である。
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、金属めっき層を形成する工程では、化合物としてセラミックス粒子が析出した金属めっき層を形成する。
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、金属めっき層を形成する工程では、化合物としてセラミックス粒子が析出した金属めっき層を形成する。
金属めっき層を硬くするために有効な化合物を本発明者が鋭意研究した結果、化合物としてセラミックス粒子を見い出した。これにより、超電導線材の機械的強度を向上することができる。
上記超電導線材において好ましくは、超電導層側の最外周に形成され、かつ金属単体または合金よりなる金属層をさらに備えている。
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、超電導層側の最外周に金属単体または合金よりなる金属層を形成する工程をさらに備えている。
金属層は金属単体または合金よりなるので、導電性が高い。このため、超電導層側の最外周に金属層を形成することにより、超電導線材の接触抵抗を低減することができる。したがって、機械的強度を向上するとともに、接触抵抗を低減することができる。
本発明の超電導線材および超電導線材の製造方法によれば、化合物が析出した金属めっき層を備えているので、機械的強度を向上することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の一実施の形態における超電導線材1について説明する。本実施の形態における超電導線材1は、本体部10と、第1のめっき層21と、第2のめっき層22とを備えている。本体部10は、安定化層15と、安定化層15上に形成された基板11と、基板11上に形成された中間層12と、中間層12上に形成された超電導層13と、超電導層13上に形成された安定化層14とを含んでいる。第1めっき層21は、超電導層13側の最外周に形成され、第2めっき層22は、基板11側の最外周に形成されている。
図1を参照して、本発明の一実施の形態における超電導線材1について説明する。本実施の形態における超電導線材1は、本体部10と、第1のめっき層21と、第2のめっき層22とを備えている。本体部10は、安定化層15と、安定化層15上に形成された基板11と、基板11上に形成された中間層12と、中間層12上に形成された超電導層13と、超電導層13上に形成された安定化層14とを含んでいる。第1めっき層21は、超電導層13側の最外周に形成され、第2めっき層22は、基板11側の最外周に形成されている。
基板11は、たとえばステンレス鋼、ニッケル合金(たとえばハステロイ)、または銀合金などの金属よりなっている。基板11は、配向金属基板であることが好ましい。中間層12は、たとえばイットリア安定化ジルコニア、酸化セリウム、酸化マグネシウムまたはチタン酸ストロンチウムなどよりなっている。基板11および中間層12とを含めて基材としている。なお、中間層12は省略されてもよい。
超電導層13はたとえばRE123系超電導体よりなっている。RE123系超電導体とは、RExBayCuzO7-dにおいて、0.7≦x≦1.3、1.7≦y≦2.3、2.7≦z≦3.3であることを意味する。また、RE123系超電導体のREとは、希土類元素およびイットリウム元素の少なくともいずれかを含む材質を意味する。また、希土類元素としては、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテニウム(Lu)からなる群から選択された少なくとも1種が含まれる。RE123系超電導線材は、液体窒素温度(77.3K)での臨界電流密度がビスマス系の超電導線材よりも高いという利点を有している。また、低温下および一定磁場下における臨界電流値が高いという利点を有している。一方で、RE123系超電導体はビスマス系超電導体のようにシース部で被覆することができないので、基板11上に気相法のみまたは液相法のみによって超電導体(超電導薄膜材料)を成膜する方法で製造される。
また、安定化層14、15は、超電導層13の表面保護のために設けられる層であり、たとえば銀や銅などよりなっている。安定化層14、15は省略されてもよい。
第1のめっき層21は、本体部10の基板11側(本実施の形態では安定化層15下)を覆っている。言い換えると、第1のめっき層21は、超電導層13上に位置する本体部10の最外周に形成されている。第1のめっき層21は、化合物が析出した導電性の材料である。言い換えると、第1のめっき層21は、化合物が分散した金属めっき層である。化合物は、たとえばアルミナなどのセラミックス粒子、カーボンファイバーなどである。第1のめっき層21は、たとえば化合物が析出しているCuめっき層、Agめっき層などである。また、化合物の粒径は、たとえば1μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。この場合、接触抵抗を小さくすることができる。
なお、第1のめっき層21は、本体部10の一部を覆っていればよく、本体部10の幅広面(上面または下面)の少なくとも一面を覆っていることが好ましい。
第2のめっき層22は、本体部10の超電導層13側(本実施の形態では安定化層14上および本体部10の側面)を覆っている。第2のめっき層22は、金属単体または合金よりなる。第2のめっき層22は、たとえばCu、Agなどである。第2のめっき層22は省略されてもよい。
また、第1および第2のめっき層21、22は、安定化層14、15に接して設けられている。つまり、本体部10と、第1および第2のめっき層21、22との間には、半田などが存在していない。
続いて、図2〜図9を参照して、本実施の形態における超電導線材1の製造方法について説明する。
まず、図2および図3に示すように、基材と、基材上に形成された超電導層13とを含むテープ状の本体部10を準備する(ステップS1)。基材は、基板11と中間層12とを含んでいる。なお、中間層12は省略されてもよい。
具体的には、基板11を準備する。その後、基板11上に中間層12を形成する。中間層12の形成方法は特に限定されず、たとえば、スパッタリング法、レーザアブレーション法、電子ビーム蒸着法およびIBAD(Ion Beam Assist Deposition)法からなる群から選択された少なくとも1種の方法などにより形成することができる。次いで、中間層12上に超電導層13を形成する。超電導層の形成方法は特に限定されず、たとえばスパッタリング法、レーザアブレーション法、MOD(Metal Organic Deposition)法およびMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法からなる群から選択された少なくとも1種の方法などにより形成することができる。さらに、基板11下および超電導層13上に安定化層14、15を形成する。安定化層14、15の形成方法は特に限定されず、たとえば、スパッタリング法などの物理蒸着法を用いて成膜することができる。これにより、図3に示すテープ状の本体部10を準備することができる。
次に、図2および図4に示すように、本体部10下に、第1のマスク層31を形成する(ステップS2)。第1のマスク層31の形成方法は特に限定されず、たとえば、コーターやスプレー方式により塗布することができる。その後、図2および図5に示すように、第1のマスク層31を形成した本体部10を覆うように第2のめっき層22を形成する(ステップS3)。また、第2のめっき層22として、金属単体または合金よりなる金属層を形成する。第2のめっき層22は、超電導層13側に形成すればよく、本体部10の側面および第1のマスク層31下には形成されていなくてもよい。第2のめっき層22の形成方法は特に限定されず、たとえば電気めっき法により形成される。その後、図2および図6に示すように、第1のマスク層31を除去する(ステップS4)。第1のマスク層31の除去方法は特に限定されず、たとえばエッチングなどにより除去することができる。これにより、第2のめっき層22を超電導層13側に形成することができる。
次に、図2および図7に示すように、本体部10上に、第2のマスク層32を形成する(ステップS5)。第2のマスク層32の形成方法は特に限定されず、たとえば、コーターやスプレー方式により塗布することができる。その後、図2および図8に示すように、第2のマスク層32を形成した本体部10を覆うように第1のめっき層21を形成する(ステップS6)。第1のめっき層21として、化合物が析出した金属めっき層を形成する。第1のめっき層21は、基板11側の最外周(本実施の形態では安定化層15に接するよう)に形成することが好ましい。また、第1のめっき層21は、側面および上面には形成されていなくてもよい。第1のめっき層21の形成方法は特に限定されず、たとえば化合物を含むめっき液を用いた電気めっき法により形成される。その後、図2および図9に示すように、第2のマスク層32を除去する(ステップS4)。第2のマスク層32の除去方法は特に限定されず、たとえばエッチングなどにより除去することができる。これにより、本体部10の外周を覆い、かつ化合物が析出した第1のめっき層22を形成することができる。
なお、図9では、本体部10の側面を第2のめっき層22が覆い、第2のめっき層22を第1のめっき層21が覆っているが、側面を覆う第1のめっき層21を除去してもよい。この場合、図1に示す超電導線材1が得られる。
以上のステップS1〜S7を実施することにより、本実施の形態における超電導線材1を製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態における超電導線材1およびその製造方法によれば、第1のめっき層21は、異物としての化合物を含んでいる。この化合物により、第1のめっき層21は硬くなる。この化合物を含む第1のめっき層21が超電導層13を含む本体部10の少なくとも一部を覆っている。このため、超電導層13が伸びることを抑制できる。したがって、超電導線材1の機械的強度を向上することができる。
仮に、超電導線材1に応力を加えて、第1のめっき層21の外表面に亀裂が入った場合、第1のめっき層21の内部に析出した化合物により亀裂を留めることができる。このため、第1のめっき層21により、亀裂が本体部10に達することを抑制できるので、超電導線材1において大きな亀裂に発展することを抑制できる。このため、超電導線材1の機械的強度を向上することができる。
また、本実施の形態では、第1のめっき層21は基板11側の最外周に形成され、第2のめっき層22は超電導層13側の最外周に形成されている。第2のめっき層22は、金属または合金よりなるので、導電性が高い。超電導層13側に第2のめっき層22を形成することにより、超電導線材1の接触抵抗を低減することができる。したがって、第1のめっき層21を基板11側に形成し、第2のめっき層22を超電導層13側に形成することにより、機械的強度を向上し、かつ接触抵抗を低減することができる。
さらに、本実施の形態では、超電導層13側には第2のめっき層22のみが形成され、基板11側には第1のめっき層21のみが形成されている。これにより、超電導線材1の厚みを低減することができる。このため、臨界電流密度(=臨界電流値/超電導線材1の断面積)を向上することができる。特に、本実施の形態では、第1のめっき層21により機械的強度を向上できるので、基板11の厚みを大きくする必要がないため、臨界電流密度を向上できる効果が大きい。つまり、超電導線材1は、高い臨界電流密度を維持するとともに、機械的強度を向上することができる。したがって、機械的強度を向上し、かつ接触抵抗を低減でき、かつ臨界電流密度などの超電導特性を向上できる超電導線材1を実現できる。
(実施の形態2)
図10を参照して、本実施の形態における超電導線材2は、基本的には実施の形態1における図1の超電導線材1と同様の構成を備えているが、第1のめっき層21が本体部10の側面を覆っている点において異なっている。
図10を参照して、本実施の形態における超電導線材2は、基本的には実施の形態1における図1の超電導線材1と同様の構成を備えているが、第1のめっき層21が本体部10の側面を覆っている点において異なっている。
続いて、図11〜図17を参照して、本実施の形態における超電導線材2の製造方法について説明する。
まず、図3および図11に示すように、実施の形態1と同様に、本体部10を準備する(ステップS1)。次に、図11および図12に示すように、本体部10上に、第2のマスク層32を形成する(ステップS5)。その後、図11および図13に示すように、本体部10を覆うように、第1のめっき層21を形成する(ステップS6)。このステップS6では、第2のマスク層32上まで第1のめっき層21を形成してもよい。次いで、図11および図14に示すように、第2のマスク層32を除去する(ステップS7)。これにより、本体部10の側面および下面に第1のめっき層21を形成することができる。
次に、図11および図15に示すように、本体部10下に、第1のマスク層31を形成する(ステップS2)。その後、図11および図16に示すように、本体部10を覆うように、第2のめっき層22を形成する(ステップS3)。次いで、図11および図17に示すように、第1のマスク層31を除去する(ステップS4)。
なお、図17では、本体部10の側面を第1のめっき層21が覆い、第1のめっき層21を第2のめっき層22が覆っているが、第2のめっき層22を除去してもよい。この場合、図10に示す超電導線材2が得られる。以上のステップS1〜S7を実施することにより、図10に示す本実施の形態における超電導線材2を製造することができる。
(実施の形態3)
図18を参照して、本実施の形態における超電導線材3は、基本的には実施の形態1の図1に示す超電導線材1と同様の構成を備えているが、第1のめっき層21が本体部10の全周を覆っている点において異なっている。つまり、本実施の形態では、第2のめっき層22が形成されていない。
図18を参照して、本実施の形態における超電導線材3は、基本的には実施の形態1の図1に示す超電導線材1と同様の構成を備えているが、第1のめっき層21が本体部10の全周を覆っている点において異なっている。つまり、本実施の形態では、第2のめっき層22が形成されていない。
続いて、本実施の形態における超電導線材3の製造方法について説明する。まず、図3および図19に示すように、本体部10を準備する(ステップS1)。次に、図18および図19に示すように、本体部10の全周を覆うように、第1のめっき層21を形成する(ステップS6)。これにより、図18に示す本実施の形態における超電導線材3を製造することができる。
(実施の形態4)
図20を参照して、本実施の形態における超電導線材4は、基本的には実施の形態1の図1に示す超電導線材1と同様の構成を備えているが、第2のめっき層22が本体部10の全周を覆い、第1のめっき層21が第2のめっき層22の全周を覆っている点において異なっている。
図20を参照して、本実施の形態における超電導線材4は、基本的には実施の形態1の図1に示す超電導線材1と同様の構成を備えているが、第2のめっき層22が本体部10の全周を覆い、第1のめっき層21が第2のめっき層22の全周を覆っている点において異なっている。
続いて、本実施の形態における超電導線材4の製造方法について説明する。まず、図3および図21に示すように、本体部10を準備する(ステップS1)。
次に、図21に示すように、本体部10の全周を覆うように、第2のめっき層22を形成する(ステップS3)。次に、図21に示すように、第2のめっき層22の全周を覆うように、第1のめっき層21を形成する(ステップS6)。これにより、図20に示す本実施の形態における超電導線材4を製造することができる。
(実施の形態5)
図22を参照して、本実施の形態における超電導線材5は、基本的には実施の形態1の図1に示す超電導線材1と同様の構成を備えているが、第1のめっき層21が本体部10の全周を覆い、第2のめっき層22が第1のめっき層21の全周を覆っている点において異なっている。
図22を参照して、本実施の形態における超電導線材5は、基本的には実施の形態1の図1に示す超電導線材1と同様の構成を備えているが、第1のめっき層21が本体部10の全周を覆い、第2のめっき層22が第1のめっき層21の全周を覆っている点において異なっている。
また、本実施の形態における超電導線材5は、図20に示す実施の形態4の超電導線材4と同様の構成を備えているが、第1のめっき層21と第2のめっき層22との配置が反対である。第2のめっき層22が第1のめっき層21の外周に配置されていると、接触抵抗を低減できるため、好ましい。
続いて、本実施の形態における超電導線材5の製造方法について説明する。まず、図3および図23に示すように、本体部10を準備する(ステップS1)。
次に、図23に示すように、本体部10の全周を覆うように、第1のめっき層21を形成する(ステップS6)。次に、図23に示すように、第1のめっき層21の全周を覆うように、第2のめっき層22を形成する(ステップS3)。これにより、図22に示す本実施の形態における超電導線材5を製造することができる。
本実施例では、金属めっき層(第1のめっき層21)を形成することによる効果について調べた。
(本発明例1)
本発明例1の超電導線材は、基本的には図1に示す実施の形態1にしたがって製造した。
本発明例1の超電導線材は、基本的には図1に示す実施の形態1にしたがって製造した。
具体的には、まず、幅10mm×長さ100m×厚さ0.1mmのテープ状のニッケルとタングステンとの合金からなる配向性の基板11を準備した。その後、この基板11上にRFスパッタリング法によって、厚さ0.1μmの第1酸化セリウム層、厚さ0.3μmのYSZ層、および厚さ0.05μmの第2酸化セリウム層をこの順で形成した。これにより、上記の第1酸化セリウム層、YSZ層および第2酸化セリウム層が基板11側からこの順序で積層された3層の積層体からなる中間層12を基板11上に形成した。ここで、YSZ層は、(ZrO2)0.92(Y2O3)0.08の組成式で表わされるZrO2とY2O3との固溶体であった。
次いで、中間層12上に、レーザ蒸着法によってGdBa2Cu3O7-δの組成式で表わされる組成のGd−Ba−Cu−O系の酸化物超電導体からなる厚さ1μmの超電導層13を形成した。
そして、超電導層13上および基板11下に、安定化層14、15として、DCスパッタリング法によって厚さ3μmのAg安定化層を形成した。これにより、本体部10を準備した(ステップS1)。
次に、本体部10の基板11側の安定化層15下に、第1のマスク層31を形成した(ステップS2)。その後、硫酸銅めっき槽を備えた電気めっき装置を用いて、電気めっき法により本体部10の外表面に20μmの厚さの銅よりなる金属層(第2のめっき層22)を形成した(ステップS3)。その後、第1のマスク層31を除去した(ステップS4)。
ここで、硫酸銅めっき槽のめっき液は、濃度20重量%の硫酸銅溶液を用いた。また、めっき時の電流密度は5(A/dm2)と一定にした。
次に、本体部10の超電導層13側の安定化層14上に、第2のマスク層32を形成した(ステップS5)。その後、平均粒径が1μmのアルミナを含む硫酸銅めっき槽を備えた電気めっき装置を用いて、電気めっき法により本体部10の外表面に20μmの厚さのアルミナが析出した銅めっきからなる金属めっき層(第1のめっき層)を形成した(ステップS6)。次いで、第2のマスク層32を除去した(ステップS7)。
ここで、アルミナを含む硫酸銅めっき槽のめっき液は、濃度20重量%の硫酸銅溶液に対して、アルミナが5重量%になるように混合したものを用いた。また、めっき時の電流密度は5(A/dm2)と一定にした。
以上のステップS1〜S7により、本発明例1の超電導線材1を製造した。
(本発明例2)
本発明例2の超電導線材は、基本的には図10に示す実施の形態2にしたがって製造した。
(本発明例2)
本発明例2の超電導線材は、基本的には図10に示す実施の形態2にしたがって製造した。
具体的には、まず、本発明例1と同様の本体部10を準備した(ステップS1)。次に、本体部10の超電導層13側の安定化層14上に第2のマスク層32を形成した(ステップS5)。その後、本体部10の全周を覆うように、金属めっき層(第1のめっき層21)を本発明例1と同様に形成した(ステップS6)。次いで、第2のマスク層32を除去した(ステップS7)。これにより、基板11側の安定化層15および側面を覆う第1のめっき層21を形成した。
次に、基板11側の第1のめっき層21下に、第1のマスク層31を形成した(ステップS2)。その後、本体部10の全周を覆うように、第2のめっき層22を本発明例1と同様に形成した(ステップS3)。次いで、第1のマスク層31を除去した(ステップS4)。これにより、超電導層13側の安定化層14を覆う第1のめっき層21を形成した。
以上のステップS1〜S7により、本発明例2の超電導線材2を製造した。
(本発明例3)
本発明例3の超電導線材は、基本的には図18に示す実施の形態3にしたがって製造した。
(本発明例3)
本発明例3の超電導線材は、基本的には図18に示す実施の形態3にしたがって製造した。
具体的には、まず、本発明例1と同様の本体部10を準備した(ステップS1)。その後、本体部10の全周を覆うように、金属めっき層(第1のめっき層21)を本発明例1と同様に形成した(ステップS6)。以上のステップS1、S6により、本発明例3の超電導線材3を製造した。
(比較例1)
比較例1の超電導線材の製造方法は、基本的には本発明例2と同様であったが、第1のめっき層21を形成する代わりに、第2のめっき層22を形成した。つまり、図24に示すように、比較例1の超電導線材100は、本体部10と、本体部10の全周を覆う銅めっき層よりなる金属層(第2のめっき層22)とを備えていた。
比較例1の超電導線材の製造方法は、基本的には本発明例2と同様であったが、第1のめっき層21を形成する代わりに、第2のめっき層22を形成した。つまり、図24に示すように、比較例1の超電導線材100は、本体部10と、本体部10の全周を覆う銅めっき層よりなる金属層(第2のめっき層22)とを備えていた。
(評価方法)
本発明例1〜3および比較例1の超電導線材1〜3、100について、以下の方法で、引張強度、曲げ径および接触抵抗をそれぞれ測定した。これらの結果を下記の表1に記載する。
本発明例1〜3および比較例1の超電導線材1〜3、100について、以下の方法で、引張強度、曲げ径および接触抵抗をそれぞれ測定した。これらの結果を下記の表1に記載する。
引張張力は、本発明例1〜3および比較例1の超電導線材1〜3、100に、長手方向に引張応力を加えて、それぞれの超電導線材1〜3、100の初期の臨界電流値の95%を維持できる最大の応力を測定した。
曲げ径は、室温にて、本発明例1〜3および比較例1の超電導線材1〜3,100に超電導層13が外側になるように曲げを加えて、それぞれの超電導線材1〜3、100の初期の臨界電流値の95%を維持できる最小の直径を測定した。
接触抵抗の測定方法は、図25〜図28を参照して説明する。図25〜図28に示すように、本発明例1〜3および比較例1の2枚の超電導線材1〜3、100の端を、ラップxが5mmとなるように重ねて接続した。その状態で、77Kにて、抵抗値を接続抵抗として測定した。
(評価結果)
表1に示すように、化合物としてのアルミナを析出した金属めっき層を備えていた本発明例1〜3は、化合物を含まない金属めっき層を備えていた比較例1よりも引張強度および曲げ径を向上できた。また、化合物としてのアルミナを析出した金属めっき層を多く含むほど、機械的強度の指標である引張強度を向上できることがわかった。
表1に示すように、化合物としてのアルミナを析出した金属めっき層を備えていた本発明例1〜3は、化合物を含まない金属めっき層を備えていた比較例1よりも引張強度および曲げ径を向上できた。また、化合物としてのアルミナを析出した金属めっき層を多く含むほど、機械的強度の指標である引張強度を向上できることがわかった。
また、表1に示すように、超電導層13側に金属単体または合金よりなる金属層を形成した本発明例1および2は、比較例1と同じ低い接触抵抗を維持できることがわかった。
以上より、本実施例によれば、金属めっき層(第1のめっき層21)を形成することにより、機械的強度を向上できることが確認できた。また、超電導層13側の最外周に金属単体または合金よりなる金属層を形成することにより、低い接触抵抗を維持できることが確認できた。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の超電導線材は、たとえば超電導ケーブル、超電導モータ、発電機、磁気分離装置、単結晶引上げ炉用マグネット、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)、リニアモーターカーまたは変圧器などの超電導機器に用いることができる可能性がある。
1〜5,100 超電導線材、10 本体部、11 基板、12 中間層、13 超電導層、14,15 安定化層、21 第1のめっき層、22 第2のめっき層、31 第1のマスク層、32 第2のマスク層。
Claims (6)
- 基材と、前記基材上に形成された超電導層とを含むテープ状の本体部と、
前記本体部の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層とを備えた、超電導線材。 - 前記化合物は、セラミックス粒子である、請求項1に記載の超電導線材。
- 前記超電導層側の最外周に形成され、かつ金属単体または合金よりなる金属層をさらに備えた、請求項1または2に記載の超電導線材。
- 基材と、前記基材上に形成された超電導層とを含むテープ状の本体部を準備する工程と、
前記本体部の外周を覆い、かつ化合物が析出した金属めっき層を形成する工程とを備えた、超電導線材の製造方法。 - 前記金属めっき層を形成する工程では、前記化合物としてセラミックス粒子が析出した前記金属めっき層を形成する、請求項4に記載の超電導線線材の製造方法。
- 前記超電導層側の最外周に金属単体または合金よりなる金属層を形成する工程をさらに備えた、請求項4または5に記載の超電導線材の製造方法。
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