JP2010215507A - 2−[[4−(3−メトシキプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1h−ベンズイミダゾールナトリウムの結晶及びその製造方法 - Google Patents

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容子 清澤
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Abstract

【課題】消化性潰瘍等の治療に有用なラベプラゾールナトリウムは、その強い吸湿性のため、原薬の保存安定性や固形製剤化に難点があった。この難点を克服した耐湿性の新規結晶形のラベプラゾールナトリウム及び製造方法を提供すること。
【解決手段】(1)粉末X線回折スペクトルが図1に示すパターンを有するラベプラゾールナトリウムのF形結晶と、(2)その製造方法として、ラベプラゾールナトリウムをエーテル系有機溶媒から結晶化させる方法とを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、抗潰瘍剤として医療上有用な2−[[4−(3−メトシキプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールナトリウム(一般名称:ラベプラゾールナトリウム)の優れた耐湿性を有する、安定な新規結晶及びその製造方法に関する。
当初、ラベプラゾールナトリウムは、非晶質の固体として、あるいは非結晶性の個体としての製造方法が報告されていた。しかし、これらは吸湿性が強く、吸湿することにより安定性が低下し、分解や変色し易くなる。このことから、原薬の保存あるいは製剤化において安定性に問題があった。その後、吸湿性が改善された新規結晶(II)が報告されている(特許文献2)。その他新規結晶として、X形及びY形(特許文献2)並びにZ形(特許文献3)が報告されているが、吸湿データについては記載がない。
特開2001−39975号公報 国際公開第03/082858号パンフレット 米国特許出願公開2004/0180935号明細書
本発明の課題は、上記技術的背景から、耐湿性が優れ、製剤化が容易な新たなラベプラゾールナトリウムの結晶を提供することにある。
ラベプラゾールナトリウムには前述の結晶多形が存在し、これらは粉末X線回折(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)等により特徴づけられている。また、これら結晶形は晶析条件を変えることにより、つくり分けることが示されている。
しかし、示された結晶化技術を追試しても、本発明の上記課題を解決する新規結晶は得ることができなかった。
そこで、本発明者は、ラベプラゾールナトリウムの晶析条件を種々検討したところ、エーテル系の溶媒を用いた場合、析出した結晶の粉末X線回折スペクトルが、既知結晶形の粉末X線回折スペクトルに含まれる特定回折角(2θ)に対応するスペクトルを実質的に有ささない新規結晶形(F形と命名)のラベプラゾールナトリウムを得ることができた。その後、この結晶形のラベプラゾールは、耐湿性に優れ、製剤化し易いことが判明した。そこで、さらに検討を加え、本発明を完成することができた。
すなわち、本発明によれば、
(1)粉末X線回折スペクトルが図1に示すパターンを有するラベプラゾールのF形結晶、
(2)粉末X線回折スペクトルが図1に示すパターンを有し、回折角度(2θ)18.0±0.1°、20.9±0.1°及び21.2±0.1°に実質的にピークを有しない請求項1に記載のF形結晶、
(3)粉末X線回折スペクトルが図1に示すパターンを有するラベプラゾールのF形結晶の製造方法であって、エーテル系有機溶媒から結晶化させることを特徴とする前記F形結晶の製造方法、
(4)テトラヒドロフランと低級アルキルエーテルの混合溶媒から結晶させることを特徴とする前記(3)に記載のF形結晶の製造方法、
(5)テトラヒドロフランと、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びtert-ブチルメチルエーテルからなる群から選ばれた1種類の溶媒との混合溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項3に記載のF形結晶の製造方法、
(6)テトラヒドロフランとジイソプロピルエーテルの混合溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項3に記載のF形結晶の製造方法、
(7)テトラヒドロフランとtert−ブチルメチルエーテルの混合溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項3に記載のF形結晶の製造方法を、提供することができる。
本発明のラベプラゾールF形結晶は、耐湿性に優れていることから、製剤化の際の取扱いが容易となる。
また、本発明のラベプラゾールF形結晶の製造方法によれば、容易に所期の課題を解決するラベプラゾールの結晶を得ることができる。
本発明に係るラベプラゾールナトリウムのF形結晶は、図1に示す粉末X線回折パターンによって特徴づけられる。そのパターンは、測定装置としてブルカー(Bruker)AXS社製D8DISCOVER(with GADDS CS)を使用し、管球Cu、管電圧45KV、管電流40Maの条件下で測定したものである。
前記図1のスペクトルについて、主なピークの回折角(2θ)と強度(%)を示せば下記の如くである。ただし、それらの強度(%)は、図1に示される粉末X線回折パターンの各ピークの相対的な高さを、狭い範囲で限定するものと解してはならない。同一サンプルの頻回測定によっても、各ピークの強度(%)は、その性質上厳密に再現性があるとは言えないからである。
Figure 2010215507
本発明に係るラベプラゾールナトリウムのF形結晶の粉末X線回折スペクトルは、既知結晶形のパターンとは異なるパターンを示すものである。例えば、前記特許文献1に耐湿性に優れていると記載されているII形結晶に特有の回折角(2θ)18.04、20.92及び21.20に対応するピークが実質的に認められない。
なお、ラベプラゾールナトリウムのF形結晶について示差走査熱量分析すると、図2に示す吸熱曲線が得られる。この曲線は、ネッシュ(NETZSCH)社製DSC 204 F1 Phoenixを使用し、アルミニウムパン中、昇温速度10℃/分、25℃〜300℃の温度範囲条件で測定したもので、本発明に係るラベプラゾールのF形結晶が単一の結晶形であることを示唆している。
本発明に係るラベプラゾールのF形結晶の製造方法において使用する好ましいエーテル系溶媒として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等を挙げることができる。中でも、テトラヒドロフランと前記例示の低級アルキルエーテルから選択された1種類のエーテルとの混合溶媒が好ましい。
溶媒量は、使用する混合溶媒の組み合わせと比率及び結晶化温度に依存して異なるが、通常ラベプラゾールナトリウム1重量に対して前記溶媒を1〜64倍量、好ましくは1.7〜20倍量使用する。テトラヒドロフランと低級アルキルエーテルの(V/V)比率は、1:6〜2:1、好ましくは、3:7〜4:3、結晶化の時間は2時間〜7日間で、好ましくは5時間〜3日間である。またその間、撹拌あるいは静置のいずれも可能である。結晶化の温度は、0℃から選択した溶媒の沸点で行うことができるが、好ましくは10〜35℃である。また、結晶化の方法として、結晶化開始時ラベプラゾールナトリウムの溶解の有無、各溶媒の添加順序等方法について限定はされるものでない。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例に記載のラベプラゾールナトリウムは、特公平06−74272号公報に記載の方法により製造した非晶質固体、又は 特開2000−143659に記載の方法により製造したラベプラゾールナトリウムとアセトンの錯体を使用した。
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールナトリウムのアセトン錯体5.0gをテトラヒドロフラン15mlに溶解し、40℃でtert−ブチルメチルエーテル20mlを加えた。種結晶を加えた後、40℃で22.5時間静置した。析出した結晶をろ取し、テトラヒドロフランとtert−ブチルメチルエーテルとの(V/V)混合溶液(3:4)で洗浄し、減圧乾燥することにより結晶4.1gを得た。
mp:222℃(分解)
粉末X線回折スペクトル:測定装置としてブルカー(Bruker)AXS社製D8DISCOVER(with GADDS CS)を使用し、管球Cu、管電圧45KV、管電流40Maの条件下で測定した。その結果、得られたスペクトルは、図1によく一致した。
示差走査熱量分析:測定装置としてネッシュ(NETZSCH)社製DSC 204 F1 Phoenixを使用し、アルミニウムパン中、昇温速度10℃/分、25℃〜300℃の温度範囲条件で測定した。その結果、得られた吸熱曲線は図2によく一致した。
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メ
チルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールナトリウム3.0gをテトラヒドロフラン3mlに溶解し、ジイソプロピルエーテル2mlを加えた。室温で3日間撹拌した後、ジイソプロピルエーテル9mlを加えた後、結晶をろ取し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、減圧乾燥することにより結晶2.5gを得た。
mp:222℃(分解)
粉末X線回折スペクトル:測定装置としてブルカー(Bruker)AXS社製D8DISCOVER(with GADDS CS)を使用し、管球Cu、管電圧45KV、管電流40Maの条件下で測定した。その結果、得られたスペクトルは、図1によく一致した。
示差走査熱量分析:測定装置としてネッシュ(NETZSCH)社製DSC 204 F1 Phoenixを使用し、アルミニウムパン中、昇温速度10℃/分、25℃〜300℃の温度範囲条件で測定した。その結果、得られた吸熱曲線は図2によく一致した。
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールナトリウムのアセトン錯体10.0gをテトラヒドロフラン30mlに溶解し、室温でtert−ブチルメチルエーテル30mlを加えた。種晶を加えた後、室温で18時間撹拌した。tert−ブチルメチルエーテル10mlを加えた後、室温で3時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、テトラヒドロフランとtert−ブチルメチルエーテルとの(V/V)混合溶液(3:4)で洗浄し、減圧乾燥することにより結晶7.5gを得た。
mp:222℃(分解)
[試験例1]耐湿性比較試験
前記実施例1で得た結晶と非晶質のラベプラゾールナトリウム塩を、動的水蒸気吸着測定装置(Surface Measurement Systems社製のDVS-1を使用)により、25℃で相対湿度を0〜90%まで5%ずつ変化させ、平衡時最短時間15分、平衡時最長時間300分で重量変化を測定した。その結果を表2及び図3に示した。
Figure 2010215507
表2及び図3は、本発明のF形結晶は、非晶質のものより、明らかに吸湿し難いことを示している。
本発明は、耐湿性に優れたラベプラゾールのF形結晶と、そのF形結晶を容易に製造する方法に関し、本発明によりその製剤化が容易となり、産業上利用可能である。
ラベプラゾールナトリウム塩のF形結晶の粉末X線回折スペクトルを示す図である。 ラベプラゾールナトリウム塩のF形結晶の示差走査熱量分析の結果を示した図である。 ラベプラゾールナトリウム塩のF形結晶と非晶質の吸湿性を比較する試験例1の結果を示す図である。

Claims (7)

  1. 粉末X線回折スペクトルが図1に示すパターンを有する2−[[4−(3−メトシキプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールナトリウムのF形結晶。
  2. 粉末X線回折スペクトルが図1に示すパターンを有し、回折角度(2θ)18.0±0.1°、20.9±0.1°及び21.2±0.1°に実質的にピークを有しない請求項1に記載のF形結晶。
  3. 粉末X線回折スペクトルが図1に示すパターンを有する2−[[4−(3−メトシキプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールナトリウムのF形結晶の製造方法であって、エーテル系有機溶媒から結晶化させることを特徴とする前記F形結晶の製造方法。
  4. テトラヒドロフランと低級アルキルエーテルの混合溶媒から結晶させることを特徴とする請求項3に記載のF形結晶の製造方法。
  5. テトラヒドロフランと、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びtert-ブチルメチルエーテルからなる群から選ばれた1種類の溶媒との混合溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項3に記載のF形結晶の製造方法。
  6. テトラヒドロフランとジイソプロピルエーテルの混合溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項3に記載のF形結晶の製造方法。
  7. テトラヒドロフランとtert−ブチルメチルエーテルの混合溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項3に記載のF形結晶の製造方法。
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