JP2010211967A - 電子放出素子、電子放出装置、自発光デバイス、画像表示装置、冷却装置、および帯電装置 - Google Patents

電子放出素子、電子放出装置、自発光デバイス、画像表示装置、冷却装置、および帯電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電子加速層で導電微粒子が均一に分散されており、電子を長期間安定して放出させることが可能な電子放出素子を提供する。
【解決手段】微粒子層4には、導電微粒子6と導電微粒子6の一次平均粒径より大きい一次平均粒径の絶縁体微粒子5とが含まれており、微粒子層4における導電微粒子6の凝集体の平均粒径は0.35μm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、電圧を印加することにより電子を放出する電子放出素子に関するものである。
従来の電子放出素子として、スピント(Spindt)型電極、カーボンナノチューブ(CNT)型電極などが知られている。このような電子放出素子は、例えば、FED(Field Emision Display)の分野に応用検討されている。このような電子放出素子は、尖鋭形状部に電圧を印加して約1GV/mの強電界を形成し、トンネル効果により電子放出させる。
しかしながら、これら2つのタイプの電子放出素子は、電子放出部表面近傍が強電界であるため、放出された電子は電界により大きなエネルギーを得て気体分子を電離しやすくなる。気体分子の電離により生じた陽イオンは強電界により素子の表面方向に加速衝突し、スパッタリングによる素子破壊が生じるという問題がある。また、大気中の酸素は電離エネルギーより解離エネルギーが低いため、イオンの発生より先にオゾンを発生する。オゾンは人体に有害である上、その強い酸化力により様々なものを酸化することから、素子の周囲の部材にダメージを与えるという問題が存在し、これを避けるために周辺部材には耐オゾン性の高い材料を用いなければならないという制限が生じている。
そこで、上記とは別のタイプの電子放出素子として、MIM(Metal Insulator Metal)型やMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電子放出素子が知られている。これらは素子内部の量子サイズ効果及び強電界を利用して電子を加速し、平面状の素子表面から電子を放出させる面放出型の電子放出素子である。これらは素子内部で加速した電子を放出するため、素子外部に強電界を必要としない。従って、MIM型及びMIS型の電子放出素子においては、上記スピント型やCNT型、BN型の電子放出素子のように気体分子の電離によるスパッタリングで破壊されるという問題やオゾンが発生するという問題を克服できる。
例えば特許文献1には、2枚の電極の間に金属などの微粒子を分散させた絶縁体膜を電子加速層として設け、一方の電極から電子加速層中に電子を注入し、注入した電子を電子加速層で加速させ、他方の電極を通して電子を放出するMIM形電子放出素子が開示されている。特許文献1では、この厚みを数十Å〜1000Åとしている。
特開平1−298623号公報(平成1年12月1日公開)
一般的に数nmから数百nmの微粒子を溶媒中および固体中に均一分散することは難しい。そのため、電子加速層として絶縁体膜に金属微粒子を含むMIM型の従来の電子放出素子は、金属微粒子の分散状態が不均一である。金属微粒子の分散状態が不均一であることは素子の寿命が短くなる原因となっている。金属微粒子の分散状態が不均一であると、金属微粒子の凝集体が絶縁体膜中に存在しやすく、金属微粒子の凝集が絶縁体膜中に存在すると、素子に電圧を印加したときに、導電路が形成されやすく、絶縁破壊が生じやすくなるためである。よって、従来の電子放出素子を利用した装置は、装置の寿命が短くなる。また、例えば従来の電子放出素子をディスプレイに適用した場合、金属微粒子の分散状態が不均一であると、輝度ムラを生じることになる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電子加速層で導電微粒子が均一に分散されており、電子を長期間安定に放出できる電子放出素子の提供を目的とする。
本発明の電子放出素子は、上記課題を解決するために、電極基板と薄膜電極と該電極基板および該薄膜電極とに挟持された電子加速層とを有し、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧が印加されると、上記電子加速層で電子を加速させて、上記薄膜電極から該電子を放出させる電子放出素子であって、上記電子加速層には、導電微粒子と該導電微粒子の一次平均粒径より大きい一次平均粒径の絶縁体微粒子とが含まれており、上記電子加速層において上記導電微粒子の凝集体の平均粒径は、0.35μm以下となっていることを特徴としている。
上記構成によると、電極基板と薄膜電極との間には、導電微粒子と該導電微粒子の一次平均粒径より大きい一次平均粒径の絶縁体微粒子とが含まれる電子加速層が設けられており、この電子加速層は、絶縁体微粒子と導電微粒子とが緻密に集合した層であり、半導電性を有する。この半導電性の電子加速層に電圧を印加すると、電子加速層内に電流が流れ、その一部は印加電圧の形成する強電界により弾道電子となって放出される。ここで、上記電子加速層における上記導電微粒子の凝集体の平均粒径は0.35μm以下となっている。上記導電微粒子の凝集体の平均粒径は、上記導電微粒子の一次平均粒径よりも大きいが、それが、0.35μm以下となっていると、後述の実施例からわかるように、電子加速層中で絶縁破壊が生じるほどの大きな凝集体はできておらず、導電微粒子は電子加速層中で均一に分散されているということができる。
従来は、導電微粒子を電子加速層中に均一に分散できなかった。しかし、本発明に係る電子放出素子は、上記のように、導電微粒子が電子加速層中に均一に分散されており、素子の長寿命を図ることができ、電子を長期間安定して放出できる。
また、本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記導電微粒子は、抗酸化力が高い導電体であってもよい。
ここで、ここで言う抗酸化力が高いとは、酸化物形成反応の低いことを指す。一般的に熱力学計算より求めた、酸化物生成自由エネルギーの変化量ΔG[kJ/mol]値が負で大きい程、酸化物の生成反応が起こり易いことを表す。本発明ではΔG>−450[kJ/mol]以上に該当する金属元素が、抗酸化力の高い導電微粒子として該当する。また、該当する導電微粒子の周囲に、その導電微粒子の粒径よりも小さい絶縁体物質を付着、または被覆することで、酸化物の生成反応をより起こし難くした状態の導電微粒子も、抗酸化力が高い導電微粒子に含まれる。
上記構成によると、導電微粒子として抗酸化力が高い導電体を用いることから、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化を発生し難いため、電子放出素子を大気圧中でも安定して動作させることができる。よって、寿命を長くでき、大気中でも長時間連続動作をさせることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記導電微粒子は、貴金属であってもよい。このように、上記導電微粒子が、貴金属であることで、導電微粒子の、大気中の酸素による酸化などをはじめとする素子劣化を防ぐことができる。よって、電子放出素子の長寿命化を図ることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記導電微粒子は、導電性を制御する必要から、上記絶縁体物質の大きさよりも小さくなければならず、上記導電微粒子の一次平均粒径は3〜10nmであるのが好ましい。このように、上記導電微粒子の一次平均粒径を、上記絶縁体物質よりも小さく、好ましくは3〜10nmとすることにより、電子加速層内で、導電微粒子による導電パスが形成されず、電子加速層内での絶縁破壊が起こり難くなる。また原理的には不明確な点が多いが、粒子径が上記範囲内の導電微粒子を用いることで、弾道電子が効率よく生成される。
ここで、上記絶縁体微粒子は、その平均粒径が10〜1000nmであるのが好ましく、12〜110nmであるのがより好ましい。この場合、粒径の分散状態は平均粒径に対してブロードであってもよく、例えば平均粒径50nmの微粒子は、20〜100nmの領域にその粒径分布を有していても問題ない。上記微粒子である絶縁体物質の平均粒径を好ましくは10〜1000nm、より好ましくは12〜110nmとすることにより、上記絶縁体物質の大きさよりも小さい上記導電微粒子の内部から外部へと効率よく熱伝導させて、素子内を電流が流れる際に発生するジュール熱を効率よく逃がすことができ、電子放出素子が熱で破壊されることを防ぐことができる。さらに、上記電子加速層における抵抗値の調整を行いやすくすることができる。
本発明の電子放出素子の製造方法は、上記課題を解決するために、電極基板と、薄膜電極と、該電極基板および該薄膜電極に挟持され、導電微粒子と該導電微粒子の一次平均粒径より大きい一次平均粒径の絶縁体微粒子とを含む電子加速層と、を有し、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧が印加されると、上記電子加速層で電子を加速させて、上記薄膜電極から該電子を放出させる電子放出素子の製造方法であって、上記電極基板上に、上記導電微粒子のナノコロイド液を液体の状態で用いて上記電子加速層を形成する電子加速層形成ステップを含むことを特徴としている。
上記方法によると、導電微粒子のナノコロイド液を液体の状態で用いて上記電子加速層を形成する。ここで、素子の製造工程において、ドライアップした導電微粒子を使用すると、凝集しているため、溶媒中に一次粒径近くまで再分散させることは困難である。また、溶媒中に分散状態で存在する導電微粒子を使用した場合においても、別の溶媒に混合すると、一般的に分散安定性が悪化して凝集してしまう。従って、凝集した粒径の大きな導電微粒子が電子加速層中に分散してしまい、絶縁破壊が生じやすくなる。
しかし本発明に係る上記方法では、ナノコロイド液を液体の状態で使用しているため、導電微粒子が均一分散した電子加速層を形成することができる。よって、本発明に係る上記方法では、素子の長寿命を図ることができ、電子を長期間安定して放出でき、かつ、電子放出電流を多くすることができる。
ここで、上記導電微粒子はコロイド状態での平均粒径が0.35μm以下となっているのが好ましい。コロイド状態での平均粒径が0.35μm以下の導電微粒子を用いることで、電子加速層での導電微粒子の分散性を高めることができる。
本発明の電子放出素子の製造方法では、上記方法に加え、上記電子加速層形成ステップで、上記導電微粒子のナノコロイド液と上記絶縁体微粒子とを分散した溶媒とを混合し、上記電極基板上に塗布してもよい。
上記方法によると、導電微粒子のナノコロイド液と絶縁体微粒子を分散した溶媒とを混合することで、導電微粒子が均一に分散した電子加速層を簡易に形成できる。
本発明の電子放出装置は、上記課題と解決するために、上記いずれか1つの電子放出素子と、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧を印加する電源部と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によると、電子加速層で導電微粒子が均一に分散されており、電子放出装置は、電子を長期間安定して放出することが可能となる。
さらに、本発明の電子放出素子を自発光デバイス、及びこの自発光デバイスを備えた画像表示装置に用いることにより、輝度ムラを抑制した、電子を安定して放出でき長寿命な面発光を実現する自発光デバイス、及び画像表示装置を提供することができる。
また、導電微粒子に抗酸化力が高い金属を用いた本発明の電子放出素子を、冷却装置に用いることにより、大気中でも電子を長期安定して放出して高効率で冷却を行うことができる。
また、導電微粒子に抗酸化力が高い金属を用いた本発明の電子放出素子を、帯電装置に用いることにより、大気中でも電子を長期安定して放出して被帯電体を帯電させることができる。
本発明の電子放出素子は、上記のように、上記電子加速層には、導電微粒子と該導電微粒子の一次平均粒径より大きい絶縁体物質とが含まれており、上記電子加速層に上記導電微粒子の凝集体が含まれる場合、該凝集体の平均粒径は0.35μm以下となっている。
上記構成によると、電極基板と薄膜電極との間には、導電微粒子と該導電微粒子の一次平均粒径より大きい絶縁体物質とが含まれる電子加速層が設けられており、この電子加速層は、絶縁体微粒子と導電微粒子とが緻密に集合した層であり、半導電性を有する。この半導電性の電子加速層に電圧を印加すると、電子加速層内に電流が流れ、その一部は印加電圧の形成する強電界により弾道電子となって放出される。ここで、上記電子加速層における上記導電微粒子の凝集体の平均粒径は0.35μm以下となっている。上記導電微粒子の凝集体の平均粒径は、上記導電微粒子の一次平均粒径よりも大きいが、それが、0.35μm以下となっていると、後述の実施例からわかるように、電子加速層中で絶縁破壊が生じるほどの大きな凝集体はできておらず、導電微粒子は均一に分散されているということができる。
従来は、導電微粒子を電子加速層中に均一に分散できなかった。しかし、本発明に係る電子放出素子は、上記のように、導電微粒子が電子加速層中に均一に分散されており、素子の長寿命を図ることができ、電子を長期間安定して放出させることが可能となる。
本発明の一実施形態の電子放出素子の構成を示す模式図である。 図1の電子放出素子における微粒子層付近の断面の拡大図である。 電子放出素子のTEM写真であり導電微粒子が均一に分散されていることを示す図である。 電子放出素子のTEM写真であり導電微粒子の不均一に分散されていることを示す図である。 電子放出実験の測定系を示す図である。 電子放出素子の発光実験装置を示す図である。 電子放出素子の発光実験装置の上面写真を示す図である。 実施例の電子放出素子の蛍光体での発光実験の結果を示す図である。 実施例の電子放出素子の導電微粒子における粒径の分布測定結果を示す図である。 他の実施例の電子放出素子の蛍光体での発光実験の結果を示す図である。 他の実施例の電子放出素子の導電微粒子における粒径の分布測定結果を示す図である。 比較例の電子放出素子の導電微粒子における粒径の分布測定結果を示す図である。 本発明の電子放出素子を用いた帯電装置の一例を示す図である。 本発明の電子放出素子を用いた自発光デバイスの一例を示す図である。 本発明の電子放出素子を用いた自発光デバイスの他の一例を示す図である。 本発明の電子放出素子を用いた自発光デバイスの更に別の一例を示す図である。 本発明の電子放出素子を用いた自発光デバイスを具備する画像形成装置の他の一例を示す図である。 本発明に係る電子放出素子を用いた送風装置及びそれを具備した冷却装置の一例を示す図である。 本発明の電子放出素子を用いた送風装置及びそれを具備した冷却装置の別の一例を示す図である。
以下、本発明の電子放出素子の実施形態および実施例について、図1〜16を参照しながら具体的に説明する。なお、以下に記述する実施の形態および実施例は本発明の具体的な一例に過ぎず、本発明はこれらよって限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の電子放出素子の一実施形態の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の電子放出素子1は、下部電極となる基板(電極基板)2と、上部電極(薄膜電極)3と、その間に挟まれて存在する電子加速層4とからなる。また、基板2と上部電極3とは電源7に繋がっており、互いに対向して配置された基板2と上部電極3との間に電圧を印加できるようになっている。電子放出素子1は、基板2と上部電極3との間に電圧を印加することで、基板2と上部電極3との間、つまり、電子加速層4に電流を流し、その一部を印加電圧の形成する強電界により弾道電子として、上部電極3を透過あるいは上部電極3の隙間から放出させる。なお、電子放出素子1と電源7とから電子放出装置10が成る。
下部電極となる基板2は、電子放出素子の支持体の役割を担う。そのため、ある程度の強度を有し、直に接する物質との接着性が良好で、適度な導電性を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。例えばSUSやTi、Cu等の金属基板、SiやGe、GaAs等の半導体基板、ガラス基板のような絶縁体基板、プラスティック基板等が挙げられる。例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、その電子加速層4との界面に金属などの導電性物質を電極として付着されることによって、下部電極となる基板2として用いることができる。上記導電性物質としては、導電性に優れた貴金属系材料を、マグネトロンスパッタ等を用いて薄膜形成できれば、その構成材料は特に問わない。また、酸化物導電材料として、透明電極に広く利用されているITO薄膜も有用である。また、強靭な薄膜を形成できるという点で、例えば、ガラス基板表面にTiを200nm成膜し、さらに重ねてCuを1000nm成膜した金属薄膜を用いてもよいが、これら材料および数値に限定されることはない。
上部電極3は、電子加速層4内に電圧を印加させるものである。そのため、電圧の印加が可能となるような材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子加速層4内で加速され高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーロス無く透過させて放出させるという観点から、仕事関数が低くかつ薄膜を形成することが可能な材料であれば、より高い効果が期待できる。このような材料として、例えば、仕事関数が4〜5eVに該当する金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、パラジウムなどが挙げられる。中でも大気圧中での動作を想定した場合、酸化物および硫化物形成反応のない金が、最良な材料となる。また、酸化物形成反応の比較的小さい銀、パラジウム、タングステンなども問題なく実使用に耐える材料である。また上部電極3の膜厚は、電子放出素子1から外部へ電子を効率良く放出させる条件として重要であり、10〜55nmの範囲とすることが好ましい。上部電極3を平面電極として機能させるための最低膜厚は10nmであり、これ未満の膜厚では、電気的導通を確保できない。一方、電子放出素子1から外部へ電子を放出させるための最大膜厚は55nmであり、これを超える膜厚では弾道電子の透過が起こらず、上部電極3で弾道電子の吸収あるいは反射による電子加速層4への再捕獲が生じてしまう。よって、上部電極3の膜厚が10〜55nmの範囲であると、電子放出素子1は、電気的導通を確保して十分な素子内電流を流し、上部電極3から弾道電子を安定して放出させることが可能となる。
電子加速層4は、導電微粒子6と、当該導電微粒子の一次平均粒径より大きい一次平均粒子径の絶縁体微粒子5とを含んでいる。電子加速層4において上記導電微粒子は均一に分散されており、該導電微粒子の凝集体の粒径は0.35μm以下となっている。本実施形態では、電子加速層4には、絶縁体微粒子5と導電微粒子6とを含んでいるため、以下では、電子加速層4を微粒子層4と記載する。
導電微粒子6としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような種類の導電体でも用いることができる。ただし、抗酸化力が高い導電体を用いると、大気圧動作させた際の酸化劣化を避けることができる。抗酸化力の高い導電体としては、例えば、貴金属が挙げられ、具体的には、金、銀、白金、パラジウム、ニッケルといった材料が挙げられ、導電微粒子が金属微粒子であってもよい。このような導電微粒子6は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて作成可能であり、応用ナノ研究所が製造販売する銀ナノ粒子等の市販の金属微粒子粉体も利用可能である。弾道電子の生成の原理については後段で記載する。
ここで、導電微粒子6の一次平均粒径は、導電性を制御する必要から、以下で説明する絶縁体微粒子5の大きさよりも小さくなければならず、3〜10nmであるのがより好ましい。このように、導電微粒子6の一次平均粒径を、絶縁体微粒子5の粒子径よりも小さく、好ましくは3〜10nmとすることにより、微粒子層4内で、導電微粒子6による導電パスが形成されず、微粒子層4内での絶縁破壊が起こり難くなる。また原理的には不明確な点が多いが、粒子径が上記範囲内の導電微粒子6を用いることで、弾道電子が効率よく生成される。なお、導電微粒子6の平均粒子径は、例えば、分散媒中に適度な濃度で導電微粒子を分散させ、マイクロトラック9340−UPA(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
さらに、図3に示すように、微粒子層4において導電微粒子6は均一に分散されている。ここでは、均一に分散されているとは、後述の実施例からわかるように、微粒子層4における導電微粒子6の凝集体の平均粒径は0.35μm以下となっているということである。導電微粒子6の凝集体の平均粒径は、導電微粒子6の一次平均粒径よりも大きいが、それが、0.35μm以下となっていると、後述の実施例からわかるように、電子加速層中で絶縁破壊が生じるほどの大きな凝集体はできておらず、導電微粒子6は均一に分散されているということができる。
ここで、図4に示すように電子加速層(微粒子層)中の導電微粒子の分散状態が不均一であり、導電微粒子の凝集が微粒子層中に存在すると、素子に電圧を印加したときに、導電路が形成されやすく、絶縁破壊が生じやすくなる。しかし、電子放出素子1は、上記のように、導電微粒子6が電子加速層(微粒子層4中)中に均一に分散されているため、素子の長寿命を図ることができ、電子を長期間安定して放出できる。なお、図3および4はTEM写真を示す図であるが、TEM観察では、微粒子層4より上を樹脂で包埋し、基板2から剥離して観察を行っている。したがって、図3および4では、基板2が含まれておらず、基板2があった領域を基板領域として示している。
なお、導電微粒子6の周囲には、導電微粒子6の一次平均粒径より小さい絶縁体物質が存在していてもよく、導電微粒子6の一次平均粒径より小さい絶縁体物質は、導電微粒子6の表面に付着する付着物質であってもよく、付着物質は、導電微粒子6の一次平均粒径より小さい形状の集合体として、導電微粒子6の表面を被膜する絶縁被膜であってもよい。導電微粒子6の一次平均粒径より小さい絶縁体物質としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような絶縁体物質でも用いることができる。ただし、導電微粒子6の一次平均粒径より小さい絶縁体物質が導電微粒子6を被膜する絶縁被膜であり、絶縁被膜を導電微粒子6の酸化被膜によって賄った場合、大気中での酸化劣化により酸化皮膜の厚さが所望の膜厚以上に厚くなってしまう恐れがあるため、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、有機材料による絶縁被膜が好ましく、例えば、アルコラート、脂肪酸、アルカンチオールといった材料が挙げられる。この絶縁被膜の厚さは薄い方が有利であることが言える。
絶縁体微粒子5に関しては、その材料は絶縁性を持つものであれば特に制限なく用いることができる。ただし、微粒子層4を構成する微粒子全体における絶縁体微粒子5の重量割合は80〜95%が好ましい。なお、微粒子層(電子加速層)4に占める導電微粒子6の重量割合を30%以下とすることで、高抵抗かつ薄膜の半導電層を形成でき、絶縁破壊が生じない微粒子層(電子加速層)4を実現できる。
また絶縁体微粒子5の大きさは、導電微粒子6に対して優位な放熱効果を得るため、導電微粒子6の一次平均粒径よりも大きいことが好ましく、絶縁体微粒子5の直径(一次平均粒径)は10〜1000nmであることが好ましく、12〜110nmがより好ましい。従って、絶縁体微粒子5の材料はSiO、Al、TiOといったものが実用的となる。ただし、表面処理が施された小粒径シリカ粒子を用いると、それよりも粒子径の大きな球状シリカ粒子を用いるときと比べて、溶媒中に占めるシリカ粒子の表面積が増加し、溶液粘度が上昇するため、微粒子層4の膜厚が若干増加する傾向にある。また、絶縁体微粒子5の材料には、有機ポリマーから成る微粒子を用いてもよく、例えば、JSR株式会社の製造販売するスチレン/ジビニルベンゼンから成る高架橋微粒子(SX8743)、または日本ペイント株式会社の製造販売するスチレン・アクリル微粒子のファインスフェアシリーズが利用可能である。ここで、絶縁体微粒子5は、2種類以上の異なる粒子を用いてもよく、また、粒径のピークが異なる粒子を用いてもよく、あるいは、単一粒子で粒径がブロードな分布のものを用いてもよい。
微粒子層4は薄いほど強電界がかかるため低電圧印加で電子を加速させることができるが、層厚を均一化できること、また層厚方向における電子加速層の抵抗調整が可能となること、さらに、導電微粒子6の凝集体(平均粒径0.35μm以下)を含んでいても電子放出が可能なことなどから、微粒子層4の層厚は、0.5〜3μmであるのが好ましい。
次に、電子放出の原理について説明する。図2は、電子放出素子1の微粒子層4付近の断面を拡大した模式図である。図2に示すように、微粒子層4は、その大部分を絶縁体微粒子5で構成され、その隙間に導電微粒子6が点在している。図2における絶縁体微粒子5および導電微粒子6の比率は、絶縁体微粒子5および導電微粒子6の総重量に対する絶縁体微粒子5の重量比率が80%に相当する状態であり、絶縁体微粒子5一粒子当たりに付着する導電微粒子6は六粒子程度となる。
微粒子層4は絶縁体微粒子5と少数の導電微粒子6とで構成されるため、半導電性を有する。よって微粒子層4へ電圧を印加すると、極弱い電流が流れる。微粒子層4の電圧電流特性は所謂バリスタ特性を示し、印加電圧の上昇に伴い急激に電流値を増加させる。この電流の一部は、印加電圧が形成する微粒子層4内の強電界により弾道電子となり、上部電極3を透過あるいはその隙間を通過して電子放出素子1の外部へ放出される。弾道電子の形成過程は、電子が電界方向に加速されつつトンネルすることによるものと考えられるが、断定できていない。
次に、電子放出素子1の、製造方法の一実施形態について説明する。まず、基板2上に、絶縁体微粒子5と導電微粒子6とを分散させた分散液を、例えばスピンコート法を用いて塗布して、微粒子層4を形成する。ここで、分散液は、絶縁体微粒子5を分散させた溶媒と導電微粒子6のナノコロイド液と混合して分散させて作製する。なお、導電微粒子6のナノコロイド液は液体の状態で混合する。
このように、導電微粒子6のナノコロイド液を液体の状態で使用すると、導電微粒子6が均一分散した微粒子層4を形成することができる。なお、導電微粒子6はコロイド状態での平均粒径が0.35μm以下となっているのが好ましい。コロイド状態での平均粒径が0.35μm以下の導電微粒子を用いることで、後述の実施例に記載のように微粒子層4での分散性を高めることができる。
導電微粒子6のナノコロイド液の例としては、ハリマ化成株式会社が製造販売する金ナノ粒子コロイド液、応用ナノ研究所が製造販売する銀ナノ粒子、株式会社徳力化学研究所が製造販売する白金ナノ粒子コロイド液及びパラジウムナノ粒子コロイド液、株式会社イオックスの製造販売するニッケルナノ粒子ペーストなどが挙げられる。
また、導電微粒子6のナノコロイド液の溶媒には、絶縁体微粒子5を分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。絶縁体微粒子5を分散する溶媒も同様に、導電微粒子6を分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。
スピンコート法による成膜、乾燥、を複数回繰り返すことで微粒子層4を所定の膜厚にすることができる。微粒子層4は、スピンコート法以外に、例えば、滴下法、スプレーコート法等の方法でも成膜することができる。
また、微粒子層4を次のように形成してもよい。基板2上に、絶縁体微粒子5を分散させた溶媒を例えばスピンコート法を用いて塗布して、絶縁体微粒子層を形成する。その後、絶縁体微粒子層に導電微粒子6のナノコロイド液を液体の状態で添加して微粒子層4を形成してもよい。このように形成すると、絶縁体微粒子層に導電微粒子6のナノコロイド液が浸透し、導電微粒子6が均一に分散される。よって、絶縁体微粒子を分散した溶媒で導電微粒子が凝集することを回避でき、導電微粒子6が均一に分散した微粒子層4を形成できる。なお、ナノコロイド液の添加方法としては、スピンコート法以外にも、例えば、静電噴霧法、インクジェット法等の方法が利用できる。
微粒子層4を形成後、微粒子層4上に上部電極3を成膜する。上部電極3の成膜には、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いればよい。また、上部電極3は、例えば、インクジェット法、スピンコート法、蒸着法等を用いて成膜してもよい。
(実施例)
本実施例では、本発明に係る電子放出素子を用いた電子放出実験、発光実験、粒径分布測定について図5〜11を用いて説明する。なお、これら実験等は実施の一例であって、本発明の内容を制限するものではない。まず初めに、実施例1、2の電子放出素子および、比較例1の電子放出素子を次のように作製した。まず、実施例1、2の電子放出素子の作製方法について説明する。
(実施例1)
実施例1の電子放出素子は次のように作製した。まず、10mLの試薬瓶にヘキサン溶媒を3mL入れ、その中に絶縁体微粒子5として平均粒径110nmの球状シリカ粒子を0.5g投入し、試薬瓶を超音波分散器にかけ、シリカ粒子の分散を行った。次に導電微粒子6として応用ナノ粒子研究所製の銀ナノ粒子コロイド液(銀ナノ粒子の一次平均粒径4.5nm(納品時のメーカー測定データ)、微粒子固形分濃度37%のヘキサン分散溶液)を液体の状態で0.125g(固形分重量)追加投入し、同様に超音波分散処理を行って、微粒子分散液Aを得た。微粒子分散液Aに占める絶縁体微粒子5および導電微粒子6の総質量に対する絶縁体微粒子5の重量比率は80%であった。
そして、基板2として30mm角のSUS基板上にスピンコート法を用いて、微粒子分散液Aを堆積させて、微粒子層4を形成した。スピンコート法による成膜条件は、分散溶液Aの基板2への滴下後に、500RPMにて5sec、続いて3000rpmにて10sec、基板2の回転を行う事とした。この成膜条件を1度行い、基板2上に1層堆積させた後、室温で自然乾燥させた。微粒子層4の膜厚は約1000nmであった。この微粒子層4の表面には、マグネトロンスパッタ装置を用いて上部電極3を成膜することにより、実施例1の電子放出素子を得た。上部電極3の成膜材料として金を使用し、上部電極3の層厚(表面電極膜厚)は40nmとした。また直径3mmの円形孔のマスクを用いることで、同面積は0.07cmとした。
(実施例2)
実施例2の電子放出素子については、実施例1の電子放出素子と同様に作製した。ただし、実施例2が実施例1と異なる点は、銀ナノ粒子コロイド液中の凝集した銀ナノ粒子を用いている点である。まず、実施例1と同じである銀ナノ粒子コロイド液は、最初は銀微粒子の一次平均粒径4.5nm(納品時のメーカー測定データ)で良好に分散した、微粒子固形分濃度37%のヘキサン分散溶液である。ただし、これを放置すると時間の経過とともに銀ナノ粒子が凝集・沈殿する。実施例2では、約1ヶ月放置後の凝集・沈殿物を含む銀ナノ粒子を使用した。この凝集・沈殿物を含む銀ナノ粒子の粒径を測定した結果は、後述するように、348nmであった。なお、実施例1の銀ナノ粒子コロイド液では後述するように凝集体とはなっていない。
(比較例1)
また、比較例1の電子放出素子は次のように作製した。まず、10mLの試薬瓶にトルエン溶媒を3mL入れ、その中に絶縁体微粒子5として平均粒径110nmの球状シリカ粒子を0.5gのシリカ粒子を投入し、試薬瓶を超音波分散器にかけ、シリカ粒子の分散を行った。次に、絶縁体物質を表面に付着させた導電微粒子6として、銀ナノ粒子(一次平均粒径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚、ドライアップ品)を0.055g上記試薬瓶に追加投入し、同様に超音波分散処理を行う。こうして絶縁体微粒子(シリカ粒子)の配合割合(重量比率)が90%となる分散溶液Bが得られた。
そして、基板2として30mm角のSUS基板上にスピンコート法を用いて分散溶液Bを堆積させて、微粒子層4を形成した。この微粒子層4の表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて上部電極3を成膜することにより、比較例1の電子放出素子を得た。スピンコート法による成膜条件は、分散溶液Bの基板2への滴下後に、500rpmにて5sec続いて3000RPMにて10sec、基板2の回転を行う事とした。この成膜条件を3度繰り返し、基板2上に3層堆積させた後、室温で自然乾燥させた。微粒子層4の膜厚は約1500nmであった。
基板2の表面に微粒子層4を形成後、マグネトロンスパッタ装置を用いて上部電極3を成膜した。成膜材料として金を使用し、上部電極3の層厚は12nm、同面積は0.28cmとした。
(電子放出素子の電子放出電流の測定)
上記のように作製した実施例1、2および比較例1の電子放出素子について、図5に示す実験系を用いて単位面積あたりの電子放出電流の測定実験を行った。図5に示す実験系では、電子放出素子1の上部電極3側に、絶縁体スペーサ9を挟んで対向電極8を配置させる。そして、電子放出素子1および対向電極8は、それぞれ、電源7に接続されており、電子放出素子1にはV1の電圧、対向電極8にはV2の電圧が印加されるようになっている。このような実験系を1×10−8ATMの真空中に配置して電子放出実験を行った。電子放出実験で、V2=100Vとした。また、絶縁体スペーサ9を挟んで、電子放出素子と対向電極との距離は5000μmであった。なお、真空中測定において、V2=50〜200Vで結果に大差ない。
実施例1の電子放出素子は、V1=19.3Vにて、1.27E−4A/cmの電子放出電流が確認された。実施例2の電子放出素子は、V1=18.3Vにて、5.35E−5A/cmの電子放出電流が確認された。比較例1の電子放出素子は、V1=28.1Vにて、4.92E−5A/cmの電子放出電流が確認された。
ここでは、1×10−8ATMの真空中で電子放出させたが、貴金属(実施例では銀)の導電微粒子を用いているため、大気中でも電子放出させることができる。
(電子放出素子の発光の測定)
さらに、図6および7に示す発光実験装置を用いて、実施例1,2および比較例1の電子放出素子について蛍光での発光実験を行った。図6に示す発光実験装置では、電子放出素子1の上部電極3側に、ITO付きガラス基板15を配置させる。ITO付きガラス基板15には、電子放出素子1と対向する面に蛍光体16が塗布してある。そして、ITO付きガラス基板15は電源と接続しており、ITO付きガラス基板15への印加電圧は、2000Vとした。また、電子放出素子1には、バイアス電源17に接続したバイアス電極から15Vの電圧を印加した。図7は、発光実験装置の上面図(写真)である。このような発光実験装置を1×10−8ATMの真空中に配置して電子放出実験を行った。
実施例1の電子放出素子の発光実験の結果を図8に示す。図8は、ITO付きガラス基板15の上部から発光を撮影したものである。図8より、均一な面電子が放出されていることがわかる。さらに、実施例1で用いた銀ナノ粒子のヘキサン分散コロイドの粒径分布の測定結果を図9に示す。図9から、個数粒径分布の中位径は4.9nm(0.0049μm)であること、つまり、銀ナノ粒子のコロイドは、ほぼ一次粒径で存在していること、がわかった。
実施例2の電子放出素子の発光実験の結果を図10に示す。図10は、ITO付きガラス基板15の上部から発光を撮影したものである。図10より、不均一な面電子が放出されていることがわかる。さらに、実施例2で用いた銀ナノ粒子のヘキサン分散コロイド凝集体の粒径分布の測定結果を図11に示す。図11から、個数粒径分布の中位径は0.348μmであることがわかった。
また、比較例1の電子放出素子の発光実験の結果は、基板(下部電極)2と、上部電極3とがリークして電子放出しない素子が多かった(複数個作製した中では電子放出する素子もあった)。この比較例1で用いたドライアップ品の銀ナノ粒子のトルエン分散体の粒径分布の測定結果を図12に示す。図12から、個数粒径分布の中位径は2.768μmであることがわかった。
以上の発光実験から、導電微粒子6のナノコロイド液を液体の状態で使用すると、導電微粒子6が均一分散した微粒子層4を形成することができることがわかる。さらに、導電微粒子6はコロイド状態での平均粒径が0.35μm以下となっていると微粒子層(電子加速層)4での分散性を高めることができるため、好ましいことがわかる。
さらに、親水性のシリカ粒子を溶媒に分散させたものと、白金微粒子のコロイド液(白金粒子の一次平均粒径10nm、固形分濃度0.5%の水系分散溶液)とを用いた微粒子分散液Cから、微粒子層4を形成した電子放出素子について、上記同様に電子放出実験を行ったところ、電子放出を確認できた。また、親水性のシリカ粒子を溶媒に分散させたものと、パラジウム微粒子のコロイド液(パラジウム微粒子の一次平均粒径12nm、固形分濃度0.5%の水系分散溶液)とを用いた微粒子分散液Dから、微粒子層4を形成した電子放出素子についても、上記同様に電子放出実験を行ったところ、電子放出を確認できた。
(実施例3)
実施例3の電子放出素子は次のように作製した。まず、10mLの試薬瓶にエタノール溶媒2.0gとメチルトリメトキシシランKBM−13(信越化学工業株式会社製)0.5gを入れ、絶縁体微粒子5として平均粒径12nmの球状シリカ粒子AEROSIL R8200(エボニックエグサジャパン株式会社製)を0.5g投入し、試薬瓶を超音波分散器にかけ、絶縁体物質含有樹脂バインダー分散液Cを調製した。分散液Cに占める絶縁体微粒子5の含有率は17重量%であった。
そして、基板2として30mm角のSUS基板上に、上記で得られた分散液Cを滴下後、スピンコート法を用いて3000rpm、10sで絶縁体物質含有樹脂バインダー層Iを形成した。この絶縁体物質含有樹脂バインダー層Iは常温で乾燥し、経時変化を起こさないため、続けて次の工程に移った。
次に、導電微粒子6の溶液として、金ナノ粒子含有ナフテン分散溶液(ハリマ化成株式会社製、金ナノ粒子の平均粒径5.0nm(カタログ記載の測定データ)、金ナノ粒子固形分濃度52%)を、絶縁体物質含有樹脂バインダー層I上に滴下後、スピンコート法を用いて6000rpm、10sで、基板2を回転し、微粒子層4を形成した。金ナノ粒子含有ナフテン分散溶液は、金ナノ粒子のコロイド液である。
その後、微粒子層4の表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて上部電極3を成膜し、実施例3の電子放出素子を得た。成膜材料には金を使用し、上部電極3の層厚は40nm、同面積は0.014cmとした。
この実施例3の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、薄膜電極への印加電圧V1=29.6Vにて、単位面積当たりの電子放出電流は、0.461mA/cm、素子内電流は115mA/cm、電子放出効率0.40%が確認された。
なお、実施例3については、上記発光実験はしていないが、実施例1の銀コロイドと同様の結果となることが予想される。
〔実施の形態2〕
図13に、実施の形態1で説明した本発明に係る電子放出素子1を用いた本発明に係る帯電装置90の一例を示す。帯電装置90は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とからなり、感光体11を帯電させるものである。本発明に係る画像形成装置は、この帯電装置90を具備している。本発明に係る画像形成装置において、帯電装置90を成す電子放出素子1は、被帯電体である感光体11に対向して設置され、電圧を印加することにより、電子を放出させ、感光体11を帯電させる。なお、本発明に係る画像形成装置では、帯電装置90以外の構成部材は、従来公知のものを用いればよい。ここで、帯電装置90として用いる電子放出素子1は、感光体11から、例えば3〜5mm隔てて配置するのが好ましい。また、電子放出素子1への印加電圧は25V程度が好ましく、電子放出素子1の電子加速層の構成は、例えば、25Vの電圧印加で、単位時間当たり1μA/cmの電子が放出されるようになっていればよい。
帯電装置90として用いられる電子放出素子1は、導電微粒子6が抗酸化力の高い導電体であると大気中で動作させても放電を伴わず、従って帯電装置90からのオゾンの発生は全く無い。オゾンは人体に有害であり環境に対する各種規格で規制されているほか、機外に放出されなくとも機内の有機材料、例えば感光体11やベルトなどを酸化し劣化させてしまう。このような問題を、本発明に係る電子放出素子1を帯電装置90に用い、また、このような帯電装置90を画像形成装置が有することで、解決することができる。
さらに帯電装置90として用いられる電子放出素子1は、面電子源として構成されるので、感光体11の回転方向へも幅を持って帯電を行え、感光体11のある箇所への帯電機会を多く稼ぐことができる。よって、帯電装置90は、線状で帯電するワイヤ帯電器などと比べ、均一な帯電が可能である。また、帯電装置90は、数kVの電圧印加が必要なコロナ放電器と比べて、10V程度と印加電圧が格段に低くてすむというメリットもある。
〔実施の形態3〕
図14〜16に、実施の形態1で説明した本発明に係る電子放出素子1を用いた本発明に係る自発光デバイスの例をそれぞれ示す。
図14に示す自発光デバイス31は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7と、さらに、電子放出素子1と離れ、対向した位置に、基材となるガラス基板34、ITO膜33、そして蛍光体32が積層構造を有する発光部36と、から成る。
蛍光体32としては赤、緑、青色発光に対応した電子励起タイプの材料が適しており、例えば、赤色ではY:Eu、(Y,Gd)BO:Eu、緑色ではZnSiO:Mn、BaAl1219:Mn、青色ではBaMgAl1017:Eu2+等が使用可能である。ITO膜33が成膜されたガラス基板34表面に、蛍光体32を成膜する。蛍光体32の厚さ1μm程度が好ましい。また、ITO膜33の膜厚は、導電性を確保できる膜厚であれば問題なく、本実施形態では150nmとした。
蛍光体32を成膜するに当たっては、バインダーとなるエポキシ系樹脂と微粒子化した蛍光体粒子との混練物として準備し、バーコーター法或いは滴下法等の公知な方法で成膜するとよい。
ここで、蛍光体32の発光輝度を上げるには、電子放出素子1から放出された電子を蛍光体へ向けて加速する必要があり、その場合は電子放出素子1の基板2と発光部36のITO膜33の間に、電子を加速する電界を形成するための電圧印加するために、電源35を設けるとよい。このとき、蛍光体32と電子放出素子1との距離は、0.3〜1mmで、電源7からの印加電圧は18V、電源35からの印加電圧は500〜2000Vにするのが好ましい。
図15に示す自発光デバイス31’は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7、さらに、蛍光体32を備えている。自発光デバイス31’では、蛍光体32は平面状であり、電子放出素子1の表面に蛍光体32が配置されている。ここで、電子放出素子1表面に成膜された蛍光体32の層は、前述のように微粒子化した蛍光体粒子との混練物から成る塗布液として準備し、電子放出素子1表面に成膜する。但し、電子放出素子1そのものは外力に対して弱い構造であるため、バーコーター法による成膜手段は利用すると素子が壊れる恐れがある。このため滴下法或いはスピンコート法等の方法を用いるとよい。
図16に示す自発光デバイス31”は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7を備えており、さらに、電子放出素子1の微粒子層4に蛍光体32’として蛍光の微粒子が混入されている。この場合、蛍光体32’の微粒子を絶縁体微粒子5と兼用させてもよい。但し前述した蛍光体の微粒子は一般的に電気抵抗が低く、絶縁体微粒子5に比べると明らかに電気抵抗は低い。よって蛍光体の微粒子を絶縁体微粒子5に変えて混合する場合、その蛍光体の微粒子の混合量は少量に抑えなければ成らない。例えば、絶縁体微粒子5として球状シリカ粒子(平均粒径110nm)、蛍光体微粒子としてZnS:Mg(平均径500nm)を用いた場合、その重量混合比は3:1程度が適切となる。
上記自発光デバイス31,31’,31”では、電子放出素子1より放出させた電子を蛍光体32,32に衝突させて発光させる。なお、自発光デバイス31,31’,31”は、電子放出素子1の導電微粒子6が抗酸化力の高い導電体であると大気中で電子を放出できるため、大気中動作可能である。また、導電微粒子6がどのような導電体であっても、真空封止すれば電子放出電流が上がり、より効率よく発光することができる。
さらに、図17に、本発明に係る自発光デバイスを備えた本発明に係る画像表示装置の一例を示す。図17に示す画像表示装置140は、図16で示した自発光デバイス31”と、液晶パネル330とを供えている。画像表示装置140では、自発光デバイス31”を液晶パネル330の後方に設置し、バックライトとして用いている。画像表示装置140に用いる場合、自発光デバイス31”への印加電圧は、20〜35Vが好ましく、この電圧にて、例えば、単位時間当たり10μA/cmの電子が放出されるようになっていればよい。また、自発光デバイス31”と液晶パネル330との距離は、0.1mm程度が好ましい。
また、本発明に係る画像表示装置として、図14に示す自発光デバイス31を用いる場合、自発光デバイス31をマトリックス状に配置して、自発光デバイス31そのものによるFEDとして画像を形成させて表示する形状とすることもできる。この場合、自発光デバイス31への印加電圧は、20〜35Vが好ましく、この電圧にて、例えば、単位時間当たり10μA/cmの電子が放出されるようになっていればよい。
〔実施の形態4〕
図18及び図19に、実施の形態1で説明した本発明に係る電子放出素子1を用いた本発明に係る冷却装置の例をそれぞれ示す。なお、冷却装置を送風装置として利用してもよい。
図18に示す冷却装置150は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とからなる。冷却装置150において、電子放出素子1は、電気的に接地された被冷却体41に向かって電子を放出することにより、イオン風を発生させて被冷却体41を冷却する。冷却させる場合、電子放出素子1に印加する電圧は、18V程度が好ましく、この電圧で、雰囲気下に、例えば、単位時間当たり1μA/cmの電子を放出することが好ましい。
図19に示す冷却装置160は、図18に示す冷却装置150に、さらに、送風ファン42が組み合わされている。図19に示す冷却装置160は、電子放出素子1が電気的に接地された被冷却体41に向かって電子を放出し、さらに、送風ファン42が被冷却体41に向かって送風することで電子放出素子1から放出された電子を被冷却体41に向かって送り、イオン風を発生させて被冷却体41を冷却する。この場合、送風ファン42による風量は、0.9〜2L/分/cmとするのが好ましい。
ここで、送風によって被冷却体41を冷却させようとするとき、従来の冷却装置のようにファン等による送風だけでは、被冷却体41の表面の流速が0となり、最も熱を逃がしたい部分の空気は置換されず、冷却効率が悪い。しかし、送風される空気の中に電子やイオンといった荷電粒子を含まれていると、被冷却体41近傍に近づいたときに電気的な力によって被冷却体41表面に引き寄せられるため、表面近傍の雰囲気を入れ替えることができる。ここで、本発明に係る冷却装置150,160では、送風する空気の中に電子やイオンといった荷電粒子を含んでいるので、冷却効率が格段に上がる。
冷却装置150,160に用いられる電子放出素子1は、導電微粒子6が抗酸化力の高い導電体であると大気中で動作させることができる。
上述した実施形態および実施は例示であり、電子放出素子1は、他にも、例えば、電子線硬化装置に用いることができる。電子線硬化装置は、電子放出素子と、これに電圧を印加する電源と、さらに電子を加速させる加速電極とを備えている。
つまり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明に係る電子放出素子は、電気的導通を確保して十分な素子内電流を流し、薄膜電極から弾道電子を放出させることが可能である。よって、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の帯電装置や、電子線硬化装置、或いは発光体と組み合わせることにより画像表示装置、または放出された電子が発生させるイオン風を利用することにより冷却装置等に、好適に適用することができる。
1 電子放出素子
2 基板(電極基板)
3 上部電極(薄膜電極)
4 微粒子層(電子加速層)
5 絶縁体微粒子
6 導電微粒子
7 電源(電源部)
8 対向電極
9 絶縁体スペーサ
10 電子放出装置
11 感光体
21 加速電極
22 レジスト
31,31’,31” 自発光デバイス
32,32’ 蛍光体
33 ITO膜
34 ガラス基板
35 電源
36 発光部
41 被冷却体
42 送風ファン
51 開口部
90 帯電装置
100 電子線硬化装置
140 画像表示装置
150 冷却装置
160 冷却装置
330 液晶パネル

Claims (12)

  1. 電極基板と薄膜電極と該電極基板および該薄膜電極に挟持された電子加速層とを有し、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧が印加されると、上記電子加速層で電子を加速させて、上記薄膜電極から該電子を放出させる電子放出素子であって、
    上記電子加速層には、導電微粒子と該導電微粒子の一次平均粒径より大きい一次平均粒径の絶縁体微粒子とが含まれており、
    上記電子加速層において上記導電微粒子の凝集体の平均粒径は、0.35μm以下となっていることを特徴とする電子放出素子。
  2. 上記導電微粒子は、抗酸化力が高い導電体であることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  3. 上記導電微粒子は、貴金属であることを特徴とする請求項2に記載の電子放出素子。
  4. 上記導電微粒子の一次平均粒径は、3〜10nmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  5. 電極基板と、薄膜電極と、該電極基板および該薄膜電極に挟持され、導電微粒子と該導電微粒子の一次平均粒径より大きい一次平均粒径の絶縁体微粒子とを含む電子加速層と、を有し、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧が印加されると、上記電子加速層で電子を加速させて、上記薄膜電極から該電子を放出させる電子放出素子の製造方法であって、
    上記電極基板上に、上記導電微粒子のナノコロイド液を液体の状態で用いて上記電子加速層を形成する電子加速層形成ステップを含むことを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  6. 上記導電微粒子はコロイド状態での平均粒径が0.35μm以下となっている請求項5に記載の電子放出素子の製造方法。
  7. 上記電子加速層形成ステップでは、上記導電微粒子のナノコロイド液と上記絶縁体微粒子とを分散した溶媒とを混合し、上記電極基板上に塗布することを特徴とする請求項5または6に記載の電子放出素子の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子放出素子と、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧を印加する電源部と、を備えたことを特徴とする電子放出装置。
  9. 請求項8に記載の電子放出装置と発光体とを備えたことを特徴とする自発光デバイス。
  10. 請求項9に記載の自発光デバイスを備えたことを特徴とする画像表示装置。
  11. 請求項2に記載の電子放出素子と、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧を印加する電源部と、を有する電子放出装置を備え、該電子放出装置から電子を放出させて被冷却体を冷却させることを特徴とする冷却装置。
  12. 請求項2に記載の電子放出素子と、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧を印加する電源部と、を有する電子放出装置を備え、該電子放出装置から電子を放出させて感光体を帯電させることを特徴とする帯電装置。
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