JP2010244735A - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents

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壽宏 田村
Chikao Ichii
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Abstract

【課題】
MIM型の電子放出素子の電子放出層に効率的に電界強度を印加し、電子放出効率を向上させること。
【解決手段】
第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子であって、前記導電性部材間には、第一の誘電体部材と、第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子を備え、前記第一の導電性部材における表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.05(μm)以上0.4(μm)以下に設定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電圧を印加することにより電子を放出させることができる電子放出素子および自己組織化作用を用いたそれらの製造方法に関するものである。
従来の電子放出素子として、スピント(Spindt)型電極、カーボンナノチューブ(CNT)型電極などが知られている。このような電子放出素子は、例えば、FED(Field Emision Display)の分野に応用検討されている。このような電子放出素子は、尖鋭形状部に電圧を印加して約1GV/mの強電界を形成し、トンネル効果により電子放出させる。
また、かねてから、このような電子放出素子を大気中で動作させたいという要求が存在しており、例えば、帯電装置や静電潜像形成装置に応用しようという発想が存在する。スピント型電極の電子放出素子の例では、これを大気中で動作させ、大気中に電子を放出し、気体分子を電離して荷電粒子としてのイオンを発生させ、静電潜像を形成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、カーボンナノチューブ型電極の電子放出素子を大気中で動作させた研究成果が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、これら2つのタイプの電子放出素子は、上記のように電子放出部表面近傍が強電界であるため、放出された電子は電界により大きなエネルギーを得て気体分子を電離しやすくなる。気体分子の電離により生じた陽イオンは強電界により素子の表面方向に加速衝突し、スパッタリングによる素子破壊が生じるという問題がある。また、大気中の酸素は電離エネルギーより解離エネルギーが低いため、イオンの発生より先にオゾンを発生する。オゾンは人体に有害である上、その強い酸化力により様々なものを酸化することから、素子の周囲の部材にダメージを与えるという問題が存在し、これを避けるために周辺部材には耐オゾン性の高い材料を用いなければならないという制限が生じている。
一方、上記とは別のタイプの電子放出素子として、MIM(Metal Insulator Metal)型やMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電子放出素子が知られている。これらは素子内部の量子サイズ効果及び強電界を利用して電子を加速し、平面状の素子表面から電子を放出させる面放出型の電子放出素子である。これらは素子内部で加速した電子を放出するため、素子外部に強電界を必要としない。従って、MIM型及びMIS型の電子放出素子においては、上記スピント型やCNT型、BN型の電子放出素子のように気体分子の電離によるスパッタリングで破壊されるという問題やオゾンが発生するという問題を克服できる。
例えば、半導体の陽極酸化処理によって形成される多孔質半導体(例えば多孔質シリコン)の量子サイズ効果を利用した上記MIS型に属する電子放出素子として、多孔質半導体中に注入された電子を電界で加速し、表面金属薄膜をトンネル効果によって通過させ真空中に放出させるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、かかる多孔質半導体による電子放出素子は、陽極酸化という極めて簡便・安価な製造方法にて素子を作製できるという大きなメリットがある。
さらに、半導体微粒子もしくは金属微粒子の外側を絶縁層で覆ったものが繰り返し積層された、電子放出素子が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開平6−255168号公報(平成6年9月13日公開) 特開平8−250766号公報(平成8年9月27日公開) 特開平9−7499号公報(平成9年1月10日公開)
山口、他3名「カーボンナノチューブによる画像記録用高効率電子線源の開発」、Japan Hardcopy97論文集、日本画像学会、1997年7月、p221−224
しかし、MIM型やMIS型の上記従来の電子放出素子を、大気中で動作させた場合、様々な気体分子が素子表面に吸着し、半導体の電気的特性などを変質させ、電子放出電流が減少するという問題が新たに発生している。特に大気中の酸素による半導体の酸化劣化は避けられず、大きな問題となっている。
これら素子内部で電子を加速するMIM型やMIS型の従来の電子放出素子の表面は、素子内部に電界を印加する上部電極の役割を担っており、一般的に金属薄膜で構成されている。また、MIM型やMIS型の従来の電子放出素子の表面は、素子内部で加速された電子を、金属薄膜をトンネルして真空中に放出させる役割をも担っており、金属薄膜の膜厚が薄いほど素子内部で加速された電子のトンネル確率が高くなり、電子放出量が多くなる。そのため、金属薄膜の膜厚は薄い方が好ましいと言えるが、金属薄膜の膜厚が薄すぎると、緻密な膜を形成することが困難であるため、気体分子のバリア効果がほとんどない。従って、大気中で電子放出素子を動作させた場合、気体分子が内部の半導体層に侵入し、半導体の電気的特性を変質させ、電子放出電流が減少するという課題が発生する。
この結果、半導体微粒子もしくは金属微粒子を核とし、その外側を絶縁層で覆った微粒子が繰り返し積層された、電子放出素子では、大気中において安定して電子を発生させることはできず、特に絶縁層が半導体微粒子もしくは金属微粒子の酸化膜により構成されている場合では、大気中の酸素により微粒子の酸化が進み、酸化膜の膜厚が増加する。この酸化膜の膜厚増加は電子のトンネル確率を低下させ、最終的には電子放出が止まってしまう。
また一方で、電子がトンネルできる程度の膜厚の絶縁膜は抵抗値がとても低く、素子内を電流が多く流れすぎることにより絶縁破壊を起こしたり、発熱が生じたりすることによって微粒子や絶縁層にダメージを与え、素子が破壊されてしまうという課題がある。
また、従来技術に示す電子放出素子は、電子放出素子の効率が悪く、この電子放出素子をフィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源に利用した場合に、製造工程が複雑で、消費電力が多く、実用に耐えうるものではなかった。
われわれは、特願2008−295722号に代表される新たな原理に基づく電子放出素子を提案している。この技術は、常温で金属微粒子を含む溶液を塗布し、乾燥する簡単な工程で、検討を行なったところ、新たな電子放出原理で電子が放出していることを見出した。
この素子の電子放出効率向上を試み、効率的に電界強度を印加することにより電子を効率的に加速するためには、電界を集中させ、金属粒子に高いエネルギー密度を与えることが必要でこのような仮説の基、第一の導電性部材の凹凸が影響していることを新たに見出し、その最適値について調べることにした。
以上のことから、さらに高効率の電子放出素子を作成することを目標にし、高温で焼成する必要がなく、製造方法が簡単で、低消費電力のフィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源として適用でき、真空中だけでなく大気圧中でも安定した電子放出を可能とし、かつ電子放出に伴うオゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制できる電子放出素子を提供することにある。

本発明の電子放出素子は、上記課題を解決するために、第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加し、その導電性部材間には、第一の誘電体部材と、第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子を備え、前記第一の導電性部材における表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.05(μm)以上0.4(μm)以下であることを特徴としている。また、絶縁性部材は複数層形成されていてもよく、この場合は、最下層部がと第一の導電性部材の突起間に配置されていることになる。
この構成によれば、従来のスピント型電極、CNT型電極に比べ、3次元空間を有効に利用することができ、各々のナノ粒子に強力な電界を印加することができるため、電子を効率よく発生させることができる。その結果、電子放出素子の効率を向上させることができる。また、第一の導電性部材に特定間隔で突起を設ければ、絶縁性部材が所望の位置に整列しやすくなる。そのため、導電性部材上に均一に絶縁性部材が配置されるようになり電子が放出される位置が決定される。また、第一の導電性部材の突起部に電界集中しやすくなり、かつ、ナノ粒子が第一の絶縁性部材上で突起状に形成されているためナノ粒子にも電界集中しやすく、トータルとして電子放出素子としての効率も向上する。
また、本発明の電子放出素子は、MIM型の電子放出構造であり、真空中だけでなく大気圧中で動作させても放電を伴わないためオゾンやNOx等の有害物質をほぼ生成せず、電子放出素子が酸化劣化しない。そのため、本発明の電子放出素子は、寿命が長く大気中でも長時間連続動作をさせることができる。よって、本発明により、真空中だけでなく大気圧中でも安定して電子を放出でき、オゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制した電子放出素子を提供することができる。
さらに上記に説明を行なった電子放出素子は、第一の金属微粒子の周囲に、薄膜の絶縁部材を被覆することで、金属微粒子の酸化生成反応をより起こし難くした状態にでき、大気圧状態での素子の使用を可能にする。また、上記絶縁性部材および絶縁皮膜金属微粒子は、電子放出層における抵抗値および電子の生成量を調整することができるため、電子放出層を流れる電流値と電子放出量の制御を可能とする。さらに、上記絶縁性部材は、電子放出層を流れる電流により生じるジュール熱を効率良く逃がす役割も有することができるため、電子放出素子が熱で破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記ナノ粒子を成す導電体は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいてもよい。このように、上記ナノ粒子を成す導電体が、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいることで、金属微粒子の、大気中の酸素による酸化などをはじめとする素子劣化を、より効果的に防ぐことができる。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記ナノ粒子の平均径は、導電性を制御する必要から、上記絶縁性部材の大きさよりも小さくなければならず、3〜20nmであるのが好ましい。このように、上記ナノ粒子の平均径を、上記絶縁性部材の微粒子径よりも小さく、好ましくは3〜20nmとすることにより、電子放出層内で、金属微粒子による導電パスが形成されず、電子放出層内での絶縁破壊が起こり難くなる。また原理的には不明確な点が多いが、粒子径が上記範囲内の金属微粒子を用いることで、電子が効率よく生成される。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記絶縁性部材は、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいてもよい。または有機ポリマーを含んでいてもよい。上記絶縁性部材が、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、あるいは、有機ポリマーを含んでいると、これら物質の絶縁性が高いことにより、上記電子放出層の抵抗値を任意の範囲に調整することが可能となる。特に、絶縁性部材として酸化物(SiO、Al、及びTiO)を用い、ナノ粒子として抗酸化力が高い導電体を用いる場合には、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化をより一層発生し難くなるため、大気圧中でも安定して動作させる効果をより顕著に発現させることができる。
ここで、上記絶縁性部材は微粒子であってもよく、その平均径が10〜1000nmであるのが好ましく、12〜110nmであるのがより好ましい。この場合、粒子径の分散状態は平均粒径に対してブロードであっても良く、例えば平均粒径50nmの微粒子は、20〜100nmの領域にその粒子径分布を有していても問題ない。上記微粒子である絶縁性部材の平均径を好ましくは10〜1000nm、より好ましくは12〜110nmとすることにより、上記絶縁性部材の大きさよりも小さい上記金属微粒子の内部から外部へと効率よく熱伝導させて、素子内を電流が流れる際に発生するジュール熱を効率よく逃がすことができ、電子放出素子が熱で破壊されることを防ぐことができる。さらに、上記電子放出層における抵抗値の調整を行いやすくすることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子放出層における上記絶縁性部材と第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子の割合が、重量比で4:1〜19:1であるのが好ましい。上記重量比率の範囲内であると、上記電子放出層内の抵抗値を適度に上げることができ、大量の電子が一度に流れることで電子放出素子が破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子放出層の層厚は、12〜6000nmであるのが好ましく、300〜6000nmであるのがより好ましい。上記電子放出層の層厚を、好ましくは12〜6000nm、より好ましくは300〜6000nmとすることにより、電子放出層の層厚を均一化すること、また層厚方向における電子放出層の抵抗調整が可能となる。この結果、電子放出素子表面の全面から一様に電子を放出させることが可能となり、かつ素子外へ効率よく電子を放出させることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記薄膜電極は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいてもよい。上記薄膜電極に、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つが含まれることによって、これら物質の仕事関数の低さから、電子放出層で発生させた電子を効率よくトンネルさせ、電子放出素子の外に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
本発明の電子放出素子の第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子の絶縁被膜は、上記構成に加え、電子をトンネルさせることが可能な厚みであることを特徴としている。電子がトンネル可能な厚みでなければ、電子を導体から外部に放出させることはできず、電子放出素子としての基本的機能が実現できないためである。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子の絶縁被膜は、アルカン、アルコール、脂肪酸、アルカンチオール、炭化水素系シラン化合物、有機系界面活性剤の少なくとも1つを含んでいてもよい。このような有機材料で、絶縁皮膜されていることで、素子作成時のナノ粒子の分散液中での分散性向上に貢献するため、ナノ粒子の凝集体が元と成る電流の異常パス形成を生じ難くする他、絶縁性部材の周囲に存在する金属微粒子自身の酸化に伴う粒子の組成変化を生じないため、電子放出特性に影響を与えることがない。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
本発明の電子放出素子は、上記のように、第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加し、その導電性部材間には、第一の誘電体部材と、第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子を備え、前記第一の導電性部材における表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.05(μm)以上0.4(μm)以下であることを特徴としている。第一の導電性部材と第二の導電性部材との間には、電子放出層は第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子が3次元的に点在あるいは一部が凝集して形成されていることになっている。この薄膜の層であり、この電子放出層に電圧を印加すると、電子放出層には、印加電圧の形成する強電界により電子がナノ金属微粒子内から放出され、絶縁皮膜を電子がトンネルすることにより、電子放出層から電子となって放出される。
このように構成された電子放出素子は、従来のスピント型電極、CNT型電極に比べ、3次元空間を有効に利用することができ、第一の導電部材からに強力な電界を印加することができるため、電子を効率よく発生させることができる。その結果、電子放出素子の効率を向上させることができ、低消費電力化が図れる。
本発明の電子放出素子は、真空中だけでなく大気圧中で動作させても放電を伴わないためオゾンやNOx等の有害物質をほぼ生成せず、電子放出素子が酸化劣化しない。そのため、本発明の電子放出素子は、寿命が長く大気中でも長時間連続動作をさせることができる。よって、本発明により、真空中だけでなく大気圧中でも安定して電子を放出でき、オゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制した電子放出素子を提供することができる。
本発明の一実施形態の電子放出素子の構成を示す模式図である。 図1の電子放出素子における電子放出層付近の断面の拡大図である。 絶縁性部材に第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子を形成させる工程を説明した説明図である。 電子放出実験の測定系を示す図である。 真空中における電子放出電流を示すグラフを表す図である。 真空中における電子放出時の素子内電流を示すグラフを表す図である。 大気中における電子放出電流及び素子内電流を示すグラフを表す図である。 大気中における電子放出電流及び素子内電流の経時変化を示す図である。
以下、本発明の電子放出素子の実施形態について、図1〜図8を参照しながら具体的に説明する。なお、以下に記述する実施の形態および実施例は本発明の具体的な一例に過ぎず、本発明はこれらよって限定されるものではない。
(電子放出素子の構成)
本発明の電子放出素子の構成について説明する。
図1に示すように、電子放出素子1は、第一の導電性部材2上に絶縁体5と絶縁皮膜金属微粒子6(以下電子放出層4という)と、第一の導電性部材2に対向するように第二の導電性部材3を備えるとともに、電源7と、対向電極3とが配置されている。
電子放出層4は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3とにより挟持されている。また、電源7は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間に電圧を印加する。電子放出層4は、後述するように少なくとも絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体が複数個所に形成されている。電子放出素子4は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間に電圧が印加されることで、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間(すなわち、電子放出層4)で電子を加速し、対向電極3に向かって第二の導電性部材3から電子を放出させる。
以上のような基本構成を基に、それぞれの部材および電子放出原理について、図1の電子放出層4の内部をモデル化した状態を図2に示して詳細に説明を行なう。
(第一の導電性部材)
第一の導電性部材となる基板2は、電子放出素子の支持体の役割を担う。そのため、ある程度の強度を有し、直に接する物質との接着性が良好で、適度な導電性を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。例えばSUSやTi、Cu等の金属基板、SiやGe、GaAs等の半導体基板、ガラス基板のような絶縁体基板、プラスティック基板等が挙げられる。例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、その電子放出層4との界面に金属などの導電性物質を電極として付着させることによって、第一の導電性部材となる基板2として用いることができる。上記導電性物質としては、導電性に優れた貴金属系材料を、マグネトロンスパッタ等を用いて薄膜形成できれば、その構成材料は特に問わない。また、酸化物導電材料として、透明電極に広く利用されているITO薄膜も有用である。また、強靭な薄膜を形成できるという点で、例えば、ガラス基板表面にTiを200nm成膜し、さらに重ねてCuを1000nm成膜した金属薄膜を用いてもよいが、これら材料および数値に限定されることはない。
(第二の導電性部材)
第二の導電性部材3は、電子放出層4内に電圧を印加させるものである。そのため、電圧の印加が可能となるような材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子放出層4内で加速され高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーロス無く透過させて放出させるという観点から、仕事関数が低くかつ薄膜を形成することが可能な材料であれば、より高い効果が期待できる。このような材料として、例えば、仕事関数が4〜5eVに該当する金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、パラジウムなどが挙げられる。中でも大気圧中での動作を想定した場合、酸化物および硫化物形成反応のない金が、最良な材料となる。また、酸化物形成反応の比較的小さい銀、パラジウム、タングステンなども問題なく実使用に耐える材料である。また第二の導電性部材3の膜厚は、電子放出素子1から外部へ電子を効率良く放出させる条件として重要であり、10〜55nmの範囲とすることが好ましい。第二の導電性部材3を平面電極として機能させるための最低膜厚は10nmであり、これ未満の膜厚では、電気的導通を確保できない。一方、電子放出素子1から外部へ電子を放出させるための最大膜厚は100nm程度であり、これを超える膜厚では第二の導電性部材3で電子の吸収あるいは反射による電子放出層4への再捕獲が多く発生することになり、低消費電力で素子駆動ができなくなる。
(金属微粒子)
金属微粒子6の金属種としては、電子を生成するという動作原理の上ではどのような金属種でも用いることができる。ただし、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、抗酸化力が高い金属である必要があり、貴金属が好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケルといった材料が挙げられる。このような金属微粒子6は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて作成可能であり、応用ナノ研究所が製造販売する銀金属微粒子等の市販の金属微粒子粉体も利用可能である。
また、金属微粒子6の平均径は、導電性を制御する必要から、以下で説明する絶縁体の微粒子5の大きさよりも小さくなければならず、3〜10nmであるのがより好ましい。このように、金属微粒子6の平均径を、絶縁体の微粒子5の粒子径よりも小さく、好ましくは3〜20nmとすることにより、微粒子層4内で、金属微粒子6による導電パスが形成されず、微粒子層4内での絶縁破壊が起こり難く、電子が効率よく生成される。
(絶縁体)
絶縁体の微粒子5に関しては、その材料は絶縁性を持つものであれば特に制限なく用いることができる。ただし、後述の実験結果の通り微粒子層4を構成する微粒子全体における絶縁体の微粒子5の重量割合は80〜95%、すなわち金属微粒子との割合は4:1〜19:1が好ましい。またその大きさは、金属微粒子6に対して優位な放熱効果を得るため、金属微粒子6の直径よりも大きいことが好ましく、絶縁体の微粒子5の直径(平均径)は10〜1000nmであることが好ましく、12〜110nmがより好ましい。従って、絶縁体の微粒子5の材料はSiO、Al、TiOといったものが実用的となる。ただし、表面処理が施された小粒径シリカ粒子を用いると、それよりも粒子径の大きな球状シリカ粒子を用いるときと比べて、溶媒中に占めるシリカ粒子の表面積が増加し、溶液粘度が上昇するため、微粒子層4の膜厚が若干増加する傾向にある。また、絶縁体の微粒子5の材料には、有機ポリマーから成る微粒子を用いてもよく、例えば、JSR株式会社の製造販売するスチレン/ジビニルベンゼンから成る高架橋微粒子(SX8743)、または日本ペイント株式会社の製造販売するスチレン・アクリル微粒子のファインスフェアシリーズが利用可能である。ここで、絶縁体の微粒子5は、2種類以上の異なる粒子を用いてもよく、また、粒径のピークが異なる粒子を用いてもよく、あるいは、単一粒子で粒径がブロードな分布のものを用いてもよい。
また絶縁体の成す役割は微粒子形状に依存しないため、上記絶縁性部材に有機ポリマーから成るシート基板や、何らかの方法で絶縁性部材を塗布して形成した絶縁体層を用いてもよい。但しこのシート状基板や絶縁体層には厚さ方向を貫通する複数の微細孔を有する必要がある。このような用件を満たすシート状基板材料として、例えば、ワットマンジャパン株式会社の製造販売するメンブレンフィルターニュークリポア(ポリカーボネート製)が有用である。
(電子放出層)
電子放出層4は、上記絶縁体5および金属微粒子6を含んでいる。薄いほど強電界がかかるため低電圧印加で電子を加速させることができるが、電子放出層の層厚を均一化できること、また層厚方向における電子放出層の抵抗調整が可能となることなどから、微粒子層4の層厚は、100〜1000nm、より好ましくは300〜6000nmであるとよい。100nm未満では、電極間の接触あるいは高電圧印加による絶縁破壊が生じることがあり、6000nm以上では、電子放出に必要な高電界を印加することができなくなり、高電界を印加すれば消費電力が高くなる。
(電子放出原理)
電子放出の原理について、電子放出層4をモデル化した状態の図2により説明する。絶縁体粒子5上に絶縁皮膜された金属微粒子6は自己組織化によって形成される。その原理を以下に示す。
図3に電子放出層の作成プロセスを示す。絶縁体及び絶縁皮膜金属微粒子を溶媒に溶かし、超音波洗浄器により金属微粒子を分散させ、第一の導電性部材上に塗布を行なう。その後、室温で放置し、ゆっくりと溶媒を蒸発させると、溶媒の蒸発時に自己組織化作用により、絶縁皮膜された金属微粒子が絶縁体上に略均一な間隔を保って形成される。以上のような簡単なプロセスで、高温処理が必要なく電子放出層が形成できる。
原理的には、図2に示すように、平均粒径の小さな粒子(絶縁皮膜金属微粒子)は、金属微粒子より平均粒径の大きな粒子(絶縁体粒子)に付着するほうがエネルギー的に安定である。このような金属微粒子の挙動を利用することにより、自己組織的に絶縁体に絶縁皮膜金属微粒子同士が間隔を保って配置した状態を作る。これは、粒子間の静電斥力によって粒子同士が反発し、互いに距離を置くよう分布しているため、絶縁体の周囲に絶縁皮膜金属微粒子が配置された構成に形成できる。このような原理に基づき、導電性部材間に絶縁体粒子の周囲に絶縁皮膜金属微粒子を高温の焼成などが必要なく、室温で放置する自己組織化作用で、均質に付着形成させる。このプロセスで、絶縁皮膜金属微粒子は突起物として3次元的に導電性部材間に略均質に形成されることになる。ここで、略均質という表現はそれぞれの粒子がSEM観察時に、ほぼ絶縁体粒子に均一に付着していることを意味し、厳密に付着状態を定義するものではない。後述するように、付着物の一部は凝集されていても良い。従来技術で示したような現在提案されているスピント型電極やCNT電極では、電子放出箇所は空間を平面的に利用しているだけであり、電極間の空間を最大限利用していない。導電性部材間に電圧を印加すると、局所的な突起物は電界集中により、高電圧が印加されることになり、3次元的に形成されたそれぞれの突起から電子が放出される。この原理は、絶縁皮膜金属微粒子表面に強電界が掛かると、真空との境界でポテンシャル障壁が傾斜を持つが、強電界になると障壁が極めて薄くなり、トンネル効果で電子が真空中に放出されることによると考えられる。
具体的には、まず、基板2上に、絶縁体の微粒子5と、金属微粒子6とを分散させた分散溶液をスピンコート法を用いて塗布することで、微粒子層4を形成する。ここで、分散溶液に用いる溶媒としては、絶縁体の微粒子5と、金属微粒子6とを分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。
特に、絶縁皮膜金属微粒子を分散するためには、無極性溶媒(比誘電率の小さな溶媒。ヘキサンなど)の方が好ましい。ただし、水などは極性溶媒の代表格であるが、コストメリットがあるので、使用することができる。無極性溶媒を使用する理由としては、溶媒中で、金属微粒子がもつ電荷等で引き合わないようにするためには、金属微粒子がもつ電荷を遮蔽するような状態の方がよいからである。また、溶媒の粘度も金属微粒子の動きやすさに影響してくるので、分散性に影響する。特に、比誘電率が5以下の溶媒(ヘキサン 1.9、トルエン 2.3、キシレン 2.3)が好ましい。
また、金属微粒子6の分散性を向上させる目的で、事前処理としてアルコラート処理を施すとよい。スピンコート法による成膜、乾燥、を複数回繰り返すことで所定の膜厚にすることができる。微粒子層4は、スピンコート法以外に、例えば、滴下法、スプレーコート法等の方法でも成膜することができる。そして、電子放出層4上に薄膜電極3を成膜する。薄膜電極3の成膜には、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いればよい。
すなわち、絶縁体及び絶縁皮膜金属微粒子を溶媒に溶かし、超音波洗浄器により金属微粒子を分散させ、第一の導電性部材上に塗布を行なう。その後、室温で放置し、ゆっくりと溶媒の除去を行なう。以上のような簡単なプロセスで、高温処理が必要なく電子放出層が形成できる。
ここで、A点での電界強度はマクロ的には、E=V(印加電圧)/d(素子間距離)で与えられ、ミクロ的には電界集中が起こっているため、電界集中が起こっている部分では高電界状態となっている。またB点が第一の導電性部材と第二の導電性部材の中央に位置していると仮定すると、B点にかかっている電界強度は、A点とB点が同形状であれば、A点の1/2となる。したがって、図2のモデルに示すように、電界集中が3次元空間内で、多数発生するような構成とすることにより、従来技術に示したスピント型の平面的な電極構造より、効率的に電子の放出を行なえる。さらに、B点における電子のエネルギーは、A点での電子エネルギーが重畳される。A点での高エネルギーを持った電子は、B点で、さらに前記電界集中によるエネルギーを得て最終的には上部の電極の貫通箇所あるいはトンネルすることにより電子が電子放出素子から外部に放出されることになる。
ここで、第一の導電性部材と、第二の導電性部材の間隔は絶縁破壊が起こらない程度に短いほうがより効率よく、電子放出が可能となるため好ましい。高電圧を印加でき、電界集中が発生しやすくなり、低消費電力の素子を作成できるからである。
また平均粒径の異なる数ナノ程度のシリカ微粒子を上記説明した構成に加えることにより自発光素子としても利用でき、上記に示した2種類の粒子に限定されるわけではない。複数種類の粒子径、材質などを加えることによりさまざまな電子デバイスとして上記原理を利用可能であることは容易に理解できるため、本発明の範囲に含まれる。
以下、上記に説明した電子放出の原理に基づいて、本発明の実施例について説明を行なっていく。
実施例1として、本発明に係る電子放出素子を用いた電子放出実験について図4〜9を用いて説明する。なお、この実験は実施の一例であって、本発明の内容を制限するものではない。
本実施例では、微粒子層4における絶縁体の微粒子5と絶縁体物質(付着物質)を表面に付着させた金属微粒子6との配合を変えた5種類の電子放出素子1を作製した。
基板2には30mm角のSUSの基板を使用し、この基板2上にスピンコート法を用いて微粒子層4を堆積させた。この実験に使用した30mm角のSUS304ステンレス鋼板(C:0.06質量%,Si:0.06質量%,Si:0.55質量%,Mn:0.79質量%,Ni:8.08質量%,Cr:18.3質量%,Cu:0.05質量%)を使用し、大気焼鈍−酸洗及び光輝焼鈍により表面粗さが異なる複数の板材を用意した。この表面粗さを、JIS B0601に規定されている中心線平均粗さRaで測定した。実施例1で使用したSUS基板のRaは0.13μmであった。スピンコート法に用いた絶縁体の微粒子5及び絶縁体物質を表面に付着させた金属微粒子6を含んだ溶液は、トルエンを溶媒として各粒子を分散したものである。トルエン溶媒中に分散させた絶縁体の微粒子5と絶縁体物質を表面に付着させた金属微粒子6の配合割合は、絶縁体の微粒子5および金属微粒子6の投入総量に対する絶縁体の微粒子5の重量比率を70、80、90、95%と、それぞれ成るようにした。
絶縁体物質を表面に付着させた金属微粒子6として、銀ナノ粒子(平均径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)を用い、絶縁体の微粒子5として、球状シリカ粒子(平均径110nm)を用いた。
各微粒子を分散させた溶液は、次のように作成する。10mLの試薬瓶にトルエン溶媒を3mL入れ、その中に0.5gのシリカ粒子を投入する。ここで試薬瓶を超音波分散器にかけ、シリカ粒子の分散を行う。この後0.055gの銀ナノ粒子を追加投入し、同様に超音波分散処理を行う。こうして絶縁体の微粒子(シリカ粒子)の配合割合が90%となる分散溶液が得られる。
スピンコート法による成膜条件は、分散溶液の基板への滴下後に、500RPMにて5sec続いて3000RPMにて10sec、基板の回転を行う事とした。この成膜条件を3度繰り返し、基板上に3層堆積させた後、室温で自然乾燥させた。膜厚は約1500nmであった。
基板2の表面に微粒子層4を形成後、マグネトロンスパッタ装置を用いて上部電極3を成膜する。成膜材料として金を使用し、上部電極3の層厚は12nm、同面積は0.28cmとした。
上記のように作製した電子放出素子について、図4に示すような測定系を用いて電子放出実験を行った。図4の実験系では、電子放出素子1の上部電極3側に、絶縁体スペーサ9を挟んで対向電極8を配置させる。そして、電子放出素子1および対向電極8は、それぞれ、電源7に接続されており、電子放出素子1にはV1の電圧、対向電極8にはV2の電圧がかかるようになっている。このような実験系を1×10−8ATMの真空中に配置して電子放出実験を行い、さらに、このような実験系を大気中に配置して電子放出実験を行った。これらの実験結果を図5〜8に示す。
図5は、真空中にて電子放出実験した際の電子放出電流を測定した結果を示すグラフである。ここで、V1=1〜10V、V2=50Vとした。図4に示すように、1×10−8ATMの真空中において、シリカ粒子の重量比率が、70%では電子放出が見られないのに対し、80、90、95%では電子放出による電流が観測された。その値は、10Vの電圧印加で10−7A程度であった。
図6は、上記と同様、真空中において電子放出実験した際の素子内電流を測定した結果を示すグラフである。ここでも、上記と同様、V1=1〜10V、V2=50Vとした。図5から、シリカ粒子の割合が70%では抵抗値が足りずに絶縁破壊を起こしている(電流値が振り切れ、グラフ上部に張り付いている)ことがわかる。金属微粒子の配合比が多くなると、金属微粒子による導電パスが形成され易くなり、微粒子層4に低電圧で大電流が流れてしまう。このため、弾道電子発生の条件が成立しないと考えられる。
図7は、シリカ粒子の割合が90%の電子放出素子を用いて、V1=1〜15V,V2=200Vとして、大気中で電子放出実験した際の、電子放出電流および素子内電流を測定した結果を示すグラフである。
図7に示すように、大気中で、V1=15Vの電圧印加で10−10A程度の電流が観測された。
さらに、図8は、図7と同様シリカ粒子の割合が90%の電子放出素子を用いて、ここでは、V1=15V,V2=200Vの電圧印加で大気中にて連続駆動させた際の、電子放出電流および素子内電流を測定した結果を示すグラフである。図7に示す通り、6時間経っても安定的に電流を放出し続けた。
実施例1〜3では絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子(平均径100nm)を用いたが、本実施例ではシリカ粒子径を50nmでスピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで3層堆積させた。膜厚は約490nmであった。電子放出実験を行なったが、電子放出の値は10Vの電圧印加で10−8A程度であった。
実施例1〜3では絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子(平均径100nm)を用い、SUS基板を表面粗さの粗いものに変更して同様の実験を実施した。この表面粗さを、JIS B0601に規定されている中心線平均粗さRaで測定した。Raは0.41μmであった。本実施例ではでスピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで3層堆積させた。膜厚は約620nmであった。電子放出実験を行なったが、電子放出の値は10Vの電圧印加で10−8A程度であった。
実施例1〜3では、基板はSUSを用い、中心線平均粗さRaが0.13μmであったが、本実施例では電解研磨を施したSUS基板(Raが0.05)を用い、上記実施例と同様に絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子(平均径100nm)で、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで3層堆積させた。電子放出実験を行なったが、電子放出の値は10Vの電圧印加で10−7A程度であった。
実施例4と同様に、本実施例では電解研磨を施したSUS基板(Raが0.05)を用い、絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子の平均粒径を50nmに変更したで、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで3層堆積させた。電子放出実験を行なったが、電子放出の値は10Vの電圧印加で10−8A程度であった。
(比較例1)
実施例1〜5では、基板はSUSを用い、中心線平均粗さRaが0.13μmであったが、本比較例では、ガラス基板上にAuをスパッタリングし、電極とした。中心線平均粗さは約3nm(0.003μm)であった。この基板を使用し、シリカ粒子径を100nmでスピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで3層堆積させた。膜厚は約500nmであった。電子放出実験を行なったが、電子放出の値は10Vの電圧印加で10−9A程度であった。また数回実験を行なったが、中には電子放出が確認できないものもあった。
(比較例2)
シリカの割合が90%の電子放出素子を用いて、上記実施例と同様に、電子放出実験を行なった。上記実施例1と異なる点は、第一の導電性部材における表面粗さが0.52μmであり、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで3層堆積させ、焼成は行わずに室温で自然乾燥させた。膜厚は約650nmであった。実験を行なったが、絶縁破壊が発生し、電子放出は観測できなかった。
(比較例3)
シリカの割合が90%の電子放出素子を用いて、上記実施例と同様に、電子放出実験を行なった。上記実施例1と異なる点は、第一の導電性部材における表面粗さが0.52μmであり、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで5層堆積させ、焼成は行わずに室温で自然乾燥させた。膜厚は840nmであった。実験を行なったが、電子放出はまったく見られなかった。
以上の実施例及び比較例の結果を整理したものを表1に示し、考察を行なう。











実施例1〜5の結果及び比較例1結果から、第一の導電性部材の適切な範囲は、絶縁体粒径(シリカ粒子径)にあまり関係なく、0.05μmから0.41μmであるといえる。
表面粗さが小さい比較例1では、電子放出が見られず、あるいは電子放出が観測できても、小さい値であった。これは、基板が平坦であると、電界集中が発生せずに、電子放出が見られない。また、電子放出させようとすれば、大きな印加電圧が必要となり、効率的であるとはいえない。仮にこの素子を用いて、ディスプレイなどを作成した場合には、消費電力が高くなり、不経済である。
また、比較例2では、Raが0.52μmであると、第一の導電性部材と第二の導電性部材の距離が小さくなる。電子放出素子としては、第二の導電性部材が薄膜であるため、絶縁破壊がおきやすく、電子放出素子としては不安定で均一に製造することは困難といわざるを得ない。
したがって、第一の導電性部材は適度に凹凸を有している必要がありその最適値は0.05μm〜0.4μmの範囲であることがわかった。
本発明は、電子放出素子に関するものである。適用例として、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源として適用できる。
1 面電子放出源
2 第一の導電性部材(電極基板)
3 第二の導電性部材(薄膜電極)
4 電子放出層
5 絶縁体の微粒子(第一の誘電体部材)
6 金属微粒子(第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子)
7 電源(電源部)
8 対向電極
9 絶縁体スペーサ

Claims (9)

  1. 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子において、
    前記導電性部材間には、第一の誘電体部材と、第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子を備え、前記第一の導電性部材における表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.05(μm)以上0.4(μm)以下であることを特徴とする電子放出素子。
  2. 上記第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つの物質を含んでいることを特徴とする請求項1記載の電子放出素子。
  3. 上記第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子の平均径は、3〜20nmであることを特徴とする、請求項2記載の電子放出素子。
  4. 上記第一の誘電体部材は、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、または有機ポリマーを含んでいることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の電子放出素子。
  5. 上記第一の誘電体部材が微粒子であり、その平均径は、50〜110nmであることを特徴とする、請求項4記載の電子放出素子。
  6. 上記電子放出素子における上記第一の誘電体部材と第二の誘電体部材によって皮膜された金属微粒子の割合が、重量比で4:1〜19:1であることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の電子放出素子。
  7. 上記第一の導電性部材と第二の導電性部材の間隔は、100〜1000nmであることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の電子放出素子。
  8. 上記第二の導電性部材は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の電子放出素子。
  9. 上記絶縁皮膜は、アルカン、アルコール、脂肪酸、アルカンチオール、炭化水素系シラン化合物、有機系界面活性剤の少なくとも1つを含んでいること特徴とする、請求項1〜8に記載の電子放出素子。
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