JP2010272209A - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents

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壽宏 田村
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Abstract

【課題】 素子間で電子放出量のばらつきが大きい結果となっていた。また、導電部材は薄膜であるため膜強度が弱く、絶縁体に大きな粒子を使用すると膜の凹凸形状が直接薄膜導電膜の形状として反映されるため、導電膜が破断する場合もあり、破断すると第一の導電部材と第二の導電部材が近接あるいは接触したり、うまく電子が流れない場合に電荷がチャージされ、絶縁破壊を起こすという問題もあった。そのため、素子の信頼性が低いという問題があった。
【解決手段】 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子であって、前記第一の導電性部材と第二の導電性部材間に、絶縁体粒子を有する電子放出層が形成され、電子放出層は複数の層からなり、第一の導電性部材上に形成される第一の電子放出層は第二の電子放出層より平均粒径の小さい絶縁体粒子を用いている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電圧を印加することにより電子を放出させることができる電子放出素子に関するものである。
電界放出表示素子としては、従来から、先端を鋭く尖らせたシリコンあるいはモリブデンといったマイクロエミッタが知られている。しかし、導電性ファイバであるカーボンナノチューブ(Carbon Nano-Tube: CNT)は、ナノレベルの径を有し、高アスペクト比、高電流密度、高靱性、発達した黒鉛構造に起因する高耐熱性および高化学的安定性を持つことから、前述の金属性のマイクロエミッタよりも優れた電界放出表示素子として期待されている。
特開2001−35424号公報では、基板11の一方の面に多数の突起12が形成された剣山状部材1を作製する。基板11はAl単結晶板であり、突起12は酸化亜鉛である。この剣山状部材1の突起12側の表面全体に金属薄膜2を形成することにより、多数の突起状の電子放出体31を有する部材3を得る。突起12の先端部は凸状になっていて、その尖鋭度(頂点部分を所定範囲で2次曲線に近似することにより算出される値)を示す曲率半径は10μm以下であり、冷陰極素子の製造方法がスピント型素子よりも簡単であって、発光効率の高い発光装置を得ている(図12参照)。
また、特開2001−236879号公報では、陰極2上にベース層を形成したりまたはしない状態で触媒層9を形成し、スピント法で触媒層上にカーボンナノチューブ10を成長させる方法であって、マイクロキャビティー6の外部の触媒層9’上には非反応層77を形成してマイクロキャビティー6の内部の触媒層9上にだけカーボンナノチューブ10を成長させることによって、分離層7を蝕刻して除去する場合にも外部のカーボンナノチューブ10が存在しないことによりカーボンナノチューブ10がマイクロキャビティー6内に流れ込むことはない。これにより、生産収率が高まると同時に生産コストが低くなることが開示されている(図13参照)。
これらの電子放出原理について説明する。固体表面に強い電界がかかると,電子を固体内に閉じ込めている表面のポテンシャル障壁が低くかつ薄くなり,電子がトンネル効果により,真空中に放出される.電子を放出させるには,10V/cmオーダーの強い電界を表面にかけなければならない。このような強電界を実現するために,通常は先端を鋭く尖らせた金属針が用いられる。その針に負の電圧を掛けると,尖った先端に電界が集中し,必要とされる強電界が得られる。スピント型のエミッタは、この針をエッチングなどの半導体加工技術を応用して、作成される。また、カーボンナノチューブ型エミッタは、CNT素子を樹脂などに混練、塗布により製造され、(1)鋭い先端と大きなアスペクト比を持ち、(2)化学的に安定で、(3)機械的にも強靭で、さらに (4)原子の拡散がなく高温での安定性に優れており、(5)導電性をもつなど,電界放出のエミッタ材料として有利な物理化学的性質を備えているとされている。
特開2001−35424号公報 特開2001−236879号公報
特開2001−35424号公報に示されているスピント型電子放出素子や特開2001−236879号公報に示されているCNT(カーボンナノチューブ)型電子放出素子も製造方法が複雑であった。すなわち、スピント型電極は基板にAlなどの金属を用い、高度なエッチング技術を用いて、先鋭な曲率を有しなければならず、複雑で、高精度の製造技術が必要であった。また、カーボンナノチューブ型の電子放出素子では、カーボンナノチューブを成長させるか、あるいは、成長したカーボンナノチューブをペースト状に塗付し、先鋭な曲率を有するカーボンナノチューブの先端から、電子を放出させていた。しかしながら、カーボンナノチューブを基板上で均一に成長させることが難しく、製造装置も複雑であった。また、カーボンナノチューブをペースト状に塗付する方式では、製造工程は簡単であるが、電子放出位置がばらつくとともに、均一な電子放出電流が得られず、電子放出効率も悪かった。
これらの電子放出素子は、何れも平面的に形成しているため、有効に空間を活用しているとはいえず、投入電力に対する電子放出の効率が悪かった。
また、従来技術に示す電子放出素子は、電子放出素子の効率が悪く、この電子放出素子をフィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源に利用した場合に、製造工程が複雑で、消費電力が多く、実用に耐えうるものではなかった。
われわれは、特願2008−295722号に代表される新たな原理に基づく電子放出素子を提案している。この技術は、常温でナノ粒子を含む溶液を塗布し、乾燥する簡単な工程で、検討を行なったところ、新たな電子放出原理で電子が放出していることを見出した。ナノ粒子は,比表面積,嵩密度が大きいため,前記のようなメリットを有する反面,実用化を目指す場合,ハンドリングが悪く,また凝集体を形成し易いという,取扱い上の難しい問題がある。
このような予測のもとに、実際に調査を行なった。具体的には、同様の電子放出素子の作製条件で素子を作製した場合、素子間で電子放出量のばらつきが大きい結果となっていた。また、第二の導電部材は薄膜であるため膜強度が弱く、絶縁体に大きな粒子を使用すると膜の凹凸形状が直接薄膜導電膜の形状として反映されるため、導電膜が破断する場合もあり、破断すると第一の導電部材と第二の導電部材が近接あるいは接触することによって、絶縁破壊を起こすという問題もあった。そのため、素子の信頼性が低いという問題があった。
したがって、信頼性の高い高効率の電子放出素子を作成することを目標にし、高温で焼成する必要がなく、製造方法が簡単で、低消費電力のフィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源として適用でき、真空中だけでなく大気圧中でも安定した電子放出を可能とし、かつ電子放出に伴うオゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制できる電子放出素子を提供することにある。

本発明の電子放出素子は、上記課題を解決するために、第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子であって、前記第一の導電性部材と第二の導電性部材間に、絶縁体粒子を有する電子放出層が形成され、電子放出層は複数の層からなり、第一の導電性部材上に形成される第一の電子放出層は第二の電子放出層より平均粒径の小さい絶縁体粒子を用いたことを特徴としている。
この構成によれば、従来のスピント型電極、CNT型電極に比べ、3次元空間を有効に利用することができ、各々の突起物(ナノ粒子)に強力な電界を印加することができるため、電子を効率よく発生させることができる。その結果、電子放出素子の効率を向上させることができる。各々のナノ粒子に強電界を印加するために、第一の導電性部材にある程度凹凸を有する導電性基板を利用することができ、その凹凸形状が、第二の導電性部材に反映しないため、第二の導電性部材が安定的に作成することができ、素子の安定性を向上させることができる。
また、本発明の電子放出素子は、MIM型の電子放出構造であり、真空中だけでなく大気圧中で動作させても放電を伴わないためオゾンやNOx等の有害物質をほぼ生成せず、電子放出素子が酸化劣化しない。そのため、本発明の電子放出素子は、寿命が長く大気中でも長時間連続動作をさせることができる。よって、本発明により、真空中だけでなく大気圧中でも安定して電子を放出でき、オゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制した電子放出素子を提供することができる。
本発明の電子放出層は、第一の電子放出層は第二の電子放出層より薄膜に形成されている。また、平均粒径の大きい粒子(絶縁性物質)に平均粒径の小さい粒子(ナノ粒子)を付着させ、平均粒径の小さい粒子を前記突起物として利用している。
この構成によると、上記効果に加え、第一の導電性部材基板の凹凸形状を吸収し、なおかつナノ粒子へ強電界を集中させることができ、電子放出特性が向上する。さらに、ナノ粒子を、自己組織化作用により、小さい粒子が大きい粒子に均一に吸着させることにより、平均粒径の異なる異種粒子を単一粒子レベルで均一に分散させた状態に混合できる精密混合性に優れている。したがって数百nmと数nmサイズの粒子を用いても効果的に分散させ、突起物を複合粒子とすることができる。そのため、簡単な製造方法で均一に突起物を3次元構造的に形成することができる。これには、高温で焼成する必要がないため、時間的、コスト的なメリットが大きい。
また、本発明の電子放出層は平均粒径の異なる絶縁体粒子あるいは絶縁皮膜された金属微粒子からなることを特徴としている。
この構成によると、金属微粒子の周囲に、薄膜の絶縁部材を被覆することで、金属微粒子の酸化生成反応をより起こし難くした状態にでき、大気圧状態での素子の使用を可能にする。また、上記絶縁体粒子および絶縁皮膜金属微粒子は、電子放出層における抵抗値および電子の生成量を調整することができるため、電子放出層を流れる電流値と電子放出量の制御を可能とする。さらに、上記絶縁体粒子は、電子放出層を流れる電流により生じるジュール熱を効率良く逃がす役割も有することができるため、電子放出素子が熱で破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記金属微粒子を成す導電体は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいてもよい。このように、上記金属微粒子を成す導電体が、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいることで、金属微粒子の、大気中の酸素による酸化などをはじめとする素子劣化を、より効果的に防ぐことができる。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記金属微粒子の平均径は、導電性を制御する必要から、上記絶縁体粒子の大きさよりも小さくなければならず、3〜20nmであるのが好ましい。このように、上記金属微粒子の平均径を、上記絶縁体粒子の微粒子径よりも小さく、好ましくは3〜20nmとすることにより、電子放出層内で、金属微粒子による導電パスが形成されず、電子放出層内での絶縁破壊が起こり難くなる。また原理的には不明確な点が多いが、粒子径が上記範囲内の金属微粒子を用いることで、電子が効率よく生成される。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記絶縁体粒子は、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいてもよい。または有機ポリマーを含んでいてもよい。上記絶縁体粒子が、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、あるいは、有機ポリマーを含んでいると、これら物質の絶縁性が高いことにより、上記電子放出層の抵抗値を任意の範囲に調整することが可能となる。特に、絶縁体粒子として酸化物(SiO、Al、及びTiO)を用い、金属微粒子として抗酸化力が高い導電体を用いる場合には、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化をより一層発生し難くなるため、大気圧中でも安定して動作させる効果をより顕著に発現させることができる。
ここで、上記絶縁体粒子は微粒子であってもよく、その平均径が10〜1000nmであるのが好ましく、12〜110nmであるのがより好ましい。この場合、粒子径の分散状態は平均粒径に対してブロードであっても良く、例えば平均粒径50nmの微粒子は、20〜100nmの領域にその粒子径分布を有していても問題ない。上記微粒子である絶縁体粒子の平均径を好ましくは10〜1000nm、より好ましくは12〜110nmとすることにより、上記絶縁体粒子の大きさよりも小さい上記金属微粒子の内部から外部へと効率よく熱伝導させて、素子内を電流が流れる際に発生するジュール熱を効率よく逃がすことができ、電子放出素子が熱で破壊されることを防ぐことができる。さらに、上記電子放出層における抵抗値の調整を行いやすくすることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子放出層における上記絶縁体粒子と絶縁皮膜金属微粒子の割合が、重量比で4:1〜19:1であるのが好ましい。上記重量比率の範囲内であると、上記電子放出層内の抵抗値を適度に上げることができ、大量の電子が一度に流れることで電子放出素子が破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子放出層の層厚は、12〜6000nmであるのが好ましく、300〜6000nmであるのがより好ましい。上記電子放出層の層厚を、好ましくは12〜6000nm、より好ましくは300〜6000nmとすることにより、電子放出層の層厚を均一化すること、また層厚方向における電子放出層の抵抗調整が可能となる。この結果、電子放出素子表面の全面から一様に電子を放出させることが可能となり、かつ素子外へ効率よく電子を放出させることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記薄膜電極は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいてもよい。上記薄膜電極に、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つが含まれることによって、これら物質の仕事関数の低さから、電子放出層で発生させた電子を効率よくトンネルさせ、電子放出素子外に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
本発明の電子放出素子の絶縁皮膜金属微粒子の絶縁被膜は、上記構成に加え、電子をトンネルさせることが可能な厚みであることを特徴としている。電子がトンネル可能な厚みでなければ、電子を導体から外部に放出させることはできず、電子放出素子としての基本的機能が実現できないためである。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、絶縁皮膜金属微粒子の絶縁被膜は、アルカン、アルコール、脂肪酸、アルカンチオール、炭化水素系シラン化合物、有機系界面活性剤の少なくとも1つを含んでいてもよい。このような有機材料で、絶縁皮膜されていることで、素子作成時の金属微粒子の分散液中での分散性向上に貢献するため、金属微粒子の凝集体が元と成る電流の異常パス形成を生じ難くする他、絶縁体粒子の周囲に存在する金属微粒子自身の酸化に伴う粒子の組成変化を生じないため、電子放出特性に影響を与えることがない。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
本発明の電子放出素子の製造方法によれば、第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、導電性部材間に狭持された電子放出層から電子を放出させる電子放出素子の製造方法であって、
前記電子放出層は、2種類以上の平均粒子径を有する絶縁体粒子に3次元的に略均質にナノ粒子を形成する工程と、前記2種類以上の平均粒子径を有する絶縁体粒子ごとに複数の層を形成する工程と、を有することを特徴としている。
このような製造方法にすることにより、従来のスピント型電極、CNT型電極に比べ、3次元空間を有効に利用することができ、各々の突起物に強力な電界を印加することができるため、電子を効率よく発生させることができる。またその結果、自己組織的に絶縁体粒子上に形成することができ、高温の焼成工程を経ることなく、最小の使用エネルギーで効率よく電子放出素子を作成できる。
また、上記絶縁体粒子に3次元的に略均質にナノ粒子を形成する工程は、溶媒に絶縁体粒子とナノ粒子を分散させ溶液を作成する工程と、前記溶液を導電性部材上に塗布する工程からなる。絶縁体部材と絶縁皮膜金属微粒子を同一の溶媒中で混合して溶液とし、前記分散溶液中の粒子を分散させる工程を含み、室温で放置するあるいは溶媒の沸点以下の温度で加熱後に放置することで、自己組織化を有効に発現させることができ、3次元空間に、均一に、絶縁皮膜金属微粒子の突起物を効率よく製造することができる。
以上説明したように、本発明の電子放出素子によれば、電極間に電子放出層を塗布・常温で乾燥させるだけで簡単に電子放出素子が作成でき、また電子放出効率も格段に高く、大面積化の容易なデバイスを提供できる。
本発明の電子放出素子は、上記のように、第一の導電性部材と第二の導電性部材との間には、電子放出層は3次元的に略均質に突起物が形成されている。この均質な突起物を平均粒径の異なる粒子を組み合わせて形成してもよい。また、平均粒径の大きい粒子に平均粒径の小さい粒子を付着させ、平均粒径の小さい粒子を前記突起物として用いるのが好ましい。これは薄膜の層であり、この電子放出層に電圧を印加すると、電子放出層には、印加電圧の形成する強電界により電子がナノ金属微粒子内から放出され、絶縁皮膜を電子がトンネルすることにより、電子放出層から電子となって放出される。
このように構成された電子放出素子は、従来のスピント型電極、CNT型電極に比べ、3次元空間を有効に利用することができ、各々の突起物に強力な電界を印加することができるため、電子を効率よく発生させることができる。その結果、電子放出素子の効率を向上させることができ、低消費電力化が図れる。
また、金属微粒子として抗酸化力が高い導電体を用いることから、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化を発生し難いため、大気圧中でも安定して動作させることができる。
また、上記絶縁体粒子および絶縁皮膜ナノ微粒子は、電子放出層における抵抗値および電子の生成量を調整することができるため、電子放出層を流れる電流値と電子放出量の制御を可能とする。さらに、上記絶縁体粒子は、電子放出層を流れる電流により生じるジュール熱を効率良く逃がす役割も有することができるため、電子放出素子が熱で破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子は、上記構成を有するため、真空中だけでなく大気圧中で動作させても放電を伴わないためオゾンやNOx等の有害物質をほぼ生成せず、電子放出素子が酸化劣化しない。そのため、本発明の電子放出素子は、寿命が長く大気中でも長時間連続動作をさせることができる。よって、本発明により、真空中だけでなく大気圧中でも安定して電子を放出でき、オゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制した電子放出素子を提供することができる。
さらに、自己組織化作用により大きな絶縁体粒子上に形成することができ、高温の焼成工程を経ることなく、最小の使用エネルギーで効率よく電子放出素子を製造することができる。
本発明の一実施形態の電子放出素子の構成を示す模式図である。 図1の電子放出素子における電子放出層付近の断面の拡大図である。 絶縁体粒子に絶縁皮膜金属微粒子を形成させる工程を説明した説明図である。 電子放出実験の測定系を示す図である。 真空中における電子放出電流を示すグラフを表す図である。 真空中における電子放出時の素子内電流を示すグラフを表す図である。 大気中における電子放出電流及び素子内電流を示すグラフを表す図である。 大気中における電子放出電流及び素子内電流の経時変化を示す図である。 電子放出性能が最も良好であった電子放出層のSEM写真である。 本発明における電子放出層のモデルを示す図である。(a)は第一の電子放出層を形成した図で、(b)は通常の電子放出層を示した図、(c)は第一の電子放出層を挿入した場合であっても、第二の電子放出層による空間制御ができない場合の図、(d)はさらに第三の電子放出層を形成した図である。 第三の電子放出層を設けた場合の電子放出層と上部電極を示すTEM写真である。 従来技術を示す説明図である。 従来技術を示す説明図である。
以下、本発明の電子放出素子の実施形態について、図1〜図9を参照しながら具体的に説明する。なお、以下に記述する実施の形態および実施例は本発明の具体的な一例に過ぎず、本発明はこれらよって限定されるものではない。
(電子放出素子の構成)
本発明の電子放出素子の構成について説明する。
図1に示すように、電子放出素子1は、第一の導電性部材2上に絶縁体5と絶縁皮膜金属微粒子6(以下電子放出層4という)と、第一の導電性部材2に対向するように第二の導電性部材3を備えるとともに、電源7と、対向電極8とが配置されている。
電子放出層4は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3とにより挟持されている。また、電源7は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間に電圧を印加する。電子放出層4は、後述するように少なくとも絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体が複数個所に形成されている。電子放出素子1は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間に電圧が印加されることで、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間(すなわち、電子放出層4)で電子を加速し、対向電極8に向かって第二の導電性部材3から電子を放出させる。
以上のような基本構成を基に、それぞれの部材および電子放出原理について、図1の電子放出層4の内部をモデル化した状態を図2に示して詳細に説明を行なう。
(第一の導電性部材)
第一の導電性部材となる基板2は、電子放出素子の支持体の役割を担う。そのため、ある程度の強度を有し、直に接する物質との接着性が良好で、適度な導電性を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。例えばSUSやTi、Cu等の金属基板、SiやGe、GaAs等の半導体基板、ガラス基板のような絶縁体基板、プラスティック基板等が挙げられる。例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、その電子放出層4との界面に金属などの導電性物質を電極として付着させることによって、第一の導電性部材となる基板2として用いることができる。上記導電性物質としては、導電性に優れた貴金属系材料を、マグネトロンスパッタ等を用いて薄膜形成できれば、その構成材料は特に問わない。また、酸化物導電材料として、透明電極に広く利用されているITO薄膜も有用である。また、強靭な薄膜を形成できるという点で、例えば、ガラス基板表面にTiを200nm成膜し、さらに重ねてCuを1000nm成膜した金属薄膜を用いてもよいが、これら材料および数値に限定されることはない。
(第二の導電性部材)
第二の導電性部材3は、電子放出層4内に電圧を印加させるものである。そのため、電圧の印加が可能となるような材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子放出層4内で加速され高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーロス無く透過させて放出させるという観点から、仕事関数が低くかつ薄膜を形成することが可能な材料であれば、より高い効果が期待できる。このような材料として、例えば、仕事関数が4〜5eVに該当する金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、パラジウムなどが挙げられる。中でも大気圧中での動作を想定した場合、酸化物および硫化物形成反応のない金が、最良な材料となる。また、酸化物形成反応の比較的小さい銀、パラジウム、タングステンなども問題なく実使用に耐える材料である。また第二の導電性部材3の膜厚は、電子放出素子1から外部へ電子を効率良く放出させる条件として重要であり、10〜55nmの範囲とすることが好ましい。第二の導電性部材3を平面電極として機能させるための最低膜厚は10nmであり、これ未満の膜厚では、電気的導通を確保できない。一方、電子放出素子1から外部へ電子を放出させるための最大膜厚は100nm程度であり、これを超える膜厚では第二の導電性部材3で電子の吸収あるいは反射による電子放出層4への再捕獲が多く発生することになり、低消費電力で素子駆動ができなくなる。
(金属微粒子)
金属微粒子6の金属種としては、電子を生成するという動作原理の上ではどのような金属種でも用いることができる。ただし、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、抗酸化力が高い金属である必要があり、貴金属が好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケルといった材料が挙げられる。このような金属微粒子6は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて作成可能であり、応用ナノ研究所が製造販売する銀金属微粒子等の市販の金属微粒子粉体も利用可能である。
また、金属微粒子6の平均径は、導電性を制御する必要から、以下で説明する絶縁体の微粒子5の大きさよりも小さくなければならず、3〜20nmであるのがより好ましい。このように、金属微粒子6の平均径を、絶縁体の微粒子5の粒子径よりも小さく、好ましくは3〜20nmとすることにより、微粒子層4内で、金属微粒子6による導電パスが形成されず、微粒子層4内での絶縁破壊が起こり難く、電子が効率よく生成される。
(絶縁体)
絶縁体の微粒子5に関しては、その材料は絶縁性を持つものであれば特に制限なく用いることができる。ただし、後述の実験結果の通り微粒子層4を構成する微粒子全体における絶縁体の微粒子5の重量割合は80〜95%、すなわち金属微粒子との割合は4:1〜19:1が好ましい。またその大きさは、金属微粒子6に対して優位な放熱効果を得るため、金属微粒子6の直径よりも大きいことが好ましく、絶縁体の微粒子5の直径(平均径)は10〜1000nmであることが好ましく、12〜110nmがより好ましい。従って、絶縁体の微粒子5の材料はSiO、Al、TiOといったものが実用的となる。ただし、表面処理が施された小粒径シリカ粒子を用いると、それよりも粒子径の大きな球状シリカ粒子を用いるときと比べて、溶媒中に占めるシリカ粒子の表面積が増加し、溶液粘度が上昇するため、微粒子層4の膜厚が若干増加する傾向にある。また、絶縁体の微粒子5の材料には、有機ポリマーから成る微粒子を用いてもよく、例えば、JSR株式会社の製造販売するスチレン/ジビニルベンゼンから成る高架橋微粒子(SX8743)、または日本ペイント株式会社の製造販売するスチレン・アクリル微粒子のファインスフェアシリーズが利用可能である。ここで、絶縁体の微粒子5は、2種類以上の異なる粒子を用いてもよく、また、粒径のピークが異なる粒子を用いてもよく、あるいは、単一粒子で粒径がブロードな分布のものを用いてもよい。
また絶縁体の成す役割は微粒子形状に依存しないため、上記絶縁体粒子に有機ポリマーから成るシート基板や、何らかの方法で絶縁体粒子を塗布して形成した絶縁体層を用いてもよい。但しこのシート状基板や絶縁体層には厚さ方向を貫通する複数の微細孔を有する必要がある。このような用件を満たすシート状基板材料として、例えば、ワットマンジャパン株式会社の製造販売するメンブレンフィルターニュークリポア(ポリカーボネート製)が有用である。
(電子放出層)
電子放出層4は、上記絶縁体5および金属微粒子6を含んでいる。薄いほど強電界がかかるため低電圧印加で電子を加速させることができるが、電子放出層の層厚を均一化できること、また層厚方向における電子放出層の抵抗調整が可能となることなどから、微粒子層4の層厚は、100〜1000nm、より好ましくは300〜6000nmであるとよい。100nm未満では、電極間の接触あるいは高電圧印加による絶縁破壊が生じることがあり、6000nm以上では、電子放出に必要な高電界を印加することができなくなり、高電界を印加すれば消費電力が高くなる。
(電子放出原理)
電子放出の原理について、電子放出層4をモデル化した状態の図2により説明する。絶縁体粒子5上に絶縁皮膜された金属微粒子6は自己組織化によって形成される。その原理を以下に示す。
図3に電子放出層の作成プロセスを示す。絶縁体及び絶縁皮膜金属微粒子を溶媒に溶かし、超音波洗浄器により金属微粒子を分散させ、第一の導電性部材上に塗布を行なう。その後、室温で放置し、ゆっくりと溶媒を蒸発させると、溶媒の蒸発時に自己組織化作用により、絶縁皮膜された金属微粒子が絶縁体上に略均一な間隔を保って形成される。以上のような簡単なプロセスで、高温処理が必要なく電子放出層が形成できる。
原理的には、図2に示すように、平均粒径の小さな粒子(絶縁皮膜金属微粒子)は、金属微粒子より平均粒径の大きな粒子(絶縁体粒子)に付着するほうがエネルギー的に安定である。このような金属微粒子の挙動を利用することにより、自己組織的に絶縁体に絶縁皮膜金属微粒子同士が間隔を保って配置した状態を作る。これは、粒子間の静電斥力によって粒子同士が反発し、互いに距離を置くよう分布しているため、絶縁体の周囲に絶縁皮膜金属微粒子が配置された構成に形成できる。このような原理に基づき、導電性部材間に絶縁体粒子の周囲に絶縁皮膜金属微粒子を高温の焼成などが必要なく、室温で放置する自己組織化作用で、均質に付着形成させる。このプロセスで、絶縁皮膜金属微粒子は突起物として3次元的に導電性部材間に略均質に形成されることになる。ここで、略均質という表現はそれぞれの粒子がSEM観察時に、ほぼ絶縁体粒子に均一に付着していることを意味し、厳密に付着状態を定義するものではない。後述するように、付着物の一部は凝集されていても良い。従来技術で示したような現在提案されているスピント型電極やCNT電極では、電子放出箇所は空間を平面的に利用しているだけであり、電極間の空間を最大限利用していない。導電性部材間に電圧を印加すると、局所的な突起物は電界集中により、高電圧が印加されることになり、3次元的に形成されたそれぞれの突起から電子が放出される。この原理は、絶縁皮膜金属微粒子表面に強電界が掛かると、真空との境界でポテンシャル障壁が傾斜を持つが、強電界になると障壁が極めて薄くなり、トンネル効果で電子が真空中に放出されることによると考えられる。
具体的には、まず、基板2上に、絶縁体の微粒子5と、金属微粒子6とを分散させた分散溶液をスピンコート法を用いて塗布することで、微粒子層4を形成する。ここで、分散溶液に用いる溶媒としては、絶縁体の微粒子5と、金属微粒子6とを分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。
特に、絶縁皮膜金属微粒子を分散するためには、無極性溶媒(比誘電率の小さな溶媒。ヘキサンなど)の方が好ましい。ただし、水などは極性溶媒の代表格であるが、コストメリットがあるので、使用することができる。無極性溶媒を使用する理由としては、溶媒中で、金属微粒子がもつ電荷等で引き合わないようにするためには、金属微粒子がもつ電荷を遮蔽するような状態の方がよいからである。また、溶媒の粘度も金属微粒子の動きやすさに影響してくるので、分散性に影響する。特に、比誘電率が5以下の溶媒(ヘキサン 1.9、トルエン 2.3、キシレン 2.3)が好ましい。
また、金属微粒子6の分散性を向上させる目的で、事前処理としてアルコラート処理を施すとよい。スピンコート法による成膜、乾燥、を複数回繰り返すことで所定の膜厚にすることができる。微粒子層4は、スピンコート法以外に、例えば、滴下法、スプレーコート法等の方法でも成膜することができる。そして、電子放出層4上に薄膜電極3を成膜する。薄膜電極3の成膜には、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いればよい。
すなわち、絶縁体及び絶縁皮膜金属微粒子を溶媒に溶かし、超音波洗浄器により金属微粒子を分散させ、第一の導電性部材上に塗布を行なう。その後、室温で放置し、ゆっくりと溶媒の除去を行なう。以上のような簡単なプロセスで、高温処理が必要なく電子放出層が形成できる。
ここで、A点での電界強度はマクロ的には、E=V(印加電圧)/d(素子間距離)で与えられ、ミクロ的には電界集中が起こっているため、電界集中が起こっている部分では高電界状態となっている。またB点が第一の導電性部材と第二の導電性部材の中央に位置していると仮定すると、B点にかかっている電界強度は、A点とB点が同形状であれば、A点の1/2となる。したがって、図2のモデルに示すように、電界集中が3次元空間内で、多数発生するような構成とすることにより、従来技術に示したスピント型の平面的な電極構造より、効率的に電子の放出を行なえる。さらに、B点における電子のエネルギーは、A点での電子エネルギーが重畳される。A点での高エネルギーを持った電子は、B点で、さらに前記電界集中によるエネルギーを得て最終的には上部の電極の貫通箇所あるいはトンネルすることにより電子が電子放出素子から外部に放出されることになる。
ここで、第一の導電性部材と、第二の導電性部材の間隔は絶縁破壊が起こらない程度に短いほうがより効率よく、電子放出が可能となるため好ましい。高電圧を印加でき、電界集中が発生しやすくなり、低消費電力の素子を作成できるからである。
また平均粒径の異なる数ナノ程度のシリカ微粒子を上記説明した構成に加えることにより自発光素子としても利用でき、上記に示した2種類の粒子に限定されるわけではない。複数種類の粒子径、材質などを加えることによりさまざまな電子デバイスとして上記原理を利用可能であることは容易に理解できるため、本発明の範囲に含まれる。
以下、上記に説明した電子放出の原理に基づいて、本発明の実施例について説明を行なっていく。
実施例として、本発明に係る電子放出素子を用いた電子放出実験について図4〜図9を用いて説明する。なお、この実験は実施の一例であって、本発明の内容を制限するものではない。
本実施例では、微粒子層4における絶縁体の微粒子5と絶縁体粒子(付着物質)を表面に付着させた金属微粒子6との配合を変えた5種類の電子放出素子1を作製した。
基板2には30mm角のSUSの基板を使用し、この基板2上にスピンコート法を用いて微粒子層4を堆積させた。スピンコート法に用いた絶縁体の微粒子5及び絶縁体粒子を表面に付着させた金属微粒子6を含んだ溶液は、トルエンを溶媒として各粒子を分散したものである。トルエン溶媒中に分散させた絶縁体の微粒子5と絶縁体粒子を表面に付着させた金属微粒子6の配合割合は、絶縁体の微粒子5および金属微粒子6の投入総量に対する絶縁体の微粒子5の重量比率を70、80、90、95%と、それぞれ成るようにした。
絶縁体粒子を表面に付着させた金属微粒子6として、銀金属微粒子(平均径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)を用い、絶縁体の微粒子5として、球状シリカ粒子(平均径110nm)を用いた。
各微粒子を分散させた溶液の作成方法を、図3を用いて説明する。10mLの試薬瓶にトルエン溶媒を3mL入れ、その中に0.5gのシリカ粒子を投入する。ここで試薬瓶を超音波分散器にかけ、シリカ粒子の分散を行う。この後0.055gの銀金属微粒子を追加投入し、同様に超音波分散処理を行う。こうして絶縁体の微粒子(シリカ粒子)の配合割合が90%となる分散溶液が得られる。
スピンコート法による成膜条件は、分散溶液の基板への滴下後に、500RPMにて5sec続いて3000RPMにて10sec、基板の回転を行う事とした。この成膜条件を3度繰り返し、基板上に3層堆積させた後、室温で自然乾燥させた。膜厚は約1500nmであった。
基板2の表面に微粒子層4を形成後、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極3を成膜する。成膜材料として金を使用し、薄膜電極3の層厚は12nm、同面積は0.28cmとした。
上記のように作製した電子放出素子について、図4に示すような測定系を用いて電子放出実験を行った。図4の実験系では、電子放出素子1の薄膜電極3側に、絶縁体スペーサ9を挟んで対向電極8を配置させる。そして、電子放出素子1および対向電極8は、それぞれ、電源7に接続されており、電子放出素子1にはV1の電圧、対向電極8にはV2の電圧がかかるようになっている。このような実験系を1×10−8ATMの真空中に配置して電子放出実験を行い、さらに、このような実験系を大気中に配置して電子放出実験を行った。これらの実験結果を図5〜7に示す。
図5は、真空中にて電子放出実験した際の電子放出電流を測定した結果を示すグラフである。ここで、V1=1〜10V、V2=50Vとした。図5に示すように、1×10−8ATMの真空中において、シリカ粒子の重量比率が、70%では電子放出が見られないのに対し、80、90、95%では電子放出による電流が観測された。その値は、10Vの電圧印加で10−7A程度であった。
図6は、上記と同様、真空中において電子放出実験した際の素子内電流を測定した結果を示すグラフである。ここでも、上記と同様、V1=1〜10V、V2=50Vとした。図6から、シリカ粒子の割合が70%では抵抗値が足りずに絶縁破壊を起こしている(電流値が振り切れ、グラフ上部に張り付いている)ことがわかる。金属微粒子の配合比が多くなると、金属微粒子による導電パスが形成され易くなり、微粒子層4に低電圧で大電流が流れてしまう。このため、弾道電子発生の条件が成立しないと考えられる。
図7は、シリカ粒子の割合が90%の電子放出素子を用いて、V1=1〜15V,V2=200Vとして、大気中で電子放出実験した際の、電子放出電流および素子内電流を測定した結果を示すグラフである。
図7に示すように、大気中で、V1=15Vの電圧印加で10−10A程度の電流が観測された。
さらに、図8は、図7と同様シリカ粒子の割合が90%の電子放出素子を用いて、ここでは、V1=15V,V2=200Vの電圧印加で大気中にて連続駆動させた際の、電子放出電流および素子内電流を測定した結果を示すグラフである。図8に示す通り、6時間経っても安定的に電流を放出し続けた。
図9は、電子放出性能が最も良好であったシリカ90%の割合で混合した粒子について、電子放出層のSEM写真を示す。図4によれば、アルコラート皮膜ナノ金属微粒子が、シリカ粒子に多数付着し、ほぼ均一な間隔で満遍なくシリカ粒子に点在しているのが観察できた。ここで、SEM写真は、第二の導電性部材側から、前処理なしでそのまま観察し、チャージアップするため、観察モードを数秒にして撮影を行なっている。
この場合、絶縁皮膜金属微粒子が、絶縁体に均一に点在(分散)していることが好ましい。これは自己組織的な作用から絶縁皮膜金属微粒子が絶縁体にうまく分散していると考えられる。
均一に分散していない状態では、絶縁皮膜金属微粒子の凝集が発生し、この凝集が大きく形成している場合では、絶縁破壊を起こす可能性が高いからである。しかし、絶縁皮膜金属微粒子が小さな凝集体を形成している場合もあり、その場合も、絶縁破壊を起こさない程度の凝集体であれば、問題なく、本発明の範囲に含まれる。
実施例1では、絶縁体の微粒子5として、球状シリカ粒子(平均径110nm)を用いたが、本実施例では、平均径50nmの球状シリカ粒子を用いた。他の実験条件は実施例1と同様とした。
実施例1の結果と同様に、1×10−8ATMの真空中において、シリカ粒子の重量比率が、90%では電子放出による電流が観測され、その値は、10Vの電圧印加で5×10−8A程度であった。しかし、実施例1では、素子の絶縁破壊の回数が多かったのに対し、本実施例ではほとんど絶縁破壊を起こさず、安定した素子作製が可能となった。
本実施例では、絶縁体の微粒子5として、2種類の粒径の球状シリカ粒子(平均径110nmおよび50nm)を用いた。まず、SUS基板上に50nmの粒子を絶縁体の微粒子(シリカ粒子)の配合割合が90%となる分散溶液を用い、500RPMにて5sec続いて3000RPMにて10sec、基板の回転を行った。(第一の電子放出層41)その後、110nmの粒子を絶縁体の微粒子(シリカ粒子)の配合割合が90%となる分散溶液を用い、500RPMにて5sec続いて3000RPMにて10sec、基板の回転を行なった(第二の電子放出層42)。この成膜条件を2度繰り返し、基板上に全3層堆積させた後、室温で自然乾燥させた。その後、基板2の表面に微粒子層4を形成後、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極3を成膜する。成膜材料として金を使用し、薄膜電極3の層厚は12nm、同面積は0.28cmとした。
このようにして得られた電子放出素子を測定したところ、実施例1と同様の1×10−8ATMの真空中において、シリカ粒子の重量比率が、90%では電子放出による電流が観測され、その値は、実施例1とほとんど変化なく、10Vの電圧印加で10−7A程度であった。また、実施例1の結果に比べ、素子の絶縁破壊の回数が少なく、信頼性が高い結果となった。
ここで、第一の電子放出層41は第二の電子放出層42より薄膜にするのが好ましい。その理由は、第一の電子放出層41は、第一の導電性部材基板の凹凸形状を吸収できる程度の厚さが必要であり、厚くなりすぎるとナノ粒子への電界集中を阻害することになるからである。
実施例3で作製した第一、第二の電子放出層42を成膜した後、第一の電子放出層41と同様の成膜すなわち、50nmの粒子を絶縁体の微粒子(シリカ粒子)の配合割合が90%となる分散溶液を用い、500RPMにて5sec続いて3000RPMにて10secで第三の電子放出層の成膜を行なった。
その後、室温で自然乾燥させ、基板2の表面に微粒子層4を形成後、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極3を成膜する。成膜材料として金を使用し、薄膜電極3の層厚は12nm、同面積は0.28cmとした。
このようにして得られた電子放出素子を測定したところ、実施例1と同様の1×10−8ATMの真空中において、シリカ粒子の重量比率が、90%では電子放出による電流が観測され、その値は、10Vの電圧印加で10−7A〜10−6A程度と実施例1〜実施例3に比べ、良好な結果となった。また、実施例1の結果に比べ、素子の絶縁破壊の回数が少なく、信頼性が高い結果となった。
上記実施例1〜実施例4を基に、考察を行なう。図10(b)に実施例1における粒子の模式図を示す。(b)によれば、絶縁体粒子の凹凸形状がそのまま第二の導電部材に反映されることになるため、絶縁体粒子の大きさが大きいと、第二の導電部材の凹凸が大きくなる。そのため、成膜条件によって第一の導電部材と第二の導電部材が近接あるいは接触したり、絶縁物に電荷がチャージすることによって絶縁破壊を起こすという問題もあった。そのため、素子の信頼性が低くなっているといえる。図10(a)は(b)より小さい粒子によって第一の電子放出層41が形成されているため、基盤の凹凸形状が反映せずにより平坦な状態になっている。そのため、第二の電子放出層42が平坦な粒子の上層に形成されることになるため、さらに上層に形成される第二の電極形状が安定的になる。しかしながら、(c)に示すように、粒子間には、水素結合力とファンデルワールス力などの力が働くため、粒子どうしはぴったりとくっつき合わずに、ある間隔を持って配列されることになる。そのため、第二の電子放出層42のさらに上層に第二の電子放出層42に使用する絶縁体粒子より小さな絶縁体粒子を用いることで、第二の電極膜が安定して作成することが可能となり、素子の信頼性が向上する結果となっていると推察される。
図11に絶縁体粒子が50nmの場合の第二の導電性部材付近のTEM写真を示す。この結果によれば、小さい絶縁体粒子を第三の電子放出層43として使用すると、第二の導電性部材が薄膜であっても安定して作成でき、長期間使用しても問題なく信頼性が向上することがわかった。
上記に作成した、第一、第二、第三の電子放出層は、所望の層厚にするために、スピンコートの回転数を調節することによって単層形成してもよく、あるいは、それぞれ複数回スピンコートを行い、層状で形成してもよい。
本発明は、電子放出素子に関するものである。適用例として、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源として適用できる。
1 電子放出素子
2 第一の導電性部材(電極基板)
3 第二の導電性部材(薄膜電極)
4 電子放出層
5 絶縁体粒子
6 金属微粒子(絶縁皮膜金属微粒子)
7 電源(電源部)
8 対向電極
9 絶縁体スペーサ

Claims (10)

  1. 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子において、
    前記第一の導電性部材と第二の導電性部材間に、絶縁体粒子を有する電子放出層が形成され、電子放出層は複数の層からなり、第一の導電性部材上に形成される第一の電子放出層は第二の電子放出層より平均粒径の小さい絶縁体粒子を用いたことを特徴とする電子放出素子。
  2. 前記第一の電子放出層は第二の電子放出層より薄膜に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子放出素子。
  3. さらに、前記第二の電子放出層上に第三の電子放出層を設け、第三の電子放出層は第二の電子放出層より平均粒径の小さい絶縁体粒子を用いたことを特徴とする請求項1あるいは2の何れかに記載の電子放出素子。
  4. 前記電子放出層は絶縁皮膜された金属微粒子が絶縁体粒子上に点在していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子放出素子。
  5. 上記絶縁皮膜金属微粒子を成す導電体部分は、平均径は、3〜20nmであって、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つの物質を含んでいることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電子放出素子。
  6. 上記絶縁体粒子は、平均径が10〜1000nmの微粒子であって、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、または有機ポリマーを含んでいることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の電子放出素子。
  7. 上記電子放出素子における上記絶縁体粒子と絶縁皮膜金属微粒子の割合が、重量比で4:1〜19:1であることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の電子放出素子。
  8. 上記絶縁皮膜金属微粒子の絶縁被膜は、アルカン、アルコール、脂肪酸、アルカンチオール、炭化水素系シラン化合物、有機系界面活性剤の少なくとも1つを含んでいること特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の電子放出素子。
  9. 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、導電性部材間に狭持された電子放出層から電子を放出させる電子放出素子の製造方法であって、
    前記電子放出層は、2種類以上の平均粒子径を有する絶縁体粒子に3次元的に略均質にナノ粒子を形成する工程と、前記2種類以上の平均粒子径を有する絶縁体粒子ごとに複数の層を形成する工程と、を有する電子放出素子の製造方法。
  10. 上記絶縁体粒子に3次元的に略均質にナノ粒子を形成する工程は、溶媒に絶縁体粒子とナノ粒子を分散させ溶液を作成する工程と、前記溶液を導電性部材上に塗布する工程からなることを特徴とする請求項9記載の電子放出素子の製造方法。
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