JP2010209269A - 室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法、並びに自動車オイルシール - Google Patents

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法、並びに自動車オイルシール Download PDF

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Abstract

【課題】経時変化が少なく、耐油性に優れる硬化物が得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法、並びに自動車オイルシールを提供する。
【解決手段】(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖され、25℃の粘度が25〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中に3個以上の加水分解性基を含有するオルガノシラン(但し、シランカップリング剤は除く)及び/又はその部分加水分解物:0.5〜30質量部、
(C)シランカップリング剤及び/又はその部分加水分解物:0.1〜20質量部、
(D)塩基性充填剤:1〜500質量部
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、(B)、(C)成分を予め熟成させたものを(A)、(D)成分に添加することを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐油性に優れる新規な室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、特に自動車用FIPG(Formed In Place Gaskets)材料として有用な該組成物及びその製造方法、並びに自動車オイルシールに関する。
従来、自動車エンジン部のエンジンオイル、ギアオイル、オートマチックトランスミッションフルイド等をシールするための材料には、コルク、有機ゴム、アスベスト等でできた耐油性のガスケット又はパッキング材が使用されている。しかし、これらのシール材は、在庫管理の煩雑さ及び作業工程の複雑さという不利があり、シール性能の信頼性にも欠けるという問題があった。そこで、密着性及び耐熱性に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いたFIPG方式が採用されるようになり、現在に至っている。
自動車エンジン回りに用いられる室温硬化性シリコーンゴム組成物は、自動車用オイルに対する耐性が必須である。耐油劣化による硬化物のゴム物性や接着性の低下は、シール部位からのオイル滲み、オイル漏れに繋がる。一般にエンジンオイルには極圧添加剤としてリン酸金属塩、亜リン酸金属塩等の酸性添加物が用いられており、その影響を受けて硬化物のゴム物性が劣化したり、密着性が低下したりすることが判明している。そのため、該組成物には、酸性添加物の中和を目的として、通常、カルシウム、亜鉛、マグネシウム等の酸化物、水酸化物又は炭酸塩が添加されている。また、硬化物のポリマー鎖が酸性添加物により切断されても、硬化物のゴム物性が低下しないように、予め、硬化物の架橋密度を上げておく手法も知られている。
しかし、自動車用オイルは、近年ますます高性能化し、上記リン系の酸性添加物が増量され、また、前記の酸化物、水酸化物又は炭酸塩では中和のできないイオウ又はモリブデン系化合物が添加されるようになってきた。前記酸化物、水酸化物又は炭酸塩の添加又は架橋密度の向上だけでは、耐油性が満足されないレベルになりつつある。
更に、近年の自動車用オイルは省燃費化を目的として低粘度の基油を用いる方向にある。これは、低粘度の自動車用潤滑油は低抵抗で可動部の動きを妨げにくく、結果としてエンジンの燃費を上げる方向となるためである。しかしながら、低粘度の基油を用いた自動車用オイルでは先述の酸性成分によるシリコーンゴムの劣化に加えて、ゴムの膨潤による影響が無視できなくなっている。自動車用オイルによるゴムの膨潤は機械的強度の低下に加えて、上記酸性成分のゴム中への浸入を促進する効果が認められる。
これを解決する一つの手法として異方性充填剤の使用が挙げられる。異方性充填剤はシリコーンゴム硬化物の変形への抵抗を大きくし、潤滑油、溶剤等による膨潤を抑える効果がある。特開平10−17773号公報(特許文献1)では、耐油性向上を目的として平均粒子径が50μm以下の薄片状無機粉末、好ましくは平均粒子径が50μm以下のタルク、マイカ、カオリン及びアルミナ、更に好ましくは平均粒子径が50μm以下のタルク及びアルミナを用いることが提案されている。
しかしながら、タルク、マイカ、カオリン等はその表面活性が高いため組成物に配合すると極端に粘度が増加し、作業性が大きく低下することが判明した。また、層間化合物であるためナトリウム、カリウム等のイオン性物質がゴム中に拡散し組成物の増粘、ゲル化等の問題を起こす場合があることが判ってきた。
このように、耐油性を向上させるためには様々な充填剤、添加剤を大量に添加する手法により達成されるが、同時に組成物の経時変化が大きくなってしまい、大きな問題となっていた。
特開平10−17773号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、経時変化が少なく、且つ耐油性に優れる硬化物が得られる、特に自動車用FIPG材料として好適な室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法、並びに自動車オイルシールを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために架橋剤、接着助剤に使用している加水分解性基を有するオルガノシラン化合物に関して鋭意検討を行った結果、硬化剤と接着助剤及び必要に応じて硬化触媒を予め熟成(熟成とは、一定の温度、時間で予め混合することを言う)することで、経時変化が殆どなく、且つ耐油性に優れる硬化物が得られることを見出した。
即ち、本発明者らは、組成物の経時変化に関して、その原因を調査した結果、組成物中の架橋剤、接着助剤に使用しているオルガノシラン化合物の加水分解性基が異なる場合、これらはゆっくりと時間を掛けて交換反応を起こすことを確認した。これが、硬化性、接着性等に変化を起こす原因であり、その対策に関して鋭意検討を行った結果、架橋剤と接着助剤及び必要に応じて硬化触媒を予め熟成することで、経時でオルガノシラン化合物の構造変化を抑制し、殆ど経時変化しないことを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記に示す室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法、自動車オイルシール及びその製造方法を提供する。
〔請求項1〕
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖され、25℃での粘度が25〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)一分子中に3個以上の加水分解性基を含有するオルガノシラン(但し、シランカップリング剤は除く)及び/又はその部分加水分解物: 0.5〜30質量部、
(C)シランカップリング剤及び/又はその部分加水分解物: 0.1〜20質量部、
(D)塩基性充填剤: 1〜500質量部
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、(B)成分及び(C)成分を予め熟成させたものを(A)成分、(D)成分に添加することを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
〔請求項2〕
更に、(E)硬化触媒を(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部含有する請求項1に記載の製造方法。
〔請求項3〕
(B)成分、(C)成分及び(E)成分を予め熟成させたものを(A)成分、(D)成分に添加することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
〔請求項4〕
前記塩基性充填剤が、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸亜鉛からなる群から選ばれる塩基性充填剤である請求項1、2又は3に記載の製造方法。
〔請求項5〕
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法により製造された室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔請求項6〕
請求項5に記載の組成物を硬化させることにより得られる自動車オイルシール。
本発明の製造方法によれば、経時変化が少なく且つ耐油性に優れる硬化物を与え、特に自動車用FIPG材料として好適な室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得られる。該組成物の硬化物は、耐油性が良好であるため自動車オイルシールとして有効である。
(A)成分
本発明の(A)成分は、分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖され、25℃での粘度が25〜1,000,000mPa・sのジオルガノポリシロキサンである。
上記ジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、25〜1,000,000mPa・sであり、好ましくは1,000〜100,000mPa・sである。粘度が25mPa・sより低いと物理的・機械的強度に優れたゴム弾性体を得ることができなくなり、1,000,000mPa・sより高いと組成物の粘度が高くなりすぎて作業性が低下する。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定できる。
該ジオルガノポリシロキサンとしては、例えば下記一般式(1)
HO−[R2SiO]L−H (1)
〔式中、Rは同一又は異種の、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Lは上記の粘度範囲を満たす数、通常、10以上の整数である。〕
で示される化合物、及び下記一般式(2)
(R1O)n3-nSi−R2−(R2SiO)L−SiR2−R2−SiR3-n(OR1n
(2)
〔式中、R、Lは前記と同様であり、R1は同一又は異種の、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R2は酸素原子又は置換もしくは非置換の二価炭化水素基であり、nは2又は3である。〕
で示される化合物が挙げられる。
一般式(1)、(2)中のRは、炭素原子数が、通常、1〜10、好ましくは1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;並びにこれらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基(例えばクロロメチル基、トリフロロプロピル基及びシアノエチル基)が挙げられる。これらの中では、メチル基、ビニル基、フェニル基及びトリフロロプロピル基が好ましく、特に好ましくはメチル基及びフェニル基である。
一般式(2)中のR1は、炭素原子数が、通常、1〜6、好ましくは1〜3の一価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、特に好ましくはメチル基及びエチル基である。R2は、酸素原子又は置換もしくは非置換の二価炭化水素基であり、二価炭化水素基として具体的には、炭素原子数が、通常、1〜6、好ましくは1〜3の、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などのアルキレン基が挙げられる。R2としては、酸素原子、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特に好ましくは酸素原子、エチレン基である。
(B)成分
本発明の(B)成分は、一分子中に3個以上の加水分解性基を含有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解物であり、本発明の組成物において架橋剤として作用するものである。なお、本発明において(B)成分は、後述する(C)成分のシランカップリング剤を含まない。上記オルガノシラン及びその部分加水分解物が有する加水分解性基としては、例えばケトオキシム基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基等が挙げられる。また、ケイ素原子に結合する加水分解性基以外の置換基としては、炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の一価炭化水素基で、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基であり、アミノ基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、メルカプト基等の官能基を含まない。
このような(B)成分の具体例としては、テトラキス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シランなどのケトオキシムシラン類、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン類、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのアセトキシシラン類、メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシランなどのイソプロペノキシシラン類、並びにこれらのシランの部分加水分解物が挙げられる。これらは単独で用いても複数種を併用してもよい。
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜30質量部の範囲、好ましくは1〜15質量部の範囲である。0.5質量部未満では十分な架橋が得られず、目的とするゴム弾性を有する組成物が得難く、30質量部を超えると価格的に不利となる。
(C)成分
本発明の(C)成分は、シランカップリング剤及び/又はその部分加水分解物であり、本発明の組成物において接着助剤として作用するものである。シランカップリング剤及びその部分加水分解物が有する加水分解性基としては、上記(B)成分と同様な基が挙げられるが、アルコキシ基が特に好ましい。また、シランカップリング剤及びその部分加水分解物が有する有機基としては、アミノ基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基等の官能基が挙げられ、特にアミノ基が好ましい。また、異なるシランカップリング剤同士の反応生成物であってもよい。具体例としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−アミノメチルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、スチリルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、3−グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が例示される。また、異なるシランカップリング剤同士の反応生成物であってもよい。なお、有機基がビニル基であるものは、通常シランカップリング剤であるが、本発明では(C)成分でなく、(B)成分の架橋剤とする。
アミノ基を官能基として有するシランカップリング剤又はその部分加水分解物としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
2N−R3−SiR4 a(OR53-a (3)
(式中、R3は酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでもよい置換又は非置換の二価炭化水素基であり、R4、R5は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、aは0又は1を表す。)
上記式中、R3は酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでもよい置換又は非置換の二価炭化水素基であり、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキセン基等の炭素原子数1〜8のアルキレン基;−C36−NH−C24−、−C36−NH−C(=O)−が挙げられる。
4は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α−,β−ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
また、R5は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、前記R4と同様のものを例示することができるが、特に炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。
上記アミノシラン化合物としては、当業界で公知のアミン系シランカップリング剤が好適に使用される。具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、エチレンジアミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミノプロピルトリエトキシシラン、エチレンジアミノプロピルメチルジメトキシシラン、エチレンジアミノプロピルメチルジエトキシシラン、α−アミノプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
この(C)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜20質量部であり、0.2〜15質量部が好ましい。0.1質量部未満の場合、十分な接着性が得られず、20質量部を超える場合は、経済的に不利となってしまう。
本発明においては、上記(B)成分と(C)成分、必要に応じて更に後述する(E)成分を予め熟成させたものを、(A)成分、(D)成分に添加する。
(B)成分と(C)成分、必要に応じて(E)成分の熟成方法としては、各成分が加水分解性を有するため、所定量を密閉容器に計量し、加熱養生することが好ましい。加熱温度としては、室温(20℃)〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、加熱時間としては、30分以上、好ましくは1時間以上である。時間の上限は特にはないが、作業効率を考えると2週間以内、特には1週間以内が好ましい。室温未満であると十分な熟成に長時間要するため効率が悪くなるおそれがあり、また、100℃を超える温度では、熟成中に加圧状態等になり危険を伴う場合がある。また30分未満であると、十分な熟成ができないおそれがある。特に、加熱して熟成する場合は30分以上でよいが、室温で熟成する場合は1時間以上熟成することが好ましい。
(D)成分
(D)成分の塩基性充填剤としては、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。上記の塩基性充填剤を併用することにより、耐油性の向上を一層図ることができる。
塩基性充填剤の配合量は、(A)成分100質量部当たり、1〜500質量部、好ましくは10〜300質量部、特に好ましくは50〜200質量部である。この配合量が少なすぎると酸性成分の中和効果が薄れて耐油性が低下し、500質量部を超えると組成物の粘度が高くなりすぎる結果、組成物の硬化性が低下し、作業性も低下する。
(E)成分
本発明においては、更に(E)硬化触媒を配合することが好ましい。(E)成分の硬化触媒は、本発明の組成物において(A)成分と(B)及び(C)成分の反応、及び組成物の加水分解による硬化反応の触媒として作用するものである。硬化触媒として、具体的には、ジオクテート錫等の錫エステル化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロノナンのような強塩基性化合物、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示されるが、特にはアルキル錫エステル化合物、チタンキレート化合物、グアニジル基を含有するシランが好適に使用される。これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。
硬化触媒の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、特には0.05〜5質量部が好ましい。硬化触媒の配合量が少なすぎると十分な触媒効果が得られない場合があり、多すぎると組成物の保存安定性が低下する場合がある。
なお、上述したように、(E)成分を用いる場合は、上記(B)、(C)成分と共に予め熟成させて、これを(A)、(D)成分に添加することが好ましい。
その他の成分
本発明の組成物には、上記(A)〜(E)成分のほかに、本発明の目的を阻害しない限り、種々の添加剤を添加することもできる。例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、石英粉末、炭素粉末等の補強剤;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維質充填剤;酸化セリウム等の耐熱性向上剤;防錆剤;トリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン等の可塑剤、トリオルガノシロキシ単位及びSiO2単位からなる網状ポリシロキサン等の液状補強剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの使用量は、本発明の目的を阻害しない限り任意である。
本発明の組成物は、一液型室温硬化性組成物として、上述した(B)成分と(C)成分、必要に応じて(E)成分を予め熟成させたものと、上記(A)成分、(D)成分及び必要に応じてその他の成分とを、品川ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー等の混合機を用いて乾燥、もしくは減圧雰囲気中で均一に混合することにより得られる。得られる組成物は、空気中に暴露されると、水分により架橋硬化され、ゴム状弾性体となる。
得られた組成物は、経時変化が少なく、耐油性に優れる硬化物となり得るため、自動車オイルシール用として好適であり、該組成物の硬化物により得られた自動車オイルシールは、耐油性に優れるものである。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、下記例中の粘度は回転粘度計による25℃での測定値である。
[実施例1]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料1)を作製した。
[比較例1]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料2)を作製した。
[比較例2]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を20℃×15分間混合させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料3)を作製した。
次に、実施例及び比較例で調製された調製直後の各組成物を厚さ2mmのシート状に押し出し、23℃,50%RHの空気に曝し、次いで、該シートを同じ雰囲気下に7日間放置して得た硬化物の物性(初期物性)を、JIS K6249に準拠して測定した。なお、硬さは、JIS K6249のデュロメーターA硬度計を用いて測定した。
また、幅25mm、長さ100mmの被着体(アルミニウム板)を用いて接着面積2.5mm2、接着厚さ1mmの剪断接着試験体を作製した。23℃,50%RHで7日間養生し、JIS K6850に準じて測定を行い、剪断接着力と凝集破壊率を確認した。
また、保管試験として、実施例及び比較例で調製された調製直後の各組成物を密閉容器に入れて、70℃の温度で7日間放置したもの、及び23℃で6ヶ月間放置したものから作った厚さ2mmのシートについても同様の測定を行った。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2010209269
[実施例2]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製、カーレックス300)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料4)を作製した。
[実施例3]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、酸化亜鉛(ハクスイテック製、酸化亜鉛2種)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料5)を作製した。
[比較例3]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)10質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料6)を作製した。
[比較例4]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製、カーレックス300)600質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料7)を作製した。
実施例及び比較例で調製された調製直後の各組成物を用いて上記と同じ条件で硬化物の物性(初期物性)を測定した。また、耐油性の評価として、上記と同じ条件で硬化させた硬化物からダンベルを打ち抜き、更にエンジンオイル[商品名:トヨタキャッスルモーターオイルSL 5W20]に120℃の温度で240時間浸漬した。その後、JIS K6249に従って劣化後の物性を確認した。結果を表2に示す。
Figure 2010209269
[実施例4]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、表面がパラフィン処理された重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製、MCコートP−20)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(イソプロペノキシ)シラン6質量部、γ−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.5質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料8)を作製した。
[実施例5]
分子鎖両末端がエチレン基を介したトリメトキシシリル基で封鎖され、粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、表面がパラフィン処理された重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製、MCコートP−20)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR974)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、メチルトリメトキシシラン5質量部、イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)2質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料9)を作製した。
[比較例5]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、表面がパラフィン処理された重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製、MCコートP−20)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(イソプロペノキシ)シラン6質量部、γ−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.5質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料10)を作製した。
[実施例6]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.3質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料11)を作製した。
[実施例7]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、塩基性炭酸亜鉛(堺化学製、NANOFINE−MH)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.3質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料12)を作製した。
[実施例8]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、表面処理酸化マグネシウム(協和化学製、マグサラット30)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.3質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料13)を作製した。
実施例及び比較例で調製された調製直後の各組成物を用いて、上記と同じ条件で硬化物の物性(初期物性)、剪断接着力、凝集破壊率を測定し、更に保管試験による測定を行った。また、耐油性の評価として、上記と同じ条件で硬化させた硬化物からダンベルを打ち抜き、更にオートマチックトランスミッションオイル[商品名:トヨタキャッスルATF D−II]に120℃の温度で240時間浸漬した。その後、JIS K6249に従って劣化後の物性を確認した。実施例1、比較例3についても同様の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2010209269
[実施例9]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を70℃×24時間熟成させたものを添加し、更に、オクチルアミン5質量部を減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料14)を作製した。
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、表面がパラフィン処理された重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製、MCコートP−20)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、シクロヘキサノン3質量部を添加し、減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料15)を作製した。
12段スタティックミキサー付き二連カートリッジに試料10と試料11を充填し、専用ガンで混合吐出し、上記と同じ条件で硬化物の物性(初期物性)、剪断接着力、凝集破壊率を測定し、更に保管試験と耐油性の評価を行った。
[比較例6]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、コロイダル炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR)100質量部、煙霧質シリカ(DEGUSSA社製、エロジルR972)5質量部を均一になるまで混合した。次いで、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8質量部、ジオクチルスズジラウレート0.05質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を添加し、更に、オクチルアミン5質量部を減圧下で混合して、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(試料16)を作製した。
12段スタティックミキサー付き二連カートリッジに試料12と上記実施例6と同様にして作製した試料11を充填し、専用ガンで混合吐出し、上記と同じ条件で硬化物の物性(初期物性)、剪断接着力、凝集破壊率を測定し、更に保管試験と耐油性の評価を行った。
なお、耐油性は、エンジンオイル[商品名:トヨタキャッスルモーターオイルSL 5W20]に120℃の温度で240時間浸漬した。これらの結果を表4に示す。
Figure 2010209269

Claims (6)

  1. (A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖され、25℃での粘度が25〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン: 100質量部、
    (B)一分子中に3個以上の加水分解性基を含有するオルガノシラン(但し、シランカップリング剤は除く)及び/又はその部分加水分解物: 0.5〜30質量部、
    (C)シランカップリング剤及び/又はその部分加水分解物: 0.1〜20質量部、
    (D)塩基性充填剤: 1〜500質量部
    を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、(B)成分及び(C)成分を予め熟成させたものを(A)成分、(D)成分に添加することを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
  2. 更に、(E)硬化触媒を(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部含有する請求項1に記載の製造方法。
  3. (B)成分、(C)成分及び(E)成分を予め熟成させたものを(A)成分、(D)成分に添加することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記塩基性充填剤が、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸亜鉛からなる群から選ばれる塩基性充填剤である請求項1、2又は3に記載の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法により製造された室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  6. 請求項5に記載の組成物を硬化させることにより得られる自動車オイルシール。
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