JP2010202431A - カーボン凝結体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形材料の種類と関係無しに優れた離型性を確保できると共に、離型性の金型面に離型剤を塗布するなどして配する必要が無く、作業効率と作業環境が向上し、さらに不要な資材(離型剤)の使用を抑止することができるカーボン凝結体の製造方法を提供する。
【解決手段】この発明に係るカーボン凝結体の製造方法は、カーボン粉粒と高炭素含有樹脂である結合材を主体とする混合物である成形材料を金型面に配設した繊維質薄膜状物質上に載置して加圧、流動させることによって賦型して得た成形品を、結合材が分解する温度の無酸素状態下で焼成処理を行うことによって得るものである。
【選択図】図2

Description

本発明は、電磁誘導加熱が可能な炊飯器の釜などの調理器であるカーボン凝結体の製造方法に関するもので、更に詳しくは、カーボン粉粒を主体とする圧縮成型品の成形用金型からの脱型を容易とする手段に関する。
電磁加熱調理であるコンロや炊飯器は、高周波磁場発生装置である誘導加熱コイルが発生する渦電流によって磁性体金属である鉄やステンレスなどが発熱する電磁誘導加熱を利用するもので、調理器による食品の速やかで均一加熱を向上するためにアルミニウムや銅などを積層したクラッド材を鍋状の成形品を調理器として用いていた。しかし、前記クラッド材は鍋や釜などに絞り加工することが困難であり、さらに表面に塗布したフッ素樹脂などの耐熱樹脂塗装面との各積層界面が剥離するなどの不具合もあった。
このため、従来、黒鉛(カーボン)のブロック状成型物を切削して鍋や釜などの成形品を得た後、調理面である内面にフッ素樹脂が下塗り塗料を介して塗装されて成る誘導加熱調理器が提案されている。この誘導加熱調理器は、従来の鉄やステンレスなどに代わる電磁誘導加熱の調理器に適度な導電性と誘電性と優れた熱伝導度を有しているコークスなどの高炭素含有物粉粒を無酸素状態の1000〜3000℃の加熱によって凝結させたカーボン焼結体を用いるものである(例えば、特許文献1参照)。
同様に、棒柱状に加圧して凝縮させた炭素圧縮体の切削加工物にフッ素樹脂コートを施す手段が提案され、高温での調理器具として有効であることが述べられている(例えば、特許文献2参照)。
上述の手段による鍋状成形品の製造方法によれば、コークス等のカーボンを多く含む粒子を高温で焼結させたカーボン凝結体を鍋状に切削加工して「電磁誘導加熱調理器」として用いるものである。しかし、カーボン凝結体のブロックを切削加工することによって任意形状に成形することは、切削の大半を占める中空部分にある素材の廃棄が多く、それに要する加工の工数が大きいという課題があった。
この課題を解決する手段として、カーボンの粉粒とフェノール樹脂の原料液やタールピッチなどの結合材との混合物を金型内に注入して賦型した後、得られた成形品を焼成処理することによって鍋状に成形されたカーボンの凝結体を得る手段が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平9−75211号公報 特開平9−70352号公報 特開2007−044257号公報
上記特許文献3によれば、金型に注入したカーボン粉粒とフェノール樹脂などの混合物を金型内に充填した最終部位が金型の合わせ面となるように誘導し、前記混合物の充填に伴ってガスの排出を十分に行うことが、鍋状成形品の薄い壁面を流動するように充填する挙動が円滑に行なわれ、均質な物性を得るうえで必須となる。
特に、カーボン粉粒と結合材の混合物である成形材料を圧縮成形によって金型に充填した場合、前記混合物が高速で狭い壁面を通過して金型内にある空気などのガスが成型品内に滞留すること無しに外部に排出するが、成形材料を金型内に止める合わせ面の構造が好ましい。
しかし、圧縮成形する際の成形材料の配設位置は金型底部にあり、鍋状を成す調理器具などは深い壁面構造を備えた容器の開口部外縁部にある金型嵌合部から排出することになる。このため、成形材料を載置した底面部分には成形材料が薄い壁面を流動させて金型内を充填する高い圧力を備えることが必須となることから、該金型の底面部分に成形材料が密着する不具合を生じる。
上記不具合解消には、金型にパラフィン系ワックスやシリコーンやフッ素樹脂などの離型剤塗布による薄膜形成が脱型の容易化に有効な作用を呈するが、金型と成形材料との界面にかかる負荷が大きいほど前記離型剤塗布膜の脱離が激しく、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂反応物の離型効果低減が著しく、上記課題を完全に解消するに至らない。
上述の脱型困難に伴う成形品の取り出しにおいて、場合によっては成形品の破壊を伴うこともある。高温状態にある成形品が脱型時に過度な引っ張り応力が付加されたことに伴い、大粒径のカーボン粉粒が集中して強度が特に低い状態にある壁内の中央部分に亀裂が発生しやすく、焼成段階でフクレや鱗状剥離となって現れ、意匠性を大きく損なうことになるほか、急激な温度上昇によって破裂して壁面の一部を剥離することもあった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、成形材料の種類と関係無しに優れた離型性を確保できると共に、離型性の金型面に離型剤を塗布するなどして配する必要が無く、作業効率と作業環境が向上し、さらに不要な資材(離型剤)の使用を抑止することができるカーボン凝結体の製造方法を提供する。
この発明に係るカーボン凝結体の製造方法は、カーボン粉粒と高炭素含有樹脂である結合材を主体とする混合物である成形材料を金型面に配設した繊維質薄膜状物質上に載置して加圧、流動させることによって賦型して得た成形品を、結合材が分解する温度の無酸素状態下で焼成処理を行うことによって得るものである。
この発明に係るカーボン凝結体の製造方法は、カーボン粉粒と高炭素含有樹脂である結合材を主体とする混合物である成形材料を金型面に配設した繊維質薄膜状物質上に載置して加圧、流動させることによって賦型して得た成形品を、結合材が分解する温度の無酸素状態下で焼成処理を行うことによって得るものであるから、成形材料の種類と関係無しに優れた離型性を確保できると共に、金型面に離型剤を塗布するなどして離型性の塗膜を配する必要が無く、作業効率と作業環境を向上、さらに不要な資材(離型剤)の使用を抑止することが出来た。
実施の形態1を示す図で、成形材料におけるフェノール樹脂の被覆状態に関する概念を示す模式図。 実施の形態1を示す図で、成形品3の斜視図。 比較のために示す図で、カーボン粉粒物とフェノール樹脂未硬化物を押出機などで加圧混練して得た樹脂付着の状態に関する概念を示す模式図。
実施の形態1.
先ず、本実施の形態の概要を説明する。本実施の形態は、カーボン粉粒と結合材であるフェノール樹脂などの高炭素含有高分子の化合物を結合材とした原料の混合物から成る炊飯釜の圧縮成形品を、無酸素状態の高温雰囲気で焼成処理して得られるカーボン凝結体の製造方法に係り、前記成形品の成形手段に関する。アスペクト比(直径/高さ)が小さい(深い形状)炊飯器内釜の成形品が金型面と密着して脱型が困難という課題があった。
本実施の形態は、金型表面に配した不織布である新聞紙、不織布などの繊維質薄膜状物質が成形時に流動する成形材料の剪断応力を受けて適度な大きさに断裂、金型表面に沿って移動して分散しながら金型と成形品との界面に介することを活用して、金型からの成形品の脱型を容易にする手段である。
本実施の形態の脱型手段を含む成形工程を主体としたカーボン凝結体の製造方法の具体例は、以下に示す通りである。
(1)150℃に加温した圧縮成形用金型の外型底面に新聞紙、不織布などの繊維質薄膜状物質を配する;
(2)新聞紙上にカーボン粉粒と結合材などの混合物を載置し、上型離型の必要に応じて新聞紙を載置する;
(3)金型を閉塞して加圧することによって成形した後、開放、成形品を取り出す;
(4)圧縮成形した前記成形品を無酸素状態雰囲気下で1200℃まで段階的に昇温する焼成処理を行う。
上記脱型手段で用いた新聞紙は、焼成処理において、その大半を占める有機物が分解して飛散するので、外観および物性に支障を来すことが少ない。
金型底面に不織布などの繊維質薄膜状物質を介してカーボン粉粒を含む成形材料を投入したので、成形材料の流動時に不織布に成形材料が浸透しない部分が金型と成形品の界面に配する現象を応用したものであって、成形材料の種類と関係無しに優れた離型性を確保できると共に、離型性の金型面に離型剤を塗布するなどして配する必要が無く、作業効率と作業環境を向上、さらに不要な資材(離型剤)の使用を抑止することが出来た。
圧縮成形による鍋状の成型品を得る手段について、原料であるカーボン粉粒と液状の結合材との混合物を充填する金型から得られる電磁誘導加熱調理器の製造方法について、以下に詳述する。
図1、図2は実施の形態1を示す図で、図1は成形材料におけるフェノール樹脂の被覆状態に関する概念を示す模式図、図2は成形品3の斜視図。
図3は比較のために示す図で、カーボン粉粒物とフェノール樹脂未硬化物を押出機などで加圧混練して得た樹脂付着の状態に関する概念を示す模式図である。
成形材料の製造方法について述べる。石油コークスを無酸素雰囲気の高温(約3000℃)で焼成してグラファイト化したカーボンの塊状物を0.3mm以下に粉砕し、これを水とフェノールの混合液を撹拌しながら投入して分散、これに第四級アンモニウム塩型カチオン活性剤を界面活性剤として用いるために混合した。
ここで用いる第四級アンモニウム塩型カチオン活性剤としてアルキルトリメチル型とアルキルジメチルベンジル型カチオン活性剤が好ましく、アルキル基(炭素と水素が結合した有機体(有機結合)のことをいう)部分も、高純度のラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、またはベヘニル基などのC数(炭素の数)が10〜25程度のものが有効である。アルキル基は、少なくともラウリル基(C数;12)、パルミチル基(C数;15)、ステアリル基(C数;18)またはベヘニル基(C数;22)の何れかを含んで成るものとする。
界面活性剤は保護コロイドを形成、溶液が高分子電解質挙動を示すアニオン性水溶性樹脂とポリイオンコンプレックスを形成するので、溶液中に分散した樹脂が過度に大きくない0.3mm以下の粉粒であれば、球状を成すように作用するので、好ましい。
次に、任意温度に加温しながらカーボン粉粒が均一分散するように撹拌しながらホルムアルデヒドを添加して重合させる。フェノールとホルムアルデヒドの添加量は、粒子の表面を被覆する半硬化のフェノール樹脂が30wt%になるように調整した。重合物の重合度は、好適な流動性や粘度が得られる反応時の温度と時間を調整した後、熱可塑性樹脂のポリエチレン(PE)を半硬化のフェノール樹脂の1wt%相当を添加し、均一分散するまで混合した。任意重合度に達してPEが半硬化フェノール樹脂表面に付着した成形材料が分散した溶液は、ロータリー乾燥機を用いて0〜10℃の低温状態で減圧吸引しながら、溶剤として用いた水を飛散する乾燥処理を行った。
以上の方法によって得た未硬化状態のフェノール樹脂は、カーボン粉粒物の表面がフェノール樹脂の原料液で常に濡れた状態で重合したので、カーボン粉粒の外周面に膜として保持されて成る粒状の成型用原料として得た。
一方、上述手段で得た成形材料同士が成形時の加熱・加圧による結合状態について概念図を用いて説明すると、図3に示すカーボン粉粒物とフェノール樹脂未硬化物を押出機などで加圧混練して得た従来の樹脂付着の状態と比較して、図1に示すフェノール樹脂の重合過程でカーボン粉粒が備える鋭角な破断面を覆うようにカーボン粉粒1の表面にフェノール樹脂未硬化物2が塗膜を形成して平滑な面を形成することになる。
このため、本実施の形態による該成形材料は溶融温度以上の加熱下で加圧した時に、金型内で空隙を埋めるなどして好適な位置に移動しやすい、つまり、流動性に優れるという特徴を有することになる一方、過度に低い溶融粘度を呈さないので、後段の成形時における新聞紙への含浸を抑制できるという効果を備える。
次に、グラファイト化したカーボンの粉砕粒と未硬化のフェノール樹脂との混合物である成形材料を、約165℃に加温した圧縮成形金型に投入、加圧して鍋の形状に賦型する。金型の底面から側壁下部の約1cm程度を覆うように裁断した1枚の新聞紙を配設し、成形材料を金型の底部の前記新聞紙上に、均一な厚さに投入したのち、金型を閉塞して10MPaの負荷を保持して圧縮、5分間の保持後、成形品を取り出した。成形品は、上型に保持される程度にまで下型からの脱型は容易であり、新聞紙を配設しない場合には下型に成形品の表層部分が貼り付いて残留することから比較して、優れた離型性を呈して成ることが確認できた。
ここで用いる新聞紙は、易分解性の有機質繊維であるパルプ繊維を解繊して水中に均一分散させたスラリー液を抄造したものであるから、面上の各部に全方向に同等の応力で引っ張ることによって細かに分断して応力負荷が及ぶ外面側壁部の全面に分散する。得られた成形品3の表面には、図2の概念図に示すように、5mm辺程度の新聞紙の断片4が均一に分散して表面層を覆うように接合し、新聞紙表面には成形材料が僅かににじみ出る程度に止まっていた。
本実施の形態は、繊維質薄膜状物質の薄膜として新聞紙を用いたが、これに代えてポリエステルなどの低温で分解して炭素残さの少ない樹脂繊維を抄造して得た不織布を用いても良い。ただし、上述した引張応力による容易な分断を可能とする態様とすることが肝要であり、そのためには10mm以下の長さの繊維を用いて10〜50g/mの坪量となるように抄造した不織布を用いることが必要である。
もし、繊維長が10mm以上であれば、圧縮成形の加圧時に成形材料の流動に伴って発生する引張応力の付加に対して裁断されにくく、不均一な大きさに分断されると共に側壁部を覆うような移動の態様を確保できない。
また、坪量が10g/m以下の場合には成形材料に含まれる溶融したフェノール樹脂が過度に含浸して透過するため、金型面への密着抑制への効果が薄れ、脱型を円滑に行うことができないことがある。
また、50g/m以上の場合には成形材料の含浸量が各部位で異なることから、後段の焼成処理後にブラスト処理などによって平滑な表面を確保したときの均一な成形品肉厚の確保が困難になる、という課題が生じるので好ましくない。
次に、前記成形品を焼成して結合材であるフェノール樹脂を炭素化し、電磁誘導加熱が可能な素材を備えた調理器である鍋となるように無酸素雰囲気の高温で焼成した。圧縮成形した成形品には、成形時に残存した応力の解放による膨張挙動と焼成時の分解生成物放散に伴う収縮挙動によるクラックが発生しないよう、温度の上昇を制御することが肝要である。
このため、焼成処理は、300℃までを3〜5℃/hr、600℃までを1〜3℃/hr、1200℃までを5〜10℃/hrの昇温速度で焼成し、冷却も5〜10℃/hrで行った。
以上のカーボン凝結体から成る成形品の表面には新聞紙の付着痕があるため、ブラスト処理などで平滑化することが、外観意匠性を向上するうえで好ましい。
また、カーボン凝結体から成る成形品には結合材分解物の気散による気孔が多く存在し、調理物が含浸して不衛生な状況を醸し出すむ原因と成りうる。さらに、カーボン凝結体は耐摩耗性に劣るうえ、調理物が密着して調理に不具合を生じる。このため、鍋状の成型品を使用するためには、鍋状成型品の表面を保護する塗装を施す必要がある。内面については調理物を付着し難い態様を確保することが必要であり、調理面にフッ素樹脂の塗装を行った。また、外面には、耐摩耗性と耐熱性に優れるシリコーン樹脂を塗布して用いることが好ましい。
1 カーボン粉粒、2 フェノール樹脂未硬化物、3 成形品、4 断片。

Claims (4)

  1. カーボン粉粒と高炭素含有樹脂である結合材を主体とする混合物である成形材料を金型面に配設した繊維質薄膜状物質上に載置して加圧、流動させることによって賦型して得た成形品を、前記結合材が分解する温度の無酸素状態下で焼成処理を行うことによって得ることを特徴とするカーボン凝結体の製造方法。
  2. 前記繊維質薄膜状物質が、10mm以下の長さの繊維を抄造した坪量が10〜50g/mの不織布を用いて成ることを特徴とする請求項1に記載のカーボン凝結体の製造方法。
  3. 前記繊維質薄膜状物質の薄膜が、易分解性の有機質繊維から成る不織布であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカーボン凝結体の製造方法。
  4. 前記結合材である高炭素含有樹脂が、前記カーボン粉粒を分散させた状態でフェノール類とホルムアルデヒド類の両化合物を重合することによって、前記カーボン粉粒の表面に被覆して成る半硬化状態のフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のカーボン凝結体の製造方法。
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