JP5042276B2 - 表面改質カーボン凝結体並びに電磁誘導加熱調理器ないし電磁誘導加熱炊飯器 - Google Patents
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このとき、磁性体金属である鉄やステンレス(以下「鉄鋼」と総称する)などは熱伝導率が劣るため、食品を速やかで均一に加熱することができないという欠点があり、これを排除するため鉄鋼とアルミニウムや銅などを積層したクラッド材が用いられていた。
しかしながら、クラッド材は硬度差や熱膨張率が異なる金属板を貼り合わせたものであるため、鍋や釜など(以下「容器」と総称する)に絞り加工する際、該金属板の剥離や表面疵が発生するとう問題、また、容器表面にフッ素樹脂などの耐熱樹脂を塗装する際に、容器が変形するという問題、さらに、一体成形容器に比較して容器全体が均一に熱が伝わらないという問題があった。
カーボンが主体の粉粒を凝結させてなるカーボン凝結体と、
該カーボン凝結体に含浸固化したフッ素樹脂を含む含浸樹脂と、
該含浸樹脂の上に付着させたフッ素樹脂である表面樹脂とを有し、
前記含浸樹脂に含まれるフッ素樹脂が、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)であり、
前記表面樹脂が、PFA(テトラフルオロエチレン・パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体)である。
また、かかる表面改質カーボン凝結体によって形成された調理容器が設置された電磁誘導加熱調理器ないし電磁誘導加熱炊飯器では、迅速かつ均一、しかも効率的な加熱ができる。
(実施例1)
図1は本発明の実施形態1に係る表面改質カーボン凝結体から形成された調理容器の表面近傍の部分断面を模式図に示す部分断面図である。図1において、調理容器100は、カーボンが主体の粉粒を凝結させてなるカーボン凝結体10と、カーボン凝結体10に含浸固化した第一樹脂A1と、第一樹脂A1の上に塗布固化したフッ素樹脂を含有する第二樹脂A2と、第二樹脂A2の上に付着させた熱可塑性フッ素樹脂の粉末を加熱溶融させてなる表面樹脂A3と、を有する。
調理容器100は、下記カーボン凝結材10を容器形状に切削加工したものである。すなわち、カーボン凝結体10は、コークスが主体の粉粒物を原料にして、これを300℃の溶融状態にある石油タールピッチと共に混練して加圧しながら丸棒状態に押出して押出品とし、該押出品を3000℃の無酸素状態で凝結処理をして99.9%以上の純度で、密度が1.7g/cm3のカーボン凝結体を得る。そして、該カーボン凝結体を、切削加工(旋盤等)を用いて肉厚が4mmの鍋等の容器形状に加工したものである。なお、該切削加工に際しては、切削屑がカーボン凝結体の気孔内に残留して後述する液状樹脂の含浸を阻害することの無いように、切削屑を吸引するなどして排除している。
第一樹脂A1は、切削加工されたカーボン凝結体10の表面部に含浸されたものであって、ポリエステルエラストマー(TPC、旧称TPEE)にFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))微粉末の10vol%を分散させたうえで粘度が200cpsの低粘度の状態で含浸されたものである。
このとき、FEP微粉末の大きさはカーボン凝結体(カーボン材の焼結体)10が備える気孔径よりも小さな10μm以下である。そして、第一樹脂A1は、スプレーでの吹付けを10〜20秒間隔で3〜6回程度に分けて含浸を行い、第一樹脂A1が表面から吸収せずに表面層に滞留する状況が生じた段階で終了したものである。
したがって、第一樹脂A1は低粘度であるから、カーボン凝結体10に深く浸透し、カーボン凝結体10の気孔(ポアー)13の大きさを縮減させている。第一樹脂A1は、多くは溶剤の飛散に伴う樹脂濃度の向上につれてカーボン粉粒11の接点部分12に集中するので、カーボン凝結体10の強度向上に大きく寄与している。
第二樹脂A2は、第一樹脂A1の含浸が完了後に含浸され、フッ素樹脂との接合に供するプライマー層として形成されたものである。
すなわち、TPCが乾燥状態となる140℃雰囲気で、20分間の放置後、PES(ポリエーテルスルフォン)の水分散溶液に表面樹脂A3(後記する)に塗装するフッ素樹脂と同じ20vol%のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)微粉末を分散させて粘度が、1500CPSである高粘度の液状樹脂の状態で、スプレーによって吹付けたものである。そして、約20μmの厚さ相当に吹付けた後、さらに120℃で10分間の乾燥処理を行いプライマー層としている。
したがって、第二樹脂A2は表層部分近傍に多く滞留するように高粘度であり、しかも、PFAの微粉末14を含有し、これが表層部部に多く残留するため、後工程で含浸される表面樹脂A3に含有されるPFAとの相溶が容易に行なわれる。
最後に、調理容器の洗浄を容易にするため最表面に表面樹脂A3が設置されることによって、第一樹脂A1、第二樹脂A2および表面樹脂A3を有する表面改質カーボン凝結体が得られる。表面樹脂A3は、フッ素樹脂であるPFAの微粉末を吹き付けによって保持した後、360℃の雰囲気中に投入して外部面より加温される。外部面からの加熱は、微粉末の溶融が基材側から徐々に行われるから、内部に気泡が残留しない。該加熱は最表面まで略均一に加温され、全体の溶融する時間が10〜20分間であることが好ましい。
以上より、カーボン凝結体10の内部面における表層部分の改質は、第一樹脂A1が含浸したことによって、表面樹脂(フッ素樹脂)A3が剥離し難いことを以下のとおり確認した。
すなわち、剥離試験は、10mm幅の短冊状に最表面から基材であるカーボン凝結体10にまで切り込みを入れた後、表面樹脂A3を成すフッ素樹脂塗膜の端部を90°上方に引っ張り、ピール強さを比較した。その結果、カーボン凝結体10の表面に何らの処理をすること無しにフッ素樹脂を塗装したものは、カーボン凝結体10の表面で剥離したのに対して、本発明の表面改質カーボン焼結体100(第一樹脂A1および第二樹脂A2を含浸して基材であるカーボン凝結体10の表層部を改質している)では明らかに高いピール強さを呈し、表面樹脂A3での破壊が発生しなかった。
また、この実施例1では、粘度の低い第一樹脂A1と粘度の高い第二樹脂A2とを用いたため、粘度の低い第一樹脂A1がより深くカーボン凝結体10の中に含浸されるため、表面樹脂A3が剥離し難いという効果が高いが、それに限定するものではなく、第二樹脂A2のみをフッ素樹脂(表面樹脂A3)の塗装下地として用いた場合でも、カーボン凝結体10に含浸固化されるため、同様の効果が得られる。
次に、カーボン凝結体を切削加工して形成された調理容器の内面に塗布するフッ素樹脂の塗装下地として、耐熱性に優れる熱可塑性の樹脂粉末を分散させた樹脂液を用いる実施例について説明する。
この実施例2におけるカーボン凝結体としては、上記の実施例1におけるカーボン凝結体10と同様のものを用いる。
切削加工されたカーボン凝結体10の表面部に含浸された第一樹脂Bは、耐熱性に優れる熱可塑性の樹脂であるPES(ポリエーテルスルフォン)であって、カーボン凝結体10が備える気孔よりも小さな10μm以下の粉末が分散されている。このときの溶媒は特に限定するものではなく、水に好ましくは界面活性剤を含む分散液として扱うことによって、30cps程度の低粘度でカーボン凝結体10に含浸が容易である。
含浸はスプレーを用いてカーボン凝結体に第一樹脂Bが十分に吸収するまで行い、その後150℃で15分の乾燥を行い、カーボン凝結体10が備える気孔内にPES粉末が導入されている。PES粉末の導入が不十分な場合は、粉末の粒径を小さくしたものを用いた樹脂液を用いたり、繰り返し含浸と乾燥とを行ったりしている。
次に、第一樹脂Bが含浸された上に、さらに第二樹脂Bが含浸されている。第二樹脂Bは、第一樹脂Bと同系の液状樹脂であって、第一樹脂BにFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))の微粉末を分散させた150cpsの低粘度である。
このとき、FEP微粉末の大きさを、カーボン凝結体10が備える気孔径10μmよりも小さくしている。第二樹脂Bの含浸は、スプレーでの吹付けを10〜20秒の間隔で3〜6回程度に分けて行い、第二樹脂Bが表面から吸収されずに表面層に滞留する状況が生じた段階で終了している。
第一樹脂Bおよび第二樹脂Bの含浸が完了した後、第三樹脂を形成し、該第三樹脂の上に表面樹脂B(最表面層を成すフッ素樹脂)を強固に接合している。
第三樹脂層は、不飽和ポリエステル樹脂を150℃雰囲気で20分間放置して乾燥させ、半硬化状態とした後、PES(ポリエーテルスルフォン)の水分散溶液に表面樹脂Bと同じ10vol%のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)微粉末を分散させて粘度が2000CPSである高粘度の液状樹脂を約20μmの厚さ相当となるようにスプレーにて吹付け、これを150℃で10分間乾燥してプライマー層としている。
最後に、調理具材の洗浄を容易にする最表面層を形成する表面樹脂Bが設けられている。表面樹脂Bは、フッ素樹脂であるPFA微粉末を吹き付けによって保持した後、390℃の雰囲気中に投入して外部面より10〜20分間の加温を行うことによって形成されたものである。このとき、第一樹脂Bに用いていたPES粉末はカーボン凝結体10を構成するカーボン粉粒の凝結部分を被覆するように溶融して付着するので、前記カーボン粉粒が分離するのを抑制する効果を生むことになる。
以上のように、実施例2に係る電磁誘導加熱調理器用容器は、カーボン凝結体10の表面改質がなされたものであるから、第一樹脂Bおよび第二樹脂Bが、カーボン凝結体10を形成するカーボンの粉粒物の接触部を補強すると共に、FEPおよびPFAと液状樹脂を成すPESとが相互に侵入する形態を備えて気孔内で機械的な結合を生むため、強固な表面層を確保することが出来、表面樹脂B(フッ素樹脂の表面塗装)の剥離が発生し難くなっている。
特に、粘度の低い第一樹脂Bを含浸させることによってその効果がより高くなるが、第三樹脂のみを含浸させた場合でも、同様の効果は得られる。
なお、何らの改質処理をしなかった表面層では、調理の温度である180℃まで温度上昇すると、容易に剥離が発生したのに対して、本発明による電磁誘導加熱調理器用容器では、240℃を3時間にわたって維持しても、表面層にふくれや剥離などの変形がなんら観察されなかった。
(調理容器の表面改質方法)
図2および図3は本発明の実施形態2に係るカーボン焼結体から形成される調理容器の表面改質方法を説明するフロー図である。図2および図3において、ステップを「S」と表示し、カーボン焼結体によって形成された調理容器(以下「カーボン製の鍋」と称する)を例示している。図2は、実施例1に示すカーボン凝結体を用いたカーボン製の鍋の表面改質方法であって、鍋状成型品の製造工程(S1〜S4)と、鍋状成型品の表面を塗装する工程(S5)とからなっている。また、図3は、前記表面を塗装する工程(S5)の詳細を示している。
そして、該焼結処理工程(S3)で得られた99.9%以上の純度で、密度が1.7g/cm3のカーボン凝結体を切削加工(旋盤等)する工程(S4)により、所定形状の鍋状成型品を得る。なお、前記切削加工工程において、切削屑がカーボン凝結体の気孔内に残留して後述する液状樹脂の含浸を阻害することの無いように、切削屑を吸引排除している。
さらに、液状樹脂を鍋状成型品の表面部に含浸させ、表面樹脂A3であるフッ素樹脂を吹き付けることによって表面塗装を行う工程(S5)を有している。以下、表面塗装工程(S5)について、図3を用いて詳細に説明する。
第二樹脂A2の含浸工程(S5の3)の後、120℃で10分間の乾燥処理を行い(S5の4)、この第二樹脂A2をプライマー層とする。
(電磁誘導加熱調理器)
図4は本発明の実施形態に係る電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図である。図4において、電磁誘導加熱調理器として電磁誘導加熱炊飯器を例に、電磁誘導加熱調理器1000内に内鍋(表面改質カーボン焼結体100によって形成された電磁誘導加熱調理器用容器に同じ)100が収納されている場合を示している。電磁誘導加熱調理器1000は、本体101と、本体101に内装固着された内鍋収納部102と、内鍋収納部102の外底部に設けられた電磁誘導加熱用の第一加熱コイル103aと、内鍋収納部102の外底部コーナーに設けられた第二加熱コイル103bと、を有している。
Claims (4)
- カーボンが主体の粉粒を凝結させてなるカーボン凝結体と、
該カーボン凝結体に含浸固化したフッ素樹脂を含む含浸樹脂と、
該含浸樹脂の上に付着させたフッ素樹脂である表面樹脂とを有し、
前記含浸樹脂に含まれるフッ素樹脂が、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)であり、
前記表面樹脂が、PFA(テトラフルオロエチレン・パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体)であることを特徴とする表面改質カーボン凝結体。 - カーボンが主体の粉粒を凝結させてなるカーボン凝結体と、
該カーボン凝結体に含浸固化したフッ素樹脂を含む含浸樹脂と、
該含浸樹脂の上に付着させたフッ素樹脂を含むプライマー層と、
該プライマー層の上に付着させたフッ素樹脂である表面樹脂とを有し、
前記含浸樹脂に含まれるフッ素樹脂が、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)であり、
前記プライマー層に含まれるフッ素樹脂および前記表面樹脂が、PFA(テトラフルオロエチレン・パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体)であることを特徴とする表面改質カーボン凝結体。 - 請求項1又は2に記載の表面改質カーボン凝結体から形成された電磁誘導加熱調理器用容器と、該電磁誘導加熱調理器用容器を発熱させる高周波磁場発生手段と、を有する電磁誘導加熱調理器。
- 本体と、該本体に収納される鍋と、該鍋を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を発熱させる誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、該インバータ回路を制御する制御部とを備えた電磁誘導加熱炊飯器であって、
前記鍋が請求項1又は2に記載の表面改質カーボン凝結体から形成されてなることを特徴とする電磁誘導加熱炊飯器。
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