JP4753982B2 - カーボン凝結体成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、炊飯釜、鍋、トースター等の電磁誘導加熱が可能な電磁調理器具に使用するカーボン凝結体成形品に関する。さらに、カーボン凝結体成形品を得る無酸素状態下の焼成処理に供するカーボン粉粒と高炭素含有物質である結合材が主体のカーボン凝結体成形材料と射出成型などの金型を用いたカーボン凝結体成形品の製造方法に関する。
電磁加熱調理器であるコンロや炊飯器は、高周波磁場発生装置である誘導加熱コイルが発生する渦電流によって磁性体金属である鉄やステンレスなどが発熱する電磁誘導加熱を利用するもので、調理器による食品の速やかで均一な加熱が得られるという特徴を有する。当該電磁加熱調理器には、アルミニウムや銅などを積層したクラッド材を鍋状の成形品として用いていたが、クラッド材は鍋や釜などの形状加工が困難で、さらに表面をフッ素樹脂などの耐熱樹脂塗装面の各積層界面が剥離し易いなどの不具合もあった。
そこで、鍋を誘導加熱したときに、鍋に渦電流が発生し易くすると共に、発生した熱が鍋全体に均一且つ速やかに伝達し易くし、また、この鍋の製造時に鍋が変形したりする欠点を解消するために、鍋の外底面部または外周面部に対向するように設けられ上記鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルを備えると共に、この誘導加熱コイルを通電制御する制御手段を備えたものにおいて、鍋をカーボン純度が99.9%以上の黒鉛から構成したことにより、誘導加熱時に鍋に渦電流が発生し易くなると共に、発生した熱が鍋全体に均一且つ速やかに伝達するようになる。しかも、上記鍋を製造する場合、クラッド材製の鍋とは異なり、製造時に鍋が傷付いたり、変形したりすることがなくなり、鍋の品質が向上する誘導加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の電磁加熱調理器が急激に高温と成り、かつ急激に冷めて熱効率が悪いこと、並びに焼肉など焼物調理に不向きであることを解消し、炭火焼のような温和な熱で焼肉などの焼物調理をすることができ、かつスイッチを切っても長時間の保温性がある電磁加熱調理器を提供することを目的として、ケ−シング内の高周波磁場発生装置に接して炭素圧縮体から成る器物を配設した電磁加熱調理器、炭素圧縮成型器物から成る電磁加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
上述の特許文献1記載の誘導加熱調理器の製造方法は、コークスなどのカーボン粉粒にフェノールやピッチなどの高炭素含有物である結合材を主体とする混合物を成型し、これを無酸素雰囲気下の1000〜3000℃で加熱して得たカーボンの凝結体を得た後、任意の形状に切削加工したものである。しかし、カーボンの焼結体を切削加工して任意の形状に加工することは、切削の大半を占める容器の凹状を成す中空部分にある素材の廃棄が多く、且つ加工工数も大きい、という課題があった。
これらの課題を解決する手段として、カーボンの粉粒とフェノール樹脂の原料液やタールピッチなどの結合材との混合物を金型内に注入して加圧するなどして賦型した後、得られた成形品を焼成処理することによって鍋状に成形されたカーボンの凝結体を得る手段が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平9−75211号公報 特開平9−70352号公報 特開2007−44257号公報
上記特許文献3の成形手段は、射出したカーボンなどの混合物である成型材料の金型への充填が、金型内にある空気を排出して未充填を回避し、射出時の加圧力を減衰させずに付加して均質で高い強度や伝熱特性などの確保を図るものである。しかし、単なるカーボン粉粒と結合材の混合物は、金型内での流動時に結合材が溶融してカーボン粉粒の搬送を可能とするため、電磁誘導加熱が可能な調理器具として使用する上で必要な強度や電気伝導、熱伝達に優れる凝結体を得るには、カーボン粉粒の混合比を高くすることが必須である。
しかし、カーボン粉粒の混合比が高い組成は、極めて高い粘度を呈する上に、カーボン粉粒の表面が十分に濡れないためにカーボン粉粒同志が凝集して流動性を喪失し易い、という課題がある。
このような充填性に劣る原料を用いた場合に得られる成形品は、カーボン粉粒の細密充填に必要な圧力付加が不十分で、カーボン粉粒同士が接合できない部分もあるので、無酸素雰囲気で焼成処理したカーボン凝結体成形品は多くの気孔が残留し、曲げや引張りなどの各種強度や熱伝導率は本来の特性に比較して低くなるという課題があった。
さらに、上述した各種強度の低下は、成形品表面を塗装した場合に塗膜の受ける引張り応力によって成形材料が凝集破壊を来して剥離し易くなって、見掛け上塗膜の密着性が悪いという課題を有する。
つまり、電磁誘導加熱が可能な調理器具として好適な強度と電気特性や熱伝導率を備えるには、カーボン粉粒を高度に密接して含有させることが必要である上、成形時の流動性、得られた凝結体成形品の各種強度低下と塗膜密着性低下という課題を回避する必要がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来の混合物のように結合材が介在せずに欠陥部分を残留させることがなく、各種強度や熱伝導率に優れるカーボン凝結体成形品及びカーボン凝結体成形品の製造方法を提供することを目的とする。
この発明に係るカーボン凝結体成形品は、カーボン粉粒と高炭素含有物とからなる成形材料に、シロキサンを含有する草木表皮又は種子殻の薫蒸炭と高炭素含有物とから成る改質材料を積層した状態で加熱加圧成形して得た成形品の炭化処理物であることを特徴とする。
この発明に係るカーボン凝結体成形品は、カーボン粉粒の混合比を高くしても、カーボン粉粒表面に未硬化のフェノール樹脂が被覆されているので、流動過程でカーボン粉粒同志が接触しても滑りやすくなって凝集し難いことから、高い流動性を呈することになる。しかも、粉粒間が低い圧力付加であっても、カーボン粉粒同士の接合に際して、結合材のフェノール樹脂未硬化物が前記カーボン粉粒同士を融着させることができるので、従来の混合物のように結合材が介在しない欠陥部分を残留させることがなく、各種強度や熱伝導率に優れるカーボン凝結体成形品が得られる。
実施の形態1.
圧縮成形によって鍋状の種子殻燻蒸炭凝結体をカーボン粉粒凝結体に積層した成型品とその製造方法に関し、原料炭粉粒と結合材との混合物である成形材料を鍋状の金型に充填した後、加熱・加圧して得た成形品を無酸素の高温雰囲気下で焼成処理して得る電磁誘導加熱調理器具とその製造方法を、以下に詳述する。
まず、石油コークスを無酸素状態の高温(約3000℃)で焼成して、電磁誘導加熱の効率に優れるグラファイト化した黒鉛の塊状物を0.2mm以下に粉砕したカーボン粉粒をエタノールと水の混合溶媒で希釈したフェノール溶液中の減圧下で混合する。そして、その表面を十分に濡らした後、さらにカーボン粉粒を均一分散させるように混合しながらホルムアルデヒドを添加しながら、重合を進行させる。流動性に好適な半硬化状態を確保するに至るまで、本実施の形態では70℃以下で約150分間の撹拌を行った。
重合の進行とともに、溶剤中に分散させたカーボン粉粒を核とする半硬化状態のフェノール樹脂が塗膜となって析出しながらエマルジョンを形成する。本実施の形態に用いる成形材料と成すには、これをロータリー乾燥機に移して冷却することにより、エタノールと水の混合溶媒中にあって、カーボン粉粒の表面に析出させた半硬化状態のフェノール樹脂を固化させる低温状態で溶媒を飛散させて乾燥させることによって、粒状微粉末とした。
この時、得られた粒状微粉末にはカーボン粉粒を核とせず、フェノール樹脂のみで形成された球状粉粒も混入しており、これを比重分別により排除した。得られた成形材料は、合成した未硬化状態のフェノール樹脂がカーボンの粉粒の外周面に膜として保持した粒状を成し、粒子表面の樹脂保有率が約18wt%を備えて成る成形材料を得た。粒子表面の樹脂保有率が約18wt%を備えて成る成形材料が、カーボン粉粒と高炭素含有物とからなる成形材料である。
同様手段により、シロキサンを含有する草木表皮又は種子殻の薫蒸炭と高炭素含有物とから成る改質材料として成形材料の核として、籾殻を480℃の窒素雰囲気下で燻蒸することによって得たが35μmの籾殻の燻蒸炭を用いて、概略、0.05〜0.3mmの直径を有する粒状を成して、粒子表面の樹脂保有率が約25wt%の改質材料を確保した。
次に、これら成形材料を用いて鍋状の成形品を得る圧縮成形の手段について詳述する。金型は硬化温度である約165℃に加熱しておき、壁面の肉厚に見合う任意の量の成形材料を均一な厚さに投入する。次いで、同様に壁面の肉厚に見合う任意の量の改質材料を積層するようにして投入後、圧縮成形を行った。本実施の形態では、改質材料を、約100μmの成形後の厚さとなるように、その粉粒を散布することによって達成した。
このとき、上述工程で得たフェノール樹脂が硬化反応の初期段階に発生する副生成物である水蒸気などのガスの放散を促す目的で、硬化の進行に伴う流動粘度が過度に上昇しない時間、本実施の形態では、10〜30秒間、触圧程度の低圧で加圧して未硬化状態のフェノール樹脂を溶融させることが、成形品表面にガス溜まりなどの凹状の変形を有さずに賦型する上で有効であった。
低圧加圧完了後に引き続いて、一旦、金型を僅かに開放して、発生した水蒸気などのガスを放出した後、高圧状態、本実施の形態では、約10MPaで加圧して任意時間、本実施の形態では300〜360秒間の放置にてフェノール樹脂を完全硬化させた後、金型から取り出した。
上述手段によって得られた成形材料は、製造を容易と成す塊状物を破砕して得たカーボン粉粒が備える鋭角な端面を未硬化状態のフェノール樹脂が隠蔽して平滑な面を形成して成るため、加圧時における金型内の空隙を埋めるように移動しやすい、つまり、流動性に優れるという特徴を有する。
さらに、成形材料同士が接した部位にはカーボン粉粒を被覆したフェノール系樹脂未硬化物が存在するので、加熱・加圧成形時に粉粒同志が密接して融着するので、従来の単純な混合物のように結合材の存在し得ない部分が欠陥部分として残留することがないので、高い強度や熱伝導率などの優れた諸特性を確保することができる。
得られた成形品は、無酸素雰囲気の約1200℃でフェノール樹脂を炭化させて、鍋状を成すカーボン凝結体を得た。このとき、フェノールの分解生成物が当該成形品から放散せずに内部に滞留して膨張し、表面層の近傍で亀裂や局部的な膨れの発生防止を目的に、温度上昇を段階的に行うことが肝要である。
つまり、フェノール樹脂の分解が活発になって急激な重量減少を来す350℃、500℃、800℃近傍は温度の緩い上昇または保持を行う。具体的には、300℃迄を0.5℃/minで速く昇温後、350℃に1℃/hrの緩い昇温で到達後、5時間の保持をした。また、450℃迄を5℃/hr、500℃迄を1℃/hrで到達後、5時間の保持をした。さらに、750℃迄を5℃/hr、800℃迄を2℃/hrで到達後、3時間の保持をした。その後、0.5℃/minで1200℃に到達させて2時間の保持を行った。
また、冷却については、0.5℃/minで室温近傍まで冷却した。
これとは別に、比較例として、カーボン粉粒または籾殻炭と半硬化状態のフェノール樹脂とを押出機で混練後、1mm以下に粉砕した成形用原料とし、金型内にカーボン粉粒と半硬化状態のフェノール樹脂を混練した成形材料のみを金型に載置し、その上に前記カーボン粉粒単独の成形材料に籾殻炭と半硬化状態のフェノール樹脂の成形材料の同量を混合したものを積層して載置し、これを圧縮成形して凝結体成形品を確保した。この凝結体成形品は、無酸素雰囲気で焼成処理によってカーボン粉粒または籾殻炭単独またはカーボン粉粒または籾殻炭と籾殻炭との積層品である鍋状の凝結体成形品であり、本実施の形態との比較を行うための凝結体成形品A(比較例1)とした。
次に、上記手段にて作成した鍋状を成すカーボンの凝結体成形品に関し、成型時に成型用原料を配した底面と、流動過程にあって終点に近い側部内面上部の各部位における塗膜密着性について評価した。凝結体成形品が備える気孔内に含浸する塗料として、外面には耐摩耗性と耐熱性に優れるシリコーン樹脂を、内面には調理具材が密着するのを防止するフッ素樹脂を、各々、塗布した。塗料は凝結体表面にある多くの気孔に含浸し、これに伴ってアンカー効果によって塗膜が強固に固着する。
塗膜の剥離強さ(塗膜密着性)を、塗料のみに1mm間隔で縦横、各々に11本の切れ目を碁盤目状に入れた面上にテープを密着させ、これの引き剥し動作の繰り返し数10回によって生じる升目部分の欠損箇所を確認し、欠損のない部分の升目の数で評価するテープ剥離試験を行った。このテープ剥離試験の検体は鍋の外面に相当するので、底面部分が「カーボン粉粒単独の鍋状の凝結体成形品」になる。
上述したテープ剥離試験(塗膜密着性)の評価に加え、塗装面の外観評価の結果を図1に示す。図1は凝結体成形品B(実施の形態1)と凝結体成形品A(比較例1)の塗膜密着性及び外観の評価結果を示す図である。
図1に示すように、改質材料を成形材料に積層して成形した凝結体成形品B(実施の形態1)に対し、カーボン粉粒とフェノール樹脂の混練物である成形材料のみで成形した凝結体成形品A(比較例1)の場合は、側面上部が光沢に劣る(曇り有り)ものの、内外面ともに平滑な塗膜面を備え、ほぼ同等の外観を呈した。
反面、塗膜密着性は、凝結体成形品A(比較例1)では成形材料を伴う塗膜欠落を確認、特に側面上部で顕著に多く見られた。即ち、凝結体成形品A(比較例1)では、側面上部において、100箇所の升目のうち、欠損のない部分の升目の数は12であった。また、底面では、100箇所の升目のうち、欠損のない部分の升目の数は24であった。これに対して、凝結体成形品B(実施の形態1)では、何れの部分においても欠損を生じることが無く、有意に優れた塗膜密着性を示した。
また、成形品の内面部分にあり、開口部外縁部分と底部分における籾殻炭とフェノール樹脂から成る改質材料を積層した約1mmの表層部分を採取し、表層部分を上位置(非応力負荷面)にした場合(1)と、表層部分を下位置(非応力負荷面)にした場合(2)の曲げ強度を各々測定し、その結果を図2に示す。図2は凝結体成形品B(実施の形態1)と凝結体成形品A(比較例1)の曲げ強度の測定結果を示す図である。
図2に示すように、凝結体成形品B(実施の形態1)は、カーボン粉粒または籾殻炭とフェノール樹脂を混練したのみの成形材料および改質材料で成形してカーボン粉粒同士の結合が不十分な欠陥部分を有した凝結体成形品A(比較例1)に比較して、優位に高い曲げ強度を呈した。
以上に述べた結果から、カーボン粉粒および籾殻炭の表面にフェノール樹脂を配した本実施の形態による成形材料は、押出機で混練した比較例の成型用原料に比較して、底面と側面上部が均質であることから流動性に優れていることが確認できた。また、籾殻炭からなる表面層は高い強度を備え、なかでも本実施の形態による籾殻炭表面に半硬化状態のフェノール樹脂塗膜を形成した場合には、特に優れていることを確認した。
以上のように、本実施の形態によるカーボン凝結体の成型用原料は高い流動性に基づいて得られた成型物の均質性と共に、実用上の必要とする特性に優れていることを確認した。
また、塗料を含浸させる表面層を成す改質材料において、結合材の含有量を多くして成形品の表面の平滑性を確保する場合には、そこに保持する気孔が少なくなることから、塗料の含浸が少なくなって塗膜の密着性が低下する傾向を呈するようになる。このため、改質材料には易分解性の繊維、例えば、強度低下を来さない程度の量であって、30μm程度の太さを有するポリプロピレンの繊維(易分解性の繊維の一例)を混合することによって、塗料が含浸するための気孔を確保することができる。
この場合、繊維の材料には圧縮成形における成型温度で溶融する熱可塑性樹脂が好ましい。加熱・加圧状態で改質材料の粉粒の間隙にある繊維が流動を促すように作用するとともに、粉粒間の空隙に充填して不定形で連続して保持された後、高温の焼成処理過程で分解して、塗料の含浸に好適な気孔を形成するので、都合がよい。
なお、本実施の形態では、成形材料や改質材料の結合材にフェノール樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂を用いたが、これに替えて、高温で流動性を呈するタールやピッチなどの炭素含有率の高い物質を用いることによって、高温焼成時における分解生成物を飛散した後の炭素が十分に残存して、収縮や結合力の不足が生じることもないので、代替が可能である。
実施の形態2.
圧縮成形によって種子殻燻蒸炭をカーボン粉粒に混合した成形材料を表面層に積層して得た鍋状の凝結体成型品とその製造方法を、以下に詳述する。
まず、石油コークスを無酸素状態の高温(約3000℃)で焼成してグラファイト化した黒鉛の塊状物を0.2mm以下に粉砕したカーボン粉粒物とアルコール(例えば、エタノール)と水とを混合した溶媒で希釈したフェノール溶液中の減圧下で混合し、その表面を十分に濡らした後、さらにカーボン粉粒を均一分散させるように混合しながらホルムアルデヒド(アルデヒド基を含む化合物の一例)を添加しながら、重合を進行させる。流動性に好適な半硬化状態を確保するに至るまで、本実施の形態では70℃以下で約150分間の撹拌を行った。
重合の進行とともに、溶剤中に分散するカーボン粉粒を核としながら半硬化状態のフェノール樹脂が塗膜を形成して析出し、エマルジョンを形成する。成形品の成形材料を成す成形材料とするには、これを冷却して半硬化状態のフェノール樹脂を固化させた状態で溶媒を飛散させて乾燥して粒状の微粉末を確保した後、フェノール樹脂のみの微粉末を比重分別により排除した。得られた成形材料は、カーボンの粉粒の外周面に膜として保持した粒状が備える未硬化状態のフェノール樹脂の保有率は約21wt%であった。
成形材料の核に平均粒径が約35μmに粉砕した籾殻炭を用いて、表面に半硬化状態のフェノール樹脂を保有率が約28wt%となるように調整した粒状の微粉末である改質材料を確保した。これに前述の成形材料の同量を加え、さらに熱可塑性樹脂であるポリアミドの繊維(易分解性の繊維の一例)を約3%混合して、鍋状成形品の表面層に用いた。籾殻炭は、草木又は種子殻の薫蒸炭の粉末の一例である。ポリアミド以外でも、PBTまたはポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂でも同様の効果を奏する。
次に、上述した成形材料などを用いて金型内での鍋状の成形品を得る手段について詳述する。硬化温度である約165℃に加熱した金型内に壁面肉厚の約4/5に見合う量の成形材料を均一な厚さになるように投入し、次いで、成形材料と改質材料の同量混合物を壁面肉厚の約1/5に見合う量を均一厚さになるように積層後、すぐに圧縮成形を行った。
このとき、カーボン粉粒などを被覆したフェノール樹脂が、硬化過程に発生する副生成物である水蒸気などのガスの放散を促す反面、フェノール樹脂の過度な流出や流動不足に至らないよう、硬化反応の進行に伴う適正な流動粘度を確保するよう、10〜30秒間、触圧程度の低圧加圧後に金型を僅かに開放して発生した水蒸気などのガスを放出し、約10Mpaの高圧加圧して300〜360秒間の保持をしてフェノール樹脂を硬化させた後、成形品を金型から取り出した。
ここで用いた成形材料は、鋭角な破断面を備えたカーボン粉粒に半硬化状態のフェノール樹脂を被覆したことにより、表面が平滑な面を備えた粒状であるため、加熱・加圧時における金型内を、空隙を埋めながら好適な位置に流動するので、流動性に優れるという特徴を有する。
さらに、表面にフェノール樹脂未硬化物を備えた成形材料同士が接した部位で融着するので、従来の混合物のように結合材の存在しない部分が接して接合しない欠陥部分を生じないことから、高い強度や熱伝導率などの優れた諸特性を確保することができる。
次に、上記成形品は無酸素雰囲気の約1200℃でフェノール樹脂を炭化させて鍋状を成す凝結体成形品C(実施の形態2)を得た。このとき、フェノールの分解生成物が当該成形品から放散せずに内部に滞留して膨張し、鏡面層の近傍で亀裂や局部的な膨れ発生を防止するため、温度上昇を段階的に行うことが肝要である。
つまり、フェノール樹脂の分解が活発になって急激な重量減少を来す350℃、500℃、800℃近傍は温度の緩い上昇または保持を行う。具体的には、300℃迄を0.5℃/minで速く昇温後、350℃に1℃/hrの緩い昇温で到達後、5時間の保持をした。また、450℃迄を5℃/hr、500℃迄を1℃/hrで到達後、5時間の保持をした。さらに、750℃迄を5℃/hr、800℃迄を2℃/hrで到達後、3時間の保持をした。その後、0.5℃/minで1200℃に到達させて2時間の保持を行った。
また、冷却については、0.5℃/minで室温近傍まで冷却した。
これとは別に、成形材料と改質材料を混合せずに、籾殻炭に半硬化状態のフェノール樹脂が被覆した改質材料のみを表面層に配設した鍋状の凝結体成形品を作製し、これを比較試料である凝結体成形品D(比較例2)とした。
次に、上記手段にて作製した凝結体成形品を比較したところ、凝結体成形品C(実施の形態2)に対して、比較試料の凝結体成形品D(比較例2)は、底面と側壁との境界部分で亀裂が発生した。これは、焼成処理段階における成形材料と改質材料の寸法変化率が大きく異なり、圧縮成形時に上型が直接、接する改質材料が内部にある成形材料に比較して流動性が劣るため、改質材料の多くが残留する成形品の底部と、多くが成形材料で構成される側壁部の界面で、強度低下を伴う焼成処理段階で生じる各材料の収縮率の差異に基づく応力に耐えられずに亀裂が発生したものである。
従って、凝結体成形品C(実施の形態2)は成形材料と改質材料の混合物で底面上層が構成されたので、寸法変化率の差異が縮小して発生する応力を抑制した。また、塗料を含浸して調理面を構成する改質材料にポリアミド繊維を混合したので、金型温度よりも低温で溶融して流動を促す効果を付与するので、底面部に改質材料の多くが滞留することなしに側壁部にまで到達したので、亀裂の発生が抑止できた。
また、ポリアミドの繊維は、改質材料の粉粒同士が接する間隙と空隙を充填して不定形で連続して保持された後、高温の焼成処理過程で分解して気孔を形成するので、塗料の含浸に好適な気孔を形成するので、都合がよい。
なお、本実施の形態では、成形材料や改質材料の結合材にフェノール樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂を用いたが、これに替えて、高温で流動性を呈するタールピッチなどの炭素含有率の高い物質を用いることによって、高温焼成時における分解生成物を飛散した後の炭素が十分に残存して、収縮や結合力の不足が生じることもないので、代替が可能である。
凝結体成形品B(実施の形態1)と凝結体成形品A(比較例1)の塗膜密着性及び外観の評価結果を示す図実施の形態1を示す図。 凝結体成形品B(実施の形態1)と凝結体成形品A(比較例1)の曲げ強度の測定結果を示す図。

Claims (3)

  1. 金型内に配設したカーボン粉粒と高炭素含有物の混合物から成り、前記カーボン粉粒をフェノール化合物とアルデヒド化合物の重合段階に混合して、表面にフェノール系樹脂未硬化粒状物を塗布した状態を成す成形材料上に、草木又は種子殻の薫蒸炭の粉末をフェノール化合物とアルデヒド化合物との重合段階に混合して得たフェノール系樹脂の未硬化物を塗膜として保持した改質材料を積層して加熱加圧した成形品を、無酸素状態の高温で焼成処理したことを特徴とするカーボン凝結体成形品の製造方法。
  2. 前記改質材料が、易分解性の繊維を含んで成ることを特徴とする請求項に記載のカーボン凝結体成形品の製造方法。
  3. 易分解性の繊維が、成形時に溶融するポリアミドまたはPBTまたはオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項に記載のカーボン凝結体成形品の製造方法。
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