JP5052903B2 - 電磁誘導加熱調理器の製造方法 - Google Patents

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本発明は、電磁誘導加熱が可能な炊飯器の釜などの調理器に関するもので、更に詳しくはカーボン粉粒が主体の射出成型品を得る成形用金型のガス抜き孔に関する。
電磁加熱調理であるコンロや炊飯器は、高周波磁場発生装置である誘導加熱コイルが発生する渦電流によって磁性体金属である鉄やステンレスなどが発熱する電磁誘導加熱を利用するもので、調理器による食品の速やかで均一加熱を向上するためにアルミニウムや銅などを積層したクラッド材を鍋状の成形品を調理器として用いていた。しかし、クラッド材は鍋や釜などに絞り加工するために、複雑な形状を賦与することが困難であった。
このため、調理器本体に載置される鍋と、この鍋の外底面部または外周面部に対向するように設けられ鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルを通電制御する制御手段とを備え、鍋を黒鉛から構成し、鍋の表面にフッ素樹脂を塗布した誘導加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記特許文献1によれば、従来の鉄やステンレスなどに代わって炊飯釜などの電磁誘導加熱の調理器に、適度な導電性と誘電性と優れた熱伝導度とを有しているコークスなどの高炭素含有物粉粒を無酸素状態の1000〜3000℃の加熱によって凝結させたカーボンの焼結体を切削加工で任意形状に賦型して用いることが提案されている。
また、天然炭素もしくは人造炭素から選択される素材の炭素圧縮成型器物の表面にフッ素系合成樹脂膜が被着形成され、高周波磁場により発熱する電磁加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
前記特許文献1、2による鍋状成形品の製造方法によれば、コークス等のカーボンを多く含む粒子を高温で焼結させたカーボン凝結体を鍋状に切削加工して「電磁誘導加熱調理器」として用いるものである。しかし、カーボン凝結体のブロックを切削加工することによって任意形状に成形することは、切削の大半を占める中空部分にある素材の廃棄が多く、それに要する加工の工数が大きいという課題があった。
この課題を解決する手段として、カーボンの粉粒とフェノール樹脂の原料液やタールピッチなどの結合材との混合物を金型内に注入して賦型した後、得られた成形品を焼成処理することによって鍋状に成形されたカーボンの凝結体を得る手段が考えられる。
特開平09−075211号公報 特開平09−070352号公報
この方法によれば、金型に注入したカーボンなどの混合物が金型内に充填され、充填の最終部位が分割型部同士の合わせ面となるように誘導し、混合物の充填に伴ってガスの排出を十分に行うことが、鍋状成形品の薄い壁面を流動するように充填する挙動が円滑に行なわれ、均質な物性を得るうえで必須となる。
特に、カーボンの粉粒と結合材の混合物を射出成形によって金型内に充填した場合、混合物が壁面を高速で狭い壁面を通過するなどにより、金型内にある空気などのガスが成型品内に滞留することなく金型外に排出されることが好ましく、金型内にガスを排出させる部位が設けられる必要があった。
しかし、上述のカーボンの粉粒と結合材の混合物を射出成形する際の注入口を容器の底部に設置した場合は、容器の開口部外縁部にある金型嵌合部であるフランジから排出することになる反面、狭いゲートから射出した混合物が金型内に放出された際の急激な圧力の解放に伴って内面部を構成する金型に衝突して流動方向が不均一となり、特に注入口近傍では硬化時の収縮方向に大きく異なる部位を含むことになる。このため、成型品の当該部位では、強度の低下や、場合によっては成形時の収縮に起因してクラックが発生することもあるという課題があった。
上記不具合を解消するため、容器開口部から充填した場合には、最終充填部が容器底部に集約されることから、金型内部に残存するガス(空気)の排出が分散されないため、大きな空孔を備える排気口を具備することが必要であった。
しかし、当該排気口には、金型内の充填する混合物が侵入し易く、また、その除去も困難である上、これらの不具合を解消するための混合物の侵入防止と、除去の容易化を達成する脱着式フィルターを設けた場合には、成型品に残留するという不具合が発生する。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、カーボン粉粒と液状の結合材との混合物の射出成形において均一な充填を達成でき、安定した充填状態を確保することができる電磁誘導加熱調理器の製造方法を提供することを目的とする。
この発明に係る電磁誘導加熱調理器の製造方法は、カーボン粉粒が主体の誘電体と結合材との混合物を成型用金型内に注入して容器状に賦型する電磁誘導加熱調理器の製造方法において、成型用金型内の混合物の最終充填部分に通気膜を載置した排気口を設け、排気口から脱気して減圧状態を確保した後に、混合物を注入して得た成形品を、高温の無酸素条件下で炭化させることを特徴とする。
この発明に係る電磁誘導加熱調理器の製造方法は、射出成形における金型内の充填最終部分の閉塞状態に伴うガス溜まりが金型内に設けた排気口から脱気して減圧状態を確保したので、均一な充填を達成できるほか、注入したカーボン粉粒を含む混合物が排出口に侵入することを抑止して、射出のたび毎に、排出口に侵入するカーボン粒子を排除するための清掃が必要であったのが不要となり、安定した充填状態を確保することができる。
実施の形態1.
図1、図2は実施の形態1を示す図で、図1は底面に排気口を設けた釜の形状に賦型する金型の模式図、図2は成型品から採取した試料の、表層面を含む密度と、表面部分を削除したコア部分の試料について曲げ強度を測定した結果を示す図である。
射出成形によって鍋状の成型品を得る方法に関し、原料であるカーボン粉粒と液状の結合材との混合物を充填する鍋状の金型から得られる電磁誘導加熱調理器の製造方法について、以下に詳述する。
まず、石油コークスを3000℃の無酸素状態で焼成してグラファイト化した後、0.3mm以下に粉砕したカーボンの粉粒物を、常温で固体のフェノール樹脂(結合材の一例)と混練した。このとき、後段の射出成形機で混練した原料をスクリューで押し出す際に気泡の排出を十分に行うための混練を十分に行うことが肝要である。
このとき、用いるフェノール樹脂には、反応が進行して金型内流動時の粘度が過度に高くなることを抑止する反面、短時間に硬化が完了するようにフェノール樹脂の反応速度を調整することが肝要である。
次に、粉砕したグラファイト化したカーボンの粉粒と未硬化のフェノール樹脂との混合物を150℃に加温し、図1に示す金型に注入して鍋の形状に賦型する。金型の注入口1は、図1に示す釜の開口部に設けた鍔2の外縁部付近に設けられる。釜の鍔2部分の肉厚は大きい状態にあり、材料を注入する際の抵抗が少なくて円滑に行なえるので好適である。カーボン粉粒が主体の誘電体は、磁性金属の粒子または繊維およびカーボン繊維の何れかを混合して構成される。これによって、電磁誘導加熱の適正効率を確保するとともに成形品のが割れなどに対する耐性を向上することができる。
注入された混合物は、釜の鍔2の外周に充填後、釜の底面部に向かって充填していくように、ゲートの位置と大きさが設定されている。この時、外面部を成す金型の底面に設けた排気口は、金型内部に残留するガスを排出するための排気管3と、排気管3に設けた排気ポンプ(図示せず)によって、金型内部の減圧状態を確保する。
最終充填部分である排気管3には、パルプまたは樹脂の繊維から成る不織布4(通気膜の一例)を載置し、原料のカーボン粉粒を含む混合物の流動によってしわなどの変形を来すことのないように、排気管3と、直径が約0.5mmの細孔を設けて排気管3より小さな排気板5の間隙にリング状の形状を成す押板6に巻き込むようにして押し込んで係止する状態を確保して保持している。
金型内に注入された原料であるカーボン粉粒を含む混合物は、釜の側面に沿って底部方向に向かって流動し、このとき、底面部に設けた排気管3から金型内の空気などのガスが排出されて減圧状態にあるから、流動性が低下せずに充填を完了することになる。
また、排気管3には原料の侵入が一切認められず、継続した成形を可能とした。金型に注入した原料は成型品の底部に位置し、排気管3に載置したパルプ繊維で成る不織布4に含浸した状態で保持される。つまり、金型から取り出した成型品の底部に残留した状態となるが、後段の焼成処理において分解し、消失するので、成形品からの除去が不要となる。
次に、成形品を焼成して結合材を炭素化し、誘電加熱が可能な素材を備えた鍋となるように処理を行った。上述した射出成形によって得た成型品を窒素雰囲気中の電気炉内で加熱する。成形時に残存した内部応力の解放による膨張挙動と焼成時の分解生成物放散に伴う収縮挙動によって、クラックなどが発生しないように、段階的に温度の上昇を制御することが肝要であった。このため、焼成処理は、300℃までを3〜5℃/hr、600℃までを1〜3℃/hr、1200℃までを5〜10℃/hr の昇温速度で焼成し、冷却も5〜10℃/hrで行った。
このようにして得られた成型品には、排気管3に不織布4を配設しないものが排気管3の近傍に位置する成型品内部に気泡を含有しているものが散見されるのに対し、本実施の形態による成型品は均質で緻密な構造を有していることを、成型品を破断した断面の構造について、光学顕微鏡を用いて目視による確認を行った。
また、得られた成型品を任意の同様位置から採取した試料について、表層面を含む密度と、表面部分を削除したコア部分の試料について曲げ強度を測定した結果を図2に示した。何らの措置も施さない排気口から金型内のガスを排気した場合(図2では、排気口のみ)、注入口に近い開口部近傍の側面部に比較して底部の密度が低く、それに相応して曲げ強度も低い特性を備えていた。これに対して本実施の形態による成型品は両部位(開口部外縁及び底部分)がほぼ同じ特性値であり、排気口のみの場合より、特に底部分の強度が向上して均質な充填状態に改善されたことを確認した。これは、排気口に射出した成形原料が到達して排気口を封止しても、本実施の形態による排気口から不織布4の繊維間の空隙を通じて金型内に残留するガスの排出を継続して行うことが可能であり、原料が流動する際の圧力付加が抑制されるためである。
以上のカーボン凝結体から成る成形品の表面には、結合材分解物の気散による気孔が多く存在し、調理物の不要な含浸を来して不衛生な状況を醸し出すむ原因と成りうる。さらに、カーボン凝結体は耐摩耗性に劣るうえ、調理の際に調理物が密着して調理に不具合を生じる。このため、鍋状の成型品を使用するためには、鍋状成型品の表面を保護する塗装を施す必要がある。内面については調理物を付着し難い態様を確保することが必要であり、調理面にフッ素樹脂の塗装を行った。また、外面には、耐摩耗性と耐熱性に優れるシリコン樹脂を塗布した。
上述した表面塗装は、気孔内への塗料の含浸に伴うアンカー効果によって強固に固着されており、剥離の強さは、5mm間隔の升目状の切り目を設けた塗装面に粘着テープを密着させた後、これを剥離した時に塗装面の剥離が全く生じないことから、実用上の耐性が有することを確認した。
実施の形態2.
図3、図4は実施の形態2を示す図で、図3は側面と底面に排気口を設けた釜の形状に賦型する金型の模式図、図4は成型品から採取した試料の、表層面を含む密度と、表面部分を削除したコア部分の試料について曲げ強度を測定した結果を示す図である。
鍋状成形品側面に相当する金型内面に排気口を設け、当該部位に不織布を載置、保持した状態の金型内にカーボン粉粒とフェノール樹脂の混合物を射出注入して賦型した後、これを無酸素状態下で焼成処理を行うことによって誘電加熱が可能な鍋状成形品を得る手段について、以下に詳述する。
鍋状の成型品を射出成形によって得る手段で、石油コークスを3000℃の無酸素下で焼成してグラファイト化した0.3mm以下のカーボン粉砕物に100〜150℃で溶融する半硬化状態の熱硬化性樹脂を結合材とした混合物を原料とし、射出成形機のスクリューで脱気しながら溶融・混練後に金型に射出することによって賦型した。カーボン粉粒が主体の誘電体は、磁性金属の粒子または繊維およびカーボン繊維の何れかを混合して構成される。
図3に示す金型を用い、釜の鍔2の外縁部に設けた金型の注入口1からの原料の充填に伴う金型内の空隙に存在する空気が、原料の射出注入を阻害させるので、金型内部から排気して減圧状態を確保した。
金型内に残留する空気は、最終充填部分の他に鍋状成形品の側面部にも排気口を設け、最終充填位置であって最下部にある排気口と合流する配管を通じて排出する。また、各排気口の構造は、実施の形態1と同様にパルプ繊維で成る不織布4を載置して固定した上、原料のカーボン粉粒を含む混合物の流動によってしわなどの変形を来すことのないように、0.5mmの直径を有する排気口外縁の7.5mm外側にある押板6による係止状態で維持している。排気口は、金型内部に残留するガスを排出するための排気管3と、排気管3に設けた排気ポンプ(図示せず)によって減圧状態が確保されている。
このとき、結合材には半硬化状態の熱硬化性樹脂(例えば、炭素含有率の高いフェノール樹脂やコプラ系樹脂)を用いることによって、金型内流動時の粘度が過度に高くなることを抑止する反面、金型への充填が完了した後に反応が急速に進行して硬化が完了するように反応速度を調整することが肝要である。原料が金型内を円滑に充填し、その後の硬化を促し、効率的に賦型する上で、金型を150℃に加温することを併用した。
金型内に注入された原料であるカーボン粉粒を含む混合物は、釜の側面に沿って底部方向に向かって流動し、このとき、排気口から金型内の空気などのガスが排出されて減圧状態が維持されているが、残余する空気と原料から発生する各種ガスが原料の充填とともに圧縮され、原料の流動を阻害する。
このため、排気口に載置した不織布4を通じて上述した残余空気や各種ガスを最終充填部分に排気口が無くとも側面部を含む不織布4の繊維間から排出し、原料が不織布4を通過しないので、安定した成形を可能とした。
次に、射出成形によって賦型した成形品内にある結合材を炭素化し、誘電加熱が可能な素材を備えた鍋となるように焼成処理を行った。記成型品は、窒素雰囲気中の電気炉内で加熱することによって、成形時に残存した内部応力の解放による膨張と焼成時の分解生成物放散に伴う収縮の相反する挙動によってクラックなどが発生しないように、段階的に温度の上昇を制御することが肝要であった。このため、焼成処理は、300℃までを3〜5℃/hr、600℃までを1〜3℃/hr、1200℃までを5〜10℃/hr の昇温速度で焼成し、冷却も5〜10℃/hrで行った。
このようにして得られた成型品には、側面部に排気口に不織布4を配設しないものが、排気口の近傍に位置する成型品内部に気泡を含有しているものが散見されるのに対し、本実施の形態による成型品は均質で緻密な構造を有していることを、成型品を破断した断面構造を光学顕微鏡を用いた目視によって確認した。
また、得られた成型品を任意同様位置から採取した試料について、表層面を含む密度と、表面部分を削除したコア部分の試料について曲げ強度を測定した結果を図4に示した。図4に記載した従来の金型で成形したもの(排気口のみ)に比較して、本実施の形態による成型品は両部位(開口部外縁及び底部分)がほぼ同じ特性値にあり、均質な充填状態が確保できることを確認した。
以上のカーボン凝結体から成る鍋状の成型品には、内面の調理面にフッ素樹脂の塗装を行い、また、外面には耐摩耗性と耐熱性に優れるシリコン樹脂を塗布した。これらの表面塗装には、気孔内への塗料の含浸に伴うアンカー効果によって強固に固着され、剥離の強さは5mm間隔の升目状の切り目を設けた塗装面に粘着テープを密着後の引き剥がしによる塗装面の剥離が生じないことから、実用上の耐性が有することを確認した。
なお、本実施の形態1,2では、結合材としてフェノール樹脂を用いたが、これに代えてタールピッチなどの炭素含有率の高い物質であれば、高温での焼成時における分解生成物を飛散した後の炭素が十分に残存して、収縮や結合力の不足が生じることもないので、代替が可能である。
また、本実施の形態1,2では、排気口にパルプ繊維で成る不織布4を載置したが、これに代えてガラス繊維から成る不織布4を用いた場合には、1000℃以上、好ましくは1300℃の焼成処理によってガラスが溶融し、成型品と一体化するとともに、当該部分を補強して耐摩耗性を向上させる。従って、底面中央部に集中して応力が付加される炊飯器の温度検知器の当接において、損傷を抑制することが可能となる効果を付与できる。
実施の形態1を示す図で、底面に排気口を設けた釜の形状に賦型する金型の模式図。 実施の形態1を示す図で、成型品から採取した試料の、表層面を含む密度と、表面部分を削除したコア部分の試料について曲げ強度を測定した結果を示す図。 実施の形態2を示す図で、側面と底面に排気口を設けた釜の形状に賦型する金型の模式図。 実施の形態2を示す図で、成型品から採取した試料の、表層面を含む密度と、表面部分を削除したコア部分の試料について曲げ強度を測定した結果を示す図。
符号の説明
1 金型の注入口、2 鍔、3 排気管、4 不織布、5 排気板、6 押板。

Claims (5)

  1. カーボン粉粒が主体の誘電体と結合材との混合物を成型用金型内に注入して容器状に賦型する電磁誘導加熱調理器の製造方法において、
    前記混合物を前記成型用金型内に注入する注入口を当該電磁誘導加熱調理器の上部開口
    部外縁付近に設け、
    前記成型用金型内の前記混合物の最終充填部分に通気膜を載置した排気口を設け、前記排気口から脱気して減圧状態を確保した後に、前記混合物を注入して得た成形品を、高温の無酸素条件下で炭化させることを特徴とする電磁誘導加熱調理器の製造方法。
  2. 前記結合材は、フェノール樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器の製造方法。
  3. 前記カーボン粉粒が主体の誘電体は、磁性金属の粒子または繊維およびカーボン繊維の何れかを混合して構成されることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器の製造方法。
  4. 前記通気膜が、容器底部に最終充填部分を配する排気口上に載置したガラス繊維から成る不織布であることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器の製造方法。
  5. 前記通気膜が、パルプまたは樹脂の繊維から成る不織布であることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器の製造方法。
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