JP2010200638A - 嚥下食用のにぎり寿司の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 嚥下食でありながら、従来のものと、ほぼ同等の外観やおいしさを楽しめるにぎり寿司、特に、甘海老の身を寿司種の一部として利用した嚥下食用のにぎり寿司を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る嚥下食用のにぎり寿司の製造方法は、ペースト状にした甘海老の身と、ゲル化剤が添加された液体との混合物を、棒状に成形してから冷却し、ゼリー状の甘海老様寿司種を得た後、この甘海老様寿司種を酢飯の上に載せて得ることを特徴としている。また、この場合において、前記ゼリー状の甘海老様寿司種の一端に、甘海老の尾の部分を加熱したものが取り付けられていることや、前記ゼリー状の甘海老様寿司種の硬さが、1000〜50000N/m2の範囲内であることも特徴としている。
【選択図】なし
【解決手段】 本発明に係る嚥下食用のにぎり寿司の製造方法は、ペースト状にした甘海老の身と、ゲル化剤が添加された液体との混合物を、棒状に成形してから冷却し、ゼリー状の甘海老様寿司種を得た後、この甘海老様寿司種を酢飯の上に載せて得ることを特徴としている。また、この場合において、前記ゼリー状の甘海老様寿司種の一端に、甘海老の尾の部分を加熱したものが取り付けられていることや、前記ゼリー状の甘海老様寿司種の硬さが、1000〜50000N/m2の範囲内であることも特徴としている。
【選択図】なし
Description
本発明は、高齢者や脳梗塞の後遺症を持つ方など、咀嚼(噛むこと)や嚥下(飲み込むこと)の機能が低下している人向けの食品(以下、これを「嚥下食」という。)として好適なにぎり寿司の製造方法に関するものである。
従来より、嚥下食として、食材を細かく刻んだ「キザミ食」や、食材をミキサーでペースト状にした「ミキサー食」が良く知られている。これらの嚥下食は、食する人が、食材を噛み砕く必要等が無いため、このような食形態とすることで、咀嚼・嚥下の機能が低下している人にも、様々な食品を提供することができる。そのため、キザミ食やミキサー食は、嚥下食として、病院や介護施設等において、ごく一般的に提供されている。
しかしながら、これらの嚥下食は、食材が細かく刻まれた状態や、粘性の高いペースト状態となっているため、これらを食べる人にとって、食塊形成が困難で、非常に飲み込みづらい食形態である、という問題がある。そして、この問題は、これらを食する人の咳やムセの回数を多くしてしまい、場合によっては、細かく刻まれた食材等が食する人の気管に入ってしまうこと(誤嚥)の原因や、最悪の場合、誤嚥性肺炎を引き起こす原因ともなってしまっている。
また、これらの嚥下食は、食する人が「何を食べているのかわからない」という不満を抱きやすく、食する人に、食事の楽しみや満足感等を与えづらい食形態である、という問題もある。この問題は、嚥下食を食べる人の食欲低下の原因ともなり、本来、嚥下食を食べることによって、体力を維持・回復すべき人らに、食事による充分な恩恵を与えられない、という問題もある。
特に、この問題は、にぎり寿司を、嚥下食とした場合に顕著に現れることになる。にぎり寿司をキザミ食等としてしまうと、それは、もはやにぎり寿司とは言えず、このような食形態では、これを食する人達に、にぎり寿司本来のおいしさを提供することができないからである。
さらに、にぎり寿司は、日本人にとって馴染み深く、誰からも好かれる食品であるため、嚥下食としても、おいしく提供されることが、多くの病院や介護施設等において切望されている。
本発明者は、このような実情のもと、従来のにぎり寿司とほぼ同等の外観やおいしさを有しながらも、嚥下食として好適なにぎり寿司の製造方法について、鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者は、従来には無いまったく新しい方法によって、嚥下食でありながら、従来のものと、ほぼ同等の外観やおいしさを楽しめるにぎり寿司を製造することができる、という知見を得、本発明を創作するに至った。
なお、本発明を出願するにあたって、出願人において過去の特許文献等を調査したところ、嚥下食に関する技術について、下記の文献を発見することができたが、本発明に係る技術的思想等を詳述したものについては、発見することができなかった。
本発明は、嚥下食でありながら、従来のものと、ほぼ同等の外観やおいしさを楽しめるにぎり寿司、特に、甘海老の身を寿司種の一部として利用した嚥下食用のにぎり寿司を提供することを目的とする。
そのための手段として、本発明に係る嚥下食用のにぎり寿司の製造方法は、ペースト状にした甘海老の身と、ゲル化剤が添加された液体との混合物を、棒状に成形してから冷却し、ゼリー状の甘海老様寿司種を得た後、この甘海老様寿司種を酢飯の上に載せて得ることを特徴としている。
また、本発明に係る嚥下食用のにぎり寿司の製造方法は、以上の場合において、前記ゼリー状の甘海老様寿司種の一端に、甘海老の尾の部分を加熱したものが取り付けられていることや、前記ゼリー状の甘海老様寿司種の硬さが、1000〜50000N/m2の範囲内であることも特徴としている。
本発明によれば、嚥下食でありながら、従来のものと、ほぼ同等の外観やおいしさを楽しめるにぎり寿司、特に、甘海老の身を寿司種の一部として利用した嚥下食用のにぎり寿司を提供することができる。
以下、本発明に係る嚥下食用のにぎり寿司の製造方法を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下においては、まず最初に、にぎり寿司用の酢飯の製造方法について説明する。
まず、米と当該米の400〜500重量%の水との混合物を鍋に入れ、90℃以上に加熱する。次に、この鍋に増粘多糖類を加えて混ぜる。その後、増粘多糖類を加えた混合物を、よく混ぜながら、所定の水分量が除去されるまで、さらに加熱し続けて米飯を得る。その後、得た米飯に、酢や砂糖、市販されている粉末状の酢飯の素等を適宜添加して、これを冷却し、にぎり寿司用の酢飯を得る。
なお、以上の米飯を得る過程において、増粘多糖類を加えた混合物から除去する水分量は、得ようとする米飯が、酢飯用の米飯として好適な硬さである、1000〜50000N/m2の範囲内となるようにするため、前記増粘多糖類を加えた混合物全体の5〜25重量%とすることが好ましい。
また、以上の米飯を得る過程において使用される「増粘多糖類」とは、食品にとろみを付けるための食品添加物をいい、これには、増粘安定剤や、ゲル化剤等と呼ばれるものが含まれる。なお、このような増粘多糖類として、例えば、株式会社フードケア(神奈川県相模原市)の商品「ホットゼリーパウダー」などがある。
次に、1尾の重さが4g程度の甘海老の身を2尾用意する。これを、流水で良く洗い、キッチンペーパー等でしっかりと水気を切る。そして、この甘海老の身から尾の部分を切除し、この尾の部分は、お湯で茹でる等して加熱しておく。また、水気を切った甘海老の身を、包丁で叩いて細かく刻み、ペースト状にした甘海老の身を得る。
次に、ゲル化剤として、伊那食品工業株式会社(長野県伊那市)の商品「介護食用ゼラチン寒天(別名:イナゲルN700)」を用意する。そして、水と、当該水の3重量%の「介護食用ゼラチン寒天」とを鍋に入れて加熱し、ゲル化剤が添加された液体を得る。
次に、ペースト状にした甘海老の身と、ゲル化剤が添加された液体とを合わせた混合物をつくる。この混合物が少し冷めて、ゼリー状に固まり始めたら、これをラップで巻いて長さ10cm程度の棒状に成形し、さらに冷却する。その後、この棒状に成形したものを半分(5cm程度の長さ)に切り、これらそれぞれの一端に、甘海老の尾の部分を加熱しておいたものを取り付けて、ゼリー状の甘海老様寿司種を得る。
そして、用意した酢飯を、にぎり寿司のシャリとして握ったものに、わさびを適量塗り、この上に、5cm程度の長さに切ったゼリー状の甘海老様寿司種を二つ載せる。このようにして、本実施形態に係る嚥下食用のにぎり寿司を製造する。
本実施形態に係るにぎり寿司は、以上のような構成となっているため、見た目は、従来の甘海老のにぎり寿司のような外観を呈しているにも関わらず、これを食した際には、容易に舌圧だけで潰すことができるようになっている。
なお、以上の実施形態において、「甘海老」とは、甘海老の名称で一般的に知られている海老すべてをいい、ナンバンエビ、アカエビ、ホッコクアカエビ等の別名で呼ばれるものも当然に含まれるものとする。
また、以上の実施形態においては、ゲル化剤として、伊那食品工業株式会社(長野県伊那市)の商品「介護食用ゼラチン寒天(別名:イナゲルN700)」を使用しているが、本発明においては、当然ながら、これ以外にも、従来よりゲル化剤として使用されているもの、例えば、ゼラチン、寒天、ペクチン等を、単体で、又は、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。なお、この場合は、ゼリー状の甘海老様寿司種が、嚥下食として好適な硬さである、1000〜50000N/m2の範囲内となるように、ゲル化剤の量を調節することが好ましい。
さらに、以上の実施形態においては、にぎり寿司用の酢飯として、米と水との混合物に増粘多糖類を加えて混ぜ、これを加熱し続けて得た米飯を使用しているが、本発明においては、これ以外の米飯であって、嚥下食用の米飯として従来から存在しているものを使用しても構わない。
ただし、以上の実施形態で説明した米飯は、増粘多糖類を加えた後、さらに加熱し続けることによって、増粘多糖類が各米粒の中まで浸透しているので、この米飯を使用することで、従来の嚥下食用の米飯よりも形が崩れにくく、食塊形成がし易く、かつ、容易に舌圧だけで潰すことができる酢飯を得ることができる。また、得た酢飯を冷解凍する際に、各米粒内の離水と白濁化を防止することができ、冷解凍をして使用する際にも好適な、にぎり寿司用の酢飯を得ることもできる。
次に、以下に示す実施例により、本発明について更に詳細に説明を行う。
[実施例1:酢飯]
米150g、水750gを用意して、それぞれを鍋に入れ、これらの混合物を得た。そして、この鍋を加熱し、中の混合物が沸騰してきたら、火を弱火にして、株式会社フードケア(神奈川県相模原市)の商品「ホットゼリーパウダー」22.5gを、増粘多糖類としてこの鍋に加えた。
米150g、水750gを用意して、それぞれを鍋に入れ、これらの混合物を得た。そして、この鍋を加熱し、中の混合物が沸騰してきたら、火を弱火にして、株式会社フードケア(神奈川県相模原市)の商品「ホットゼリーパウダー」22.5gを、増粘多糖類としてこの鍋に加えた。
その後、ホットゼリーパウダーを入れた混合物を、弱火で撹拌しながら10分間煮込んだ。次に、火を止める直前に、市販の粉末状の酢飯の素を、煮込んだ混合物に入れ、よく混ぜ冷まし、にぎり寿司用の酢飯を得た。
[実施例2:甘海老のにぎり寿司]
次に、1尾の重さが4g程度の甘海老の身を2尾用意した。これを、流水で良く洗い、キッチンペーパーでしっかりと水気を切った。そして、この甘海老の身から尾の部分を切除し、この尾の部分をお湯で茹でて加熱した。また、水気を切った甘海老の身を、包丁で叩いて細かく刻み、ペースト状にした甘海老の身を得た。
次に、1尾の重さが4g程度の甘海老の身を2尾用意した。これを、流水で良く洗い、キッチンペーパーでしっかりと水気を切った。そして、この甘海老の身から尾の部分を切除し、この尾の部分をお湯で茹でて加熱した。また、水気を切った甘海老の身を、包丁で叩いて細かく刻み、ペースト状にした甘海老の身を得た。
次に、伊那食品工業株式会社(長野県伊那市)の商品「介護食用ゼラチン寒天(別名:イナゲルN700)」を用意した。そして、水と、当該水の3重量%の「介護食用ゼラチン寒天」とを鍋に入れて加熱し、ゲル化剤が添加された液体を得た。
その後、ペースト状にした甘海老の身と、ゲル化剤が添加された液体とを合わせた混合物をつくった。この混合物が少し冷めて、ゼリー状に固まり始めたら、これをラップで巻いて長さ10cm程度の棒状に成形し、さらに冷却した。その後、この棒状に成形したものを半分(5cm程度の長さ)に切り、これらそれぞれの一端に、甘海老の尾の部分を茹でたものを取り付けて、ゼリー状の甘海老様寿司種を得た。
そして、用意した酢飯を、にぎり寿司のシャリとして握ったものに、わさびを適量塗り、この上に、5cm程度の長さに切ったゼリー状の甘海老様寿司種を二つ載せた。このようにして、本実施例に係る嚥下食用のにぎり寿司を製造した。
こうして製造した嚥下食用のにぎり寿司は、時間が経過しても形崩れすることが無かった。また、その外観を観察したところ、従来の甘海老のにぎり寿司と同等の外観を呈していた。さらに、この嚥下食用のにぎり寿司を食したところ、舌圧だけで潰すことができ、嚥下食として良好な状態であることを確認できた。また、甘海老のにぎり寿司としてのおいしさを味わうこともできた。
Claims (3)
- ペースト状にした甘海老の身と、ゲル化剤が添加された液体との混合物を、棒状に成形してから冷却し、ゼリー状の甘海老様寿司種を得た後、この甘海老様寿司種を酢飯の上に載せて得ることを特徴とする嚥下食用のにぎり寿司の製造方法。
- 前記ゼリー状の甘海老様寿司種の一端に、甘海老の尾の部分を加熱したものが取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の嚥下食用のにぎり寿司の製造方法。
- 前記ゼリー状の甘海老様寿司種の硬さが、1000〜50000N/m2の範囲内であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の嚥下食用のにぎり寿司の製造方法。
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JP2009047580A JP2010200638A (ja) | 2009-03-02 | 2009-03-02 | 嚥下食用のにぎり寿司の製造方法 |
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