以下、本発明における実施の形態である自動販売機を図1乃至図13に基づいて説明する。
先ず図1および図2を用いて自動販売機の全体構造を説明する。図において、1は前面が開口した本体キャビネットである。前記本体キャビネット1は鋼板製の外箱の内側、すなわち、上壁,左右側壁,背壁および底壁1aにウレタンフォームからなる断熱ボードを配設して断熱筐体として構成されている。前記本体キャビネット1の断熱ボードで囲まれた商品収納庫内は断熱仕切板11により左右方向に複数、この実施の形態では3つの商品収納室12,13,14に区画されている。左右の商品収納室12,14には従来より良く知られている湾曲したセグメントを上下方向に連接したセグメント列を前後に対向配置して蛇行した商品通路を構成してなるサーペンタイン式商品収納ラック121,141がそれぞれ左右2列ずつ収設されている。中央の商品収納室13には本発明により提供される後述するスラント式の商品収納ラック20がそれぞれ収設されている。また、スラント式の商品収納ラック20はレール機構50(図2参照)により商品収納庫から前方に引出し可能に支持されている。前記レール機構50については後述する図11乃至図13で説明する。
前記商品収納ラック121,141,20の下部には前下がりに傾斜し、かつ、無数の穴が形成されたシュート2が配置されている。前記シュート2の下部には、それぞれの商品収納室12,13,14を冷却もしくは加熱して商品収納ラック121,141,20に収容した商品をコールド・ホット状態に保存する冷却ユニット若しくは冷却/加熱ユニットが配設されている。また、前記本体キャビネット1の底壁1aの下部は機械室として形成され、この機械室には前記冷却/加熱ユニットの冷却ユニットと冷凍サイクルを構成する圧縮機3(図2参照)、凝縮器4、膨張機構(図では隠れて見えない)および凝縮器4に送風する庫外ファン5が配設されている。前記冷却ユニットのみが配設された商品収納室はコールド専用室、冷却/加熱ユニットが配設された商品収納室はホット/コールド兼用室とされ、図に示す例では商品収納室12がコールド専用室、商品収納室13,14がホット/コールド兼用室とされ、この場合コールド専用室である商品収納室12の庫内下部には機械室の圧縮機3,凝縮器4で圧縮,凝縮された冷媒が循環される蒸発器6、庫内ファン7が冷却ユニットとして設置されており、ホット/コールド兼用室である商品収納室13,14の庫内下部には前記蒸発器6、庫内ファン7に加えて商品加熱用のヒーター8が加熱ユニットとして設置されている。そして、各商品収納室12,13,14の背面には循環用ダクト9が冷却ユニット若しくは冷却/加熱ユニットと連通して配備され、前記循環用ダクト9の上端9aは商品収納庫の略中段位置に開口している。なお、図1において122,142は商品収納ラック121,141を固定する固定金具である。
前記本体キャビネット1の前面に開閉自在に装着された外扉10(図1参照)の前面には良く知られているようにディスプレイ台に載置された商品見本のディスプレイ室が形成され、このディスプレイ室の前面を覆う透明板には各商品見本に対応して設けられた商品選択ボタンを備えた商品選択ボタンユニットが配設されるとともに商品取出口10aに加えて硬貨投入口、紙幣投入口、釣銭返却口、返却レバー、シリンダー錠付きのハンドルロック装置などが組付けられている。前記本体キャビネット1における商品収納庫の前面を閉塞する内扉15は、この例では上下に分割されており、下部側の内扉15には各商品収納室12,13,14のシュート2と対峙する位置に搬出扉15aにより常時閉塞された商品搬出口が設けられている。前記商品搬出口の搬出扉15aは上端を軸支されて常時商品搬出口を閉塞して冷気若しくは暖気の流出を防止しており、シュート2を介して送出される商品により押し開かれるように形成されている。
さて、前記スラント式の商品収納ラック20の構成について図3を用いて説明する。図に示すように、左右一対の上部支持フレーム材21,21および下部支持フレーム部材22,22には前方および中央付近にそれぞれ一対の縦フレーム材23,23がねじにより固着されている。前記上部支持フレーム材21,21と、下部支持フレーム部材22,22と、前方および中央付近に設けたそれぞれ一対の縦フレーム材23,23が商品収納ラックを構築するフレーム材を構成する。前方の縦フレーム材23,23間には上下方向に複数の梁部材24が固着され、中央付近の縦フレーム材22,22の上端にも梁部材24が固着されている。上部支持フレーム材21,21および下部支持フレーム部材22,22の後方側(図2から理解できるように奥行き側であり、以下後方を奥行きともいう)は背板25と側面板26により閉塞されている。この閉塞された垂直方向に延在する空間は商品が落下する商品通路として形成されている。また、背板25の上部側には通風孔25a(図3参照)が形成されている。前記背板25および両側板26の下方には上方に開放したコ字状の送出部材27が後方側ほど高く前方に向かうにしたがって下方に傾斜するように取付けられている。つまり、送出部材27は、図2に示すように垂直の商品通路をシュート2および内扉15の商品搬出口を介して外扉10の商品取出口10aに連繋させるものである。そして、送出部材27の前端部にはクッション28が貼着されており、このクッション28は送出部材27とシュータ2との間の隙間を塞ぐ遮蔽部材として構成されている。なお、商品収納ラック20の各部材は厚板鋼板により形成されており、この商品収納ラック20は本体キャビネット1の商品収納庫の天井に敷設したレール機構50に取付けられる。この取付けについては後述する図11にて説明するが、レール機構50への取付けのために左右一対の上部支持フレーム材21,21の上端側にはU字状に折り曲げられたフック211が形成されている。
前記上部支持フレーム材21,21および下部支持フレーム部材22,22に固着された前後の縦フレーム部材23,23には傾斜した商品支持ユニット30が装着されている。この商品支持ユニット30の装着については後述するが、その装着のために後方側の縦フレーム部材23には上下方向に4つの切欠231が形成されている。前記縦フレーム部材23,23に装着される商品支持ユニット30の構成を図4に示す。図に示すように、商品支持ユニット30は左右一対の挟持部材31、この挟持部材31を連結する前後の連結部材32,33、後方の連結部材33の上に設置された商品搬出機構34および外側に向かって突出するように左右一対の挟持部材31に固着された取付金具35,35とからなる。
前記左右一対の挟持部材31は一方の面に潤滑塗膜が施された薄板の塗膜鋼板(以下、単に薄板鋼板ともいう)によりL字状に形成された長尺の部材からなり、それぞれ所定の間隙tをおいて対向配置されている。前記間隙tを形成する左右一対の挟持部材31,31の脚端部は一方の面(塗膜面)が外側となるように折り曲げによりダブルホールド(参照符合36を付している)されており、間隙tを形成する脚端部の上下両面が塗膜面(すななち、潤滑性が良好な面)となっている。前記左右一対の挟持部材31,31によりパウチ商品を吊下げ支持するのであるが、パウチ商品の装填については後述することとする。前記連結部材32,33は間隙tを残して左右一対の挟持部材31,31を囲繞するように枠体として構成されている。前記左右一対の挟持部材31,31は前記連結部材32,33にそれぞれねじにより強固に固着され、これにより左右一対の挟持部材31,31のそれぞれの脚端部の間に間隙tが一定に保たれている。前方側の連結部材32には正面視T字形の取付片321が一体に形成されている。この取付片321は図3に示した商品収納ラック20の梁部材24に係合するものであり、その上端は鉤状に折り曲げられ、かつ、脚片中央付近にはねじ孔322が形成されている。前記取付金具35は厚板鋼板により断面ハット形に形成され、それぞれの鍔部が挟持部材31にねじ止めされている。取付金具35の頭部には段付ねじ351が螺着されており、この段付ねじ351が図2に示した商品収納ラック20における中央付近の縦フレーム材23,23に係合するものである。前記商品搬出機構34はベース341とカバー342とからなる箱体の内部に搬出機構が組み込まれたものであり、その搬出機構を図5に示す。
図5は前記商品搬出機構34のカバー342を取り外した状態の斜め上方から見た斜視図である。図において、40は駆動源としてのソレノイドであり、このソレノイド40のプランジャー41にはストッパ部材42が連結されている。ストッパ部材42はプランジャー41の移動方向に平行な長孔43,43に段付ねじ421,421が遊嵌されており、プランジャー41の移動方向にスライド自在に配設されるとともに復帰ばね44が装着されている。また、前記ストッパ部材42の後端部には下方に延在する第1のストッパ45および第2のストッパ46が形成されている。なお、第2のストッパ46はベース341および左右の挟持部材31,31を連結する連結部材33に設けた開口(不図示)を貫通して下方に延在している。また、第2のストッパ46には図4に示したように先端に折り曲げにより後方側に向かって傾斜した押圧片462を備えた係止部材461が係止されている。
前記第1のストッパ45は一対の挟持部材31,31の後端部に位置し、第2のストッパ46は第1のストッパ45から所定距離だけ前方側に離れた位置に配置されている。そして、販売待機状態(ソレノイド40の非励磁状態)では第1のストッパ45が一対の挟持部材31,31により形成された間隙tに臨んで位置しており、第2ストッパ46が前記間隙tから左右方向にずれた位置に退避しており、ソレノイド40が励磁された販売時には第1のストッパ45が前記間隙tから退避し、第2のストッパ46が前記間隙tに臨むように移動するものである。なお、47はマイクロスイッチからなる商品検知スイッチ(売切れスイッチ)であり、マイクロスイッチの操作レバー471(図4参照)が一対の挟持部材31,31により形成される間隙tに臨むように配設されている。また、48はソレノイド40および商品検知スイッチ47に電源を供給する電源線と、商品検知スイッチ47からの検知信号を伝達する信号線が接続されたソケットであり、商品支持ユニット30に取付けられたコネクタに装着されるものである。
前述したように構成された商品支持ユニット30は次のようにして商品収納ラック20に装着される。今、図3では上下方向に4段の商品支持ユニット30を装着した状態を示しているが、これらの商品支持ユニット30を装着する場合、先ず、商品収納ラック20を構成する前方の縦フレーム材23,23の間から商品支持ユニット30を挿入する。この場合、左右の取付金具35,35が鉛直線上に並ぶように商品支持ユニット30を倒した状態で挿入する。これは前記左右の取付金具35,35が水平線上に位置する姿勢で商品支持ユニット30を縦フレーム材23,23の間に挿入すると前記取付金具35,35が左右の縦フレーム材23,23に当接することから、これを避けるためである。そして、商品支持ユニット30の取付金具35,35が前方の縦フレーム材23,23の間を通過した段階で商品支持ユニット30を元の姿勢に戻しつつ商品支持ユニット30を後方に移動させる。次いで、商品支持ユニット30の取付金具35,35に螺合された段付ねじ351,351を商品収納ラック20を構成する中央付近の縦フレーム材23,23に形成したそれぞれの切欠231に係合させる。この状態で商品支持ユニット30の前方側の連結部材32に形成されたT字形の取付片321を梁部材24に係合させてねじ止めする。このようにして商品収納ラック20に装着された商品支持ユニット30は前方側(商品投入側)が高く、後方側(商品搬出機構34側)が低くなるように傾斜した状態となる。
ここで、商品収納ラック20を構築する上部支持フレーム材21,21および下部支持フレーム部材22,22に取付けられた背板25および左右の側面板26,26により閉塞された空間は商品が落下する商品通路として形成されているとともに庫内空気の循環通路を構成している。このため、図2に示した前記蒸発器6、庫内ファン7からなる冷却ユニット若しくは前記蒸発器6、庫内ファン7,商品加熱用のヒーター8からなる加熱ユニットからの送風A(白抜き破線)は縦フレーム材23,23に上下複数段架設されたそれぞれの商品支持ユニット30内を矢印Bのように通過した後、背板25に形成した通風穴25a(図3参照)を介して矢印Cのように庫内背面に配設したダクト9の上端開口に導かれて冷却ユニット若しくは加熱ユニットに戻り、上下複数段の商品支持ユニット30に吊下げ支持された商品(パウチ商品)を均等に冷却若しくは加熱する。この場合、送出部材27の前端部とシュータ2との間に組立誤差などによって隙間が形成されたとしてもクッション(遮蔽部材)28により当該隙間が塞がれていることから前記送風Aが前記隙間を介してダクト9の上端開口に導かれる、すなわち、短絡通路が形成されることがない。したがって、冷気若しくは暖気が漏れなく一点鎖線で示す矢印A,B,Cの経路を通って循環するようにすることができる。
前記商品支持ユニット30に装填されるパウチ商品を図6に示す。図6(a)に示すようにパウチ商品100は可撓性袋状容器102に硬質の合成樹脂からなる注出口部としてのスパウト104を固着し、当該スパウト104にキャップ106を装着してなる。前記スパウト104にはフランジ105が形成されており、図6の(a)の例ではフランジ105が1個のパウチ商品100、(b)の例ではフランジ105が2個のパウチ商品200を示している。前記可撓性袋状容器102内にはスパウト104からゼリー状の飲食物が注入されており、可撓性袋状容器102が軟弱であることから起立させることが困難なものである。なお、107はスパウト104に設けられた接合フランジである。
上記のとおり容器形態が軟弱なパウチ商品は起立させることが困難なものであることから本発明においては前述した商品支持ユニット30に吊下げ支持するようにしたものであり、次に前記商品支持ユニット30へのパウチ商品の装填(補充)について図7を用いて説明する。図ではパウチ商品100を装填する場合を示し、前記商品支持ユニット30の前方から白抜き矢印で表すようにパウチ商品100を装填する。すなわち、前記商品支持ユニット30の左右一対の挟持部材31,31の間に形成された間隙tにスパウト104を挿入し、当該スパウト104に形成されたフランジ105を左右一対の結部材31,31に引っ掛ける。ここで、前記左右一対の挟持部材31,31の間に形成された間隙tはパウチ商品100のスパウト104の幅より大きくフランジ105の長さよりも短い所定の寸法に定められている。前記商品支持ユニット30の左右一対の挟持部材31,31にフランジ105を引っ掛けて吊下げられたパウチ商品100はフランジ105が左右一対の挟持部材31上を滑動して自重により後方に移動する。前記商品支持ユニット30の後方に移動したパウチ商品100は商品搬出機構34の第1のストッパ45(図4、図5参照)により係止され、当該位置に停止した状態で吊下げ支持される。次に装填されたパウチ商品100は第1のストッパ45により係止された商品に当接して停止する。このようにして前記商品支持ユニット30にパウチ商品100を補充して収容した状態を図8に示し、パウチ商品100は重力により略鉛直線に沿った姿勢で商品支持ユニット30に吊下げ支持される。
ここで、パウチ商品100は前記商品支持ユニット30の左右一対の挟持部材31,31における間隙tにスパウト104を挿入してフランジ105を引っ掛けて収容されるのであるが、パウチ商品100には図6に示したように、フランジ105以外にもキャップ106の下部が引っ掛け部として存在する。このため、パウチ商品100を商品支持ユニット30に装填する際、キャップ106(の下端)を前記商品支持ユニット30の左右一対の挟持部材31,31に引っ掛けるように誤装填されるおそれがある。このような誤装填があるとキャップ106の下端が左右一対の挟持部材31,31の間隙tの間に嵌り込んで商品詰まりを生じたり、最悪の場合には脱落してしまうことがある。この問題の解決策として、フランジ105と接合フランジ107との間の厚み寸法taに対してキャップ106とフランジ105の間の厚み寸法tbは小さく形成(ta>tb)されていることを利用し、左右一対の挟持部材31,31を構成する鋼板の厚さを厚くしてキャップ106の下端を引っ掛けることができないようにすることが考えられる。しかしながら、左右一対の挟持部材31,31に厚板鋼板を利用すると重量が増加するとともにコストが上昇する。そこで、この実施の形態では薄板鋼板を用いたとしても誤装填を防止することを可能とするため、間隙tをおいて対向配置された挟持部材31,31の脚端部を折り曲げてダブルホールドして厚み規制部材36としている。このように薄板鋼板をダブルホールドすることによってフランジ105の下部を引っ掛けることを許容し、キャップ106の下部を引っ掛けることが困難となるので、引っ掛け部分を間違って装填するような誤装填が防止される。
なお、図6の(b)に示したフランジ105が2個のパウチ商品200においても、下側のフランジ105を引っ掛けて装填せねばならないところ、上側のフランジ105が引っ掛け部として存在していることから上側のフランジ105を引っ掛けるような誤装填のおそれがある。しかしながら、下部のフランジ105と接合フランジ107との間の寸法tcに対して2個のフランジ105の間の寸法tdが小さく形成(tc>td)されていることから、左右一対の挟持部材31,31の脚端部を折り曲げてダブルホールドすることにより誤装填を防止することができる。
また、パウチ商品100はフランジ105を商品支持ユニット30の左右一対の挟持部材31,31の上に乗せ自重により滑らせるように構成されていることから、前記フランジ105と前記商品支持ユニット30の左右一対の挟持部材31,31の脚端部との摩擦抵抗が小さいことが望まれる。この要求に対しても間隙tをおいて対向配置された左右一対の挟持部材31,31の脚端部を折り曲げてダブルホールドしたこの実施の形態の商品収納ラックは有利である。すなわち、一般的に用いられる鋼板は切削加工を容易にするために一方の面に潤滑性の塗膜がコーティングされた塗膜鋼板であるから、この塗膜鋼板の一方の面(潤滑性の塗膜がコーティングされた面)が外側となるようにダブルホールド(図4等に参照符合36を付した部分)することによって、間隙tを形成する左右一対の挟持部材31,31の脚端部の上下両面が潤滑性の良好な面(摩擦抵抗が小さい面)となる。このため、パウチ商品100のフランジ105と左右一対の挟持部材31,31の脚端部との摩擦抵抗を小さくすることができる。更に、商品支持ユニット30の傾斜角度を大きくすることによりパウチ商品100の自重による滑りが良くなる一方、前記商品支持ユニット30の傾斜角度を大きくするとパウチ商品100自体は重力によって略鉛直線に沿った姿勢を維持し続けるので、図9に示すように左右一対の挟持部材31,31の脚端部の上下両面にパウチ商品100のフランジ105と接合フランジ107が同時に当接するようになる。この場合、左右一対の挟持部材31,31の脚端部にダブルホールドを施していないとパウチ商品100のフランジ105または接合フランジ107のいずれか一方と挟持部材31,31との脚端部との摩擦抵抗が大きくなる。一方、塗膜鋼板の一方の面(潤滑性の塗膜がコーティングされた面)が外側となるようにダブルホールドしたこの実施の形態の挟持部材31,31においては当該挟持部材31,31の脚端部の上下両面にパウチ商品100のフランジ105と接合フランジ107が同時に当接したとしても両者の摩擦抵抗を小さくすることができる。したがって、パウチ商品100の自重による滑りをよくするために前記商品支持ユニット30の傾斜角度を大きくすることができ、商品支持ユニット30へのパウチ商品の収容をスムーズに行うことができる。なお、挟持部材31,31を構成する塗膜鋼板としてダブルホールドするために薄板であることが望ましく、薄板の塗膜鋼板を用いた場合には重量の軽減化に寄与するものである。
更に、図6に示したようなパウチ商品においては中身飲食物が異なるもの、或いは可撓性袋状容器102に充填された飲食物の内容量の相違によってフランジ105の幅寸法L1,L2(例えば、L1<L2)が異なっている。特に、可撓性袋状容器102に充填された飲食物が同一で内容量の異なるパウチ商品においては外形が類似していることから誤って装填されるおそれがある。そこで、この実施の形態では図7に示したように、左右一対の挟持部材31,31の脚端部に近接して植設された一対の幅規制部材37を設けている。この一対の幅規制部材37の間の幅寸法L0はパウチ商品のフランジ105の幅寸法L1,L2(図6参照)に対してL1<L0<L2(但し、L1<L2である場合)と定められている。したがって、フランジ105の寸法がL0以下のパウチ商品については左右一対の挟持部材31,31の間に挿入して装填することを許容し、フランジ105の寸法がL0以上のパウチ商品については幅規制部材37により装填が阻止され、これにより種類の異なるパウチ商品の誤装填が防止される。なお、図7では幅規制部材37として専用の部材を植設したものについて説明したが、左右一対の挟持部材31,31と、この挟持部材31,31を連結する連結部材32とを固着するねじを利用することもでき、この場合には部品点数を削減することができる。
ここで、本発明の実施の形態である自動販売機における商品収納室12,13,14の冷却・加熱動作について図2を用いて説明する。まず、商品収納室13,14(ホット/コールド兼用室)をコールド室として使用する場合にはヒーター8をオフし、圧縮機3,凝縮器4で圧縮,凝縮された冷媒を蒸発器6に送り、蒸発器6で熱交換した冷気を庫内ファン7でシュータ2の下側から庫内に吹き出して商品収納ラック20,141内の商品を冷却し、循環用ダクト9を介して蒸発器6に戻すところの一点鎖線で示す矢印A,B,Cの経路を通って循環する冷気循環を行う。一方、商品収納室13,14をホット室として使用する場合は前記蒸発器6への冷媒を停止させてヒーター8をオンにし、上記と同様に暖気の循環を行って商品を加熱する。前記商品収納室13,14のホット/コールド室への切り替えは季節の変わり目などに行われる。なお、コールド専用室である商品収納室12は常時、蒸発器6で熱交換した冷気を庫内ファン8でシュータ2の下側から庫内に吹き出して商品収納ラック121内の商品を冷却し、循環用ダクト9を介して蒸発器6に戻すところの一点鎖線で示す矢印A,B,Cの経路を通って循環する冷気循環が行われている。なお、商品収納ラック20が収納された商品収納室13をホット/コールド兼用室としているが、これはパウチ商品としてホット商品として販売する商品が出現した場合に備えたものである。
次に、この実施の形態である自動販売機における販売時の動作について説明する。図10は商品搬出機構34の動作時における第1のストッパ45,第2のストッパ46の動作を示すものであり、商品搬出機構34の全体構成を示す図5をも参照しながら販売動作について説明する。
販売待機状態においてはソレノイド40が非励磁状態にあり、第1のストッパ45が左右一対の挟持部材31,31の間の間隙tの位置に突出して販売順位一番の商品(以下、販売商品ともいう)を係止しており、販売商品と販売順位二番の商品(以下、次販売商品ともいう)との間に位置する第2のストッパ46が左右一対の挟持部材31,31の間の間隙tの位置から退避している。この状態においてマイクロスイッチからなる商品検知スイッチ(売切れスイッチ)47の操作レバー471が販売商品に当接して商品検知信号を出力している。いま、外扉10(図1参照)に設けられた商品選択ボタンが操作されると不図示の制御部から対応する商品払出機構34(ソレノイド40)に所定時間幅の励磁信号が供給される。前記ソレノイド40が励磁されると図5に示したプランジャー41を介してストッパ部材42が左右方向(図5では右方向)に移動する。これにより第1のストッパ45および第2のストッパ46が図10において左方向に移動し、第1のストッパ45が間隙tから退避し、第2のストッパ46が間隙tに突出する。前記第1のストッパ45の間隙tからの退避により販売商品は第1のストッパ45による係止が解かれる。これと同時に第2のストッパ46が間隙tに突出するように移動する過程において当該第のストッパ46に設けた係止部材461の押圧片462が販売商品を押圧して販売商品を商品支持ユニット30から排出させた後、第2のストッパ46が間隙tに突出する。販売商品が搬出されると次販売商品以降の商品は支えを失うので順次商品支持ユニット30の後端部に向かって滑動して間隙tに突出した第2のストッパ46に係止されて一旦保持される。
前記ソレノイド40への励磁信号が遮断されるとプランジャー41が復帰ばね44により元の位置(図5の状態)に復帰して第1のストッパ45が間隙tの位置に突出し、第2のストッパ46が間隙tから退避する。前記第2のストッパ46が間隙tから退避すると第2のストッパ46に保持されていた次販売商品以降の商品は商品支持ユニット30の搬出端部に向かって滑動し、間隙tに突出した第1のストッパ45に係止されて販売待機状態となる。なお、前記商品搬出機構34により搬出されて商品支持ユニット30の後端部から落下する商品は図2に示す商品収納ラック20の送出部材27を介してシュート2に送出される。
さて、本発明の実施の形態に係るスラント式商品収納ラック20は、図2に示したようにレール機構50により商品収納庫から前方に引出し可能に支持されているものであり、次のこのレール機構50について図11乃至図13を用いて説明する。
図に示すように前記レール機構50は厚板鋼板により形成された固定レール60、可動レール70および係合レール80からなり、固定レール60が本体キャビネット1における商品収納庫の天井面に前後方向に敷設され、この固定レール60に可動レール70がスライド移動自在に支持され、この可動レール70に係合レール80がスライド移動自在に支持された構成となる。
前記レール機構50を構成する固定レール60は逆Uチャンネル状に形成され、左右側壁から内方に向かって突出するローラガイド部61が形成され、逆Uチャンネル状の底壁前方端近傍に切り起しにより下方に突出するストッパ片62が形成されている。また、固定レール60の左右側壁の後方端縁には鉤状の係合片63(図12、図13では右側の側壁の係合片63が見えている)が形成され、固定レール60の底壁前方端部にはボルト90の貫通穴64が形成されている。逆Uチャンネル状の固定レール60に遊嵌される可動レール70は全体として固定レール60と同様に逆Uチャンネル状に形成され、逆Uチャンネル状の底壁に凹部71を形成した構成となる。前記可動レール70における左右側壁72,72の内面には複数のローラ100(ローラ100の軸を100aで示している)が取付けられ、前記側壁72,72の外面には可動レール70の前後方向の略中央位置にローラ111が取付けられている。なお、前記可動レール70における左右側壁72,72の内面に取付けられた最後尾のローラ112は可動レール70の姿勢を維持するものであり、ローラ100よりも水平線に対して上段に位置するように取付けられている。
また、前記可動レール70の凹部71には可動レール70の前後方向の略中央位置に切起しにより上方に突出するストッパ片76が形成され、凹部71の前方端部にストッパモジュール73が取付けられている。前記ストッパモジュール73は図13の(b)に併記した可動ストッパ部材74および補強部材75からなる。前記可動ストッパ部材74は縦断面コ字状を成し、上方の脚片にねじ穴741が設けられ、下方の脚片にストッパ片742が曲げ起しにより設けられている。前記補強部材75はねじ穴751が設けられた取付部752から下方に折り曲げられた二股状の係合片753が設けられている。前記可動ストッパ部材74は可動レール70の凹部71底壁の下面に配設される一方、前記補強部材75が当該凹部71底壁の上面に配設されている。なお、前記可動レール70の凹部71底壁には前記補強部材75の係合片753が貫通可能な穴が形成されているものである。そして、前記補強部材75における二股状の係合片753の背後に可動ストッパ部材74のストッパ片742が位置する状態にそれぞれねじ穴751,741を介してねじ91(図11参照)等により取付けられる。なお、前記ねじ91は補強部材75を固定するねじであり、可動ストッパ部材74のねじは前記ねじ91に隠れて見えないが、そのねじとして段付ねじが用いられている。したがって、前記可動ストッパ部材74は当該段付ねじを中心に旋回させることができ、後述する係合レール80を組付ける際にストッパ片742を補強部材75の二股状の係合片753の背後から退避させることができるように構成されている。また、常時においては可動ストッパ部材74のストッパ片742を補強部材75の係合片753の背後に位置させてねじ92(図11参照)により固定して位置決めしている。
前記レール機構50を構成する係合レール80は左右両端に起立するラック係合突起81,81を有する広幅、つまり、図11に示すようにスラント式商品収納ラック20の左右一対の上部支持フレーム材21,21の間隔に略一致する広幅の板材からなり、その中央付近に上方に向けて切り起こされたストッパ片82が設けられ、その前端には曲げ起しにより保護突起83が形成されている。前記係合レール80の板面上には前後方向に2条の連結部材84,84が溶接により固着されている。前記連結部材84,84は断面鉤状に形成され、鉤の先端がそれぞれ外方を向いている。なお、ラック係合突起81,81の後端には商品収納ラック20の上部支持フレーム材21,21を係合させる際の位置決め突起811,811が形成されている。
次に、前記レール機構50の組立について説明する。まず、前記固定レール60に可動レール70を組み込むために固定レール60の後方から可動レール70を嵌め込む。この場合、可動レール70の左右側壁外面に設けたローラ111が固定レール60のローラガイド部61に乗るように相互の位置関係を保つ。前記ローラ111がローラガイド部61に乗るように固定レール60に組み込まれた可動レール70の前方への移動は可動レール70のストッパ片76が固定レール60のストッパ片62に当接することにより阻止される。ここで、可動レール70に取付けられた最後尾のローラ112は固定レール60の底壁内面に当接して可動レール70が前傾した場合にもスムーズに移動できるように構成されている。次いで、固定レール60に組み込まれた可動レール70の前方から係合レール80を組み付ける。この場合、係合レール80に設けた2条の連結部材84,84(の鉤)が可動レール70の左右側壁内面に設けたローラ100の上に乗るように相互の位置関係を保つ。
ここで、図13の(b)に示したように、可動レール70にはストッパモジュール73が取付けられており、ストッパモジュール73を構成する可動ストッパ部材74のストッパ片742が補強部材75の二股状の係合片753の背後に位置している場合には、当該ストッパ片742に係合レール80のストッパ片82が当接するので係合レール80を可動レール70に組み付けることができない。なお、可動レール70のストッパモジュール73を構成する補強部材75はその係合片753の二股の間を係合レール80のストッパ片82が通過できるように位置決めして取付けられている。そのため、係合レール80を可動レール70に組み付けるにあたり次の作業を行う。すなわち、可動レール70のストッパモジュール73を構成する可動ストッパ部材74のストッパ片742を補強部材75に固着しているねじ92を外して前記可動ストッパ部材74を旋回、つまり、可動ストッパ部材74を可動レール70の凹部71の底壁下面に取付けている段付ねじを中心として時計方向に旋回させ、前記補強部材75の二股状の係合片753の背後に位置していた可動ストッパ部材74のストッパ片742を補強部材75の二股状の係合片753の背後から退避させる。このように可動ストッパ部材74のストッパ片742を前記補強部材75の二股状の係合片753の背後から退避させた状態で係合レール80を可動レール70に組み付けると係合レール80のストッパ片82が補強部材75の係合片753の二股の間を通過してストッパモジュール73の後方に移動する。この状態で可動ストッパ部材74を反時計方向に旋回させてそのストッパ片742を元の位置、すなわち、補強部材75の二股状の係合片753の背後に位置する元の位置に戻し、ストッパ片742をねじ92により補強部材75に固定する。これにより係合レール80が前方へ移動すると係合レール80のストッパ片82が可動レール70の可動ストッパ部材74のストッパ片742に当接することとなり係合レール80の可動レール70との結合が保たれる。
前述のようにして組み立てられたレール機構50は、図2に示したように本体キャビネット1の商品収納庫の天井面に敷設される。すなわち、可動レール70および係合レール80が組み付けられた固定レール60の後方端部に形成された鉤状の係合片63を商品収納庫の内部に配設された後方フレーム材(不図示)に係合させる。次いで、固定レール60の前方端部に形成された貫通穴64(図4の(a)参照)を介してボルト9を商品収納庫の内部に配設された前方フレーム材(不図示)に螺合させて締め付ける。これによりレール機構50が商品収納庫の天井面に敷設される。
前記本体キャビネット1の商品収納庫の天井面に敷設されたレール機構50には次のようにしてスラント式の商品収納ラック20が取付けられる。すなわち、レール機構50を図12に示すように伸長させた状態で係合レール80の左右両端に形成されたラック係合突起81,81に商品収納ラック20の左右一対の上部支持フレーム材21,21の上端に形成されたフック211を係合させる。この場合、ラック係合突起81,81の後端に形成された位置決め突起811,811(図13の(c)参照)に左右一対の上部支持フレーム材21,21の後方の端縁を当接させるようにして位置決めする。前述したように商品収納ラック20を係合レール80に吊下げ支持した後、レール機構50を縮退させることによって商品収納ラック20は商品収納庫に格納される。商品収納庫に格納した商品収納ラック20への商品の補充は、図7に示したように商品支持ユニット30の左右一対の挟持部材31,31の間に形成された間隙tにスパウト104を挿入することにより行われる。なお、係合レール80の前端には曲げ起しにより保護突起83(図13の(c)参照)が設けられているので、商品補充の際に商品が衝突しても商品を傷つけることがない。
なお、本発明の実施の形態においては、前述したようにこの実施の形態に係る商品収納ラック20はレール機構50を設けた点でサーペンタイン式商品収納ラック121,141(図1参照)と構造上の相違があるが、サーペンタイン式商品収納ラック121,141の左右一対の側板の上端に折り曲げ加工によりフックを形成すればスラント式商品収納ラック20との互換性を持たせることができる。これによりサーペンタイン式商品収納ラックとスラント式商品収納ラックを構造上の互換性を持たせることができる。また、この実施の形態に係るスラント式の商品収納ラックはサーペンタイン式商品収納ラックと電気的にも互換性を持たせている。すなわち、サーペンタイン式商品収納ラックの商品搬出機構においては販売商品を係止する下ストッパと次販売商品を係止する上ストッパとをソレノイドにより駆動することによって前記下ストッパおよび上ストッパを商品通路に交互に突出させている。このことに鑑み、本発明に係る商品収納ラック20においても商品搬出機構34の駆動源としてソレノイド40を用い、このソレノイド40によりストッパ部材42を駆動して販売商品を係止する第1のストッパ45および次販売商品を係止する第2のストッパ46が左右一対の挟持部材31の隙間tに交互に出没するように構成したものである。また、商品収納ラック20に装填された商品を検出する商品検知スイッチ47(図4,図5参照)を備えており、この商品検知スイッチ47から商品の売切れ検知信号を出力するように構成されている。このような商品搬出機構34および商品検知スイッチ47を用いることによりサーペンタイン式商品収納ラックの商品搬出機構に供給される電源や制御信号により商品搬出機構34が商品搬出動作を実行し、商品検知スイッチ47が自動販売機の制御部に売切れ信号を送出する。つまり、サーペンタイン式商品収納ラックを搭載した自動販売機の制御プログラムを何ら変更することなく本発明の実施の形態に係る商品収納ラック20をサーペンタイン式商品収納ラックと交換して配線接続を行うことによって直ちに自動販売機を稼動させることができるものである。
前述したとおり本発明によれば、上下左右のフレーム材(上部支持フレーム材21,21と、下部支持フレーム部材22,22と、前方および中央付近に設けたそれぞれ一対の縦フレーム材23,23)により商品収納ラックの枠体を構築し、左右のフレーム材(縦フレーム材23,23)に上下方向に複数段架設され、商品(パウチ商品100,200)の引っ掛け部(フランジ105)を支持し、かつ、前方側(商品投入側)に対して後方側が低くなるよう傾斜して前記商品をその自重により滑らせて吊下げ収容するとともに後端部に商品搬出機構34を有する商品支持ユニット30を設けてなるスラント式商品収納ラック20を備えた自動販売機において、スラント式商品収納ラック20を商品収納庫から前方に引出し可能に支持する前後方向に伸縮自在なレール機構50を備えたことにより、商品補充時等に商品収納庫からスラント式商品収納ラック20を前方に引出すことができるので、商品収納ラック20に残っている商品の賞味期限を容易に確認することができる。
なお、前述した実施の形態においては飲み口部分に引っ掛け部を有し、容器形態が軟弱なパウチ商品について説明したが、これに限るものではない。例えば、容器形態が硬質であっても起立させることが困難な商品や横倒し姿勢で転動させることが困難であり、かつ、飲み口部分に引っ掛け部を有する商品や容器形状が異形であって飲み口部分にキャップなどが装着された商品にも本発明に係る商品収納ラックを適用することができるものであり、実施の形態に限定されるものではない。