以下、本発明の画像形成装置の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、導電性支持体上に感光層を少なくとも有し、表面層が下記構造式A及び下記構造式Bで表される繰り返し単位を含むフッ化アルキル基含有共重合体とフッ素系樹脂粒子とを含有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、2本以上の光ビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記電子写真感光体上に静電潜像を形成するマルチビーム方式の露光装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像装置と、前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写体に転写する転写装置と、を備える。
ここで、導電性とは、体積抵抗率が107Ω・cm未満を意味する。
構造式A及び構造式Bにおいて、l、m及びnは1以上の正数を、p、q、r及びsは0または1以上の正数を、tは2以上7以下の正数を、R1、R2、R3及びR4は水素原子又はアルキル基を、Xはアルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−S−、−O−、−NH−又は単結合を、Yはアルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−(CzH2z−1(OH))−又は単結合を表す。zは1以上の正数を表す。
マルチビーム方式の画像形成装置は画像形成プロセスの高速化に有効であると考えられているが、画質の点では必ずしも十分ではなく、特に、レーザの本数を数多くできる面発光レーザアレイを用いた場合に問題となる。すなわち、電子写真感光体上に形成される静電潜像の中に露光終了までの光ビームの走査回数(照射回数)が異なる領域が混在し、各領域間での照射回数の相違が画像上に筋状の濃度ムラとして視認されることがある。
図6は、スポット径50μmの30本のレーザビームを電子写真感光体上に各々走査させて1回の主走査で30本の走査線(走査線密度2600dpi)の走査を同時に行うと共に、主走査を1回行う毎に電子写真感光体を移動させて走査線を30本分ずつシフトさせた場合の、電子写真感光体の移動方向(副走査方向)に沿った露光エネルギーの分布を示すグラフである。
図示の通り、各回の主走査における露光エネルギー分布は略台形状となる。各回の主走査により電子写真感光体に与えられる露光エネルギーの分布のうち、台形の頂部に相当するエネルギー分布の平坦な部分は、1回の露光で全露光エネルギーが加えられる領域(一重露光領域)であり、他方、台形の裾部に相当する部分は2回の露光により全露光エネルギーが加えられる領域(多重露光領域)である。
本発明者らの検討によれば、多重露光領域の全露光エネルギーが一重露光領域の全露光エネルギーと等しい場合であっても、実際に得られる画像においては多重露光領域の方が一重露光領域よりも画像濃度が高くなり、図7に示すような筋状の濃度ムラが発生してしまうことがある。さらに、細線再現性が悪化してしまうことがある。
本発明者らは、マルチビーム方式の露光装置を用いた場合において、濃度ムラを抑制し、細線再現性に優れる画像を形成することを目的として鋭意研究を重ねた結果、マルチビーム方式の露光装置を備える画像形成装置に従来の電子写真感光体を用いた場合に筋状の濃度ムラが発生する問題が、露光後の電子写真感光体の一重露光領域と多重露光領域の電位差に起因することを見出した。かかる電位差は、マルチビーム方式を適用しない場合には問題にならない程度のものであっても、マルチビーム方式を適用する場合には筋状の濃度ムラとなって顕在化する。濃度ムラが生ずることにより、細線再現性も悪化する。
本発明者らは、マルチビーム方式の画像形成装置に適用される感光体の一重露光領域と多重露光領域との電位差を抑制する技術についてさらに研究した。その結果、感光体の表面層に特定のフッ化アルキル基含有共重合体とフッ素系樹脂粒子とを含有させることで上記課題が解決されることを見出した。
感光体の表面層に特定のフッ化アルキル基含有共重合体とフッ素系樹脂粒子とを含有させることでマルチビーム方式の露光を行う際の一重露光領域と多重露光領域との電位差が抑制される理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
すなわち、感光体の表面層に特定のフッ化アルキル基含有共重合体とフッ素系樹脂粒子とを含有させることで、露光により発生した電荷が感光層に印加された電場により移動する際、導電性支持体方向に流れる電荷がスムーズに移動することで感光層内に残留する電荷による再結合の確率が低下するため、一重露光領域と多重露光領域との電位差が抑制されるものと考えられる。
以下、本発明の画像形成装置の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図1に示した画像形成装置100は電子写真感光体12を備えるもので、電子写真感光体12は駆動装置(図示せず)により予め定められた回転速度で矢印Aの向きに回転可能となっている。電子写真感光体12はドラム状の導電性支持体の外周面上に感光層が設けられたものであり、表面層が特定のフッ化アルキル基含有共重合体とフッ素系樹脂粒子とを含有して構成されている。
電子写真感光体12の略上方には、電子写真感光体12の外周面を帯電させる帯電器14が設けられている。
また、帯電器14の略上方には露光装置(光ビーム走査装置)16が配置されている。詳細は後述するが、露光装置16は、面発光レーザアレイを用いた光源から射出される2本以上の光ビーム(レーザビーム)を、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、帯電器14により帯電した電子写真感光体12の外周面上を電子写真感光体12の軸線と平行に走査させる。
電子写真感光体12の側方には現像装置18が配置されている。現像装置18は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器18Y,18M,18C,18Kが設けられている。現像器18Y,18M,18C,18Kは各々現像ローラ20を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色トナーを貯留している。
また、このトナーは、形状係数SF1の平均値が115以上140以下であることが好ましい。この形状係数SF1は、以下の式により求めることが出来る。
SF1=(π/4)×(ML2/A)×100
(但し、MLはトナー粒子径の最大長、Aは投影面積を表す。)
この形状係数はトナーをスライドガラス上に散布し、光学顕微鏡で観察する画像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個以上のトナー粒子の最大長と投影面積を測定し上記式に代入し、その平均値を形状係数の平均値とした。このような形状のトナーを用いると、現像性、転写性、及び画像品質が高められる。
また、電子写真感光体12の略下方には無端の中間転写ベルト24が配設されている。中間転写ベルト24はローラ26,28,30に巻掛けられており、外周面が電子写真感光体12の外周面に接触するように配置されている。ローラ26乃至30はモータ(図示せず)の駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト24を矢印Bの向きに回転させる。
中間転写ベルト24を挟んで電子写真感光体12の反対側には転写器32が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像は転写器32によって中間転写ベルト24の画像形成面に転写される。
中間転写ベルト24よりも下方側にはトレイ34が配置されており、トレイ34内には被転写体としての用紙Pが多数枚積層された状態で収容されている。図1におけるトレイ34の左斜め上方には取り出しローラ36が配置されており、取り出しローラ36による用紙Pの取り出し方向下流側にはローラ対38、ローラ40が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ36が回転されることによりトレイ34から取り出され、ローラ対38、ローラ40によって搬送される。
また、中間転写ベルト24を挟んでローラ30の反対側には転写器42が配置されている。ローラ対38、ローラ40によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト24と転写器42の間に送り込まれ、中間転写ベルト24の画像形成面に形成されたトナー像が転写器42によって転写される。転写器42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着器44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着器44によって溶融定着された後に画像形成装置100の機体外へ排出される。
また電子写真感光体12を挟んで現像装置18の反対側には、電子写真感光体12の外周面を除電する機能及び外周面上に残留している不要トナーを除去する機能を備えた除電・清掃器22が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト24に転写されると、電子写真感光体12の外周面のうち転写されたトナー像を保持していた領域は、除電・清掃器22によって清掃される。
これにより、電子写真感光体12が1回転する毎に、電子写真感光体12の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、電子写真感光体12が4回転した時点で電子写真感光体12の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
このように、複数本の光ビームを電子写真感光体上に走査させて静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置16と共に、本実施形態に係る電子写真感光体12を用いることによって、静電潜像中に光ビームの照射回数が異なる領域があってもその濃度が十分に均一化されるので、筋状の濃度ムラの発生を十分に抑制することができ、画像形成プロセスの高速化と画質の向上との双方が実現可能となる。
次に、露光装置16及び電子写真感光体12の好ましい例について詳述する。
(露光装置)
先ず、図2を参照し、露光装置16の好ましい例について詳述する。露光装置16はm本(mは少なくとも2以上)のレーザビームを射出する面発光レーザアレイ50を備えている。なお、図2では、簡略化のためにレーザビームを3本のみ示しているが、面発光レーザをアレイ化して成る面発光レーザアレイ50は、数十本のレーザビームを射出するように構成することができ、また、面発光レーザの配列(面発光レーザアレイ50から射出されるレーザビームの配列)についても、1列に配列する以外に、2次元的に(例えばマトリクス状に)配列することも可能である。
図3は、発光点が2次元的に配列されたレーザアレイ50を示す平面図である。図示の通り、レーザアレイ50には、予め定められた間隔で、主走査方向に4個、副走査方向に4個の計16個の発光点51が2次元的に配置されている。また、主走査方向に並んだ発光点51は、副走査方向に隣り合う発光点51との距離を4等分した距離を1ステップとし、副走査方向に1ステップずつ段階的にずれるように配置されている。すなわち、副走査方向に限ってみれば、1ステップ毎に発光点51が配置されていることになる。このように副走査方向に段階的にずらして発光点51を配置することにより、全ての発光点51が異なる走査線を走査することができるようになっている。これにより、レーザアレイ50は16本の走査線を同時に走査する。
図2に戻り、面発光レーザアレイ50のレーザビーム射出側には、コリメートレンズ52、ハーフミラー54が順に配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、コリメートレンズ52によって略平行光束とされた後にハーフミラー54に入射され、ハーフミラー54によって一部が分離・反射される。ハーフミラー54のレーザビーム反射側にはレンズ56、光量センサ58が順に配置されており、ハーフミラー54によって主レーザビーム(露光に用いるレーザビーム)から分離・反射された一部のレーザビームは、レンズ56を透過して光量センサ58へ入射され、光量センサ58によって光量が検出される。
なお、面発光レーザは、露光に用いるレーザビームが射出される側と反対側からはレーザビームが射出されない(端面発光レーザでは両側から射出される)ため、レーザビームの光量を検出・制御するためには、上記のように露光に用いるレーザビームの一部を分離して光量検出に供することが必要になる。
ハーフミラー54の主レーザビーム射出側にはアパーチャ60、副走査方向にのみパワーを有するシリンダレンズ62、折り返しミラー64が順に配置されており、ハーフミラー54から射出された主レーザビームは、アパーチャ60によって整形された後に、回転多面鏡66の反射面近傍で主走査方向に長い線状に結像するようにシリンダレンズ62によって屈折され、折り返しミラー64によって回転多面鏡66側へ反射される。なお、アパーチャ60は複数本のレーザビームを均等に整形するために、コリメートレンズ52の焦点位置近傍に配置することが望ましい。
回転多面鏡66は、図示しないモータの駆動力が伝達されて図2中の矢印C方向に回転され、折り返しミラー64によって反射されて入射されたレーザビームを主走査方向に沿って偏向・反射する。回転多面鏡66のレーザビーム射出側には主走査方向にのみパワーを有するFθレンズ68,70が配置されており、回転多面鏡66によって偏向・反射されたレーザビームは、電子写真感光体12の外周面上を略等速で移動し、且つ主走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面上に一致するようにFθレンズ68,70によって屈折される。
Fθレンズ68,70のレーザビーム射出側には、副走査方向にのみパワーを有するシリンダミラー72,74が順に配置されており、Fθレンズ68,70を透過したレーザビームは、副走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面に一致するようにシリンダミラー72,74によって反射され、感光体ドラム12の外周面上に照射される。なお、シリンダミラー72,74は回転多面鏡66と電子写真感光体12の外周面を副走査方向において共役にする面倒れ補正機能も有している。
また、シリンダミラー72のレーザビーム射出側には、レーザビームの走査範囲のうち走査開始側の端部(走査開始位置)に相当する位置にピックアップミラー76が配置されており、ピックアップミラー76のレーザビーム射出側にはビーム位置検出センサ78が配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、回転多面鏡66の各反射面のうちのレーザビームを反射している面が、入射ビームを走査開始位置に相当する方向へ反射する向きとなったときに、ピックアップミラー76で反射されてビーム位置検出センサ78に入射される(図2の想像線も参照)。
ビーム位置検出センサ78から出力された信号は、回転多面鏡66の回転に伴って電子写真感光体12の外周面上を走査されるレーザビームを変調して静電潜像を形成するにあたり、各回の主走査における変調開始タイミングの同期をとるために用いられる。
また、本実施形態に係る露光装置16では、コリメートレンズ52とシリンダレンズ62、2枚のシリンダミラー72,74が各々副走査方向においてアフォーカルになる様に配置されている。これは、複数本のレーザビームの走査線湾曲(BOW)の差と複数本のレーザビームによる走査線間隔の変動を抑制するためである。
続いて、画像形成装置100の制御装置のうち、露光装置16の面発光レーザアレイ50からのレーザビームの射出を制御する部分(以下、この部分を制御部80と称する)の構成について、図4を参照して説明する。制御装置は、画像形成装置100によって形成すべき画像を表す画像データを記憶するための記憶部82を内蔵しており、記憶部82に記憶された画像データは、画像形成装置100によって画像が形成される際に制御部80の変調信号生成手段84に入力される。
図示は省略するが、変調信号生成手段84にはビーム位置検出センサ78が接続されている。変調信号生成手段84は、記憶部82から入力された画像データを、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの何れかに各々対応するm個の画像データに分解し、分解したm個の画像データに基づき、ビーム位置検出センサ78から入力された信号によって検知される走査開始位置のタイミングを基準として、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの各々をオンオフさせるタイミングを規定するm個の変調信号を生成し、レーザ駆動回路(LDD)86に出力する。
LDD86には駆動量制御手段88(詳細は後述)が接続されており、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームを、変調信号生成手段84から入力された変調信号に応じたタイミングでオンオフすると共に、オン時のレーザビームの光量を、駆動量制御手段88から入力される駆動量設定信号に対応する光量にするためのm個の駆動電流を生成し、面発光レーザアレイ50のm個の面発光レーザに各々供給する。
これにより、面発光レーザアレイ50からは、変調信号に応じたタイミングでオンオフされると共に、オン時の光量が駆動量設定信号に対応する光量とされたm本のレーザビームが射出され、このm本のレーザビームが電子写真感光体12の外周面上を各々走査・露光されることで、電子写真感光体12の外周面上に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像装置18によりトナー像として現像され、このトナー像が転写器32,42による転写を経て用紙Pに転写され、定着器44によって用紙Pに溶融定着されることで、用紙Pに画像が記録されることになる。
一方、画像形成装置100は、電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像、中間転写ベルト24の外周面上に転写されたトナー像、及び用紙Pに記録された画像の何れかの濃度を検出する濃度センサ(図示省略)を備えており、この濃度センサは制御部80に接続されている。なお、本実施形態のように多数本(m本)のレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で同時に走査・露光して画像(詳しくは静電潜像)を形成する場合、各回の主走査におけるm本のレーザビームによる走査領域の境界付近ではレーザビームが2回照射(露光)される。
(電子写真感光体)
次に、本実施形態に係る電子写真感光体の好ましい例について詳述する。
本実施形態の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を少なくとも有し、表面層が下記構造式A及び下記構造式Bで表される繰り返し単位を含むフッ化アルキル基含有共重合体(以下、本実施形態に係る共重合体と称することがある。)とフッ素系樹脂粒子とを含有するものである。
構造式A及び構造式Bにおいて、l、m及びnは1以上の正数を、p、q、r及びsは0または1以上の正数を、tは2以上7以下の正数を、R1、R2、R3及びR4は水素原子又はアルキル基を、Xはアルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−S−、−O−、−NH−又は単結合を、Yはアルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−(CzH2z−1(OH))−又は単結合を表す。zは1以上の正数を表す。
本発明者らは、電子写真感光体の電子写真特性と耐久性との双方を高水準で達成可能とすべく、先ず、フッ素系樹脂粒子と、フッ素系樹脂粒子を分散させるための分散助剤として用いるフッ素系グラフトポリマーとを含む表面層について検討した。その結果、残留電位の上昇により濃度低下を生じる現象は、フッ素系グラフトポリマーが遊離した状態で表面層に存在することに起因するとの知見を得た。
より具体的には、フッ素系グラフトポリマーの添加量は必要量を上回ることが多く、フッ素系樹脂粒子の表面に吸着しなかった余剰のフッ素系グラフトポリマーは、遊離した状態で表面層に存在することになる。この遊離したフッ素系グラフトポリマーは電荷を蓄積するトラップサイトを発現させる原因物質となる。そのため、高温高湿下での繰り返し使用の際に、残留電位の上昇により濃度低下が生じ易くなる。つまり、物理的耐久性は改善できても、安定した電子写真特性は得られない。
今回、フッ素系グラフトポリマーの構造について検討した結果、フッ素系樹脂粒子の分散性を改善、保持できるフッ素系グラフトポリマーを見出した。
本実施形態に係る共重合体は上記構造式A及び構造式Bで表される繰り返し単位を含むものであるが、構造式Aにおけるtが2未満であると、グラフトポリマーのフッ素系樹脂粒子への吸着性が低下し、分散助剤としての機能が低下することがある。フッ素系樹脂粒子の分散性が低下した場合、表面層中に存在するフッ素系樹脂粒子が不均一となるために、電子写真感光体の十分な耐久性向上効果を得ることが困難となる。
また、構造式Aにおけるtが8以上であると、フッ素系グラフトポリマーと表面層に含まれる結着樹脂との相溶性が悪くなる。このために、フッ素系グラフトポリマーと結着樹脂との界面がトラップサイトとなり、高温高湿下での繰り返し使用の際に、残留電位の上昇により濃度低下が生じ易くなる。
一方、構造式Aにおけるtが2以上7以下であれば、フッ素系樹脂粒子へのフッ素系グラフトポリマー(即ち、本実施形態に係る共重合体)の吸着性を維持しながら、表面層に含まれる結着樹脂との相溶性をもたせることができる。構造式Aにおけるtの好ましい範囲は2以上6以下である。
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を少なくとも有し、表面層が本実施形態に係る共重合体とフッ素系樹脂粒子とを含有するものであれば、その層構成等に特に限定はない。本実施形態に係る感光層は電荷輸送能と電荷発生能とを併せ持つ機能一体型の感光層であってもよいし、電荷輸送層と電荷発生層とを含む機能分離型の感光層であってもよい。さらには、下引き層、中間層及び保護層等のその他の層を必要に応じて設けることもできる。
本実施形態に係る電子写真感光体において、機能一体型の感光層が表面層となる場合には、該機能一体型の感光層に本実施形態に係る共重合体とフッ素系樹脂粒子とが含有される。電荷輸送層と電荷発生層とを含む機能分離型の感光層のうちのいずれかの層が表面層となる場合には、表面層に該当する層に本実施形態に係る共重合体とフッ素系樹脂粒子とが含有される。また、感光層上に表面層として保護層が設けられる場合には、該保護層に本実施形態に係る共重合体とフッ素系樹脂粒子とが含有される。
図5は、本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す断面図である。図5に係る電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有しており、電荷発生層5及び電荷輸送層6が機能分離型の感光層3を構成している。ここで、電荷輸送層6は電子写真感光体1における表面層(導電性支持体2から最も遠い側に配置される層)である。図5に示す電子写真感光体においては、電荷輸送層6に本実施形態に係る共重合体とフッ素系樹脂粒子とが含有される。
以下、電子写真感光体1の各要素について説明する。
導電性支持体2としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、およびアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、あるいは導電性付与剤を塗布、または含浸させた紙、およびプラスチックフィルム等が挙げられる。導電性支持体2の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
導電性支持体2として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
下引き層4は、導電性支持体2表面における光反射の防止、導電性支持体2から感光層3への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。下引き層4の材料としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を結着樹脂に分散し、基体上に塗布したものが挙げられる。また、金属酸化物粒子は2種以上混合して用いることもできる。さらに、金属酸化物粒子へカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体抵抗を制御して用いてもよい。
下引き層4に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。
下引き層4中の金属酸化物粒子と結着樹脂との比率は特に制限されず、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
下引き層4の形成の際には、上記成分を予め定められた溶媒に加えた塗布液が使用される。かかる溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独又は2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶解可能であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
また、下引き層形成用塗布液中に金属酸化物粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌機、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
このようにして得られる下引き層形成用塗布液を導電性支持体2上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。下引き層4の膜厚は15μm以上が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい。下引き層4には、表面粗さ調整のために下引き層中に樹脂粒子を添加することもできる。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。
また、表面粗さ調整のために下引き層4の表面を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
また、図示は省略するが、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引き層4上に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などがある。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
中間層の形成に使用される溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定される。また、この場合の中間層を下引き層4として使用してもよい。
電荷発生層5は、電荷発生材料を適当な結着樹脂中に分散して形成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が使用可能であり、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を使用することができる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等を使用することができる。また、これらの電荷発生材料は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
電荷発生層5における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等を用いることができる。これ等の結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いることが可能である。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
電荷発生層5の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた塗布液が使用される。かかる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶解可能であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
電荷発生材料を樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌機、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
このようにして得られる塗布液を下引き層4上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。電荷発生層5の膜厚は、好ましくは0.01μm以上5μm以下、より好ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
電荷輸送層6は電子写真感光体1における表面層に相当し、前述の通り、本実施形態に係る共重合体とフッ素系樹脂粒子とを含有する。
本実施形態に係る共重合体は構造式A及び構造式Bで表される繰り返し単位を含むフッ素系グラフトポリマーであり、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレートを用いて例えばグラフト重合により合成される樹脂である。ここで、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを示す。
本実施形態に係る共重合体において、構造式Aと構造式Bとの含有比即ちl:mは、1:9乃至9:1が好ましく、3:7乃至7:3がさらに好ましい。l:mが1:9乃至9:1の範囲であると、フッ素系樹脂粒子を良好に分散する事ができる。
構造式A及び構造式Bにおいて、R1、R2、R3及びR4で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。R1、R2、R3及びR4としては、水素原子、メチル基が好ましく、これらの中でもメチル基がさらに好ましい。
表面層即ち電荷輸送層6における本実施形態に係る共重合体の含有量は、フッ素系樹脂粒子の表面層中の含有量(質量基準)に対して1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。本実施形態に係る共重合体の含有量が1質量%以上であれば、電荷輸送層6中におけるフッ素系樹脂粒子の分散を均一にすることができる。本実施形態に係る共重合体の含有量が5質量%以下であれば、電荷輸送層6中における、フッ素系樹脂粒子の表面に吸着しない状態の本実施形態に係る共重合体の量を減らすことができ、遊離した本実施形態に係る共重合体に起因する電荷のトラップサイトの発生を防ぐことができる。その結果として、高温高湿下での繰り返し使用の際においても残留電位が上昇しにくく、濃度低下を生じにくい電子写真感光体が得られる。
表面層即ち電荷輸送層6の固形分全量に対するフッ素系樹脂粒子の含有量は1質量%以上15質量%以下%が好ましく、2質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。フッ素系樹脂粒子の含有量が1質量%以上であれば、電荷輸送層6の表面エネルギーを低くすることができ、電子写真感光体の耐久性を向上することができる。また、フッ素系樹脂粒子の含有量が15質量%以下であれば、光透過性の低下及び膜強度の低下が起こりにくい。
フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を選択するのが望ましいが、さらに好ましくは4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂であり、特に好ましくは4フッ化エチレン樹脂である。本実施形態に係るフッ素系樹脂粒子が4フッ化エチレン樹脂を含むと、耐磨耗性の効果が得られる。
フッ素系樹脂粒子の平均一次粒径は0.05μm以上1μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以上0.5μm以下が好ましい。平均一次粒径が0.05μm以上であれば分散時の凝集が進みにくい。一方、1μm以下であれば画質欠陥が発生しにくくなる。
本実施形態において、フッ素系樹脂粒子の平均一次粒径は、下記方法により測定された値をいう。
レーザー回折式粒度分布測定装置LA−700(堀場製作所製)を用いて、電荷輸送層形成用塗布液におけるフッ素系樹脂粒子が分散された分散液と同じ分散媒に分散希釈した測定液を屈折率1.35で測定する。
電荷輸送層6は上記成分に加えて、電荷輸送層としての本来的機能を発現させるための電荷輸送材料、さらには結着樹脂を含む。かかる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、電荷輸送層6における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これ等の結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いることが可能である。
電荷輸送層6は、上記成分を溶剤に加えた塗布液を用いて形成される。電荷輸送層の形成に使用される溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶解可能であれば、いかなるものでも使用することが可能である。電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は10:1乃至1:5が好ましい。
電子写真感光体は一般的に浸漬塗布方法によって製造されるが、表面層は良好な画像を得るために平滑な表面を得ることが重要である。塗布液には有機溶剤が用いられるが、乾燥時に表面にオレンジピール(ユズ肌)などが発生しやすく、これを防止するためにレベリング剤を用いることが多い。レベリング剤にはジメチルシリコーンオイルを用いることが多い。
電荷輸送層6を形成するのに用いられる電荷輸送層形成用塗布液中にフッ素系樹脂粒子を分散させるための分散方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌機、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
本実施形態において、電荷輸送層形成用塗布液の調製方法については特に限定されるものではなく、フッ素系樹脂粒子と本実施形態に係る共重合体と結着樹脂と電荷輸送材料と溶剤と必要に応じてその他の成分とを混合し、上述の分散機を用いて調製してもよいし、フッ素系樹脂粒子と本実施形態に係る共重合体と溶剤とを含む混合液A及び結着樹脂と電荷輸送材料と溶剤とを含む混合液Bの2液を別々に準備した後に、これら混合液A及び混合液Bを混合することにより調製してもよい。フッ素系樹脂粒子と本実施形態に係る共重合体とを溶剤中で混合することにより、フッ素系樹脂粒子の表面に本実施形態に係る共重合体を十分に付着させることができる。
また、結着樹脂を含む溶剤にフッ素系樹脂粒子と本実施形態に係る共重合体とを添加して混合液A’を準備し、この混合液A’と上述の混合液Bとを混合することにより電荷輸送層形成用塗布液を調製することもできる。予め結着樹脂を含む溶剤にフッ素系樹脂粒子と本実施形態に係る共重合体とを添加して得られた混合液A’を用いて調製された電荷輸送層形成用塗布液により電荷輸送層を形成することにより、電子写真感光体の感度を向上することができる。
混合液A’に含まれる結着樹脂の量は、フッ素系樹脂粒子に対して1質量%以上70質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
このようにして得られる電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。電荷輸送層の膜厚は、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
画像形成装置中で発生するオゾンや窒素酸化物、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層3を構成する各層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
本実施形態の電子写真感光体においては、表面層として保護層を設けることもできる。保護層は、電子写真感光体の帯電時の電荷輸送層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する為に用いられる。保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させた塗布液を感光層上に塗布することにより形成される。
この導電性材料は特に限定されるものではなく、例えば、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したもの等が挙げられる。
保護層に使用する結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
保護層の膜厚は1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。
保護層を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。また、保護層を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独であるいは2種以上を混合して用いることができるが、この塗布液が塗布される感光層を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づき本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m2/g)100質量部をメタノール500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、アリザリン0.6質量部と硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部とブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)15質量部とをメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引き層用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの下引き層を得た。
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部およびn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を前記下引き層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
次に、A:4フッ化エチレン樹脂粒子0.5質量部(平均一次粒径:0.2μm)及び下記構造式で表される繰り返し単位を含むフッ化アルキル基含有共重合体(ランダム共重合体、重量平均分子量50,000、l:m=1:1、s=1、n=60)0.01質量部を、テトラヒドロフラン4質量部、トルエン1質量部とともに20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。次に、B:電荷輸送物質としてN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン2質量部、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン2質量部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6質量部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1質量部、テトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合溶解した。このB液に前記A液を加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cm2まで昇圧しての分散処理を6回繰り返した液に、ジメチルシリコーンオイル(商品名:KP−340 信越シリコーン社製)を5ppm添加し、十分に撹拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を電荷発生層上に塗布して115℃で40分間乾燥し、膜厚が32μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
このようにして得られた電子写真感光体を用いて、以下のテストを行なった。得られた結果を表1に示す。
上述のようにして得られた電子写真感光体を備える画像形成装置(富士ゼロックス社製、Docu Centre500改造機)を作製した。なお、露光装置としては、面発光レーザアレイの発光点が6×6に二次元に配列され、レーザビーム数は6×6=36本のうち連続した32本であり、走査線総数が2400dpiのものを用いた。
印刷試験(ハーフトーン)では、網点のパターンを10万枚形成し、10万枚目の印刷サンプルの濃度ムラ発生の有無を下記基準に基づいて目視により判断した。印刷試験(1ドットライン再現性)では、1ドットラインの放射線状パターンを10万枚形成し、10万枚目の印刷サンプルのライン再現性を下記基準に基づいて目視で評価した。
面内濃度ムラ
○:濃度ムラがないか軽微である。
×:濃度ムラの発生が顕著である。
ライン再現性
○:ラインのとぎれ・濃度差がないか軽微である。
×:ラインのとぎれ・濃度差の発生が顕著である。
[実施例2]
下記構造のフッ化アルキル基含有共重合体(ランダム共重合体、重量平均分子量15,000、l:m=1:1、n=60)0.01質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様の評価を行なった。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
下記構造式のフッ化アルキル基含有共重合体(ランダム共重合体、重量平均分子量15,000、l:m=1:1、n=60)0.01質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様の評価を行なった。得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
下記構造式のフッ化アルキル基含有共重合体(ランダム共重合体、重量平均分子量15,000、l:m=1:1、n=60)0.01質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様の評価を行なった。得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
下記構造式のフッ化アルキル基含有共重合体(ランダム共重合体、重量平均分子量15,000、l:m=1:1、n=60)0.01質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様の評価を行なった。得られた結果を表1に示す。