JP2010189816A - 補強用繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】処理剤の付着量が少なくとも、均一に付着することにより十分に高分子を補強しうる強い接着性を有する補強用繊維を提供する。
【解決手段】補強用繊維の製造方法は、繊維を処理液にて浸漬処理する補強用繊維の製造方法であって、該繊維がマルチフィラメントからなる繊維であり、該処理液を繊維に付着Aした後に50℃以下の未加熱状態にて30秒以上保持し、その後乾燥・熱処理Cを行う。さらには、未加熱状態Bでの保持の間に、繊維をロールにて方向転換させるものであることや、繊維が撚りを掛けられたコードであること、繊維がポリエステル繊維であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は補強用繊維の製造方法に関し、さらに詳しくは高分子・繊維複合体に好適に用いられる、繊維表面に効率的に処理液が付着した補強用繊維の製造方法に関する。
高分子の補強用として、特により具体的にはタイヤ、ホース、ベルト等のゴム補強用として繊維材料が広く用いられてきている。このように補強用途に繊維を用いる場合、各種材料と繊維間の接着が重要課題であり、各種接着剤が開発されてきた。しかし、特に優れた物理的特性を有する合成繊維などを使用する場合、まだまだその繊維の強力に比して接着性が不足しているという問題があった。ことにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート繊維で代表されるポリエステル繊維や、芳香族ポリアミド繊維等は、高強度、高ヤング率等の優れた物理的特性を有しており、補強用の繊維としては最適であるが、これら繊維はその表面が比較的不活性であるので、通常の接着剤では高分子マトリックスとの接着性が不十分となるという問題があった。
このため、特にゴム補強用繊維の分野において、繊維の表面を種々の薬品で処理する化学処理法、例えば、脂肪族エポキシ化合物や、エチレン尿素、ブロックドイソシアネート化合物等の反応性の強い化学薬品で処理して繊維表面の接着性を向上させた後に、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)接着剤で処理する、2浴処理方法が提案され実用化されている(例えば特許文献1など)。さらに例えば特許文献2などのようにビニルハライド基を有する化合物を一浴目に含有させるなどして、接着剤付着量を減少させる処理方法など、各種の方法が知られている。
そして、このような繊維表面に直接付着する最初に処理される処理液は、繊維表面を活性化させることがその重要な目的とされている。つまり基本的には繊維表面を活性化させる化合物が繊維表面に並ぶことが要求されているのである。一方、過度に処理液や処理剤が付着し必要以上の厚みを有する場合、不均一になりやすく、また乾燥後に剤皮膜自体の物理的強度が要求され、剤皮膜の強度が不足するという問題があった。そこで従来は、繊維上に薄膜を形成させる手法として、希薄な処理液を塗布する方法や、界面活性剤により繊維表面の濡れ性を向上させる方法などが採用されてきた。
しかし、希薄な処理液を用いた場合表面張力の上昇が起こりやすく、形成された膜に欠点が発生しやすいという問題があった。また界面活性剤は濡れ性向上とともに接着を阻害する負の効果を有することが多いという問題があった。
特開昭54−73994号公報 特開2000−234275号公報
本発明は処理剤の付着量が少なくとも、均一に付着することにより十分に高分子を補強しうる強い接着性を有する補強用繊維を提供することにある。
本発明の補強用繊維の製造方法は、繊維を処理液にて浸漬処理する補強用繊維の製造方法であって、該繊維がマルチフィラメントからなる繊維であり、該処理液を繊維に付着した後に50℃以下の未加熱状態にて30秒以上保持し、その後乾燥・熱処理を行うことを特徴とする。
さらには、未加熱状態での保持の間に、繊維をロールにて方向転換させるものであることや、繊維が撚りを掛けられたコードであること、繊維がポリエステル繊維であることが好ましい。
また、該処理液が、粘度が1〜5mPa・sの前処理液であり、乾燥・熱処理後にさらにレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)接着剤を主とする接着処理液にて処理を行うことが好ましく、さらには前処理液が架橋剤と乳化剤のみからなり、接着処理液が架橋触媒を含有するものであることや、架橋剤が多価アルコールまたは多価フェノールと塩素含有エポキシド類との反応生成物であること、架橋触媒がブロックポリイソシアネートであることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、処理剤の付着量が少なくとも、均一に付着することにより十分に高分子を補強しうる強い接着性を有する補強用繊維が提供される。
本発明の製造方法の模式図である。
本発明に使用される繊維としては特に制限はないが、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維などの合成繊維に特に好ましく用いられる。より具体的には、例えばポリエステル繊維としては、テレフタル酸、またはナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、またはテトラメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維を挙げることが出来る。また、芳香族ポリアミド繊維の代表例としては、ポリパラアミノベンズアミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラアミノベンズヒドラジドテレフタルアミド、ポリテレフタル酸ヒドラジド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等、もしくはこれらの共重合体からなる繊維を挙げることができる。
本発明の処理に供される繊維の形態としては、マルチフィラメントからなる繊維であれば特に制約は無く、ヤーン、コード、不織布、織編物等種々の繊維集合形態が含まれるが、特には撚糸を行ったコードであることが、その繊維の持つ強度をより有効に発揮するためには好ましい。撚りがかかっていることにより、後の処理液に対する浸透性を調整することが可能となるからである。より具体的な撚り数としては、30〜50ターン/mの範囲であることが好ましく、撚り構造が安定する点からも片撚りよりも双撚りであることが好ましい。撚り数が少なすぎると処理液がコード内部に浸透し過ぎてしまい、同一付着量の時の接着力向上効果が減少する傾向にある。逆に撚り数が多すぎる場合には、処理液がコード表面で固まってしまい繊維表面での均一付着ができず、接着力向上効果が減少する傾向にある。
また繊維のデニール、フィラメント数、断面形状、繊維物性、微細構造や、ポリマー性状(末端カルボキシル基濃度、分子量等)、ポリマー中の添加剤の有無等には、特に限定は無く、さまざまな形状のものが含まれるが、強度を有効に活用するためには円形の断面形状を有することが好ましい。マルチフィラメントとしては10フィラメント以上であれば、本発明の効果は見られるが、好ましくは100〜1000フィラメントであることが、さらには150〜500フィラメントであること好ましい。また、本発明の処理に供される繊維としては、あらかじめ紡糸の段階などで接着前処理を行っているものであることも好ましい。
さて、本発明の補強用繊維の製造方法では、上記のようなマルチフィラメントからなる繊維を処理液にて浸漬処理することが行われる。処理液としては粘度が1〜5mPa・sの範囲にあることが好ましい。粘度が高すぎると本発明の最大の効果である、未加熱状態での保持の効果が発揮されにくい傾向にある。処理液を繊維に付着させるには、ローラーとの接触、若しくはノズルからの噴霧による塗布、または溶液中への繊維の浸漬などの手段が採用できる。また、繊維に対する固形分付着量は、0.1〜2重量%の範囲が好ましい。繊維に対する固形分付着量を制御するためには、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
本発明の製造方法では、前処理液の付着量が少ないにもかかわらず均一に付着することがその第一の特徴である。したがってその効果を有効に発現させるためには付着量としては2重量%以下であることが好ましい。逆にあまりに付着量が少なく繊維コード表面を十分に覆うことができなった場合には、例え本発明の方法を用いたとしても接着性向上効果は減少する。そのため付着量としては0.1重量%以上であることが好ましい。
本発明の補強用繊維の製造方法では、処理液による浸漬処理によって処理液を繊維に付着した後に50℃以下の未加熱状態にて30秒以上保持し、その後乾燥・熱処理を行う。さらには未加熱状態としては0℃以上40℃以下、通常は室温以上の温度であることが好ましい。
従来技術のように、繊維に処理液を浸漬処理した後にすぐに加熱処理を行った場合、繊維表面に均一に拡散する前に処理液が固着し、接着力が向上しない。本発明では、驚くべきことに50℃以下の未加熱状態にて30秒以上保持するだけで、繊維表面に処理剤が表面に均一付着し、かつ繊維接着力が向上することを見出したものである。さらには0.5〜5分の時間保持することが好ましい。保持時間が短いとマルチフィラメントからなる繊維束の表層のみに処理剤が固まってしまい不均一となって好ましくない。また保持時間が長すぎると生産性が低下するばかりではなく、処理剤の濃度等が変化し安定生産性が低下する傾向にある。
またマルチフィラメントからなる繊維を未加熱状態にて保持する間に、繊維をロールにて方向転換するものであることが好ましい。ロールと接する事により処理剤の内部への浸透度合いを調整することが可能となる。また、処理剤を付着した繊維はその糸道として、地面に対し平行な、つまり水平状態にて保持しているものであることが好ましい。地面に対し平行状態である場合には、処理された液体がマルチフィラメント内部に拡散しやすく、より均一に繊維を処理することが可能となる。
このように本発明は、未加熱状態にて30秒以上保持することにより、表面に均一に付着することができるようになったのである。時間経過により繊維表面の膜形成が均一になるとともに、過剰な剤がマルチフィラメントからなる繊維束内部に浸透することができ、容易に理想的な処理液の膜を繊維表面に形成しうるのである。
そして本発明のゴム補強用繊維の製造方法は、このように処理液を繊維に付着した後に50℃以下の未加熱状態にて30秒以上保持し、そしてその後に乾燥・熱処理を行うものである。
乾燥段階としては、繊維を未加熱状態にて保持した後、通常は50℃より高い温度にて、予備乾燥を行うことが好ましいが、本発明においては省略することも可能である。予備乾燥は、マイグレーションをより有効に防止するために行うものであるが、本発明ではあらかじめ50℃以下の未加熱状態での保持を行っているために、予備乾燥無しでも均一処理が可能となるからである。
熱処理としては、何段階かに分けて徐々に乾燥させた後、最終的には220〜260℃の温度にて、30秒〜5分間の熱処理を行うことが好ましい。このように高温処理を十分に行うことによって、処理液中の水分を除去し、繊維表面に均一に付着させることができ、不均一になることをより高いレベルにて防止することができるのである。乾燥・熱処理の温度や時間が少なすぎると最終製品である補強用繊維の高分子との接着力が不十分になりやすく、また乾燥・熱処理温度が高すぎると繊維自体が溶融、融着を起こすことにより強度低下を引き起こすため好ましくない。
このような本発明の製造方法により得られた補強用繊維は、処理液が均一に付着することにより欠点の少ない高い接着性能を有する繊維となり、補強用途に最適に用いられる。
また本発明で用いる処理液としては、非加熱状態での放置の工程において、処理液の粘度が変化しないことが好ましい。この観点からすると処理液にはラテックス等の乾燥により急激な粘度変化、粘度上昇を引き起こす成分が含有していないことが好ましい。しかし例えばゴム補強用繊維の接着にはレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)接着剤を代表として、ゴムラテックスは必須成分である。したがって、本発明では繊維に直接接する一浴目の前処理液にはゴムラテックス等の成分を含有せず、二浴目以降の接着処理液にゴムラテックスやRFL接着剤を含有することが好ましい。
より具体的には、本発明の好ましい製造方法の一態様としては、以上のような本発明で用いられる処理液が、粘度が1〜5mPa・sの前処理液であり、乾燥・熱処理後にさらにレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)接着剤を主とする接着処理液にて処理されることが好ましい。特にこのような態様によりゴム補強用途に最適となるのである。
さらにはここで、前処理液が架橋剤と乳化剤のみからなり、前処理液にて用いる架橋剤が、多価アルコールまたは多価フェノールと塩素含有エポキシド類との反応生成物であることを必須とするものであることが好ましい。
この前処理液にて好ましく用いられる架橋剤についてより具体的に述べると、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如き塩素含有エポキシド類との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記塩素含有エポキシド類との反応生成物を例示することができる。これらのうち、特にエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類並びにこれらの重合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物、即ち多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現するので好ましい。
さらに前処理液に用いられる架橋剤のエポキシ当量としては200g/eq以下であることが好ましく、さらには50〜200の範囲にあることが好ましい。エポキシ当量が大きすぎる場合にはエポキシの分子中での反応性が低いため十分な架橋構造を形成しにくく、接着力が弱くなる傾向にある。逆にエポキシ当量が小さすぎる場合には、分子間での反応を効率よく行うことが出来ず、特に高温での接着性が低下する傾向にある。また、架橋剤は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましい。
またこの架橋剤の全塩素量としては10%以上であることが好ましく、さらにはせいぜい20%以下であることが好ましい。全塩素量が少ない場合には、架橋剤の繊維に対する熱拡散能が十分ではなく、結果として接着性が低下する傾向にある。逆に多すぎた場合には熱分解により生じる成分により繊維の物性が劣化し、接着性ばかりか、補強用繊維を用いた構造体の物性をも低下する傾向にある。
また本発明で用いられる前処理液には、上記の架橋剤とともに乳化剤が併用されることが好ましいが、乳化剤としては公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を挙げることができる。前処理液としては上記の架橋剤をそのままあるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを、乳化剤を用いて乳化または分散すればよい。
好ましく前処理液とともに用いられる接着処理液としては、RFL(レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス)接着剤と架橋触媒からなるものであることが好ましい。
ここでRFL接着剤としては、従来公知のゴム繊維補強用に用いられているものが使用されるが、好ましくは、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.8〜1:5の範囲にあるものが好ましく、さらには1:1〜1:4の範囲であることがより好ましい。ホルムアルデヒドの添加量が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層の凝集力が低下することにより接着性が低下するおそれがあり、また、ホルムアルデヒドの添加量が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下すると共に処理後の繊維が著しく硬くなり、強力及び疲労性が低下する問題が出てくる傾向にある。
このRFL接着剤におけるレゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの最適な配合比率は、後述の架橋触媒の添加割合によっても変化するが、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:3〜1:16の範囲にあるものが好ましく、特には1:4〜1:10の範囲にあるものが好ましい。ゴムラテックスの比率が少なすぎると処理された繊維が硬くなって耐疲労性が低下する傾向に有り、また被着体であるゴムとの共加硫が不十分となり、接着性が低くなるおそれがある。逆に、接着剤中のゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として十分な強度を得ることができないため、接着力やゴム付着率が低下する傾向にある。また接着処理繊維の粘着性が高くなりディッピング処理工程での汚れや最終製品製造工程での汚れの原因となりやすい傾向にある。
本発明で好ましく用いられる接着処理液は上述のRFL接着剤とともに架橋触媒を含むことが好ましい。このような架橋触媒としては、アミン、エチレン尿素、ブロックポリイソシアネート化合物などを例示することができ、処理液の経時安定性、環境などへの負荷の点からはブロックドポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
二浴目の接着処理液における架橋触媒の添加率としては、RFL(レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス)接着剤全量に対して0.5〜40重量%の範囲にあるもの、特に、10〜30重量%の範囲にあるものが好ましく使用される。添加量が少なすぎると、一浴目の前処理液中の架橋剤の架橋反応を引き起こすことができないだけでなく、RFL接着剤の凝集エネルギーを十分に高めることが困難となる傾向にある。逆に添加量が多すぎる場合には接着剤の被着用のゴムに対する相溶性が低下し、ゴムと処理繊維との接着力が低下するとともに、処理後の繊維が著しく硬くなり、強力及び疲労性が低下する傾向にあり好ましくない。
好ましく使用される二浴目の接着処理液として処理される溶液は、総固形分濃度としては、1〜30重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、10〜25重量%となるようにして使用することが出来る。接着処理剤の溶液の総固形分濃度が、前記の範囲よりも低い場合には、接着剤溶液の表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下し、逆に、総固形分濃度が前記の範囲よりも高い場合には、処理液の粘度が高くなるため固形分付着量が多くなりすぎ、ディッピング処理工程や製品の製造工程において汚れの原因になるだけでなく、処理した繊維が硬くなり、耐疲労性が低下しやすい傾向にある。
前処理された繊維に対し、さらに引き続き接着処理液を繊維に付着せしめるには、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、繊維に対する固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0〜5.0重量%の範囲にあるものがよい。繊維に対する固形分付着量を制御するためには、前記と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
さらに接着処理液付着後の熱処理条件としては、二液目の接着処理液を使用して繊維を処理した後、50℃以上で、合成繊維の融点より10℃以上低い温度の範囲で乾燥・熱処理する。より好ましくは、温度範囲としては220〜270℃の範囲で、処理時間としては0.5〜5分間、さらに好ましくは1〜3分間乾燥・熱処理する。この乾燥・熱処理温度が、低すぎるとゴム類との接着が不十分となりやすく、また、該乾燥・熱処理温度が高すぎると合成繊維が溶融、融着するなどにより、繊維の強度低下を起こす場合がある。
このように本発明の好ましい一形態として前処理液と接着処理液とによる二浴処理を行った場合、前処理液の付着段階やその直後の熱処理工程では、架橋が行われていないことになる。つまり前処理液で用いる剤のみでは凝集しておらず、二浴目の接着処理液に含まれる架橋触媒の存在により架橋されることとなり、最終的に得られる補強用繊維の接着力を有効に高めることができるのである。
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。また各種特性は下記の方法により測定した。
(1)初期および耐熱剥離接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。コードを30本/2.54cm(1inch)で引きそろえ、0.5mm厚の天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムシートで挟みつける。これらのシートを直行するように重ねあわせ、150℃の温度で、30分間、50kg/cmのプレス圧力(初期値)または180℃の温度で、40分間、50kg/cm のプレス圧力(耐熱値)で加硫し、次いで、コード方向に沿って短冊状に切り出す。作成したサンプルを、短冊に沿った方のシートをゴムシート面に対し90度の方向へ200mm/分の速度で剥離するのに要した力をN/2.54cm(1inch)で示したものである。
(2)高温剥離接着力
上記の初期剥離接着力測定用に作成した短冊状サンプルを、150℃(高温)の雰囲気下に変更する以外は、上記と同様の測定条件にて測定し、高温剥離接着力とした。
[実施例1]
エポキシ当量が173g/eqであり、100%の粘度が5000mPa・sであり、かつ全塩素量が10.1%であるソルビトール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス株式会社製 EX614B)、及びエポキシ当量が144g/eqであり、100%の粘度が170mPa・sであり、かつ全塩素量が11.5%であるグリセロール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス株式会社製 EX314)、2−エチル−ヘキシルスルホ琥珀酸ナトリウムをそれぞれ固形分で60重量%、25重量%、15重量%の割合で混合した、総固形分量:5重量%の配合液を得た(処理液(1))。この処理液の粘度は1.3mPa・sであった。
また、レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%である初期縮合物をアルカリ条件下溶解し9重量%水溶液とする。これを、41%ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 Pyratex)と水を上記9%レゾルシン・ホルマリン水溶液57重量部に対し、それぞれ99重量部、104重量部添加する。この液にホルマリン3重量部、33重量%アセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネート分散体(明成化学工業株式会社製 DM6011)を30重量部添加し、48時間熟成した固形分濃度20重量%のRFL接着剤を得た(接着処理液)。
固有粘度が0.95のポリエチレンテレフタレートからなる1670dtex/384フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、該マルチフィラメント糸に40T/10cmで下撚りを施し、これを2本合わせて40T/cmで上撚りを施して3340dtex/768フィラメントの合成繊維コードを得た。
該コードをコンビュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の処理液(1)に浸漬した後、室温25℃にて2分間滞留させた後に、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて接着処理液に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて240℃の温度で1分間の熱処理を行った。なお、繊維は図1記載の工程を通過した。得られたタイヤコードには、各処理液の固形分付着量として、処理液(1)により1.5重量%、接着処理液により3.7重量%の付着がみられた。得られた処理コードを、天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴム中に埋め込み、加硫後に前記の方法により各種剥離接着力を評価した。その結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1の処理液(1)に浸漬した後の滞留時間を2分間から0.5分に変更した以外は、実施例1と同様に接着処理を行い、各種剥離接着力を評価した。その結果を表1に併せて示す。
[実施例3]
実施例1の処理液(1)に浸漬した後の滞留時間を2分間から4分に変更した以外は、実施例1と同様に接着処理を行い、各種剥離接着力を評価した。その結果を表1に併せて示す。
[実施例4]
実施例1の処理液(1)の代わりに、ソルビトール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス株式会社製 EX614B)、グリセロール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス株式会社製 EX314)、2−エチル−ヘキシルスルホ琥珀酸ナトリウムの配合比をそれぞれ固形分で35重量%、35重量%、30重量%の割合に変更して混合した、総固形分量:5重量%の配合液を得た(処理液(2))。この処理液(2)を用いた以外は、実施例1と同様に接着処理を行った。
なお、得られたタイヤコードには、各処理液の固形分付着量として、前処理液(2)により1.7重量%、接着処理液により3.4重量%の付着がみられた。得られた処理コードを、実施例1と同様にして各種剥離接着力を評価した。その結果を表1に併せて示す。
[実施例5]
実施例1のポリエチレンテレフタレート繊維に代えて、ポリエチレンナフタレート繊維を用いた以外は実施例1と同様の接着処理を行った。
すなわち繊維としては、固有粘度が0.76のポリエチレンナフタレートからなる1670dtex/384フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、該マルチフィラメント糸に35T/10cmで下撚りを施し、これを2本合わせて35T/cmで上撚りを施して3340dtex/768フィラメントの合成繊維コードを得た。
なお、得られたタイヤコードには、各処理液の固形分付着量として、処理液(1)により1.5重量%、接着処理液により3.8重量%の付着がみられた。得られた処理コードを、実施例1と同様にして各種剥離接着力を評価した。高温や耐熱の剥離接着力はその結果を表1に併せて示す。
[比較例1]
実施例1の処理液(1)に浸漬した後の滞留時間を2分間から無し(0分)に変更した以外は、実施例1と同様に接着処理を行い、各種剥離接着力を評価した。その結果を表1に併せて示す。
Figure 2010189816
このような本発明の補強用繊維の製造方法によって得られた補強用繊維は、欠点が少なく接着性能に優れ汎用的に繊維高分子複合体に好ましく用いられる。特にタイヤ、ホース、ベルト等のゴム補強用合成繊維に最適である。
A:一浴ディップバス
B:非加熱部分
C:加熱ゾーン

Claims (8)

  1. 繊維を処理液にて浸漬処理する補強用繊維の製造方法であって、繊維がマルチフィラメントからなる繊維であり、該処理液を繊維に付着した後に50℃以下の未加熱状態にて30秒以上保持し、その後乾燥・熱処理を行うことを特徴とする補強用繊維の製造方法。
  2. 該未加熱状態での保持の間に、繊維をロールにて方向転換させるものである請求項1記載の補強用繊維の製造方法。
  3. 繊維が撚りを掛けられたコードである請求項1または2記載の補強用繊維の製造方法。
  4. 繊維がポリエステル繊維である請求項1〜3のいずれか1項記載の補強用繊維の製造方法。
  5. 該処理液が、粘度が1〜5mPa・sの前処理液であり、乾燥・熱処理後にさらにレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)接着剤を主とする接着処理液にて処理を行う請求項1〜4のいずれか1項記載の補強用繊維の製造方法。
  6. 前処理液が架橋剤と乳化剤のみからなり、接着処理液が架橋触媒を含有するものである請求項5記載の補強用繊維の製造方法。
  7. 架橋剤が多価アルコールまたは多価フェノールと塩素含有エポキシド類との反応生成物である請求項5記載の補強用繊維の製造方法。
  8. 架橋触媒がブロックポリイソシアネートである請求項5〜7のいずれか1項記載の補強用繊維の製造方法。
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