JP2010189647A - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】加工性、耐摩耗性、転がり抵抗特性およびウェットスキッド性能をすべて向上させることができるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴムおよび/またはジエン系合成ゴムを含むゴム成分に対して、下記一般式(1)または一般式(2)で表される含硫黄有機珪素化合物を特定条件下で混合して得られる表面処理シリカを含有するゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ。
Figure 2010189647

【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
近年、タイヤに要求される特性は低燃性の他、操縦安定性、耐摩耗性、乗り心地など多岐にわたり、これらの性能を向上させるために、種々の工夫がなされている。これらの性能のうち、とくにタイヤのグリップ性能および転がり抵抗特性(低燃費性)はともにゴムのヒステリシスロスに関する特性である。一般に、ヒステリシスロスを大きくすると、グリップ力は高くなり、制動性能が向上するが、転がり抵抗も大きくなり、燃費の増大をもたらす。このように、グリップ性能と転がり抵抗特性とは相反する関係にあるため、両特性を同時に満足させるべく、種々のタイヤ用ゴム組成物が提案されている。
たとえば、低発熱性の向上を目的としてシリカおよびシランカップリング剤を配合する手法が知られている。シランカップリング剤はシリカ表面のシラノール基と結合してシリカ同士の凝集を防ぎ、加工性を改善すると同時に、シリカとポリマーがシランカップリング剤と化学的に結合することにより、転がり抵抗を低減させ、耐摩耗性を改善させられる。しかし、これらの目的を達成するためには、シリカとシランカップリング剤とを混練りする際に、高温で充分反応させる必要があり、シランカップリング剤中のゴムと反応する官能基が混練りなどの加工中に反応を開始し、ゲル化と言われるゴム焼けの現象が起こるという問題がある。ゴム焼けが起こらないような低温度で混練りすると、シリカとシランカップリング剤との反応が充分ではないため、耐摩耗性の低下などの性能低下が起こるという問題がある。
特許文献1には、特定の無水シリカおよび含水シリカを所定量配合することにより、耐摩耗性および転がり抵抗特性を低下させることなく、ウェットグリップ性能を向上させることのできるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤが開示されているが、加工性を向上させるものではなく、転がり抵抗特性およびウェットグリップ性能には改善の余地がある。
特開2003−192842号公報
本発明は、加工性、耐摩耗性、転がり抵抗特性およびウェットスキッド性能をすべて向上させることができるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、天然ゴムおよび/またはジエン系合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ100重量部に対して下記一般式(1)または一般式(2)で表される含硫黄有機珪素化合物1〜20重量部を130〜180℃の条件下で混合して得られる表面処理シリカを25〜100重量部含有するゴム組成物に関する。
Figure 2010189647
(式(1)中、R1〜R3は炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、R4は炭素数1〜6のアルキル基、ZはR123−Si−R4−、もしくは炭素数1〜12のアルキル基、アシル基またはアリール基であり、R1〜R4およびZはそれぞれ同一でも、異なっていてもよい。また、Xはポリスルフィド部の硫黄原子の数を表し、Xの平均値は2〜5である。)
Figure 2010189647
(式(2)中、R1〜R3は炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、R4およびR5は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R1〜R5は、それぞれ同一でも、異なっていてもよい。)
前記表面処理シリカの溶剤抽出液に含まれる含硫黄有機珪素化合物の未処理量が50重量%以下であることが好ましい。
前記表面処理シリカが、シリカ100重量部に対して0.1〜10重量部の酸性化合物の存在下で、該シリカと含硫黄有機珪素化合物とを反応させて作製されることが好ましい。
前記表面処理シリカが、シリカ100重量部に対して0.1〜10重量部の塩基性化合物の存在下で、該シリカと含硫黄有機珪素化合物とを反応させて作製されることが好ましい。
前記表面処理シリカが、シリカ100重量部に対して0.1〜10重量部の酸性化合物の存在下で、シリカと含硫黄有機珪素化合物の一部とを反応させた後、0.1〜10重量部の塩基性化合物の存在下で、シリカと残りの含硫黄有機珪素化合物とを反応させて作製されることが好ましい。
前記酸性化合物および/または塩基性化合物は、ナトリウム塩および/またはカリウム塩であることが好ましい。
また、本発明は、前記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、ゴム成分、および所定量のシリカと含硫黄有機珪素化合物とを前もって混合することによって得られる表面処理シリカを所定量配合することで、加工性、耐摩耗性、転がり抵抗特性およびウェットスキッド性能をすべて向上させることができるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分および表面処理シリカを含有する。
ゴム成分は、天然ゴム(NR)および/またはジエン系合成ゴムを含有する。
ジエン系合成ゴムとしては、たとえば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられ、これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、グリップ性能を向上させることから、SBRが好ましい。
NRを含有する場合、NRの含有率はゴム成分中に10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。NRの含有率が10重量%未満では、逆に他のジエン系ゴムとの相溶性が悪化し、加工性が低下するだけでなく、性能低下もおこる可能性がある。また、NRの含有率は100重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
SBRのスチレン単位量は10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。SBRのスチレン単位量が10重量%未満では、十分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、SBRのスチレン単位量は50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。SBRのスチレン単位量が50重量%をこえると、転がり抵抗性が悪化する傾向がある。
SBRを含有する場合、SBRの含有率は10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。SBRの含有率が10重量%未満では、十分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、SBRの含有率は100重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
表面処理シリカは、シリカを含硫黄有機珪素化合物で処理することによって得られる。
シリカとしては、乾式法または湿式法により製造されたシリカがあげられるが、シリカの製造方法にはとくに制限はない。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は40m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましい。シリカのN2SAが40m2/g未満では、補強効果が小さい傾向がある。また、シリカのN2SAは400m2/g以下が好ましく、380m2/g以下がより好ましい。シリカのN2SAが400m2/gをこえると、分散性が低下し、ゴム組成物の発熱性が増大する傾向がある。
シリカと含硫黄有機珪素化合物との反応は、加水分解反応であるため、ある程度の水分を必要とする。しかし、シリカは空気中の水分を吸着してしまうため、周囲の環境によって含水量が一定でないという可能性がある。その場合、シリカと含硫黄有機珪素化合物との反応が再現性よく行われないだけでなく、表面処理シリカの貯蔵安定性が悪化する傾向もあることから、シリカの含水量を1〜6%に調整することが好ましい。含水量が1%未満では、加水分解反応が十分に進まない傾向があり、6%をこえると、貯蔵中の安定性が悪化する傾向がある。
シリカ含水量の調製は、シリカ単独で行っても、後述する酸性化合物または塩基性化合物の存在下で行ってもよい。シリカの含水量を調整する方法としては、とくに制限されるものではないが、シリカを100〜130℃で10分〜3時間加熱処理する方法があげられ、この加熱処理は乾燥機中に静置して行ってもよいし、撹拌翼および加熱機を備えた混合機中で撹拌しながら行ってもよい。
含硫黄有機珪素化合物とは、下記一般式(1)または(2)で表される化合物である。
Figure 2010189647
(式(1)中、R1〜R3は炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、R4は炭素数1〜6のアルキル基、ZはR123−Si−R4−、もしくは炭素数1〜12のアルキル基、アシル基またはアリール基であり、R1〜R4およびZはそれぞれ同一でも、異なっていてもよい。また、Xはポリスルフィド部の硫黄原子の数を表し、Xの平均値は2〜5である。)
式(1)中、R1〜R3はアルキル基またはアルコキシ基が好ましい。R1〜R3がアルキル基の場合、炭素数は1〜10がより好ましい。また、R1〜R3がアルコキシ基の場合、炭素数は1〜6がより好ましい。R1〜R3の炭素数がそれぞれ上限値をこえると、シリカとの反応性が低下する傾向がある。
4はアルキル基が好ましい。また、R4の炭素数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。R4の炭素数が6をこえると、カップリング剤としてのはたらきが低下する傾向がある。
ZはR123−Si−R4−、もしくはアルキル基、アシル基またはアリール基が好ましい。ZがR123−Si−R4−の場合、R1〜R4は前記と同様に、R1〜R3は炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、R4は炭素数1〜6のアルキル基とすることができる。また、Zがアルキル基、アシル基またはアリール基の場合、Zの炭素数は1〜12が好ましく、2〜10がより好ましい。Zの炭素数が12をこえると、カップリング剤としての働きが低下する傾向がある。
Xは、ポリスルフィド部の硫黄原子の数を表し、Xの平均値は2〜5が好ましい。Xの平均値が2未満では、ゴムとの反応性が低い傾向があり、5をこえると、加工中にゴム焼けが発生しやすくなる傾向がある。
Figure 2010189647
(式(2)中、R1〜R3は炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、R4およびR5は炭素数1〜6のアルキル基であり、R1〜R5は、それぞれ同一でも、異なっていてもよい。)
式(2)中、R1〜R3はアルキル基またはアルコキシ基が好ましい。R1〜R3がアルキル基の場合、炭素数は1〜10がより好ましい。また、R1〜R3がアルコキシ基の場合、炭素数は1〜6がより好ましい。R1〜R3の炭素数がそれぞれ上限値をこえると、シリカとの反応性が低下する傾向がある。
4およびR5は、アルキル基が好ましい。また、R4およびR5の炭素数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。R4およびR5の炭素数が6をこえると、カップリング剤としてのはたらきが低下する傾向がある。
このような含硫黄有機珪素化合物としては、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製のSi69など)、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィドなどがあげられ、これらの含硫黄有機珪素化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応させる含硫黄有機珪素化合物の含有量は、シリカ100重量部に対して1重量部以上、好ましくは1.5重量部以上である。含硫黄有機珪素化合物の含有量が1重量部未満では、含硫黄有機珪素化合物を混合することによる表面処理の効果が充分ではなく、加工性が低下する。また、含硫黄有機珪素化合物の含有量は20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。含硫黄有機珪素化合物の含有量が20重量部をこえると、コストがあがる割に性能改善効果が小さいだけでなく、シリカ表面の未処理の含硫黄有機珪素化合物により、加工性が低下する。
本発明では、シリカと含硫黄有機珪素化合物との反応は加水分解反応律速である。この加水分解反応を速やかに行うために、酸性化合物および/または塩基性化合物の存在下で反応させて表面処理シリカを作製することが好ましい。
酸性化合物および塩基性化合物は、そのまま添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。
前記酸性化合物は、水に溶解させた場合、そのpHは2以上が好ましい。pHが2未満では、作業の安全性に問題が生じるだけでなく、混合機などが汚染される傾向がある。また、pHは6.5以下が好ましい。pHが6.5をこえると、加水分解反応を促進させる効果が小さくなる傾向がある。
このような酸性化合物としては、たとえば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのナトリウム塩、リン酸二水素カリウム、リン酸一カリウム、クエン酸一カリウム、フタル酸水素カリウムなどのカリウム塩、リン酸一アンモニウム、クエン酸二アンモニウムなどのアンモニウム塩、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、グリコール酸、安息香酸、サリチル酸などがあげられ、これらの酸性化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、加水分解反応の促進効果および安全性に優れることから、ナトリウム塩および/またはカリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましく、リン酸二水素ナトリウムがさらに好ましい。
前記塩基性化合物は、水に溶解させた場合、そのpHは8以上が好ましい。pHが8未満では、加水分解反応を促進させる効果が小さくなる傾向がある。また、pHは12以下が好ましい。pHが12をこえると、作業の安全性に問題が生じる傾向がある。
このような塩基性化合物としては、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどのナトリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸カリウム、酢酸カリウム、オレイン酸カリウムなどのカリウム塩などがあげられ、これらの塩基性化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、加水分解反応の促進効果および安全性に優れることから、カリウム塩が好ましく、ホウ酸カリウムがより好ましい。
酸性化合物の存在下で表面処理シリカを作製する場合、酸性化合物の含有量は、シリカ100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。酸性化合物の含有量が0.1重量部未満では、酸性化合物による加水分解反応の促進効果が充分ではない傾向がある。また、酸性化合物の含有量は10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましい。酸性化合物の含有量が10重量部をこえると、必要以上に加水分解反応を促進してしまい、含硫黄有機珪素化合物同士が縮合してしまう傾向がある。
塩基性化合物の存在下で表面処理シリカを作製する場合、塩基性化合物の含有量は、シリカ100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。塩基性化合物の含有量が0.1重量部未満では、塩基性化合物による加水分解反応の促進効果が充分ではない傾向がある。また、塩基性化合物の含有量は10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましい。塩基性化合物の含有量が10重量部をこえると、必要以上に加水分解反応を促進してしまい、含硫黄有機珪素化合物同士が縮合してしまう傾向がある。
酸性化合物または塩基性化合物の存在下で多量の含硫黄有機珪素化合物を添加すると、含硫黄有機珪素化合物同士が縮合してしまい、シリカと充分に加水分解反応を起こせないだけでなく、加工性低下の原因ともなり得る。さらに、未反応の含硫黄有機珪素化合物は貯蔵中に揮発してしまうなど、安定性にも問題が生じる。そこで、酸性化合物の存在下でシリカと少量の含硫黄有機珪素化合物を混合し、シリカの表面を含硫黄有機珪素化合物で処理した後、塩基性化合物の存在下で残りの含硫黄有機珪素化合物を混合することが好ましい。
酸性化合物の存在下でシリカの表面を含硫黄有機珪素化合物で処理した後、塩基性化合物の存在下で残りの含硫黄有機珪素化合物を混合する場合、全含硫黄有機珪素化合物のうち、酸性存在下で添加する含硫黄有機珪素化合物の含有率は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。含硫黄有機珪素化合物の含有率が5重量%未満では、シリカ全体を均一に表面処理することが困難となる傾向がある。また、含硫黄有機珪素化合物の含有率は80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。含硫黄有機珪素化合物の含有率が80重量%をこえると、含硫黄有機珪素化合物同士の縮合も同時に生じるため、シリカ表面に均一に表面処理することが困難となる傾向がある。
表面処理シリカの溶剤抽出液に含まれる含硫黄有機珪素化合物の未処理量は50重量%以下が好ましい。未処理量が50重量%をこえると、低燃費性や耐摩耗性などの性能改善効果が充分でないだけでなく、加工性も低下する。
表面処理シリカの作製方法としてはとくに制限はなく、たとえば、機械的に混合する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除去する方法などがあげられる。
シリカと含硫黄有機珪素化合物とを混合して表面処理シリカを作製する際の混合温度は130℃以上、好ましくは135℃以上である。混合温度が130℃未満では、未反応のアルコキシ基や未処理の含硫黄有機珪素化合物とシリカの反応が十分ではないため、加工性や性能に悪影響をおよぼす可能性がある。また、混合温度は180℃以下、好ましくは175℃以下である。混合温度が180℃をこえると、ゴム焼けが発生するおそれがある。
表面処理シリカの含有量は、ゴム成分100重量部に対して25重量部以上、好ましくは30重量部以上である。シリカの含有量が25重量部未満では、充分な低発熱性およびウェットグリップ性能が得られない。また、表面処理シリカの含有量は100重量部以下、好ましくは90重量部以下、より好ましくは80重量部以下である。表面処理シリカの含有量が100重量部をこえると、加工性および作業性が悪化する。
本発明のゴム組成物には、前記ゴム成分および表面処理シリカ以外にも、通常ゴム工業で用いられる配合剤、たとえば、カーボンブラック、シリカなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、軟化剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、過酸化物、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを必要に応じて適宜配合してもよい。
本発明のゴム組成物は、トレッド用、サイドウォール用、カーカスプライ用、ベルトプライ用などとして好適に使用される。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて、通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて前記各種薬品を配合した本発明のゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して本発明の空気入りタイヤを得る。
このようにして製造された本発明の空気入りタイヤは、バス用、トラック用、乗用車用などとして好適に使用される。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
次に、実施例および比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴム(NR):RSS#3
スチレンブタジエンゴム(SBR):ジェイエスアール(株)製のSBR1502(スチレン単位量:23.5重量%)
シリカ:東ソー・シリカ(株)製のニップシールER(N2SA:110m2/g)
シランカップリング剤A:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤B:下記作製方法により作製
表面処理シリカ1:下記作製方法により作製(未処理量:41.8重量%)
表面処理シリカ2:下記作製方法により作製(未処理量:14.9重量%)
表面処理シリカ3:下記作製方法により作製(未処理量:7.1重量%)
表面処理シリカ4:下記作製方法により作製(未処理量:37.1重量%)
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルPS323
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
(シランカップリング剤Bの作製)
1Lのセパラブルフラスコに、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBE403)100gおよびチオ尿素(和光純薬工業(株)製)41gを添加し、充分に窒素置換した後、無水エタノール150mlを添加し、室温で24時間撹拌した。反応終了後の溶液をろ過し、エタノールを留去してシランカップリング剤Bを作製した。
(表面処理シリカ1の作製)
ヘンシェルミキサーにシリカ1kgを添加し、室温で1分間混合した後、シランカップリング剤A80gを添加し、130℃で30分間混合し、表面処理シリカ1を作製した。
(表面処理シリカ2の作製)
ヘンシェルミキサーにシリカ1kgを添加し、105℃で30分間混合した後、シランカップリング剤A80gを添加し、130℃で30分間混合し、表面処理シリカ2を作製した。
(表面処理シリカ3の作製)
ヘンシェルミキサーにシリカ1kgおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物(水溶液にしたときのpH:4.25)8gを添加し、105℃で30分間混合した後、シランカップリング剤A8gを添加し、130℃で30分間混合した。その後、四ホウ酸カリウム十水和物(水溶液にしたときのpH:9.2)4gおよびシランカップリング剤A72gを添加し、130℃で30分間混合し、表面処理シリカ3を作製した。
(表面処理シリカ4の作製)
ヘンシェルミキサーにシリカ1kgを添加し、室温で1分間混合した後、シランカップリング剤B80gを添加し、130℃で30分間混合し、表面処理シリカ4を作製した。
実施例1〜3、参考例4および比較例1〜2
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を135℃で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、50℃で5分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫して実施例1〜3、参考例4および比較例1〜2の加硫ゴム組成物を得た。
(加工性)
JIS K 6300「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点での未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4/130℃)を測定し、比較例1のムーニー粘度指数を100とし、下記計算式により、各配合のムーニー粘度を指数表示した。なお、ムーニー粘度指数が大きいほど、ムーニー粘度が小さく、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のムーニー粘度)
÷(各配合のムーニー粘度)×100
(耐摩耗性)
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%および試験時間5分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。さらに、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1のランボーン摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)
÷(各配合の容積損失量)×100
(転がり抵抗)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、温度70℃、初期歪10%および動歪2%の条件下で、損失正接(tanδ)を測定し、比較例1の転がり抵抗指数を100とし、下記計算式により、各配合のtanδを指数表示した。なお、転がり抵抗指数が大きいほど、転がり抵抗が低減され、優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(ウェットスキッド性能)
スタンレー社製のポータブルスキッドテスターを用いて、ASTM E303−83の方法にしたがい、25℃におけるスキッドレジスタンスを測定し、比較例1のウェットスキッド性能指数を100とし、下記計算式により、各配合のスキッドレジスタンスを指数表示した。なお、ウェットスキッド性能指数が大きいほど、ウェットスキッド性能に優れることを示す。
(ウェットスキッド性能指数)=(各配合のスキッドレジスタンス)
÷(比較例1のスキッドレジスタンス)×100
上記試験結果を表1に示す。
Figure 2010189647

Claims (4)

  1. 天然ゴム10〜90重量%およびスチレンブタジエンゴム10〜90重量%のみからなるゴム成分100重量部に対して、
    シリカ100重量部に対して下記一般式(1)で表される含硫黄有機珪素化合物1〜20重量部を130〜180℃の条件下で混合して得られる表面処理シリカを25〜100重量部含有するゴム組成物であり、
    前記表面処理シリカが、
    シリカ100重量部に対して
    0.1〜10重量部の酸性化合物の存在下で、シリカと含硫黄有機珪素化合物の一部とを反応させた後、
    0.1〜10重量部の塩基性化合物の存在下で、
    シリカと残りの含硫黄有機珪素化合物とを反応させて作製されるゴム組成物。
    Figure 2010189647
    (式(1)中、R1〜R3は炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、R4は炭素数1〜6のアルキル基、ZはR123−Si−R4−、もしくは炭素数1〜12のアルキル基、アシル基またはアリール基であり、R1〜R4およびZはそれぞれ同一でも、異なっていてもよい。また、Xはポリスルフィド部の硫黄原子の数を表し、Xの平均値は2〜5である。)
  2. 表面処理シリカの溶剤抽出液に含まれる含硫黄有機珪素化合物の未処理量が50重量%以下である請求項1記載のゴム組成物。
  3. 酸性化合物および/または塩基性化合物が、ナトリウム塩および/またはカリウム塩である請求項1または2記載のゴム組成物。
  4. 請求項1、2または3記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
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