JP2012126851A - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び特定の化合物により変性された変性ジエン系ゴムを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
従来から、タイヤの転がり抵抗を低減して発熱を抑えることにより、車両を低燃費化することが行われている。近年、タイヤによる車両の低燃費化への要請は大きくなっており、トレッドなどのタイヤ部材に対する低燃費化の要請が大きくなっている。タイヤに用いられているゴム組成物の低発熱性を満足させる方法として、補強用充填剤量を減量する方法などが知られている。
しかし、かかる方法では、ゴム組成物の硬度、発熱量、補強性の低下により、ハンドリング性能(操縦安定性)、ウェットグリップ性能、耐摩耗性(破壊特性)が悪化する。また、補強用充填剤としてカーボンブラックを使用する場合、その配合量を減量すると、充分な導電性を確保できないので、トレッドゴム内にタイヤ表面に露出するように別のゴム部材を埋設して導電性を確保する必要があり、工数の増加によりコストアップに繋がる。
一方、補強用充填剤としてシリカ及びカーボンブラックを用いた配合において、充填剤中のカーボンブラック含有率を増加すると、補強性、耐摩耗性が向上し、導電性も確保できるが、発熱量が増加し、転がり抵抗が悪化する。このように、導電性を確保しながら、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、操縦安定性などの性能をバランスよく改善することが従来から望まれている。
特許文献1には、脱蛋白天然ゴムとステアリン酸コバルトの使用が記載されているが、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善する点については未だ改善の余地がある。
特開2009−24073号公報
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び下記式(1)で表される化合物により変性された変性ジエン系ゴムを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
Figure 2012126851
(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
ここで、シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して10〜150質量部であることが好ましい。改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものであることが好ましい。ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量が10質量%以上であることが好ましい。変性ジエン系ゴムが変性スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
本発明は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び特定の化合物により変性された変性ジエン系ゴムを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できる。よって、これらの性能に優れた空気入りタイヤを提供できる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び下記式(1)で表される化合物により変性された変性ジエン系ゴムを含む。
Figure 2012126851
(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
ゴム成分として改質天然ゴム及び変性ジエン系ゴムを併用することで、カーボンブラックなどの補強用充填剤を減量することなく低発熱性を顕著に改善できる。このような効果は、天然ゴムのリン量や窒素量を低減すること及び変性によりポリマー末端の動きを抑制することにより、相乗的に発熱性が低下していると推察される。従って、本発明では、良好なウェットグリップ性能、耐摩耗性、操縦安定性を得ながら、低燃費性を改善でき、これらの性能バランスを顕著に改善できる。また、タイヤの導電性も確保できる。
改質天然ゴムは、リン含有量が200ppm以下である。200ppmを超えると、加硫ゴムのtanδが上昇して充分な低燃費性が得られないおそれがある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、たとえばICP発光分析など、従来の方法で測定できる。リンはリン脂質(リン化合物)に由来するものである。
改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。0.3質量%を超えると、加工性、低燃費性が悪化するおそれがある。窒素含有量は、例えばケルダール法など、従来の方法で測定できる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。20質量%を超えると、加工性、低燃費性が悪化する傾向がある。ゲル含有率とは、トルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×10rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
改質天然ゴムは、実質的にリン脂質が存在しないことが好ましい。「実質的にリン脂質が存在しない」とは、天然ゴム試料をクロロホルムで抽出し、抽出物の31P−NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しない状態を表す。−3ppm〜1ppmに存在するリンのピークとは、リン脂質におけるリンのリン酸エステル構造に由来するピークである。
改質天然ゴムの製造方法としては、例えば、特開2010−138359号公報に記載の製法、すなわち、天然ゴムラテックスをケン化処理し、ケン化天然ゴムラテックスを得る工程(A)、及び得られたケン化天然ゴムラテックスをゴム中に含まれるリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄する工程(B)を含む製法などが挙げられる。具体的には、先ず天然ゴムラテックスをアルカリでケン化処理してケン化天然ゴムラテックスを調製し、次いで、該ケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムを、ゴム分に対するリン含有量が200ppm以下になるまで繰り返し水で洗浄し、乾燥する方法などにより改質天然ゴム(ケン化天然ゴム)を製造できる。
上記製造方法によれば、ケン化により分離したリン化合物が洗浄除去されるので、天然ゴムのリン含有量を抑えることができる。また、ケン化処理により、天然ゴム中の蛋白質が分解されるので、天然ゴムの窒素含有量を抑えることができる。
ゴム成分100質量%中のHPNRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性の改善効果が充分に発揮されない傾向がある。該含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、充分なグリップ性能を得られないおそれがある。
上記変性ジエン系ゴムは、ジエン系ゴムの1箇所以上(末端など)が上記式(1)で表される化合物により変性されたものである。
上記式(1)で表される化合物により変性されるジエン系ゴムとしては特に限定されず、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系合成ゴムが挙げられる。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく得られるという理由から、SBRが好ましい。変性SBRなどの変性ジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式(1)で表される化合物で変性された変性SBRとしては、特開2010−111753号公報、特開2010−111754号公報などに記載されているものが挙げられ、式(1)において、R、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基が好適である(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。好ましい化合物で変性することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く改善でき、本発明の効果が良好に得られる。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記変性SBRのビニル含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。ビニル含量が90質量%を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。該ビニル含量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。ビニル含量が20質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。
なお、本明細書において、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
上記変性SBRのスチレン含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。スチレン含量が50質量%を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。該スチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。スチレン含量が5質量%未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、スチレン含量は、H−NMR測定により算出される。
ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。15質量%未満であると、ウェットグリップ性能が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、低燃費性が低下するおそれがある。
本発明のゴム組成物において、改質天然ゴム及び変性ジエン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、前述のジエン系合成ゴム、天然ゴム(NR(非改質))などが挙げられる。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく得られるという点から、BRが好ましい。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性の改善効果が充分でないおそれがある。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。80質量%を超えると、相対的にHPNR、変性ジエン系ゴムの含有量が低下し、ウェットグリップ性能が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、通常、カーボンブラックを含有する。これにより、ゴムの強度を向上し、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を改善でき、また、導電性も確保できる。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は30m/g以上が好ましく、70m/g以上がより好ましい。30m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、該NSAは250m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましい。250m/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、加工性、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上である。30質量部未満では、導電性の確保が困難となる傾向がある。該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。60質量部を超えると、発熱が大きくなり、低燃費性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、シリカを含有してもよい。変性ジエン系ゴムとともに、シリカを配合することにより、良好な低発熱性が得られる。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。40m/g未満では、加硫後の破壊強度が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、250m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。250m/gを超えると、低燃費性、ゴムの加工性に劣る傾向がある。
なお、シリカのチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
また、カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。該合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは110質量部以下である。これにより、本発明の効果が良好に得られる。
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。5質量部未満であると、破壊強度が大きく低下する傾向がある。該含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによる破壊強度の増加や転がり抵抗低減などの効果が得られない傾向がある。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、オイル、各種老化防止剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
本発明では、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系などの加硫促進剤を使用することが好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)などが挙げられ、なかでもCBSが好ましい。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリグアニジン、トリフェニルグアニジンなどが挙げられ、なかでもジフェニルグアニジンが好ましい。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、下記式(2)で表される化合物などが挙げられ、なかでも下記式(2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2012126851
(式(2)中、zは1〜8の整数を表す。)
上記式(2)のzは、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3である。上記式(2)で表される加硫促進剤として、テトラベンジルチウラムジスルフィドなどを好適に使用できる。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッドなどに好適に使用できる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドなどの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックス
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
<製造例 ケン化天然ゴムの合成>
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム)を得た。
製造例により得られた固形ゴム、後述のTSRについて、以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を測定した。結果を表1に示す。
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、試料約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて窒素含有量とした。
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS−8100、島津製作所(株)製)を使用して、試料のリン含有量を求めた。
また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDClに溶解して測定した。
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した試料70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
Figure 2012126851
表1に示すように、ケン化天然ゴム(HPNR)は、TSRに比べて、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率が低減していた。また、ケン化天然ゴムから抽出した抽出物の31P−NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークを検出しなかった。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
HPNR:製造例で調製したケン化天然ゴム(HPNR)
SBR(非変性):日本ゼオン(株)製のNipol 1502(スチレン含量:23.5質量%)
SBR(変性):住友化学(株)製の変性スチレンブタジエンゴム(ビニル含量57質量%、スチレン含量25質量%、上記式(1)のR、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)
BR:日本ゼオン(株)製のNipol BR1220
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックN220(NSA:114m/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(平均一次粒子径:15nm、NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製の椿
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤(3):大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド、上記式(2)のz=2)
<実施例及び比較例>
表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と貼り合わせ、150℃で35分間の条件下で加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を作製した。
得られた加硫ゴム組成物及び試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表2に示す。
(低発熱性)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各加硫ゴム組成物のtanδを測定し、比較例3のtanδを100として指数表示した。低発熱性指数が大きいほど低発熱である。
(ウェットグリップ性能)
試験用タイヤを用い、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を測定し、比較例3の制動距離を100として指数表示した。ウェットグリップ性能指数が大きいほどウェットグリップ性能が良好である。
(耐摩耗性)
試験用タイヤを用いて実車走行させ、30000km走行前後のパターン溝深さの変化を測定し、比較例3を100として指数表示した。耐摩耗性指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である。
(導電性)
JIS K6271に準じて、加硫ゴム組成物の体積抵抗率を測定した。測定結果から、10Ω・cm以下であれば○、それを超えれば×の判定とした。
Figure 2012126851
比較例に比べて、HPNR、変性SBRを併用した実施例では、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できた。また、試験用タイヤの導電性も良好であった。

Claims (6)

  1. リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び下記式(1)で表される化合物により変性された変性ジエン系ゴムを含むタイヤ用ゴム組成物。
    Figure 2012126851
    (式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
  2. シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して10〜150質量部である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものである請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量が10質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 変性ジエン系ゴムが変性スチレンブタジエンゴムである請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
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