JP2010188321A - 洗浄方法および被洗浄物並びに洗浄装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】部品等の被洗浄物を気泡によって洗浄する洗浄装置において、洗浄初期に大量に浮上分離されてくる汚れによって洗浄性能や洗浄装置の性能が悪化することを防止する。
【解決手段】洗浄槽1の洗浄水2の表面に浮かぶ浮上汚れ4と洗浄水2とが樋を通過し、はじめに大量の汚れ18を分離するための分離槽16へ流入させる。続いて、大量の汚れがほぼ流出した後、制御部によって開閉弁を制御し、第2分離槽12へ微量の汚れを含んだ洗浄水を流入させる。第2分離槽12には、循環水の取組口への汚れの流入を防ぐために仕切り板13が設置されており、洗浄槽へ洗浄水を再供給するため、微細気泡生成器6に水配管15と水循環ポンプ11を介して接続されている。このような構成にすると微細気泡3を用いた洗浄において特徴的な洗浄初期の大量の汚れ18を第1分離槽16へ貯留させることができ、洗浄装置の安定運用が可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】洗浄槽1の洗浄水2の表面に浮かぶ浮上汚れ4と洗浄水2とが樋を通過し、はじめに大量の汚れ18を分離するための分離槽16へ流入させる。続いて、大量の汚れがほぼ流出した後、制御部によって開閉弁を制御し、第2分離槽12へ微量の汚れを含んだ洗浄水を流入させる。第2分離槽12には、循環水の取組口への汚れの流入を防ぐために仕切り板13が設置されており、洗浄槽へ洗浄水を再供給するため、微細気泡生成器6に水配管15と水循環ポンプ11を介して接続されている。このような構成にすると微細気泡3を用いた洗浄において特徴的な洗浄初期の大量の汚れ18を第1分離槽16へ貯留させることができ、洗浄装置の安定運用が可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、部品等の被洗浄物を気泡によって洗浄する洗浄方法および当該洗浄方法により洗浄された被洗浄物並びに洗浄装置に関するものである。
従来、工業的洗浄の分野において、フロン系の溶剤や有機溶剤、石油系溶剤などの特別な洗浄剤が用いられてきたが、オゾン層の破壊や地下水、河川、海洋汚染といった環境問題を深刻化する重大な要因となることが明らかとされてきた。このため、これらの特殊な洗浄剤を用いない洗浄方法および洗浄装置の開発が進められている。
例えば、水を主体とした洗浄水中に微細気泡を発生させ、そこに被洗浄物を浸漬、あるいはシャワー状にして供給することにより洗浄する洗浄方法および洗浄装置があげられる。ここで、この明細書において、微細気泡とは、球状となる気泡のことである。微細気泡と異なる通常の大きな気泡は水中を浮上するときに受ける水からの抗力によって球状でなくなり歪んだ形となる。これに対して微細気泡は気泡内部の圧力が高いため水の抗力による歪みがなく球状となることが広く知られている。具体的には、気泡径dが1mm以下となる場合に気泡は球状となる。
気泡による洗浄では、気泡表面への汚れ成分の吸着や気泡による剥離によって固体表面から汚れが液中に脱離し、気泡の浮力によって汚れ成分が持ち上げられ、気体と液体の界面で形成された汚れの蓄積層(堆積層)を除去することを洗浄の原理とする。
気泡を用いた洗浄方法や洗浄装置の特徴として、被洗浄物の清浄度は、気泡の径や密度に大きく依存する。即ち、安定的に高い清浄度を維持するためには、洗浄水中に気泡を微細かつ高密度に発生させることが必須となる。しかし、洗浄水中で気泡を大量に発生させると、気泡同士の衝突頻度が高まるため、気泡同士が合一して大きくなる。この課題をクリアするために、一般的に気泡同士の合一を抑制する作用を有するアルコール系化合物や界面活性剤などの添加剤が使用されている。
気泡を用いた洗浄装置や微細気泡(通常、マイクロバブルとも呼ぶ)を用いた汚れの分離装置はいくつか提案されている。通常、気泡を用いた洗浄装置においては、洗浄を行う洗浄部(洗浄槽)と汚れを溜めて処理する分離部(分離槽)を持つことが一般的であり、洗浄部で被洗浄物から除去し、浮上した汚れを分離部へ流しこみ、分離部において汚れを除去する。
また、先行例として、まず、洗浄液が満たされた洗浄槽に被洗浄物を浸漬させ、槽内に微細気泡を発生させ、その後に比較的大きな気泡を発生させて、微細気泡が被洗浄物表面の細部に到達し表面の汚れを気泡が吸着するようにし、そして、比較的大きな気泡が洗浄液を攪拌し、汚れを吸着した微細気泡を被洗浄物表面から引き離すと共に微細気泡を取り込んで汚れを洗浄液表面に移動させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、他の先行例として、攪拌機を付設した洗浄槽と、洗浄槽とオーバーフロー流路で接続した油水分離槽とを設け、油水分離槽に浮上油を回収するオイルスキマーと沈降したスラッジを排出するスラッジコンベアを付設し、浮上油及びスラッジが除去された洗浄液を油水分離槽から洗浄槽に循環する循環流路を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。この洗浄装置によれば、攪拌機が付設された洗浄槽での洗浄において、洗浄除去された油脂及び塵埃などのスラッジを確実に分離除去でき、洗浄後のワ−クへの再付着が防止され、安定して洗浄度の高いワ−クが得られると共に、洗浄液の寿命を長く保持することができる。
洗浄装置では、量産・実用化の観点から被洗浄物に求められる清浄度を安定的に維持することが最も重要である。量産の製造ラインにおいて、被洗浄物の清浄度は後工程に大きく影響し、要求清浄度を達成できなくなると洗浄装置への再投入ロスや欠陥製品などの問題が発生する。
前述したように気泡を用いた洗浄装置、特に微細気泡を用いた洗浄方法や装置では、大量の油脂や異物を含む汚れが一気に浮上される。この傾向は、気泡同士の合一を抑制する作用を有する添加剤を含む場合にさらに顕著となる。
このため、安定的に高い清浄度を維持するためには、浮上分離された大量の汚れを、速やかに除去する必要がある。通常は、このような微細気泡を用いた洗浄装置においては、洗浄を行う洗浄部(洗浄槽)と汚れを溜めて処理する分離部(分離槽)を持つことが一般的であり、洗浄部で被洗浄物から除去し、浮上した汚れを分離部へ流しこみ、その分離部において汚れを除去することが多い。この大量の汚れを速やかに取り除くことができないと場合の問題点として次のようなことが挙げられる。
・分離部に流れ込んだ汚れを速やかに回収できないと、分離部から洗浄部に汚れが再度送られてしまい、被洗浄物に付着してしまい清浄度の悪化を引き起こす。
・分離された汚れ成分を水面で長い時間そのままにしておくと、汚れ成分である油や異物が凝集を起こして比重が高まり、沈降してしまう。これらによって洗浄水の純度が低下する場合がある。さらに、これらの体積量が増加すると汚泥状のもの(スラッジ)となり、これらの一部が循環系に引き込まれ、詰まりをおこしてしまう場合がある。
・また、分離された汚れ成分の中で特に油脂の場合には、油脂中に含有される添加剤成分のために、分離部での発泡が起こり、その泡立ちがひどい場合には分離部や洗浄部からあふれてしまう場合がある。また泡立ちが大きいと液面の流動が悪化するために分離汚れの回収効率が低下するという問題が起こる場合もある。
これらの課題に対して、先行例である特許文献1では洗浄槽が汚れを流し出すことは考慮されているが、それを効率的に除去することは考慮されておらず、上記のような課題に直面することは明らかである。
また、特許文献2では、浮上油とスラッジの両方を効率的に除去するために、2種類の除去装置を設けているが、その除去能力が低いために、分離槽の汚れを除去するための時間がかかってしまい、循環系への汚れの混入やスラッジの生成、泡だちの問題があることは明らかである。
このように、大量の汚れを速やかに処理する手段や機構を備えていないために、洗浄装置に必要とされる十分な洗浄力や長期的な洗浄性能の維持ということを実現できていなかった。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、気泡を用いた洗浄や微細気泡用いた洗浄、その中でも特に添加剤によって高密度化させた微細気泡を用いた洗浄において、洗浄初期の大量の汚れ(油・異物)を処理できる洗浄方法および当該洗浄法により洗浄された被洗浄物並びに洗浄装置を得ることを目的とする。
本発明に係る洗浄方法は、洗浄槽に貯留され添加剤を加えた洗浄水に浸漬された被洗浄物を微細気泡によって洗浄する洗浄方法において、前記洗浄槽の表面に浮かぶ浮上汚れの量に応じて第1の分離槽と第2の分離槽とに区分して前記洗浄水を流入させて前記浮上汚れを分離する分離工程と、前記分離槽で汚れを分離した前記洗浄水を前記洗浄槽に再供給する再供給工程とを含むものである。
また、本発明に係る被洗浄物は、上記洗浄法によって洗浄されたものである。
さらに、本発明に係る洗浄装置は、洗浄槽に貯留され添加剤を加えた洗浄水に浸漬された被洗浄物を微細気泡によって洗浄する洗浄装置において、前記洗浄槽の表面に浮かぶ浮上汚れの量に応じて第1の分離槽と第2の分離槽とに区分して前記洗浄水を流入させて前記浮上汚れを分離する分離槽と、前記分離槽で汚れを分離した前記洗浄水を前記洗浄槽に再供給する再供給機構とを備えたものである。
本発明によれば、微細気泡洗浄の初期における大量に分離される浮上汚れを処理することが可能となり、洗浄性能を高める。
実施の形態1.(洗浄装置の代表図)
図1は、本発明の実施の形態1による洗浄装置を示す概略図である。ベンチュリタイプの微細気泡生成器6に、ガスポンプ7からガス流量計8を通って空気が供給される。また、水用圧力計9を監視しつつ水循環ポンプ11から水用流量計10で流量を調節しながら水を供給し、水とガスの混合により生成した微細気泡3を洗浄槽1内に溜められた洗浄水2中に供給する。
図1は、本発明の実施の形態1による洗浄装置を示す概略図である。ベンチュリタイプの微細気泡生成器6に、ガスポンプ7からガス流量計8を通って空気が供給される。また、水用圧力計9を監視しつつ水循環ポンプ11から水用流量計10で流量を調節しながら水を供給し、水とガスの混合により生成した微細気泡3を洗浄槽1内に溜められた洗浄水2中に供給する。
洗浄水2中には、微細気泡3を安定に維持する効果を有するアルコール系化合物や界面活性剤などの添加剤が添加される。たとえば添加剤の例としては、カルボキシル基とアミノ基を分子内にもち、分子量をカルボキシル基の数で割った値が94以上280以下の物質、分子内に水酸基を複数持ち、分子量を水酸基の数で割った値が38以上73以下の物質、分子内にエステル基を持ち、分子量をエステル基の数で割った値が47以上140以下の物質、あるいは、分子内にスルホン酸基を持ち、分子量をスルホン酸基の数で割った値が47以上140以下の物質などがあげられる。これらの添加剤を洗浄水2中に微量添加(0.001moL/L以上1moL/L以下)することにより、微細気泡3を安定に維持することが可能となる。
添加剤を所定量添加された洗浄水2中へ供給された微細気泡3は、部品かご24内に保持された汚れの付着した洗浄部品5の部品群へ作用する。油脂や微粒子などの汚れを付着した微細気泡3は洗浄槽1の上方へ上昇し、気液界面で浮上汚れ4の層を形成する。次に、洗浄水2の表面に浮かぶ浮上汚れ4と洗浄水2とが樋17を通過し、はじめに第1分離槽16へ流入する。続いて、大量の汚れ18がほぼ流出した後、第1及び第2開閉弁19及び20が制御部21からの信号によってコントロールされ、第2分離槽12へ微量の汚れ23を含んだ洗浄水2が流入する。第2分離槽12には、循環水取込口14への汚れの流入を防ぐために仕切り板13が設置されており、洗浄槽1へ汚れが分離した洗浄水2を再供給する再供給機構として、水配管15に設けられたフィルター22、水循環ポンプ11及び水用流量計10を介して微細気泡生成器6に接続されている。
このように、洗浄槽1に貯留され添加剤を加えた洗浄水2に浸漬された洗浄部品5を微細気泡3によって洗浄する際、洗浄槽1の表面に浮かぶ浮上汚れ4の量に応じて第1の分離槽16と第2の分離槽12とに区分して洗浄水2を流入させて浮上汚れ4を分離し、分離槽16,12で汚れを分離した洗浄水2を洗浄槽1に再供給するようにしたので、微細気泡3を用いた洗浄において特徴的な洗浄初期の大量の汚れ18を第1分離槽16へ貯留させることができ、微細気泡3の洗浄初期における大量に分離される汚れを処理することが可能となり、洗浄性能を高める洗浄装置を安定的に運用することが可能となる。
また、第1の分離槽16に洗浄水2を流入させた後に、第2の分離槽12に洗浄水2を流入させるようにして、汚れの2段階分離方式を採用することにより、洗浄回数に全く依存することなく、一定の高い洗浄性能を示すことができる。
なお、本実施の形態1では、第1及び第2分離槽16及び12が連続的に接続されているが、3方弁にて別方向へ流してもよい。また、樋17を第1及び第2分離槽16及び12で全く別に接続してもよい。大量の汚れ18が流れる配管を第1及び第2分離槽16及び12で兼用すると、残留した汚れが第2分離槽12に流れることになるため、兼用する配管長はなるべく短いほうが好ましい。
実施の形態2.(分離の速攻性)
図2は、図1に示す実施の形態1に係る洗浄装置を用いて洗浄処理で浮上した油脂の量を測定した結果である。工業用の油脂で汚染された300個の洗浄部品5を、部品かご24の中に保持し、部品かご24を30rpmの速度で回転させながら、微細気泡3によって洗浄した。微細気泡生成器6には水10L/min、空気10L/minを供給して微細気泡を生成させた。所定時間の洗浄を行った後一旦洗浄をやめて、水面に浮上した油脂をすべて掬い取り、水分を除いてその重さを測定した。図2では、本発明による浮上した油脂量(分離汚れの量)の洗浄時間依存性を従来例の結果とともに示している。
図2は、図1に示す実施の形態1に係る洗浄装置を用いて洗浄処理で浮上した油脂の量を測定した結果である。工業用の油脂で汚染された300個の洗浄部品5を、部品かご24の中に保持し、部品かご24を30rpmの速度で回転させながら、微細気泡3によって洗浄した。微細気泡生成器6には水10L/min、空気10L/minを供給して微細気泡を生成させた。所定時間の洗浄を行った後一旦洗浄をやめて、水面に浮上した油脂をすべて掬い取り、水分を除いてその重さを測定した。図2では、本発明による浮上した油脂量(分離汚れの量)の洗浄時間依存性を従来例の結果とともに示している。
本発明の微細気泡(マイクロバブル)洗浄の場合には、多大な表面積により洗浄初期から大量の油脂が浮上されることがわかる。一方、従来例の溶剤と超音波を併用した洗浄した洗浄方法では、洗浄時間に従って徐々に汚れが除去される。さらに、その洗浄原理のために、これらの汚れは溶剤の中に溶解されるため、水面に浮上してくる汚れの量は半分以下である。このように、添加剤を含む洗浄水におけるマイクロバブルを用いた洗浄では、一気に汚れがオーバーフローされる。このため、既述のように汚れによる様々な問題が起こるために、適正な運用ができないことになり、本発明のように初期の浮上汚れを処理する手段や機構を設けることが有効であることがわかる。
実施の形態3.(一体型)
図3は、本発明の実施の形態3による洗浄装置を示す概略図である。なお、実施の形態3も含め他の実施の形態に係る構成の図面において、図1に示す実施の形態1の構成と同一部分は同一符号を付して示す。図3に示す洗浄装置において、第1分離槽16と第2分離槽12とは一体型の分離槽でなり、槽中央部に設けられた開閉扉26を有する仕切り板25によって仕切られ、大量の汚れ18の分離機構を構成している。本装置においては、第1分離槽16と第2分離槽12が一体型となっているために、別々に分離槽を設ける必要がなく、装置全体を小型にできる利点を有する。
図3は、本発明の実施の形態3による洗浄装置を示す概略図である。なお、実施の形態3も含め他の実施の形態に係る構成の図面において、図1に示す実施の形態1の構成と同一部分は同一符号を付して示す。図3に示す洗浄装置において、第1分離槽16と第2分離槽12とは一体型の分離槽でなり、槽中央部に設けられた開閉扉26を有する仕切り板25によって仕切られ、大量の汚れ18の分離機構を構成している。本装置においては、第1分離槽16と第2分離槽12が一体型となっているために、別々に分離槽を設ける必要がなく、装置全体を小型にできる利点を有する。
次に装置の動作について説明する。初期の大量の汚れ18を含む液は、第1分離槽16へ流入する。次に、開閉扉26が閉じて分離槽16が閉じられて、洗浄槽1からオーバーフローした洗浄水は第2分離槽12へ流入する。一体型でなる分離槽には仕切り板25が槽中央部に設置されており、これによって両分離槽が仕切られる構造となっている。第2分離槽12には水循環ポンプ11へ送水するための循環水取込口14が設置されており、所定量の循環水が水循環ポンプ11によって微細気泡を生成する微細気泡生成器6のエジェクタに送液され、所定量のガスと混合され、微細気泡となって部品かご24内の汚染部品へと供給される。
本構成によってコンパクトな装置構成を実現することが可能なる。すなわち、所望される機能である初期の大量の汚れ18を処理し、汚れを少量含む洗浄水のみを分離槽12へ導くことが可能となり、ひいては循環水の純度を保持して洗浄水を繰返し利用することができるので、高い清浄度を実現可能となる。
実施の形態4.(繰返し特性)
この実施の形態4では、実施の形態3で示した装置を用いて洗浄の繰返し試験を行った。その結果を従来例による微細気泡(マイクロバブル)洗浄装置の試験結果および従来の溶剤を用いた洗浄試験結果とともに図4に示す。従来の洗浄方式、特に溶剤を用いた洗浄では、洗浄水中への汚れの蓄積によって、洗浄性能が繰返し回数に依存して急速に悪化することがわかる。また、微細気泡を用いた従来の洗浄装置においても、汚れの大量流入のために汚れが循環経路に取り込まれるために、洗浄回数に依存して徐々に悪化することがわかる。これに対して、本発明による汚れの2段階分離方式では、洗浄回数に全く依存することなく、一定の高い洗浄性能を示すことが示された。本実施の形態によって、大量の汚れを分離することが極めて有効であることが証明された。
この実施の形態4では、実施の形態3で示した装置を用いて洗浄の繰返し試験を行った。その結果を従来例による微細気泡(マイクロバブル)洗浄装置の試験結果および従来の溶剤を用いた洗浄試験結果とともに図4に示す。従来の洗浄方式、特に溶剤を用いた洗浄では、洗浄水中への汚れの蓄積によって、洗浄性能が繰返し回数に依存して急速に悪化することがわかる。また、微細気泡を用いた従来の洗浄装置においても、汚れの大量流入のために汚れが循環経路に取り込まれるために、洗浄回数に依存して徐々に悪化することがわかる。これに対して、本発明による汚れの2段階分離方式では、洗浄回数に全く依存することなく、一定の高い洗浄性能を示すことが示された。本実施の形態によって、大量の汚れを分離することが極めて有効であることが証明された。
この機構をさらに効率的にするには、洗浄槽1から浮上した汚れを排出させることが重要である。微細気泡3の洗浄では、多量のガスによって無数の微細気泡3が生成するため、槽上部の流れは複雑な流れとなり、汚れ排出に対しては不利となる。そこで、図5に示すように、浮上汚れ4を一方向へ動かす強制排出工程、すなわち、強制排出機構として、例えばガス噴出器でなる排出手段27があるとさらに効果的となる。本実施の形態3では、板状のもので汚れを一方向に押し出す方法や、狭いギャップを幅広く有するいわゆるガスブロアーのようなものを設置し、浮上汚れ4の層を押し出す機構を試したが、いずれも有効であった。
また、浮上汚れ4を排出するために、ガス注入を間欠的にON,OFFすることも有効である。OFFの時には、分離層が波打つことなく、均一にうっすらと形成されるため、排出が容易となる。さらに効果的とするには、前述のような強制排出機構を備えるとよい。また、洗浄槽1自身を分離槽16及び12側に傾斜させると分離汚れを効率的に排出することが可能となる。その他に、洗浄槽1の体積をみかけ上膨張させるための方法として、洗浄槽1内で風船をふくらませた。これも有効であった。
実施の形態5.(センサ)
2段階分離においては、なるべく濃縮した汚れのみを初段の分離槽へ導くことが重要である。このため、本実施の形態5では、浮上汚れ4を検知する手段を備えた装置を評価した。図6では、浮上汚れ4が分離されて流れる樋17の部分に汚れセンサ28を保持させた。センサ28の検出原理は、光学的なもので浮上汚れ4の有無によって反射光の量が異なることを検出原理とする。
2段階分離においては、なるべく濃縮した汚れのみを初段の分離槽へ導くことが重要である。このため、本実施の形態5では、浮上汚れ4を検知する手段を備えた装置を評価した。図6では、浮上汚れ4が分離されて流れる樋17の部分に汚れセンサ28を保持させた。センサ28の検出原理は、光学的なもので浮上汚れ4の有無によって反射光の量が異なることを検出原理とする。
このセンサ28を用いることで適切なプロセス運用が可能となった。すなわち、汚れセンサ28の検出値に基づいて制御部21により第1開閉弁19及び第2開閉弁20をコントロールすることで第1分離槽16から第2分離槽12に浮上汚れ4の流入を切り替えるようにすることができ、適切なプロセス運用が可能となる。なお、29は汚れ回収器、30は汚れ蓄積器を示し、汚れ回収器29により回収された第1分離槽16及び第2分離槽12の浮上汚れ4が汚れ蓄積器30に蓄積される。
実施の形態6.(洗浄槽内で処理)
次に、大量の汚れ18を洗浄槽1で除去する方法を示す。図7は、洗浄槽1内で浮上した浮上汚れ4を吸引する工程を備えた装置を示すものである。洗浄装置を作動させ微細気泡3を部品かご24に供給し洗浄を開始する。この場合、洗浄槽1の上部まで水位が上がり、オーバーフローしそうになったら、本装置においては、大量に分離された浮上汚れ4を吸引手段としての汚れ吸引器31によりほぼ完全に吸引する機構を備えたので、大量の浮上汚れのリターンや巻き込みによる清浄度の悪化を防ぐことができる。汚れ吸引器31により吸引された浮上汚れ4は汚れ蓄積層32に蓄積される。
次に、大量の汚れ18を洗浄槽1で除去する方法を示す。図7は、洗浄槽1内で浮上した浮上汚れ4を吸引する工程を備えた装置を示すものである。洗浄装置を作動させ微細気泡3を部品かご24に供給し洗浄を開始する。この場合、洗浄槽1の上部まで水位が上がり、オーバーフローしそうになったら、本装置においては、大量に分離された浮上汚れ4を吸引手段としての汚れ吸引器31によりほぼ完全に吸引する機構を備えたので、大量の浮上汚れのリターンや巻き込みによる清浄度の悪化を防ぐことができる。汚れ吸引器31により吸引された浮上汚れ4は汚れ蓄積層32に蓄積される。
本機構においては、ガスの注入と停止を繰り返すことが有効に作用する。なぜなら微細気泡3の生成時は気液界面が乱れており、浮上汚れ4の層がゆれてしまうため吸引がうまくいかない。これに対して、微細気泡3で一定時間洗浄し、浮上汚れ4を除去・分離させた後に、ガスの注入を一旦停止し、浮上した浮上汚れ4の層を落ち着かせた後に除去部を作動させると効率的に汚れを除去することがさらに可能となる。
あるいは洗浄槽1の上方に浮上した浮上汚れ4を一箇所に集める機構を備えるとさらに効率的となる。たとえば、洗浄槽1の上方に板状のものを設置し、油膜を一定方向に押しやる機構を備えるとより効果的となる。さらに、除去する機構として、吸引するばかりでなく、浮上汚れ4に対して親和性の高い物質、たとえば表面がざらついて紙や繊維質の布などを作用させ浮上汚れ4を一気に吸着させることも有効である。
実施の形態7.(回収手段)
濃縮汚れといえども洗浄水とともに排出されるため、洗浄水を回収し、洗浄槽1へ戻すことが重要である。このために、図8に示すように、第2分離槽12に微細気泡を供給する微細気泡供給工程を有するようにすれば、洗浄された洗浄水2を回収して洗浄槽1に再供給することができる。すなわち、第2分離槽12内の微量の汚れ23の分離を促進するための分離用微細気泡生成器33を設け、水循環ポンプ11から三方弁34を介して水用流量計35で流量を調節しながら水を供給し、水とガスの混合により生成した微細気泡3を第2の分離槽12内に溜められた微量の汚れ23を含んだ洗浄水2中に供給して洗浄し、洗浄槽1へ洗浄水2を再供給するようにして回収する。
濃縮汚れといえども洗浄水とともに排出されるため、洗浄水を回収し、洗浄槽1へ戻すことが重要である。このために、図8に示すように、第2分離槽12に微細気泡を供給する微細気泡供給工程を有するようにすれば、洗浄された洗浄水2を回収して洗浄槽1に再供給することができる。すなわち、第2分離槽12内の微量の汚れ23の分離を促進するための分離用微細気泡生成器33を設け、水循環ポンプ11から三方弁34を介して水用流量計35で流量を調節しながら水を供給し、水とガスの混合により生成した微細気泡3を第2の分離槽12内に溜められた微量の汚れ23を含んだ洗浄水2中に供給して洗浄し、洗浄槽1へ洗浄水2を再供給するようにして回収する。
これによって、洗浄水2のロスが少なくなった。回収手段としては、スキマー、フロート式などいわゆる一般的な回収手段でよい。或いは遠心分離機能などいかなる分離機構によっても有効性を確認した。分離手段を高めるために、図8に示す第1分離槽16または第2分離槽12あるいは両方へ微細気泡3の供給手段を備えてもよい。供給手段は、エジェクタ式、旋回流方式、多孔板、加圧溶解式などいかなる生成原理を用いてもよい。
なお、微細気泡のみでの清浄度には限界がある。たとえば粘度の高いものや微細な穴をもったものなどの部品などは洗浄しがたい。このため、超音波を併用した処理などは有効性が高い。洗浄槽1の構造としては特に制限がなく、その他の物理力を併用した洗浄方法、たとえば微細気泡3を含んだ洗浄水をシャワーで供給し、初期のシャワー洗浄水のみを分離槽1に溜め、初期大量の汚れ18を分離することも有効である。
1 洗浄槽、2 洗浄水、3 微細気泡(微細気泡)、4 浮上汚れ、5 洗浄部品、6 微細気泡生成器、7 ガス用ポンプ、8 ガス用流量計、9 水用圧力計、10 水用流量計、11 水循環ポンプ、12 第2分離槽、13 仕切り板、14 循環水取込口、15 水配管、16 第1分離槽、17 樋、18 大量の汚れ、19 第1開閉弁、20 第2開閉弁、21 制御部、22 フィルター、23 微量の汚れ、24 部品かご、25 第1分離槽と第2分離槽の仕切り板、26 開閉扉、27 ガス噴出器、28 汚れセンサ、29 汚れ回収器、30 汚れ蓄積器、31 汚れ吸引器、32 汚れ蓄積槽、33 分離槽用気泡生成器、34 三方弁。
Claims (8)
- 洗浄槽に貯留され添加剤を加えた洗浄水に浸漬された被洗浄物を微細気泡によって洗浄する洗浄方法において、
前記洗浄槽の表面に浮かぶ浮上汚れの量に応じて第1の分離槽と第2の分離槽とに区分して前記洗浄水を流入させて前記浮上汚れを分離する分離工程と、
前記分離槽で汚れが分離した洗浄水を前記洗浄槽に再供給する再供給工程と
を含む洗浄方法。 - 請求項1に記載の洗浄方法において、
前記第1の分離槽と前記第2の分離槽への浮上汚れの流入の切り替えは、前記洗浄槽から流入する前記洗浄水の汚れを汚れセンサで検知してコントロールする
ことを特徴とする洗浄方法。 - 請求項1に記載の洗浄方法において、
前記第1の分離槽に前記洗浄水を流入させた後に、前記第2の分離槽に前記洗浄水を流入させる
ことを特徴とする洗浄方法。 - 請求項1に記載の洗浄方法において、
前記洗浄槽に前記浮上汚れを強制的に排出する排出工程をさらに含む
ことを特徴とする洗浄方法。 - 請求項1に記載の洗浄方法において、
前記洗浄槽に前記浮上汚れを吸引する吸引工程をさらに含む
ことを特徴とする洗浄方法。 - 請求項1に記載の洗浄方法において、
前記分離槽に微細気泡を供給する微細気泡供給工程をさらに含む
ことを特徴とする洗浄方法。 - 請求項1から6のいずれか1項に記載の洗浄方法によって洗浄された被洗浄物。
- 洗浄槽に貯留され添加剤を加えた洗浄水に浸漬された被洗浄物を微細気泡によって洗浄する洗浄装置において、
前記洗浄槽の表面に浮かぶ浮上汚れの量に応じて第1の分離槽と第2の分離槽とに区分して前記洗浄水を流入させて前記浮上汚れを分離する分離槽と、
前記分離槽で汚れが分離した洗浄水を前記洗浄槽に再供給する再供給機構と
を備えた洗浄装置。
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